昭和医学会雑誌
Online ISSN : 2185-0976
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46 巻, 5 号
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  • 副島 和彦, 神田 実喜男
    1986 年46 巻5 号 p. 589-592
    発行日: 1986/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
  • ―とくに膵癌について―
    河内 正男, 矢嶋 輝久, 安斉 勝行, 柳沢 美光, 舩冨 等, 田口 進, 八田 善夫
    1986 年46 巻5 号 p. 593-598
    発行日: 1986/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    近年腫瘍マーカーの臨床応用は, モノクローナル抗体の出現とあいまって, めざましいものがある.しかし, 臨床的に測定される腫瘍マーカーは, 癌特異物質ではなく, この点において診断能の限界があり, また, 臓器特異性の問題も残されている.したがって, 個々の腫瘍マーカーの特質, 欠点を知った上で臨床に応用すべきであると考える.今回は消化器癌, とくに膵癌を中心にTPA, POA, CEA, CA 19-9の診断的価値を検討した.また, これらのマーカーの膵癌と慢性膵炎の鑑別診断への応用についても検討し, 教室で報告した膵癌関連糖蛋白 (66K-PGP) の成績とも比較した.TPAは様々の消化器悪性腫瘍で高率に陽性であったが, 疑陽性例も多く, 診断的価値よりも, 高値例における治療効果判定, 再発のモニターリングに有用と考えられた.現在, POAと称されるものについては, 単一物質ではなく, 数種類の抗原が存在する.したがって, 測定に使用する抗原により, その感度も異なってくると考えられる.今回の検討では, Gelderらの抗原を用いたassay系で測定したが, 有用性は低く, わずかに大腸癌で陽性率が高かった.CEAは従来の報告とほぼ同様の結果を得, 膵癌診断にもある程度有用であると考えられた.近年, CEAのheterogeneityが論じられており, CEA familyなる言葉も散見される.今後, 糖鎖部分の違いを認識し得る測定系が開発されれば, より精度も上昇すると思われる.CA 19-9は疑陽性例が少なく, 消化器癌, とくに膵癌の診断にも有用と考えられた.膵癌と慢性膵炎の鑑別診断においては, accuracyからみると, TPA, CA 19-9が有用と考えられるが, TPAに関しては, 疑陽性率が50%近くを示し, 実地上, 信頼性に欠け, CA 19-9が現時点では最もすぐれたものと考えられる.ただし, 膵癌においても, CA19-9陰性例が存在し, これらの例では経時的にみても上昇傾向がなく, ルイス抗原との関連が示唆されている.したがって今後は, 各臓器単位で, 個々の腫瘍マーカーの欠点を補うcombination assayを考慮する必要があろう.
  • 廣野 良定
    1986 年46 巻5 号 p. 599-605
    発行日: 1986/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    67Gaの血中動態は鉄のそれと類似しており, 血中に投与された67Gaは直ちにTfと結合し運搬されて組織内に取り込まれる.67Gaシンチグラフィでは肝, 骨に強い集積が認められる.しかし, まれに肝が描出されない症例を経験することがある.UIBCの著明な低下が肝不描出の主たる原因と言われており, 今回それを確認するため動物実験を行なった.実験方法はウイスター系ラットを用いて67Gaシンチグラフイを施行し, 全身のシンチグラフイ (前面像) を撮影した.同時にデータプロセッサに画像を収集した.その後, 心臓より採血してから解剖し, 肺, 肝, 脾, 腎, 大腿骨および大腿部筋肉を摘出した.ウエル型シンチレーションカウンタにて各臓器のカウント数を測定し, 単位重量当りのカウント数を求めた.RI法にてTIBCおよびUIBCを測定し血清鉄を算出した.実験は対照群, Fe投与群, VCR投与群, Fe+VCR投与群に分けて行なった.Fe投与群では肝は描出され, 67Ga分布も対照群と比べ差異はなかった.血清鉄とTIBCは著明に上昇し, UIBCの低下が認められたが, Tfの飽和には至らなかった.VCR投与群では肝は描出され, 67Ga分布も画像上対照群と比べ差異はなかった.しかし, 腎のカウント数が増加していた.血清鉄とTIBCの上昇が認められたが, UIBCの低下は, 認められなかった.Fe+VCR投与群では肝不描出が認められ, 腎と骨への集積が著明に増加し, 67Ga分布に変化がみられた.カウント数は対照群に比べ肝は約1/2に減少し, 腎と骨は約2倍に増加していた.UIBCは著明な低下を示した.Tfは飽和状態に近かった.以上より, 肝不描出にはUIBCの著明な低下, 言い換れば, Tfが飽和状態に近いことが必要であると考えられる.Tfの飽和のために67GaはTfと結合できず, 肝へ運搬される67Gaは減少し, 逆に, freeの67Gaが増加する.このため, 肝への集積は減少し, 一方骨や軟部組織への集積が増加し, また, 67Gaの血中クリアランスが亢進し, 腎への集積が増加すると考えられる.そして, このような67Gaの体内分布の変化が画像上で肝不描出を引き起こすと考えられる.
