昭和医学会雑誌
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47 巻, 1 号
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  • 安井 昭, 西田 佳昭, 熊谷 一秀
    1987 年 47 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 1987/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
  • 副島 和彦, 神田 実喜男
    1987 年 47 巻 1 号 p. 7-10
    発行日: 1987/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
  • 宮下 幸夫
    1987 年 47 巻 1 号 p. 11-21
    発行日: 1987/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    著者は1969年以来leucineが血液凝固能を亢進をすることを報告してきた.それが機序としてはVitamin K依存性凝固因子の動員或は活性の上昇であろうとした.今回は蛋白の合成において細胞の代謝の面を阻害するethionineと細胞の機能の面からこれを阻害するpuromycinとを用いて実験を行ない, leucinがethinoine並びにpuromycinの蛋白合成低下に拮抗し, これを改善することを認めた.leucineによるvitamin K依存性凝固因子の動員或は活性の上昇は今回の実験及びすでに発表したcoumarin誘導体との拮抗作用を加味して思考するにleucineが直接vitamin K依存性凝固因子の動員, 活性の上昇を来すのでなくmetabolic interconvsieronにおけるvitamin K cycleの促進並びに肝細胞内凝固蛋白の合成促進に作用するL factorとも言うべき蛋白質或はポリプチドを活性化せしめる事によりそれらの作用をつかさどるのではないかと推察される.
  • 張 光麗, 三枝 利徳, 諸星 利男
    1987 年 47 巻 1 号 p. 23-29
    発行日: 1987/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    14歳以上の無選択58例について, 剖検中の甲状腺穿刺吸引細胞診と病理組織学的診断との比較検討を行なった.また当教室における27年間の14歳以上1898剖検例の甲状腺病理形態学的検査結果についても検索した.甲状腺悪性腫瘍の穿刺吸引細胞診の正診率は66.7%であり, 正診の12葉悪性甲状腺腫瘍で結節を触れたものはわずか5葉であった.結節を探ぐれないものと5mm以下の微小癌に対して細胞診診断はむずかしいと考えられ, 甲状腺穿刺吸引細胞診は多方向吸引を行うべきである.甲状腺穿刺吸引細胞診で癌細胞を確認するが病理組織学的検査で癌がみられない場合には微小癌に対する詳細な臨床的追求が必要であると考える.さらに剖検例の検索では, 各種甲状腺疾患の頻度は8.2%で年齢と共に甲状腺疾患の頻度が増える.甲状腺癌の頻度は1.9%で, 甲状腺微小癌は0.9%であった.また40歳代と80歳代に甲状腺癌の発生が高かった.甲状腺癌の組織型は, 乳頭腺癌52.8%, 濾胞腺癌44.4%であったが, 10mm以下の微小癌には乳頭腺癌が70.6%で乳頭腺癌が多かった.甲状腺癌巣の大きさおよび癌被膜の有無は癌巣の数との間に関係は認められない.転移性甲状腺腫瘍の原発臓器別転移頻度は胸腺癌, 頭頸部癌, 副腎癌, 骨肉腫, 乳癌, 肺癌などの順であった.腺腫様甲状腺腫と甲状腺癌を混在しているのは25%と高頻度である.したがって臨床で腺腫様甲状腺腫とされる症例には定期的に経過観察を行う必要性があると考える.
  • 木内 祐二, 川澄 正一, 増田 建一, 福島 重宣
    1987 年 47 巻 1 号 p. 31-35
    発行日: 1987/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    Succinylcholine (SCC) 2回反復投与後の血漿Na, K濃度, 動脈血PaCO2, pH, 心拍の変動を愛知県がんセンター手術患者を対象に検討した.麻酔は, NLA変法で行い, droperidol 0.25mg/kg, pentazocine 1mg/kgを投与し, 導入薬としてthiopental 100-150mgを用いた.SCCは入眠後1mg/kg初回投与, 挿管2分後に0.5mglkg追加投与した.血漿Naは導入後経時的に低下した.血漿Kは導入前に比較し, 導入後0.07mEq/l低下傾向を示したが, SCC初回投与後0.08mEq/1, 追加投与後0.28mEq/lいずれもSCC投与前に比較し, 有意に上昇した.挿管操作により有意なPaCO2上昇, pH低下, 挿管後の調節呼吸により有意なPaCO2低下, pH上昇がみられたが, 血液ガスデータと血漿Na, K濃度との相関は認められなかった.心拍数はSCC追加投与により有意に減少したが, 最も強い徐脈でも45-50回/min程度であった.一過性の心室性および上室性期外収縮が初回投与後22例中3例, 追加投与後15例中2例でみられた.徐脈, 不整脈発生と血漿Kとの相関は認められなかった.以上の結果より, NLA変法においてはSCC 1mg/kg初回投与, 0.5mg/kg追加投与による血漿Kの上昇, 不整脈の出現は, 軽度であることが示唆された.
