昭和医学会雑誌
Online ISSN : 2185-0976
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49 巻 , 3 号
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  • 田中 房江
    1989 年 49 巻 3 号 p. 221-229
    発行日: 1989/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    アルコール多飲者の膵を観察することによって膵の線維化・脂肪化の発生進展経過と慢性アルコール性膵炎との関連性について考察した.アルコール多飲者 (ア群, エタノール換算80g/day, 10年以上) 65例, 対照として胆石症 (胆石群) 48例, 膵頭部癌 (膵癌群) 17例の膵につき光顕的・電顕的および組織計測学的検索を行った.組織計測学的にはpoint counting methodに従って実質細胞占拠率, 線維占拠率, 脂肪占拠率を求めた.また, 膵線維化, 脂肪化の程度により軽度のものから0, I, II, IIIに分類し, それらの占拠部位より小葉内優位であるものをA型, 小葉内・小葉間が同程度であるものをAB型, 小葉間優位であるものをB型と分類した (0型, IA型, IAB型, IB型, IIA型, IIAB型, IIB型, III型) .なお, 著しい線維化・脂肪化例は基本構造の破壊がみられ, 部位分類は行なわず単にIII型とした.ア群ではprotein plugが15例, 23.1%に, 腺房腔の拡張・腺房中心細胞と小膵管の増生が41例, 63.1%に認められ特徴的であった.膵線維化はIIA型 (22例, 33.8%) ・IA型 (13例, 20%) とA型が多く, 小葉内優位に線維が進展し, 最終的に膵硬化像ともいうべきIII型へ進展すると考えられた.ア群の初期線維化病変であるIA型では小膵管周囲の他, 小血管周囲, 腺房周囲にも線維化が認められた.電顕的には小膵管周囲には線維芽細胞 (fibroblast) , 小血管周囲には周細胞 (pericyte) , 腺房周囲には脂肪摂取細胞 (fat-storing cell) 類似の未分化な問葉系細胞が観察され, 小葉内の線維化にはこれらの細胞が関与していることが示唆された.ア群のうち膵石合併例 (9例) では膵実質細胞の萎縮 (占拠率62.5%, 非有石群は71.3%) と小葉間線維化がより目立った.特に小葉管周囲の線維化が強く, 膵石による膵実質障害が肉芽組織の増生を促し, 膵硬化の加速因子となる可能性がうかがわれた.胆石群はア群に比べ小葉内の線維は少なく, むしろ小葉問脂肪化が目立った.また, 巣状の急性炎症病変が散見され肉芽組織を伴っており, これが線維化に関与していると考えられた.膵癌群では著明な小葉間線維化がみられ, 実質細胞の脱落壊死に伴い肉芽組織を介して線維化に至ることがうかがわれた.膵脂肪化はいずれの群でも小葉間が優位で, 小葉外に存在する脂肪組織が実質の脱落に伴って小葉内へ浸潤し置換すると考えられた.今回の検索の範囲では, 膵線維化と年齢には関係が認められず, 膵実質細胞は加齢に伴って減少し, 膵脂肪は増加する傾向にあった.
