昭和医学会雑誌
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56 巻 , 4 号
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  • 松浦 康文, 平泉 裕, 藤巻 悦夫
    1996 年 56 巻 4 号 p. 355-362
    発行日: 1996/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    脊椎手術時に椎弓切除や硬膜, 神経根周囲の操作によって局所の炎症反応を惹起し硬膜や神経根の癒着を引き起こすことが多く, またこれらが再手術の同部位への侵入を危険で困難なものにしている.硬膜や神経根の癒着防止のため従来では生体材料として脂肪移植が多用されてきた.遊離脂肪移植は硬膜と傍脊柱筋問の中間挿入物として長期間の生着がMRI等で報告されているが組織学的な評価はなされていない.今回われわれは, 脂肪移植にかわる癒着防止材として, polyvinyl alcohol hydrogel膜 (以下PVAH膜と略す) を中間挿入膜として用い, その透過性および抗炎症作用に着目し, 硬膜や神経根周囲における癒着防止効果を検討したので報告する.雑種成猫60匹を用い無菌操作下に, 第5腰椎の広範椎弓切除を行い, 硬膜と神経根周囲を厚さ200μmのPVAH膜で覆った群と, 遊離脂肪移植群, コントロール群3群に分け, 3週間, 12週間, 1年間飼育の後, 無痛的に屠殺し, 病理学的に評価した.1) コントロール群, 遊離脂肪移植群では硬膜上に強い細胞浸潤が見られ, 癒着も露出硬膜全体に高度であり硬膜は肥厚していた.PVAH膜群は, 癒着はまったく存在せず薄い滑膜様物質が観察され, 硬膜の肥厚も最小であった.また移植脂肪は時間の経過によって縮小する傾向があった.2) コントロール群と脂肪移植群の神経根周囲には線維性瘢痕によって癒着が観察できたが, PVAH膜では癒着はまったく見られなかった.PVAHは水分量, 強度が生体組織と酷似し, 異物反応も少なく, 表面には微小孔があり, 蛋白等の低分子を透過しても, マクロファージのような高分子は透過しない.この選択的透過性が必要な栄養物は取り入れ, 不必要な炎症細胞の脊柱管内への浸潤を防止し瘢痕組織形成や癒着を減少させると思われた.PVAH膜は, 脊椎手術時の癒着防止材として遊離脂肪移植に優る有用な挿入膜と考えた.
  • 内田 俊彦
    1996 年 56 巻 4 号 p. 363-371
    発行日: 1996/08/28
    公開日: 2010/11/19
    ジャーナル フリー
    足部の障害, 特に外反母趾は近年生活様式の西洋化により, 整形外科領域における治療機会が増加している疾患である.治療手段は保存療法と手術療法の二つに大別されるが, 保存療法においては主に足底挿板療法や足趾の運動療法, 薬物療法が行われており, 変形の矯正に関しては手術療法を行う以外にはないと一般的には考えられている1, 2) .保存療法の中で, 足底挿板療法は古くから行われている治療方法であり, 義肢装具士が作成することが一般的である.しかし義肢装具士が作成している足底挿板は, 履く靴の種類が限られたり, 一旦作成すると修正されることが少なく, そのため足底挿板は効果がない, と判定されてしまうことが多い3) .筆者は昭和62年, 足底挿板を用いることで人の歩行形態が変化することに着目し, 下肢の種々の障害に対して足底挿板を自作し, 従来とは違った観点から外反母趾の治療をおこなってきた.足底挿板療法を施行し, 継時的にレントゲン計測を行い, 経過観察してきた外反母趾, 83趾中26趾に5度以上の矯正角が得られ, 最大矯正角は19度であった.外反母趾角でみると, 35度未満の例において矯正角が得られていた.年齢別には, 40歳以上の例においてのみ5度以上の矯正角が得られていたが, それ未満の年齢群においては得られていなかった.今回の研究から, 外反母趾の治療において, 手術療法を選択しなくても, 足底挿板により痛みのみならず変形の矯正も得られるような例があることを初めて明らかにした.外反母趾の治療方法を選択する上では, 変形角度ばかりでなく年齢も考慮して行う必要のあることが判明した.