  • 西田 均, 紺野 邦夫, 竹田 稔
    1986 年46 巻5 号 p. 607-613
    発行日: 1986/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    近年種々のモノクローナル抗体 (Mo-Ab) を用いて抗原分子の生理機能の解明や, 各種腫瘍マーカー, 白血球表面マーカー等疾患の診断, 治療への応用が試みられている.我々は診断, 治療への応用を目的として, 癌化した細胞の膜糖蛋白に対するMo-Abを作製した.抗原としてヒト正常肝, 肝細胞癌, 胆管細胞癌, 正常膵, および膵癌組織の細胞膜糖蛋白を用いた.糖蛋白は, LISPhenol法により抽出した.この抗原をBALB/c mouseに免疫し, そのsplenocyteとNS-1 cellを融合した.ハイブリドーマは, HAT mediumにより選別した.ELISAにより特異的抗原を認識する抗体産生細胞群のみを選出し, cloningした.Cloningしたハイブリドーマ中抗体産生陽性cloneのみを無血清培地で培養し, その培地を濃縮しMo-Ab sol.とした.Mo-Abは, 正常肝から5種, 肝細胞癌から4種, 胆管細胞癌から5種得られ, Ig classは, すべてIgGであった.これらのMo-Abを用いて行なったWestern blotting法による各種抗原との反応では, 正常肝では分子量 (M.W.) 42K, 他では45Kの膜糖蛋白との交差反応を認め, 得られたMo-Abは糖鎖認識抗体と考えられた.また抗原によっては量的差異を認めた.各種疾患患者血清中の抗原量をELISA, およびWestern blotting法にて検索すると量的に差異が確かめられ, 肝臓悪性疾患, 特に胆管細胞癌で高値となり, 診断への応用の可能性があることが示唆された.
  • ―呼吸・循環器系・摘出平滑筋に対する作用―
    岡崎 雅子, 会沢 重勝, 川島 育夫, 白崎 恭子, 坂本 浩二, 田中 源一
    1986 年46 巻5 号 p. 615-623
    発行日: 1986/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ヒト胎盤水解物である肝作用薬Laennec (LAE) の呼吸, 循環器系, 摘出平滑筋へ及ぼす影響を犬およびウサギを用いて検討した.体重5~8kgのビーグル犬はpentobarbital sodium (30mg/kg, i.v.) 麻酔で, 体重2.4~3.5kgのウサギはurethan (1.5g/kg.i.p.) 麻酔で行った.0.3ml/kg以上のLAE投与により一過性の血圧上昇に続く投与量に応じた血圧下降が認められた.同時に呼吸抑制も併って起こるが, いずれの作用も犬, ウサギ共に持続時間は短かい.しかし, LAE原液, もしくは希釈したものをd.i.v. (1ml/min) することによって, i.v.により起こる血圧下降や呼吸抑制はかなり回避することができた.犬において, laser doppler血流計により測定した末梢血流量および電磁血流計により測定した頸動脈血流量は, LAEのi.v.によって増加した.LAEをゲル濾過により6分画に分け, これらの分画を動物にi.v.することにより, 分子量の大きい分画 (f1とf2) が血圧下降を, 分子量の小さい分画 (f4) が血圧上昇を起こすことが明らかとなった.更に, 抗histamine剤であるdiphenhydramine前投与によりLAEによる血圧下降およびf1, f2分画による血圧下降は抑制された.ウサギを用いてのin vitro系の実験では, マグヌス法による胸部大動脈, および灌流法によるウサギ耳介において, LAE投与で血管収縮作用がみられ, その作用はdiphenhydramine前処理により完全に拮抗された.非妊娠ウサギ摘出子宮において, LAEの投与量に応じた律動的収縮作用がみられ, 腸管においては, 弱い蠕動運動の抑制が認められた.カエル摘出心において, 一過性の心抑制とその後の心幅の増大が観察された.又, マウスを用いて血管透過性作用を検討した結果, LAEのi.p.およびi.v.で透過性充進が明らかであった.以上のことから, LAEによる血圧下降作用には, histamineもしくはhistamine様物質の介在する可能性が示唆された.
