昭和医学会雑誌
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51 巻, 5 号
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  • 高橋 正一郎
    1991 年 51 巻 5 号 p. 487-492
    発行日: 1991/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
  • 安斎 勝行, 竹内 治男, 青木 明, 八田 善夫
    1991 年 51 巻 5 号 p. 493-499
    発行日: 1991/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    原発性肝細胞癌 (肝癌) を中心とした各種疾患において血中PIVKA-II (protein induced by vitamin K absence or antagonist-II) 濃度を測定し, その臨床的意義について検討した.肝癌におけるPIVKA-IIの陽性率は56.1%で, α-fetoprotein (AFP) の73.7%に比して低値であった.しかし他の疾患での陽性率は極めて低く, PIVKA-II陽性症例の91%が肝癌であった.PIVKA-IIはAFPとは相関せず, 両者を組み合わせることにより肝癌の診断率は向上した.またAFP非産生肝癌の26.7%にPIVKA-IIが陽性を示した.以上よりPIVKA-IIは肝癌に特異性の高い腫瘍マーカーであり, 肝癌のスクリーニング検査に不可欠であると考えられた.一方PIVKA-IIは, ある程度進行した症例に陽性となる傾向がみられ, 肝癌の早期診断のマーカーとしては限界があると考えられた.PIVKA-IIは肝癌治療によって低下することから治療効果判定や経過観察のモニタリングの指標として応用され得るものと考えられ, とくにAFP非産生肝癌には有用と思われた.PIVKA-IIはビタミンKの投与により低下することから, 判定に際してはこの点を留意する必要があると考えられた.
  • 湊 孝治, 渡辺 由美, 安西 将也
    1991 年 51 巻 5 号 p. 500-508
    発行日: 1991/10/28
    公開日: 2010/11/19
    ジャーナル フリー
    老人医療費の高騰が, わが国のみならず世界的にも問題となっているにもかかわらず, 案外この増高要因に関する調査研究は乏しい.わが国においては, 昭和48年から老人医療費の無料化, 昭和58年から一部有料化を実施するなど, 行政的にはこの問題と取組んできているが, いまだその増高の詳細な要因分析の業績は少ないといえる.そこで本論文においては, 東京都下A区における昭和63年7月1カ月分の老人医療費請求明細書の調査を実施し, 特に入院医療費の増高要因の分析検討を行った.分析方法として, 特に, 受療医療機関の所在地をA区内と区外に分けた上で, 区内外別の老人医療費の差異に焦点を当てて検討した結果, 一件当り金額の区内外差が認められ高医療費の要因として明らかとなったのは, 主に次のとおりであった. (1) 年齢階級別では.70歳以上75歳未満, 75歳以上80歳未満, 80歳以上85歳未満の3つの年齢階級. (2) ICDによる疾患別では, 「III内分泌, 栄養および代謝疾患ならびに免疫障害」, 「VI神経系および感覚器の疾患」, 「VII循環系の疾患」, 「IX消化系の疾患」, XVI症状, 徴候および診断名不明確の状態」の5つの疾患. (3) 診療行為別では, 注射, 処置, 検査, 投薬, 画像診断の5つの診療行為であった.これらの結果は, 老人医療費研究が少ないなかにあって今後の老人医療費研究に充分に資するものであると考える.また, これらはA区の老人医療費分析として受療医療機関の区内外比較を行ってはじめて明らかにできたものである.したがって, この区内外別比較は, 市町村の老人医療費の構造的な解析手法として, 今後の老人医療費の分析方法に示唆を与えるものであると考える.
