昭和医学会雑誌
Online ISSN : 2185-0976
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55 巻, 3 号
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  • 小口 勝司
    1995 年 55 巻 3 号 p. 185-194
    発行日: 1995/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
  • 白土 貴史
    1995 年 55 巻 3 号 p. 195-203
    発行日: 1995/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    今回, 新しい骨切りの道具として超音波メスに注目し, 家兎および猫の椎弓切除, 家兎の大腿骨の骨切りなどの実験的な研究を行い, 臨床への有用性, 安全性について検討した.最適な条件設定は, 振幅: 65~75%, イリゲーション量: 10ml/min前後であった.椎弓切除の際に, 誘発電位の測定を行い, 超音波メスにおける椎弓切除が脊髄に及ぼす影響について検討した.誘発電位は, 術後で家兎にて平均67.7%, 猫にて77.6%, 術中最低値は家兎にて平均60.2%, 猫にて57.9%であった.椎弓切除後の脊髄の病理所見には機械的圧迫と思われる所見は無く, 脊髄内の出血, 浮腫, 脱髄所見も認められなかった.超音波メスの設定条件を変え骨切りを行った脱灰標本ではヘマトキシリンーエオシン染色にて骨細胞には明らかな変化および条件設定による違いは認められなかった.骨実質には比較的振幅設定の低い骨切り面においてエオシン染色性の強い部分が認められた.非脱灰研磨標本のコンタクトマイクロラジオグラフィーではイリゲーション量設定が0ml/minの骨切り面において, 一部熱によると思われる硬化像が認められた.骨切り面の走査電子顕微鏡所見では, ノミでは均一で細かい凸凹があるのに対し, 超音波メスでは比較的荒く不整な凸凹が認められた.骨の温度変化ではイリゲーション0ml/minでは振幅50%で120.8℃, 75%で123.7℃, 100%で120.1℃であり, それぞれに有意差は認められなかった.振幅75%ではイリゲーション0ml/minで123.7℃, 10ml/minで59.5℃, 20ml/minで52.3℃であった.10ml/minと20ml/minの間に有意差は認められなかったが, イリゲーション熱の発生を有効におさえていた.適切な設定および方法で超音波メスを用いることにより正確でかつ安全な骨切りが可能で, 病理組織学的にも骨に負担のかからないことが確認された.また椎弓切除時における誘発電位においても急激な低下は認められず, また摩擦による骨切り面の熱の発生は, イリゲーションを適切な設定値で行うことにより抑制されており, 病理組織学的にも熱によると思われる変化は骨および脊髄の両者において認められなかった.以上のことよりこの硬組織用超音波メスは整形外科領域における骨切り特に脊椎・脊髄外科への臨床応用が期待されるものである.
  • 近岡 弘, 瀧田 誠司, 奥山 和男
    1995 年 55 巻 3 号 p. 204-213
    発行日: 1995/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    輸液製剤に含まれるアルミニウム (Al) の新生児に対する影響を調べるために, 各種輸液製剤のAl濃度と, 新生児の血清Al濃度を原子吸光光度計にて測定した.輸液製剤としては新生児医療でよく使用される主な製剤51種類についてAl濃度を測定した.この中でブドウ糖液, 生理食塩水, 初期輸液用溶液および維持輸液用溶液などの通常用いられることの多い電解質輸液製剤のAl濃度は低値であったが, グルコン酸カルシウム液では約5, 500μg/l, リン酸二カリウム液は約2, 100μg/lであり, これら一部の注射製剤においてAl含有量の多いものがみられた.また, 実際の輸液によるAl負荷量は, グルコン酸カルシウムやリン酸二カリウムを含む高カロリー輸液製剤では約100μg/kg/日となり, 経静脈的摂取量としては高値であった.新生児の血清Al濃度測定の対象は在胎21~42週, 出生体重426~3, 9669, 日齢0~90の55例であった.腎不全例を除いた正常群と考えられる19例の日齢0の血清Al濃度は7.0±3.3μg/lと, ほぼ正常範囲内にあり, また同じく正常群と考えられるグルコン酸カルシウム製剤, あるいは高カロリー輸液を受けなかった者の日齢22前後の8例の血清Al濃度は4.9±1.6μg/lと正常であった.一方, 出生後早期よりグルコン酸カルシウム製剤を含む輸液を受けた児4例の, 日齢4前後の血清Alは27.3±5.7μg/lと高値を示し, 高カロリー輸液施行中の8例の血清Alは23.8±11.8μg/lと高値であり, 輸液製剤中に含まれるAlが高Al血症の原因と考えられた.新生児においてもAl負荷が痙攣, 脳症, Alの骨への沈着の原因となることが知られており, その予防のためには輸液製剤の選択, 投与法の検討, 輸液製剤製造過程の検討が必要と考えられた.
