昭和医学会雑誌
Online ISSN : 2185-0976
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46 巻, 6 号
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  • 石川 自然
    1986 年 46 巻 6 号 p. 763-768
    発行日: 1986/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
  • 副島 和彦, 神田 実喜男
    1986 年 46 巻 6 号 p. 769-772
    発行日: 1986/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
  • 北野 新弓
    1986 年 46 巻 6 号 p. 773-782
    発行日: 1986/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    嚥下運動と年齢との関係を明らかにするために, 高齢者における下咽頭収縮筋の筋線維構成を比較検討するとともに, 組織変化の観察を行った.研究対象ならびに方法: 研究対象は30歳~87歳 (平均年齢68歳) の解剖実習屍19体 (男性13体, 女性6体) から得られた下咽頭収縮筋で, その甲状部と輪状部から組織片を採取, フォルマリン再固定, 水洗, 脱水, フェロイジン包埋, 20~25μ薄切, H.E.染色を施した。筋線維数の算定はSampling method, 筋線維の太さの計測は画像解析装置によった.結果: 1.筋層の厚さは男性では甲状部の方が輪状部よりも厚いものが多く, この傾向は高齢者で著明であったが, 女性では全年代において著明であった.2. 1mm2中の筋線維数は, 舌骨上筋群と比較して甲状部は多く, 輪状部は差が少なかったが, 甲状部は男女とも高齢者で多くなる傾向が見られた.3.筋線維の太さは, 舌骨上筋群中最小の茎突舌骨筋に比べて甲状部は小, 輪状部はほぼ等しかったが, 70歳以上で小となり, この傾向は甲状部で著明であった.4.筋線維の太さの分布型は, 甲状部では頻度の高い左方推移型と正規分布型が, 輪状部では低頻度の右2峰型がそれぞれ他よりも多く, 両者間の年齢的特徴の相違が考えられた.5.筋線維の太さと1mm2中の筋線維数との問には甲状部, 輪状部とも順相関の関係が認められ, 加齢的に筋線維比較的大で1mm2中の筋線維少数, 比較的小で多数, 比較的小で少数の順となる傾向が認められた.6.密度は男女とも舌骨筋群中最も低い筋と等しく, 輪状部は甲状部よりもまさるが, 加齢的減少の傾向を示し, 高齢者では甲状部の方がまさる傾向を示すものが認められた.7.病理所見として, 筋線維については甲状部では集団性筋萎縮が半数例に, 輪状部では散在性筋萎縮と脂肪細胞出現が過半数例にそれぞれ認められた.間質結合組織の増加は両部とも多くの例に認められたが, 輪状部の方が多くて強く, 甲状部では血管周囲細胞浸潤が1/3例に認められた.
  • 金子 秀平
    1986 年 46 巻 6 号 p. 783-796
    発行日: 1986/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    本邦の零細な建設業に従事する事業主・自営業者 (一人親方) ・労働者の死亡や罹患特性を明らかにした研究はない.著者は (1) 全死因調査, (2) 脳血管疾患罹患調査, (3) 部位別悪性新生物死亡調査を実施し, 零細な建設労働者の癌・脳卒中特性を明らかにしたので報告する.対象は, 国勢調査産業分類・中分類「建設業」に従事し, 東京都に在住する作業員で構成する東京土建国民健康保険組合員本人 (男) 延べ127, 473人である.調査期間は1981年より1985年までである.死因の把握は死亡診断書, 診療報酬明細書にて実施し, これを国際疾病分類第9回修正分類に基ずいて分類した.脳血管疾患の罹患の把握は, 傷病手当金申請書にて実施し, 脳出血, 脳梗塞, くも膜下出血の3病型について検討を加えた.