昭和医学会雑誌
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47 巻, 2 号
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  • 副島 和彦, 神田 実喜男
    1987 年 47 巻 2 号 p. 149-152
    発行日: 1987/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
  • 菱田 不美, 岡本 太郎, 武重 千冬
    1987 年 47 巻 2 号 p. 153-158
    発行日: 1987/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    針麻酔の鎮痛 (針鎮痛) を発現する経穴から下垂体に到る経路にあたる中脳中心灰白質背側部 (D-PAG) からは経穴の刺激によって特異的に誘発電位が出現するので, この電位を発現させる経穴の刺激閾値, 各刺激強度に対する電位の振幅を指標として, 針鎮痛の有効性の個体差を検し, さらに, 有効性の個体差をなくし針鎮痛無効な動物を有効にするD-phenylalanine (DPA) の作用を検した.ラットの尾逃避反応の潜伏期を痛みの閾値として有意 (P<0.05) の鎮痛が現われるか否かでラットを針鎮痛有効群と無効群とにわけ, それぞれの動物のD-PAGに電極を挿入して経穴の刺激で出現する誘発電位を30回加算した.腹腔内に1mg/kgのナロキソンを投与すると投与後15分でD-PAGの誘発電位は完全に出現が阻止された.これに反し, 非経穴 (腹筋) の刺激で中脳中心灰白質外側部 (L-PAG) に出現する誘発電位は全く影響をうけなかった.D-PAGに誘発電位を出現させる刺激閾値は有効群と無効群とでは異なり, 0.05msec持続の頻度1Hzの刺激では約1 voltの差がみられた.また各刺激強度で出現する誘発電位の振幅もつねに無効群の方が低く, 刺激強度を強めても有効群の振幅には達しなかった.DPAを投与すると, 無効群のD-PAGに誘発電位を出現させる刺激閾値は低下し, 有効群の刺激閾値とほぼ等しくなり, かつ振幅の増大も著しく, 有効群の振幅にほぼ等しくなった.これに反し有効群ではDPA作用後も刺激閾値や振幅にさ程の変化は現われなかった.以上の結果から針鎮; 痛の有効性の個体差を発現する部位はD-PAG以下にあり, DPAもその部位に働いて有効性の個体差をなくす事が判明した.D-PAG以下の部位としては脊髄内にあるオピエートレセプターを介する機序である事が本教室の他の研究から考えられている.
  • 田中 正明, 佐藤 孝雄, 岡本 太郎, 武重 千冬
    1987 年 47 巻 2 号 p. 159-166
    発行日: 1987/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    針麻酔の鎮痛 (針鎮痛) には有効性の個体差があり, この有効性の個体差は針鎮痛と同程度の鎮痛を出現するモルヒネ鎮痛にもみられ両者はよく相関する.針鎮痛の有効群のみに現われるモルヒネ鎮痛は, 針鎮痛を発現する機序を介して現われる鎮痛である事を, モルヒネを腹腔内, 脊髄クモ膜下腔, 脳室内に投与したモルヒネの用量一反応関係によって検した.痛みの閾値はラットの尾逃避反応で測定し, モルヒネの脳室内, 脊髄クモ膜下腔投与はそれぞれあらかじめ, 第3脳室及び脊髄腰膨大部に挿入したカニューレを介して行った.腹腔内, 及び脊髄クモ膜下腔投与のモルヒネ鎮痛の用量一反応関係は, 有効群と無効群とでは異なり, 有効群では腹腔内投与では0.5mg/kgに, 脊髄クモ膜下腔投与では0.05μgに最大値を示す用量一反応関係と, 前者では10mg/kg以上, 後者では10μg以上に最大値を示す用量一反応関係との二つが加算された用量一反応関係を示した.これに反し無効群ではそれぞれ10mg/kg, 10μgに最大値を示す単一の用量一反応関係を示した.これをScatchard's plotで表現すると, 有効群では2本の直線となり無効群では1本の直線となった.針鎮痛を発現する経穴から下垂体に到る経路にあたる前側索の切断, 中脳中心灰白質背側部の局所破壊で有効群の用量一反応関係は無効群のそれとほぼ同じ様になり, 単一の用量一反応関係を示す様になった.脳室内投与のモルヒネは, 針鎮痛有効群, 無効群ともに単一の用量一反応関係を示し, ただ有効群の方が左方移動する傾向を示した.またScatchard's plotを行っても単一の直線となった.以上の結果からモルヒネを脊髄クモ膜下腔や腹腔内に投与して針鎮痛有効群にのみ現われ, 前側索や中脳中心白質背側部破壊後は出現しなくなる鎮痛は, モルヒネが針鎮痛の求心路を脊髄で活動させて現われる鎮痛であることが明らかとなった.
