昭和医学会雑誌
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52 巻, 2 号
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  • 信太 賢治, 小堀 正雄, 根岸 秀, 細山田 明義
    1992 年 52 巻 2 号 p. 123-128
    発行日: 1992/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    我々は, 雑種成犬を対象に, Dibutyryl cyclic AMP (DBcAMP) 0.6mg・kg-1・min-1を120分間持続投与し, 呼吸循環器系, 内分泌代謝系に対する影響を検討した.各パラメータの測定は, DBcAMP投与前を対照値 (S0) とし, 投与60分後 (S1) , 120分後 (S2) , 投与中止60分後 (S3) の合計4点で行った.その結果, 循環器系には, S0に対し, S2で心拍数122.2±4.2%, 心係数116.9±13.7%, LVdp/dtmax199.3±25.0%と有意に上昇し, 体血管抵抗は, 63.9±6.6%と有意に低下した.しかし, S3では, ほぼ対照値まで回復し, 作用消失は比較的短時間であることが認められた.呼吸器系では, PaO2及びシャント率ともに有意差はなく, 肺循環系にも, 大きな影響を認めなかった.しかし, pHは, S1以降で, 有意に低下し, BEの有意な低下が主な原因と考えられた.内分泌系では, S0に対しS2で, アドレナリンは約10倍, ノルアドレナリンは約4倍, レニン活性は1.7倍と有意に増加した.これらの著明な増加にも関わらず, 体血管抵抗は低下し, 心拍出量は増加するなど, 循環動態は良好に保たれた.この効果は, これらのホルモンの増加に比べて, DBcAMPが直接血管平滑筋を弛緩させたためと考えられる.ホルモン増加の原因としては, DBcAMPによる副腎髄質及び腎臓の傍糸球体装置への直接作用が考えられる.糖代謝においては, S0に対し, S2で血糖は153.2±31.1%と有意に増加し, さらに, インスリンは約6倍, グルカゴンは約5倍, I/G比は約4倍と著明な増加を示した.一方, NEFAは約0.6倍と有意な低下を認めた.このように, DBcAMPは, 血糖値を増加するだけではなく, I/G比の増加, 遊離脂肪酸の低下などエネルギー代謝を糖利用を中心とした生理的な方向へ転換することが考えられた.インスリン, グルカゴンの増加はDBcAMPの直接刺激と思われる.乳酸値およびL/P比には, 大きな変動は認められず, DBcAMP投与中は末梢循環は良好に保たれていることが示唆された.
  • 吉田 明広
    1992 年 52 巻 2 号 p. 129-140
    発行日: 1992/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    上口唇赤唇部は上唇における自由縁を形成し個人の顔貌を印象づけるのに大きな影響を与える解剖学的要素の一つである.本邦において口唇の形態計測は, 1922年大杉が日本人の口裂幅等について報告して以来, 過去数多くなされてきた.今回, 著者は現代日本人健康成人男女100名 (平均年齢; 男性29.6歳, 女性26.8歳) の安静時形態を検討し, 上口唇赤唇部の形態について過去の統計との比較をすると共に, 形態分類にとって重要な要素である角度に着目し, 上口唇赤唇部の外形線が作る主要部分の角度を計測し検討した.規格写真撮影を行い, 基準点を設定し, 写真上にて上口唇の形態を直接計測した.平均値と標準偏差を求め男女差, 年代差, 相関を比較検討した.男女間では, 上口唇赤唇部内側斜径, 口裂幅径で有意に男性が長く (p<0.01) , ∠β, ∠γは有意に女性が大きかった (P<0.05) .その他の上口唇赤唇部高径, 上口唇赤唇部最大高径, ∠α, ∠δには統計学的有意差は認めなかった.年代間の相違については, 20代と30代の間には計測した総ての項目で統計学的有意差は認められなかった.上口唇赤唇部高径と上口唇赤唇部最大高径との問には, 男女とも高度な正の相関が見られた.故に上口唇赤唇部の厚さの個体差の比較にはどちらの計測値を用いても問題はないと思われる.しかし, 上口唇赤唇部最大高径の方が上口唇赤唇部の厚さの評価には, 適していると思われた.∠αと∠βにも, 男女ともに相関関係が見られた.∠αが大きい人は, ∠βも大きくなり, 赤唇縁がより不鮮明になると思われた.本研究の結果から現代日本人の上口唇は厚く, 上口唇結節は薄く, かつ口裂は狭い傾向が見られた.また, 男性は女性に比べ∠αが大きく∠βと∠γが小さいため赤唇縁の外側が急峻で正中部が厚い印象を与えると思われた.逆に女性では外側がなだらかでふっくらし, 正中部では薄い印象を与えると思われた.