なお, 死亡調査, 脳血管疾患罹患調査とも診断名不明確なものについては直接主治医に問い合わせて確認し, 問い合わせ不可能であったものについては今回の分析から除外した.分析方法は職業・産業別入口動態, 東京都衛生年報を用いて期待値を算出し, 標準化死亡比 (SMR) , 標準化発生比 (SIR) を求め, 有意差の検定はMantel-Haenszel法によった.得られた結果は以下の通りであった. (1) 死亡総数411中悪性新生物141 (34.3%) で第1位であり, 次いで脳血管疾患77 (18.7%) , 心疾患51 (12.4%) であった. (2) 調査対象集団全体は, 全国同種の職業・産業就業者と比較して悪性新生物, 脳血管疾患のSMRが有意に高いことを認めた.職種別には, 左官・塗装の60歳以上に悪性新生物のSMRが有意に高いこと, とび・土工で40~59歳に脳血管疾患のSMRが高いことを認めた. (3) 部位別悪性新生物死亡は, 有意ではないが鼻腔・副鼻腔癌に調査対象集団全体で東京都民 (男) より約3倍 (SMR=3.10) の死亡率を認めた.職種別には, 塗装で膵癌のSMR (=4.05) が有意に高く, さらに有意ではないが左官の食道癌 (SMR=4.26) , 塗装の肝癌でSMR (=2.39) が高くなる傾向を認めた. (4) 脳血管疾患の病型別罹患数は, 脳梗塞135 (64.6%) で第1位であり, 次いで脳出血53 (25.4%) , くも膜下出血21 (10.0%) であった. (5) 職種・病型別には, とびの全脳卒中, 脳出血が他職種と比較してSIRが有意に高いことを認めた.以上の結果より, 調査対象集団の今後の健康管理には悪性新生物, 脳血管疾患が重要であり, 職種では塗装・左官の悪性新生物, とび・土工の脳血管疾患に労働衛生的方策を含めた予防対策が必要であるとの結論を得た.
  • ―走査型電顕による観察―
    福屋 安彦
    1986 年 46 巻 6 号 p. 797-808
    発行日: 1986/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ヒト12例 (年齢2~46歳) の鼠径部から採取した皮膚片に単一方向の張力を加え, 断裂するまでの皮膚表面レリーフの経時的変化を, アセチルセルロースフィルムによるレプリカ法とその走査型電顕所見により観察し, さらにその皮膚の構造学的変化を光顕にて観察し比較検討した.すなわち張力方向として雛襲に沿った横方向とその直角の縦方向をとり, 張力速度は20mm/min, 40mm/minと各々条件を換えて観察した, その結果, 単位幅あたりの断裂時の張力は平均0.774kg/mm, 最大伸び率は平均83.5%で性差・年齢差に著変はなく, 張力方向・張力速度に関しても有意差はなかった.電顕観察によると, 弛緩時の皮膚表面レリーフは割合鋭利な切れ込みの比較的直線的な主皮溝が, 互いに垂直あるいは斜めに交又して, 四辺形や三角形の小区画を形成し, さらにこの主皮溝よりもやや短く細小の副皮溝が主皮溝と種々の方向に交又して互いに大小不同の不正形の小区画を作っていた.ところが小皮膚片に張力を加えていくと, すべての主皮溝の走行はしだいにその張力方向へ並列し, ついには平行線状になった.それに伴い四辺形や三角形の小区画もその方向に扁平化ししだいに紡錘状へ変形していった.また弛緩時には不明瞭であった副皮溝は, 張力の増加につれて深さを増し主皮溝のように並列化しついには後者と区別が難しくなった.性差・年齢差による変化, 張力方向・張力速度による差異はほとんど認められなかった.この変化を光顕で観察すると, その張力方向に沿った縦断面では弛緩時に比べて皮溝・皮丘, 真皮乳頭の凹凸が消失し, 表皮のうねりは平坦化し, 真皮の膠原線維・弾性線維などはその張力方向に引き伸ばされ並列化した.一方横断面では逆に皮溝・皮丘, 真皮乳頭の数・大きさとも鮮明化し, 真皮の膠原線維は蜂巣状の形態を示した.弾性線維の変化は少なかった.以上のことより, 皮膚片にかかった張力は膠原線維を主とする真皮層をその方向に伸展させ, それが真皮乳頭部を変形させ, 真皮乳頭部furrowと固着している皮溝部に影響したため, 上述したレリーフの変化が出現したと考える.