  • 木村 忠直, 甲田 基夫, 石田 美由紀, 深道 修一
    1991 年 51 巻 5 号 p. 509-513
    発行日: 1991/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    骨格筋の機能形態学的研究の一環として, ヒト大腰筋の筋線維構成をヒトの他筋と比較するとともに, オランウータンおよびニホンザルの同名筋と比較し, 歩行型あるいは体姿勢との関係を検討した.研究対象の大腰筋はヒト成人男性2名, オランウータン成獣雌雄各1例, ニホンザル成獣雌雄各1例から得られたもので, 筋組織はSudan Black B染色により赤筋線維, 中間筋線維, 白筋線維の3型に区別し, 筋線維型の頻度およびおのおのの太さを比較した.その結果ヒト大腰筋では筋線維比は赤筋線維が50%近くで最も高く, 三筋線維型の太さは赤筋線維, 中間筋線維, 白筋線維の順に大であり, ヒトの一般の四肢筋と異なる傾向を示した.これに対して, オランウータンおよびニホンザルでは一般の四肢筋と同様な傾向が認められた.これらのことはヒト大腰筋が筋線維構成において機能的に分化した状態に在ることを考えさせた.
  • ―とくに内因性Secretinとの関連性について―
    宮本 二一, 小沢 進, 八田 善夫
    1991 年 51 巻 5 号 p. 514-521
    発行日: 1991/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ラットに二つの異なった急性膵炎を作製し, teprencne (TPA) の効果を検討した.まず, セルレインをラット腹腔内に投与し浮腫性膵炎を惹起させ, 経口的にTPA前投与による予防効果と治療効果を観察した.経時的に膵湿重量, 血清アミラーゼ, 組織学的検討を行い, また予防的投与時血漿secretinを測定した.次にラット膵胆管にsodium taurocholateとtrypsin混合液を注入し急性出血性壊死性膵炎を発生させ, TPAの効果を生存率で評価した.TPAは投与中の内因性secretinを上昇させた.浮腫性膵炎への予防的効果は膵湿重量の減少, 浮腫に効果を認めた.治療的効果ははっきりとは認めなかった.血清アミラーゼはTPAの使用で上昇する傾向を示した.出血性壊死性膵炎へのTPAの投与は生存率に影響しなかった.これらよりTPAは内因性secretinを上昇させ, 浮腫性膵炎に対して予防的使用で効果が認められた.そして, 重症膵炎の生存率には影響がないものと思われた.
  • 中崎 忠, 渡辺 糺, 菊地 浩彰, 桜井 修, 仲吉 昭夫
    1991 年 51 巻 5 号 p. 522-532
    発行日: 1991/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    乳癌の穿刺吸引細胞診において診断率を左右する2点 (1) 穿刺針が確実に病巣をとらえるかどうかの技術的問題, (2) 細胞学的に悪性と診断しにくい癌細胞の特微, について摘出標本にて組織学的診断のえられた乳癌127症例をretrospectiveに検討した.2cm以下の腫瘍の細胞診陽性率は68.4%と満足できるものではなかったが3.1cm以上の腫瘍では83.8%と上昇した.肥満度別陽性率では (ブローカーの修正式により肥満群, 非肥満群に分けた) 肥満群69%, 非肥満群75.5%であった.触診所見別陽性率では (マンモグラフィー所見も加味し限局型中間型浸潤型に分けた) , 限局型82.8%, 中間型54.8%, 浸潤型55.5%であり限局型は他の2型に比べ良好な陽性率 (χ2=10.978, p<0.01) を示した.腫瘍が小さく触診上中間型, 浸潤型を示し, 更に肥満度が加わった症例では穿刺が不確実になる可能性があり細胞診の結果が陰性であってもすみやかに外科的生検すべきと考えられた.当院のclass別細胞所見では, 固定状態が良く採取細胞量も多く核径も比較的大きく核異型も散在性も著明なものがclass Vと診断され, これらの項目の一つでも欠如するとclass Vと診断されにくい傾向を認めた.組織型別陽性率では充実腺管癌82.4%乳頭腺管癌72.7%, 硬癌70.3%であった.硬癌では採取細胞量が少なく, 小型から中型の細胞が多く偽陰性と判定されやすい傾向であった.
