昭和医学会雑誌
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48 巻, 4 号
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  • ―薬理学的自律神経遮断による検討―
    向井 英之, 小林 洋一, 小林 正樹, 矢沢 卓, 馬場 隆男, 新谷 博一
    1988 年 48 巻 4 号 p. 437-448
    発行日: 1988/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    房室ブロック患者に対して, より生理的なpacing modeを選択する際, 洞機能障害 (SND) の有無が問題となる.また洞不全症候群 (SSS) の下位伝導障害の進展を推測する際も, 房室ブロックのSND合併率を検討することが参考になる.このことからI-III度房室ブロック78例と脚ブロック8例計86例をブロック程度別, 部位別に分類し, 洞機能について検討した.洞結節は自律神経の影響を強く受けているため, 63例について薬理学的自律神経遮断 (PAB) を用い, 自律神経の影響を受けない固有の洞機能の評価も試みた.SNDは86例中28例 (33%) でみられた.ブロック程度別, 部位別に有意差はなかったが, 部位別にはHV blockで42%, 2か所以上の伝導障害を有するMixed blockで54%と, この2群で多くみられた.max CSRTはIII度, HV, Mixed blockで延長しており, SSSと同様に著明に延長している例もあった.ブロック程度別には, PABによりSNDは62例中19例 (31%) から29例 (47%) に増加し, 特にIII度房室ブロックは43%から77%へ, 高度房室ブロックは20%から47%へ増加した.部位別にはPABによりSNDは63例中20例 (32%) から30例 (48%) へ増加し, 特にHis東内 (IH) blockは8%から62%へ有意に増加し, HV blockも45%から65%へ増加した.III度, 高度, IH, HV blockで内因性SND (PAB後のSND) が多く, % autonomic chronotropyで検討するとPAB前は交感神経緊張に傾いていた.この4群では, 洞機能正常化の方向に交感神経が作用して, PAB前SNDは過小評価されていると考えられた.一方他の群はPAB前副交感神経緊張状態にあり, SNDは過大評価される傾向にあった.PAB後新たにSND (+) となった例では高率に合併症を認め, 合併症を有する例は内因性SNDを示す可能性が高く, またPAB後の比較ではSND例の方が高齢であり, 高齢者ほど内因性SNDを合併しやすい可能性が示唆された.内因性SNDは従来考えられていた以上に多く, 明らかにSSSを合併している例もあることから, SSSと房室ブロックの中には同一の原因により伝導系障害を生じている一連の疾患単位と考えられる群があることが示唆された.また房室ブロックにpacemakerを植え込んだ後に, 自律神経の緊張状態が変化してSNDが顕性化し, より生理的なpacingを行うための至適modeが変化する可能性もある.このためpacemaker植込前にPABにより内因性SNDの有無を詳細に検討して, pacing modeを決定する必要がある.
  • 池田 実徳, 坂上 宏, 澤田 啓, 紺野 邦夫
    1988 年 48 巻 4 号 p. 449-454
    発行日: 1988/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    マウスマクロファージ様株化細胞J774.1は, 培養液中に分化誘導因子 (DIF) を自発的に産生していた.この培養上清を種々のヒト骨髄性白血病細胞 (ML-1, U-937, HL-60) に添加すると, 増殖能が低下し, 単球/マクロファージ様に形態変化した.さらに機能的マーカーであるFcリセプター, どん食能および単球/マクロファージのマーカー酵素であるnonspecific esteraseをも誘導した.このDIFの大半の活性は, ヒト組換え型TNFのmonoclonal抗体により中和されることより, J774.1細胞が分泌するDIFはTNFである可能性が示唆された.次に, 松かさ熱水抽出多糖分画のJ774.1細胞によるDIFの産生に及ぼす影響を調べた.中性多糖 (Fr.I) はDIF誘導促進活性はなかった (ED50>1000μg/ml) .酸性多糖分画のDIF産生促進活性は, それらの酸性度に応じて増加した (Fr.II (ED5034μg/ml) , Fr.V (ED50<3μg/ml) ) .また, 熱水抽出残渣より1%NaOHで抽出された多糖分画Fr.VI-IXD (の中でも, 特に酸沈殿により回収された分画Fr.VIに強い活性が回収された (ED50<3μg/ml) .これらの酸性多糖は, 同様にJ774.1細胞による細胞傷害性因子の産生をも増加させた.松かさ酸性多糖の制癌活性は, 恐らくマクロファージの活性化に伴うDIF/TNFの産生促進と関係があるものと思われる.