  • 杉本 太
    1996 年 56 巻 4 号 p. 372-380
    発行日: 1996/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    人口の高齢化は骨粗鬆症による骨折の増加をきたし, 寝たきり老人の増加を招き社会問題になっている.その一方で高齢者の健康への関心も高まりスポーツ活動も盛んになってきている.Microdensitometry法 (以下MD法) 及びDual Energy X-ray Absorptiometry法 (以下DEXA法) を用いて平成3年から平成7年の4年間にわたりゲートボールを行う高齢者の骨密度を経年的に測定し, 健常者の骨密度, 骨折患者の骨密度等と比較し, 運動の骨密度維持や骨折予防への効果の検討を行った.健常群と年齢層毎に平均値で比較を行ったところ, 男性では、ΣGS/D, L2-4BMD, Neck BMDの全てにおいて運動群が健常群よりも高い骨密度を示す傾向が認められた.女性ではΣGS/D及び70歳代Neck BMDで高い骨密度を示す傾向がみられたが, L2-4BMD及び60歳代Neck BMDでは差は認められなかった.女性骨折群と比較しても女性運動群の骨密度はL2-4 BMDで女性骨折群よりも高い傾向を示し, Neck BMDでは骨折群より有意に高値を示し, 骨折点を下回る症例は認められなかった.このことより骨粗鬆症及び骨折の予防に運動は効果があるとの結論を得た.平成4年時, DEXA法でL2-4 BMD及びNeck BMDで, 多くの症例で骨密度を維持しており, 一年間で骨密度減少は予防されており運動が有用であったと考えた.平成7年時ΣGS/D, L2-4 BMD, Neck BMDの4年間の平均値での変化を運動群と健常群のデータと比較したところΣGS/D, L2-4 BMD, Neck BMDの全てにおいて運動群は健常群に比し骨密度の減少が予防されていたことが示唆された.平成7年時運動群の中に5例のゲートボール中止例が存在し, その骨密度の変化を他の継続群と比較検討を行ったところ中止群の骨密度は, ΣGS/Dにおいて男女ともに平成3年から平成7年にかけて継続群よりも大きく減少していた.L2-4 BMD, Neck BMDにおいても同様に, 中止群の骨密度は継続群と比較して大きく減少する傾向がみられた.うち一例は橈骨遠位端骨折を起こしていた.以上より運動及び運動を継続することは骨粗鬆症及び骨折の予防に有用かつ重要な一要因であるということが確認された.そして骨密度測定は短期間的に考えるのではなく, 長期的に経過観察しその骨密度の推移を観察していく必要があるとの結論を得た.
  • 山本 譲, 松橋 明宏, 佐藤 孝雄, 久光 正, 岩本 圭史
    1996 年 56 巻 4 号 p. 381-386
    発行日: 1996/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    これまで運動後の筋の「こり」や「はり」などの自覚症状を客観的に測定する方法はほとんどなかった.我々はこの「こり」や「はり」を測定するための筋硬度計を新たに開発し, 運動負荷後の筋硬度の変化を経時的に測定した.これまでの筋硬度に関する研究は筋を長軸方向に牽引したときの張力と伸展の関係を測定したもので, いわゆる「こり」や「はり」を示すものではない.我々はこれに対し, 筋の長軸に対し垂直方向に力を加えたときの陥凹の程度を筋硬度の指標とした.従来の筋長軸方向の筋硬度はむしろ運動により低下するのに対し, 我々の測定方法では総指伸筋と上腕二頭筋において運動負荷直後に筋硬度の増加が観察され, その後経時的に筋硬度は低下した.運動負荷前の筋硬度を100%として相対的筋硬度を示すと左右の総指伸筋の平均値は, 運動終了直後, p<0.01で106%まで有意に上昇し, 運動終了10分後には100%まで, 20分後では97%まで減少した.肘関節伸展位での左右の上腕二頭筋の筋硬度の平均値は運動終了直後には, 112%とp<0.01で有意な上昇が認められ, 10分後には99%, 20分後には93%となった.肘関節屈曲位での左の上腕二頭筋の筋硬度は運動終了直後には, 114%とp<0.001で有意な上昇が認められ, 10分後には102%, 20分後には94%となった.右上腕二頭筋の筋硬度は運動終了直後には, 114%とp<0.001で有意な上昇が認められ, 10分後には100%, 20分後には93%となった.総指伸筋と上腕二頭筋の運動負荷後の筋硬度の時間経過の差については今後の検討を要するが, 今回用いた筋硬度計は自覚的な「こり」や「はり」を客観的な数値として表すのに非常に有用であることが示され, 肩こりや「こり」による筋肉痛などの客観的評価, さらにそれらに対する種々の治療の客観的効果の判定にも道が開かれると思われる.