  • ―石灰化を中心にして―
    中島 清隆
    1991 年 51 巻 5 号 p. 533-542
    発行日: 1991/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    加齢による棘上筋腱の脆弱化の一因として, 微細な石灰化が関与しているのではないかとの仮定のもとに, 各年齢層の棘上筋腱を採取しそのカルシウム含有量を測定した.あわせて透過型電子顕微鏡 (電顕) を用い, 腱の加齢による微細構造の変化を比較検討した.病理解剖および手術により得られた17歳から90歳までの新鮮棘上筋腱30例を研究対象とした.可及的に同一部位で検体を採取することとし, 原則として上腕骨大結節付着部より中枢2cmのところで, 微量の腱組織を採取した.得られた組織は直ちに105℃, 48時間乾燥後乾燥重量を測定し, 硝酸および過塩素酸を用い湿式灰化させ, カルシウムに対するリン酸塩の干渉を防ぐため塩化ストロンチウムを用い, 最適使用濃度に希釈後島津製作所社製AA-630-01原子吸光分析装置を用い, カルシウム含有量を測定した.これを乾燥棘上筋腱1g中の含有量に換算し, 年齢との相関を検討した.他方, 同対象症例で若・中・高年齢症例計6例に対し, 電顕による微細構造の比較検討を行った.結果.1) 加齢と棘上筋腱のカルシウム含有量は0.676の相関係数で正の相関を示していた.2) 60歳以上の棘上筋腱断裂患者の腱のカルシウム含有量は, 同年代の他疾患のそれに比べ有意に高値 (p<0.05) を示していた.3) 電顕上, 若年者の膠原線維束は辺縁の輪郭が非常に明瞭であり, 膠原線維は密集し疎な部分が少ない.また, 線維の太さは全体に均一である.中年齢においては膠原線維束の辺縁の輪郭は若年者同様明瞭で, 線維の流れに一定の方向性もあるが, microscopic tearと思われる間質の侵入による線維束の区分化がおこり, 間隙の辺縁には石灰沈着と考えられる高電子密度の黒色のdepositが多少認められる.高齢者においては膠原線維束の輪郭はほとんど不明瞭であり, その走行には一定の流れが認めにくい.線維束の区分化はなく, 一様に変性した線維間に点状, あるいは亀裂状に間隙が存在する.石灰沈着と考えられるdepositが多数散在し, 一部塊状になっているのが観察された.以上の結果, 加齢により棘上筋腱に微細な石灰化が蓄積され, 腱の脆弱化の一因となることが示唆された.
  • 呉 順美, 米山 啓一郎, 石井 誠, 梅田 知幸, 橘 とも子, 高橋 正一郎, 八田 善夫
    1991 年 51 巻 5 号 p. 543-549
    発行日: 1991/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    Color Doppler echographyを用い, 慢性肝障害時における門脈血行動態の把握と門脈血流に関与している因子の検討を目的とした.慢性活動性肝炎14例, ウィルス性肝硬変14例, アルコール性肝硬変6例の全34例を対象とした.Color Doppler echographyを用い疾患ごとの門脈血流量を測定比較し, かつ門脈血流量と肝・脾の大きさ・腹腔鏡での肝病変の進展度・Prothrombin timeとICG (R15) との関連性を検討した.1) 門脈血流測定の比較検討a) 右門脈血流量 (r-PBF) の検討ではCHは正常と変化なく, V-LC群でCHに比べて有意に低下していた (P<0.05) .LC群ではAL-LCでV-LCよりも有意に血流量が多く (p<0.01) , V-LCで最も減少していた.b) 左門脈血流量 (1-PBF) の検討ではCHは正常と有意な差はなかった.LC群では正常・CHに比べ血流は増加しており, 特にAL-LCで有意に増加を認め (p<0.01) , V-LCとAL-LCとの間には有意な差を認めなかった.