昭和医学会雑誌
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50 巻 , 5 号
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  • 伊東 昇太, 中野目 有一, 秋葉 雅夫
    1990 年 50 巻 5 号 p. 463-468
    発行日: 1990/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ドイツ人精神科医H.Simonの生活, なかんずくその病院活動について紹介した。彼は生涯で一回, 大変印象的なうつ病性の告白を行っていて, その意味について若干の検討をこころみた.キーワード: ドイツ人精神科医H.Simon, 性格形成, 抑うつ体験, “Schuldfreier Raum”, 精神療法
  • 板垣 智昭, 千葉 博, 斉藤 裕, 矢内原 巧, 丸山 正義
    1990 年 50 巻 5 号 p. 469-476
    発行日: 1990/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    脱落膜からのプロラクチン (PRL) 分泌調節機序は, まだ不明な点が多い.今回, 正常分娩例で得られた脱落膜組織を用い, インキュベーション実験を行い, 妊娠週数とともに増加する妊娠性ステロイドが, いかにPRL分泌に影響を与えるかを検討した.また気管支喘息を合併する妊婦8例に, 選択的帝王切開時, グルココルチコイドのbeta-methasone (β-M) を投与し, 母児並びに羊水中のPRLとステロイド濃度を測定した.それらを非投与例の選択的帝切例と比較し, グルココルチコイドの母児および羊水中の内分泌環境に与える影響を検討した.さらに, 帝切時得られた脱落膜のインキュベーション実験により, グルココルチコイド母体投与の脱落膜由来PRL (d-PRL) 分泌に及ぼす影響を検した.正常分娩例の脱落膜に, cortisol (F) 10-7M~10-5M, estradiol (E2) 10-6M, estrio1 (E3) 10-5M, dehydroepiandrosterone-sulfate (DHA-S) 10-5M, ならびにβ-M2×10-5M, をそれぞれ添加してインキュベーションすると, F添加によりd-PRL分泌の平均値は増加し, 無添加時を100とした時のパーセント変化率ではF10-5M添加にて有意の上昇がみられた.また, F添加によるd-PRL分泌刺激効果はactinomycin D (AC-D) 添加により抑制された.一方, E2, E3, DHA-Sおよびβ-M添加にてその変化はみられなかった.β-M投与により, 母体血および羊水中PRL値は低値を示したが, 胎児血PRL値に変化は認められなかった.副腎性ステロイドのF, DHA, DHA-Sは, 投与例にすべて低値を示し, 羊水 (AF) のDHA, 臍帯静脈血 (UV) のDHA-Sを除くすべてのサンプルに有意差を認めた.同時に得られた脱落膜のインキュベーション実験で, 対照群と比較して投与例のd-PRL分泌は減少していた.これらの結果より, 母体に投与されたグルココルチコイドは胎児のステロイド環境に強く影響を及ぼし, さらに羊水中PRL値並びにd-PRL分泌を抑制しているものと考えられ, Fがd-PRL生成分泌に関与している可能性を示唆している.さらに, Fにより促進される胎児肺成熟に, 羊水中のPRLも関与している事が推察される.