  • 辻 泰喜, 鈴木 純一, 中山 貞男, 坂本 浩二
    1986 年46 巻5 号 p. 625-628
    発行日: 1986/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    自然発症高血圧ラット (SHR) を用いて, 週齢による脳内7部位のmonoamine oxidase (MAO) 活性の変化を検討した.血圧と心拍数も同時期に測定し, 脳内MAO活性との関係についても検索を試みた.動物は生後5週齢の雄性SHRを用い, 5~15週齢の間の脳内MAO活性と血圧, 心拍数の変化を測定した.脳の部位別で, 大脳皮質, 延髄と橋, 線状体, 海馬のMAO活性は7~9週齢において低下がみられた.中脳と視床, 小脳のMAO活性は11週齢で上昇を示した.視床下部のMAO活性は11~15週齢で5週齢に比べて明らかな上昇を示した.血圧は10週令まで急速に上昇し, 11週齢以降も昇圧がみられ15週齢では220mmHgに達した.心拍数は5~8週齢までゆるやかな増加を示し, 9~15週齢では減少がみられた.SHRの週齢による脳内MAO活性の変化は脳内catecholamine代謝に影響をおよぼし, 高血圧発症における中枢の機序にも関与しているものと思われる.
  • 四宮 茂
    1986 年46 巻5 号 p. 629-636
    発行日: 1986/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    成長期における顔面への手術侵襲が, 頭蓋・顔面骨に及ぼす影響については, 従来より多くの動物実験が報告されており, 幼若期に手術侵襲を加えるほど頭蓋・顔面骨の成長が抑制されることが知られている。一方, 口唇・口蓋裂の手術では皮膚の処置とともに粘膜の処置も大切であるにもかかわらず, 頬部粘膜への外科的侵襲が, 頭蓋・顔面骨の成長にいかなる影響を及ぼすかについての報告は皆無である。そこで著者は以下の動物実験を行ない, 粘膜に対する手術の影響を研究した.すなわち, 100gの幼若雄ラットの臼歯列外側縁に沿って長さ8mmの切開を加えたのち縫合したA群, これと直角方向に口唇縁に向けて同じ長さで切開縫合したB群, 第1臼歯基部粘膜をdogearの修正も含めて8×3mmの矩形に切除し, 横軸方向に縫縮したC群, および同様に3×8mmの横長の矩形に粘膜を切除後, 縦軸方向に縫縮したD群に分けた.また, 何ら手術侵襲を加えない対照群も設けた.手術後17週目に全てのラットを断頭してdry boneを作製したのち, 規格ポラロイド写真として撮影し, 左右への偏位角および前方への発育比をt-検定にかけた。その結果, (1) 偏位角は単純に切開・縫合したA群・B群では対照群との間に有意差はなかったが, 切除・縫縮したC群・D群はともに対照群との間に危険率1%で有意差を認めた. (2) 発育比はいずれの群の間でも有意差はみられなかった.以上より, 口腔内手術に際しては頬粘膜の過緊張は, 顔面骨の変形をもたらす可能性があることを示した。
  • ―CTの有用性の評価―
    石川 昌澄, 小笹 潔, 宮坂 圭一, 伊藤 真一, 篠塚 明, 信澤 宏, 蓮沼 節, 藤沢 守男, 小見山 喜八郎, 宗近 宏次, 菱田 ...
    1986 年46 巻5 号 p. 637-644
    発行日: 1986/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    進行食道癌で放射線治療をした50例中, 治療効果判定可能な21例について「食道がん化学療法及び放射線治療の直接効果判定基準 (案) 」に基づき評価を行ない, そのうち5例について, Mossらによる食道癌のX線CTによるStagingを用い, そのX線CT所見の評価を行なった.5例中3例のPRと判定された症例の中には, 放射線治療前後において周囲臓器へ浸潤を認めないもの1例, 治療前には浸潤を認めるものの治療後には浸潤が認められなくなるもの1例, 治療前後において周囲臓器へ浸潤を認めるもの1例があり, 5例中2例のNCもしくはPDと判定された症例は全例, 放射線治療前後において周囲臓器へ浸潤を認めた。以上の所見は従来の食道X線透視や内視鏡によっては判定することは出来ず, X線CTは食道癌の外方向への評価に有用であると考えられた.
