昭和医学会雑誌
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53 巻, 4 号
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  • 内海 晃, 藤永 悟, 高橋 任夫, 坂上 宏, 竹田 稔
    1993 年 53 巻 4 号 p. 343-348
    発行日: 1993/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    リグニン或いはタンパク結合型多糖PSKは, ヒト末梢血由来単核球に作用してinterleukin-1α (IL-1α) , IL-1βの産生を強く促進した.これらBRMのサイトカイン誘導のメカニズムを調べる目的で, まずサイトカイン産生細胞をスクリーニングした.10種類のヒト培養細胞 (皮膚線維芽細胞, 胃癌細胞, 腎癌細胞, 脳腫瘍細胞, 骨髄性白血病細胞) は有意な量のサイトカインを培養液中に産生していなかった.ヒト骨髄性白血病細胞 (ML-1, THP-1, HL-60) は, 12-O-tetradecanoylphorbol 13-acetate (TPA) で処理すると, 形態学的にマクロファージ様細胞に成熟・分化し, プレートへの付着能の獲得, NBT-還元能の上昇などの分化マーカーの発現が観察された.しかしながら, この中で有意にIL-1β産生が認められたのは, ML-1細胞のみであった.HL-60細胞をやはりマクロファージ様細胞への分化誘導剤である活性型ビタミンD3で処理すると, NBT-還元能は増加したが, IL-1βは誘導されなかった.そこで, TPA処理することによりIL-1βの産生が高まったML-1細胞に, PSKをsequentialに添加したところ, IL-1βの産生は更に3倍程度促進された.以上の結果より, (1) 分化誘導物質添加により獲得される形質は, 誘導物質や標的細胞により異なること, (2) サイトカインの誘導は, 誘導物質の直接作用あるいは分化誘導の結果2次的に産生される可能性があること, (3) 従来の細胞分化のマーカーの発現が, 必ずしも成熟した細胞機能を反映するわけではない, ことが示唆された.
  • 角田 明良, 渋沢 三喜, 小松 信男, 中尾 健太郎, 吉沢 太人, 井関 雅一, 丸森 健司, 張 仁俊, 保田 尚邦, 河村 正敏, ...
    1993 年 53 巻 4 号 p. 349-353
    発行日: 1993/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    1980年から1989年までに教室で経験した単発直腸癌治癒切除症例112例のうち局所再発をきたした12例について, 臨床病理学的に検討した.局所再発率は10.6%であり, 再発までの期間は平均1年11カ月で, 3年以内に83.3%が再発した.局所再発は, 占居部位Rb, 腫瘍径4.1cm以上肉眼型3型, 壁深達度a2 (s) ~ai (si) , 下部直腸癌でewが4mm以下のものに高率に認められたまた, 転移陽性のリンパ節群が大きくなるほど局所再発も高率に認められた.手術術式で, Miles手術と低位前方切除術の間には, 局所再発率に有意の差は認められなかった.予後については, 局所再発群の5年生存率は37.5%と非再発群の77.6%に比べて有意に低率であった (P<0.01) .以上より, 直腸癌手術に際しては, 適切なリンパ節郭清と癌腫より十分な距離をおいた剥離, 切除が肝要と思われた.
  • 陳 戈林, 福地 邦彦, 姜 昌求, 高木 康, 五味 邦英, 牧野 真理子, 山口 智子, 和久田 梨香, 田中 庸子
    1993 年 53 巻 4 号 p. 354-361
    発行日: 1993/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    1990年7月~1992年9月におけるmethicillin resistantStaphylococcus aureus (MRSA) の分離状況を報告する.S.aureusはこの期間に臨床検体より分離された細菌の中で最も多く, その内, 約50%がMRSAであった.すなわち, 入院患者から検出されたS.aureusでは毎月60~80%がMRSAであり, 外来患者では毎刀15~30%であった.検体材料別では, 入院患者の尿由来S.aureusの84%, 入院患者の膿では75%と高率にMRSAであったのに対し, 外来患者の膿では18%, 外来患者の呼吸器では19%と低率であった.MRSAに有効なABKと, 他の抗菌剤とのin vitroでの併用効果をABKのMIC4μg/ml以上のMRSA56株について検討した.この結果, ABK+ABPCでは相乗効果82%, 相加効果11%, ABK+FOMでは相乗63%, 相加0% ABK+CVA・TIPCでは相乗52%, 相加25%であり, 拮抗作用は認められなかった.また, β-ラクタマーゼ産生株に対しても相乗・相加効果は認められ, 他の抗菌剤の併用により, ABKの投与量を削減することが期待できる.
