昭和医学会雑誌
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51 巻, 1 号
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  • 井上 恒一, 横川 秀男, 久米 誠人, 賀嶋 俊隆, 森保 幸治, 成沢 隆, 山田 真, 高場 利博
    1991 年 51 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 1991/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    心臓手術時の補助手段として心筋保護法が積極的に研究され手術成績を著明に改善した.局所冷却法とcardioplegia法の導入によるところが大きい.本邦ではcrystalloid cardioplegia液が普及しているが内容, 組成については施設によりさまざまである.そのなかでも近年, 比較的広く使用されるSt.Thomas' Hospital solutionを酸素化すべきかどうかの議論が多い.そこで本研究ではラット摘出灌流心を用いてoxygenated St. Thomas' Hospital solutionの心筋保護効果について検討した.常温37℃の心筋温で大動脈遮断しischemiaとした実験において, cardioplegiaを行わなかった群は遮断解除後に大動脈拍出量の回復が得られなかったがoxygenated crystalloid cardioplegia (OCP) を行った群の回復は比較的良好であった.これは心筋温を21℃にした実験ではさらに明確であった.大動脈遮断中の心筋代謝を抑制する目的で心筋温を4℃まで冷却した実験でもOCPを行った群は非酸素化cardioplegia群より有意 (P<0.01) に回復率が高かった.Oxygenated St. Thomas' Hospital solutionは常温ischemiaにおいても心筋保護効果が認められた.局所冷却によって心筋温を低温にしても酸素を供給することは心筋保護上有利でありSt.Thomas' Hospital solutionを酸素化することは有用と考えられた.
  • 井上 恒一, 横川 秀男, 成沢 隆, 久米 誠人, 数馬 博, 森保 幸治, 賀嶋 俊隆, 谷尾 昇, 田中 弘之, 斉田 清彦, 門倉 ...
    1991 年 51 巻 1 号 p. 6-9
    発行日: 1991/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    教室では開心術における心筋保護法の向上を目的として実験研究を続けており, そのなかから有効性が示唆され安全性が確認された方法を実際に臨床応用している.心筋保護法としてcardioplegia法は広く利用されている.本研究では術前左心機能が比較的均一な増帽弁置換術10症例を選んでcardioplegia液を臨床的に検討した.実験で有効性が認められた酸素化crystalloid cardioplegic solutionを使用した5例と非酸素化crystalloid cardioplegic solutionを使用した5例について, 再灌流後早期および術後48時間までの心機能の回復について比較検討した.大動脈遮断を解除し冠灌流が再開され心拍動を得るまでの時間, DC電気除細動を行った回数, ペースメーカーの使用例数などから再灌流開始後早期の心機能の回復についてはOCP群が優れている傾向が示唆された.術後ICUでのCardiac Indexの経過ではOCP群は6時間後から術前値へ回復したが, NOCP群はLOSに陥った例などがあり回復が良好とはいえなかった.臨床的には多くの要因が複雑に関係し合うことを考慮しなくてはならないが酸素化crystalloid cardioplegic solutionは非酸素化crystalloid cardioplegic solutionより心筋保護上有用であることが示唆された.
  • 村上 善次郎, 三浦 宜彦
    1991 年 51 巻 1 号 p. 10-22
    発行日: 1991/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    わが国の西暦2000年に向けての糖尿病有病率および受療率の推移予測を最近10数年の各種データをもとに指数回帰分析によって検討した.この結果, 糖尿病の有病率および受療率の増加率は全疾患の有病率および受療率に比してかなり大きく, 年齢階級別には特に65歳以上の増加率が大きく, 西暦2000年には1985年のそれぞれ約4倍, 2倍程度に増加することが予測された.また, 糖尿病の地域有病率の推計指標を検討し, 副傷病を考慮した有病者数の算出方法の試案を作成しその有効性を明らかにした.次に, 老人保健法の健康診査の結果を用いて, 糖尿病判定率・尿糖陽性判定率と受診率・患者調査による有病率との相関分析を行い, これら判定率と有病率との間に正の相関が認められることを明らかにした.
