昭和医学会雑誌
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47 巻, 6 号
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  • Shogo ITO, Kozo KITAZAWA, Tetsuzo SUGISAKI
    1987 年 47 巻 6 号 p. 769-774
    発行日: 1987/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
  • 副島 和彦, 神田 実喜男
    1987 年 47 巻 6 号 p. 775-778
    発行日: 1987/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
  • 横内 英明
    1987 年 47 巻 6 号 p. 779-787
    発行日: 1987/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    アトピー型小児気管支喘息を対象として, アミノフィリン, β-agonistおよび両者の併用, ならびに抗ヒスタミン剤, ステロイドホルモン剤をそれぞれ経口投与し, 即時型皮内反応におよぼす影響について検討し以下の結果を得た.1) Aminophylline (20~24mg/kg1/日, theophylline血中濃度平均15.6±4.46μg/ml) およびsalbutamol 8~12mg/日, さらにこれら2剤を二重盲検法で5.5日間投与した後の即時型皮内反応は, いずれも投与前に比較し有意な抑制を認めなかった.2) Chlorpheniramine 0.15mg/kg/日, hydroxyzine 2mg/kg/日, clemastine 0.05mg/kg/日の3種の抗ヒスタミン剤をそれぞれ3日間経口投与した後の即時型皮内反応は, 投与前に比較し, chlorpheniramineでは24時間, hydroxyzineおよびclemastineでは72時間まで有意の抑制 (P<0.02) を認めた.3) Prednisolone (0.95~1.25mg/kg/日) を3日間経口投与した後の即時型皮内反応は, 投与前に比較し有意な抑制を認めなかった.以上から通常投与量範囲内におけるtheophylline, salbutamolおよび両薬剤の併用ならびにprednisoloneの経口投与は, 即時型皮内反応を抑制せず, これらの薬剤を中止できない症例では, 投与を継続したままで皮内テストを行っても, その判定には影響をおよぼさないと推定された.これに反して抗ヒスタミン剤についてみると, chlorpheniramineは投与後24時間, hydroxyzineおよびclemastineは少なくとも72時間有意に即時型皮内反応を抑制することより, 皮内テストを行う場合には, 少なくとも7日間以上の休薬期間をおいた後に実施することが望ましいと考えられた.
  • 第3報ラット血液凝固系に及ぼす影響
    後藤 裕美, 坂本 浩二, 守口 徹, 広瀬 由美, 高杉 直之, 不破 亨
    1987 年 47 巻 6 号 p. 789-793
    発行日: 1987/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    加熱処理を行った田七の含有成分は, 生田七のそれとほとんど差はないが, 止血作用に関与していると言われているdencichineは著しく減少する.この加熱処理した田七より得られた30%エタノールエキス (HK302) を絶食した雄性ラットに経口投与し, 1時間後の全血凝固時間, 血漿カルシウム再加時間, トロンビン時間を測定し検討を行った.全血凝固時間および血漿カルシウム再加時間においてHK302の全投与群500, 1000, 2000mg/kgは, 若干短縮傾向を示したが, ほぼ正常域内であり, 有意なものではなかった.また, トロンビン時間においても, 全群正常域内で, 顕著な作用は認められなかった.これらのことより, 田七の加熱処理は, 止血作用のみを著しく減少させ, 生理的正常域内での変動に変化させたものと推測された.
  • 第4報マウス血液凝固線溶系に及ぼす影響
    坂本 浩二, 岡崎 雅子, 白崎 恭子, 殿岡 まゆみ, 笠原 多嘉子, 高杉 直之, 守口 徹, 不破 亨
    1987 年 47 巻 6 号 p. 795-800
    発行日: 1987/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    加熱処理した田七の30%エタノールエキス (HK302) のマウス血液凝固線溶系におよぼす影響を検討した.HK302の2.0g/kg経口投与3時間後にTEGのr値が延長し, 1.0g/kg投与3時間後ma値の増大がみられた.PTは0.29/kg投与3時間後短縮し, 2.Og/kg投与3時間後は逆に延長傾向を示した.PTTは0.29/kg投与3時間後に延長, 2.0g/kg投与1時間後に短縮したが共に正常域内であった.AT皿活性は0.29/kg投与1, 3時間後, および1.0g/kg投与3時間後に有意に低下した.PLGには変化はみられず, α2PIは29/kg投与1時間後低下し, Ht値は0.2g/kg投与3時間後に上昇した.以上, HK302の作用は主に経口投与3時間後に変動がみられたが, その作用は用量依存性には認められず, 生体全体にとって一方の系のみが促進されることはないと推察された.