  • 村上 雅彦, 鵜沢 龍一, 高木 康
    1986 年 46 巻 6 号 p. 809-818
    発行日: 1986/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    悪性疾患を診断するにあたって, 腫瘍マーカーの有用性および限界を知り, 多種マーカー同時分析による有効性を検討するために, Carcinoembryonic antigen (CEA) , α-Fetoprotein (AFP) , Tissue polypeptide antigen (TPA) , Immunosuppressive acidic protein (IAP) , Carbohydrate antigen 19-9 (CA19-9) , Ferritin (FER) , β2-Microglobulin (BMG) の7種の腫瘍マーカーの血清中濃度を測定した.対象症例は, 胃癌146例, 大腸癌97例, 膵癌6例, 胆管癌10例, 肝細胞癌10例, 乳癌43例, 食道癌14例, 肺癌20例, 甲状腺癌6例の悪性疾患群352例, 良性消化器疾患25例, 良性肝・胆・膵疾患36例である.検討にあたっては, 各原発巣別および各種瘍マーカー別に感度と特異性を求め, さらに感度と偽陽性率の差を陽性指標 (PI) とし, その結果を特異性で割ったものを診断有用度 (DI) として用いた.
    多種マーカー同時分析が有効と思われたのは, 胃癌: CEA+CA19-9+BMG (感度45%.DI値0.40) 大腸癌: CEA+IAP (感度70%.DI値0.69) 食道癌: CEA+IAP+BMG (感度64%.DI値0.54) 胆管癌: CA19-9+FER (感度100%.DI値0.57) 膵癌: CEA+TPA (感度83%.DI値0.95) 肺癌: CEA+IAP (感度70%.DI値0.54) であった.甲状腺癌・乳癌では, 今回の腫瘍マーカーでは満足すべきものはなかった.肝細胞癌は, AFP単独で十分な結果をえた.また, 再発癌においては, 同時分析の意義はないと思われた.全癌症例の検討では, CEA+TPA+BMGで感度53%, DI値0.35であり, 有用と思われた.
    早期癌診断に関しては, 肺癌においてCEA+IAPの組み合わせで有用性が示唆されただけであるが, そのPI値も低く, 腫瘍マーカーによる早期癌診断の限界を再認識させられた.
  • 原口 和久
    1986 年 46 巻 6 号 p. 819-838
    発行日: 1986/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    口唇・口蓋形成術が, 口唇・口蓋裂を有する患者の顔面, 特に上顎の成長・発育に如何なる影響を与えるか, これ迄種々の研究報告があるが, その多くはセファログラムを用いた側面からの観察による, 上顎の上下, 前後方向に関する報告であり, 上顎横方向の成長に関する報告は少ない。そこで著者は口唇・口蓋裂患者の口蓋形成術の術後の上顎横方向の成長の臨床的研究を行ったので報告する.〈研究対象ならびに観察方法〉対象は生後平均114.5日に鬼塚法による口唇形成術, 硬口蓋閉鎖術を受け, 生後平均388.4日に口蓋形成術を受けた片側口唇・口蓋裂患者10例である。観察方法は, 口蓋形成術時に後鼻棘に鋼線を刺入固定し, 術直後, 術後約1年, 術後約3年に正面セファログラム, ゼロラジオグラフの撮影を行い, 口蓋横径として口蓋裂隙間距離, 裂側・非裂側歯槽内側口蓋横径, 裂側・非裂側歯槽外側口蓋横径, 歯槽内側全口蓋横径, 歯槽外側全口蓋横径, 頭蓋横径として梨状口横径, nasionの高さにおける眼窩内側横径, 眼窩外側横径, 頭蓋横径, 頭蓋最大横径を計測し, 口蓋の成長発育及び健常部の成長と比較検討した.〈結果〉口蓋裂隙間距離は明らかな減少傾向を示した.口蓋横径における裂側・非裂側口蓋横径の成長率に成長の有意差はなかった.頭蓋横径に対する口蓋横径の成長率の有意差はほとんどなかった.これは, 口蓋形成術が口蓋の横方向の成長を妨げるものではなく健常部としての頭蓋の成長に比較しても劣るものではない事を示した。