  • 鵜澤 龍一, 金 正基, 平沢 政人, 細谷 純一郎, 高木 康, 五味 邦英
    1990 年 50 巻 5 号 p. 477-482
    発行日: 1990/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    Creatine kinase (CK) MMサブバンド変換因子の本態はcarboxypeptidpse-N (car-N) であると提唱する報告がなされているが, いまだ推測の域を出ない.今回われわれは, このサブバンド変換因子の本態について, 第一報に引き続いて検討を行い, 若干の知見を得た.CM Affigel Blueを用いてヒト血清よりprotease分画とprotease free分画を分取し, これらを心筋組織抽出液から精製したCK-MM分画 (100%MM3) に添加した結果, サブバンド変換はprotease分画添加時のみに認められた.また両者のcar-N活性を測定したところ, protease分画では活性が検出されたが, protease free分画では検出されなかった.次にヒト血清をゲル濾過法によって分画し, car-N活性の認められた分画を前述の精製CK-MM分画に添加した結果, サブバンドはMM3からMM2を経てMM1に変化した.またcar-N活性の検出されなかった分画についても同様の検討を行ったがサブバンドの変化は全く認められなかった.さらにヒト血清をguanidine-HClを用いて変性させ, ゲル濾過法により分画してcar-N活性を測定したところ, car-N活性は単一ピークとはならず, 高分子から低分子領域に幅広く検出された.この低分子分画に存在するcar-N活性分画を精製CK-MM分画に添加して一定時間反応させたところ, サブバンドの変換が確認された.一方, car-N活性の各種阻害剤を精製CK-MM分画とcar-N活性分画の混液に添加した結果, 2-phenanthrolin, ε-amino-n-caproicacid, およびEDTA-2Naではサブバンド変換は認められず, cadmium sulfate添加ではMM3からMM2を経てMM1への変換が確認された.また, 急性心筋梗塞患者血清中のcar-N活性を発症後経時的に追跡した結果, CK-MB活性がピークを形成して増加減少するのに対して, car-N活性は明かなピークを形成せず, ほぼ一定の値を遷移した.これらの結果から, 血清中のCK-MMサブバンド変換因子はcar-Nである可能性が示唆されたが, car-Kのようなcar-N類似の未知の物質の関連も否定できなかった.
  • 西原 寛, 河谷 正仁, 武重 千冬
    1990 年 50 巻 5 号 p. 483-491
    発行日: 1990/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    免疫組織化学法で検出されたセロトニン抗体陽性産物は猫膀胱神経節では細胞を取り囲むように神経終末に見い出された.経動脈的にセロトニン (40~80nM/kg, i.a.) を投与すると早発性急峻型とそれに引き続く遅発性持続型の2つの型の膀胱収縮が誘発された.このうち早発性の収縮は5HT3レセプター拮抗剤のICS205-930 (0.7~352nM/kg, i.a.) またはMDL72222 (3.2~320nM/kg, i.a.) で抑制されたが, 遅発性の収縮は変化しなかった.ICS205-930の拮抗作用はMDL72222の10~20倍であった.セロトニンによる早発性収縮に一致して膀胱神経節の節後神経に放電が出現したが, これもMDL72222 (6.4~320nM/kg, i.a.) によって拮抗された.したがって, セロトニンによる早発性の膀胱収縮は膀胱神経節細胞に存在する5HT3レセプターを介する脱分極によるものと予想された.膀胱神経節のシナプス伝達は膀胱収縮を起こす量の約1/10~1/100の低濃度のセロトニン (0.8~16nM/kg, i.a.) で顕著に抑制された.この抑制効果を出現させるには適当な刺激頻度または刺激強度が必要で, これよりも刺激を増大すると抑制効果は著しく減弱した.このセロトニンによる抑制作用はMDL72222 (3.2~159nM/kg, i.a.) によって拮抗された.したがって, セロトニンのシナプス伝達抑制作用は神経節細胞に存在する5HT3レセプターを介してセロトニンが過分極性の抑制をひきおこして誘起されることが示唆された.