  • 畠中 節夫
    1987 年 47 巻 2 号 p. 167-175
    発行日: 1987/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    26乃至77歳の手術予定患者66症例を対象とし, より臨床経過に則した術前肺機能検査を行う事を目的として, 体位の違いが術前の肺機能に及ぼす影響を, 年齢別に検討した.肺活量測定法, 最大呼気流量曲線single breath N2, 及びmultiple N2washoutなどの測定を手術施行前一週間以内に坐位と仰臥位で行った.得られた結果を, 夫々20乃至30, 40, 50, 60, 70歳代に分けて集計し, 更に, 60歳以上29例を%VC>80%及びFEV1.0%>70%の両条件を満足するNPS群 (N=16) と, 先の条項の片方または両者を満たし得ないPS群 (N=13) とに分けて比較検討した.坐位から仰臥位にすると, 肺気量分画は多彩に変動した.即ち, ERVの減少のほうがIRVの増加より若干多いので, VCは坐位では各年代に於て約5%減少した・VCの変動の程度は同じであったが, PS群とNPS群に於けるIRVとERVの変動には差があった.FRC, RV, 及びRV/TLCなどは仰臥位で減少したが, その程度は年代が若い程強かった.FEV1.0の体位による差は年代が高くなるに伴い拡大した.全体ではFEV1.0%への体位による変動は大きくない.しかし, 坐位では正常値を示したにも拘わらず, 仰臥位では70%以下へ低下した例が高年代にあった.V25は, 最も若い年代を除くと仰臥位では坐位より10%前後減少した.高い年代では△N2は著しく上昇し, 特に仰臥位では高値を呈し, PS群とNPS群との間には両体位に於いて有意差が認められた.CVは20乃至30歳代では仰臥位のほうが約2倍多いが, 年代が高くなるにしたがって, 仰臥位でのCVが小さくなり, 60および70歳代では両者の関係は逆転した.CV/VCは坐位では加齢に伴って増加し, 一方, 仰臥位では50歳代以上では近似した.CV/VCの体位による変動はCVと略同傾向を示した.各年代に於て坐位のFRC-CCは有意に大きいが, 年代が高くなるに連れて仰臥位との差は小さくなった.各年代に於てLCIとIDIには体位による変動は強くないが, TCVとPN2CDには幾つかの年代で両体位間に有意差が認められた.以上の如く, 体位は肺機能に大きく影響しているが, その程度は年齢により異なることが示唆された.高齢者で所謂肺機能正常群と異常群とでは, 仰臥位にした際の肺気量分画のプロポーションの推移が異なっていた事, 更に, 坐位では正常であっても仰臥位では肺機能が著しく悪化する例があることなど, 両体位における肺機能検査は新しい情報を得られ, 術前検査として有用と思われた.