  • ―Intraluminal Feedback Regulation におけるCCK Releasing Factorの関与の可能性―
    竹内 義明, 野津 史彦, 中野 幾太, 田中 滋城, 八田 善夫
    1992 年 52 巻 2 号 p. 141-147
    発行日: 1992/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    膵外分泌のfeedback regulationの機序を明らかにするため膵液胆汁瘻 (diversion) ラットに小腸瘻 (jejunal fistula) を作成し上部小腸の灌流 (wash out) を行った.Diversionにより亢進した膵外分泌はwash outにより膵液量・蛋白量・重炭酸排泄量のいずれも経時的に減少し, CCKも灌流の後に減少を認めたことから, 灌流液内にCCKの分泌を刺激するfactorの存在が示唆された.そして膵液内に分泌されるmonitor peptideとは異なり, このfactorは十二指腸内に分泌されるものと思われた.
  • 土佐 泰祥
    1992 年 52 巻 2 号 p. 148-157
    発行日: 1992/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    今日, 鼻副鼻腔炎の原因として鼻腔形態異常が重視されてきており, また口唇口蓋裂患者の術後に鼻閉感を訴える場合があり, 鼻腔形態や鼻腔容積の異常が鼻腔通気度・鼻閉感に影響していることが考えられている.しかし, 鼻腔形態について詳細に調査した報告は少なく, 鼻腔容積についての報告はみあたらなかった.今回, 鼻腔領域疾患の診断・治療あるいは口唇口蓋裂患者の術前・術後の検討への応用の前段階として, 8~23歳の健康ボランティア69例 (男性: 17例, 女性: 52例) 平均年齢16.3±4.1歳に, MRIを用いて鼻腔領域の撮影を行ない, 鼻腔容積を求め, 年齢・身長・体重に対する相関関係について調査・検討を加えた.使用機種は, シーメンス社製のマグネトームM10で, 1.0テスラの磁場強度の超伝導型装置で, 撮像条件はT1強調像, 繰り返し時間TR 600msec, TE 19msecのshortスピンエコー法で, スライス幅は3mmまたは4mmでギャップレスとし, 断層面は横断面を撮影した.鼻腔としては, 前方は梨状口部まで, 後方は後鼻孔部まで, 側方は上・中・下鼻甲介および鼻道を含み, 前頭洞・上顎洞などの開口部までとし, 上方は脳頭蓋の一部まで, 下方は口蓋の上面までとした.横断面の基準線としては, 正中矢状断面像で鼻根部最陥凹点と橋延髄移行部を結んだ線を選んだ.これはCTでよく用いられるCMラインとほぼ一致するからである.鼻腔容積は, 各々の横断面の断面積をMRI装置付属のディスプレイコンソールを用いて直接トレースし, スライス幅を掛けて柱状の容積を出し, これらを積み重ねて容積を算出した.8~23歳の対象を5つの年齢群 (1) 8~10歳, (2) 11~13歳, (3) 14~16歳, (4) 17~19歳, (5) 20~23歳に分けた.鼻腔容積・身長・体重の平均を年齢群別でみると, 身長・体重の伸びは16歳ころでほぼプラトーとなっているのに比べ, 鼻腔容積の増加は, 20歳ころまで続いていた.統計学的解析として, 鼻腔容積と年齢, 身長, 体重, について, ピアソンの相関係数・回帰直線を求め, 有意の相関係数・回帰直線を得た (p<0.05) .また, 男性群と女性群との間で相関係数と回帰直線の傾きで有意の差を認めなかった.統計学的処理では鼻腔容積に対して年齢, 身長, 体重で比較的強い相関関係が認められ, 体重との相関に比べ身長との相関がより強いという結果を得た.