  • 和田 雅史
    1990 年 50 巻 5 号 p. 492-498
    発行日: 1990/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ヒト眼輪筋の機能的特徴を明らかにするために, 眼輪筋の横断面積, 1mm2中の筋線維数, 筋線維総数, 筋線維の太さと密度等を算出し, 他の筋と比較検討した.研究対象は, 29歳から88歳に至る解剖実習屍20体 (男性12, 女性8, 平均年齢61.7歳) から得られたもので, 右側眼輪筋の上瞼部, 下瞼部の中央部で, それぞれ眼瞼部および眼窩部にわたって摘出した.組織片はホルマリン水再固定, 水洗, 脱水, セロイジン包埋処理, 25μm薄切し, HE染色を施した.筋線維数の算定はsampling methodにより, 筋線維の太さは画像解析装置により計測した.結果は次のごとくである.1) 筋腹横断面積は下瞼部が上瞼部よりも大で, この傾向は男性が女性よりも著明であり, 下瞼部では男性が女性よりも大の傾向がみられた.2) 1mm2中の筋線維数は上瞼部が下瞼部よりも多い傾向がみられたが, 男女の差は認められなかった.また, 他筋に比べて著しく多かった.3) 筋線維総数は下瞼部の方が上瞼部よりも, 男性が女性よりもそれぞれ多い傾向が見られた.4) 筋線維の太さは下瞼部が上瞼部に比べて大で, 男性が女性よりも大なる傾向がみられ, 他筋に比べて著しく小であった.5) 筋線維の密度は下瞼部が上瞼部に比べ高く, 男性が女性よりも高い傾向が見られたが, 男性の下瞼部では個体差が著しかった.6) 筋腹横断面積に対して, 1mm2中の筋線維数は上瞼部は負, 下瞼部は正の弱い相関傾向が認められ, 筋線維総数は上, 下瞼部とも正の相関傾向が認められたが, 筋線維の太さとの間には相関関係は認められなかった.
  • 忠重 悦次, 和田 雅史, 長谷川 真紀子, 高橋 剛男
    1990 年 50 巻 5 号 p. 499-506
    発行日: 1990/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    舌骨筋群の機能を比較解剖学的に明らかにするために, ラット4頭 (雄2, 雌2) から得られた舌骨筋群の各筋の筋線維をLDH染色によって分別し, 筋腹横断面の筋線維数および3筋線維型の比率と太さを比較検討した.結果は次の通りである.1.筋腹横断面積はラット舌骨筋群の中では顎二腹筋前腹と胸骨舌骨筋が他よりも大であったが, 下肢筋および体幹筋に比べて著しく少で, 性差は認められなかった.2.1mm2中の筋線維数は肩甲舌骨筋は最も少ない部類に属したが, 舌骨上筋群と甲状舌骨筋は比較した下肢筋および体幹筋よりも多かった.3.断面の筋線維総数は顎二塵筋前腹が最も多く, 比較した筋中最少の胸骨乳突筋に匹敵した.4.3筋線維型の比率は白筋線維が最も多い筋は顎二腹筋後腹, 胸骨舌骨筋および肩甲舌骨筋, 赤筋線維が最も多い筋は顎舌骨筋のみで, その他は中間筋線維優位であった.5.3筋線維型の太さは舌骨筋群では常に白筋線維, 中間筋線維, 赤筋線維の順に大で, 下肢筋や体幹筋に比べて白筋線維は著しく小で, 性差がみられなかった.また, 一般に各筋線維型とも胸骨舌骨筋と肩甲舌骨筋が大であったが, 赤筋線維では胸骨甲状筋も大で下顎横筋は常に最も小であった.以上のことから, 検査したラット舌骨筋群の筋線維は一般に白筋系で, 顎舌骨筋のみは赤筋的な要素が多く, 太さは下肢, 体幹の筋よりも著しく小であった.カニクイザルに比べて弱く, 特に舌骨の固定に与る筋ではその傾向が著しく, 系統発生的な運動姿勢の変化の差が舌骨筋群にも現われていると考えられた.
  • 北原 正樹
    1990 年 50 巻 5 号 p. 507-512
    発行日: 1990/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    正常咬筋の個体差の実態を断面解剖学的に明らかにするため, MRI撮影機を使用し, 咬筋断面積と年齢咀嚼習慣側および体型との相関関係を検討した.20歳代から50歳代の健康なボランティア52名 (男性26, 女性26) を研究対象として, それぞれ左右咬筋断面積と同一平面における顔面総断面積とを, MRI撮影装置附属のディスプレイコンソールで直接測定した.咬筋断面積と年齢および体型との問には相関関係を認められなかったが, 同一平面における顔面総断面積との問には, 相関傾向が認められた.習慣側については, 左右咬筋の相対的関係を習慣側と対比して検討した結果, それぞれの咬筋断面積優位側に対してそれと同側が習慣側である確率は高い傾向が認められた.