  • 池田 実徳, 坂上 宏, 紺野 邦夫
    1987 年 47 巻 6 号 p. 801-813
    発行日: 1987/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    われわれは, 民間伝承で胃癌等の消化器系癌患者に用いられて来た五葉松 (Pinus parviflora Sieb.et Zucc.) の松かさ抽出液中の生理活性物質の分離法の検討を行って来た.本研究は, この抽出液に含まれる細胞傷害性物質マクロファージ活性化物質, 分化誘導物質の部分精製について報告する.細胞傷害性物質の精製は, 標的細胞のマウスL929細胞への色素取り込みを指標にして行った.この物質の活性は, 松かさ熱水抽出液を順次エーテル, 酢酸エチル, ブタノールで分配するど主としてエーテル層から同収された.松かさメダノール抽出画分をメタノール分配抽出濃縮乾固後シリカゲルカラムクロマトゲラフィーにより約31倍に精製された.マクロファージ活性化物質の精製は, 標的細胞のマウスマクロファージ様株化J774.1細胞の形態変化と、培養液に放出されたヒト骨髄性白血病細胞 (ML-1, U-937) に対する分化誘導活性を指標にして行った.熱水抽出液中の6容エタノールで沈殿しない画分から同収された活性は, 酢酸エチル, ブタノール, 水分配で, ブタノール層に分配され, エダノール中でのゲルろ過 (LH20) によりvoid volumeに溶出された.6容のエタノールで沈殿する非透析性画分の活性は, DEAEセルロースイオン交換樹脂に吸着した.分化誘導物質の精製は, 標的細胞の上記ヒト骨髄性白血病細胞のNBT還元能を指標にして行った.85%エタノール抽出液中の活性は, エーテル, 酢酸エチル, ブタノール、水分配で水層から回収され.エタノール中でのゲルろ過ではvoid volumeの直後に溶出された.熱水抽出液中の6容エタノールで沈殿しない画分から回収された活性は, ブタノールで分配抽出され, エタノール中でのゲルろ過によりvoid volumeからかなりおくれて溶出された.6容のエタノールで沈殿する画分から回収された活性は, 透析性であり, 多糖画分と分離された.松かさから熱水およびカセイソーダで抽出された10種類の多糖には分化誘導活'性は検出されなかった.これらの3種の活性物質は, すでにわれわれが報告した松かさ中の抗腫瘍性多糖, 抗エイズ物質細胞性免疫賦活物質との分子構造相関上からも, 相乗相加作用の上からも注目される.現在これらの活性物質の精製および構造解析が進行中である.
  • 杉山 喜彦, 光谷 俊幸, 塩川 章, 九島 巳樹, 斉藤 司, 大塚 敏彦, 広本 浄子, 鈴木 孝
    1987 年 47 巻 6 号 p. 815-818
    発行日: 1987/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    各種のblastic lymphoma15例のリンパ節スタンプ標本のAlpha-Naphthyl-Acetate-Esterase (ANAE) およびAdenosine-Triphosphatase (ATPase) 染色を行った.7例のundefined lymphoblastic lymphomaのうち3例にATPaseの活性増加がみられたがANAE-granular positive cellの増加と平行した例は1例のみであった.5例のT-lymphoblastic lymphomaにおいてはAN-AE-droplet positive cellの増加に逆比例してATPaseの減少がみられた.3例のimmunoblastic lymphomaではB cell originにもかかわらずATPase活性の増加はいずれも認められなかった.最近, Null cellやT cell originのlymphomaのATPase減少に対するmechanismに関連したantitumor agentがnude mouseで解明されつつある.細胞化学的検索は悪性リンパ腫において単なる補助診断にとどまらず治療法の方向を示唆する上でも意義のある分野として今後の進歩が大いに期待される.
