昭和医学会雑誌
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53 巻, 5 号
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  • 伊藤 隆
    1993 年 53 巻 5 号 p. 423-430
    発行日: 1993/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    小児麻酔において麻酔前投薬の重要性は周知の事実である.この研究では, 前投薬としての麻薬に焦点をおいた.本邦では, その取扱の繁雑さや安全性の危惧から, 小児麻酔前投薬としては心臓麻酔の前投薬など特殊な場合を除いてあまり使用されない.そこで今回小児麻酔法として有名なLiverpool technique (いわゆるリバプール法) を例に, 麻薬の安全性, 有効性をパルスオキシメトリーの見地から, 患者に最も低酸素症の危険の多い麻酔導入時に限り検証した.症例を1~5歳, 6~10歳, 11~15歳に分けて, 予定された術式に決められた前投薬を投与し, 効果を判定, 引続き麻酔の導入時の経皮的酸素飽和度 (SpO2) を経時的に測定し分析した.前投薬の種類は, (1) 無前投薬, (2) 麻薬+アトロピン, (3) 鎮静薬+アトロピン, (4) 麻薬+鎮静薬+アトロピン, とした.麻酔前投薬の効果は, 最も強力な投薬を行った麻薬+鎮静薬群で傾眠43%, 平静44%, そして興奮を示したのはわずか13%にすぎなかった.傾眠群の麻酔導入前SpO2は95.87±1.16%と他前投薬群に比して有意に (p<0.01) 低かったが著明な呼吸抑制を示した症例は皆無であった.麻酔導入中のSpO2の変化は, 興奮群に顕著に現れ, その約70%が中等度 (SpO2<90%) 以上の低酸素症を呈した.逆に傾眠群では1例の低酸素症も認められなかった.また年齢別にみると5歳以下の症例ではその約35%に中等度以上の低酸素症がみられた.以上の結果から低年齢児とくに興奮を示す症例は低酸素症の危険が高く, 十分な前投薬および精神的援助が不可欠である.今回我々の投与した250mcg/kg (筋注) , 1mg/kg (経口) の塩酸モルヒネは十分な鎮静効果が有り, しかも安全である.Liverpool法は麻薬を主体とした前投薬を前提に, Thiopentonと筋弛緩薬による急速導入が基本となる.今回のデータは全て急速導入下に行われており, その結果は十分な鎮静が得られていれば, 空気呼吸下の急速導入も安全に施行できる.したがってパルスオキシメトリーの見地からみても, リバプール法は優秀な小児麻酔法である.
  • 長谷川 秀浩
    1993 年 53 巻 5 号 p. 431-440
    発行日: 1993/10/28
    公開日: 2010/11/19
    ジャーナル フリー
    ヒトの咽頭収縮筋について, 上, 中, 下各部毎に筋層の厚さ, 1mm2中の筋線維数, 筋線維の太さ, 筋線維の密度並びに病理所見等を比較検討すると共に, その年齢的変化を検討した.対象は解剖学実習屍40例 (男性23例, 女性17例: 平均年齢71歳) で, 下咽頭収縮筋は甲状部と輪状部に区分し, 3筋, 4部位についてセロイジン包埋, 20μ薄切, H・E染色標本によった.結果: 1) 筋層の厚さは咽頭収縮筋の中で下咽頭収縮筋が最も厚く, 中咽頭収縮筋が最も薄い傾向が見られたが, 甲状部と輪状部の間には差がなかった.一般に加齢的に減厚の傾向が認められたが, その傾向は中咽頭収縮筋で最も著明であった.2) 1mm2中の筋線維数は一般に上, 中, 下咽頭収縮筋の順に多く, 男女とも高齢者で少なくなる傾向が認められた.3) 筋線維の太さは, 逆に, 下, 中, 上咽頭収縮筋の順に大で年齢的には男性では60歳代, 70歳代が最も大, 90歳代が最も小, 女性では90歳代が最も大, 60歳代が最も小の傾向が見られた.4) 密度は各部とも60%前後で, 90歳代が男性では最も低く, 女性では最も高い傾向が見られた.5) 病理所見は下咽頭収縮筋輪状部で最も多く, 一般に高齢者で多くの病理所見が現れる傾向が見られた.6) 他の骨格筋に比べて咽頭収縮筋は膜性骨格筋としては薄く, 筋線維は1mm2中の数は少く, 太さは小, 密度は低くて, 結合組織に富むと考えられ, この傾向は加齢的に著明となる事が明らかであった.また内臓骨格筋として喉頭筋に比べて4部問の分化が少なく, 機能的には遙かに単純と考えられた.