  • 山本 正人, 橋本 みゆき, 山田 二三夫, 野々山 友子, 深澤 一郎, 小口 勝司, 安原 一
    1988 年 48 巻 4 号 p. 455-458
    発行日: 1988/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    MAO阻害薬の降圧作用のメカニズムには不明な点が多い.そこで今回われわれは, 選択的MAO-A阻害薬のclorgyline, MAO-B阻害薬のdeprenye, 両type MAO阻害薬のpargylineを, normotensive ratに腹腔内, 脳室内投与し, 血圧に対する影響を検討した.実験にはWistar系雄性ラット (2009) を用い, 1群5匹とし, saline, clorgyline 5mg/kg, clorgyline 10mglkg, deprenye 10mg/kg, pargyline 10mg/kgをおのおの腹腔内投与した.同様に, saline, clorgyline (200μg/10μl) , deprenyl (200μ9/10μl) , pargyline (200μg/10μl) を脳室内投与した.血圧, 心拍数は薬物投与前, 投与2, 4, 6時間後に, 非観血的に測定した.Clorgyline 10mg/kg腹腔内投与群, clorgyline (200μ9/10μl) 脳室内投与群では, 両群とも薬物投与後2時間後に, 血圧の有意な低下がみられたが, 他の群では認められなかった.以上の結果より, 選択的MAO-A阻害薬のclorgylineのみが降圧作用を持つことがわかり, このことはMAO-Aの基質である脳内noradrenalineの血圧に対する作用と何らかの関係があることを示唆しているものと思われる.
  • ―特に骨盤変形について―
    岡田 雅晴
    1988 年 48 巻 4 号 p. 459-470
    発行日: 1988/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    Chiari骨盤骨切り術は先天性股関節脱臼の遺残変形に対し骨盤を横切移動することにより, 強固な屋根を形成する手術方法である.しかし当手術は両股正面X線像において, 骨盤を横切水平移動したように見られるが, 骨切り部を接点とする内外方への回旋移動である.このため骨盤環に彎曲と捻れが生じ斜狭骨盤となる.また成長終了後の女性においては, remodellingも期待出来ない.このため分娩時に児頭骨盤不適合となり帝王切開の危険性が生じる.著者は, Chiari骨盤骨切り術後の骨盤変形は成長終了後の妊娠可能な女性にとって重要な問題点であると考え, 当科にて当手術施行した18歳以上で妊娠可能な女性の症例について検討を加えた.症例は56例58関節, 病期別は前股関節症36例37関節, 初期関節症20例21関節, 手術時年齢は18歳~45歳平均27.2歳, 経過観察期間は1.5年~10年, 平均4.6年である.臨床的評価は日整会変股症判定基準に従った.X線学的検討は両股正面像にて骨片の移動を中心に, マルチウス撮影像にて骨盤入口形態を測定した.1部症例にはCT撮影を施行した.臨床的評価にては術前平均78.9点が術後95.7点と平均16.8点の改善をみたが, 特に疼痛の改善が著しかった.X線学的評価は移動率平均50.5%, CE角平均30.5度の改善が認められた.マルチウス撮影像においては全症例にて横径比の減少を認め, 術前・術後を比較すると平均8.5%の減少であった.この横径比と移動率, CE角改善度には負の相関関係が認められた.骨盤入口形態は術前ほぼ左右対称であるが術後その対称性がくずれ斜狭骨盤を生じた.この変形により帝王切開施行例が4例 (7.1%) 存在したが今後骨盤変形著明にて帝王切開が予想される症例を含めると10例 (17.9%) と高値を示した.臨床評価良好例は移動率45~55%, CE角改善度25~35度, 骨切り角度10~15度, 骨切りレベル8~10mmであった.骨盤変形を考慮すると移動率50%以下, CE角改善度30度以下とChiari手術方法が決定される.すなわち移動率50%以上の症例は骨盤変形による児頭骨盤不適合となる可能性が強く疑われる.以上よりChiari単独手術の限界はCE角0度と考えられる.CE角10度未満で適合性が不良で臼蓋被覆の不良なものが当手術の最適応と思われる.また全症例に術後の骨盤変形について説明する必要があると考える.