  • 青柳 今日子, 辻 正富, 永野 聖司, 大田 秀男
    1989 年 49 巻 3 号 p. 230-235
    発行日: 1989/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    近年増加している糖尿病および慢性血液透析症例の易感染性の成因を明らかにする日的で, 糖尿病患者34名, 糖尿病透析患者6名, 非糖尿病透析患者11名に, 健常者19名を対照とし, 好中球機能検査を行った.また, 糖尿病群をタンパク尿の有無により, 腎症合併群と非合併群に分けて対比した.イムノビーズ貪食能とNBT還元能検査をあわせて同時に測定したところ, 貪食能は健常群34.7±13.0%に比べて非糖尿病透析群が17.5±8.9%と最も低下し, 次いで糖尿病透析群が22.2±5.4%だった.さらに糖尿病群の腎症合併例と非合併例がそれぞれ21.4±9.996, 25.2±8.1%という順であり, いずれも健常群に対し有意の低下を示した (p<0.01) .NBT還元能の障害は, 健常群の2.2±1.3%に比べて糖尿病透析群が0.3±0.596と最も低下し (p<0.01) , 次いで非糖尿病透析群が1.1±1.4%, 糖尿病の腎症合併例と非合併例がそれぞれ1.2±0.6%, 1.6±0.9%と同程度に有意に障害されていた (p<0.05) .これら好中球機能と, 患者の年齢, 透析導入後の月数 (透析歴) や血液生化学検査結果 (尿素窒素, クレアチニン, 尿酸, リン, 総コレステロールなど) との関係では, 腎症非合併糖尿病群では, 加齢やHbA1値の上昇が, NBT還元能と有意に逆相関し (p<0.05) , 非糖尿病透析群ではクレアチニン値上昇が, 貪食能とNBT還元能の双方と有意の逆相関を示した (p<0.05) .また透析療法下の両群を血液生化学検査で比較すると, いわゆる尿毒性物質の尿素窒素, クレアチニン, 尿酸が非糖尿病透析群ですべてが有意に (P<0.05) 糖尿病透析群より高値を示し, また貪食能低下も著しかったことより, 高血糖状態よりも血中の尿毒性物質が貪食能に影響が大きいと示唆された.一方, 透析歴は糖尿病および非糖尿病の透析療法下の両群で, 好中球 (貪食能, NBT還元能) 機能に影響をおよぼさなかった.糖尿病群34例において, 食事療法適応中か薬剤療法下かという治療法のちがいによる有意差はなかった.
  • 塚本 彰通, 平井 規之, 橋野 正史, 小崎 俊男, 中山 徹也, 矢内原 巧
    1989 年 49 巻 3 号 p. 236-242
    発行日: 1989/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    分娩発来に関与すると考えられるOxytocin (OXT) とその間脳下垂体系の担体であるEstrogen stimulated Neurophysin (ESN) は, その作用の発現および分泌にEstrogen (E) が関与していることはよく知られているが, 分娩発来周辺期においてこれら蛋白ホルモンと胎児胎盤系ステロイド (S) がどのように変化し関連しているか未だ明らかでない.そこで30例の正常妊婦を対象として, 分娩開始1週間前 (1W) , 分娩第1期 (I) , 分娩第II期 (II) , 児娩出時 (D) および分娩後2時間 (IV) まで同一妊婦を連続追跡し, 母体血中遊離型Estrone (E1) , Estradiol (E2) , Estriol (E3) , Progesterone (P4) , Dehydroepiandrosterone (DHA) およびDHA-sulfate (DHA-S) をGC.MS法で, OXT, ESNをRIA法で測定し, それらの動態および相互関係を検討した. (1) S値の動態; E1, E2, E3は1WよりDまで変化は少なく, E2, E3はIVで著減するが, E1はほとんど変化しない.P4は1W-I間, I-D間, D-IV間で有意に減少する (P<0.001) .DHA, DHA-Sは共に1W-I間, I-D間で有意に増加しD-IV間では有意に減少する. (2) OXT値, ESN値の動態; OXTは1WからIまで変化は少なく, I-D間で有意に増加し (P<0.05) , IVでは減少する.ESNはDで最高値を示すが, IからIVまで変化は少ない. (3) 各ホルモン間の相関関係; 1WからDにおける各ホルモン問の相関関係を検討すると, E1とESN (r=0.3585, p<0.001) , E2とESN (r=0.2214, p<0.02) , DHA-SとOXT (r=0.1988, p<0.05) , OXTとESN (r=0.2588, p<0.01) に有意な正の相関が認められた.以上の成績より (i) 分娩経過中ESNは, E2のみでなくE1とも相関していることが示された. (ii) 分娩発来から分娩第1期にかけてP4の減少, DHA-Sの増加があり分娩発来後初めてOXTの増加が認められることから, 分娩発来に直接関与するのは胎児胎盤系Sの変化であり, OXTは妊娠末期に既に最高値に達しておりその変化が直接分娩発来に関与するのではないこと, さらに分娩経過中に増量することから分娩の促進にも働いている可能性が示唆された.