  • 伊介 昭弘
    1986 年46 巻5 号 p. 645-653
    発行日: 1986/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    カニクイザルの成獣5頭 (雄: 2, 雌: 3) の舌骨上筋について, 筋線維型を分類, 筋腹横断面積, 筋線維の数, 太さおよび密度を計測し, サルの他筋およびヒトの舌骨上筋と比較してその特徴を明らかにした.筋線維の分別はSudan Black B染色によった.結果は次の通りである.1.筋腹横断面積, および断面における筋線維総数は, 舌骨上筋中オトガイ舌骨筋が最も優り, 顎二腹筋前腹がこれに次ぎ, 茎突舌骨筋が最も劣っていた.2.3筋線維型の頻度は各筋とも赤筋線維が最も多く, 以下, 白筋線維, 中間筋線維の順で, 各筋における太さは白筋線維, 中間筋線維, 赤筋線維の順に大であった.3.筋線維の太さは, 全平均では顎二腹筋後腹が最も大で, オトガイ舌骨筋がこれについだが, 筋線維型別には白筋線維と中間筋線維はオトガイ舌骨筋が, 赤筋線維は顎二腹筋後腹がそれぞれ他よりもまさる傾向が見られ, 以下は常に顎二腹筋前腹, 顎舌骨筋, 茎突舌骨筋の順であった.4.カニクイザルの他筋と比較すると, 特に四肢筋に比べ1mm2中の筋線維数は多く, 筋線維の太さは小であり, 白筋線維の比率は少なかった.5.ヒトの舌骨上筋と比較すると, 舌骨上筋の中でオトガイ舌骨筋が最も発達し, 茎突舌骨筋が最も劣っていたことは共通であった.しかし, 筋腹断面積及び筋線維総数では, サルは顎二腹筋前腹が, ヒトは顎舌骨筋がそれぞれオトガイ舌骨筋に次いでいた.
  • 木根淵 光夫
    1986 年46 巻5 号 p. 655-662
    発行日: 1986/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    胃潰瘍の発生については, 古来より多くの報告がなされているが, 定説はなく種々の因子について検討されてきた.一般的にはShay等による攻撃因子, および防御因子のbalanceの乱れが潰瘍を発生させるという考え方が主流を占め, 現在でもこの考えに基づいて検討されている.なかでも, 酸分泌については, その攻撃性およびその研究の容易さから胃潰瘍の中心として考えられ, “No acid, No ulcer”とさえ言われていた.しかし臨床的には低酸の胃潰瘍も存在することから, 潰瘍の発生を一元的には考えにくいとされていた.一方防御因子としての血流についてはBurton-Opitz等によって胃壁血流を測定して以来.いくつかの報告があるが, 当教室における鈴木等は, 胃粘膜微少循環の観察によりレセルピン潰瘍においては血流の鬱血および虚血が胃粘膜表層に出血性の変化を起こすとした.しかし胃粘膜防御因子の中でも古くよりしられていながら, その構造の難しさや観察の困難のために極めて研究が遅れていた胃粘液が胃潰瘍の発生に重要な因子となっているのではないかとの考えに基づき, 勝山等1によって胃粘液中のムコ蛋白に特異的に結合すると報告されたConcanavalin A (Con A) 染色並びに, 胃粘液中の酸性ムコ多糖と結合するalcian blue (AB) との複合染色を行い, 組織化学的観察を行ったところ, 胃壁表面および腺部において明らかな粘液減少を認め, 胃粘液が潰瘍発生の重要な役割を果たしていることがわかった.一方, 電子顕微鏡的観察により, Con A陽性粘液はMucous Neck Cell中に貯蔵されており腺管腔内や壁細胞の表面も被覆していることが明らかになった.そしてストレス負荷によって, 壁細胞表面や腺管内腔の粘液が消失し酸に対して無防備となることが確認され, 潰瘍の発生が粘膜からも起こり得る事が示唆された.