  • 野田 宏子
    1996 年 56 巻 4 号 p. 387-392
    発行日: 1996/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    唇裂患者の患側上口唇は健側に比べて小さいことが多い.また, 披裂の程度が重度になるにつれて組織量は少なくなるが, 口唇の初回手術後は, 健側とほぼ同じ位の大きさになることも多く, また, 術後, 時を経るに従い組織量が増えることも観察されている.近年, 唇裂形成術の術後評価については, 主観的に見た目の美しさ, 左右対称性, 解剖学的ズレなどが対象となり, 客観的には口唇各点の長さ, 角度などが測定されてきているが, 上口唇の大部分を占める鼻唇溝三角部, すなわち, 鼻翼基部, 鼻唇溝, 口ひげ境界線で囲まれた三角形の部位を評価の対象にしたものはほとんどない.
    著者は昭和大学医学部形成外科で164名の唇裂患者の鼻唇溝三角部 (仮称) を計測し, 分析した結果, 患側鼻唇溝三角部は健側に比し小さいこと, また, 鼻翼基部の大きさと関連すること, 鼻唇溝三角部の大きさは手術により改善できることが判った.すなわち, 鼻唇溝三角部を測定することは口唇裂手術後の成績を比較する上での一助になり得ることが示唆された.
  • 高野 邦雄
    1996 年 56 巻 4 号 p. 393-401
    発行日: 1996/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    顔面の形態については, 人類学的, 民族学的に興味をもたれるところである.顔面の大きさについての計測は, Martinが, その計測法を統一して以来数多くの報告がみられる.歯科学の立場からの計測が多く報告されているが, 形成外科的にも顔面を扱うことが多く, その形態や各構成部分の大きさおよびそれらの比率を知ることは, 非常に重要なことであると思われる.顔面の計測には, X線やモアレトポグラフィを使った報告もみられるが, 顔面規格写真を使用しての計測報告が圧倒的に多い.しかし, 顔面の水平方向における各構成部と顔面の横径との割合を述べたものは少ない.そこで, 今回著者は, 現代日本人健康成人女子56名 (平均年齢20.6歳) の安静時形態について顔面規格写真を撮影し, これからの計測値を実物大に換算して, 報告と比較するとともに, 瞼裂幅, 内眼角間距離, 鼻翼幅, 口唇幅, 人中幅と顔面の横径についてその比率を求めた.各測定値は, 平均と標準偏差を求め度数分布に表した.瞼裂幅は平均28.7±1.72mm, 内眼角間距離は平均39.2±3.44mm, 最大鼻翼幅は平均40.0±2.70mm, 口唇幅は平均48.9±3.34mm, 人中幅は平均11.9±1.60mmであった.人中の口唇幅に対する比率は平均24.4±3.18であった.顔面の横径は, 内眼角の高さで平均146.8±4.60mmであり, 横径に対する内眼角間距離の比率は平均26.7±2.16であった.最大鼻翼幅の高さで平均135.9±5.45mm, 横径に対する最大鼻翼幅の比率は平均29.5±1.65であった.口角の高さにおける横径は平均115.2±6.51mmで横径に対する口唇幅の比率は平均42.5±3.26であった.内眼角鼻翼指数は98.1±8.52, 内眼角口唇指数は80.5±8.92, 鼻翼口唇指数は82.1±6.72であった.内眼角間距離と最大鼻翼幅はほぼ同大で, 口唇幅に対しては, ともに約4/5の大きさであった.人中幅は口唇幅の1/4であり, 顔面横径に対しては, 内眼角間距離は1/4, 最大鼻翼幅は3/10, 口唇幅は2/5であった.これらの数値は他の報告に比較すると, 距離の計測では, 顔面の横径で10~15mm, その他の計測では最大5mm程度の差がみられた.比率においては, 人中の口唇幅に対する比率では, ほぼ1/4程度で大きな差はみられなかった.口唇幅と内眼角間距離, 最大鼻翼幅の比率では, 口唇幅に差がみられたため, ばらつきがみられた.