  • 杉山 喜彦, 光谷 俊幸, 塩川 章, 九島 巳樹, 斉藤 司, 大塚 敏彦, 広本 浄子, 鈴木 孝
    1987 年 47 巻 6 号 p. 819-822
    発行日: 1987/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    濾胞中心細胞由来とされるcentroblastic-centrocytic lymphoma (CBICC) 11例とcentrocytic lymphoma (CC) 11例, 合計22例につきそのスタンプ標本を用いてATPaseおよびANAE染色を行った.ATPaseは一般にB-cellmarkerとされているが, 今回の結果でも腫瘍細胞はB-cell由来を示唆する所見が得られた.CBICCはCCにくらべTcellregionであるinterfollicular areaが残存しているためATPase陽性細胞の比率は相対的に少なかった.ATPaseはT-cell markerであるANAEと併用することにより各種のリンパ節疾患におけるT-cell, B-cellの分布や腫瘍細胞の起源及び分化等をしらべる上で有効な補助診断法と思われる.
  • 熊倉 博雄, 三丸 修, 芳田 敬子, 呉 中立, 長谷川 真紀子, 落合 秀正
    1987 年 47 巻 6 号 p. 823-832
    発行日: 1987/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    CT法によって得られた腹部5部位 (劔状突起高―E6, 上腹部高―E7, 腰高―E8, 下腹部高―E10, 恥骨結合上縁高一E12) における水平断面像について, 皮下脂肪層, 筋層, 骨層, 体腔を区分して体組成を分析し, 年齢, 性, 体型による特徴ならびに相関関係を検討した.研究対象は成人男性10名, 女性16名で, ローレル指数によってA (129以下) , C (130~149) , D (150以上) の3体型に区分した.結果: 1) 総断面積については, 男女ともE8が最も小であったが, 男性では上腹部が女性では下腹部がそれぞれ大で, 男女で腹部形態が異なることが示された.2) 各断面の組成については, E6, E7では体腔が大部分を占めたが, E8, E10では体腔は半分以下となり, 筋層がこれに次ぎ, 女性では脂肪層も多かった.E12では筋層と脂肪層が大部を占め, 体腔は小であった.3) 脂肪層の断面積については, 男女各体型ともE6が最も小で, 下方に向って大となる傾向を示し, A, C体型ではE12が, D体型ではE8が最も大であった.体型別には, 各断面高ともD, C, A体型の順に大で, 女性が男性よりも大であった.4) 筋層の断面積については, 男女各体型ともE6が最も小で, 下方に向って大となる傾向が見られた.体型別にはA, C, D体型の順に減少の傾向が見られ, 男女別には僅かに男性が女性よりも優る傾向が見られたが, 比率ではA体型でその傾向が見られたのみであった.5) 骨層の断面積については, 最も小のE8に近いE7, E6と, 最も大のE12に近いE10の大小2群に分けられた.6) 体腔の断面積については.男女各体型ともE6が最も大で, 下方に向って小となる傾向を示した.体型別にはE6からE10の間では男女ともD体型が他よりも大となる傾向が見られた.7) 以上のことから, 各断面の主組成を体型別に見ると, E6, E7では男女各体型とも体腔が主をなしたが, E8, E10では, A, C, D体型の順に, 男性は筋層, 体腔, 脂肪層, 女性は体腔, 体腔, 脂肪層, E12では, 同じく.男性は筋層, 筋層, 脂肪層, 女性は筋層, 脂肪層, 脂肪層となり.性, 体型による相違が認められた.8) 相関関係として, 年齢との間には男女ともE8とE10では脂肪層は正, 筋層は負の相関によって, 女性のE12では両者とも負の相関によってそれぞれ総断面積と協調する傾向が見られた.また, Rohrer指数との間には, 腹部では男女とも総断面積と脂肪層の協調が認められ, 男性では体腔もこれに加わる傾向が認められた.
