顔面の形態については, 人類学的, 民族学的に興味をもたれるところである.顔面の大きさについての計測は, Martinが, その計測法を統一して以来数多くの報告がみられる.歯科学の立場からの計測が多く報告されているが, 形成外科的にも顔面を扱うことが多く, その形態や各構成部分の大きさおよびそれらの比率を知ることは, 非常に重要なことであると思われる.顔面の計測には, X線やモアレトポグラフィを使った報告もみられるが, 顔面規格写真を使用しての計測報告が圧倒的に多い.しかし, 顔面の水平方向における各構成部と顔面の横径との割合を述べたものは少ない.そこで, 今回著者は, 現代日本人健康成人女子56名 (平均年齢20.6歳) の安静時形態について顔面規格写真を撮影し, これからの計測値を実物大に換算して, 報告と比較するとともに, 瞼裂幅, 内眼角間距離, 鼻翼幅, 口唇幅, 人中幅と顔面の横径についてその比率を求めた.各測定値は, 平均と標準偏差を求め度数分布に表した.瞼裂幅は平均28.7±1.72mm, 内眼角間距離は平均39.2±3.44mm, 最大鼻翼幅は平均40.0±2.70mm, 口唇幅は平均48.9±3.34mm, 人中幅は平均11.9±1.60mmであった.人中の口唇幅に対する比率は平均24.4±3.18であった.顔面の横径は, 内眼角の高さで平均146.8±4.60mmであり, 横径に対する内眼角間距離の比率は平均26.7±2.16であった.最大鼻翼幅の高さで平均135.9±5.45mm, 横径に対する最大鼻翼幅の比率は平均29.5±1.65であった.口角の高さにおける横径は平均115.2±6.51mmで横径に対する口唇幅の比率は平均42.5±3.26であった.内眼角鼻翼指数は98.1±8.52, 内眼角口唇指数は80.5±8.92, 鼻翼口唇指数は82.1±6.72であった.内眼角間距離と最大鼻翼幅はほぼ同大で, 口唇幅に対しては, ともに約4/5の大きさであった.人中幅は口唇幅の1/4であり, 顔面横径に対しては, 内眼角間距離は1/4, 最大鼻翼幅は3/10, 口唇幅は2/5であった.これらの数値は他の報告に比較すると, 距離の計測では, 顔面の横径で10~15mm, その他の計測では最大5mm程度の差がみられた.比率においては, 人中の口唇幅に対する比率では, ほぼ1/4程度で大きな差はみられなかった.口唇幅と内眼角間距離, 最大鼻翼幅の比率では, 口唇幅に差がみられたため, ばらつきがみられた.
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