〔目的〕骨粗鬆症の病態究明に対し, MD/MS法を用いて, その画像より4群に分類し骨萎縮度の重症度判定を試み, 臨床的に活用できるかを検討した.さらに, 骨粗鬆症とオステオカルシン (以下, OC) の関係を量的および質的変化の面から研究するために, 簡単で, 収率の良いOCの抽出方法を考案し, 精製した.〔対象および方法〕I.骨粗鬆症例75名, 男性12名, 女性63名, 平均年年齢は, 男性69.4歳女性74.4歳これらに対し, 第2中手骨をMD/MS法により解析し, その画像を4つに分類し, 慈大式分類と比較検討し重症度分類を試みた.II.慈大式分類II度以上の骨粗鬆症患者25名, 男性4名, 女性21名, 平均年齢は, 男性80.75歳, 女性73.38歳, これらの血中OCを測定し, 血中Ca, P, Al-pおよびMD法, MD/MS法による骨密度との関連性について検討した.III.1.ウシおよびヒトの大腿骨皮質骨を用いて, Priceらの方法をmodifyし, 水洗いにより可溶性蛋白を除去後, ポリトロンRT10/35を用いて粉砕し, 6, 0009×20min遠心した.この沈渣を2日間0.5M-EDTA, pH8.0の溶液にて脱灰, その後10, 0009×30min遠心し, 上清成分を集め, 沈渣を再度0.5M-EDTAにて2日間脱灰, 遠心, この操作を5回繰り返す.この上清成分をmembrane濾過し, 50mM-NH
4HCO
3溶液で透析後, 凍結乾燥し高速液体クロマトグラフィ (HPLC) を用いて精製した.2.精製OCのポリアクリルアミド電気泳動を行い, 泳動bufferとゲル内に1mMCaCl
2を添加し, Ca
2+存在下における泳動変化を確認した.精製OCの分子量の検定はHPLCを用いて行った.〔結果および考察〕1.骨粗鬆症例のMD/MS法の分類と慈大式分類との間に相関を認め, 新しい骨粗鬆症の評価指標に役立つと考えられ, 質的変化を捉える手段として有用と思われた.II.骨粗鬆症例の血中OC値は, 3.6-16.7ng/dl, 平均7.76ng/dlであり, 低値を示した症例はなく, また, OCと血清Ca, P, Al-pとの相関は認めなかった.MD法のΣGS/D, GSmin, MCIはほぼ正常であり, OCが維持されていれば, 骨密度は保たれ, 一方, MD/MS法では, 骨密度の低下に反応して血中OC値が上昇する傾向を示し, OCが骨形成に関与するものと考えられた.III.新しい方法を考案し, 純粋なOCを抽出, 精製した.この方法により効率よく簡単にOCを抽出することができ, 今後OCの質的変化の有無についての研究に役立つものと考える.
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