  • 野崎 保雄, 歌橋 和哉, 川田 泰司, 中野 幾太, 舩冨 等, 八田 善夫
    1992 年 52 巻 2 号 p. 158-163
    発行日: 1992/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    動脈硬化症とエラスターゼの関係は古くより論じられているが定説はない.また, 臨床的に全身の動脈硬化性変化を的確に把握することは困難であり, 今回は血中膵エラスターゼIを中心に膵酵素と血中脂質, 動脈硬化指数との関係を検討した.膵型アミラーゼ, リパーゼはHDL-コレステロールと軽度の負の相関を示すのみであったが, エラスターゼIのみ動脈硬化指数と正の相関を示した.いずれの膵酵素も動脈硬化指数高値 (3以上) 群, 高齢者 (65歳以上) 群で高い傾向を認めた.また, エラスターゼIについては各年代別にも検討したが, 40歳以上では加齢とともに上昇した.以上より, 動脈硬化が強いと推定される例では膵酵素が高くなり, 特にエラスターゼIが最も鋭敏に反映されると考えられた.したがって, これらの症例では正常値の設定や得られた値の解釈において注意を要すると考えられた.
  • 染谷 操
    1992 年 52 巻 2 号 p. 164-177
    発行日: 1992/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    DEXA法 (Hologic社QDR1000) による骨量測定法を用い, 健常人骨塩量の加齢的推移, 骨折閾値, 従来の単純X線像による骨量評価法の妥当性, 骨粗鬆症の危険因子である体格と閉経, 骨塩量と血中骨代謝マーカーの関係について定量的に評価・分析を行い, 骨粗鬆症の診断・予防について客観的に検討・考察をした.健常人の腰椎骨塩量において, 男性は20歳代, 女性は30歳代で最大骨塩量 (peak bone mass) を示し, 女性は男性に比べ50歳代から60歳代にかけて, すなわち閉経期を境に急激な骨塩量減少を示した.一方, 大腿骨頸部骨塩量では, 男女とも20歳代でpeak bone massを示し, 以後加齢に伴う緩徐な骨塩量減少であり, 全年齢を通じ女性は男性に比べ低い骨塩量であった.脊椎圧迫骨折群では, 骨折群L2-L4 BMDの90%teilから骨折閾値を求めるとL2-L4BMD0.7569/cm2であった.大腿骨頸部骨折は, 80歳代の大腿骨近位部骨塩量が骨折閾値に相当していた.厚生省シルバーサイエンス研究班による脊椎X線像による骨萎縮度分類の骨量評価妥当性を調べたところ, 実際の骨塩量をよく反映していた.Singh分類では骨塩量減少の程度はよく表わしているが, 著しく骨塩量が減少したものでは評価できにくいという結果を得た.骨粗鬆症の危険因子において, 閉経に関する調査では, 腰椎は閉経前からの骨塩量減少率は, 10年目では21.0%, 大腿骨頸部は, 10年目では13.2%であり, 腰椎は閉経の影響を強くうけ, 大腿骨頸部では閉経の影響をうけにくいことがわかった.体格に関しては, 体重, 体重/身長比, BODY MASS INDEXと骨塩量の間に正の相関を認め, 腰椎骨塩量より大腿骨頸部骨塩量の方が高い相関を示した.つまり“痩せ”は, 骨粗鬆症の危険因子であり, 腰椎より大腿骨頸部において関連性が大きいことが示唆された.骨粗鬆症患者50例において骨塩量と血中骨代謝マーカーの関係について検討したところ, 有意な相関を示すものはなかった.以上より, DEXA法による骨量測定法を用いることにより, 骨折閾値に骨塩量が到達する以前に急激な骨塩量減少者 (rapid bone loser) を早期発見できれば, 早期予防が可能であり, また今後さまざまな骨粗鬆症の危険因子を検討する際, 有用と考えられた.DEXA法を用いた本研究により, 骨粗鬆症の診断・予防が客観的に評価できることが十分可能と考えられた.