  • 奥田 良三
    1987 年 47 巻 2 号 p. 177-188
    発行日: 1987/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    健康な成人54名 (男性27, 女性27) の手掌中央部及び遠位 (1/3) 部のCT写真を撮影し, 骨, 筋, 皮下脂肪組織及び筋腱間結合組織 (後者2つは以後皮下脂肪他と記す) と, 筋については母指球筋, 小指球筋, 骨間筋及び示指~小指浅深指屈筋腱虫様筋 (以後指屈筋腱虫様筋と記す) の4群についてそれぞれの断面積と比率を算出した.これらについて, 性差, 左右差, 年齢差, 利き手及び握力との関係を検討した.結果は次の通りである。1.手掌の組織構成比は, 中央断面で筋は男性右50.2%, 左46.6%, 女性右45.2%, 左43.1%で, 男女とも右側が, 左右とも男性がそれぞれ他よりも優る傾向が見られた.これに対して皮下脂肪他及び骨では左右差を認め難く, 前者は男性約28%, 女性約33%, 後者は男性約23.5%, 女性約22%であった.これらは大腿及び前腕と比べて, 筋比は低く, 脂肪比は男性では高く, 女性では低く, 骨比は高かった.2.筋群別には, 断面積は母指球筋が最も大で, 男性は女性よりも, 右側は左側よりも大なる傾向が見られ, 小指球筋と骨間筋はほぼ相等しくてこれに次ぎ, 指屈筋腱虫様筋が最も小であった.遠位断面では中央断面に比べて母指球筋と小指球筋は劣り, 骨間筋は優り, 指屈筋腱虫様筋は等しい傾向を示した.これらの傾向は骨格筋の筋線維数比による筋群の差と大凡一致した.3.年齢との関係を見ると, 両断面とも比較した年代の間では相違は見られなかったが, 総断面積の消長と最もよく一致したのは筋と皮下脂肪他であり, 筋の中では母指球筋と骨間筋であった.4.握力との関係については, 筋比は握力35~39kgから上昇, 骨比は25~29kg, 30~35kg時に上昇, 皮下脂肪他比は逆に下降傾向を示した.筋では母指球筋と骨間筋に握力との相関関係が見られた.5.利き手との関係を見ると, 総断面積は右利きでは右手が大で, 筋断面積がこれに連係する傾向が見られたが, 筋の中では母指球筋に相関傾向が見られたのみであった.
  • ―とくに首都圏病院と地方都市病院の相異について―
    梶田 修明, 大岩 恭子, 荒川 文雄, 水野 ますみ, 高橋 正典, 井上 道雄
    1987 年 47 巻 2 号 p. 189-205
    発行日: 1987/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    てんかんの診断のもとに精神病院 (4施設) に10年以上在院している33症例 (男21例, 女12例) を対象に多角的な調査をおこなった.対象症例の平均年齢は45.3±10.3歳で, 平均在院期間は18.6±6.5年間であった.これら対象に臨床精神医学的, 社会精神医学的側面および地域差について調査分析し, 次のような結果を得た.臨床精神医学的側面の特徴は入院事由, 発作出現頻度, 発作分類, 性格障害の有無, 知能テスト, 病棟内生活評価尺度, 頭部CT所見から複雑部分発作から二次性全般化発作を呈するいわゆる辺縁系障害を有する症例とLennox-Gastaut症候群に属する症例が多くみとめられた.また, 長期在院による知能水準の低下を示唆する結果や, 性格障害も経時的に気分不安定一爆発性の傾向が気分安定一粘着性に変わり, そこには辺縁系障害が関与していることが推測された.社会精神医学的側面の特徴は教育歴からは生活環境の貧困さが浮き彫りにされ, 職業歴からは知能障害, 性格障害に起因する就職および就業永続性の困難さが明らかになった.また, 臨床発作もコントロールされ開放病棟内では充分適応し, 単純な作業ならば充分処理出来る2~3の症例が長期在院していることも判明した.家族関係では放置的家族が協力的家族の2倍を占め, 患者とのつながりが希薄化しているが, その背景には親の高齢化, 両親の死亡, 核家族化があることが判った.首都圏と地方都市病院の在院症例の相異は前者には辺縁系焦点に起因する症例が多く, 後者には重症の知能障害とLennox-Gastaut症候群に属する難治例が目立った.家族関係では前者には核家族型, 後者には多世代家族型が多く, 入院事由の相異もあるが, 患者とのつながりは地方都市病院の方が密である.以上の調査結果から長期在院を少しでも防止する為の施策についても多少言及した.