  • 辰喜 亮介
    1990 年 50 巻 5 号 p. 513-521
    発行日: 1990/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    骨格筋として横隔膜の機能的特徴を明らかにするために, その筋線維構成の比較検討を行った.研究対象は46~86歳の病理解剖屍8例 (男性3, 女性5) から得られた横隔膜で, 胸骨部, 右肋骨部, 腰椎部右外側脚の各々の起始と停止の中間部で採取したものである.筋組織の染色はSudan Black B染色により, 筋層の厚さ, 1mm2中の筋線維数, 三筋線維型の比率, 太さ, 密度を各部について検討するとともに, 同一方法による他筋と比較した.結果は次の如くである.1) 横隔膜筋層の厚さは各部の平均2.1~2.5mmで, 腰椎部が最も厚く, 以下肋骨部, 胸骨部の順であったが, その差は僅かであった.他筋と比べて, 棘腕筋よりも薄く, 側腹筋や下咽頭収縮筋と大よそ等しかったが, 内腹斜筋よりもやや劣っていた.2) 1mm2中の筋線維数は各部の平均532~608で, 腰椎部が最も多く, 女性が男性よりも多い傾向が見られたが, その差は僅少であった.他と比較して, 下咽頭収縮筋および大腰筋よりも男女ともに少なく, 上腕の筋よりも男性では多く, 女性では等しかった.3) 三筋線維型の比率は各部とも大よそ白筋線維2/3, 中間筋線維1/3, 赤筋線維1/30で性差を認め難く, 他筋に比べて赤筋線維が著しく少なかった.4) 筋線維の太さは一般に肋骨部では白筋線維, 中間筋線維, 赤筋線維の順に大の傾向が見られたが, 胸骨部と腰椎部では白筋線維と中間筋線維との間には差がなく, 赤筋線維のみ小であった.男性は常に女性よりも大で, 赤筋線維ではその傾向が著しく, 部位別には各筋線維型とも常に腰椎部が最も小であった.他と比べると, 白筋線維は上腕の筋よりも男性では小, 女性では大であり, 大腰筋, 下咽頭収縮筋よりも男女とも大であった.赤筋線維は下咽頭収縮筋よりも男女とも大, 上腕の筋よりも男性は小, 女性例は等しく, 大腰筋とは男女とも等しかった.5) 筋線維の密度は90%前後で, 胸骨部と肋骨部はほぼ等しく, 腰椎部がやや劣る傾向が見られた.以上のことから, 横隔膜の高さや運動についての個体差には, その厚さや筋線維構成の部位差が密接に関連することが考えられた.