  • ―特に原発巣のLaminin染色性ならびに静脈侵襲と肝転移の関連について―
    佐藤 徹
    1992 年 52 巻 2 号 p. 178-189
    発行日: 1992/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    大腸癌における肝転移は, 予後を規定する重要な因子である.細胞間接着基質としてのLaminin (LN) は, 近年肝転移との関連が注目されている.今回, LNの免疫組織学的研究を行い, 原発巣, 静脈侵襲内癌組織 (vLN) , 血行性転移巣のLNの染色性と癌の浸潤, 転移との関連について検討した.さらに, Victria Blue-LN重染色 (VB-LN重染色) を用いて, LNの染色性と静脈侵襲の両面から大腸癌の肝転移について検索し, その特徴を明らかにすることを試みた.対象は進行大腸癌切除症例93例で, 同時性肝転移を認めたもの (H (+) 群) は22例, 認めないもの (H (-) 群) は71例であった.10%ホルマリン固定切片を用いて, LNの免疫組織学的染色 (ABC法) ならびにVB-LN重染色を行った.原発巣のLN陽性率は全体で51.6%で, LN染色とVB-LN重染色のLN染色性に差を認めなかった.肝転移の有無別にみたLN陽性率は, H (+) 群が77.3%で, H (-) 群の43.7%に対して, 有意に高率であった (P<0.01) .原発巣のLN染色性と肉眼型, 組織型, 深達度, v, ly, n, stageとは明らかな相関を認めなかった.vLN陽性率もH (+) 群54.5%, H (-) 群8.2%とH (+) 群で有意に高かった (P<0.01) .また原発巣のLN染色性とvLNは正の相関関係を認めた.同時性肝転移陽性率は, 原発巣のLN陽性例では35.4%, vLN陽性例63.2%であった.これらを静脈侵襲と同時に検討した結果, v2以上で原発巣のLNまたはvLNが陽性のものにおいて, 80%以上の高い陽性率を示した.静脈侵襲部位別には, ssv (+) 例に肝転移を多く認めたが, この中で原発巣のLNおよびvLNが陽性のものの肝転移率はそれぞれ68.0%, 70.6%で, 陰性の19.0%, 31.0%に比べ, ともに有意に高率であった (P<0.05) .以上より, 原発巣のLNまたはvLNが陽性の症例は, 肝転移のhigh risk groupと考えられた.さらにLN染色性と静脈侵襲の同時検討は, 肝転移の予知因子として有用であることが示唆された.また, VB-LN重染色はLNの染色性に影響を与えず, 静脈侵襲の判定が容易であり, 肝転移に相関する原発巣のLNやvLNが, 同一切片で検討することが可能であり, 有用な染色法であると思われた.
  • ―共焦点レーザー顕微鏡を用いた免疫組織学的検討―
    梅田 知幸, 米山 啓一郎, 橘 とも子, 八田 善夫
    1992 年 52 巻 2 号 p. 190-196
    発行日: 1992/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    Galactosamineラット急性肝障害の肝修復過程におけるgap junction (以下G.J.) の変化をラットgap junction monoclonal ab (connexin 32 ab) で免疫組織化学的に検討し, DNA合成の変化と比較した.7週齢Wistar系雄性ラットにgalactosamine 300mg/kgを腹腔内投与した.投与前, 24, 48, 72, 96, 168時間後の肝組織をconnexin 32 abとFITC標識第2抗体を反応させ共焦点レーザー顕微鏡で観察した.肝組織0.1mm2あたりの螢光スポットを正常な糸状ギャップ結合蛋白 (S type) , 障害時の球状ギャップ結合蛋白 (L type) とに分けて測定した.DNA合成はBrdUで標識後, 抗BrdU抗体を用いて染色しG.J.の検討と同様な視野で測定した.その結果, 1) 正常肝細胞のG.J.は肝細胞接着面にS typeのスポットとして観察された.2) 急性肝障害時のG.J.の観察では, 細胞障害が高度な24, 48時間では細胞接着面には螢光スポットがほとんどみられず, 細胞質内に球状や塊状の形で主にL typeが多く観察された.3) 修復過程についてS typeとL typeに分け検討するとS typeは投与前 (1817±316/0.1mm2) , 24-72時間後と著明に減少し96時間後, 168時間後と増加していたが, 正常の螢光スポット数には完全には回復しなかった.L typeは前 (44±33/0.1mm2) , 24-96時間後 (426±240/0.1mm2) と増加していたが168時間後にはやや減少していた.4) 肝細胞のBrdU L.I.は前に比べ96時間後がピークとなり, 168時間後は低下していた.以上よりgalactosamineを用いたラット急性肝障害時の変化は, 正常なS typeの消失とL typeの細胞質内への出現が特徴的であった.修復過程においてはDNA合成がピークとなる96時間後にも, まだL typeが高値で, S typeも前値の2/3程度しか回復していなかった.これは既に報告されている部分肝切除後のG.J.の修復過程とは異なっており両者の再生の違いを考える上で興味深いと思われる.