  • 菊池 良知
    1987 年 47 巻 2 号 p. 207-217
    発行日: 1987/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    当教室では膵外分泌機能亢進作用の知られているサソリ毒 (Leiurus quinquestriatius) を用いて急性膵障害からその慢性に至る経過を明らかにする目的で実験病理学的研究を行っている.著者は該毒物を家兎の腹腔内に投与し膵線維化を作製しその初期像に対して電子顕微鏡学的検索を主体とした病理学的観察を行った.初期には致死量 (3.81×10-4mg/9) の3/4量を投与したが, 抗毒素産生の為投与期間が長ずるにつれその効果的な外分泌作用が得られなくなった.そこで血中抗毒素価に対応する毒の増量係数を求め, その時期での3/4量を投与した.投与期間により14日までを短期群とし週3回隔日投与, 120日までを中期群とし週3回隔日投与, それ以上を長期群とし週2回投与を行なった.なお長期群では該毒物単独と補助的にネオスチグミン0.2mg/kg腹腔内同時投与の2系を作製した.病理組織学的には短期群では腺房細胞は膨化変性し, 間質は水腫が著明である.中期群では間質の水腫はさらに高度となり一部ではscleroedemaを呈している.これは電顕的には間質の毛細血管周囲のfibrilとして認められた.長期群では小葉内間質の線維化がみられ, 電顕的にはperiacinar spaceの拡張は殆どなく, 間質には種々の線維芽細胞様細胞が出現し, その周囲は多量の膠原線維やfibrilで満たされ, 一部では少量のアミロイド様細線維もみられる.また線維芽細胞様細胞の中には細胞質内に小脂肪滴を有するものも僅かではあるが認められる.これらは伊東細胞との関連が問題となるが, 肝における一次的線維化と同様な発生機序が存在する可能性も考えられる.しかしながら本実験では間質の著明な水腫の繰り返しからscleroedemaへと移行しさらにはそれを基盤として, 線維芽細胞様細胞が動員され線維の誘導が起こるという経路が主体と思われる.いずれにせよこの実験系では線維の発生に一連の間葉系細胞の動向が強く関与していることはほぼ間違いないものと思われる.
  • 趙 成坤, 片岡 徹, 河村 正敏, 河村 一敏
    1987 年 47 巻 2 号 p. 219-230
    発行日: 1987/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    胃癌原発巣における静脈侵襲は血行性転移に大きく関与し, 胃癌切除患者の予後を左右する重要な因子の一つと考えられる.今回著者らは, 進行胃癌治癒切除症例で静脈侵襲状況 (侵襲の有無, 侵襲程度, 侵襲静脈径) および肝再発状況を検索し, これらの予後への関与, ならびに胃癌切除後の予後を左右すると考えられる因子, すなわち年齢, 性, 胃癌の肉眼所見として占居部位, 肉眼型, 組織所見として深達度, 組織型, リンパ管侵襲, リンパ節転移, INF, 問質量の10因子との関連について臨床病理学的検討を行った.教室における過去約26年間 (1956.3-1981.12) の初発胃癌切除症例1, 098例中, 単発胃癌治癒切除症例は740例であり, うち進行胃癌529例を今回の対象とした.検討の結果, v (+) は287例 (54.3%) にみられ, v (+) 症例の侵襲程度ではv1169例 (58.9%) , v291例 (31.7%) , v327例 (9.4%) , 侵襲静脈径は口径の大きいものからL, M, Sの3群に分類したが, S群144例 (50.2%) , M群96例 (33.4%) , L群47例 (16.4%) であった.侵襲静脈径と傍襲程度との間に相関がみられ (P<0.05) , S群→M群→L群へとv1の頻度が低くなり, v2, V3が逆に高くなった.