  • 遠藤 洋臣, 鈴鹿 隆久, Kazuo OKUYAMA
    1986 年 46 巻 6 号 p. 839-847
    発行日: 1986/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    未熟児の血中総蛋白TP, アルブミンAlb, プレアルブミンPA, レチノール結合蛋白RBP濃度を出生時より日齢34まで経時的に測定し, その栄養学的指標としての意義を中心に検討した.対象は在胎週数25~42週の未熟児新生児64例で, そのうちわけは, I群: 出生体重999g以下の超未熟児12例, II群: 1000~1499gのAFDの極小未熟児10例, III群: 1500~2499gのAFD児29例, IV群: 1000~1499gのSFDの極小未熟児6例, V群: 1500~2499gのSFD児7例である.これらの児はI群を除くといずれも呼吸障害, 感染症, 動脈管開存症などを合併せず授乳困難もなかった.出生時の各種血漿蛋白については, TPおよびAlbが出生体重および在胎週数と正の相関があることを認め, 在胎週数により高い相関を認めた.PAは出生体重および在胎週数と有意の相関を認めなかったが, SFD群はAFD群に比し有意に低値であり, また, 体重からみた胎児発育状態と有意の相関を認めた.RBPもSFD群がAFD群に比し低値の傾向があったが, 有意でなかった.生後早期の各種血漿蛋白については, AFD群が生理的体重減少の影響を受け血中濃度は増加したが, SFD群は逆に減少した.また, TPおよびAlb変化率と体重変化率との間に有意の負の相関を認めた.その後の各種血漿蛋白の変化について調べたところでは, TPおよびAlbが減少傾向を示す1群を除けば有意の変化を認めず, 蛋白カロリー摂取量との関係もなかった.PAは蛋白摂取量が少ない1群を除けば, 蛋白摂取量が29/kg/日を越えるようになると全例有意の上昇を認めた.また, カロリー摂取量とも有意の相関を認めた.RBPは減少傾向を認めた1群を除いては, 各群とも有意の変動は認めず, 蛋白カロリー摂取量との関係もなかった.以上の検討により, 妊娠後期における胎児の栄養学的指標としてPAが最も鋭敏であると考えられた.TP, Albは栄養以外の要因により大きく影響を受ける可能性がある.生後早期には各種血漿蛋白の栄養学的指標として意義は少ないが, それ以後はPAにのみ蛋白カロリー摂取量と関係を認め, 生後の栄養状態を鋭敏に反映すると思われる.TPおよびAlbは指標として鋭敏性に欠け, RBPは蛋白以外の栄養素の影響を受ける可能性がある.
  • 杉内 孝謙
    1986 年 46 巻 6 号 p. 849-856
    発行日: 1986/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    剖検により得られた, 新生児・未熟児の動脈管98例について, 特に動脈管壁内の弾性線維の動態を中心に, 病理組織学的に検索した.98例中, 臨床的に動脈管の開存を認めたものは28例で, 残り70例は臨床的に動脈管開存を認めていない.動脈管開存を認めない群では, その組織像は既知の所見とほぼ一致し, intimal cnshionの出現, 内弾性板の断裂, nucoid substanceの増加等を認めた.これらの所見は, 在胎週数の進行とともに, 強くなる傾向が見られた.臨床的に動脈管開存を認めた群では, 認めない群と比べて, 前述の変化は弱く, それらとは別に壁内の弾性線維の増生を認めた.弾性線維は層形成傾向が認められ, 最終的にsubendotherial elastic laminaを形成している例が見られた.これらの変化は, 生存日数に比例して強くなり, 又, PDA依存性心奇型合併例において著明であった.動物実験を含めた種々の報告によれば, 血管内弾性線維は内部を流れる血流刺激の影響を受けると考えられ, 今回我々が動脈管壁内に認めた弾性線維の変化も, 血流の影響が大きく関与していると思われた.
