昭和医学会雑誌
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53 巻, 3 号
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  • 門松 香一, 安西 将也
    1993 年 53 巻 3 号 p. 235-246
    発行日: 1993/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    口蓋裂患者を子に持つ親の苦悩は深刻である.口蓋裂を手術しない場合は言語障害が生涯継続する可能性が大きいこともあり, ほとんどの親は口蓋裂の治療に必要な手術を希望し来院する.現在のところ, 手術時期, 手術法など種々の要因が術後の言語障害の発現に影響することが指摘されているが, これらの要因に関する研究報告は少なく充分には解明されていない.そこで, 今回我々はその言語障害に注目し, 性, 裂型などの各種の要因を取り上げ, それぞれの要因の相互影響について検討した.調査研究方法として, 昭和大学病院では, 1980年より形成外科, 小児科, 耳鼻咽喉科, 矯正歯科, 言語治療士, ソーシャルワーカーなどからなる口蓋裂診療班を結成し, 口唇口蓋裂及び鼻咽喉閉鎖不全についても診療を行ってきており, 1980年1月より1992年5月までの約12年間に初回手術や言語治療を日的に来院した口蓋裂単独例は445例で, この中から言語障害が比較的正確に評価できる4歳以上の242例を調査客体とした.なお, 統計処理方法としてはSASを用いて.7検定および言語障害を外的基準とし, 林の数量化II類によって言語障害の発現に及ぼす影響を検討した.本研究の結果, 言語障害の発現との係わりが認められたものは, 性, 裂型, 出生週数, 生下時体重, 妊娠歴異常, 妊娠経過異常, 手術時年齢, 手術手技, 軟口蓋の動き, 言語初診年齢, 精神発達であった.なかでも, 言語障害の発現に及ぼす影響の強い要因は, 手術年齢, 言語初診年齢, 手術手技, 裂型, 出産時年齢などであることを明かにした.またこのなかで言語障害の発現割合の少ない要因をみると手術時年齢では2歳代 (58.3%) , 言語初診年齢では2歳以上3歳未満 (48.0%) , 裂型では軟口蓋裂 (53.4%) が言語障害の発現割合が最も少なかった.言語障害の発現割合が多い要因は手術手技において咽頭弁使用例 (94.1%) , 出産時年齢では年齢が高くなるにつれて多くなってきていることも明らかにした.本研究結果から術後言語障害の発現に係わる要因の相互影響を考慮した結果を得ることができたとともに, 単一要因だけで言語評価をする事は非常に危険なものであり, 多くの要因の影響を考慮しながら, 言語評価はなされなければならないことがわかった.これらの結果は, ある程度は言語障害になり易さを予測することが可能であり, 口蓋裂患者の初診時に両親へのインフォームドコンセントに使用できるものと期待できる.
  • ―臨床病理学的因子, 組織発現, およびDNA ploidy patternとの関連―
    茂木 好則, 河村 正敏, 新井 一成, 福地 邦彦, 高木 康
    1993 年 53 巻 3 号 p. 247-253
    発行日: 1993/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    癌遺伝子の1つであるc-erbB-2の遺伝子産物の血中濃度を胃癌患者血清を用いて測定し, 組織でのc-erbB-2の発現, 組織でのDNA ploidy patternとの関係について検討した.外科摘出術前の患者56例の血中c-erbB-2濃度は, 胃癌ステージの進行とともに高値となる傾向にあり, 健常人カットオフ値の10U/ml以上の症例14例のうち, 12例は進行癌であり, 未分化型が分化型より高率であった.組織でのc-erbB-2遺伝子産物の発現は, 22例中8例に認められ, 発現例の血中c.erbB-2濃度が11.83±6.06U/mlであったのに対して, 非発現例では7.23±2.66U/mlと有意の差が認められ, 組織での発現を血中c-erbB-2濃度測定によりモニターできる可能性が示唆された.また, DNA ploidy patternの検索では, diploidyが7.18±1.39U/mlであったのに対して, aneuploidyは9.92±5.90U/mlと高値傾向であり, 大きなバラツキが認められた.悪性腫瘍におけるaneuploidyは予後不良とされており, 血中c-erbB-2濃度が高値の症例では癌遺伝子が高率に発現していることが示唆され, 胃癌の予後を推定する指標の1つとして, 血中c-erbB-2濃度測定は有用であると思われた.