  • 伊藤 純治
    1988 年 48 巻 4 号 p. 471-483
    発行日: 1988/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ヒトの腹壁筋の機能を明らかにするために側腹筋 (外腹斜筋, 内腹斜筋, 腹横筋) および腹直筋の筋線維構成を検討し, 相互にまた他の骨格筋と比較した.材料は本学解剖実習に用いた10%ホルマリン水注入固定屍14体 (男性8, 女性6) から得られた側腹筋および腹直筋である.組織片は臍高の位置で採取し, 常法に従ってセロイジン包埋, 20μm薄切, ヘマトキシリン・エオジン染色を施した.これらの組織標本について, 筋層の厚さ, 1mm2中の筋線維数, 筋線維の太さおよび密度を計測した.結果は次のごとくである.1) 側腹筋の筋層の厚さは内腹斜筋が4.2mmで最も大, 以下, 外腹斜筋 (3.0mm) , 腹横筋 (2.2mm) の順であり, 3層とも男性が女性よりも優る傾向がみられ, 高齢者では腹横筋が外腹斜筋よりも大であった.2) 1mm2中の筋線維数は外腹斜筋は1189, 腹横筋は1134で, 内腹斜筋 (880) および腹直筋 (851) よりも大であり, 外腹斜筋と内腹斜筋では女性が男性より優る傾向がみられ, 腹横筋と腹直筋では性差はみられなかった.3) 筋線維の太さは, 内腹斜筋は1061.5μm2で, 外腹斜筋 (800.1μm2) , 腹横筋 (796.3μm2) , 腹直筋 (825.4μm2) に比べ大であり, ヒトの他筋と比べて中等大の筋群であった.男女を比較すると一般に男性が優る傾向がみられたが, 腹横筋では差がなかった.男性の高齢者および女性例では腹横筋が外腹斜筋よりも大なる傾向がみられた.また, 側腹筋群では筋線維の太さの相関関係がみられたが, 腹直筋との問には認められなかった.4) 筋線維の密度は側腹筋群は85%前後で高密度であったが, 腹直筋は66.9%で中等度であった.以上の事から, 側腹筋の中では内腹斜筋が最も発達し, 次いで外腹斜筋, 腹横筋の順であったが, 外腹斜筋には加齢的萎縮の傾向が強くみられた.このことから, 内腹斜筋は側腹筋の運動作用の主作働筋, 外腹斜筋はその補助筋であり, 腹横筋は内臓の支持, 腹圧あるいは呼吸運動に主として働き, 腹直筋は機能的に側腹筋と相違すると考えられた.
  • 黄 顕奮, 羅 昌平, 武重 千冬
    1988 年 48 巻 4 号 p. 485-492
    発行日: 1988/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    経穴と経穴でない部 (非経穴) とが区別されるのは, それぞれに連なる中枢神経経路が異なるためで, さらに針麻酔の鎮痛は経穴の刺激で出現するが, 非経穴の刺激で鎮痛が出現しないのは, 非経穴に連なる経路は, 非経穴や経穴の刺激で活動する鎮痛抑制系によって抑制されているからであることを, 足三里の経穴に相当するラットの前脛骨筋, 非経穴とした腹筋の刺激によって明らかにした.このような機構が他の経穴や非経穴の刺激でも現れるか否かを, 合谷に相当するラット上肢の背側第1指骨間筋および非経穴として上肢三頭筋を刺激して検討した.ラットの尾の逃避反応の潜伏期を痛みの閾値として, 合谷に相当する背側第1指骨間筋を筋が収縮する程度の強さで1Hzの頻度で刺激すると鎮痛が出現した.この鎮痛はナロキソンで拮抗され, 有効性の個体差を示した.この有効性の個体差は針鎮痛と同程度の鎮痛を発現する腹腔内投与の0.5mg/kgモルヒネ鎮痛のそれともよく相関し, また足三里に相当する前脛骨筋の刺激による鎮痛とも高い相関を示した.