  • ―負荷タリウム-201心筋シンチグラム, 左室造影, 冠動脈造影による検討―
    野口 澄子, 今野 述, 嶽山 陽一, 新谷 博一, 丸岡 隆芳, 小澤 興
    1986 年 46 巻 6 号 p. 857-863
    発行日: 1986/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    心筋梗塞患者の側副血行路の機能的な役割に関して種々の報告がなされているが, いまだ不明の点が多い.一方虚血性心疾患の増加に伴い, 血行再建術が盛んに行なわれるようになり, その適応決定, 予後判定に際し, 生存心筋の有無を知ることが不可欠となっている.そこで我々は, 負荷201Tl心筋シンチグラム, 左室造影による壁運動の検討から側副血行路と心筋のviabilityの関係を考察した.対象は心筋梗塞患者52例, 男47例, 女5例, 平均年齢55.4歳である.心血管造影を施行し, 側副血行路を〔good〕, 〔poor〕, 〔-〕の3群に分類, 左室壁運動はAHA分類で, norma1, hyper-, hypo-, a-, dyskinesis, aneurysmの6型とした.負荷は坐位自転車エルゴメーターを用い, 負荷漸増法で行なった.負荷中止基準に達した時点で201Tl2mCi静注, 30~60秒負荷を続けたのち, 5方向から撮像を行ない, 1時間の安静後, 201Tl 1mCiを追加静注し, 同様の撮像を行なった.両者を視覚的に比較し, 安静時と負荷時の欠損範囲が不変であった例をI群, 負荷時欠損範囲が拡大した例をII群とした.側副血行路が〔good〕の群では, シンチ所見はI群, II群各々50%ずつであるのに対し, 〔poor〕, 〔-〕では, I群がII群より多かった.シンチ所見と壁運動の対比では, I群で壁運動高度障害例が多く, IIでは軽度障害例が多かった.シンチ所見, 冠動脈造影, 左室壁運動の対比では, 側副血行路が〔good〕, 〔-〕でakinesisを示す割合は, I群ではいずれも半数以上を占めた.また, II群でakinesisを示す割合は側副血行路が〔good〕の方が〔-〕に比し低率であったが, hypokinesisは〔good〕の方が高率であった.シンチ所見が1群で側副血行路が〔poor〕, 〔-〕では正常壁運動を示す例はなかったが, 〔good〕ではI例あり, II群では側副血行路がなくとも1/3の症例が壁運動は正常であった.以上より, 発達のよい側副血行路は少なくとも発達の悪い例に比べると, 安静時の血流を保つためには有効であるが, 運動には対応できない場合が多く, 造影上発達が良くとも心筋のviabilityを保ち得ない例も多く存在することが示された.しかし, その評価には, 冠動脈造影で造影されない微細な血管の問題や, 虚血以外の種々の因子の関与があり, 今後の検討を要する.従って心筋のviabilityの評価には, 冠動脈造影による側副血行路に加えて201Tl負荷シンチ所見, 左室壁運動の対比検討が不可欠である.