  • ―特に顎下腺についての画像解析学的研究―
    丸岡 悦子, 諸星 利男, 神田 実喜男
    1993 年 53 巻 3 号 p. 254-263
    発行日: 1993/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    アルコール多飲は人体の諸臓器に様々な機能的, 形態的障害を引き起こすが, 口腔領域においても各唾液腺障害を合併することが知られている.特に耳下腺はしばしば腫脹するといわれており, その臨床的, 病理学的意義について興味が持たれている.今回は顎下腺を中心に, 大量飲酒者の唾液腺病変の実態を理解するとともに, その病理形態像や発症機序について検討することとした.当教室および関連施設における剖検例のうち日本酒換算一日3合以上, 10年以上のアルコール歴をもつ45症例, 対照として非アルコール多飲者25例の顎下腺・肝・膵について光顕的および組織計測学的に検索した.アルコール多飲者の顎下腺は対照群に比較し, 容積および重量 (ホルマリン固定後) ともおよそ30%増加しており, 耳下腺同様腫大化することが理解された.組織学的には腺房細胞は萎縮脱落し, 実質細胞は減少する傾向が認められ, 拡張した腺房腔や導管腔内のタンパク栓形成や石灰沈着が高頻度に認められた.またリンパ球浸潤を伴う導管炎および導管周囲炎もしばしば認められた.大量飲酒は, 唾液分泌亢進を引き起こすことが知られており, そのためタンパク栓が形成され, これを核として石灰沈着が起きることが想定された.これらは唾液の通過障害を引き起こし最終的に上皮の萎縮を来すと考えられた.線維化病変は主に小葉間 (導管周囲) に見られ, また小葉内にも認められた.前者は上述のごとく引き起こされた導管炎および導管周囲炎に続発すると想定された.後者のような小葉内細線維化は慢性アルコール性膵炎の組織像と類似しており, 実質細胞の脱落に続発しないいわゆる一次的線維化であることが示唆された.最終的に脂肪浸潤も顕著に認められ, 実質細胞の脱落を補填するように小葉内および小葉間に脂肪組織の増加が認められた.つまり顎下腺腫大化の原因は, 実質細胞の萎縮, 脱落に伴う絶対的・相対的な線維成分と脂肪組織の増加によるものと考えられた.なお検索症例中には, アルコール性障害の典型像ともいうべきアルコール性肝硬変, アルコール性肝炎, 脂肪肝, および慢性膵炎等が高頻度に認められた.しかし重篤な肝あるいは膵の病変に必ずしも高度の顎下腺病変がみられるとは限らず, これらの各臓器における病変は臓器相関により発症するのではなく, 大量飲酒によりアルコールが各臓器に対し直接的に作用した結果として発症した病変と考えられた.
  • ―特に徘徊などについて―
    平良 雅人, 大賀 徹夫
    1993 年 53 巻 3 号 p. 264-272
    発行日: 1993/06/28
    公開日: 2010/11/19
    ジャーナル フリー
    痴呆を伴う疾患は, 問題行動を随伴することが多く, 在宅看護, 外来通院を困難にする患者側の大きな要因となっている.問題行動の発生には認知機能の障害や心理学的, 生理学的な要因が様々に関与しており, 実際の臨床場面においても治療や対応に困難をきたすことが多い.近年, 痴呆性疾患に対する行動評価尺度がいくつか考案され, 多面的かつ客観的な情報が得られるようになったが, 問題行動の予後予測に関する報告はない.痴呆にみられる問題行動を治療し対応していくためには, 痴呆の状態像をとらえるだけでなく, 予後を予測する必要性がある.今回の調査研究では問題行動の中でも, 介護者への負担の大きさ1) と入院の主な理由として頻度の高い2) , 「徘徊」, 「夜間に他人 (家族や他患) を起こす」をとりあげ, それらが入院中に寛解するか否かを予測玄るためには, 入院時にGBSスケール (Gottfries Brane Steen scale) を施行しどのような項目が重要であるかについて検討した.調査研究方法として, 茨城県日立市の某病院の老人性痴呆疾患治療病棟に平成2年7月23日より平成3年7月31日までの約1年間に入院した患者のなかで, 経過中, 入院120日以内に身体合併症を併発した16例を除いた75例で, このなかで入院時に「夜間に他人を起こす」あるいは「徘徊」という問題行動を認めた, おのおの47例と42例について検討した.なお, 統計処理方法としては統計処理システムSAS (Statistical Analysys system) を用いて, x2検定および多変量解析数量化理論2類によって, 問題行動の寛解を決定する要因について検討した.「夜間に他人を起こす」, 「徘徊」いつれの問題行動においても, GBSスケールの「場所に関する見当識障害」の項目で最も寄与度が大きかった.その区分点の内容から, 患者が自分の病棟内や家の中でも迷ってしまうほどの場所に関する見当識障害があると, 問題行動が寛解しにくいことが判明した.また, 次に大きな寄与度に注目すると, 「夜間に他人を起こす」と「徘徊」では寛解に影響する因子が異なっていることが分かった.前者では知的機能のより軽度の方が, 寛解する可能性が高いが, 後者では患者の運動機能が低下することにより, 「徘徊」が寛解しやすいことが明らかとなった.