すなわち左門脈血流量はAL-LCで最も増加していた.c) 脾門部脾静脈血流量 (SVH) の検討ではCHは正常より増加していた (p<0.05) -LC群では正常に比べV-LC, AL-LCとも有意に増加を認め (P<0.01) , V-LCはCHとの間に有意な増加を認め (p<0.05) , V-LCとAL-LCとの間には有意な差を認めなかった.すなわち脾門部脾静脈血流量はAL-LCで最も増加していた.2) 右門脈血流量の検討で各パラメーターとの相関関係をCH, V-LC, ALLCの各々で検討すると, AL-LCの尾状葉径のみで相関が認められた.左門脈血流量の検討では, V-LCで脾門部脾静脈血流量が有意な相関があった.脾門部脾静脈血流量の検討では, CHではSp1een Indexのみ相関を示し, V-LCでは前述と同様に左門脈血流量が有意な相関を持ち, AL-LCではいずれも相関を認めなかった.以上の結果より慢性活動性肝炎とウィルス性肝硬変とアルコール性肝硬変の門脈血流量を右門脈血流量, 左門脈血流量, 脾門部脾静脈血流量の三者を用い検討し, それぞれ異った門脈血行状態にあることが判明した.また, 門脈血流が相関する他の検査パラメーターは少なかった.そのことより逆に門脈血流計測が従来にない肝疾患の新たな機能検査の指標となり得る可能性がある.
  • 高山 昇, 車谷 英美, 青柳 有司, 原田 佳子, 西田 均, 吉田 浩之, 舩冨 等, 八田 善夫
    1991 年 51 巻 5 号 p. 550-553
    発行日: 1991/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    レーザー療法が著効を示した良性吻合部狭窄症例を報告した.症例は50歳, 男性.昭和58年胃癌 (Borrmann-3型) にて胃体部切除.食道幽門吻合術施行.術後1カ月目頃より嚥下困難出現し, 以後増強するため昭和63年当科入院となる.入院時の上部消化管造影, 内視鏡検査では, 食道胃吻合部の狭窄, 狭窄前拡張を認め, 同部の生検でも悪性所見はなく良性吻合部狭窄と診断し, Nd-YAGレーザー非接触照射法にて拡張術を行った.照射は週2回, 計6回, 4500J施行した.施行終了後, 狭窄部は入院時に比較して著明に拡張し, 自覚症状も改善した.また, 合併症はみられず現在まで再狭窄も認めず経過している.近年癌, 潰瘍などに対するレーザー治療の有用性は広く認められている.しかし, 本例のような良性吻合部狭窄に対してもレーザー治療は有用と思われ, また, 手術と比べ侵襲も少なく, 積極的に試みてもよいと考えられた.
  • 北原 功雄, 門倉 光隆, 谷尾 昇, 小林 聡, 舟波 誠, 山本 登, 高場 利博, 今井 俊道, 石原 潤一
    1991 年 51 巻 5 号 p. 554-557
    発行日: 1991/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    症例は50歳女性.1985年, 検診時の胸部X線像で右上肺野に異常陰影を指摘されたが, 放置していた.1988年, 再度異常陰影の指摘をうけ, 近医で施行したCTガイド下経皮針生検でfibrous mesotheliomaが疑われたが, 悪性所見がみられなかったため経過観察となっていた.1989年6月, さらに陰影の増大傾向をみとめたため, 手術目的に当科へ紹介入院となり, 壁側胸膜癒着部位を中心として径約4cmの同胸膜を含めて腫瘍を胸壁から剥離し, 腫瘍摘出とともに腫瘍茎部の連なる右上葉S2の肺部分切除術を施行した, 術後2年の現在, 再発徴候はみられていない, 本症術後に再発や悪性化の報告もあり, 今後も十分な経過観察を要するものと考えている.