  • 菊地 浩彰, 諸星 利男, 国村 利明, 神田 実喜男, 櫻井 修, 渡辺 糺, 熊田 馨, 仲吉 昭夫, 永山 剛久
    1993 年 53 巻 5 号 p. 441-449
    発行日: 1993/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    昭和大学第一病理学教室および関連病院病理科において最近10年間に外科的切除または生検された乳癌1031例のうち比較的稀な組織像を呈した特殊型乳癌53例について通常型乳癌と比較しながら臨床病理学的検討および病理形態学的検討を行った.更に局所進行癌63例のうち動注群16例について非動注群47例を対象とし, 病理形態学的に下里らに準じGrade分類し, 動注効果について臨床病理学的検討を行った.I.特殊型乳癌の内分けは, 粘液癌31例 (3.0%) , 扁平上皮癌4例 (0.4%) , アポクリン癌2例 (0.2%) , 分泌癌1例 (0.1%) , 骨・軟骨化生癌1例 (0.1%) , Paget病4例 (0.4%) , 非浸潤癌10例 (1.0%) で, 全国集計と大差なく本集計の客観性を示しているものと考えられた.発生年齢は粘液癌, 扁平上皮癌, Paget病で比較的高齢者に好発する傾向がみられ, 分泌癌は若年者に好発するが自験例はむしろ高齢であった.予後については, 粘液癌およびPaget病が通常型乳癌より良好で, 腋窩リンパ節転移が少ないことと一致していた.II.動注療法による最大縮小率は77%, 縮小率の平均は37.3±26.1%であった.組織学的効果は, Grade 0が2例, Grade Iが4例, Grade IIaが6例, Grade IIbが4例であった.腫瘍縮小率と組織学的効果が平行関係にあり, しかも組織学的効果は組織型の相違によりばらつきを認めた.すなわち組織学的立場から動注療法は局所進行乳癌に対する集学的治療の一つとして極めて有効であると考えられた.
  • ―主要Protein KinaseとProtein Phosphataseの内因性基質―
    坂巻 隆男, 鈴木 晟時, 富田 悟, 詫摩 哲郎, 三倉 亮平, 高慶 承平, 井上 健, 飯野 史郎
    1993 年 53 巻 5 号 p. 450-454
    発行日: 1993/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    インスリン分泌機構においては, cAMP- (cAMP-PK-A) , Ca2+-calmodulin- (CaM kinase) , Ca2+-phospholipid-dependent proteinkinase (PK-C) の三者およびprotein phosphataseが重要な役割を演じていることが知られてきている.本研究においては, これら主要protein kinaseおよびprotein phosphataseの膵ラ氏島蛋白質中の内因性基質について検討したので報告する.Lacyらの方法により単離した雄ラット膵ラ氏島のホモジネート蛋白質約40μgを, 20mM Tris-HCI buffer (pH7.0) 〔〔γ-32P〕ATP (20μCi) などを含む〕中で, 1μMcAMPその他の薬剤の同時添加または無添加の条件で, 30℃, 2分間インキュベートし, SDS-PAGEおよびautoradiography法によりリン酸化蛋白質を同定した.結果ならびに結論: (1) cAMP-PK-Aの内因性基質は分子量約15kDaなどの15個の蛋白質, CaMkinaseの内因性基質は16kDaなどの13個の蛋白質, PK-Cの内因性基質は16kDaなどの7個の蛋白質である.さらに, 21, 30および31kDaの3個の蛋白質がcAMP-PK-A, CaMkinaseおよびPK-Cの三者に共通の内因性基質, 17, 20, 32および60kDaの4個の蛋白質がcAMP-PK-AおよびCaMkinaseの二者に共通の内因性基質, また, 16, 22, 42および70kDaの4個の蛋白質がCaM kinaseおよびPK-Cの二者に共通の内因性基質である. (2) ラット膵ラ氏島ホモジネートには, Ca2+-dependent calmodulin-stimulated protein phosphatase (calcineurin) 活性が認められ, cAMP-PK-Aの内因性基質の大部分の蛋白質に加え, 38および47kDaの2つの蛋白質が, その良好な内因性基質である.