  • 大渕 真男, 篠原 広行, 金子 悟
    1991 年 51 巻 1 号 p. 23-29
    発行日: 1991/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    シンチレーションカメラによる核医学画像のイメージコントラストが, 実際の放射能強度より計算される被写体コントラストとどう対応するかファントム実験により検討した・ファントムはバックグラウンドが底辺15cm×15cm, 高さ15cmの低濃度RI (放射性同位元素) 水溶液を含む立方体と, これより高濃度 (ホット) のRI水溶液を含む直径3.3cmの球あるいは原さ1cm, 直径3.3cm, 5.5cmのディスクからなる.またバックグラウンドより病巣部のRIの集積率が低い (コールド) 場合のモデルは, 球に水のみを満たしたファントムを用いた.ファントムの放射能分布はシンチレーションカメラによる撮影後, 有限な分解能, ガンマ (γ) 線の吸収, 散乱, および統計雑音の影響を受けた計数密度分布の画像となる.そこでファントムの放射能強度より病巣部の被写体コントラストを計算で求め, それをシンチレーションカメラで撮影して得た画像の計数密度よりイメージコントラストを計算し両者の関係を調べた.被写体コントラスト (Co) とイメージコントラスト (Ci) の間に, ホットでは, Ci=1.3Co-2.4 (r=0.98) , コールドではCi=1.1Co-0.1 (r=0.99) の高い相関性が認められた.このことより, 臨床画像で病巣部のRI集積率の指標としてイメージコントラストを用いる実験的根拠が与えられた.一方, イメージコントラストは被写体コントラストに良く相関はするが, 絶対値は散乱の影響で小さくなるため, この点に注意して用いるべきことが明らかとなった.
  • 林 真実, 毛利 友次, 大原 鐘敏
    1991 年 51 巻 1 号 p. 30-39
    発行日: 1991/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    体幹骨格筋の発達とその機能的な関連を生体について明らかにするためにErdheim格子線E5高 (胸骨中点高) のCT写真について同部の筋断面積を検討した.研究対象は30歳代から70歳代にわたる健康な成人99名 (男性50, 女性49) で, 10歳ごとの年齢階級およびローレル指数によるA (129以下) , C (130-149) , D (150以上) の3体型に区分した.観察した筋は前胸筋として大胸筋, 小胸筋および前鋸筋, 肩甲筋として肩甲下筋と大円筋, 浅背筋として僧帽筋, 菱形筋および広背筋, 固有背筋として腸肋筋, 胸最長筋および横突棘筋であり, それぞれについてCT写真をトレースして断面積を計測, 性別, 側別, 年齢別, 体型別に検討し, 機能的な変化を考察した.結果: 1.筋群別および個々の筋について断面積を比較すると, 肩甲筋群および広背筋では男>女, 右>左の傾向が強く, 男女および左右による上腕内旋機能の差が考えられ, また, 前鋸筋, 僧帽筋および菱形筋では男>女の傾向がみられ男女による肩甲骨固定機能の差も考えられた.2.胸骨中点高の固有背筋断面積は腰部に比べて, 男性では約1/4, 女性では約1/3で, 男性では腰部よりも年齢的に漸減傾向が早かった.3.年齢的には各筋群とも70歳代では他の年代よりも小であったが, 前胸筋では大胸筋と小胸筋で, 肩甲筋では男性の大円筋で, 女性ではその右側のみで, 浅背筋では男性は僧帽筋のみで, 女性は全筋で, 固有背筋では男性の横突棘筋, 胸最長筋でそれぞれ加齢減少の傾向がみられ, phasicな機能の加齢的減少が考えられた.4.筋別に体型との関係については, 前鋸筋, 僧帽筋および広背筋ではD, C, A体型の順に大, 大円筋と肩甲下筋ではD体型が他よりも大の傾向がみられ, 肥満に伴う上肢の体支持機能の増大が考えられた.
  • 丸山 繁, 足立 満, 洲之内 建二, 今井 俊道, 菅沼 孝夫, 岡田 陽子, 水野 雅夫, 小林 英樹, 国分 二三男, 岡田 哲朗, ...