  • ―特にVIP性神経支配について―
    志賀 久隆, 塩田 清二, 中井 康光
    1992 年 52 巻 2 号 p. 197-206
    発行日: 1992/04/28
    公開日: 2010/11/19
    ジャーナル フリー
    ラット顎下腺におけるカテコールアミン, セロトニン (5-HT) , γ-アミノ酪酸 (GABA) , vasoactive intestinalpol ypeptide (VIP) , neuropeptide Y (NPY) およびsubstance P (SP) 含有神経線維の分布について免疫組織化学によって観察した.さらに, VIP, tyrosine hydroxylase (TH) , NPY含有神経線維と腺細胞, 筋上皮細胞および血管との関係について電顕免疫組織化学によって観察した.TH, 5-HT, GABA, VIP, NPY, およびSP様免疫陽性神経線維は腺房周辺および導管や血管の周囲の間質に分布していた.これらの神経線維のうち, VIP様免疫陽性神経線維は腺房内の腺細胞間に進入し, その終末が漿粘液性および粘液性腺細胞にシナプス様結合している像も観察された.また, TH様免疫陽性神経終末は血管壁の平滑筋細胞にシナプス様結合しているのが観察された.以上, ラット顎下腺では, VIP含有ニューロンはシナプスを介して腺細胞の分泌活動を直接支配している可能性およびカテコールアミンやNPY含有ニューロンは血管の収縮に関与している可能性が示唆された.
  • 門倉 光隆, 谷尾 昇, 野中 誠, 山本 滋, 成沢 隆, 小林 聡, 久米 誠人, Toshihiro TAMABA, 野口 久, 中島 ...
    1992 年 52 巻 2 号 p. 207-211
    発行日: 1992/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    肺癌診断技術の進歩とともに治療成績も向上しつつあるが, 今回, 肺癌の診断あるいは治療開始が遅延した症例の中から, いわゆる“Doctor's delay”とも言うべき症例を提示した.これらは胸部X線像で「二次変化像」「腫瘤陰影」などがみられたが, 決して早期発見とは言いがたい症例であった.当科で入院治療を行った肺癌186例のうち, 過去に撮影した胸部X線像の見直し読影が可能であった症例の60%に, 検診での見逃しや異常陰影の指摘困難例などが存在した.胸部X線像は様々な疾患で撮影されながらその読影が軽視されがちであり, また年1回の検診のみでは早期発見し得ない肺癌症例も存在することを十分認識する必要があると考えられた.
  • 小堀 正雄, 岡本 健一郎, 樋口 比登実, 八代 亮, 増田 豊, 細山田 明義
    1992 年 52 巻 2 号 p. 212-215
    発行日: 1992/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    今回われわれは, 本院ペインクリニックの1988~1990年の3年間の現況について検討した.神経ブロック数は, 1988年以降8699件, 10214件, 9428件であった.最も多い神経ブロックは星状神経節ブロックで, 次いで硬膜外ブロックで両神経ブロックを合計すると全神経ブロック中88.5%.88.3%, 83.3%と大部分を占めたが, その割合は低下傾向を示し, 神経ブロックの多様化を窺わせた.神経ブロック月別症例の変動を検討したところ, 3月が最も多く季節性アレルギー性鼻炎によるものと考えられた.一方, 放射線利用の機会は増加傾向を示し, 特に上腹部悪性腫瘍に広い適用のある腹腔神経節ブロックが増加する傾向があり, 終末医療にも深く関わることが示唆された.