  • 長谷川 真紀子
    1987 年 47 巻 6 号 p. 833-842
    発行日: 1987/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    股関節屈曲の主作動筋といわれる腸腰筋 (大腰筋と腸骨筋) の筋線維構成を観察し, 両筋を比較するとともに, ヒトの他筋と比較して, その機能的特徴を検討した.研究対象は10%ホルマリン水注入屍から得られた大腰筋左右11対 (男性: 6, 女性: 5) と腸骨筋6側 (男女各3) で, これらはセロイジン包埋, HE染色を施した.また, 45歳女性の未注入屍から大腰筋と腸骨筋を採取し, Sudan BlackB染色を施し, 筋線維を分別し, 前者と対比した.結果: 1.Sudan BlackB染色による所見1) 3筋線維型の比率は, 白筋線維が大腰筋では41.3%で最も高く, 腸骨筋では38.3%で中間筋線維 (40.5%) とほぼ等しく, 両筋とも赤筋線維が少なかった.2) 3筋線維型の太さの平均値は, 両筋ともに, 赤筋線維, 中間筋線維, 白筋線維の順に大で, 赤筋線維の太さは白筋線維の約3倍であった.3) 筋線維密度は, 筋線維型別に見ると大腰筋では赤筋線維が, 腸骨筋では中間筋線維がそれぞれ最も高く, 白筋線維の密度は低かった.これは本筋群の持続的収縮傾向を示すものである.II.HE染色による所見1) 筋腹横断面積は大腰筋では男性が女性よりも優ったが, 腸骨筋では性差を認め難く, 両筋問では男性では差がなかったが, 女性では腸骨筋が大腰筋よりも優る傾向が見られた.これは骨盤部形態の性差に基くものと考えられた.2) 1mm2中の筋線維数は, 大腰筋では性差なく, 腸骨筋よりも多く, 後者では女性の方が男性よりも優る傾向が見られた.3) 筋腹横断面における筋線維総数は両筋とも上腕二頭筋あるいは前脛骨筋に匹敵し, 男性では大腰筋が, 女性では腸骨筋がそれぞれ他よりも多かった.4) 筋線維の太さは腸骨筋が大腰筋よりも優り, 大腰筋は上腕二頭筋, 胸鎖乳突筋, 咬筋等に, 腸骨筋は僧帽筋尾側部, 小菱形筋, 肩甲挙筋等にそれぞれ匹敵し, 両筋とも男性が女性よりも優る傾向が見られた.その分布型は大腰筋では単峰性の左方推移型が, 腸骨筋では多峰性の右方推移型がそれぞれ多く, 大腰筋では退縮傾向が著明であった.5) 筋線維の密度は両筋とも80%前後で, 大腰筋では男性が女性よりも優り, 男女とも加齢的に低くなる傾向が認められた.6) 以上の事から, 本筋は主として股関節の屈曲位の維持に働き, それぞれ大凡上腕二頭筋に近い筋力を有し, 歩行に当って腸骨筋は大腿の外旋にも働き, その傾向は女性で著しいと考えられた.