静脈侵襲状況と予後因子との関連で, V (+) 症例の特徴として有意差のみられた因子は性別 (男性に多い) , 占居部位〔M領域に少ない (A領域に多い) 〕, 肉眼型 (2型に多く, 5型に少ない) , 深達度 (pmに少なく, s (+) に多い) , 組織型 (分化型に多い) , リンパ管侵襲 (ly (+) に多い) , リンパ節転移 (n (+) に多い) , INF (βに多く, γに少ない) , 間質量 (intermediateHypeに多く, scirrhoustypeに少ない) の9因子であった.侵襲静脈径でL群の頻度が有意に高かった因子は, 性別 (, 男性) , 肉眼型 (2型) , 組織型 (分化型) , リンパ管侵襲 (ly2, ly3) , リンパ節転移 (n (+) ) , INF〔β (γに少ない) 〕, 間質量〔intermediate type (scirrhous typeに低い) 〕の7因子であった.予後の検討では, v (-) 症例, v (+) 症例の累積生存率はそれぞれ5生率57.4%, 33.4%, 10生率40.6%, 23.7%と, v (+) 症例の予後が有意に不良であった.侵襲程度ではv1→v2→v3へとvnumberが, 侵襲静脈径ではS群→M群→L群へと口径がそれぞれ大きくなるに従って予後不良となった.肝再発は55例 (10.4%) にみられ, うち45例 (81.8%) がv (+) 症例であった.肝再発率はv (-) 症例4.2%, v (+) 症例15.7%と差を認めた (P<0.005) .侵襲程度ではv1→v2→v3 (v1・v3: P<0.05) へと, 侵襲静脈径ではS群→M群→L群 (S・M, S・L: P<0.005) へと肝再発への危険度が高かった.なお予後因子の中で, 静脈侵襲状況から肝再発を関連させる特に重要な因子はINF, 間質量と推測された.今回の検討で胃癌原発巣における静脈侵襲が胃癌切除後の予後に大きく関与することが示唆された.静脈侵襲状況の検索は胃癌切除後の予後を予測するうえできわめて重要であり, 特に静脈侵襲陽性例では, その予後向上のための術後補助療法の徹底が望まれる.
  • ―特に, 化学的性状と生物学的および免疫学的活性について―
    福田 一郎, 中村 良子, 武田 篤, 青木 良雄, 奥村 和夫, 河西 信彦
    1987 年 47 巻 2 号 p. 231-237
    発行日: 1987/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    C.jejuni C1株よりLPSを抽出し, その化学的性状, 生物学的および免疫学的活性を検討し, 以下の成績を得た.1.C.jejuni C1株の凍結乾燥菌体10gより約150mgのLPSを得た.2.C.jejuniのSDS-PAGEによる物性の検討では, 28kD付近にPAS陽性の単一なバンドを検出した.3.C.jejuni LPSの化学的特徴は, 約20%のlipid Aを含み, 全脂肪酸は9.4%, KDOは4.9%, 糖組成はNaessらが分類したC.jejuni biotype Iと同様の成績であった.4.C.jejuni LPSの生物学的活性は対照LPSとして使用したE.coliおよびS.enteritidis LPSと同等の強さを示した.5.C.jejuni LPSをマウスに静脈内投与すると, 下痢を主症状とする病原性を示し, 組織学的には腸管粘膜のビラン, 肝細胞の単細胞性壊死および脾臓の白脾髄中心部にリンパろ胞の肥大化が認められた.6.C.jejuni LPSでマウスを前処置するとSRBCに対する脾臓PFC数を増加させるアジュバント効果を示した.7.C.jejuni LPSはin vitroでマウス腹腔macrophageのlatex粒子貪食能およびsuperoxide anion (O-2) の遊離能を上昇させる傾向を示した.
