CT法によって得られた腹部5部位 (劔状突起高―E6, 上腹部高―E7, 腰高―E8, 下腹部高―E10, 恥骨結合上縁高一E12) における水平断面像について, 皮下脂肪層, 筋層, 骨層, 体腔を区分して体組成を分析し, 年齢, 性, 体型による特徴ならびに相関関係を検討した.研究対象は成人男性10名, 女性16名で, ローレル指数によってA (129以下) , C (130~149) , D (150以上) の3体型に区分した.結果: 1) 総断面積については, 男女ともE8が最も小であったが, 男性では上腹部が女性では下腹部がそれぞれ大で, 男女で腹部形態が異なることが示された.2) 各断面の組成については, E6, E7では体腔が大部分を占めたが, E8, E10では体腔は半分以下となり, 筋層がこれに次ぎ, 女性では脂肪層も多かった.E12では筋層と脂肪層が大部を占め, 体腔は小であった.3) 脂肪層の断面積については, 男女各体型ともE6が最も小で, 下方に向って大となる傾向を示し, A, C体型ではE12が, D体型ではE8が最も大であった.体型別には, 各断面高ともD, C, A体型の順に大で, 女性が男性よりも大であった.4) 筋層の断面積については, 男女各体型ともE6が最も小で, 下方に向って大となる傾向が見られた.体型別にはA, C, D体型の順に減少の傾向が見られ, 男女別には僅かに男性が女性よりも優る傾向が見られたが, 比率ではA体型でその傾向が見られたのみであった.5) 骨層の断面積については, 最も小のE8に近いE7, E6と, 最も大のE12に近いE10の大小2群に分けられた.6) 体腔の断面積については.男女各体型ともE6が最も大で, 下方に向って小となる傾向を示した.体型別にはE6からE10の間では男女ともD体型が他よりも大となる傾向が見られた.7) 以上のことから, 各断面の主組成を体型別に見ると, E6, E7では男女各体型とも体腔が主をなしたが, E8, E10では, A, C, D体型の順に, 男性は筋層, 体腔, 脂肪層, 女性は体腔, 体腔, 脂肪層, E12では, 同じく.男性は筋層, 筋層, 脂肪層, 女性は筋層, 脂肪層, 脂肪層となり.性, 体型による相違が認められた.8) 相関関係として, 年齢との間には男女ともE8とE10では脂肪層は正, 筋層は負の相関によって, 女性のE12では両者とも負の相関によってそれぞれ総断面積と協調する傾向が見られた.また, Rohrer指数との間には, 腹部では男女とも総断面積と脂肪層の協調が認められ, 男性では体腔もこれに加わる傾向が認められた.
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