  • 吉田 寛子, 吉田 正一, 門福 強樹, 佐藤 永雄
    1993 年 53 巻 3 号 p. 273-280
    発行日: 1993/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ストレプトゾトシン (STZ) 糖尿病ラットにおける血清タンパク質の変化を未変性の二次元電気泳動で分析し, 著しく減少あるいは増加している数種の特異タンパク質を検出した.本報では, これらのうち特に変化の著しい4種 (P1~P4) について検討した.P1は著しく減少するタンパク質でpIは4.4, P2~P4は増加するタンパク質でpIはそれぞれ4.7, 4.2および4.7と推定された.何れも糖タンパク質であった.P2およびP3はリジルエンドペプチダーゼで消化したペプチドのアミノ酸配列の解析からT-キニノーゲンと決定された.既知タンパク質のデータベースからはP, およびP4のペプチドに一致した配列は見つからなかった.P4は二次元電気泳動の位置からα2HS-グリコプロテインではないかと推測されたが, ヒトα2HS-グリコプロテインにあるような性質は持っていなかった.精製P1およびラット血清を免疫電気泳動で分析すると, 1本の沈降線のみがα1分画に検出され, 精製P1は免疫化学的にも均一で, しかもラット血清中には抗P1と反応する成分はP1以外に無いと考えられた.抗P1はマウス血清に対してはP1と部分的に融合した沈降線を形成したが, ヒト, イヌ, ウシ, ウマ血清とは反応しなかった.血清中のP1濃度を定量すると, 対照ラットはおよそ6mg/mlであり, STZ投与3週では対照の50%以下であった.P1濃度はSTZ投与3週目からインシュリンによって血糖値を正常範囲に3週間保つとほぼ回復し, その後処置を止めてそのまま飼育すると元のレベルまで減少した.P2~P4の変化も血糖値を正常範囲に保つと回復し, これらのタンパク質がSTZ投与後の糖尿病と, 少なくとも血糖値と密接な関連があることが示唆された.
  • ―特に増殖細胞核抗原 (PCNA) の染色性について―
    菊地 浩彰, 諸星 利男, 国村 利明, 神田 実喜男, 櫻井 修, 渡辺 糺, 熊田 馨, 仲吉 昭夫, 永山 剛久
    1993 年 53 巻 3 号 p. 281-289
    発行日: 1993/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    病理組織学的検索がなされた乳癌切除例中より乳腺粘液癌23例を選び, その生物学的悪性度を検討した.すなわち増殖細胞核抗原 (proliferating cell nuclear antigen, PCNA) を用いて免疫組織化学的染色を行い, 乳腺粘液癌の予後との関連性を比較した.また一部の症例では電顕的にも検討した.組織学的に純型粘液癌 (6例) と通常型浸潤性乳管癌を並存する混合型粘液癌 (17例) に分類できた.また純型及び混合型の粘液癌部分の腫瘍細胞密度の多寡により膠様成分優位部分と上皮成分優位部分に分類し, 各成分のPCNA labelling index (PI) を算出して比較検討した.その結果, 純型のPIは膠様成分優位部分で2.2±1.1%, 上皮成分優位部分で4.8±1.6%となり, 混合型は膠様成分優位部分で5.9±2.6%, 上皮成分優位部分で7.1±2.2%であった.すなわち混合型のPIは純型の膠様成分優位部分より有意に高く (P<0.01) , しかも純型では上皮成分優位部分は膠様成分優位部分よりも有意に高かった (P<0.05) .また混合型に並存する硬癌部分は10.1±3.0%, 充実腺管癌部分は9.4±4.1%となり, 混合型の粘液成分優位部分と純型より有意に高かった (P<0.05) .乳頭腺管癌部分では2.7±1.5%となり, 粘液癌部分と同様, または若干低値を示す傾向を認めた.更にPCNA陽性細胞の染色程度を弱陽性から強陽性まで3段階にGrade分類したところ, 混合型の上皮成分優位部分では純型・混合型の粘液成分優位部分より強陽性を示す腫瘍細胞が有意に増加していた (P<0.01) .従って, 乳腺粘液癌の予後判定因子として, 一般に述べられている組織型・浸潤度・細胞密度に加えて細胞増殖能も重要であり, PCNAの検索が有用であることが裏付けされた.