  • 呉 有晃, 板橋 家頭夫, 竹内 敏雄, 北澤 重孝, 奥山 和男
    1995 年 55 巻 3 号 p. 214-220
    発行日: 1995/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    乳児の皮下脂肪厚と上腕囲を測定し, 身体発育評価を行う上で必要な基準値を作成した.生後1カ月, 3カ月, 6カ月, 9カ月, 12カ月の乳児378名 (男子189名, 女子189名) の体重, 身長, 胸囲, 頭囲, 皮下脂肪厚, 上腕囲の各計測を行った.皮下脂肪厚は上腕背部および肩甲骨下部をハーペンデン式皮厚計を用いて測定した.体重, 皮下脂肪厚, 上腕囲は1カ月から3カ月の間最も著しい増加を認めた.上腕背部の皮下脂肪厚は6カ月に男子14.0mm, 女子13.2mmと最大値となり, 以後徐々に減少した.肩甲骨下部は3カ月に男子10.5mm, 女子10.6mmと最大値をとり, 以後漸次減少した.上腕囲は3カ月までに急速に増加し, 以後は緩やかな増加を示した.これらのことより, 1カ月より3カ月までの著しい体重増加は主に脂肪の蓄積により, それ以後は筋肉量の増加によるものと考えられた.また乳児期では皮下脂肪厚に男女間で有意な差は認められなかった.今回作成した乳児の皮下脂肪厚および上腕囲の基準値により, 今後未熟児も含めた乳児の発育の質的評価が可能になると思われる.
  • 相原 正宣
    1995 年 55 巻 3 号 p. 221-229
    発行日: 1995/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    骨形成因子 (BMP) の本体は長い問不明だったが, 近年, BMPの本体が明らかにされつつある.またヒトのリコンビナントBMP-2 (rhBMP-2) も作製され, その臨床応用が注目されている.rhBMP-2のラット, マウス, イヌ, ヒツジ, サルなどの骨形成におよぼす作用は報告されているが, ヒトの骨芽細胞の分化におよぼす作用に関してはいまだ明らかにされていない.そこで本研究ではヒト骨芽細胞様細胞を用いてrhBMP-2の効果を検討した.4人の患者の整形外科手術に際して得られた骨片から, 酵素消化法で骨芽細胞様細胞 (HBM細胞) を分離した.培養3日目に種々の濃度のrhBMP-2を添加し, 3日間培養した後, アルカリフォスファターゼ (ALP) 活性および上皮小体ホルモン (PTH) 依存性のcAMP産生能を検索した.また, rhBMP-2の1, 25-dihydroxyvitamin D3〔1, 25 (OH) 2D3〕依存性のオステオカルシン産生能をIRMA法にて検討した.その結果, (1) 通常のmediumでの培養下では, すべてのHBM細胞はALP活性を有し, PTHの添加によりcAMP産生量が増加した.1, 25 (OH) 2D3非添加時にはオステオカルシンは検出されなかったが, 1, 25 (OH) 2D3を添加するとすべてのHBM細胞でオステオカルシン産生が誘導された. (2) rhBMP-2を250ng/ml以上の濃度で添加するとすべてのHBM細胞でALP活性が有意に上昇した. (3) rhBMP-2は3例のHBM細胞でPTH反応性を促進したが, 1例のHBM細胞では明らかな促進効果は認められなかった. (4) rhBMP-2はすべてのHBM細胞の1, 25 (OH) 2D3依存性のオステオカルシン産生を抑制した.以上の結果よりrhBMP-2はヒト骨芽細胞様細胞においても重要な分化調節因子であることが明らかとなった.しかし, rhBMP-2に対する応答性の程度は用いた細胞によって異なっていたため, ヒト骨芽細胞のrhBMP-2に対する応答性には多様性があることが示唆され, さらに多くの骨芽細胞様細胞での検討も必要と考えられた.