背側第1指骨間筋の刺激で中脳中心灰白質の背側部 (dorsal periaqueductal centralgray, D-PAG) に誘発電位が出現し, D-PAGの局所破壊で合谷刺激による鎮痛が出現しなくなった.これに反し, 非経穴とした三頭筋の刺激ではD-PAGに誘発電位は出現せず, かつ針鎮痛も出現しなかった.中脳中心灰白質外側部 (lateral periaqueductal central gray, L-PAG) からは経穴の前脛骨筋や非経穴とした腹筋の刺激で, 非特異的に誘発電位が出現したが, これは1Hzの刺激を重ねていると次第に抑制され約10数分後に出現しなくなるが, 同様の現象は背側第1指骨間筋や三頭筋の刺激でもみられた.上肢背側第4指根部を刺激した時には, 有効群の52例のうち13例で背側第1指骨間筋刺激よりも程度の低い鎮痛が出現し, D-PAGに誘発電位が出現したが, この刺激閾値は背側第1指骨間筋刺激による針鎮痛無効群のそれとほぼ等しかった.以上のことから, 合谷の背側第1指骨間筋や非経穴の三頭筋の刺激においても, 足三里や腹筋刺激で見いだされた経穴, 非経穴はそれぞれに連なる中枢神経経路によって区分されるという従来の見解が適用されることが明らかとなった.
  • 郭 試瑜, 佐藤 孝雄, 田中 正明, 武重 千冬
    1988 年 48 巻 4 号 p. 493-499
    発行日: 1988/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    経穴に低頻度刺激を与えて現れる針麻酔の鎮痛 (針鎮痛) は下垂体の除去で出現しなくなるので, 経穴から下垂体に情報を送る系を針鎮痛の求心路とし, 針鎮痛は最終的には痛覚の下行性抑制の働きで現れるので, これを針鎮痛の遠心路とすることができる.針鎮痛の求心路と遠心路とはそれぞれの部位の局所破壊で鎮痛が出現しなくなり, かつこれらの部位を刺激して現れる鎮痛が下垂体除去で出現しなくなるか否かで区別できるが, その他に, 両路の刺激によって現れる鎮痛の性質が全く異なることからも区別できることはすでに明らかにした.視床下部弓状核 (hypothalamic arcuate nucleus, HARN) の後部には遠心路としての性質を示す部位があることは既に確認されているが, HARNには求心路の性質を示す部位が存在することが報じられているので, 両路のHARN内における関係を明らかにした.ラットの尾逃避反応の潜伏期を痛みの閾値として鎮痛を測定した.K隸nigの脳図譜により電極を挿入して, HARNの中央部と後部とを別々に刺激・破壊できるようにした.中央部の局所破壊で針鎮痛は出現しなくなった.また, 中央部を刺激して現れる鎮痛は刺激終了後も持続し, ナロキソン投与, 下垂体の除去で出現しなくなったが, 後部の刺激による鎮痛は刺激の期間中にのみ出現し, ナロキソン投与, 下垂体の除去の影響を受けなかった.また, ナロキソン投与, 下垂体の除去で部分的に拮抗される実験例がみられた.刺激実験終了後, 脳の連続切片を作成し, 刺激部位を検すると, 中央部と後部とは近接して存在し, 鎮痛がナロキソンなどで部分的に拮抗された部位はその中間に混在していた.また, HARNの後部にモルヒネやβ-エンドルフィンを微量適用すると鎮痛が出現し, この鎮痛は痛覚の下行性抑制系の最終伝達物質のセロトニンおよびノルアドレナリンの拮抗剤の同時投与で出現が阻止された.また針鎮痛は副腎の摘出で下垂体除去と同様出現しなくなるが, 前記β-エンドルフィンのHARNへの微量適用による鎮痛は副腎摘出の影響を受けなかった.以上の結果からHARNには針鎮痛発現の求心路と遠心路とが近接して存在することが明らかとなった.