  • 鶴岡 正吉
    1986 年 46 巻 6 号 p. 865-869
    発行日: 1986/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ラットの掉尾反射に関与する筋 (M.extensor caudae medialis, ECM) の筋放電量が, 痛みの程度を表現しうる痛覚の指標となることをすでに報告した.本研究は, ECM筋の筋放電量が針刺激効果に対する定量的かつ電気生理学的指標となりうるか否かの検討を行うと共に, 筋放電量を指標とした時の針刺激条件を検討した.実験にはサイアミラル・ソジウム (80mg/kg) で麻酔したウィスター系ラットを用いた.輻射熱法により尾部に熱侵害性刺激を与え, ECM筋から双極電極によって筋放電を記録した.筋放電は30msecの時定数を持つ積分計を介して全波平均積分し, 筋放電開始時より1秒間の積分値をもって筋放電量とした.針刺激には直径0.25mmの1対の鍼灸針を用い, 腓骨小頭より脛骨に平行に5mm遠心部の足三里相当部の皮下に浅く刺入した.針通電は期間5 msecの短形波パルスを用いて種々の刺激頻度で30分間行った.刺激強度は「筋の収縮を引き起こす最小の強さ」とした.刺激頻度50Hzで針刺激を適用した時, 尾部の熱侵害性刺激に対するECM筋の筋放電量は針刺激開始後5分で対照値の約45%に減少した.その後30分間の針刺激期間中ほぼ同程度の抑制率を示した.針刺激中止後, 減少した筋放電量は対照値に回復するまでに約40-50分を要し, 後効果が認められた.種々の刺激頻度で針刺激を行った時, 抑制効果は25Hzまで刺激頻度の増加と共に増大したが, 25Hz以上では抑制効果はほぼ一定となった.針刺激中止後の時間経過は刺激頻度の相違によらず同様に後効果が認められた.以上の結果から, ラットの掉尾反射を利用した針刺激効果の検定において, 足三里相当部に適用した25Hz以上の刺激頻度が良好な針刺激効果をもたらすことが明らかとなった.また, 掉尾反射に関与するECM筋の筋放電量が針鎮痛の定量的かつ電気生理学的指標となりうることが示唆された.
  • 田中 源一, 岡崎 雅子, 坂本 浩二
    1986 年 46 巻 6 号 p. 871-876
    発行日: 1986/12/28
    公開日: 2010/11/19
    ジャーナル フリー
    ラット肝障害模型病像を四塩化炭素 (CCI4) により作成し, 凝固・線溶系の面から検索を行ってきたが, 今回さらに血小板機能の変動について検索した.血小板機能は全血凝集測定装置を用いて, 全血中の血小板凝集およびATP放出を同時測定した.惹起物質はcollagen (最終濃度2μg/ml, 5μg/ml) およびADP (最終濃度5μM, 10μM) を用いた.併せて血小板数とthromboelastogram (TEG) を測定し, 血小板動態を総合的に把握した.肝障害ラットはCCl4とオリーブ油を等量混和後, 単回経口投与 (CCl4: 1.5m1/kg, 3ml/kg) して作成し, 経時的に血小板への影響を調べた.その結果, 血小板凝集能はcollagen惹起において一部のCCl4投与群で低下傾向がみられたが, 総合的見地からは, 明らかな影響は認められなかった.血小板ATP放出でもCCl4投与で若干の変動がみられたが, 一定した傾向は示さなかった.一方, TEGにおいて一部のr値 (反応時間) , k値 (反応速度) の延長をみたが, これらはオリーブ油の影響と血小板以外の凝固系の変動が加味されたことによるものと推察された.