  • 阿部 浩一郎, 眞 有美, 笠原 多嘉子, 坂本 浩二
    1987 年 47 巻 1 号 p. 37-42
    発行日: 1987/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    現在臨床に於て, 消炎酵素製剤の使用頻度は高いにも拘らずその作用機序は明確な説明を得るに至っていない.一方炎症反応に於てカリクレイン・キニン系の関与が考えられるが, その測定の困難さ故に未知の部分も多い.またカリクレイン・キニン系は血液凝固, 線溶系とも密接な関連を持ち, それらと重要な生体連鎖を形成している.今回我々は, Aspergillus melleusの産生するプロテアーゼで, 現在消炎酵素製剤として用いられているSeaprose S (SAP) をラットに静注し, カリクレイン・キニン系及び凝固, 線溶系の変化を経時的に測定し, SAPの作用機序及び血液に対する影響を検討した.実験には70匹のSD系雄性ラット (体重200~2509) を用い, 被験群にはSAPの生食溶解液 (4mg/mlに調製) を尾静脈より4mg/kg投与した.対照群には生食のみを0.2ml/body同様に投与した.投与後1, 3, 24, 72時間後にペントバルビタール (30mg/kg) の軽麻酔下 (腹腔内投与) に開腹し, 腹部大静脈より採血後直ちに3.18%クエン酸ナトリウムと9: 1の割合で混和し, 3000rpm, 15分, 4℃にて遠心分離後血漿を採取し測定に使用した.SAP投与によりカリクレイン・キニン系では高分子キニノーゲン量が1及び3時間値で著明な減少を示した.この時低分子キニノーゲン量, プレカリクレイン活性及びキニナーゼII活性には対照群との間に有意差は認められなかった.凝固, 線溶系では凝固因子のフィブリノーゲン量及び第XIII因子の低下に伴い, 1時間値でPT, PTTの延長を認めたが線溶系因子であるプラスミノーゲン活性に変化はなかった.また血中プロテアーゼインヒビターであるアンチトロンビンIIIは1及び3時間値で, α2-プラスミンインヒビターは1, 3及び24時間値で活性低下を示した.この活性低下はプラスミノーゲン活性に変化がなかった事, 凝固因子の回復が速かった事実を考えると, 凝固, 線溶系の動きに連動した為よりむしろSAPに結合した為の影響が大きいと推察される.またこれら一連の変化は高分子キニノーゲン量の著減を除き全て生理的正常域内の変化に留まった.以上の結果より.SAPの静注により高分子キニノーゲン量の特異的減少が認められたが, 凝固, 線溶系に対する影響は軽微であった.この特異的作用がSAPの抗炎症作用の発現に密接に関与すると考えられる.
  • 鶴岡 正吉
    1987 年 47 巻 1 号 p. 43-55
    発行日: 1987/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    皮膚に分布するAβ線維の活動で得られる鎮痛効果を, 熱侵害性刺激によって誘起されたラットの尾逃避反射の潜時, 反射を引き起こす閾温度および逃避反射にあつかる筋放電などを同時に測定して検討した.後肢の足三里経穴に相当する部位に種々の刺激頻度でAβ線維が刺激される程度の強さの刺激を30分間適用すると, 筋放電は刺激期間中抑制され, 刺激中止後も40~50分間その効果は持続した.しかしこの場合, 潜時の延長と閾温度の上昇は認められなかった.筋放電の抑制の程度は, 刺激頻度が25Hzで最大となり100Hzではわずかに減少した.また, Aβ線維のみが活動する刺激強度の範囲では抑制の程度はほぼ同じであり, 刺激強度が強いと抑制効果はわずかに増大した.腓骨小頭で切断した総腓骨神経を三角波パルスで直接刺激し, Aβ線維が興奮する程度の強さで30分間刺激すると刺激の期間中筋放電が抑制され, 刺激中止後40~50分間は効果が持続した.この場合にも潜時の延長および閾温度の上昇は認められなかった.筋放電に対する抑制効果は, 後肢の足三里経穴に相当する部位の電気刺激によって誘起されたAβ活動電位の振幅と総腓骨神経の直接刺激によるAβ活動電位の振幅と総腓骨神経の直接刺激によるAβ活動電位の振幅とが等しい時はほぼ同じであった.後肢のAβ線維を刺激した時, 筋放電に対する抑制効果はオピオイドの拮抗剤のナロキソンで拮抗されなかった.前肢の合谷経穴に相当する部位のAβ線維が活動する強さで刺激した時, 筋放電は30分の刺激期間中抑制され, 刺激中止後も50~60分間後効果が認められた.しかし, 後肢刺激の場合と同様に潜時の延長と閾温度の上昇は認められなかった.前肢のAβ線維刺激による筋放電の抑制はナロキソンによって拮抗された.以上の結果から, 皮膚に分布するAβ線維を刺激した時, 尾逃避反射の潜時の延長 (閾値の上昇) と反射活動 (筋放電) の抑制とはそれぞれ別個に出現し, Aβ線維が活動する程度の刺激では反射活動のみが抑制され, 潜時の延長から推定される鎮痛効果は出現しないこと, また, Aβ線維の活動による反射活動の抑制は末稍の刺激部位によって異なり, 熱侵害性刺激を与えた部位近傍の後肢刺激による抑制にはオピオイドは関与しないが, 遠隔の前肢刺激による抑制効果にはオピオイドが関与することが判明した.