  • ―CT画像による測定―
    山口 明伸
    1995 年 55 巻 3 号 p. 230-235
    発行日: 1995/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    今回, 彎曲爪の成因について, 彎曲爪, 陥入爪患者と, 正常者の爪甲と, 末節骨の関係について, CT画像を用いて測定し比較検討し若干の知見を得たので報告する.調査対象は, 臨床的に診断された第1足趾の彎曲爪12趾, 陥入爪8趾, 正常爪8趾について行った.また彎曲爪は臨床的に重症型と軽症型に分け調査を行った.それぞれの足趾に対して1mmスライスにて同一CT装置で, 撮影を行い, コンピュータに取り込み, 末節骨横径と, 爪甲幅をコンピュータ上で計測した.爪甲幅は, 爪甲と爪下床の接合部をトレースし, 約40個の座標点をとることにより細分化し, 隣接する座標間距離を座標データをもとに算出し, 加算することにより近似的に彎曲した曲線長を算出した.その結果, 正常爪と陥入爪の間には差は認められず, 彎曲変形の進行するにつれて, まず末節骨横径の縮小を, ついで爪甲幅の縮小を認めた.このことにより彎曲爪の発生について, 末節骨の狭小化が大きな原因の1つとなる可能性が示唆された.
  • 高浜 宏光
    1995 年 55 巻 3 号 p. 236-247
    発行日: 1995/06/28
    公開日: 2010/11/19
    ジャーナル フリー
    日本人成人99人 (男性63人, 女性36人, 平均年齢24.2歳) を対象として, 瞼裂形態について計測, 解析を行なった。顔面規格写真装置を用い, 正面視にて撮影した35mmスライドをコンピューターに画像データとして入力, 拡大し, 内外眼角点, 上眼瞼最高点, 角膜内外側点, 顔面外側点の左右各々6個の基準点を定め, 17の距離, 角度を計測した.この計測値の内, 角膜横径, 瞼裂高径, 外眼角点間距離, 内眼角点間距離, 瞼裂横径, 顔面幅径, 瞼裂傾斜度と計測値から計算された8個の比率に対し, 基本統計処理値と左右間, 男女間の統計的有意差の検定を行なった.その結果, 瞼裂傾斜度において男女に, 瞼裂横径では男性に左右間の有意差を認めたがその他の計測値には左右間の有意差はなかった.角膜横径, 瞼裂横径, 角膜露出率, 瞼裂開大指数, 瞼裂高径において左右に, 瞼裂傾斜度では右に, 内外眼角距離, 顔面幅径に男女間での有意差が認められた.これらの差は男女の骨格, 体格の差とともに出生前後における内的・外的要因が示唆される.また, 内田の明眸値に従い検討した結果, 角膜横径では男性49.2%, 女性58.3%, 瞼裂高径では男性15.9%、女性25%, 瞼裂横径では男性33.3%, 女性2.7%, 角膜/顔面幅径は男性30.1%, 女性44.4%, 角膜露出率は男性7.9%, 女性5.5%, 瞼裂開大指数は男性19%, 女性19.4%, 瞼裂横径/顔面幅径は男性28.6%, 女性27.7%, 瞼裂高径は男性9.5%, 女性30.5%, 離眼率は男性61.9%, 女性44.4%, 平均男性28.37%, 女性28.65%が両眼において明眸値に当てはまる.これらより眼においては男性は丸く, 横に大きく, 女性は瞳がはっきりと見え, 縦に大きい.このことから近年の日本人成人は数値上は細くつりあがった眼ではなく, 比較的はっきりとした傾斜の小さい眼になってきたと考えられる.
