リグニン或いはタンパク結合型多糖PSKは, ヒト末梢血由来単核球に作用してinterleukin-1α (IL-1α) , IL-1βの産生を強く促進した.これらBRMのサイトカイン誘導のメカニズムを調べる目的で, まずサイトカイン産生細胞をスクリーニングした.10種類のヒト培養細胞 (皮膚線維芽細胞, 胃癌細胞, 腎癌細胞, 脳腫瘍細胞, 骨髄性白血病細胞) は有意な量のサイトカインを培養液中に産生していなかった.ヒト骨髄性白血病細胞 (ML-1, THP-1, HL-60) は, 12-O-tetradecanoylphorbol 13-acetate (TPA) で処理すると, 形態学的にマクロファージ様細胞に成熟・分化し, プレートへの付着能の獲得, NBT-還元能の上昇などの分化マーカーの発現が観察された.しかしながら, この中で有意にIL-1β産生が認められたのは, ML-1細胞のみであった.HL-60細胞をやはりマクロファージ様細胞への分化誘導剤である活性型ビタミンD
3で処理すると, NBT-還元能は増加したが, IL-1βは誘導されなかった.そこで, TPA処理することによりIL-1βの産生が高まったML-1細胞に, PSKをsequentialに添加したところ, IL-1βの産生は更に3倍程度促進された.以上の結果より, (1) 分化誘導物質添加により獲得される形質は, 誘導物質や標的細胞により異なること, (2) サイトカインの誘導は, 誘導物質の直接作用あるいは分化誘導の結果2次的に産生される可能性があること, (3) 従来の細胞分化のマーカーの発現が, 必ずしも成熟した細胞機能を反映するわけではない, ことが示唆された.
抄録全体を表示