  • その1: 視覚障害児・聴覚障害児の体格 (身長, 座高, 胸囲, 体重, 肩峰幅, 胸郭左右径, 胸郭前後径, 腸骨稜幅) について
    新立 義文, 猪口 清一郎, 沢田 芳男
    1987 年 47 巻 1 号 p. 57-68
    発行日: 1987/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    熊本県の盲学校に在学する児童・生徒111名 (男子: 56名, 女子: 55名) 及びろう学校に在学する児童・生徒212名 (男子: 99名, 女子: 113名) の身長, 体重, 胸囲, 座高, 肩峰幅, 胸郭左右径, 胸郭前後径及び腸骨稜幅を測定し, 次の結果を得た.1.長育: 身長, 座高の男子の発育は, 視覚障害児, 聴覚障害児とも低年齢期においては普通児と比較してさほどの差は見られなかったが, 女子においては二次性徴期に顕著な差が見られた.2.周囲径: 胸囲の発育では, 男子において聴覚障害児の13歳以後に発育の遅れがみられたが, 女子では逆の現象が見られた.3.量育: 体重の発育では, 視覚障害児, 聴覚障害児とも, 男子では普通児との差はなく, 加齢に伴う漸増の傾向が見られた.女子においては, 二次性徴期の11歳12歳にかけて発育の遅れが見られた.4.骨格系の発育: 肩峰幅, 胸郭左右径, 胸郭前後径, 腸骨稜幅においては, 女子の腸骨稜幅において視覚障害児, 聴覚障害児とも普通児よりも二次性徴期に発育の遅れが見られたが, その他の項目では, 男女とも普通児と同一の発育であった.5.Rohrer's Indexの変化: 加齢に伴って, 男子では視覚障害児, 聴覚障害児とも普通児と同様の加齢的変化傾向を示したが, 女子では普通児よりも二次性徴期以後加齢に伴って漸次大きな値になる傾向を示した.
  • その2: 視覚障害児・聴覚障害児の周囲径, 皮下脂肪厚及び周囲径比について
    新立 義文, 猪口 清一郎, 沢田 芳男
    1987 年 47 巻 1 号 p. 69-79
    発行日: 1987/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    熊本県の盲学校及びろう学校の児童・生徒男女6: 歳から18歳までの323名の周囲径及び皮下脂肪厚の加齢発育の傾向について検討し, 次のような結果を得た.1.周囲径: 上腕囲, 前腕囲, 大腿囲及び下腿囲について検討した.普通児と比較すると, 視覚障害児, 聴覚障害児とも男子では差が認められなかったが, 女子では上肢の発育が普通児に比べて劣性であった.2.皮下脂肪厚: 上腕背部, 肩甲下部, 臍部, 腸骨棘部で検討した.体幹では視覚障害児の方が聴覚障害児よりも脂肪沈着顕著で, ことに女子の第二次性徴期以降で著しかった.3.周囲径比: 上腕囲/前腕囲比ならびに下腿囲/大腿囲比を検討した.上腕囲/前腕囲比は普通児に比べて, 視覚障害児, 聴覚障害児とも男子では第二次性徴期に大, その後は差が見られなかった.女子では一般に視覚障害児は小, 聴覚障害児は大であった.また, 下腿囲/大腿囲比は普通児に比べて, 視覚障害児では第二次性徴期以降, 男子は小, 女子では大であったが, 聴覚障害児では一般に男子は小, 女子では差がみられなかった.