  • 山名 裕見, 立川 哲彦, 吉木 周作, 塩川 章, 田代 浩二, 尾谷 博庸, 高橋 誠
    1986 年 46 巻 6 号 p. 877-883
    発行日: 1986/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    食道原発の小細胞性未分化癌 (以下, 小細胞癌) は稀な腫瘍であり, その予後は極めて不良である.最近, われわれは66歳女性の本症例を経験し, 各種材料について病理組織学的に検索する機会を得たので報告する.生検時, 病理診断名はoat cell type小細胞癌で, 電顕的に腫瘍細胞内に神経分泌顆粒 (N.S.G.) を認めた.上記診断のもとに放射線治療を施し, 腫瘍の縮小化を認め, その後, 外科手術療法を行なった.手術時, 局所の腫瘍はコントロールされていたものの, 3群を越えたリンパ節転移がみられた.手術材料の病理所見は生検時とは異なり腫瘍細胞に大型化がみられた.電顕ではN.S.G.をみたが, その減少傾向があった.その後, 患者は腫瘍の全身転移および呼吸不全のため全経過11カ月にて死亡した.剖検時, 腫瘍細胞は光顕的に手術時のものと似ていたが.電顕的にN.S.G.がみつからなかった.経過中, 腫瘍細胞にみられた形態的変化は以前から報告されている本腫瘍の生物学的特徴を考慮すると, 放射線および化学療法による修飾によると考えられた.
  • 楠本 盛一, 生田目 公夫, 宮山 信三, 幕内 幹男, 浅川 清人, 高原 和享, 李 健次, 福本 泰知, 坂本 道男, 渡辺 糺, 鈴 ...
    1986 年 46 巻 6 号 p. 885-889
    発行日: 1986/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    胃平滑筋肉腫の2例について報告する.症例1は, 74歳男性.黒色便を主訴に来院.内視鏡的生検にて胃平滑筋肉腫と診断.胃切除術を施行したが, 肝転移により, 術後2年1カ月で死亡.症例2は, 44歳男性.左上腹部腫瘤を主訴に来院し, 生検にて胃平滑筋肉腫と診断胃切除と肝左葉切除を施行したが, 術後88日で死亡.以上の2症例について, 胃平滑筋肉腫の診断および治療につき, 文献的考察を加え報告する.
  • 大橋 良子, 奥羽 徹, 梶田 修明, 塚原 直人, 井上 道雄
    1986 年 46 巻 6 号 p. 891-893
    発行日: 1986/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    睡眠時紡錘波のvariationについては, Gibbsesの記載をはじめ諸家の報告があるが, その周波数に着目した研究は少ない.一方, 徒来より非定型精神病の脳波異常については, 幾多の論議が交わされている, しかしその睡眠時の脳波に焦点を絞って検討されたものはやはり数少ない.今回我々は非定型精神病の一例の睡眠脳波を記録する機会を得た.その所見は, 臨床的な急性増悪期に一致して, 睡眠段階に不相応な周波数の紡錘波が出現するという珍らしいものであった.そこで本症例の脳波の一部を呈示するとともに, 若干の考察を加えることにした.
  • 山本 純, 山田 眞, 河村 一敏, 新井 一成, 鈴木 利之, 高場 利博
    1986 年 46 巻 6 号 p. 895-898
    発行日: 1986/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    1984年3月, 56歳の男性が, 心窩部痛を訴えて当病院に入院した.内視鏡検査で, 上門歯列から35cmの部位にびらん面を認め, 生検の結果扁平上皮癌と診断された.X線検査では顆粒状, 不整粘膜皺壁が認められた.ルゴール染色法では病変部を示す僅かに陥凹した明瞭な不染色域として描出された.5月16日昭和大学にて食道全摘, 胃管による食道再建術が施行された.組織所見は大きさ22×28mmの中等度分化型扁平上皮癌で深達度mm, ly (-) , v (-) , n (-) , Mo, Pl0のstage O癌であった.早期食道癌発見のためには, X線検査を注意深く行い, ルゴール染色法を併用したパンエンドスコープによる内視鏡検査と生検が極めて有用であった.
  • 芝宮 三枝子, 片山 雅子, 小川 みのり, 村井 緑子, 保坂 進一, 野崎 重之, 大田 ゆみ, 大岡 亜夕子, 佐々木 聡, 末木 博 ...
    1986 年 46 巻 6 号 p. 899-906
    発行日: 1986/12/28
    公開日: 2010/09/09
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