  • 星野 公彦, 河合 清文, 長塚 正晃, 千葉 博, 斎藤 裕, 矢内原 巧
    1995 年 55 巻 3 号 p. 248-252
    発行日: 1995/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    Inhibin (INH) は性腺にて産生される蛋白ホルモンであり, 選択的に脳下垂体前葉のFSH分泌を抑制することが知られている.しかし思春期における血中動態及び役割については明らかではない.そこで今回我々は思春期女子を年次毎に連続追跡し血中INH値を測定すると共に, FSH, estradiol (E2) との関係について検討を行った.対象は6歳から6年間連続追跡し得た健康な女子6名である.血漿中のINH値, FSH値及びE2値は特異的RIA法によって測定した.女子の血中INH値は6歳 (55.02±5.60pg/ml, mean±S.E.) より減少し, 9歳で19.83±4.30pg/mlと有意に低値を示した後上昇した.一方同一検体における血中FSH値及びE2値は, それぞれ7歳より9歳にかけて有意な上昇傾向を示した.血中INH値が減少傾向にある女子の6歳~9歳において, 血中INH値とFSH値は負の相関傾向を認めたが, 統計的には有意ではなかった.また血中E2値とFSH値, 血中INH値とE2値の問にも有意な相関を認めなかった.INHの主な産生部位は性腺と考えられる.連続追跡の結果, INHは6歳から9歳にかけて減少し以後上昇するという二相性の変化を示すことが初めて明らかにされ, この血中INH値の思春期前期の低下がFSH上昇のtriggerとなる可能性が示唆された.このことにより中枢と性腺の発育段階においてINHの思春期における役割はその時期によって異なる可能性が示唆された.
  • 富永 幸治, 新井 一成, 石井 博, 草野 満夫, 副島 和彦, 神田 實喜男
    1995 年 55 巻 3 号 p. 253-261
    発行日: 1995/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    胆嚢炎に関する病理組織学的検討で胆嚢については多くの報告をみる.しかし, 胆嚢管については炎症の程度やそれに伴う変化を検討しているものはみられない.臨床的に, 胆嚢結石症などの手術に際し, 胆嚢自体には炎症所見を強く認めるが, 胆嚢管の炎症所見は強くないことを経験する.今回, 1993年7月より1994年6月までの1年間に胆嚢悪性疾患を除き, 当科で胆嚢摘出術を施行された症例95例と同時期に施行された剖検例8例の計103例を対象に, 胆嚢と胆嚢管の炎症性変化を病理組織学的に比較検討した.炎症細胞浸潤は, 胆嚢結石症群では24例 (47.1%) においては胆嚢頸部よりも胆嚢管が軽度であった.胆嚢総胆管結石症群では7例 (70.0%) が胆嚢頸部と胆嚢管で同程度であった.全症例でも胆嚢頸部と胆嚢管を比較して同程度か胆嚢管が軽度であり, 炎症細胞浸潤でみた炎症性変化は胆嚢管は胆嚢頸部よりも軽度であった.壁の線維化は, 胆嚢結石症群で5例 (26.3%) が, 胆嚢総胆管結石症群では3例 (60.0%) が胆嚢頸部よりも胆嚢管が軽度であった.線維化に関する炎症性変化も胆嚢管が胆嚢頸部よりも軽度であった.線維化と炎症細胞浸潤の相関を検討すると, 胆嚢結石症群と胆嚢総胆管結石症群ともに線維化を認める症例では, 炎症細胞浸潤の程度は線維化を認めない症例よりも高度にみられた.しかし, 線維化の有無は, 炎症細胞浸潤が胆嚢頸部より胆嚢管に軽度となることと相関しなかった.弾性線維の増生は, 胆嚢結石症群で11例 (19.7%) , 胆嚢総胆管結石症群では1例 (10.0%) に, 胆嚢頸部より胆嚢管において高度の増生を認めた.炎症細胞浸潤と線維化, 弾性線維増生の相関は, 胆嚢結石症群, 胆嚢総胆管結石症群ともに炎症細胞浸潤と線維化がほぼ正常の症例には軽度の弾性線維増生を認める症例があったが, 著明な増生は認めなかった.今回の検討では, 胆嚢炎による影響は胆嚢管に及んでいるが, 胆嚢頸部に比して胆嚢管の炎症細胞浸潤や線維化の程度からみた炎症性変化は軽度であった.胆嚢管はつるまき線構造を呈し, また, 胆汁の二方交通性を有している.この特異な形態や機能をする胆嚢管は, 胆嚢の炎症が胆管などに直接的に波及しないための緩衝としての役目となっていることが示唆された.