  • 丸田 敏也, 扇内 幹夫, 永田 善之, 知野 公明, 藤巻 悦夫
    1991 年 51 巻 5 号 p. 558-562
    発行日: 1991/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    合成水酸化アパタイトは, 我が国で開発されたbioactive Ceramicsであり, 人工骨の中では最も骨親和性に優れている.今回われわれは, 19症例に対し骨充填材として合成水酸化アパタイトを使用したが, いずれも問題となる副作用はみられず, 順調な経過が得られている.合成水酸化アパタイトは, 臨床的に極めて安全で有用な骨充填材であると考えられる.
  • 臼井 充郎, 宮本 二一, 山田 浩隆, 吉川 望海, 八田 善夫, 石井 博, 小池 正
    1991 年 51 巻 5 号 p. 563-567
    発行日: 1991/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    症例は81歳, 女性.貧血, 便秘を主訴に入院した.注腸X線造影にてS状結腸から下行結腸にかけ約18cmの腸管狭窄像を認めた.CFにては, 肛門輪より12cmの部位に周提形成し, 同部位より口側には挿入不可能であった.生検でGoupVのため, 左半結腸切除, 高位前方切除術施行した.切除標本では, 狭窄部の肛門側に浸潤潰瘍型大腸癌が認められ, 正常部をはさみ, stricture typeの閉塞性大腸炎が口側に認められた.
    本症例は, 既往歴にmicroangiopathyを惹起するような疾患はなく, 入院一カ月前に突然の腹痛はあったものの, 下血, 下痢等の閉塞性大腸炎の典型的な症状を欠いていた.大腸癌の口側に発症した閉塞性大腸炎が, stricture typeであり, 非可逆性変化を起こしていた場合は, びまん浸潤型大腸癌との鑑別は困難であり, その診断には, 細心の注意が必要である.
  • 熊谷 一秀, 安井 昭, 西田 佳昭, 増尾 光樹, 吉利 彰洋, 李 暁鵬
    1991 年 51 巻 5 号 p. 568-571
    発行日: 1991/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    症例は40歳男性.胃体下部小彎後壁のIIc型早期胃癌の診断にて手術.切除標本上, 癌巣は比較的整な顆粒像からなるIIc癌巣であり, 病理組織学的検索にて45×35mm大の癌巣は主に印環細胞癌で, 大部分粘膜層にとどまり, かつ1~2mm大の微小癌巣が病巣全体に散在性に存在し, 小癌巣間の非癌上皮部はsmのfibrosis上の聖域型非癌再生上皮やいわゆるpatch (非再生性非癌上皮部) が認められた, これらの癌巣を再構築するに一定の領域に多発した微小癌巣の進展型と考えられた.なお, IIc癌巣は中闕帯領域に占居していた.
    以上, 胃癌のfield carcinogenesisを考える上で興味ある一例を経験したので報告した.
  • ―病理組織学的および免疫組織化学的検討―
    九島 巳樹, 安藤 治憲, 川瀬 紀夫, 太田 秀一, 風間 和男, 池田 直昭, 森口 隆一郎, 渡辺 徹
    1991 年 51 巻 5 号 p. 572-576
    発行日: 1991/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    腎芽腫 (Wilms' tumor) は主として小児期の腎に発生する悪性腫瘍であるが, まれに成人にみられることがある.今回われわれは, 35歳男性の左腎に発生し, 手術標本の組織学的検索によって腎芽腫 (Wilms' tumor) と診断された症例を経験したので報告する.肉眼的血尿と背部痛を主訴とし, 諸検査の結果, 左腎癌の臨床診断のもとに左腎摘出術が施行された.摘出腫瘍の大きさは6.5×4.5×2.5cmで一部出血, 壊死を伴い, 白色調であった.病理組織学的には, 比較的小型で円形~類円形の核をもつ腫瘍細胞が充実状~索状, 一部小腺管状にみられ, いわゆるblastematous cellを含む腎芽腫 (Wilms' tumor) と診断された.免疫染色の結果および文献的考察を加え報告した.