  • 豊田 泉, 土居 浩, 国井 紀彦, 林 宗貴, 西野 猛, 阿部 正, 松本 清
    1993 年 53 巻 4 号 p. 362-367
    発行日: 1993/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    脳血管障害の発生原因には, 各種の要因が存在する.性行為もその一因である.今回我々は, 昭和55年4月より平成5年3月までの, 約13年間に山梨赤十字病院及び昭和大学病院を受診した患者の中で, 病歴上明らかに性行為前後の脳血管障害と考えられる14例を検討した.症例は, 36歳から65歳にわたり, 性別に関しては, 男性13例であり, 女性は1例であった.脳出血8例, くも膜下出血6例であり, 梗塞性病変はなかった.これは, 脳神経外科系における診療データによるものであるからであろう.注目すべき点として, 性行為の相手としては, 3例のみが夫婦間であり, 残り11例は, 愛人関係や, 性風俗従事者との行為である.また, 発生場所に関して, 自宅であることより愛人宅・ホテル及び性風俗施設である.さらに, この中で, 初診時の問診にて, 性行為前後の発症であるということの情報があるものは, わずかに3例だけである.そのほとんどが, 後日, 関係者からの情報より得られるのみである.すなわち, このような症例が実は, 意外と多いことが考えられる.我々は, これらの疾患の発症様式等の詳細な検討を要する時期に来ているのではないかと考えられる.
  • 李 京七
    1993 年 53 巻 4 号 p. 368-375
    発行日: 1993/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    自動生検装置と18ゲージのcutting-needle (18G針) を用いたCTガイド下経皮肺生検の有用性を, 20ゲージのcutting-needle (20G針) を用いた場合と比較して検討した.対象は自動生検装置とcutting-needleを用いてCTガイド下経皮肺生検を施行した83検査 (83症例, 83病変) で, そのうち66検査では20G針, 17検査では18G針が用いられた.生検成功率, 合併症発生率, 検査時間, 悪性腫瘍の正診率に関しては, 両グループ間に有意な差はなかった.採取された組織片の量ならびに組織学的質を5段階に分けて評価したが, その成績は20G針に比べ18G針を用いた場合で有意 (P<0.05) に良好であった.組織型の診断については, 20G針に比べ18G針を用いた場合で正診率がより高い傾向が認められた.特に組織診が難しい良性病変や一部の悪性腫瘍の組織診断において, 18G針は良好な結果を示した.以上のことから, 詳しい組織学的検索が必要な場合, 18G針の使用が有用と考えられた.
  • 池田 東美明, 世良田 和幸, 武田 昭平, 外丸 輝明
    1993 年 53 巻 4 号 p. 376-382
    発行日: 1993/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    乳房切断術例にイソフルレン深麻酔による低血圧麻酔を施行し, 循環動態とともに内分泌系の影響を検索するため血漿ノルエピネフリン, 血漿エピネフリン, 血漿レニン活性, 血漿アルドステロンを測定した.低血圧群として収縮期圧を80から90mmHgの範囲にイソフルレン濃度を調節するのに3から4%濃度のイソフルレンを必要とした.また非低血圧群として1から2%濃度のイソフルレンを吸入させ比較検討した.平均動脈圧は, 当然のことながら低血圧群が非低血圧群に比べて有意の低下を示した.心拍数は, 非低血圧群では有意の変化を示さなかったが, 低血圧群では低血圧前値に比べて有意の増加を示し, 両群間に有意差がみられた.血漿ノルエピネフリンは, 非低血圧群では有意の変化を示さなかったが, 低血圧群では低血圧前値より有意の上昇を示し, かつ非低血圧群と有意差がみられた.血漿エピネフリンは, 両群とも手術後30分値まで低下傾向を示したが, 以後漸増傾向を示し, 全体としては, 大きな変化を認められなかった.血漿レニン活性は, 両群とも低血圧前値に比べ術中有意の増加を示し, 低血圧群は非低血圧群より有意に高値を示した.血漿アルドステロン濃度は, 両群とも低血圧前値に比べ術中有意の増加を示し, レニン活性と同様に低血圧群は非低血圧群より有意に高値を示した.低血圧群では, 非低血圧群に比し, ノルエピネフリン, レニンーアンジオテンシンーアルドステロン系の賦活が生じたが過度の上昇ではなく, 術中, 術後に異常を認めず, イソフルレン低血圧麻酔は安全で有用な方法と考えられた.