    1991 年 51 巻 1 号 p. 40-46
    発行日: 1991/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    われわれは, 超音波ネブライザーを用いた蒸留水吸入 (ultrasonically nebulized distilled water inhalation, USNDWI) による気道過敏性試験で出現する即時型気管支反応 (immediate bronchial response, IAR) および, 遅発型気管支反応 (latebronchial response, LAR) 出現の有無を検討し, USNDWI前後の血中chemical mediator (CM) としてleukotrien (LT) C4, histamine, substance P, などの変化を比較検討し, USNDWIによる気道反応のメカニズムについて若干の知見を得たので報告する.昭和大学病院第一内科外来通院中の気管支喘息患者, 18名 (年齢18~71歳, 男性8名, 女性10名) および健常人5名 (年齢26~33歳, 男性4名, 女性1名) に対し超音波ネブライザー (Model AcomaEM12) を用い0.9%生理食塩水15mlを5分間吸入させ, その後, 注射用蒸留水15mlを5分間吸入させた.検査前, 生理食塩水吸入後, 蒸留水吸入後5分, 15分, 30分, 45分, 60分, その後1時間ごとに呼吸機能の測定をミナト社製Autospiro AS500にて行った.また, 検査施行前 (生理食塩水吸入前) , 蒸留水吸入後5分および6時間またはLAR出現時にplasmaLTC4, histamine値と, plasma substanceP値の変化を測定した.USNDWI後のFEV1.0が, 20%以上減少したものを, 気管支反応陽性とすると健常人では, USNDWI後, 10時間まで, ほとんど呼吸機能は変化せず, 明らかな気管支反応は認めなかった, 気管支喘息患者群においては, 18名中5名が, dual AR (IAR+LAR) を示し, 9名がIARのみを示し, 4名が気管支反応陰性 (nonresponder) であった.dualARを示した症例において, USNDWI前に比べUSNDWI後IAR, LAR出現時のplasma substance P, histamine, LTC4の変化を検討すると, plasmasubstance PがIAR出現時およびLAR出現時において上昇傾向を認め, plasma histamine, LTC4もIAR出現時において, 上昇傾向を認めた.以上によりUSNDWI後の気管支反応発現のメカニズムとして, 肥満細胞から直接CMが遊離されることのほかに, substance Pを介した肥満細胞からのCMの遊離が惹起されている可能性が示唆された.またUSNDWI後のLAR出現についても, 同様のメカニズムが関与していることを示唆するものと思われる.
  • 長谷川 秀浩, 林 真実, 毛利 友次
    1991 年 51 巻 1 号 p. 47-52
    発行日: 1991/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    筋の機能的特性を形態的に明らかにするために大腿筋膜張筋について外計測と筋線維構成の検討を行い, 他と比較した.研究対象は学生実習屍27例 (男性18, 女性9, 平均年齢68.6歳) から得られた右側大腿筋膜張筋で, 筋重量および筋質部の長径, 幅径, 厚径を計測, 筋線維構成の検討はHE染色標本によった.結果: 1) 筋重量および外計測による容積比は男性の方が女性よりも大であったが, 加齢減少の傾向が認められ, 男女とも60歳代以降で著明であった.また, 筋腹の横断面積においても, 男女とも高齢者では著しい低値を示していた.2) 1mm2中の筋線維数は平均で男性1012, 女性1176で, 女性の方が男性よりも優っていたが, 他筋に比べて大腰筋よりも少なく, 腸骨筋と等しく, 腰方形筋よりも多かった.3) 筋線維総数は平均で男性188, 112, 女性170, 531で, 加齢減少の傾向は男性にのみ明らかであった.男性では腰方形筋および腸骨筋に匹敵し, 大腰筋よりも劣ったが, 女性では腸骨筋, 大腰筋に匹敵し, 腰方形筋よりも劣っていた.4) 筋線維の太さは平均で男性802μm2, 女性632μm2であったが, 年齢的には男性においてのみ減少傾向が明らかであった.他と比べて男女とも大腰筋と等しく, 腰方形筋および腸骨筋よりも小であった.5) 筋線維密度は平均で男性74.5%, 女性65.8%で男性の方が女性よりも優る傾向が見られたが, 他と比べて男女とも大腰筋, 腸骨筋 (♂) および腰方形筋と相前後していた.