  • 菅原 裕樹, 塩田 清二, 中井 康光, 山田 郁史, 藤巻 悦夫
    1995 年 55 巻 3 号 p. 262-268
    発行日: 1995/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    成熟した日本白色家兎18羽を用いて, 全身麻酔下に, 膝蓋靱帯全長にわたって中央部の1/3を膝蓋骨を付けて遊離ないし有茎の両方の移植片として採取し, それらを用いて前十字靱帯の再建術を行った.移植後それぞれ4週, 12週, 24週で屠殺し, 移植靱帯を採取したのち, 4%パラホルムアルデヒドと5%グルタールアルデヒドの混合固定液で浸漬固定を行い, その後1%オスミウム酸固定液で後固定し, 型の如く脱水, 包埋, 超薄切片を作成し, 電子顕微鏡を用いて観察した.術後4~24週の移植靱帯の線維芽細胞は, 正常膝蓋靱帯のものと比較してその数はやや増加し, また粗面小胞体やゴルジ装置はより発達し, 細胞体がやや増大し, 細胞質突起は減少している傾向が見られた.核は不整形のものは少なかった.大部分のものは長円形で細胞全体として分泌活動の活発な様相を呈していた.膠原細線維は正常膝蓋靱帯では一定方向の配列を示し, その太さは100-300nm径の太い細線維と, 10-20nmの細い細線維の二相性の分布が見られたが, 移植後4週の移植靱帯では膠原細線維の配列の乱れがみられ, 太さも20nm前後の細い細線維, 100-150nmの太い細線維と大小様々であった.移植後12週では, 膠原細線維はしだいに規則的な配列を示すようになり, そのほとんどが30-60nm径の中等大の一様の分布を示し, その分布密度は正常膝蓋靱帯のものに比べてやや疎であった.この30-60nm径の線維は, 2相性分布への前段階の過程と推定された.また有茎移植と遊離移植における移植靱帯の再生過程には組織学的には大きな差異は認められなかった.これらの事実から, 膝蓋靱帯を用いた前十字靱帯の再建術では, 移植靱帯がそのままの形で生着するのではなく, 一度組織崩壊を起こした後, 前十字靱帯に近い構造に再構成されて行く可能性を示唆している.またこの再建過程は, 有径移植と遊離移植との間で基本的に大きな差異のないことが分った.
