日本人成人99人 (男性63人, 女性36人, 平均年齢24.2歳) を対象として, 瞼裂形態について計測, 解析を行なった。顔面規格写真装置を用い, 正面視にて撮影した35mmスライドをコンピューターに画像データとして入力, 拡大し, 内外眼角点, 上眼瞼最高点, 角膜内外側点, 顔面外側点の左右各々6個の基準点を定め, 17の距離, 角度を計測した.この計測値の内, 角膜横径, 瞼裂高径, 外眼角点間距離, 内眼角点間距離, 瞼裂横径, 顔面幅径, 瞼裂傾斜度と計測値から計算された8個の比率に対し, 基本統計処理値と左右間, 男女間の統計的有意差の検定を行なった.その結果, 瞼裂傾斜度において男女に, 瞼裂横径では男性に左右間の有意差を認めたがその他の計測値には左右間の有意差はなかった.角膜横径, 瞼裂横径, 角膜露出率, 瞼裂開大指数, 瞼裂高径において左右に, 瞼裂傾斜度では右に, 内外眼角距離, 顔面幅径に男女間での有意差が認められた.これらの差は男女の骨格, 体格の差とともに出生前後における内的・外的要因が示唆される.また, 内田の明眸値に従い検討した結果, 角膜横径では男性49.2%, 女性58.3%, 瞼裂高径では男性15.9%、女性25%, 瞼裂横径では男性33.3%, 女性2.7%, 角膜/顔面幅径は男性30.1%, 女性44.4%, 角膜露出率は男性7.9%, 女性5.5%, 瞼裂開大指数は男性19%, 女性19.4%, 瞼裂横径/顔面幅径は男性28.6%, 女性27.7%, 瞼裂高径は男性9.5%, 女性30.5%, 離眼率は男性61.9%, 女性44.4%, 平均男性28.37%, 女性28.65%が両眼において明眸値に当てはまる.これらより眼においては男性は丸く, 横に大きく, 女性は瞳がはっきりと見え, 縦に大きい.このことから近年の日本人成人は数値上は細くつりあがった眼ではなく, 比較的はっきりとした傾斜の小さい眼になってきたと考えられる.
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