  • ―性周期, 妊娠, 出産後, 去勢における線毛運動と走査型電顕所見について―
    橋本 英昭
    1991 年 51 巻 1 号 p. 53-67
    発行日: 1991/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    (目的と方法) 妊娠成立に関与する卵管粘膜の機能と形態を究明する目的で, ラット卵管の線毛運動数と走査型電子顕微鏡 (Scanning electron microscope: SEM) 所見を指標として性周期, 妊娠, 出産後, 去勢後の変化および性ステロイドホルモンの影響を検討した.線毛運動数は倒立顕微鏡, 位相差顕微鏡, プリァンプ, 記録器を組合せた装置で測定し, 形態変化は明石DS-130型-SEMで観察した. (結果と考察) 1) 性周期における線毛運動数は発情前期, 後期, 間期に多く, 発情期に少ないが有意差はない.性周期を通じて線毛細胞の形に変化はない.分泌細胞の性周期変化は著明で, 発情後期には膨隆し分泌活動が活発である.血中E2のpeakは発情前期に, P4のpeakは発情前期と後期にあって, 発情後期の分泌細胞の活動はE2, P4によることが窺われた.2) 妊娠1日 (交尾後24時間) の線毛運動数は発情期に比べて有意に多いが, 翌日から減少し, 受精卵が子宮腔に達するといわれる3日には最少となり, 4日から増加に転じ, 以後, 妊娠末期まで線毛運動数はよく保たれる.妊娠中, 線毛細胞の形は変わらない.分泌細胞は妊娠2日には著明に膨隆し, 線毛運動の減少と相まって, 受精卵の輸送, 発育, 栄養環境維持など調節的役割を果していることが推察された.妊娠中期の分泌細胞は分泌旺盛といえるが, 20日 (妊娠末期) には殻物状に隆起し, 表面の微絨毛は一部脱落して長時間のestrogen, progesterone作用による粘膜消耗像であった.出産後1日の線毛は剥脱, 短縮が著明で運動数は測定できず, 分泌細胞も球状不正で表層剥離し, 著しい荒廃像を示すが, 出産後5日には線毛細胞はよく再生して運動数も正常であり, 分泌細胞も再生し微絨毛も密で, 比較的早期に卵管粘膜は修復されることが示唆された.3) 去勢後3週間を経た線毛細胞は短く動きが悪い.分泌細胞は剥離・粗像が著明で微絨毛は消失する.これにE2を投与すると線毛細胞は再生するが動きは悪い.分泌細胞はよく再生する.P4を投与すると一部脱線毛があり, 分泌細胞は隆起するものの表層脱落があって消耗像に似る.E2・P4投与例の微絨毛は短いが, 分泌細胞は隆起し, 妊娠中・後期の像に似る.以上の結果より, 分泌細胞の性周期変化はE2, P4の消長と一致すること, 交尾後の線毛運動の増減と分泌細胞の活動は卵輸送に調節的役割を果すこと, 妊娠末期は長期間のestrogen, progesterone作用の結果と思われる粘膜消耗像となり, 出産直後は著しく荒廃するが, 数日後の粘膜上皮はestrogenの影響を思わせるほど修復されていることが判明した.
  • 小柳 博司
    1991 年 51 巻 1 号 p. 68-76
    発行日: 1991/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    甲状腺ホルモン剤 (甲ホ) 1回投与時における血中遊離甲状腺ホルモンおよびTSH濃度の変動については未だ十分明らかでない.そこで, 著者は原発性甲状腺機能低下症患者48例において, l-Thyroxine (l-T4) , l-Triiodothyronine (l-T3) および甲状腺末を経口法, 静注法または経直腸的に投与し, 経時的に血中FT4, FT3, T4, T3およびTSHを市販RIAキットを用いて測定した.静注法におけるl-T4の投与量は100~300μg, l-T3のそれは12.5~50μgであり, 経口法におけるl-T4の投与量は50~300μg, l-T3のそれは50~100μg, 甲状腺末のそれは20~50mgである.l-T4静注の場合には, 血中T4濃度は急速に増加を示すが, FT4の上昇は軽微であり, T3およびFT3濃度には有意の変動は認められなかった.l-T3静注の場合には, 投与量が12.5μ9と比較的少量であっても, 血中T3およびFT3濃度は急速に増加し, 正常上界を超えるのが認められた.l-T4を経口投与すると, 投与量が100μg以下の場合には, 血中T4, FT4およびFT3の増加は認められず, 投与量が150μgを超えると増加するのが認められた.l-T3を経口投与する場合, 投与量が50μgと比較的少量であっても, 血中T3およびFT3濃度は正常域を超える高値を示すのが認められた.甲状腺末経口投与の場合には, 投与量が50mg以下であれば, 血中T4およびFT4濃度の変化は殆ど認められないが, 血中T3およびFT3濃度は甲状腺末30mg投与の場合でも軽度の上昇を, 甲状腺末50mg投与の場合には正常域を超える上昇を示すのが認められた.l-T4100μgまたはl-T350μgを坐薬により経直腸的に投与した場合, 血中甲状腺ホルモン濃度の増加は認められず, これらのホルモンは経直腸的には吸収されにくいものと考えられた.甲ホ投与時における血中TSH濃度の変動についての検討では, l-T4l-T3に比べ, TSH分泌抑制時間が長期にわたることが認められた.なお, いずれの製剤, および投与方法においても, 使用した投与量の範囲内では, 副作用は全く認められなかった.以上の結果から, 原発性甲状腺機能低下症患者を甲ホにより治療する場合, 経口法, 経静脈法を問わず, 最良の, そして, 最も安全な甲ホはl-Thyroxineであると結論された.