  • 河合 正登志, 豊田 益弘, 西島 久雄, 井上 道雄, 平良 雅人, 石井 正宏, 桜木 章司
    1989 年 49 巻 3 号 p. 243-261
    発行日: 1989/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    1979年1月から1985年12月までの7年間に昭和大学病院神経科精神科外来を初診し, DSM-IIIRにより大うつ病に該当した295症例より無作為に抽出した132例のうち, 初回病相期間中に初診した単極性うつ病75例を対象とした.これを初発年齢で2分し, 45歳未満で初発した28例を若年初発群, 45歳以上で初発した47例を初老期初発群として, 初診時のDSM-IIIRの多軸診断項目, DRS-S78のプロフィル, 性差, 軽快に至るまでの期間, 入院, 再燃, 受診期間, 転帰, DRS-S78の経時的変化について比較し, 次のような結果を得た.1) 初診時の評定で両群間に有意差がみとめられたのは, 重症度, 性格特徴, 発病に関与したストレスの加わり方, およびDRS-S78の5つの項目 (不安焦燥, 離人症, 睡眠障害, 希死念慮, 心気症状) であった.2) 経過で両群問に有意差がみとめられたのは, 入院率, 再燃回数, 服薬中断による再燃率とその同数, 受診期間, および転帰であった.3) 初老期初発群のプロフィルは, “強迫性”の人格傾向を有する“女性”が, “急激に起こった事象が優位”のストレス下に発病し, 比較的“軽症”で, “不安焦燥, 不眠, 心気傾向が強く, 離人症と希死念慮は軽度である”うつ病といえる.4) 初老期初発群の方が, “入院につながりやすく”, その後も“再燃を繰り返しやすく”, “長期にわたって通院を続けるものが多い”.5) 若年初発群では, 再燃する比率では変わらないが, 服薬中断に起因する再燃の比率が高かった.6) 初老期に初発するうつ病は, より若年期に初発するうつ病と比較していくつかの特徴点を有するが, 両者の共通点は多く, 1つのclinical entityであるとは考えにくい.7) しかし, 初老期に初発するうつ病は, Tellenbachの記載した精神病理学的特徴をもつうつ病に近く, 若年期に初発するうつ病はKraepelinの記載した内因性精神病としての躁うつ病の特徴に近く, 本研究を通して両古典的研究の関係を結び付けることが出来た.
  • 田村 信一, 篠原 広行, 戸田 千秋
    1989 年 49 巻 3 号 p. 262-268
    発行日: 1989/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    心電図同期心プールイメージング (マルチゲート法) より求められる駆出分画 (ejection fraction: EF) , 最大収縮速度 (peak ejection rate: PER) , 最大拡張速度 (peak filling rate: PFR) 等の心機能パラメータの精度とデータ収集のサンプリング間隔の関係を計算機シミュレーションと臨床データから検討した.安静時のR-R間隔の変動に伴う一心拍ごとの左室容積曲線の変化は, 曲線の各部が等しい割合で伸縮するモデルを仮定し, R-R間隔, 統計雑音, window幅, サンプリング間隔を考慮したマルチゲート法のシミュレーションを行った.このモデルでは駆出分画, 最大収縮速度, 最大拡張速度はサンプリング間隔によらず, 10~40msecで一定となった.サンプリング間隔10msecで収集した心アンギオプルの臨床データより, サンプリング間隔20~40msecの左室容積曲線を作成し算出した心機能パラメータは, やはりサンプリング間隔に無関係に一定となりシミュレーションと同じ結果になった.一方, 負荷EF検査では負荷の段階とともに左室容積曲線の形が安静時と著しく変化し, 特に最大収縮速度, 最大拡張速度はサンプリング間隔を20msecより40msecにすると低く算出された.この理由は負荷の段階が増すにつれ駆出分画が増加する症例では, 左室容積曲線の微分曲線から推定されるようにその左室容積曲線は安静時より高い周波数成分を含むためと考えられる.イメージの画質の点からみて, 壁運動の異常の有無の診断はサンプリング間隔20msecのイメージで充分可能である.以上のことから, マルチゲート法の最適なサンプリング間隔は安静時で20~40msec, 負荷時で20msecと結論した.