  • ―術後予後因子としてのc-erbB-2, p53遺伝子―
    沢田 晃暢, 神谷 憲太郎, 川内 章裕, 志賀 俊行
    1995 年 55 巻 3 号 p. 269-277
    発行日: 1995/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    分子遺伝子学の進歩により, 多くの癌関連遺伝子が同定され, これら遺伝子活性化が細胞の癌化, およびその増殖に関与していることが示唆されてきた.癌関連遺伝子異常を臨床検体において検索し, 予後因子としての可能性を検討することが, 症例のより詳細な悪性診断となりうるものと期待される.c-erbB-2は17番染色体q21に存在する癌遺伝子で, EGFRと類似するレセプター型チロシンキナーゼ機能を持つ細胞膜貫通蛋白をコードする.現在, c-erbB-2の発現が, 乳癌の予後因子として利用され始めている.第17番染色体短腕 (17p) に存在するp53遺伝子は, ヒトの悪性腫瘍の多くに突然変異や欠失が認められたことから, 癌抑制遺伝子としての可能性が考えられた.今回われわれは原発性乳癌68例を対象に, 摘出標本を用いてc-erbB-2とp53遺伝子蛋白を免疫組織学的染色を行ない解析した.さらに凍結保存した術前血清を用い, これら遺伝子産物の血中濃度についても測定した.c-erbB-2組織染色陽性例は原発性乳癌68例中15例にみられ, 陽性率は22.1%であった.p53は17例25%を示していた.原発性乳癌68例中術後再発をきたした25例では, c-erbB-2組織染色で8例 (32%) に, p53においては9例 (36%) に陽性例をみた.これら免疫組織染色は, 病期, リンパ節転移度との間に有意差は認めなかったが, p53組織染色において硬癌が高値に陽性であった.血清測定は, c-erbB-2値陽性例が68例中13例 (19.1%) , p53値陽性は, 5例 (7.4%) であった.p53においては組織染色でc-erbB-2染色陽性例よりも高率であり, とくに再発例での検討は臨床的意義があると考えられた.さらにERとの比較において, ER陰性例がp53陽性症例に多く, ともに予後因子としての有用性が示唆された, また再発症例で, 腫瘍マーカーの上昇を認めないが, 術前よりc-erbB-2もしくはp53の上昇をみていた症例が13例も存在したことより, これら遺伝子蛋白は腫瘍マーカーとは異なった性質をもつ予後因子としてのモニタリングとして臨床的意義があると考えられた.
  • ―脊髄腫瘍摘出例における脊髄機能の変動ならびに予後予測について―
    佐藤 秀二, 平泉 裕
    1995 年 55 巻 3 号 p. 278-291
    発行日: 1995/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    手術操作による脊髄麻痺発生の危険が最も高い脊髄腫瘍例を使用し, 手術操作による脊髄機能変動ならびに術後の神経学的予後と脊髄誘発電位との関係を分析した.昭和62年以来, 当教室で手術中に脊髄誘発電位による脊髄機能モニタリングを受けた症例は65例である.そのうち脊髄腫瘍患者は11例で, 同様に当教室で術中脊髄誘発電位を計測した脊椎・脊髄疾患手術54例を対照群とした.年齢分布は18~73歳, 性別は男性5例, 女性6例であった.脊髄腫瘍占拠部位は髄内1例, 硬膜内髄外10例で, 病理組織診断は神経鞘腫5例, 髄膜腫4例, 血管芽腫1例, くも膜嚢腫1例であった.脊髄モニタリング法は, Dantec社製Counter pointを用いて, 脊髄腫瘍占拠レベルの尾側に刺激電極, 頭側に記録電極を硬膜外腔に設置して単極導出する上行性脊髄誘発電位 (以下ASCEP) の計測を基本としたが, 症例により外尿道括約筋や頭蓋内大槽部に記録電極を設置した.ASCEPの基本波形は陰性棘波 (N1, N2) とそれに続く低振幅多層波から構成され, N1の振幅は除圧前0.7~7.5μV (平均2.7μV) が, 椎弓切除直後に振幅増大し, 硬膜切開すると振幅は0.8~15.9μV (平均4.8μV) に急激に増大した.腫瘍摘出操作により電位が危険領域 (コントロール波形の60%以下) まで減少した場合は, 一時手術操作を中止して全例電位の回復をみた.術後の神経学的予後とASCEPとの関係は, ASCEPの振幅が200%以上増大したH群で, 運動スコアーは術前平均4.3点から術後5.0点へと19.9%の改善率であったが, 感覚スコアーは術前平均5.9点から術後9.3点へと118.8%の高改善率を示した.振幅増大が200%以下のL群は, 運動スコアーは術前平均4.3点から術後4.9点へと15.0%の改善率で, 感覚スコアーは術前平均7.1点から術後9.2点へと41.9%の改善率にとどまった.ASCEPの起源は, 第1陰性波が主に脊髄後側索と前索に含まれる大径線維の電位を反映し, 第2陰性波は主に後索機能を反映するとされる.今回の結果で, 術中N1が高度に振幅増大した群では運動・感覚機能とも著明な改善が得られ, この部分の脊髄軸索の大半が虚血を中心とした可逆的障害で, 除圧により病変部脊髄軸索の興奮性が急性に回復して電位の増大が得られたと考えられた.電位の振幅増大があまり得られなかった群では, すでに脊髄軸索変性の比率が高く, 除圧操作による急性の回復が少なかったと考えられ, 術中の振幅増大率が神経学的予後と関係していると思われた.