  • ―特に悪性軟部腫瘍の臨床病理像および免疫組織化学的所見について―
    堀之内 達郎, 佐藤 正邦, 諸星 利男, 国村 利明, 神田 実喜男, 藤巻 悦夫, 永山 剛久
    1993 年 53 巻 5 号 p. 455-464
    発行日: 1993/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    昭和大学第一病理学教室および関連病院において最近10年間に外科的切除された軟部腫瘍752例についてWHO分類に準じて組織分類し, また発生母地別に区別し臨床病理学的検索を加えた.さらに, 悪性腫瘍を中心に一部の症例については, 電顕的, 免疫組織化学的に検索を行い, 病理形態学的考察を加えた.発生母地別には脂肪組織由来が390例 (52%) (内脂肪腫380例) で, 次いで末梢神経由来が88例 (12%) (内神経鞘腫65例, 神経線維腫21例) で, 血管由来が66例 (9%) (内血管腫51例, グロームス腫瘍10例) で, 線維組織由来が56例 (7%) (内線維腫23例, 皮膚線維腫21例) で, 筋組織由来が40例 (5%) (内血管平滑筋腫22例, 平滑筋腫12例) であり, 軟部の非腫瘍性あるいは腫瘍としては疑わしい病変としてガングリオンが54例, 腱鞘巨細胞腫および色素絨毛性結節性滑膜炎が23例, 線維黄色腫が17例みられたが, その他の組織由来の腫瘍は, かなり稀であった.また, 発生母地性差はやや女性に多く, 神経組織由来のものでは男性に好発する傾向がみられた.また, 発生母地別発生年齢は神経組織由来のものは比較的高齢者に, 血管由来のものは比較的若年者に好発する傾向がみられた.悪性軟部腫瘍は計31例 (4%) 含まれており, その内訳は脂肪肉腫が6例, 悪性線維性組織球症が5例, 平滑筋肉腫および滑膜肉腫が4例, 線維肉腫, 横紋筋肉腫, 悪性神経鞘腫, 骨外性Ewing肉腫が2例, 明細胞肉腫, 血管肉腫, 胞巣状軟部肉腫, 脊索腫がそれぞれ1例であった.悪性例は光顕的に分化方向の不明な症例も少なくなく, これらについては電顕および免疫組織化学的染色が補助的診断として極めて有効であると理解された.
  • ―透析器膜素材の影響について―
    高橋 淳子
    1993 年 53 巻 5 号 p. 465-475
    発行日: 1993/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    血液透析に使用する透析膜には高い溶質透過性と適度な除水性能を持つ再生セルロースが使用されてきたが, 同膜の持つ強い補体活性化作用が, 種々の悪影響を生体に及ぼす可能性が指摘されている.補体活性化作用を減弱させるため, 同膜の補体活性基をアセチル化したcellulose diace-tate (CA) 膜や3級アミンで置換したhemophan (H) 膜などが開発された.一方, 補体活性化作用が軽度な合成高分子polymethylmethacrylate (PMMA) 膜が早くから実用化されている.しかし, PMMA膜においては, 同膜のもつ陰性荷電がリンなどの陰性荷電を持つ貯留物質の除去性能を阻害する可能性が懸念されている.そこでこれらの補体活性化作用の軽度な膜素材透析器使用時の溶質除去能と生体の反応 (生体適合性) を臨床的に比較検討した.10名の安定期血液透析患者に, in vitroの尿素クリアランスに差のないH, CA, PMMA膜透析器を同一条件下にクロスオーバーで使用し, 溶質除去能, 各種生体適合性の指標を検討した.溶質除去能では, BUN, クレアチニン, 尿酸のクリアランス・除去率に3種の透析器間で差はなかったのに対し, リンのクリアランス・除去率はPMMAで有意の低値を示した.またリンのクリアランスはHで最も高値であった.透析中の血球数の変化では, 白血球減少はHでCAに比し有意に高度であったが, 血小板数の変化に透析膜間の差はみられなかった.Thromboxane B2, 6-ketoprostaglandin F1αの変化に3膜間で差はなかったが, β-thromboglobulinの静脈側/動脈側濃度比は開始後30分でCA, PMMAに比しHで有意の高値をとった.透析中の顆粒球エラスターゼ上昇はPMMAで有意に高度であった.Hでは透析開始後30分のセライト活性化凝固時間の延長が軽度で, fibrinopeptide Aの上昇が高度であった.以上の成績から, リンの除去性能は膜表面荷電の影響を受け, PMMAでは強い陰性膜荷電によりリン除去能が低く, Hでは相対的陽性荷電から除去能は増加した.また生体適合性ではPMMAは強い顆粒球活性化作用を持つ.Hは陽性荷電から血小板活性化作用が強く, 陽性荷電が直接的にヘパリンを吸着し, 凝固系活性化をもたらすと考えられた.