  • 坂本 浩二, 大槻 彰, 大泉 高明, 鈴木 誠, 中山 貞男
    1987 年 47 巻 6 号 p. 843-850
    発行日: 1987/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    P-Tert-butylphenyl trans-4-guanidinomethylcyclohexane carboxylate hydrochloride (NCO-650) とその代謝物であるp-tert-butylphenol (BP) の, 5週間連続投与におけるラット肝薬物代謝酵素, 血清および肝脂質, ならびに肝微細構造におよぼす影響を検索した.動物は7週齢SD系雄性ラットを用いた.NCO-650とBPは2.5, 12.5, 125mg/kgを1日1回5週間連続経口投与した.BP125mg/kg投与で体重増加抑制と立毛, 接触逃避反射の亢進などの一般症状の変化を認め, 20例中4例の死亡もみられた.Aminopyrine demethylase活性はBP125mg/kg投与1週後に有意な抑制を示し, NCO-650 125mg/kgでは3, 5週後に抑制傾向を認めたものの有意差はみられなかった.Cytochrome P-450とcytochromeb5はNCO-650の投与で3週後に増加を示したが, 5週後には対照とほぼ同じ値を認めた.Mitochondriaの脂質過酸化物形成はNADPHをinitiatorとして用いた場合は明らかな変化を示さず, ascorbic acidをinitiatorとした場合にNCO-650, BPともに投与3週後に増加がみられた.Microsomeにおける脂質過酸化物形成は, 被検薬物投与5週後にNADPH, ascorbic acidいずれのinitiatorを用いても抑制を認めた.肝脂質はNCO.650ならびにBP投与で明らかな変化を示さなかった.血清脂質のtotal cholesterol, phospholipids (PL) , high density lipoprotein中のcholesterolとPL, nonesterified fatty acid, triglycerideはNCO-650とBPの125mg/kg投与で低下を示した.BP 125mg/kgではtotal protein, albumin, GOTの低下がみられた.肝微細構造ではNCO-650, BPともに125mg/kg投与1, 3週後にrough endoplasmic reticulumの配列の乱れとsmooth endoplasmic reticulumの増加を認めた.BP 125mg/kgで死亡例を認めたことから, BPの毒性はNCO-650よりも強いと思われる.NCO-650とBPの連続投与における肝の薬物代謝酵素, 脂質過酸化物形成ならびに微細構造の変化は軽度であり, 単回投与でみられる酵素誘導と微細構造の変化は持続しないことが明らかとなった.これらの結果から, 連続投与によるNCO-650とBPの肝に対する作用は毒性的なものではなく, 生理的反応であることが示唆された.
  • 片岡 洵子
    1987 年 47 巻 6 号 p. 851-861
    発行日: 1987/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    骨格筋の機能分化に伴う形態進化の状態を探るために, ヒトで直立二足歩行に重要な関わりを持つ下腿三頭筋と足底筋について, ヒトとサルの筋形態および筋線維構成を比較検討した.研究対象ならびに方法: 研究対象は10%ホルマリン注入, 固定の成人10例 (男性6, 女性4) とカニクイザル成獣12例 (雄4, 雌8) から得られた右側の下腿三頭筋と足底筋である.研究対象の下腿三頭筋の各頭ならびに足底筋について, 重量, 長径幅径, 周径等31項目の計測を行い, 相対値によってヒトとサルを比較した。一方, 各頭および足底筋から, 最大筋幅部の筋横断片を採取し, 切片とし, H.E.染色を施して筋線維の観察を行い, ヒトとサルのそれぞれの比較検討を行った.結果: 1) 筋の外形については, 下腿三頭筋はサルではヒトに比べて, 長径では各頭とも筋長は長く1腱長は短く, この傾向は外側頭で著明であった.また, 幅径ではサルは内側頭と外側頭, ヒラメ筋, 足底筋の順に大で, おのおのの間の差は小であったが, ヒトはヒラメ筋が最も大で, 以下同順で, おのおのの問の差は大であった.重量は腓腹筋ではサルの方が, ヒラメ筋ではヒトの方がそれぞれ大であった.足底筋は筋重量を含めた全測定値において, サルのほうが大であった.2) 筋線維構成については, ヒトのヒラメ筋は筋腹横断面積, 筋線維総数, 筋線維の太さにおいて, 他筋より大きな値を示し, 特に筋線維の太さでは外側頭や足底筋の約4倍であった.これらはサルでは外側頭が最も大きな値を示した.1mm2中の筋線維数はサルでは各頭間の差はみられなかったが, ヒトでは足底筋と外側頭, 内側頭, ヒラメ筋の順に多く, 高い有意差が認められた.これは筋線維の太さと関連し, その順に筋線維の退縮が強いことが考えられた.一方, 筋線維の太さの分布型からヒトのヒラメ筋は筋線維の大小の差が著しく, 他に比べて老年に至るまで活動性を保つ筋であると考えられた.