  • 国村 利明, 諸星 利男, 布野 健一, 耿 啓達, 楊 恵智, 福田 ミヨ子, 永井 智子, 神田 実喜男, 坂本 知幸, 小野 埼規子
    1995 年 55 巻 3 号 p. 292-297
    発行日: 1995/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    腹水細胞診にて肝細胞癌が疑われた胆嚢多形細胞癌の一剖検例を経験したので報告する.症例は81歳の女性.上腹部痛および肝腫大の精査目的で入院となった.血液検査にてCEA, CA19-9の上昇がみられ, 腹部画像診断にて肝右葉前区域に径70mmの腫瘍結節が確認されたことより, 転移性肝癌の診断で加療を行った.その後, 腹水貯留傾向を認めるようになり, 全身状態が悪化し, 不帰の転帰をとった.腹水細胞診にて, 大小不同の異型細胞が弧立散在性に存在しており, 核は大型で明瞭な核小体がみられ, 多核のものも認められた.細胞質は泡沫状で, 顆粒状のPAS陽性物質が確認され, 肝細胞癌が疑われた.剖検にて, 肝床部から肝実質内に直接浸潤する腫瘍が認められ, 組織学的には多形細胞癌を呈しており, 一部では腺癌との移行もみられた.免疫組織学的には上皮性と非上皮性マーカーの双方に陽性を示す腫瘍細胞が認められた.
    胆嚢多形細胞癌は極めて稀な腫瘍であり, 細胞学的診断も困難なことが多い.本症の腹水細胞診を行う上で, 臨床的情報を加えた除外診断の必要性が強く示唆された.
  • 藤野 浩道, 扇内 幹夫, 石黒 洋, 雨宮 雷太, 小川 大介, 藤巻 悦夫
    1995 年 55 巻 3 号 p. 298-301
    発行日: 1995/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    後方進入椎体間固定術はCloward法を初めとして数多くの方法が発表されているがいずれも自家骨移植によるものである.今回我々はチタン製中空スクリューによる後方進入椎体間固定術を行ったので報告する.症例は53歳男性, 腰痛, 左下肢痛およびシビレ感, 左下垂足を主訴として来院.不安定性をともなった腰部脊柱管狭窄症と診断し, 手術を行った.手術は腰椎後方より進入, L4, L5後方部を広範囲に展開した.椎間板ヘルニアを摘除後, Threaded Fusion Cage2本と腸骨からの海綿骨移植を行った.Threaded Fusion Cageは1991年C.D.Rayにより発表されて以来国外では報告が散見されるが, 本邦では我々が知り得た限りではまだ報告はない.従来からの後方進入椎体間固定術と比較して本法の特徴を報告する.
  • 小林 健嗣, 鈴木 奈美, 牧野 靖, 杉崎 徹三, 大場 信之, 里吉 研, 野津 史彦, 三木 洋幸, 荒井 誠, 三田村 圭二, 田中 ...
    1995 年 55 巻 3 号 p. 302-305
    発行日: 1995/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
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