  • 岡 壽士, 小嶋 信博, 仲吉 昭夫
    1991 年 51 巻 1 号 p. 77-82
    発行日: 1991/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    医療画像をデータベース化する場合, 様々な形で存在する画像をいかにコンピュータに取り込み, いかに保存し, そしていかに効率的に出力するかを考えなければならない.異なったメディアのデータの入力装置の導入には膨大な設備投資と画像処理速度の問題がある.スチルビデオシステムの即時性, 簡便性, および機動性に着目し, 医療画像を入力し, 術前カンファレンス, 講義, 手術後の家族の説明など効率的なプレゼンテーション, さらにスチルビデオシステムの画像をコンピュータに取り込むことにより, 画像のファイリング, 編集・加工を効果的におこなへる.さらにスチルビデオ・コンピュータシステムを使った病理組織検討会などに利用できる.スチルビデオは報道の分野ではすでに本格的な導入がなされているが医療への導入はまだ不十分である.コンピュータを連結させることにより, スチルビデオの使用範囲を無限に拡張させることだけではなく, コンピュータの画像ファイリングそのものの可能性をさらに広げる.
  • 岡 壽士, 小嶋 信博, 鈴木 快輔
    1991 年 51 巻 1 号 p. 83-89
    発行日: 1991/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    EEAに代.表される器械吻合の発達によザド部直腸痕に対する前方切除術のさまざまな再建術式が可能となった, 従来の端々吻合による再建もアンビルシャフトをセンターロッドと分離させて吻合操作を行なえるために確実な操作性が得られる.結腸直腸側端吻合 (Baker法) では口側の腸管の断端から吻合器を挿入し, すべての吻合操作を腹腔内において行なうことができる.超低位前方切除の再建はロティキュレーターで一旦肛門側の腸管を閉鎖したのち, EEAで端々吻合するDouble Stapling法が採用される.これらの術式の適応は肛門縁からの高さによって決められる.1988年からの2年間に昭和大学藤が丘病院外科の直腸癌切除症例, 52例のうち器械吻合は32例に行なわれた.端々吻合法が12例, 側端吻合法が5例, そしてDouble Staplingによる吻合が8例に行なわれたが, 縫合不全は5例で, 端々吻合法に2例 (12例中) , Double Stapling法に3例 (8例中) みられた.しかし側端吻合法では吻合不全はなかった, いずれの術式もそれぞれの特徴があり, 症例に合った術式の選択を行なうべきである.
  • 岡 壽士, 石田 康男, 小嶋 信博
    1991 年 51 巻 1 号 p. 90-96
    発行日: 1991/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    (目的) 狭窄性大腸癌は重篤な全身症状を伴わないが, 手術時の腸内容は術後の合併症の発生に重要な因子となる.腸内容が臨床上いかなる影響を及ぼすかを縫合不全の発生, implantation, さらに腸管内の細菌叢からとらえ, それらの対策として直腸プロステーシス, 術中腸管内洗浄の工夫について述べる. (対象) 1975年から1989年4月までの大腸癌493例のうち大腸癌イレウスは54例, 10.8%を占めた.重篤な全身症状を伴わないが腹痛などの単純性の腸閉塞は29.6%に及んだ.蓄便のみが20.2%を示した. (結果) 1.細菌叢の変化.大腸癌症例の術前, 術中, 術後の経過中の細菌叢の変化は, 糞便中の嫌気性菌が健常人の1/10から1/100に減少しており, IVHやEDにより正常化されていることがわかった.2.縫合不全の関連.術前, 腸管の前処置を行ったものと行われなかった2群で, 縫合不全の発生頻度は大差なかったが, 実験的には外翻一層連続縫合において非洗浄群で64.2%の発生頻度が認められた.下部直腸の狭窄に対して術前直腸プロテーゼを留置し, 腸管内を空虚にして, さらに術前に行われなかった症例に対しては術中腸管内洗浄を行っている.3.口側および肛門側の細胞診術中腸管内洗浄で, 肛門側と口側の洗浄液の細胞診で40%という高率でclassrv以上が検出された. (考察) 臨床および実験的結果から, 狭窄性大腸癌症例に対しては非経口, 中心静脈あるいは経管栄養を約2週間行う.また下部直腸症例にたいして直腸プロテーゼを行い, 術前に腸管内の減圧を経肛門的に行う.さらに術中の操作として腸管内の洗浄は全例に行う.閉塞性結腸癌および狭窄性の直腸癌も術前および術中の腸内容の除去は細菌叢の正常化, 吻合不全の発生頻度の低下およびimplantationの予防からも有効である.