  • 佐孝 晶子, 小林 昭夫
    1990 年 50 巻 5 号 p. 522-529
    発行日: 1990/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    慢性腎不全での電解質動態はこれまで多くの研究がなされているが, われわれは小児慢性腎不全におけるNa, K動態に及ぼす摂取食塩量の影響を検討した. (1) 対象を腎不全群 (GFR<30ml/min/1.48m2) の7例とし, 非腎不全群 (GFR≧30ml/min/1.48m2) の9例を対照とした.摂取食塩量は低ないし無塩食では食塩0~0.5g/日, 普通食塩食では4~7g/日, 高食塩食では8~15g/日とした.これらの場合の血清Na, K, BUN, クレアチニン濃度ならびに尿中Na, K排泄をクリアランス法によってしらべた. (2) 血清Na濃度は腎不全患児で低Na血症を示す傾向がみられた.この傾向は食塩制限および食塩負荷によっても認められた.摂取食塩量のナトリウム・クリアランス (CNa) に及ぼす影響は, GFRが大きいほど大で, 摂取食塩量に対応してCNaも変化した.腎不全を示す症例では摂取食塩量による変化は小さく, 食塩制限によってもCNaは不変であった.Fractional excretion of sodium (FENa) はGFRが低下するに従い双曲線状に上昇し, この傾向は摂取食塩量のいかんにかかわらず認められた.3) 血清K濃度は腎不全末期に上昇し, 一部の症例で高K血症を示していた.この傾向は摂取食塩量にかかわらず認められた.カリウム・クリアランス (CK) は腎不全末期患者では対照群に比し有意に低く, 食塩制限および食塩負荷による影響は認められなかった.Fractional excretion of potassium (FEK) はGFRの低下につれ上昇し, この所見は摂取食塩量に影響されなかった.4) BUN値および血清クレアチニン濃度はGFRが30ml/min/1.48m2より低下すると上昇しazotemiaを示した.この傾向は摂取食塩量に影響されなかった.
  • 笠原 多嘉子, 呉 育興, 王 〓, 桜井 淑子, 小口 勝司
    1990 年 50 巻 5 号 p. 530-536
    発行日: 1990/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    免疫抑制薬cyclophosphamideをpicryl chloride感作後4日目に腹腔内投与することにより, 遅延型過敏症 (delayed type hypersensitivity, DTH) 抑制モデルを作成し, 免疫抑制状態における東洋医学的療法の影響を検索した.東洋医学的療法としては, 生体直接刺激法の施灸, 施鍼と経口的全身投与法の漢方方剤黄連解毒湯を用いた.実験には6~9週齢のddY系雄性マウスを用い, 生体刺激部位はヒト命門穴相当部位とした.施灸は女10mg/bodyを5個に分けて行い, 施鍼は鍼を30°の角度で約2mm刺入し, 低頻度通電刺激を行った.黄連解毒湯は自製し, ヒト投与量の5倍量を投与した.DTHは第1次, 第2次の2回の免疫反応について耳腫脹を測定した.Cyclophosphamideにより耳腫脹は有意に抑制された.これに対し, 施灸, 施鍼および黄連解毒湯のpicrylchloride感作前3日間処置では有意な改善作用が認められた。しかし, 惹起前3日間処置では影響はみられなかった.このような免疫応答時において, 脾臓の白脾髄領域の量的変動が認められた.以上, 施灸, 施鍼および黄連解毒湯は免疫抑制状態を改善する方向にのみ作用し, 既に免疫が抑制されている場合には, それ以上の抑制は生じないことが認められた.
  • 虫明 孝康, 紀平 幸一, 斎田 清彦, 饗場 正宏
    1990 年 50 巻 5 号 p. 537-543
    発行日: 1990/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    心臓手術後の左室機能の変化を知り, かつ術後改善度を評価する時期を知るために, 術後回復過程の左室機能について心エコー法を用いて検討した.1) CABG: 術後早期にEF, FS, SVIの低下を認めたが, 3カ月で術前に復した.mVcfは術前 (1.40±0.40cir/sec) に比して術後3カ月 (1.03±0.18cir/sec) から6カ月 (1.09±0.18cir/sec) で有意 (P<0.05) に低下し, 1年目以後回復した.2) MS: 術後早期にmVcfが増大 (術前1.00±0.19cir/sec, 術後3カ月1.41±0.29cir/sec) したが (P<0.01) , 6カ月以後は術前と差を認めなかった.