  • 行徳 博英, 神山 五郎, 重原 岳雄
    1986 年46 巻5 号 p. 663-676
    発行日: 1986/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    耳介作成術時の耳介の傾きの基準を得る目的で, 5歳, 10歳, 15歳の日本人男女305名を対象として, 耳介長軸と鼻梁線とのなす角度の年齢的変化について調査を行った.測定に際しては, 被験者の頭部の左右のズレがないことを, ヘッドバンドにより確認の上で1m50cmの距離より頭部右側面写真を撮影した.写真のコピー上で, 耳輪前縁と耳珠前縁を結んだ線を耳介付着線とし, 測定の際の基準線とした.また耳介付着線に対して垂直線上にある耳介上縁点と耳介下縁点を結んだ線を耳介長軸とした.また左右内眼角を結んだ線と交差する鼻梁上の点を鼻根点とし, 鼻梁上の最高点を鼻尖点として, この二点を結んだ線を鼻梁線とした.次に各線を延長し, それぞれの交差した点での角度, すなわち, 耳介付着線と鼻梁線とのなす角度をX, 耳介付着線と耳介長軸とのなす角度をY, 耳介長軸と鼻梁線とのなす角度をZとし, X, Y, Zを分度器を用いて測定した.5歳, 10歳, 15歳の測定結果に加え, 著者等の同様の測定法による, 日本人青年男女の耳介長軸と鼻梁線は平行でないとした報告中の, 20歳男女の測定値, 男16°, 女14.6°を含めて検討した.Z角の測定値の平均値及び標準偏差値は次の如くであった.
    男児―5歳16.0°±5.74 10歳15.8°±7.43
    15歳18.4°±6.10 20歳16.0°±4.1
    女児―5歳15.8°±6.43 10歳17.0°±5.02
    15歳16.1°±6.37 20歳14.6°±6.1
    以上から, 耳介長軸と鼻梁線は, 20歳男女の報告と同様に, 5歳, 10歳, 15歳に於ても平行ではなく, 耳介長軸は鼻梁線との平行線よりも前方に, 前述の角度に傾斜した位置にあるという結果になった.また, 5歳では男女間に差はなく, 女は10歳男15歳が最大値であり, 以後は男女ともに加齢とともに角度が減少することが認められた.
  • 駒谷 壽一
    1986 年46 巻5 号 p. 677-685
    発行日: 1986/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    大腰筋は股関節屈曲の主作動筋であるが, その筋線維構成についての記述は見られない.筆者は大腰筋について, その筋線維構成を検討し, これまでに同様の方法で検査されてきた骨格筋と比較検討を行った.研究対象ならびに方法: 研究対象は23~87歳 (平均年齢65.4歳) の成人10名 (男性4, 女性6) の病理解剖屍から得られた大腰筋である.筋組織片は第5腰椎下縁高で, 筋走行に直角な断面の全域を採取, ホルマリン固定後, ゼラチン包埋, 凍結切片とし, Sudan Black B染色によって筋線維を濃染性の赤筋線維, 難染性の白筋線維及び中間染色性の中間筋線維に分別した.これらの組織標本について, 筋腹横断面積, 1mm2中の筋線維数, 断面の筋線維総数, 3筋線維型の頻度と太さの平均値および密度を算出した.結果: 1.ヒト大腰筋では筋腹横断面積は平均581mm2で, 男性が女性よりも優り, 1mm2中の筋線維数は平均830で他の筋よりも多く, 女性が男性よりも優り, 断面積と逆相関の傾向を示した.断面の筋線維総数は平均507, 579で, 大きな筋の部類に入り, 男性が女性よりも優り, 加齢的減少の傾向が認められた.2.3筋線維型の頻度の平均は白筋線維62.8%, 中間筋線維21.2%, 赤筋線維16.0%で, 他筋に比べて白筋線維の頻度が高く, サルの大殿筋と等しい組成であった.3.3筋線維型の太さの平均は, 赤筋線維, 中間筋線維, 白筋線維の順に大で, これまで検査した多くの筋の筋線維の太さに関する報告と全く逆であった.また, 白筋線維の太さの平均値はこれまでの報告例中最も小であった.4.筋線維の太さの分布型から見て, 加齢的に右方に偏し, 低分布型となる傾向が見られ, 筋線維の減少に伴う代償性肥大と考えられたが, 最終的には筋線維縮小に至る傾向が認められた.5.筋線維の密度は平均91.6%で, 他に比べて非常に高かったが, 男女とも高齢者程, 密度は低くなる傾向が認められた.
