乳腺疾患の画像診断はエコー・マンモグラフィー (MMG) で行われ, 高い診断能が得られているが, 最近ではMRIも使用されるようになってきている.我々は, MRIを乳腺疾患の診断に使用するため, MRIによる腫瘤の描出率, および乳癌症例については, 腋窩リンパ節転移の描出を含め, 多発結節, 筋浸潤などの病変の広がりをどの程度MRIで描出できるかを検討した.対象は, MRIを施行し, 組織診断のなされた乳腺疾患93病変 (乳癌85病変, 他疾患8例) , 年齢21から86歳, 平均53.7歳である.GE社製SIGNA1.5Tを使用し, 単純MRIで, T1強調, T2強調, IR-prep法, DE-prep法, GRASS法, FMPIR法, およびGd-DTPA 0.1mmol/kgをもちいて, 造影ダイナミック撮影を施行し, 腫瘤の描出率を検討した.乳癌症例では手術標本の病理所見と画像所見を比較検討した.乳癌症例については, 罹患側腋窩についてもT1強調で撮影し, 腫大リンパ節の描出と, 転移の有無について検討した.また, 乳癌12例で3D撮影による立体表示も試みた.単純MRIによる乳癌の描出率は70から80%で, それぞれのシーケンスによる差はほとんど見られず, エコー, MMGより描出率は劣る.しかし, T2強調では充実腺管癌は低信号を呈することが多く, 組織型の推定に有用性が示唆された.一方, 造影MRIではエコー95.1% (78/82) に匹敵する96.3% (78/81) の描出率が得られ, 描出できなかったのは3例のみである.また, 造影MRIは, 多発結節や娘結節の描出にも優れ, エコー66.7%, MMG 40.0%より優れた描出率86.7% (13/15) が得られた.大胸筋浸潤3例でも全例で, 浸潤筋肉部位が造影され, 容易に診断できた.Gd-DTPAを7~8分かけて静注しながら3D撮影することにより立体画像が得られ, 腫瘍の位置や形, 娘結節や筋浸潤の有無がより明瞭に把握できるようになった.腋窩リンパ節は, 脂肪の高信号内に低信号腫瘤として描出されるため, 描出率が高く, 敏感度は91.1%と高いが, 描出されたリンパ節すべてに転移があるわけではなく, 特異度は56.5%と低い.大きさ1cm以上で複数のリンパ節が描出された場合は転移陽性が多い傾向にあった.造影MRI, 特に3D撮影による立体画像は, 腫瘍のみならず, 多発結節や筋浸潤の描出に優れ, 乳癌のステージングや, 術式決定に有用と思われた.
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