術後1年以後SVI (術前35±7ml/m2, 術後1年42±8ml/m2) とCI (術前2.5±0.5L/m2, 術後1年3.1±0.7L/m2) の改善がみられた (P<0.05) .3) MR: EDDI (術前35±5mm/m2, 術後1年27±1mm/m2, P<0.01) とSVI (術前62±19ml/m2, 術後1年39±8ml/m2, p<0.05) は術後有意に低下した.EFの変動 (術前60±7%, 術後1年68±4%) は有意ではなかったが, 1年後に増大傾向が認められた.4) ASD: 術後2週でEDDI (術前26±3mm/m2, 術後2週31±3mm/m2, p<0.05) , SVI (術前30±7ml/m2, 術後2週46±10ml/m2, p<0.01) , CI (術前2.3±0.4L/m2, 術後2週3.5±0.8L/m2, p<0.05) が変化し, EF, FS, mVcfは変化しなかった.その後は変動が少なく経過した.5) DVR: 1年後にEF (術前55±11%, 術後1年65±4%) , FS (術前29±7%, 術後1年36±3%) の有意 (p<0.05) な増加が認められた.各疾患群とも, 術後早期の左室機能の変動には術後療法の影響が大きく, 術後療法の長いDVRは変動が遷延した.また僧帽弁疾患については左室機能の変動が過去の報告と異なり, 腱索温存術式の影響が示唆された.ASDでは2週, CABGとMSでは6カ月, MRとDVRでは1年を経て左室機能の改善があり術後改善度を評価するには少なくとも6カ月以上経過した時点で行うべきと考えられ, 1年前後で行うことにより, より正確な術後心機能の評価が可能と判断された.
  • 白倉 真人, 朝比 奈紀彦, 大氣 誠道, 渡辺 尚彦, 三辺 武幸
    1990 年 50 巻 5 号 p. 544-547
    発行日: 1990/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    富士吉田市立病院耳鼻咽喉科開設時 (1981年4月) より1989年3月までに当科において施行された鼓室形成術88例について検討した.性別は男性が26例で年齢は16-63歳 (平均年齢35.1歳) , 女性が62例で年齢は16-61歳 (平均年齢37.5歳) , 全体の平均年齢は36.8歳であった.術式の内訳は0型が40例, I型が31例, III型が5例, その他が12例であった.当科では, 1985年以後帝京大学方式の手術と術前・術後処置を導入している.帝京大学方式以後の聴力改善成功率は97%であり, 手術時間も明らかに短縮していた.また, 術者の熟練度による成績の差もみられなかった.
  • 岡 壽士, 石田 康男, 浅川 清人, 小嶋 信博, 楠本 盛一, 金城 喜哉, 酒井 均, 金 潤吉, 池田 忠明, 鈴木 快輔
    1990 年 50 巻 5 号 p. 548-552
    発行日: 1990/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    狭窄性直腸癌はイレウスなどの重篤な全身状態を伴わないが, 貯留した腸内容は創感染や縫合不全などの術後合併症の発生に重要な因子として影響する.われわれの施設の全大腸癌症例493例中, イレウスは54例 (10.8%) であったが, 蓄便を伴う症例は49.8%を示した.狭窄性大腸癌に対して術前に腸内容の除去, 腸内を無菌化することは術後合併症の減少に有効であるとともに, さらに腸管内の癌細胞の浮遊によるimplantationの危険性を低下させるなどの利点が考えられる.術前プロステーシスは人工器官を用いて腫瘍などによる狭窄を一時的に解除しようとする方法で, われわれは43歳の男性で下部直腸癌の狭窄を伴う症例にたいして術前にプロステーシスを施行し良好な結果を得た.術前直腸プロステーシス法の適応は下部直腸に限局する非全周性の病変である.絶食にして, 中心静脈あるいは経管栄養で栄養管理を行い, プロステーシスを留置する.経肛門的に腸管洗浄を行い腸内容を排泄させ, 注腸検査などの検査も可能となる.プロステーシスは主として食道や胆道系などの管腔の狭窄解除をするもので, それらは根治手術が不可能な症例に対して行われるが, われわれの直腸の術前プロステーシスはあくまでも手術の前処置として行い, 切除手術を前提とするものでその意義は高い.本法はすでに4例において実施され, いずれも合併症の発生もなく良好な経過で退院している.