  • ―連続切片標本による立体構築―
    安藤 治憲, 塩川 章, 風間 和男, 井上 紳, 橘 秀昭, 片桐 敬
    1993 年 53 巻 5 号 p. 476-485
    発行日: 1993/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    心臓刺激伝導系の病変は従来Lev法により, 連続切片で検索していたが, 扇状に分布する左脚では困難であった.本研究では立体構築を行い, 両脚ブロックにおける心臓刺激伝導系病変を検索した。対象は心電図などの検査で慢性両脚ブロックを確認された剖検例27例 (男20例, 女7例) , 年齢64~88歳である.心疾患関連の臨床診断は心筋梗塞6例, 高血圧性心疾患9例, 拡張型心筋症4例, 抗腫瘍剤による心筋障害, 肺性心, 大動脈瘤, 糖尿病各1例, 不明4例である.剖検心をホルマリン固定後Lev法で切り出し, パラフィン包埋後7μm厚で連続切片を作製し, Elastica van Gieson染色を行った.420μmごとに画像をコンピュータに入力し, 房室伝導系の立体像を作成した.左脚以外は残存心筋量を4段進に色分けしたが, 左脚は, 伝導系細胞が薄く細長く分布しているため, 残存部のみの立体像とした.左脚の伝導系障害は起枝部に限局したものから散在性脱落や末稍側の広範な脱失をきたすものまで広いバリエーションがあり, His束内に病変を認める症例もみられたが, 21例で立体像と心電図所見が一致した.立体構築像を限局型, 巣状型, 広範型の3群に分類すると, 限局型9例, 巣状型12例, 広範型6例であった.限局型の病理診断はLev病3例, 心筋梗塞1例, 慢性心筋炎及び心内膜炎5例, 巣状型では, Lev病2例, 心筋梗塞4例, 慢性心筋炎4例, Len陲gre病2例, 広範型では, 慢性心筋炎及び心膜心筋炎3例, Len陲gre病3例であった.3群の立体像を, 障害部位に関連して亜型に分類すると, 巣状型で房室伝導系全体におよぶ巣状散在性の病変は, 慢性心膜心筋炎に特徴的であった.広範型でも3例は慢性心膜心筋炎であり, 伝導系の炎症病変の拡大が示唆された.限局型の慢性心膜心筋炎症例は, 炎症の初期または伝導系への波及が軽微であったと思われる.慢性心筋炎では, 刺激伝導系の病変は不均一で障害部位もさまざまであり, 疾患の進行とともに限局した病変が巣状に拡大していくと考えられる.虚血性心疾患では, 伝導系細胞が虚血に対して抵抗性を示すため, 巣状型になりやすいが, 局所的に大きな病巣が加わっている.Lev病では起枝部に限局した障害, Lenさgre病では散在性の広範な脱失が確認された.