  • 北見 明彦, 鈴木 隆, 堀 豪一
    1993 年 53 巻 3 号 p. 290-294
    発行日: 1993/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    胸腺腫の治療にあたり放射線照射や化学療法などの合併療法を行なう指標を求める目的で, 胸腺上皮細胞の核DNA量ヒストグラムから腫瘍の生物学的悪性度を評価することを試みた.対象は1987年1月から1990年6月までに手術を行なった胸腺腫12例, 正常胸腺2例, 重症筋無力症に対し拡大胸腺摘出を行なった肥大胸腺1例で, 胸腺腫の手術の際の臨床病期はI期4例, II期2例, III期3例, IV期3例であった.核DNA量の測定は螢光顕微測光法にて行ない, コントロールには腫瘍内の小リンパ球を用いた.DNA量ヒストグラムの評価は癌DNA研究会の基準に従いDiploid値を設定し, G0/G1peakが単一でdiploid rangeにあるものをdiploid patternとした.またヒストグラム像全体の評価としてAsamuraのHistogram patternを使用した.結果は正常胸腺, MG胸腺例は明らかなdiploidpatternを示した.胸腺腫症例ではdiploid patternを示したのは2例のみで, そのほかの症例は2Cと3Cの間に単一のpeakを持つか, あるいは二峰性のpeakを持つものが多かった.Ploidypatternと臨床病期の間に相関は見いだせなかった.Histogrampatternは, 正常胸腺およびMG胸腺ともにIであった.胸腺腫症例ではIの症例が3例, IIのものが9例あった.Iの2例は臨床病期I期でこれらは術後2年1カ月, 4年6カ月再発はなかった.臨床病期I期でHistogram patternがIIの症例は2例認めたが, うち1例は2年10ヵ月後に再発した.HistogrampatternがIで臨床病期III期の症例は放射線治療を40Gy行ない, 術後3年8カ月経過した現在再発は認めない.臨床病期を非浸潤型 (臨床病期I期) , 浸潤型 (臨床病期II, III, IV期) に分けると, HistogrampatternIIは非浸潤型2/4 (50%) , 浸潤型7/8 (88%) と浸潤型に多い傾向がみられた.以上の結果から胸腺腫の上皮細胞には腫瘍細胞としての増殖性変化が起きていることが確認された.また, もし非浸潤型胸腺腫の中で術後合併療法を追加する必要な症例があるとすれば, Histogrampattern IIの症例が対象となりうるものと思われた.
  • ―生検材料における病理組織学的および生物計測学的研究―
    相澤 共樹, 諸星 利男
    1993 年 53 巻 3 号 p. 295-304
    発行日: 1993/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    肝にみられる肉芽腫性病変の形態や病因および実態を知るために, 当教室ならびに関連施設において過去15年間に経験された経皮的肝生検材料1100例を対象とし, 臨床病理学的および病理形態学的検索を行なった.肝肉芽腫を脂肪滴を有する脂肪性肉芽腫 (LG) と, これを欠く非脂肪性肉芽腫 (NLG) に大別し, さらにそれぞれを構成細胞により組織球型 (HLG, HNLG) と類上皮細胞型 (ELG, ENLG) に分類した.なおHNLGはvirus性活動性肝炎にみられる巣状壊死病変で代表されるが, 今回は検索の対象から除外した.肉芽腫は1100生検材料中, 69例 (6.3%) にみられた.内, LGは51例 (4.6%) , ENLGは18例 (1.7%) であり, 前者についての内訳はHLG優位症例, 36例 (3.3%) , ELG優位症例, 15例 (1.3%) であった.合併病変についてはLGはアルコール性肝障害, 過栄養性の脂肪肝症例に好発し, ENLGではPBCに好発した.LGは小葉内, 特に中心静脈周囲に, ENLGは門脈域内に好発した.LG症例は全例に肝脂肪変性がみられ, 肝脂肪変性の程度が強い程, LG発生個数が増加していることよりLGの発生に肝脂肪変性は不可欠な条件であると考えられた.また肝細胞壊死は必ずしも合併せず, LGは肝細胞外に滴出した脂肪滴に対する炎症反応であることが示唆された.なおELGはHLGに比較し, より大型でこれを構成する組織球の数も多く, 血清学的にもトランスアミナーゼ値が高値を示す傾向があるなどの点から, より活動的な組織反応と考えられた.一方, HNLGのいずれの型も肝実質壊死に続発した反応性病変であり, さらに複雑な組織像を呈するENLGは肝実質壊死に対する直接的反応のみではなく, 免疫反応も含めたより複雑な生体反応の一つと考えられた.