  • 五十嵐 治, 羅 昌平, 久光 正, 武重 千冬
    1988 年 48 巻 4 号 p. 501-505
    発行日: 1988/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    経穴を低頻度で刺激して出現する針麻酔の鎮痛 (針鎮痛) およびそれと同程度の鎮痛を発現する腹腔内投与の0.5mg/kgのモルヒネ鎮痛は, ともに脊髄クモ膜下腔や腹腔内へのナロキソンの投与で出現しなくなるので, モルヒネ耐性ラットではモルヒネ鎮痛のみならず, 針鎮痛も出現しなくなること (交叉耐性) をすでに明らかにした.一方, 経穴でない部 (非経穴部) を経穴を刺激するときと同じ条件で刺激しても鎮痛は出現しないが, 鎮痛抑制系を破壊すると, 非経穴部の刺激でナロキソンでは拮抗されないでデキサメサゾンで拮抗される鎮痛が現れることも明らかにした.したがって, モルヒネ耐性ラットの鎮痛抑制系を破壊すると, 一旦出現しなくなった針, モルヒネ鎮痛が再び出現し, またあらかじめ鎮痛抑制系を破壊しておくと, モルヒネ耐性が完全に形成されないこと, およびCholecystokininの拮抗剤のProglumideが鎮痛抑制系を破壊したのと同じ作用を持っていることなども本教室の研究で明らかにされている.Proglumideがモルヒネ耐性に拮抗するという報告があるが, これらは著者らの従来の研究からはProglumideが鎮痛抑制系の作用を抑制して鎮痛が出現したと解釈することができる.そこで, モルヒネ耐性ラットに対するProglumideの作用を検した.ラットの尾逃避反応の潜伏期を痛みの閾値として鎮痛を検した.モルヒネ耐性はモルヒネ50mg/kgを初日, 以後, 100mg/kgを連日1週間腹腔内に投与して形成した.Proglμmide20μgを腹腔内に投与すると, モルヒネ鎮痛が再び出現するようになった.この鎮痛はデキサメサゾンで拮抗された.以上の結果から, Proglumideがモルヒネ耐性に拮抗する作用は, Proglumideがモルヒネ耐性そのものに拮抗するためではなく, Proglumideが鎮痛抑制系の作用を抑制して, デキサメサゾンで拮抗される鎮痛が発現するためであることが結論された.
  • 吉田 洋一, 猫田 泰敏
    1988 年 48 巻 4 号 p. 507-513
    発行日: 1988/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    妊娠中の健康管理において, 血圧値変動の観察が妊娠中毒症および高血圧症等の循環器疾患のチェックに有意義であるにもかかわらず, 平均血圧値によって評価されていた.本研究は, 妊娠時期を通じて縦断的に得られた血圧値をもとに, 初めて, 正常妊娠における個人の血圧値推移パターンを検討したものである.また, 個人属性と血圧値との関連の検討, 妊娠末期の平均血圧値と出生体重の関連の検討もあわせて行った.調査方法は, 神奈川県内のY産婦人科クリニックにおいて昭和61年内に出産した妊婦のうち, 妊娠経過, 既往歴, 家族歴等を考慮し, 正常妊婦とみなせる355人を調査対象とした.血圧値は, 妊娠第5月から第10月において, 妊婦健診の際に, 日本循環器管理研究協議会の定める方法に準じて, 同一医師により測定されたものを用いた.身長, 体重は初診時の値を用いた.個人血圧値推移パターンの検討においては, 林の考案した測定値変動を含むデータの相関分析に関するモデルを用いた.1) 従来用いられている妊娠時期ごとの平均血圧値と個人別の血圧値との関係を検討した結果は, 正常妊娠においては妊娠時期ごとの個人の血圧値水準にかかわりなく, 妊娠経過に伴う個人別の血圧値は, 平均血圧値と類似の推移パターンを示すことがわかった.2) しかし, 個人の血圧値の変動を第5月から第10月までの間について検討した結果, 妊娠時期ごとにおいて若干の差は認められるが, 平均して, 収縮期血圧値では平均血圧値の±25mmHgに対し±17mmHg, 拡張期血圧値では平均血圧値の±20mmHgに対し±15mmHg程度の狭い幅を正常範囲として考慮すべきであることを明らかにした.すなわち, 収縮期血圧値, 拡張期血圧値の正常範囲をそれぞれ±8mmHg, ±5mmHg程度縮小すべきであろう.3) 個人属性と血圧値との検討の結果, 収縮期血圧値は, 身長・体重と正の相関, 拡張期血圧値は, 年齢・体重と正の相関がそれぞれ認められた.出産歴は血圧値にほとんど影響しないことも示された.4) 妊娠末期の個人の平均血圧値と出生体重には有意な関連は認められなかった.