  • 耿 啓達, 諸星 利男, 神田 実喜男
    1993 年 53 巻 5 号 p. 486-493
    発行日: 1993/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ビタミンE (以下VE) 欠乏状態下におけるアルコール (以下ア) 膵炎の発症機序を考察する目的で, 実験を加えたマウスの膵病変について主に病理形態学的立場より経時的に観察した.6週齢ddy系雄性マウス150匹を実験群A群 (80匹) 及びB群 (30匹) , 対照群C群 (30匹) 及びD群 (10匹) の4群に分け, VE欠乏食にて飼育した実験群A及びB群の血清VE値は平均0.18±0.04mg/dlであり, 正常食にて飼育した対照群C及びD群の血清VE値は平均0.29±0.06mg/dlであった.A群及びC群に対して, 4-5回/週の割合で, 38%エタノール水溶液0.2-0.4m1/匹/回をマウス用胃チューブを利用して強制的に投与し, B群及びD群に対しては同割合で同量の生理的食塩水を同方法で投与した.ア投与後の実験A群の血清アミラーゼ平均値は136I0±4000IU/1であり, B群 (6100±500IU/1) , C群 (7000±1000IU/1) 及びD群 (5500±1000IU/1) に比較して有意差を持って上昇していた.組織学的にはA, B及びC群共に膵腺房細胞の空胞変性或いは腺房細胞の萎縮が目立ち, 小膵管内のタンパク栓の形成も頻繁に観察された.A群に限ると, ア短期投与群As群 (5週, 20回投与以下) では急性膵炎の合併率は50%と高く, 肝細胞壊死の合併も50%と高率であった.一方, ア長期投与群A1群 (6週, 20回投与以上) では急性膵炎の発生が認められないものの, 14%に巣状の膵線維化病巣を, また28%の肝細胞壊死と28%の肝脂肪化を認めた.B群ではわずか7%に膵腺房細胞の巣状壊死が, また同じく7%に肝細胞巣状壊死が認められた.しかし, 対照群C, D群のいずれも膵, 肝に著変はなかった.以上の結果から, 本実験系ではVE欠乏状態下に比較的少量のア投与でも, 急性膵炎が発生することが示唆された.また, 原発的膵線維化が独立に認められないことより, ア膵炎に見られる線維化は, 繰返し発症する急性膵炎に基づく二次的膵線維化である可能性が示唆された.
  • 中束 和彦
    1993 年 53 巻 5 号 p. 494-500
    発行日: 1993/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    鼻腔形態の異常が鼻副鼻腔炎の原因として重要視され, 鼻腔形態や鼻腔容積の違いが個人個人の鼻腔通気度・鼻閉感に重要な役割を果たしていると考えられている.しかし, 鼻腔形態について詳細に調査した報告は少なく, 鼻腔容積についての報告も多少認められたが, 鼻腔容積の左右差についての報告はみあたらなかった.今回, 8歳から23歳 (平均年齢16.3±4.1歳) の健康ボランティア69例を研究対象とし, MRIを用いて鼻腔領域の撮影を行い左右の鼻腔容積を求め, 鼻腔容積の左右差および年齢, 身長, 体重に対する相関関係について調査, 検討を加えた.使用機種はシーメンス社製マグネトームM10で, スライス幅は3mmまたは4mmのギャプレスとし, 断層面は横断面を撮影した.片側鼻腔としては, 前方は梨状口部まで, 後方は後鼻孔部まで, 外側方は上・中・下鼻孔介および鼻道を含み, 前頭洞・上顎洞などの開口部まで, 内側方は鼻中隔まで, 上方は脳頭蓋の一部まで, 下方は口蓋の上面までとした.横断面の基準線としては, 正中矢状断面像で鼻根部最陥凹点と橋延髄移行部を結んだ線を選んだ.鼻腔容積の算出法は, 横断面の断面積をMRI装置付属のディスプレイコンソールを用いてトレースし, スライス幅を掛けて柱状の体積を求め, これらを積み重: ねて鼻腔容積とした.左右の鼻腔容積の間には正の相関関係が認められた.鼻腔容積の左右差は認められなかった.年齢, 身長, 体重で比較的強い相関関係が認められた.体重との相関に比べ年齢, 身長との相関がより強いという結果を得た.年齢群別でみると, 身長, 体重の伸びは16歳ころでほぼプラトーとなっているのに対し, 左右の鼻腔容積の増加は16歳以降でも続いていた.各年齢群別に鼻腔容積の左右差について検討したが有意な差は認められなかった.身長群別にみると, 140cm台からの左右の鼻腔容積の増加が著しく, 左右差については有意な差は認められなかった.