  • 内藤 誠二, 川内 章裕, 安藤 進, 張 仁俊, 福成 信博, 志賀 俊行, 中山 国明, 松井 渉, 伊藤 洋二, 李 中仁, 神谷 憲 ...
    1990 年 50 巻 5 号 p. 553-556
    発行日: 1990/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    実時間観察の可能な超音波検査機は腹部および循環器診断に広く使用されているが, 十分な分解能を持った体表臓器用の機器はいまだ見当たらなかった.今回, われわれは交通外傷後に摘出困難となった顎下部異物に対して, 新しいmechanical arch scannerを使用することにより位置を正確に同定し, 容易に摘出しえた症例を経験したので報告する.症例は22歳, 男性, 主訴は顎下部異物.交通事故により前頸部受傷後, X線検査にて顎下部異物の診断となるが, 摘出不可能のため紹介となる.当科外来では超音波検査を行うことにより異物の部位を正確に描出しえ, 摘出可能であった.
  • 村上 厚文, 森保 幸治, 村田 升, 斎田 清彦, 横川 秀男, 門倉 光隆, 舟波 誠, 山本 登, 高場 利博, 野嵜 善郎, 稲葉 ...
    1990 年 50 巻 5 号 p. 557-561
    発行日: 1990/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    左室―右房交通症は極めて希な疾患であるが, 今回われわれは, Perimembranous VSDの自然閉鎖過程において形成された膜様部中隔瘤が三尖弁中隔尖を穿破して生じたと考えられる後天性弁下型左室―右房交通症に, 感染性心内膜炎を合併した1症例を経験した.症例は9歳男児.生後1カ月検診時に心雑音を指摘され, 5カ月検診にて膜様部中隔瘤を伴う心室中隔欠損症の診断を受け経過観察となった.7歳時に感染性心内膜炎を併発し, 次第に心胸廓比の増大を認めるため, 手術適応となった.手術は右室との交通が残存しないようXenomedica二重パッチで欠損孔を閉鎖すると共に三尖弁形成術を施行した.術後経過は良好である.
  • 山田 勝彦, 松原 仁志, 山本 正人, 田澤 公樹, 金谷 斉, 美田 俊一, 荏原 包臣, 小田切 統二, 吉田 文英, 成沢 達郎, ...
    1990 年 50 巻 5 号 p. 562-567
    発行日: 1990/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    症例: 症例は78歳, 男性.主訴は胸部異常陰影.昭和61年3, 月, 右胸水貯留にて第1回入院となる.腹部CT, 腹部エコーなどにて左腎に腫瘤を指摘され, 悪性腫瘍を疑われたが, 本人および家族の希望にて退院となる.昭和61年6月, 多発性の胸部異常陰影と胸水貯留にて第2回目の入院となる.腎腫瘍の肺転移が強く疑われたが, 第73病日目に肺炎にて死亡した.病理解剖所見では, 左腎下極に灰黄白色の境界明瞭な5×4×4cmの腫瘤を認めた.腎腫瘍組織は, クロマチンに富んだ棍棒状核を持ち, 好酸性で豊富な細胞質を有する紡錘形の腫瘍細胞が束状あるいは不規則に配列しており, 鍍銀染色で箱入り像を呈し, 電顕にて細胞質内にdense bodyを伴うmyofilamentを認めた.以上の所見より平滑筋肉腫と診断された.また左肺, 胸膜, 右腎, 第3, 第9胸椎, 心内膜などに広範な転移を認めた.さらに, 胃前庭部前壁に早期癌 (高分化腺癌, IIa) が存在, 重複癌の像を示していた.臨床症状に乏しい腎の悪性腫瘍として平滑筋肉腫がある.文献上, 腎平滑筋肉腫は腎悪性腫瘍の1~3.3%と比較的まれな疾患である.さらに本症例は胃癌との重複癌であり, 重複癌としてのこれまでの報告は小田島らの陰茎癌との重複報告がみられるのみであった.
