われわれは, 超音波ネブライザーを用いた蒸留水吸入 (ultrasonically nebulized distilled water inhalation, USNDWI) による気道過敏性試験で出現する即時型気管支反応 (immediate bronchial response, IAR) および, 遅発型気管支反応 (latebronchial response, LAR) 出現の有無を検討し, USNDWI前後の血中chemical mediator (CM) としてleukotrien (LT) C
4, histamine, substance P, などの変化を比較検討し, USNDWIによる気道反応のメカニズムについて若干の知見を得たので報告する.昭和大学病院第一内科外来通院中の気管支喘息患者, 18名 (年齢18~71歳, 男性8名, 女性10名) および健常人5名 (年齢26~33歳, 男性4名, 女性1名) に対し超音波ネブライザー (Model AcomaEM12) を用い0.9%生理食塩水15mlを5分間吸入させ, その後, 注射用蒸留水15mlを5分間吸入させた.検査前, 生理食塩水吸入後, 蒸留水吸入後5分, 15分, 30分, 45分, 60分, その後1時間ごとに呼吸機能の測定をミナト社製Autospiro AS500にて行った.また, 検査施行前 (生理食塩水吸入前) , 蒸留水吸入後5分および6時間またはLAR出現時にplasmaLTC
4, histamine値と, plasma substanceP値の変化を測定した.USNDWI後のFEV
1.0が, 20%以上減少したものを, 気管支反応陽性とすると健常人では, USNDWI後, 10時間まで, ほとんど呼吸機能は変化せず, 明らかな気管支反応は認めなかった, 気管支喘息患者群においては, 18名中5名が, dual AR (IAR+LAR) を示し, 9名がIARのみを示し, 4名が気管支反応陰性 (nonresponder) であった.dualARを示した症例において, USNDWI前に比べUSNDWI後IAR, LAR出現時のplasma substance P, histamine, LTC
4の変化を検討すると, plasmasubstance PがIAR出現時およびLAR出現時において上昇傾向を認め, plasma histamine, LTC
4もIAR出現時において, 上昇傾向を認めた.以上によりUSNDWI後の気管支反応発現のメカニズムとして, 肥満細胞から直接CMが遊離されることのほかに, substance Pを介した肥満細胞からのCMの遊離が惹起されている可能性が示唆された.またUSNDWI後のLAR出現についても, 同様のメカニズムが関与していることを示唆するものと思われる.
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