  • ―加齢に伴う変化―
    矢部 伸幸, 土屋 明, 飯島 武, 佐藤 永雄, 長谷部 康子, 中島 潔, 小出 良平
    1993 年 53 巻 5 号 p. 501-506
    発行日: 1993/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    加齢に伴うラット眼房水中のタンパク質の変化を, 4, 8, 16, 70週齢の正常Wistar-系, および遺伝性白内障 (Ihara cataract f-系: ICR) ラットを用いて, 二次元電気泳動法で解析した.電気泳動は一次元を毛細管等電点電気泳動法, 二次元をミニスラブ濃度勾配電気泳動法を用い, タンパク質の検出は銀染色法で行った.泳動後の検索では, albuminとIgGはimmunoblotting法, transferrinは精製したラットtransferrinの同時電気泳動によって同定した.Wistar-系ラットの房水ではp14, 分子量60, 000と100, 000のタンパク質が4週齢ではほとんど認められないが, 加齢に伴って増加し, 老化との関連が示唆された.ICRラットではこのタンパク質の増加が早期から認められ, 老化の促進とレンズの混濁との関係が示唆された.加齢に伴うこれらタンパク質の増加は, 毛様体機能の低下によるばかりでなく, 前房周囲組織の代謝に対する加齢の影響も考えられる.ICRラット房水中のalbuminはWistar-系ラット房水より多く, 加齢とともに増加した.しかしWis-tar-系ラット房水では70週齢で減少傾向が認められた.Transferrinは加齢に伴う変動は少なかったが, ICRラットではWistar-系ラットに比べて多量に存在し, 加齢経過に伴う変動が見られた.房水中IgGの変化は, Wistar-系ラットでは16週齢より認められ, 加齢とともに増加した.ICRラットではより早く出現し, 同様に加齢に従って増加した.これらの分子量の大きいタンパク質の出現が, 加齢に伴う血液房水柵の機構の変化や, 白内障発症との関わりを示唆していると考えられる.
  • 宮澤 洋, 関水 正之, 阪本 桂造, 宮岡 英世, 藤巻 悦夫
    1993 年 53 巻 5 号 p. 507-511
    発行日: 1993/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    症例は68歳男性.作業時に右上腕部に激痛が出現したが, 5分後に婆痛軽減したため放置する.1カ月後, 右上腕部腫瘤に気付き, 当院初診する.来院時, 右肘関節自動屈曲にて上腕二頭筋の異常膨隆があり, さらに近位に直径3×4cmの弾性, 軟, の腫瘤を触知する, MRIでは, cystに貯留した関節液と短縮した長頭腱の断端が描出された.診断には従来, 臨床所見, Xeroradiogram, 肩関節造影所見により行われてきたが, MRIを利用した報告は, 我々の渉猟しえた範囲ではない.今回我々は, 上腕にcystを形成し, MRIで特異な所見を呈した上腕二頭筋長頭腱断裂の手術例を経験したので, 若干の文献的考察を加えて報告する.
  • ―初発症状としての頭痛を中心として―
    阿部 正, 阿部 琢巳, 本間 秀樹, 国井 紀彦, 佐々木 健, 岩田 隆信, 松本 清
    1993 年 53 巻 5 号 p. 512-516
    発行日: 1993/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    頭痛を伴うWallenberg症候群で発症した椎骨動脈解離性動脈瘤の1例を経験した.症例は46歳女性, 初回頭痛後4カ月後にWallenberg症候群にて発症.MRI T2強調画像で延髄外側に梗塞巣が描出され, T1強調画像で右椎骨動脈の内部に血栓が描出された.脳血管造影で右椎骨動脈のocclusionとaneurysmal dilatationを認め, 解離性動脈瘤の診断で右椎骨動脈のproximal clippingを施行.後療法としてanticoagulative therapyを行い良好な結果を得た.われわれが文献上渉猟し得た20例において検討を加えたところ, Wallenberg症候群で発症した椎骨動脈解離性動脈瘤の初発症状は頭痛が90%であった.頭痛を初発症状とするWallenberg症候群に対しては常に解離性動脈瘤を念頭におき検査及び治療を行うことが重要であると考えられた.
  • 梅沢 卓也, 堀之内 達郎, 佐藤 正邦, 細田 周二, 浅沼 勝美, 武内 豊
    1993 年 53 巻 5 号 p. 517-521
    発行日: 1993/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    出生後短時間で死亡したOsteogenesis imperfectaの双胎例を経験した.病理解剖所見では2例とも同様な特徴的な外観を呈し, 頭蓋骨は膜状骨で被われ, 下肢骨は短く皮質が菲薄で, 骨折がみられた.Scillenceの分類ではType IIと考えられた.双胎例における報告は当報告を含めて11例である.本例の骨組織の走査電子顕微鏡による検索では膠原線維が線維束を形成しておらず, 正常例とは線維の集合形態に相違が認められた.
  • 山田 浩隆, 秋田 泰, 吉川 望海, 仲又 進, 三田村 圭二, 竹内 義明, 高橋 正一郎, 橋本 昌久, 本田 浩一, 朴 正佑, 柴 ...
    1993 年 53 巻 5 号 p. 522-527
    発行日: 1993/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
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