  • 野嵜 善郎, 稲葉 美徳
    1989 年 49 巻 3 号 p. 269-276
    発行日: 1989/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    左心系の容量負荷疾患である動脈管開存症 (PDA) において, 結紮術前後での血行動態の変化に伴う心房性Na利尿ペプタイド (ANP) の変動を検討した.対象は小児8例 (年齢11カ月~15歳) と, 37歳の成人1例の計9例である.9例の術前血漿ANPは157.8±118.6 (Mean±SD) pg/mlと高値を示していた.ANPは麻酔導入により上昇したが, PDA結紮後は速やかに低下し, 術後3日には56.3±39.2 (Mean±SD) pg/mlとなり術前に比べて明らかな低値を示していた.脈拍数には結紮前後を通して有意の変動は認められなかった.また, 血圧は麻酔導入前後で有意の変動がなく, 結紮により収縮期圧, 拡張期圧はともに上昇していた.これらのことより, PDA結紮前後でのANPの変動に対する脈拍数や血圧の影響は少ないものと思われた.4症例については術中にSwan-Ganzカテーテルを留置し, 平均中心静脈圧 (CVP) および平均肺毛細管楔入圧 (PCWP) を経時的に測定し, 左右心房負荷の血漿ANP分泌に対する影響を検討した.結紮により左房圧を反映するPCWPの低下とともにANPも低下し, ANPには結紮前および結紮後を通してPCWPと有意の相関が認められた.結紮の前後を比較すると, 結紮前の方がより強い相関を示していた.しかしながら, ANPとCVPとの問には相関がなかった.PDAにおいては, 左心房における圧負荷は主として左心系の容量負荷によりもたらされるが, 圧負荷だけの場合よりも, 容量負荷による左房壁の伸展を伴う場合に, ANP分泌がより亢進するものと思われた.PDAの重症度を示すとされる他の指標と比較すると, ANPはQp/Qs (肺体血流比) やPp/Ps (肺体動脈収縮期血圧比) および肺動脈平均圧とは有意の相関を示し, 心胸郭比>55%の症例では有意に高く, PDA重症度評価に有用であると思われた.さらに, 血行動態の指標のひとつとして, 心エコー法による心時相 (STI) を経時的に記録し, ANPと比較した.術前にはANPはLVSTI (左室心時相) との問には相関関係を示さなかったが, RVSTI (右室心時相) とは有意の相関を示していた.RVSTIは, Qs/QsやPp/Psおよび肺動脈圧との間に有意の相関関係を示していたが, このことからもANPはPDA重症度の指標のひとつとなり得ると考えられた.
  • 豊田 益弘, 河合 正登志, 西島 久雄, 井上 道雄, 石井 正宏, 井上 悟
    1989 年 49 巻 3 号 p. 277-285
    発行日: 1989/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    1979年1月から1984年12月までの6年間に昭和大学病院神経科精神科外来を初診したDSM-IIIの気分変調性障害に該当する47例を対象とした.これと同一範疇の感情障害の中心に位置づけられる大うつ病に該当する115例を対照に初発年齢と平均年齢および人格特徴, 性別による初発年齢分布との関係, 発病の誘因, DRS-S78 (昭和大学式うつ状態評価尺度1987年度版) による精神症状の推移, 転帰, 治療期間, 遺伝負因について臨床統計学的に比較検討を加え, 気分変調性障害の特徴を浮き彫りにし, 多軸診断を追加あるいは修正することで, より明確な診断基準を作成する為本研究に着手し, 次のような結果を得た. (1) 50歳以上の初発はなく, 初発の平均年齢は大うつ病に比較して有意に低く, 初発年齢のピークは女性では20歳代に, 男性では40歳代にあった.一方, 大うつ病では加齢とともに初発症例は増加傾向を示し, そのピークは男性では50歳未満に, 女性では50歳以上にあった. (2) 人格特徴は自己中心的, 依存的, 過敏という未成熟な神経症的人格傾向で, 大うつ病の人格傾向とは明瞭に異なっていたが, 40歳代初発症例では内向的, 強迫的という大うつ病に親和性のある人格傾向が認められた. (3) 誘因が認められる症例は, 大うつ病に比較して有意に多く, その内容は, 葛藤が有意に多くを占めていた.とくに女性では, 家庭内葛藤が多かった. (4) DRS-S78の総得点は, 大うつ病に比較して, 初診時では有意に低く, 第1週目までは有意に減少したが, 以後は有意な変動を示さなかった.一方, 大うつ病は第3週後まで有意に減少した. (5) 症状の改善をみた症例数は, 大うつ病に比較して有意に少なかった.また, 改善に要した期間は有意に長く, 躁転した症例はなかった. (6) 遺伝負因は, 大うつ病に比較して有意に少なかった. (7) 青年期・初期成人期の未成熟な神経症的人格傾向をもつ女性が葛藤を誘因として発症する抑うつと, 中年の男性に多く認められる大うつ病に親和性のある抑うつの2つの類型が存在した.