  • VI―強縮によって減少した収縮高の回復に対する血管拡張剤, 神経ペプチドの作用
    桑澤 二郎, 佐藤 三千雄, 武重 千冬
    1987 年 47 巻 1 号 p. 81-88
    発行日: 1987/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    筋が持続的な収縮状態に陥ると筋に疼痛が発生し, その筋への施針で疼痛が軽減することが知られている.そのモデルとしてモルモットの腓腹筋に, 強縮刺激をあたえ単一収縮高を減少させた後, 施針を行なうと単縮高の回復が促進されることが見出されて来た.この施針の効果は除神経やcapsaicin, atropineなどの投与で出現しなくなるので, 施針によって軸索反射が誘起され, これが筋の血管に分布するコリン作動性神経の末端に働き, 筋の血流が改善されると想定された.本研究はこの想定を確かめるため, 生理的食塩水, 血管拡張剤, あるいは軸索反射を誘起すると想定される一次性求心線維の伝達物質のsubstance Pやcalcitonin gene-related peptide (CGRP) を筋に分布する動脈に注入して, 強縮後減少した単縮高に対する作用を検した.実験は, 両側のモルモット腓腹筋を露出し, 筋に電気刺激を与え, 単一収縮をトランスデューサーで記録した.強縮刺激は10Hzで約1時間与えた.薬物の注入は一側の大腿動脈に向けて細いカテーテルを挿入して行ない, 他側は対照とした.その結果, 1) 強縮によって単一収縮高は減少するが, 施針を行なうと減少した単縮高の回復促進が見られた.この揚合, 施針の方向が筋線維の走行と平行する時には促進効果は少ないが, 斜めに施針を行ない施針が筋全体にわたる時には効果は著明になった.2) 施針と同様の効果は腓腹筋への血管に0.3~1.0mlの生理的食塩水を注入すると出現し, それ以下の量では出現しなかった.そこで0.1mlの生理的食塩水に60μ9のisoproterenolか, 10ngのprostaglandin E2を溶解し動脈に注入すると施針と同様の効果が得られた.3) d-tubocurarineを前投与し運動神経の活動を遮断した後, 坐骨神経の末梢側を電気刺激すると施針と同様の効果が出現した.この効果は, atropineで遮断された.4) substance P (10nM) を注入しても施針と同様の結果が出現したが, これはatropineで遮断されなかった.CGRPの注入でも施針と同様の効果が出現し, これはatropineで遮断された.以上の結果から, 強縮筋への施針によって強縮後の単縮高の回復が促進されるのは, 施針によって軸索反射が誘起され, コリン作動性神経の末端からacetylcholineの遊離が促進され, 強縮によって減少した血流が改善されることで出現し、この軸索反射に与る一次性求心性線維の伝達物質は, CGRPである可能性が示唆された.
  • 米良 孝志
    1987 年 47 巻 1 号 p. 89-97
    発行日: 1987/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    視床下部腹内側核 (HVM) は, 針麻酔の鎮痛 (針鎮痛) を発現する下行性痛覚抑制系 (DPIS) として働き, HVMを電気刺激して出現する鎮痛 (HVM-SPA) は中脳中心灰白質腹側部 (V-PAG) の局所破壊で部分的に消失し, さらにV-PAGを刺激して現れる鎮痛 (V-PAG-SPA) はセロトニン系の拮抗剤で拮抗される事などが本教室の研究で明らかにされている.しかし, V-PAG破壊後も残存したHVM-SPAの鎮痛発現機序についてはまだ明らかにされていない.本研究では, この鎮痛が傍巨大神経細胞網様核 (NRPG) を介するノルアドレナリン系のDPISで出現する可能性を検索した.実験にはラットを用い尾逃避反応の潜伏期を痛みの闘値として鎮痛を測定した.脳の刺激は脳定位固定器で所定の部位に電極を挿入して行った.脊髄クモ膜下腔への薬物の投与は予め同腔に挿入したカテーテルを介して行った.実験終了後, 脳の刺激部位は組織切片で確認した.針鎮痛はHVMの局所破壊で出現しなくなり, HVM-SPAはNRPGの破壊で部分的に出現しなくなった.また, HVMを刺激するとNRPGから誘発電位が出現した.NRPGを刺激すると刺激の期間中にのみ現れる鎮痛 (NRPG-SPA) が発現し, この鎮痛はノルァドレナリンの拮抗剤のフェントラミンの脊髄クモ膜下腔への投与で完全に拮抗されたが, セロトニンの拮抗剤のメチセルジッドでは全く影響されなかった.一方HVMと線維連絡が認められているPBCを破壊したが, 針鎮痛やHVM-SPAには全く影響がなかった.しかし, PBCを刺激すると刺激の期間中にのみ現れる鎮痛がみられた.以上の結果からV-PAG破壊後も残存するHVM-SPAは, NRPGを介するノルァドレナリン系のDPISによって発現する事が明らかとなった.したがって針鎮痛のDPISには, V-PAGを介するセロトニン系に加えてノルァドレナリン系のDPISがNRPGを介して働くことが明らかとなった.PBCの刺激で鎮痛が現れたが, PBCは針鎮痛とは直接関係のない鎮痛の発現に関与すると考えられる.