  • 坂井 泰, 稲津 正人, 本間 生夫, 関谷 宗一郎, 本多 秀雄, 入野 理
    1988 年 48 巻 4 号 p. 515-518
    発行日: 1988/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    犬プルキンエ線維, 心室筋およびモルモット乳頭筋におよぼすジソピラミド (DPA) の陰性変力性作用について検討した.DPAは, 犬プルキンエ線維および心室筋において, 静止膜電位を変化させず, 濃度依存的にVmaxを減少させ, 活性電位持続時間 (APD90) を延長させた.DPAは又, モルモット乳頭筋の自動収縮および電気刺激誘発収縮を抑制した.2Hzおよび5Hzの連続電気刺激では約75秒まで徐々に収縮力は増加し, その後一定の収縮力を示したが, DPA (10-5M) は, 各頻度における収縮力を約25%抑制した.これらの結果はDPAが陰性変力性作用をもっていることを示しており, この作用はNa+-Ca2+交換機構のようなNa+に依存したCa2+動態と関係していることを示唆している.
  • 井上 恒一, 賀嶋 俊隆, 森保 幸治, 村田 升, 堀内 誠, 横川 秀男, 野元 成郎, 門倉 光隆, 山城 元敏, 舟波 誠, 山本 ...
    1988 年 48 巻 4 号 p. 519-526
    発行日: 1988/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    解離性大動脈瘤の術前診断においては解離の状況や部位, 範囲を立体的に把握しておくことが手術方針を決定するうえで重要である.X線CTは広く普及しているが横断面の画像しか得られず, 大動脈弓部付近の診断が容易ではない.本症例は弓部から下行大動脈へ続く巨大な解離性大動脈瘤であり, DSAやX線CTに加えて多方向からの縦断面像を撮影できるNMR-CTを併用したことが術前診断に有効であった.
  • 永田 篤文, 小川 良雄, 檜垣 昌夫, 吉田 英機
    1988 年 48 巻 4 号 p. 527-530
    発行日: 1988/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    陰茎絞扼症の1例を報告する.症例は32歳, 既婚男子.悪戯にて鋼鉄管を陰茎に挿入後, 抜去不可能となり陰茎絞扼, 陰茎腫脹, 尿閉を主訴に来院した.鋼鉄管は消防署所有の空気鋸を用いて切断除去し得た.絞扼時間は約8時間であった.尿道損傷および勃起障害を認めなかったため, 術後12日めに退院した.
  • 太田 秀樹, 鈴木 伸明, 田崎 修平, 小沢 進, 舩冨 等, 八田 善夫, 北村 公博
    1988 年 48 巻 4 号 p. 531-535
    発行日: 1988/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    脳卒中後遺症患者3例に対し, prostaglandin E1 (PGE1) の有用性を検討した。PGE1は20μgを朝, 夕2回10日間連日点滴静注し, 投与前後における血行動態の変化を, plethysmography, thermography, RI angiographyにより判定した.PGE1投与前に患側の血行障害が認められた2症例は投与後改善し, 残り1例は投与前, 著明な血行障害を認めず, 患側の冷感, しびれ感を訴えていたが, 投与後, これらの知覚異常は軽減した.自覚症状改善の機序は不明であるが, 脳卒中後遺症患者における四肢血行障害, 自覚症状改善に対するPGE1の有用性が示唆され, 今後その適応, 投与量, 投与期間につき詳細な検討が必要と考えられた.
  • 田所 康之, 土居 浩, 池田 尚人, 泉山 仁, 桑沢 二郎, 水島 秀勝, 宇佐美 信乃, 松本 清, 松井 将, 副島 和彦, 平良 ...
    1988 年 48 巻 4 号 p. 537-544
    発行日: 1988/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
  • 伊藤 治彦, 渡辺 浩志, 神長 昌子, 江波戸 久元, 繩田 淳, 野嵜 善郎, 鈴鹿 隆久, 瀧田 誠司, 奥山 和男, 田畑 穣, 賀 ...
    1988 年 48 巻 4 号 p. 545-551
    発行日: 1988/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
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