  • 平井 隆文, 内田 英二, 橋本 みゆき, 小林 真一, 小口 勝司, 安原 一
    1987 年 47 巻 2 号 p. 239-245
    発行日: 1987/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    近年, 使用法が簡便で副作用が少ない可逆的なモノアミン酸化酵素阻害薬 (MAOI) の抗うつ薬としての可能性が注目されている.可逆的なMAOIは従来の非可逆的なMAOIと比較して薬効をコントロールしやすい利点がある.そこで今回我々は可逆的なMAOIであるアミフラミン (AMF) を用いその代謝と薬効との関係について検討した.Wistar系雄性ラット (150~2009) を用い, control群 (AMF 5 mgikg経口投与) . phenobarbital (PB) 投与群 (PB 80mg/kg, 3日間腹腔内前投与) , SKF-525A (SKF) 群 (SKF 50mg/kg単回経口前投与) の3群に分けAMF 5mg/kg経口投与後, 0.5, 1, 2, 4, 6, 8, 12時間後断頭し, 血液, 脳を採取した.血中.脳内のAMFとその代謝物であるFLA 788はHPLC-電気化学検出器で, 脳内セロトニン (5-HT) 及びその代謝物5-ヒドロキシインドール酢酸 (5-HI-AA) はHPLC-螢光検出器で測定した.又MAO活性は脳のホモジネートを酵素標品とし, 基質に5-HT, フェニルエチルアミン (PEA) を, 阻害薬にはAMF, FLA 788, を使用しRI法で測定し, 以下の結果を得た1) 脳内MAO活性は基質に5-HTを用いた場合, AMFにより10-7M付近から, FLA 788により10-8M付近より阻害されはじめ10-4Mでほぼ完全に阻害された.2) AMFのCmax, AUCは血中, 脳内ともにcontrol群と比較しPB群では小さくなり, SKF群では大きくなった.脳内FLA 788のCmax, AUCはPB群, SKF群ともに減少を示した.3) AMF, FLA 788共に血中と脳内濃度の間に有意な相関がみられた.4) 脳内5-HT濃度は3群すべてで増加, 5-HIAA濃度は3群すべてで減少したが, その変化の大きさはSKF群>control群>PB群の順であった.AMFとその活性代謝物FLA 788はtype A MAOを選択的に阻害し, その血中濃度と脳内濃度の問に相関関係がみら, れた.又, PB, SKF前投与により脳内FLA788が同程度に減少したにもかかわらず5-HT, 5-HIAAの変化に相違が出たことからin vivoではin vitroと比較して未変化体であるAMFのMAO阻害作用が強くでることが示唆された.
  • 西田 正彰, 中川 之子, 花田 照久, 河合 正登志, 坂西 伸彦, 井口 喬
    1987 年 47 巻 2 号 p. 247-257
    発行日: 1987/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    近年, 分裂病に対する医療は入院治療からしだいに外来治療の比重が増し, いわゆる地域医療にその重点が移りつつある.昭和大学附属烏山病院では25年以上にわたる分裂病に対するリハビリテーション治療を実施して, 一定の成果を挙げてきたが, 同病の治療についてはなお多くの問題が存在している.特に分裂病の初期の段階における問題は, 今後の分裂病者の治療と処遇を含めた長期予後という観点からあらためて検討する必要がある.このため昭和56, 57両年度に入院した発病5年以内の分裂病55例と分裂病治療の時代的変化に対応させるためそれより10年前の昭和47年度の同基準の73例, および20年前の昭和37年度の72例を対象として調査, 研究した, その結果, 1) 時代とともに初期分裂病群に対する短期入院すなわち早期退院の傾向が明らかとなり, またそのことが社会適応に対し良い結果をもたらしていることが確認された.2) それにもかかわらず分裂病の長期にわたる視点からの予後は恐らく大きく変わることがないと考えられた.3) 在宅医療の効果は入院医療に比し, はるかに挙がり, 社会生活を主とする環境の影響は極めて大きいものとみられる.4) 今後分裂病の形態の変化が予想できるようになった.5) 本研究により精神病院運営の今後のあり方に示唆を与えるところが大きいものと考える.
  • 詫摩 哲郎, 武田 健, 紺野 邦夫
    1987 年 47 巻 2 号 p. 259-263
    発行日: 1987/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ヒト骨髄性白血病患者から樹立したML-1細胞の分化誘導実験系で, アッセイ法を検討し簡便な定量的方法の確立を試みた.活性酸素の産生能を示すNBT還元能はML-1細胞の分化に伴って現われ, 貪食能, 形態変化と平行して変動した.従ってNBT還元能の測定は分化の指標の一つになりうると思われた.従来用いられてきた顕微鏡観察による陽性細胞の百分率を調べる方法にかえて新しく96穴マイクロプレートとマイクロプレート専用自動分光光度計を使用した比色法を試み, 細胞数, インキュベーション時間, 試料との培養時間等, 諸条件を決定した.細胞当りの吸光度の対数値は従来の百分率法とほぼ直線関係にあった.この測定法を用いる事により, 客観的かつ定量的に, 骨髄性白血病細胞の分化誘導活性を測定する事が可能と思われる.