  • 宇田川 晃一
    1986 年46 巻5 号 p. 687-695
    発行日: 1986/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    健康な成人104名 (男性: 49, 女性: 55) の右前腕近位1/3部及び遠位1/3部におけるX線CT写真について・皮下脂肪, 結合組織筋, 骨の断面積を測定し, 総断面積に対する比率を算出するとともに, 皮下脂肪厚を測定して, 性別, 年齢別, 体型 (Rohrer指数) 別の消長を検討した.結果: 1) 前腕の組織構成比は近遠両部位とも筋比が最も大で, 皮下脂肪比がこれに次ぎ, 結合組織比と骨比はほぼ相等しくて最も小であった.また, 両部位とも筋比は男性が, 皮下脂肪比は女性がそれぞれ他よりも優っていた.2) 筋の構成については, 両部とも屈筋群, 背側伸筋群, 横側伸筋群の順に大であったが, 遠位部では橈側伸筋群が著しく小となり, 他の構成分の比率が上昇した.3) 組織構成と年齢との関係については, 近遠両部位とも50歳代と60歳代で脂肪結合組織比は増加, 筋比は減少する傾向が認められ, この傾向は男性は60歳代で, 女性は50歳代でそれぞれ著明であり, 筋の退縮は大腿部よりも遅れることが明らかであった.4) 組織構成と体型との関係を見ると, 両部ともA, C, D体型の順に脂肪結合組織比は大となり, 筋比は小となり, 女性のD体型では前者が後者に近くなる傾向が認められた.5) 断面の皮下脂肪厚はすべての計測部位で女性が男性よりも優り, 近位部と遠位部では後者が前者よりも優る傾向が見られた.6) 皮下脂肪厚の年齢別, 体型別観察において, 橈側は一般に厚くて, Rohrer指数と最もよく平行し, 特に遠位1/3部橈側の皮下脂肪厚は肥満判定の指標として有効であると考えられた.
  • ボナルデッリ パオロ, 藤田 力也, 藤田 安幸, 平田 信人, 山村 光久, 菅田 文夫
    1986 年46 巻5 号 p. 697-702
    発行日: 1986/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    経口的膵胆道鏡は1973年以来ベビースコープ方式で行なわれてきた.そのほかにも直接挿入方式, スライディングチューブ方式, ガイドワイア方式などがあるが, 主流をしめるのはこのベビースコープ方式である.十二指腸ファイバースコープを母体にして行うので, ベビースコープには細経で長く, アングル機構生検鉗子孔を具備しなければならないという機械的制約が大きい.今回はその夢がやっとかなえられたべビースコープ (オリンパス製Type I, 1984) が入手できたので, 臨床応用を行なった.内視鏡的乳頭切開術を行なった20症例に全例 (100%) 挿入可能であった.アングル機構はup 160゜, down 90゜で, 生検鉗子孔は1.2mmψであるため, 肝内3次分枝まで挿入可能で, 胆管内結石の直視下バスケット摘出, 胆管癌の直視下生検も可能であった.この新型スコープの臨床応用状況を中心に報告した.
  • 小堀 正雄, 増田 豊, 高橋 厳太郎, 細山田 明義
    1986 年46 巻5 号 p. 703-706
    発行日: 1986/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    今回, われわれは産婦人科領域における代表的な手術である (1) 筋腫群47例, (2) 帝切群46例, (3) 外妊群25例の三群について脊椎麻酔の影響について検討した.局麻薬は0.3%ジブカインとし, 注入時の体位は右側臥位, 注入直後に仰臥位とした.麻酔域の決定はpin prick testで行った. (1) 筋腫群は「血圧降下群」が36%あった.麻酔域がT4以上に拡がった症例は60%, T5以下の症例は30%が「血圧降下群」であった.各症例の穿刺部位, 局麻薬量と麻酔域との関係はほとんど認められなかった. (2) 帝切群は「血圧降下群」が48%あった.麻酔域がT6以上に拡がった症例は65%, T7以下の症例は25%が「血圧降下群」であった.穿刺部位L2~L3, 局麻薬量1.6ml以上, 身長154cm以下の症例は麻酔域がT6以上に拡がる傾向にあった. (3) 外妊群は「血圧降下群」が44%あり, 麻酔域がT6以上に拡がった症例では53%であったが, 他の二群に比較して麻酔域と「血圧降下群」との関係が少なく, 「血圧降下群」と「血圧安定群」の平均ヘモグロビン値にわずかな差を認め, 外妊群の血圧安定度は麻酔域に加え術前の腹腔内出血の量が脊椎麻酔後の血圧変動に大きな影響を与えていることが示唆された.