  • 中村 節子, 宮下 政子, 広田 保蔵, 山田 耕一郎, 石川 昭
    1993 年 53 巻 4 号 p. 383-387
    発行日: 1993/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    1歳9カ月時の痙攣を契機に慢性腎不全と診断され, 経過中に好酸球性腹膜炎を合併した慢性腎不全の1例を報告する.症例は1歳9カ月の男児で生後1カ月より発育不良を指摘されていた.無熱性痙攣を主訴に当科を受診し, 慢性腎不全と診断された.初診時生化学検査においてBUN87.9mg/dl, Crnn2.0mg/dl, Ca4.3mg/dl, P9.5mg/dlを呈しアシドーシスも著明であった.入院治療により, 約1週間で低Ca血症, アシドーシスは軽快し, 初診時に認められた脳波異常, 心電図異常も消失した.以後, 痙攣も出現していない.その後, 3歳6カ月時に腎不全症状の急激な悪化のため, CAPDを開始した.この直後細菌性腹膜炎を発症し, 抗生物質投与に反応したが, 引き続いて排液中に好酸球が増加する好酸球性腹膜炎を併発した.診断後, 抗生物質投与を中止したところ排液中好酸球は減少した.以後, 現在に至るまで急激な変化もなく経過している.一般に乳児期発症の慢性腎不全は年長児や成人に比し, 多くの問題を抱えているが本症例においても発育障害, 精神運動発達遅滞を呈しており, 今後に課題を残している.
  • 布野 健一, 諸星 利男, 堀之内 達郎, 神田 実喜男, 花井 順一, 坂本 哲也, 永山 剛久
    1993 年 53 巻 4 号 p. 388-394
    発行日: 1993/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    サイトメガロウイルス (CMV) に感染し, 最終的に拡張型心筋症 (DCM) 様病態を呈した一剖検例を経験したので組織学的検索を加え報告した.症例は25歳, 男性.生来健康.かぜ症候群の先行後, 不整脈にてICU入院.臨床的にCMV感染による心筋炎が疑われ, 入院3日後のUSにてDCM様の状態への移行が認められ, 3カ月後心不全状態が進行し死亡.剖検にて心臓に肉眼的に著しい拡張性心肥大を認め, 組織学的には大小多数の肉芽腫様病巣が心内膜側心筋を主体に散見され, サイトメガロウイルス感染後, 遷延化した肉芽腫性心筋炎を併発した一剖検例と考えられた.なお, 本症例はウイルスの直接的証明は成し得なかったものの臨床経過などからCMV感染との関連も強く疑われ, 今後症例を重ね検索が必要と考えられた.
  • 若杉 聡, 長谷川 浩一, 片倉 重弘, 佐藤 温, 左近司 光明, 竹本 達哉, 杉本 裕之, 松川 正明, 栗原 稔
    1993 年 53 巻 4 号 p. 395-400
    発行日: 1993/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    症例は36歳男性.発熱, 右季肋部鈍痛を主訴に入院した.末稍血白血球25900/μl, CRP21.9mg/dlと上昇しており精査の結果, 肝膿瘍と診断した.便や膿瘍ドレナージ液から虫体は検出されなかったが, 同性愛嗜好があることより赤痢アメーバによる肝膿瘍を強く疑い, 治療を開始した.大腸内視鏡検査上, 盲腸に不整形の潰瘍性病変を認め, 病変部の辺縁より生検を施行したがあきらかな虫体が証明されなかった.血清赤痢アメーバ抗体が6400倍と上昇していたことが後に判明したため赤痢アメーバによる肝膿瘍と確診した.本症例は, 治療が奏効し臨床症状が消失しても, 発症17カ月目まで腹部CT上膿瘍腔が残存しており, このような症例には注意が必要と思われた.
  • 田島 博之, 辻 正富, 荏原 徹, 鹿間 祐介, 足立 満
    1993 年 53 巻 4 号 p. 401-405
    発行日: 1993/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    Werner症候群は早期老化を特徴とする遺伝性疾患である.症例は54歳男性, Werner症候群特有の臨床症状の他に糖尿病と高脂血症の合併が認められた.7590GTT, アルギニン負荷試験では低インスリン反応であったが, 24時間尿中C-ペプチドは正常範囲, 25g IVGTTインスリン感受性試験ではインスリン感受性の低下 (インスリン抵抗性) がみられた.インスリン抗体陰性, 赤血球膜インスリン受容体の性状は正常であった.糖尿病の原因としてインスリン分泌能の低下とともにインスリン感受性の低下, 特にインスリン受容体結合以降の障害が示唆された.高脂血症はIIb型を呈し, 原因として文献的にインスリン作用不足による末稍脂肪組織から脂肪酸の動員, LDL受容体活性の低下, LPL (リポプロティンリパーゼ) 活性の低下, 変性LDLの増加が考えられた.
  • ―Special Populationにおける問題点―
    上田 慶二, 有田 昌彦, 秋山 敏夫, 宮岡 等
    1993 年 53 巻 4 号 p. 408-410
    発行日: 1993/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
  • 奥山 和男, 安原 一
    1993 年 53 巻 4 号 p. 411-417
    発行日: 1993/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
  • 真野 英寿, 高橋 里佳, 新垣 成子, 依田 光正, 神宮 俊哉, 笠井 史人, 水間 正澄, 森 義明, 高橋 カヅエ, 大橋 喜志枝, ...
    1993 年 53 巻 4 号 p. 418-422
    発行日: 1993/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
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