  • 諸星 咲子
    1987 年 47 巻 2 号 p. 265-275
    発行日: 1987/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    難聴の診断には純音聴検査は不可欠である.この検査結果は, オージオグラムによる聴力損失と聴力型で表示される.この聴力型の分類にコンピュータを利用し, 定義にもとつく聴力型の判定基準をもとにして聴力型別処理システムを試作した.このシステムと一人の医師の判定結果とを比較検計した.対象は同一のオージオメータで, 昭和大学病院防音室内で一人の聴力検査士が測定した2, 000例である.両判定による一致率は, 正常型, ろう型では高く, 90%近くに及ぶが, 山型, 低音障害型では低く50%前後であった.その理由は山型は非典型例が多くみられ, 両判定による聴力型分類が異なるためと分かった.そこで, 聴力損失値を利用したコンピュータによる分類には, 典型例のみを分類し, 非典型例は「その他」とする分類が適切であると考えられた.しかし, 現実には目的により様々な分類法が必要となるので, オージオグラムのパダーン認識処理の改善のみならず難聴に関する他のデーダをも活用する必要があることがわかった.
  • 外丸 輝明, 武田 昭平, 世良田 和幸, 香川 豊明, 中井 久美子, 小沢 啓子
    1987 年 47 巻 2 号 p. 277-281
    発行日: 1987/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    昭和59年4月より昭和60年5月まで当科で星状神経節ブロック (SGB) 療法を行ったアレルギー性鼻炎患者は64例で, 平均SGB回数は15.8回であった.SGB療法前のくしゃみ, 鼻汁, 鼻閉, 眼鼻のかゆみの強さを10とし, 治療後これらの症状がどの位減弱したかを患者に評価させた.昭和60年のSGB療法施行例で調査の明確な28例で, 治療後7以下となった例はくしゃみ89.3%, 鼻汁85.1%, 鼻閉77%, 眼鼻のかゆみ87.5%であった.昭和59年のSGB療法施行例で調査のできた14例の昭和60年の症状が7以下となった例はくしゃみ50%, 鼻汁42.8%, 鼻閉45.5%, 眼鼻のかゆみ75%であった.SGB療法の前後でIgG, IgE, RASTには大きな変化はみられなかった.
  • 岡田 まゆみ, 米良 仁志, 増田 豊, 細山田 明義
    1987 年 47 巻 2 号 p. 283-287
    発行日: 1987/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    長期人工透析患者の大腿骨人工骨頭置換術の麻酔管理を経験した.術中術後にわたり, 管理に難渋した症例であった.患者は41歳の女性で, 慢性腎不全と診断されてから20年経過しており, 10年以上にわたり人工透析をうけてきた.外傷の既往のない左大腿部痛で整形外科を受診し, 大腿骨頸部骨折の診断のもとに手術が施行された.術前より不安定な循環動態が予測されたため, 麻酔は比較的循環系への影響が少ないとされている0.5%ブピバカインを用いた脊椎麻酔で行った.術中の低血圧に対してはドパミンと輸血で対処したが, 術中術後にわたり低血圧, 高K血症が持続した.その後, 内シャントの閉塞, 後腹膜腟への出血が続いて生じたため, 大腿静脈を用いた緊急透析, キレート剤使用等により救命した.慢性腎不全患者の麻酔に際しては, 種々の重篤な合併症が生じる危険性があり, 術前より計画的な全身管理を行なわなければならない事を痛感した.
  • 杉村 健太, 中島 清隆, 中野 健治, 小川 剛司, 藤巻 悦夫, 三雲 仁, 林 良彦, 稲垣 克記, 中野 健治, 片桐 耿, 藤巻 ...
    1987 年 47 巻 2 号 p. 289-300
    発行日: 1987/04/28
    公開日: 2010/09/09
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