  • 朴 東錫, 神田 美喜男, 石川 自然, Gerd STEDING
    1987 年 47 巻 6 号 p. 863-869
    発行日: 1987/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    先天性心疾患の成因は, 現在のところ不明な部分が多く, 成因を明らかにするために, 種々の研究がなされてきた.先天性心奇形の原因として遺伝的要因および環境的要因があるが多因性生物学的閾域説が最も有力である.近年臨床ならびに病理学的研究, 疫学的調査, 実験的研究により次第に先天性心奇形の成因が解明されつつある.われわれは, その一環として機械的物理学的因子である電気shockを鶏胚心に加えることによって, 両大血管右室起始を中心とした一連の心奇形spectrumを作成してきた.今回, われわれは, 電気shockによる生理学的変動を観察するために, 心電図, 超音波, ドプラーおよびComputed Echospecを用いた.
    実験方法と結果; 受精後3日以内, 100C以下に保存された白色レグホン卵をIncubatorで孵卵開始した.孵卵後3~4日目にHamburger-Hamilton24~27stageに直径10×8mmの穴を開け, 血管に損傷を与えないように卵殻膜を除去した.卵殻の周囲の温度は38℃以下には下がらないように保った.心電計の特長として.脳波, 筋電図, 心電図をはじめ, 各種生体電気現象を観察するためのアンプが用いられたことである.また, 各測定用の低域フィルター, および高域フィルターを内臓している.さらに交流障害を排除するハムフィルターも内臓されている.もう一つは超音波を応用した.ドプラーProbeは, 連続波10mHzのものである.Probeを直接Conotruncusに当て血流変動をみた.血流の変動をComputed Echospecに連結し, パワースペトラムによる解析が行われた.電気shock後心電図の所見として心拍数は210/min.から120~100に低下しPRの間隔も0.16~0.18sec.に延長した.心拍数が低下するに従い, 心室性の期外収縮, ΩRSのvoltage低下が認められた.その他QT間隔の延長も認められた.これらの変化は電気shock後3~15分の間が著明である.ドプラーの流速変動をみると, 電気shock3分後, 平均4674Hzで上昇するが, 30分には低値を示した.もう一つのParameterとして%Windowを分析してみると, 電気Shock3分後著しい上昇を示し, 15分後から低くなって来る.
    結論; 従来, われわれは, 電気Shockによって, 組織学的変化として, 細胞壊死, 変性などがみられたことを報告し心奇形との相関を示した.今回の実験Dataとして, 生理学的に, 組織学的変動を反映する心電図, ドプラーの変化が認められ, これらの総合した所見が心奇形を作成せしめる要因になるものと示唆された.
  • 堀 茂
    1987 年 47 巻 6 号 p. 871-881
    発行日: 1987/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ティシュエキスパンダーの臨床的価値が認められつつある一方, その臨床的研究は未だ報告が少ない.今回著者はシリコンレプリカという生体に侵襲のない方法で, エキスパンダーによる組織伸展のメカニズムを皮膚レリーフの面から観察した.症例は10例で6部位レプリカは25箇所で採取した.10例の内訳は男6例女4例, 年齢4~27歳 (平均17.3歳) であった.埋入するエキスパンダーの形状, 個数および大きさは切除予定部位の大きさによって決定した.埋入部位は切除予定部位の隣接部とし, 頭部では骨膜上, 体幹四肢では筋膜上とした.注入間隔は5日間~7日間で, 1回注入量はおよそ容積の10パーセントとした.埋入期間は1か月半~2か月で週1~2回の注入で目的とする容量に達するようにした.充分に膨らんだところで病変部を切除し, 皮膚が欠損した部分をカバーした.