  • 鈴木 恵史, 新井 一成, 新井 浩士, 上地 一平, 中西 誠, 久代 裕史, 福島 元彦, 村上 雅彦, 小池 正
    1993 年 53 巻 3 号 p. 305-311
    発行日: 1993/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    教室では切除不能消化器癌症例に対して1985年4月よりRF波温熱療法を主とした集学的治療を施行してきたが消化器癌の良好な加温は困難なことが多く, 新たな装置の開発が待たれていた.1990年2月よりFrance Odam社により開発された周波数13.56MHz, 加温の焦点調節が可能となり消化器癌の良好な加温が可能とされる三電極誘電加温装置であるJasmin3.1000による温熱療法の臨床試験を施行した.臨床試験に先立ち13.56MHz筋肉等価寒天ファントムによる加温実験を施行したが, 三電極の出力を調整することにより温度分布に多様性を持たせることが可能であった.臨床試験は転移性肝癌11例, 肝細胞癌6例, 腹部腫瘤5例を対象としたが, 肝細胞癌1例を除き他の21例に化学療法を併用し, 腹部腫瘤症例3例には, 放射線療法も併用した.転移性肝癌症例の効果判定では, PR2例, NC7例, PD2例, 奏効率18.2%であった.予後は2カ月から28カ月, 平均12.2カ月の生存期間を得た.肝細胞癌症例の効果判定では, NC5例, PD1例, 奏効率0%であった.予後は1例が37カ月生存中であり, 他の5例は, 3カ月から27カ月 (平均17.3カ月) の生存期間を得た.腹部腫瘤症例の効果判定は, 胃癌リンパ節転移症例ではPR, 他の4例はNCであり, 奏効率20.0%であった.予後は2カ月から17カ月, 平均7.2カ月の生存期間を得た.現在までに重篤な副作用も認められず比較的良好な加温が得られ, 切除不能消化器癌症例に対して有用な治療法となる可能性が示唆された.
  • 神保 洋之, 阿部 琢巳, 花川 一郎, 国井 紀彦, 西野 猛, 桑沢 二郎, 岩田 隆信, 松本 清
    1993 年 53 巻 3 号 p. 312-316
    発行日: 1993/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    過去3年間に当科で経験したいわゆるyoung adults (15歳~45歳) の, 高血圧性出血を含めた脳内出血20例のうち, 出血原因不明であった5例に対し検討を加えた.年齢は, 15歳から29歳 (平均21.4歳) でいずれも若年者であり, 出血部位は皮質下出血3例, 尾状核頭部1例, 被殻1例であった.治療は開頭血腫除去術を施行したもの2例で, その他は保存的に経過をみた.予後はいずれも良好であった.推察し得る出血原因については各症例ごとに異なっており確定診断を得ることは困難であったが, 様々な観点から出血原因を検討することが必要であると考えられた.
  • 鬼塚 淑子, 石山 泰二郎, 川上 恵一郎, 上野 秀之, 日野 研一郎, 友安 茂, 鶴岡 延熹, 石田 憲毅, 大塚 敏彦, 太田 秀一 ...