  • 佐藤 孝雄, 菱田 不美, 羅 昌平, 土屋 真弓, 武重 千冬
    1989 年 49 巻 3 号 p. 286-294
    発行日: 1989/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    経穴部の低頻度刺激によって出現する鎮痛 (acupuncture analgesia, AA) および非経穴部刺激で現れる鎮痛 (non-acupuncture point stimulation-produced analgesia, NAA) はいずれも副腎の除去で出現しなくなるが, 出現しなくなったAAやNAAはコルチコステロンでは回復しない.オピオイドの受容体結合にはNaイオンが影響することが報じられているので, オピオイドが関与するAAやNAAについて副腎除去とNaイオンとの関係を検討した.痛覚閾の測定はラットの尾逃避反応によった.副腎の摘出は背側から, 下垂体の除去は経耳的に行った.血漿Na濃度はNa, K分析装置によって尾静脈より採取した血液で測定した.AAは副腎摘出12時間, NAAは副腎摘出24時間経過すると出現しなくなったが, 5%NaCl液を経静脈的あるいは腹腔内に投与1時間後には再び出現するようになった.NaCl単独では鎮痛は出現しなかった.経穴部刺激で中脳中心灰白質背側部 (D-PAG) に, 非経穴部刺激で中脳中心灰白質外側部 (L-PAG) に出現する誘発電位はいずれも副腎の除去で出現しなくなったが, NaCl液の投与で再び出現するようになった.副腎の摘出で出現しなくなったD-PAGおよびL-PAGの刺激で出現する鎮痛はNaCl投与1時間後には再び出現した.下垂体の除去で出現しなくなったAAあるいはNAAはそれぞれ視床下部弓状核後部へのモルヒネかβ-エンドルフィン, あるいはACTHの微量適用で再び出現する様になったが, さらに副腎を摘出するといずれの鎮痛も出現しなくなった.NaCl液を添加するとAAは経穴刺激とモルヒネかβ-エンドルフィンの微量適用で, NAAは非経穴部刺激とACTHの微量適用で再び出現した.副腎摘出後12時間あるいは24時間で消失するまでの問に現れるAAやNAAは副腎摘出前とは異なり, それぞれナロキソンあるいはデキサメサゾンかκ-antagonistで拮抗されないが, NaCl液の添加でこれらの拮抗作用は出現した.副腎摘出後Na+の血漿濃度は6時間, 12時間, 24時間と順次徐々に低下したが, NaCl液の投与でこの低下は回復した.以上から, AAでは脊髄内オピオイド, 弓状核内β-エンドルフィンが関与するシナプス伝達およびナロキソンの拮抗作用の発現に, NAAでは, 脊髄内ダイノルフィン, 弓状核内ACTHが関与するシナプス伝達およびκ-antagonistやデキサメサゾンの拮抗作用の発現などのいずれにもNaイオンが必須であることが明らかとなりAAとNAAに対するagonistの作用及びagonistとantagonistの作用に必須なNa+濃度は異なっていることが示唆された.