    皮膚表面のレプリカは最も伸展される中央とその周囲をとった.採取時期は, エキスパンダー埋入前 (埋入予定部位) , 埋入直後, その後は週一回ないし二回の注入前と直後, そしてエキスパンダーを除去し病変部を切除し, 被覆した術後6か月のレプリカをとった.それぞれのレプリカを実体顕微鏡下に20倍の写真をとり観察に使用した.その結果, 埋入前の皮溝, 皮野は鮮明で網目状に整っていた.注入を開始すると注入直後では皮野は一時的に拡大するが, 1週間後にはある程度縮小した.この過程をくりかえし皮野は埋入前に比して徐々に拡大していった後, 皮溝, 皮野は一定方向に流れ, 消失した.この時点で病変部を切除し皮膚欠損をカバーした.その6か月後には皮溝皮野は埋入前に復していた.前額部では埋入後, 皮野は早期より拡大した, 腹部では皮野の拡大は緩徐であった.四肢では両者の中間位であった.女子は男子に比べ皮溝皮野は長期に保たれた.以上より, 注入後, 一度浅くなった皮溝がある程度その深さを回復するということは, 真皮がその凹凸を回復したものと考えられる.1週間毎に注入を重ねてゆくと皮溝は浅くなり, やがてその深さを回復することができなくなる.この時期に病変部の切除と被覆がなされる.皮膚を安全に延ばすことができるのはこの時期までであると考えられる.その後6か月を経過すると, 一度完全に凹凸を失った真皮は形態を取り戻すと考えられ, 表面のレリーフは伸展前のものに復する.インフレーションすることにより, エキスパンダー上の組織をより有効に伸展させるためには, 前額部頭部などのように皮下に硬い組織がある部位の方が有利であると考えられる.男女差については妊娠能力との関係, hormonalな反応などが推測された.そして, この研究により, 1) Textureに関する本療法の有効性, 2) 下床の硬さによる部位的違い, 3) 伸展能力の男女差を確認した.
  • 廣本 雅之, 片岡 徹, 河村 一敏, 河村 正敏
    1987 年 47 巻 6 号 p. 883-898
    発行日: 1987/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    癌腫病巣辺縁部の浸潤増殖形態, すなわち「胃癌取扱い規約」における浸潤増殖様式Infiltrative growth (INF) は, 原発巣成立後の発育進展に大きく関与し, 胃癌切除患者の予後を左右する重要な因子の一つと考えられる.今回著者らは, 胃癌治癒切除症例でINFの予後への関連, ならびにINFと胃癌切除後の予後を左右すると考えられる因子, すなわち年齢, 性, 胃癌の肉眼所見として占居部位, 肉眼型, 大きさ (長径) , 組織所見として深達度, 組織型, リンパ管侵襲, 静脈侵襲, リンパ節転移, 間質量, 組織学stageの12因子との関連およびINFと再発形式との関連について臨床病理学的検討を行った.さらに症例を浅層群 (A群: m, sm, pm) と深層群 (B群: ss, s (+) ) の2群に分け, 深達度によるこれら関連性への差異についても併せて検討した.教室における過去約26年間 (1956.3-1981.12) の単発胃癌治癒切除症例740例を今回の対象とした.対象症例のINFの内訳は, INFα105例 (14.2%) , β323例 (43.6%) , γ312例 (42.2%) であった.検討の結果, 累積5年 (10年) 生存率は, 全症例: INFα64.9% (48.3%) , β55.9% (44.7%) , γ53.5% (42.2%) , 群別ではA群: α74.9% (64.9%) , β72.8% (60.9%) , r89.4% (77.9%) , B群: α56.1% (34.5%) , β41.8% (31.6%) , γ31.5% (21.0%) であった.全症例では5生率でINFγに比べαの予後が, A群では5生率でα, βに比べγ, 10生率でβに比べγの予後が, またB群では5生率, 10生率でγに比べα, βの予後が良好であり (p<0.05) , 深達度によりINF別生存率に差があった.INFと予後因子との関連では, 肉眼型, 組織型, 脈管侵襲, リンパ節転移, 問質量: など, 多くの因子との問に特徴的な関連性を認めた.