  • 中野 浩, 生田 目公夫, 佐々木 栄一, 緑川 武正, 大久保 雅彦, 幕内 幹男, 岩井 裕子, 池田 忠明, 仲吉 昭夫, 佐川 文明
    1991 年 51 巻 5 号 p. 577-582
    発行日: 1991/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    近年本邦では, 癌深達度がsm層までに限局し, かつリンパ節転移のない早期食道癌症例が数多く報告されるようになったが, 病巣径1.0cm以下の微小早期食道癌症例の報告例はいまだ少ない.今回われわれは, 多中心性発生を示した病巣径0.5×0.4cmの微小早期食道癌の症例を経験したので報告する.内視鏡検査では, 上切歯列より35cmの部位の発赤を伴った小陥凹で, 色素内視鏡検査では2つの小さなルゴール不染帯として認められた.胸部食道全摘術を施行した.所属リンパ節への転移は認められず, また, 摘出標本の検索では, 高分化型扁平上皮癌で, 2カ所の微小なルゴール不染帯は互いに独立した多中心性発生を示す微小早期食道癌であることが証明され, 癌深達度は粘膜筋板までに限局していた.
  • 吉田 仁, 新川 淳一, 舩冨 等, 広瀬 信夫, 高山 秀明, 田中 房江, 南雲 晃彦, 浅川 義夫, 臼井 充郎, 八田 善夫, 浜本 ...
    1991 年 51 巻 5 号 p. 583-589
    発行日: 1991/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    著者らは, 肝静脈から右心房まで連続性に発育した肝細胞癌の二症例を経験した.症例1は塊状型肝癌, Edmondson III型.長期経過後に腫瘍栓による下大静脈の閉塞が判明し, 急激な循環・呼吸状態の変化をきたし, 突然死の転帰をとり, 大循環系の腫瘍栓が直接死因と考えられた.一方, 症例2は結節型肝癌, Edmondson II型であり, 外来時より下肢浮腫・腹壁静脈怒張を認め, 症例1の臨床経過とその経験をもとに, 肝細胞癌の下大静脈や右心房内腫瘍塞栓の可能性を考え, 肝のみでなく肝静脈合流部より右心レベルまでCT scanを用いて検索し, 下大静脈から右心房内に至る腫瘍栓を診断し, それに対処しえたが, 最終的に肝不全により死亡した.下大静脈から右心房に至る肝細胞癌の腫瘍栓は, その病因・肉眼分類・組織分類・細胞異型度などにより構築組織が異なり, 連続性の有無によって臨床症状も異なると考えられ, 腫瘍栓自体が直接・間接的死因となりうることから, 肝癌症例に対しては, 肝静脈合流部より右心レベルまでの下大静脈のCT scanが有効かつ不可欠な検査であると思われた.
  • 角田 明良, 安井 昭, 西田 佳昭, 熊谷 一秀, 渡辺 敢仁, 増尾 光樹, 鈴木 孝
    1991 年 51 巻 5 号 p. 590-594
    発行日: 1991/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    小腸広範囲切除後の短腸症候群の経過観察中に多発性・限局性脂肪肝を認めた極めて稀な1例を経験した.患者は30歳, 女性.腸間膜線維腫などにより腸切除を3度受け, 残存小腸20cmの短腸症候群を来した.中心静脈栄養を中心とする全身管理で一度は退院したものの, 低栄養及び脱水のため再入院, 再度中心静脈栄養を受けた.腹部CT検査で球状, 結節状の低吸収域の多発が認められた.転移性肝腫瘍を疑い治療を行ったが, 全身状態が改善せず死亡した.剖検では, 境界明瞭な灰黄色の結節が多数認められ, 組織学的には脂肪変性であった.
  • 加藤 博則, 辻 まゆみ, 岡崎 雅子, 小口 勝司, 大泉 高明, 中山 貞男, 小口 勝司, 大坪 材, 藤巻 悦夫, 木村 忠直, 李 ...
    1991 年 51 巻 5 号 p. 595-600
    発行日: 1991/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
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