  • 羅 昌平, 菱田 不美, 池田 尚人, 西原 寛, 武重 千冬
    1989 年 49 巻 3 号 p. 295-301
    発行日: 1989/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    経穴を低頻度刺激して出現する鎮痛 (AA) および視床正中中心核外側部か視床下部後部の一部を破壊した後, 非経穴を刺激して出現する鎮痛 (NAA) は, 下垂体の除去によって出現しなくなる.また経穴あるいは非経穴から下垂体に到る脊髄内の中枢経路はそれぞれ異なっている.本研究ではAAおよびNAAそれぞれの脊髄内経路の興奮伝達に関与するオピオイドを検討した.ラット尾逃避反応の潜伏期 (TFL) を痛覚閾として, 鎮痛はTFLの増加率で現した.薬物は脊髄クモ膜下腔に挿入したカニューレを介して, あるいは腹腔内に投与した.Met-Enk, Leu-EnkおよびDynの抗血清を脊髄内クモ膜下腔に投与するとMet-Enk抗血清投与の場合のみAAが出現しなくなった.一方, NAAはDynの抗血清を投与した時にのみ出現が阻止された.さらにκ受容体の拮抗剤Mr2266を腹腔内に投与するとNAAは出現しなくなった.非経穴部を刺激して出現する中脳中心灰白質外側部の誘発電位はMr2266の腹腔内投与で出現しなくなったが, 経穴部の刺激によって中脳中心灰白質背側部に現れる誘発電位には影響は現れなかった.またDynのagonist, U50-488H腹腔内投与でNAAと同程度の鎮痛が出現し, この鎮痛はデキサメサゾンで拮抗された.以上の結果から, AAの脊髄内の伝達に関与する物質はMet-Enk免疫反応性ペプタイドであり, NAAの脊髄内の伝達に関与する物質はダイノルフィンであることが明らかとなった.
  • 松岡 功樹, 飯野 史郎, 浜田 昇, 伊藤 國彦
    1989 年 49 巻 3 号 p. 302-308
    発行日: 1989/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    未治療バセドウ病患者を比較的大量の131Iにより治療すると, 時に甲状腺クリーゼが起こることはよく知られた事実である.その発症機序については不明の点が少なくないが, 投与した131Iにより甲状腺の濾胞が破壊され, 大量の甲状腺ホルモンが急激に循環血中に流入することが原因となり得るものと考えられている.一方, これらの患者を比較的少量の131Iにより治療した際の甲状腺機能, とくに遊離甲状腺ホルモン, Tgなどがどのような変動を示すのかについて検討した報告はほとんどないのが現状である.そこで, 著者らは, これらの患者を3600rads程度の131Iで治療した場合の甲状腺機能の初期変動を経時的に追跡検討した.症例は未治療のバセドウ病患者20例 (男4例, 女16例) で, 131I投与前, 投与後1, 3, 7および10日目に採血し, 血中T4, T3, FT4, rT3, TBGおよびTgを市販のキットを用いて測定した.これらの患者の甲状腺腫の平均重量は62.19, 吸収線量は3650radsであった.131I投与後20例中17例 (A群) において血清T4, T3, FT4およびrT3濃度は有意に減少し, 残りの3例 (B群) においては増加傾向を示すのが認められた.血清Tg濃度は全例において増加し, 血清TBG濃度は不変であるのが認められた.131I投与前の甲状腺腫の大きさ, 血清Tg濃度および131I投与量はB群においてA群におけるよりも大きい傾向を示すのが認められた.131I投与後に認められた甲状腺機能の増減の機序については十分明らかでないが, 甲状腺腫の比較的小さい患者に比較的少量の131Iを投与すると, 131Iの甲状腺ホルモン生合成過程抑制効果はその破壊効果を上廻るため, 血中甲状腺ホルモンは減少することが考えられ, 甲状腺腫の大きい患者に比較的多量の131Iを投与すると, 131Iの甲状腺濾胞破壊効果がホルモン生合成過程抑制効果を上廻るため, 血清甲状腺ホルモンは増加することが考えられた.以上の結果より, 甲状腺腫の比較的小さい患者においては比較的少量の131I投与により血清甲状腺ホルモン濃度は減少傾向を示すが, 甲状腺腫の比較的大きい患者を131Iを用いて治療する場合には, 投与量が比較的少量であっても投与後血清甲状腺ホルモンは増加して甲状腺クリーゼを発症する可能性を全くは否定できないこと, したがってこれらの患者においては, 131I投与前に抗甲状腺剤治療を行って甲状腺機能を低下せしめておくことが必要であると結論された.