  • 宮本 二一, 平田 敦子, 小川 正純, 西田 均, 広瀬 信夫, 舩冨 等, 八田 善夫
    1990 年 50 巻 5 号 p. 568-571
    発行日: 1990/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    Carcli病類縁疾患と考えられる1例を経験したので報告した.本例は76歳女性.既往歴として胆嚢摘出術を受けているが, 肝内胆管のみならず, 総胆管も嚢胞状に拡張しており多発性の胆管結石, 腎嚢胞を合併していることから, Caro1i病類縁疾患と判断した.本例の胆汁中胆汁酸分析では, G/T比が低下していたが, 各種胆汁酸の比率に変化は認められなかった.Caroli病の定義自体が時代とともに変遷しており, 種々の程度に総胆管拡張症を合併することもあり, 今後はこれらの疾患群において病像を反映しうる分類法の確立が望まれた.また, 合併症として胆石症, 胆道癌が報告されており, 胆汁酸の関与も示唆されているが, 胆汁中胆汁酸についての詳細な検討はあまりされていない.本例においては特異な変化は認められなかったが, 悪性腫瘍合併例での胆汁酸分析との対比より, 病態の一端を明らかにしうると考えられ報告した.
  • 上田 和光, 伊藤 洋二, 志賀 俊行, 帆刈 睦夫, 渋沢 三喜, 小池 正, 浜本 鉄也, 池田 忠明
    1990 年 50 巻 5 号 p. 572-574
    発行日: 1990/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    症例は39歳, 男性.既往歴として虫垂切除術を受けている.1987年10月24日に右下腹部痛出現.下痢, 腹部膨満感も加わり, 10月29日当院受診し, 同日入院となる.入院時, 右下腹部を中心に圧痛, Blumberg徴候および筋性防御が認められ, 10月30日開腹術を施行した.バウヒン弁より40cm口側の回腸に, 発赤, 壁の肥厚, 膿苔付着等が認められたため, 病巣部を含め, 回腸部分切除術, 端々吻合術を行った.切除標本の粘膜面に小指大の隆起性病変が認められ, アニサキス幼虫が刺入していた.病理学的検査では, 虫体が確認され, 周囲には, 好酸球性蜂窩織炎の所見が認められた.以上, 腸アニサキス症の1例を経験したので, 文献的考察を加え報告した.
  • 鈴木 伸明, 奥村 邦彦, 広瀬 信夫, 竹内 治男, 八田 善夫, 金井 弘一, 井石 秀明, 秋間 道夫
    1990 年 50 巻 5 号 p. 575-579
    発行日: 1990/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    悪性化を伴わずに4cmをこえて発育する大腸腺腫は極めて稀と考えられている.今回, 腹痛発作を繰り返した巨大大腸腺腫の1例を経験したので報告した.症例は31歳男性で, 注腸造影および大腸内視鏡検査で, 回盲弁直上の上行結腸に6×4cm大の隆起性病変を認めた.生検では悪性所見はなかったが, 大きさより悪性のものも否定し得ず手術を施行した.切除標本の検討では, 組織学的に軽度の異型性を示す腺管腺腫であった.本症例にみられた発作性腹痛は, 術中に回腸末端部の一部が結腸内に重積している所見が認められたことから, 大腸腺腫の存在が原因となって回腸末端部の重積と自然整復が繰り返されて生じたものと考えられた.
  • 飯田 茂幸, 西村 有希, 濱田 健司, 蔵当 辰彦, 倉田 知光, 植田 孝子, 内田 英二, 小林 真一, 安原 一, 真柳 誠, 中山 ...
    1990 年 50 巻 5 号 p. 580-584
    発行日: 1990/10/28
    公開日: 2010/09/09
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