  • 榎本 一裕, 林 由理, 田中 房江, 新川 淳一, 米山 啓一郎, 舩冨 等, 八田 善夫
    1992 年 52 巻 2 号 p. 216-222
    発行日: 1992/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    B型急性肝炎に急性腎不全を合併した1例を報告した.症例は46歳, 男性.発熱, 全身倦怠感, 嘔吐にて某病院に入院したが, 高度の肝障害と腎障害を認めたため, 当科に転院となった.入院時意識障害はなく, 皮膚および眼球結膜に黄疸を, 下腿に点状出血斑を認めた.入院時検査では総ビリルビン15.2mg/dl, GOT 483IU/l, GPT3, 362IU/l, プロトロンビン活性27%, IgM型HBc抗体陽性, HBs抗原陽性, BUN 153.2mg/dl, クレアチニン11.5mg/dlであり.B型急性肝炎に急性腎不全合併と診断した.経過中脳症はなく, また血液透析, 血漿交換およびグルカゴン・インスリン療法にて肝, 腎機能は順調に改善を示した.劇症肝炎ではないB型急性肝炎に急性腎不全を合併することは非常にまれと考えられ報告した.
  • 渡辺 公博, 竹田 広樹, 川田 裕子, 眞 重雄, 米山 啓一郎, 舩冨 等, 八田 善夫
    1992 年 52 巻 2 号 p. 223-228
    発行日: 1992/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    Billroth II法による胃潰瘍術後に, 十二指腸側吻合部潰瘍を発症した1例を報告した.症例は68歳, 男性.軽度の腹痛とともに吐血をきたし入院した.入院時の上部消化管内視鏡検査では, 残胃, 十二指腸内に多量の新鮮血を認め, 出血部位の確認はできなかった.4日後の再検査時には止血しており, 吻合部輸入脚側に浅い潰瘍とびらんを認め, これらの部からの出血と推定された.その病因検索のため種々の検査を施行したが, 残胃の過酸傾向, 輸入脚内の膵液, 胆汁の停滞, 膵液による酸中和能の低下, 胆汁中胆汁酸組成の変化は否定され, 腹部血管撮影にて軽度の動脈硬化性変化を認めるのみであった.以上より, 本例の潰瘍発症機序として, もとに動脈硬化にともなう微小循環障害があり, さらにアルコールによる粘膜障害が加わり, 発症したと推定された.
  • 竹内 義明, 梅田 知幸, 田中 房江, 田崎 修平, 臼井 充郎, 竹内 治男, 舩冨 等, 八田 善夫, 伊礼 正剛
    1992 年 52 巻 2 号 p. 229-233
    発行日: 1992/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    17歳時に急性膵炎として発症し, 以後膵炎発作を繰り返し, 5年後に石灰化慢性膵炎に移行したまれな症例を緻したので報告した.しかし厳密には本例が急性膵炎から慢性膵炎へ移行したものか, あるいは本来慢性膵炎として経過してきたものかは現在の診断能をもってしても区別しえない面がある.また本例のアルコール摂取量は搬に慢性膵炎を生ずるといわれている量に比べ少量で餐が, 石灰化の形態はアルコール性慢性膵炎のそれに類似しており, 個体のアルコール感受性を考えた場合には, より少量のアルコールでも同様の変化をきたし得ると考えられた。したがっで今後アルコールの個体感受性を含めた慢性膵炎の成因の検討, 内視鏡的逆行性膵管造影でもとらえ得ないレベルでの慢性膵炎初期像の検出方法の確立が必要であり, それによって急性膵炎から慢性膵炎への移行や関連も明らかにできると考えられた.
  • 新 英士, 巽 雅彦, 大地 武, 奥羽 徹, 青山 恭子, 田所 千代子, 平良 雅人, 中川 之子, 辰野 剛, 山口 武兼, 川手 信 ...
    1992 年 52 巻 2 号 p. 234-239
    発行日: 1992/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
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