  • 友安 浩, 杉山 弘, 高木 康, 宮 哲正, 五味 邦英
    1989 年 49 巻 3 号 p. 309-314
    発行日: 1989/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    牛脳を酵素材料としてミトコンドリア分画を分離し, この分画中のクレアチンキナーゼ (CK) の諸性状を検索した.まず, Graceらの方法に従い組織をホモジナイズし, 超遠心分離操作によりミトコンドリア分画を精製した.ついで, このミトコンドリアの膜からミトコンドリアCK (m-CK) を溶出し, Sephacryl S-300カラムで分子量の大きさによりA, B分画を分離した.各溶出液中のCK活性, CKアイソザイム分析を行い, さらにA, B分画をそれぞれDEAE Sephadex CL-6Bイオン交換カラムを用い, 溶出緩衝液である50mmol/1トリス緩衝液 (pH7.5) のNaCl濃度を0~500mmol/lと変化させ分離・溶出した.この結果, A分画はさらにA1, A2の分画に, B分画はB1, B2に分離された.これらの分画を, アガロースゲルによる電気泳動で分析してみると, A1, A2, B1分画は塗布点に, B2分画はアルブミン分画 (CK-BB) に泳動された.さらに, 抗CK-M抗体によりCK-M活性を阻害した後に染色を行うと, いずれの分画も活性が阻害されず残存した.これらの事より, 前者はm-CK, 後者はCK-BBと同定した.また, 薄層ゲル濾過, Sephacryl S-300カラムクロマトグラフィーより, A1分画は高分子のm-CKで, A2分画は82000daltonの分子量のm-CKであることが確認された.これらの分離したm-CKの高分子分画と, 通常の大きさの分画の酵素動力学的性質は, クレアチンリン酸に対するKmはA1で0.54~0.87, A2で0.47~1.00mmol/l, 活性エネルギーは, それぞれ77.8~99.5, 85.7~102.3kJ/molであり, MacroCKtype-2と同様75kJ/molより大きい値であった.さらに熱不活化試験による残存活性は7.4, 3.8%であり, 血清内で認められるm-CKより熱に対して不安定であった.
  • 大泉 高明, 児玉 恭子, 辻 まゆみ, 小口 勝司
    1989 年 49 巻 3 号 p. 315-321
    発行日: 1989/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    クマザサアルカリ抽出液 (SE) の膜作用について, SEを極性により7つのFractionに分離し, SEと比較検討した.動物は体重約1609, 6週齢のSD系雄性ラットを用いた.50%低張性溶血試験において, SEおよびFr.3, Fr.5は比較的高濃度で溶血阻止作用が見られた.初代培養肝細胞からの酵素逸脱は, SEおよびFr.4で抑制された.表面張力測定ではSEおよびFr.3, Fr.5の高濃度での表面張力の低下により界面活性作用が見られた.SEおよび各FractionのDPPC liposome bilayerの相転移温度に対する変化はほとんど認められず, 膜流動性には影響しなかった.以上よりSEの膜安定化作用はFr.3, 4, 5に含まれるpolysaccharide, lignin, chlorophyllにより生じたものと考えられる.また, SEと他の各生薬エキスとの膜作用を培養肝細胞を用いて検討したところ, SEが最も肝細胞膜保護作用が強かった.
  • 山田 光彦, 木内 祐二, 橋本 みゆき, 安原 一, 小口 勝司, 流石 恵子, 渡辺 和枝, 庄 貞行, 田島 博之, 菅沼 孝夫, 今 ...
    1989 年 49 巻 3 号 p. 322-330
    発行日: 1989/06/28
    公開日: 2010/09/09
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