  • 小堀 正雄
    1991 年 51 巻 1 号 p. 97-101
    発行日: 1991/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    昭和大学病院中央手術室での手術件数, 麻酔科管理症例数, 年齢分布, 麻酔時間数, 月別症例数などの変化を1987~1989年の3年間検討した.その結果, 手術件数はほぼ一定であったが麻酔科管理症例数は増加した.緊急症例の割合は全手術症例では減少したが, 麻酔科管理症例では変化がなかった.麻酔科管理症例の年齢分布は小児麻酔が減少し老人麻酔が増加した.全身麻酔のうち4時間を超える症例が増加した.また, 全科月間症例の変化率を検討したところ, 7, 3, 8月が多く, 1, 2, 11月が少なかった.特に6~16歳の症例で増減が著しかった.各科別では耳鼻咽喉科, 形成外科の変動が大きく, 外科, 整形外科は年間を通じて症例数はほぼ一定であった.
  • 門倉 光隆, 谷尾 昇, 野中 誠, 数馬 博, 賀嶋 俊隆, 村田 升, 田中 弘之, 高場 利博
    1991 年 51 巻 1 号 p. 102-106
    発行日: 1991/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    近年, 画像診断の進歩に伴い, 胸部疾患ことに肺癌術前診断における縦隔リンパ節転移に対する評価は正確さを増しているが, 病理組織学的に転移の有無を判定することは不可能である.1959年, Carlensが縦隔鏡検査法を発表以来, 縦隔 (気管傍, 気管前, 気管気管支, 気管分岐下) リンパ節に対する直視下での観察ならびに生検が可能となった.当科においても, 画像診断等で縦隔リンパ節腫大がみとめられ, 病理組織学的に癌転移有無などの評価を必要とした症例に対して本検査を施行し, 術前病期診断や手術適応の有無, さらに他縦隔疾患の診断などを行っている.今回, 本検査法の手技とともにその代表的な適応症例を提示する.
  • 楠本 盛一, 岡 壽士, 小嶋 信博, 鈴木 快輔
    1991 年 51 巻 1 号 p. 107-111
    発行日: 1991/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    症例は75歳, 右下腹部痛を主訴とする男性.約10日前より主訴が出現し, 近医を受診したところ急性虫垂炎の診断を受け, 当科に紹介され入院となった.入院時右下腹部に圧痛を認め, 白血球数は, 21, 200/mm3であった.入院後, 保存的加療により, 症状は消退した.注腸検査で盲腸の隆起性病変を発見し, 内視鏡検査で, focal cancerが発見された.症例2右下腹部痛を主訴とする79歳の男性.約3日前より主訴が出現し, 発熱もあり, 近医にて急性虫垂炎と診断され, 当院内科より外科転科となる.虫垂切除後, 病理組織検査で高分化腺癌の診断を得た.術後26日目に, 右半結腸切除術を施行した.以上2症例を提示して, 盲腸癌と虫垂炎の関係について, 文献的考察を行なった.