再発症例で再発形式別に再発率 (INF別再発症例数/INF別症例数) を算出すると, A群ではINFα (8%) , β (9.0%) の肝再発率が高かった.B群の再発率はA群に比べて特にINFβ, γで高くなり, αで肝再発 (12.7%) , βで肝再発 (13.5%) , 腹膜再発 (11.2%) , リンパ節再発 (6.2%) , γで腹膜再発 (32.6%) , リンパ節再発 (7.8%) , 肝再発 (6.2%) , 肝下部再発 (4.1%) の再発率が高かった.深達度により各INFの再発への関与に差異があった.またINFrr3はα, γの中間的な再発状況を示し, INFと再発形式との相関がみられた.今回の検討で, INFは胃癌の発育様相に大きく関与し, 胃癌の生物学的特性をよく表していることが確認された.すなわち, INFと予後因子間の特徴的な相関性, 間質量とともに胃癌切除後の予後および再発への深い関連性が理解された.したがって, 胃癌切除後の組織学的検索によるINFの把握は, 予後を的確に予知する, あるいは術後補助療法を選択するに当り, 重要な意味を持つことが示唆される.
  • 岩崎 俊作, 小林 正樹, 桑原 健太郎, 後藤 英道, 長谷川 貢, 鈴木 嘉茂, 藤巻 忠夫, 新谷 博一
    1987 年 47 巻 6 号 p. 899-906
    発行日: 1987/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    急性心筋梗塞に合併するポンプ失調の重症度は梗塞量に関係するので, 梗塞量の正確な推定は予後判定上きわめて重要と思われる.著者らは発症後12時間以内に入院した初回発作例98例につき, 心筋に特異的な血清中のCreatine Kinase MB分画を免疫阻害法により経時的に測定し, Shellら, Norrisらの方法により総遊出量を算定し, これを梗塞量として, 急性期, 長期の予後との関係を検討した.梗塞量は重症心不全において有意に大きいことを認め, Killip分類のC-I, Forrester分類のH-Iは梗塞量150U/L未満の群に有意に多く, G-IVは梗塞量300U/L以上の群に有意に多かった.逆にH-IIは, 梗塞量150U/L未満で有意に少ないことを認め, 急性期ポンプ失調の重症度と梗塞量はほぼ比例する傾向を示した.また, 入院中死亡例は全例梗塞量200U/L以上であり, 離床までの期間および入院期間も梗塞量300U/L以上で有意に遷延することを認めた.しかし1年経過後の調査では, 予後は梗塞量に関係なく良好な例が多く, 死亡例は再発作例が多かった.以上より, この方法による梗塞量は急性期予後の指標として有用である.
  • 外丸 輝明, 武田 昭平, 世良田 和幸, 香川 豊明, 松井 久美子, 小沢 啓子
    1987 年 47 巻 6 号 p. 907-911
    発行日: 1987/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    Werner症候群は早期老人化と皮膚萎縮を伴う常染色体性劣性遺伝によるまれな疾患で, 若年性の白髪・脱毛・白内障, 皮膚・筋肉・脂肪組織・骨の萎縮, 下肢の潰瘍, 声音の高調子, 糖尿病, 性機能低下などの多彩な症状を呈する.下肢潰瘍は自然老化ではまれで本症候群の特徴的な症状で難治性である.今回, 51歳の男性の本症候群例の下肢潰瘍に腰部交感神経節ブロックと硬膜外ブロック療法を試みたが, 潰瘍の疼痛には硬膜外ブロック療法は有効であったが, 潰瘍そのものには硬膜外ブロック療法も腰部交感神経節ブロックも著明な効果を示さなかった.これは本症候群では皮下結合組織の変性, 萎縮など皮膚そのものに欠陥があるためと考えられる.
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