  • 大久保 欣一
    1987 年 47 巻 1 号 p. 99-106
    発行日: 1987/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ラットの足三里の経穴に相当する前脛骨筋を低頻度刺激して現れる針麻酔の鎮痛 (AA) 及び鎮痛抑制系破壊後経穴でない部の腹筋に経穴刺激と同じ刺激を与えて現れる鎮痛 (NAA) はともに下垂体の除去で出現しなくなり, これらの鎮痛は最終的には痛覚の下行性抑制系の活動で出現する.本研究は下垂体から遊離された物質が単純に下行性抑制系を働かせるのか, 下垂体・副腎系が共同して働くホルモン系によって下行性抑制系が働くかを, 下垂体の除去や副腎を摘出した後の, AAとNAAの変化を経時的に観察して検討を加えた.実験はラットを用い, 痛覚闘の測定は尾の逃避反応によった.また下垂体の除去は経耳的に, 副腎の摘出は開腹して行った.AAは, 下垂体の除去, 副腎の摘出の何れでも除去, 摘出してから6時間後には増大して出現し, 12時間後には出現しなくなった.増大して出現したAAはナロキソンでもデキサメサゾンでも拮抗されなかったが, AAの下垂体に到る発現経路にあたる中脳中心灰白質外側部の破壊で出現しなくなり, またセロトニン下行性抑制路の作用に拮抗するメチセルジッドで正常のAAと同じ程度拮抗された・NAAも下垂体の除去, 副腎の摘出6時間後では増大して出現したが, その消失の時間的経過はAAに比べて長く, 24時間を要した.また下垂体の除去後の増大は12時間続いたが, 副腎の摘出では6時間であった.副腎摘出1週間後にコルチコステロンを投与したが針鎮痛は出現しなかった.下垂体除去, あるいは副腎摘出6時間に現れる鎮痛は下垂体や副腎がなくとも出現するので, 針鎮痛の下垂体に到る経路の最終部と同定されている視床下部前部の刺激で, 下行性痛覚抑制路の最初の部と同定されている視床下部弓状核に現れる誘発電位で副腎摘出後の経過を検したが変化は現れなかった.以上の結果から下垂体は副腎と共同して働く機序によってAAやNAAの発現にあつかる事が明らかになった.しかし下垂体や副腎が除去された後に現れる鎮痛の発現機序についてはまだ不明である.
  • CTにより両側淡蒼球石灰沈着のみられた一例
    古川 正, 伊東 昇太, 神田 良樹, 河合 真, 豊田 益弘
    1987 年 47 巻 1 号 p. 107-110
    発行日: 1987/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    頭部CTにより両側淡蒼球に著明な石灰沈着を認め, 興味ある臨床症状を示した58歳女性例を診る機会を得たので, ここに紹介する.鑑別診断の結果, 特発性の症例と考えられ, 「特発性, 非動脈硬化性頭蓋内血管石灰沈着」と同義に用いられている「Fahr氏病」との関連を, 一次文献に基づき考察した.
  • 佐野 元春, 坂下 暁子, 友安 茂, 鶴岡 延熹, 成松 博, 中島 宏昭, 井上 恒一, 高場 利博, 杉山 喜彦
    1987 年 47 巻 1 号 p. 111-114
    発行日: 1987/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    47歳, 男性.昭和59年12月, 左肺にcoin lesionを指摘され本学第一内科受診.諸検査の結果hamartomaを疑われ, 昭和60年3月左肺S3領域の部分切除術施行.病理組織像でHodgkin病・nodular sclerosisと診断され, 同年4月16日第二内科に転科した.理学的に表在リンパ節および肝脾は触知しない.リンパ管造影でTh11~12のリンパ節にfilling defectを認めたが, Gaシンチ, CTでは確認されなかった.病期分類stage II Eと考え, vincristine, procarbazine hydrochloride, methotorexate, prednisoloneによる多剤併用療法を行い, 現在, 外来管理中である.non-Hodgkinリンパ腫と異なりHodgkin病がリンパ節以外に初発することは稀で, 肺に初発したことは特記すべきことである.
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