  • 崔 蓮, 耿 啓達, 国村 利明, 諸星 利男, 神田 実喜男
    1991 年 51 巻 1 号 p. 112-115
    発行日: 1991/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    症例は61歳男性.主訴は全身倦怠感, 体重減少.血液検査上, 肝胆道系酵素およびAFPの上昇を認めアンチトロンビンIIIも高値を示していた.腹部CT, US, Angioにて肝全体にびまん性肝癌が認められた.5-FU, MMC, IL-2の投与を行ったが効果なく肝不全にて死亡したが, 最後までAT-IIIは高値を示していた.剖検の結果肝臓は重量43409と著明に腫大し, 表面は凹凸不整で, 割面にて肝全体に径1cm程度の腫瘍結節がびまん性に認められた.組織学的には索状型, 一部偽腺管型を示すEdmondsonIII型の肝細胞癌であった.免疫組織学的に腫瘍細胞は抗アンチトロンビンIII抗体に陽性を示しており, 腫瘍細胞のAT-III産生が示唆された.一般に肝細胞癌において血清AT-III値はむしろ低値を示す傾向にあり, 異常高値を示した症例は文献上認められない.肝細胞癌と血清AT-III値との関係, あるいはその産生能については今後の症例の積み重ねが重要と考えられた.
  • 小林 文徳, 佐田 博, 渡辺 浩之, 車谷 英美, 佐藤 康雄, 吉田 浩之, Susumu TAGUCHI, 八田 善夫
    1991 年 51 巻 1 号 p. 116-120
    発行日: 1991/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    われわれは, 食道管腔をほぼ充満する著明な乳頭状発育を示し, 深達度はほとんどがmで, わずかに一部pm浸潤を認める食道癌を経験したので報告する.症例は69歳女性で, 昭和62年9月19日胸やけと前胸部痛を主訴として当科関連病院に入院した.上部消化管X線検査で中部食道に基部5.5cm, 長径9.5cmの表面凹凸著明な広基性の腫瘤を認めた.腫瘤の口側, および肛門側の食道辺縁は滑らかで伸展良好であり, 内視鏡検査で腫瘤表面は易出血性であった.生検にて高分化型扁平上皮癌と診断され, 食道癌根治手術が施行された.新鮮切除標本にて, 中部食道に8.5cmのカリフラワー状腫瘤を認め, 割面で癌組織は乳頭状に発育し, 深達度は大部分がmで, 腫瘤の茎部のわずか一部にpmを認めたが, 脈管侵襲およびリンパ節転移は認めなかった.食道癌のX線所見, 病理組織学的所見, および予後との関連につき, 若干の文献的考察を加え報告する.
  • ―寒冷刺激負荷試験と眼底血管変化の検討を含む―
    根岸 雅夫, 笠間 毅, 福島 俊之, 田畑 穣, 小林 和夫, 井出 宏嗣, 高橋 昭三
    1991 年 51 巻 1 号 p. 121-124
    発行日: 1991/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    39歳女性の筋炎症状を伴った全身性強皮症〔progressive systemic sclerosis (PSS) 〕を精査加療した.患者は強度のレイノー現象にひき続く一過性の頭痛が頻発していた.附加観察として, 本症例を含む6例のPSS患者に寒冷刺激負荷試験を行い, その前後における眼底血管の変化を観察した.その結果レイノー現象に伴って頭痛を訴える患者群には眼底動脈の拡張が認められた.以上よりレイノー現象は四肢末端にとどまることなく大脳内末梢血管にも影響していることが示唆された.
  • 林 由里, 金子 和弘, 川田 泰司, 安斉 勝行, 高橋 正一郎, 八田 善夫, 鈴木 恵史, 新井 一成, 小池 正
    1991 年 51 巻 1 号 p. 125-129
    発行日: 1991/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    食道癌に対して癌化学療法と放射線療法, および温熱療法の三者を併用し, 著効を示した症例を経験したので報告する.症例は73歳, 男性, 嚥下障害を主訴として受診し, 内視鏡検査にて胸部中部食道の食道癌と診断した.本症例に対し, 化学療法として5'-DFUR1200mgを途中1.5カ月の休薬期間はあるが, 約7カ月間連日投与し, これに放射線療法としてテレコバルトγ線1日1.8Gyを34日間, 合計61.2Gy行った.さらに温熱療法として, インダーノバ社製IH-500食道内腔式温熱アプリケータを用い, 1回40分間週1回合計6回施行した.以上の治療により食道癌は著明に縮小し20カ月後までComplete Response (以下CR) の状態が続いた.また同時に認められた気管分岐部リンパ節転移巣についても本治療は有効であった.
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