    1993 年 53 巻 3 号 p. 317-321
    発行日: 1993/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    症例は77歳, 女性.昭和63年にIgA-λ型多発性骨髄腫の診断を受け, 経過観察されていた.平成4年2月より貧血の増強, IgAの増加および胸部レ線上胸水・心嚢液貯留が認められ当科入院.胸水・心嚢液中に骨髄腫細胞が多数みられ, 化学療法を施行したが急激な経過をとり死亡した.剖検で, 胸膜・心外膜及び胃周囲リンパ節に異型性に富む骨髄腫細胞の浸潤がみられた.多発性骨髄腫において胸水・心嚢液貯留を伴う例は稀であるため, 文献的考察を加え報告した.
  • 石川 正美, 中田 雅弘, 渡井 有, 岡松 孝男
    1993 年 53 巻 3 号 p. 322-325
    発行日: 1993/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    両側腎無形成, 肺形成不全, 食道閉鎖 (Gross分類C型) に高位鎖肛と心合併奇形を伴った人魚体奇形 (以下本症と略す) を経験したので報告する.本症の発生機序に関してはいくつかの仮説が提唱されているが, 今回経験されたような多発合併奇形を説明できる説はまだない.また, 発生原因となる薬物などの投与歴や既往歴もなかった.本症は腎低形成や肺形成不全を伴うため, 生命の予後がきわめて悪い疾患であり, 今回の症例も生存させることはできなかった.しかし, 生存例の報告もあるため, 積極的な治療が必要である.
  • 毛利 祐三, 小堀 正雄, 橋本 誠, 島田 千里, 細山田 明義
    1993 年 53 巻 3 号 p. 326-329
    発行日: 1993/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    症例は22歳, 女性, 突然の意識障害を主訴に本院脳神経外科に緊急入院した.後下小脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血と診断され, 緊急手術が予定された, 術前検査では低酸血症が認められた.麻酔導入直後より急激に肺水腫の所見を呈し, 循環動態も不安定となった, 臨床経過より判断して神経原性肺水腫が考えられたため, 手術を中止してICUに搬送した.PEEPによる呼吸管理, ドパミンの持続投与をはじめ, ステロイド, 抗痙攣剤, バルビッール療法で脳圧などを管理した結果, 呼吸循環動態は安定し, 1週間後には再手術を施行できた.
  • 普光江 嘉広, 村上 雅彦, 清水 喜徳, 中尾 健太郎, 安藤 進, 亀山 秀人, 李 雨元, 李 雅弘, 副島 和彦
    1993 年 53 巻 3 号 p. 330-333
    発行日: 1993/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    症例は66歳, 男性.交通外傷にて当院を受診.腹部外傷精査のため腹部超音波検査を施行し右腎腫瘤を指摘され, 入院精査.腫瘤は腎癌と診断された.術前全身検索のため上部消化管内視鏡検査を施行したところ, 前庭部大轡, 体下部小轡に約5mm径の山田III型ポリープが, 体下部小轡に分葉状・発赤調の32×7mmの山田IV型ポリープが認められ, hot biopsy, polypectomyを施行した.病理組織学的には, III型ポリープは過形成性ポリープで, IV型ポリープは過形成性変化とその頂部に中分化型腺癌が認められ, 過形成性ポリープの癌化が示唆された.過形成性ポリープの癌化および腎癌との合併例は比較的稀と思われ報告した.
  • 村上 雅彦, 清水 喜徳, 普光江 嘉広, 李 雨元, 李 雅弘
    1993 年 53 巻 3 号 p. 334-336
    発行日: 1993/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    上部消化管内視鏡検査後に発症した急性胃粘膜病変の1例を経験したので報告する.症例は37歳男性.検診にて上部消化管内視鏡検査施行したが, 4日後突然に激しい上腹部痛出現し当院来院.再度内視鏡検査施行し, 前庭部を中心に出血性, 多発性の浅い小潰瘍が観察された.絶食, 補液, 抗潰瘍剤投与により1週間後には症状消失し, 1カ月後にはわずかな瘢痕を残すのみで, ほぼ完全に治癒した.近年, 上部消化管内視鏡検査の普及により, 本症は増加の傾向にあり, その発症に関してH.P.感染が有力視されており, 今後内視鏡機器の洗浄, 消毒に対し十分な注意が必要と思われた.
  • 西尾 和晃, 伊藤 誠司, 根岸 晶子, 神保 芳宏, 吉津 徹, 小沢 優樹, 井上 紳, 嶽山 陽一, 片桐 敬, 朴 正佑, 北沢 孝 ...
    1993 年 53 巻 3 号 p. 337-341
    発行日: 1993/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
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