  • 小堀 正雄, 増田 豊, 岡本 健一郎, 細山田 明義
    1986 年46 巻5 号 p. 707-710
    発行日: 1986/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    今回, われわれは下腹部以下の手術について高齢者群, 若年者群に分け, 脊椎麻酔の影響について検討した.局麻薬は0.3%ジブカインとし, 高齢者群は0.5%ブピバカインも併わせて使用した.注入時の体位は側臥位で注入直後に仰臥位とし, 麻酔域の決定はpin prick testで行った. (1) 若年者群は「血圧降下群」が27%あった.麻酔域がT5以上に拡がつた症例は38%, T6以下の症例は21%が「血圧降下群」であった.各症例の穿刺部位, 局麻薬量と麻酔域との関係はほとんど認められなかった. (2) 高齢者D群は「血圧降下群」が49%と多かった.麻酔域がT6以上に拡がった症例は67%, T7以下の症例は41%が「血圧降下群」であったが若年者群と比較して麻酔域と「血圧降下群」との関係は少なかった.また, T6以上に麻酔域が拡がった症例では穿刺部位はL2~L3が多かったが局麻薬量, 身長には差がなかった. (3) 高齢者B群は「血圧降下群」が15%と少なく麻酔域と「血圧降下群」との関係は少なかった.各症例の穿刺部位, 局麻薬量と麻酔域との関係はほとんど認められなかった.以上のように高齢者D群, B群の「血圧降下群」の割合は著しい差を認めた.
  • 柴田 実, 佐藤 源一郎, 山崎 敏浩, 定本 貴明, 遠山 正博, 岡田 正, 上野 幸久, 跡部 俊彦
    1986 年46 巻5 号 p. 711-714
    発行日: 1986/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    心筋梗塞で入院中に偽膜性大腸炎を合併した症例を報告する.症例は83歳男性, 心筋梗塞, うっ血性心不全にて入院した.肺炎合併の為塩酸セフォチアム投与したが, 第7病日両上肢に紅斑出現, 塩酸セフメノキシムに変更した.第17病日下血あり, 第23病日大腸内視鏡検査施行, 偽膜性大腸炎と診断し塩酸バンコマイシン投与を開始した.症状やや改善したが第26病日心筋梗塞再発し死亡した.偽膜性大腸炎は重篤な基礎疾患を有する高齢者に抗生物質投与時生じやすく, 高齢者に抗生剤投与中下血が見られた場合, 本疾患を念頭において内視鏡検査を試みる必要がある.
  • 伊藤 真一, 宮坂 圭一, 小松 隆, 武中 泰樹, 小笹 潔, 石川 昌澄, 平原 昭, 藤沢 守男, 菱田 豊彦, 鈴木 眞
    1986 年46 巻5 号 p. 715-718
    発行日: 1986/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    我々は, 脳動脈硬化症で加療中の70歳, 男性に健康診断目的で施行した上部消化管造影で発見し得た食道重複症の一例を経験したので報告する.食道造影では, 本来の食道より分かれて, 食道に隣接して走行し, 下方で再び食道に交通する約3cmの管状の所見がみられた.内視鏡検査では, 本来の食道から分岐する管状の平滑な内腔が認められた.管状部の生検組織標本では, 健常の食道粘膜と同様であった.本例は赤星らの分類ではTub ID型に属し, 本邦では本例を含め3例が報告されているにすぎない.
  • 川内 章裕, 戸塚 大輔, 笠間 毅, 福島 俊之, 西方 光, 松村 堅二, 杉崎 徹三, 高橋 昭三, 石井 誠, 呉 順美, 中野 幾 ...
    1986 年46 巻5 号 p. 719-758
    発行日: 1986/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
  • 陳 威伸, 石田 珠明, 斉藤 裕, 矢内原 巧, 中山 徹也, 津嶋 秀史, 山城 元敏, 飯島 忠, 虫明 孝明, 山本 登, 高場 利 ...
    1986 年46 巻5 号 p. 759-762
    発行日: 1986/10/28
    公開日: 2010/09/09
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