  • 高村 光一
    1996 年 56 巻 4 号 p. 402-409
    発行日: 1996/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    浸潤, 転移という性格を明らかにし始める時期と考えられる粘膜下層胃癌 (sm胃癌) 41例を対象として, 腫瘍の性格の不均一性について, 組織多様性, ISNEL法によるアポトーシス (A.I.) の検出を行うとともに, アポトーシス関連遺伝子異常としてBcl-2とp53, さらに細胞増殖能としてKi-67 (Ki-67L.I.) について免疫染色を用い検討した.正常粘膜ではA.I., p53はほとんど認めなかった.Bcl-2は深部で全例に発現していたが, 表層では4.9%と低率であった.Ki-67L.I.は中層で21.4±6.9と表層, 深層に対し有意に高値を示していた (p<0.01) .腫瘍部ではA.I.が認められ, 部位別では表面中心部44.4±18.5と, 先進部34.6±13.0と比較して有意に高かった (p<0.05) .Bcl-2は表面中心部7.32%と, 先進部の46.3%と比較して有意に発現が低下していた (p<0.01) .p53蛋白の発現も高率にみられた.Ki-67L.I.は正常粘膜に対して27.5±9.1と有意に高値を示したが, 部位別で差はなかった.組織型に関しては, 分化型でBcl-2は94.7%, p53は68.4%と未分化型の59.1%, 27.3%に対しそれぞれ有意に発現率が高かった (p<0.01) .組織多様性に関しては, 組織型別では分化型腺癌の79.0% (15/19例) , 未分化型腺癌の95.5% (21/22例) に認められた.A.I.について傾向はなかったが, Ki-67L.I.は, 多様性を認める症例で28.5±8.8と, 認めない症例20.6±5.0に対して有意に高値だった (p<0.05) .肉眼型との関係をみると, 多様性を認める症例にてA.I.は陥凹型43.5±8.7, 隆起型33.2±8.1に対して有意に高値を示していた (p<0.05) .A.I.とBcl-2, p53との関係をみてみると, Bcl-2では明らかな傾向はなかったが, p53陰性症例のA.I.は46.7±14.5と, 陽性症例37.7±7.6に対し有意に高値を示していた (p<0.01) .腫瘍粘膜では正常な細胞動態が認められず, アポトーシスの発現も部位において差がみられ, 肉眼型との関係が考えられた.また, 先進部においてアポトーシスの発現が低い傾向にあり, sm胃癌における浸潤との関連が示唆された.組織型においては多様性は未分化型に多く認められ, また多様性を認める未分化型は増殖能, アポトーシスの発現とも高率で細胞回転の高く悪性度が高いことが考えられた.
  • 福田 春枝, 三浦 宜彦, 平野 亙, 川口 毅
    1996 年 56 巻 4 号 p. 410-422
    発行日: 1996/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    日本版のオルポートとバーノンの調査表を用い, 看護学専攻の短大生306人と大学生92人について集合法による調査を実施し, オルポートとバーノンのスケールによる原テストの平均値を比較検討した.また, 吉野が考案した価値志向形および価値志向の方形表, さらに潜在志向について短大生と大学生の価値志向の比較を行った.その結果, 価値志向の平均値において, 原テスト, 潜在志向ともに短大生と大学生との間に「社会性」と「理論性」で有意差が認められた.各カテゴリー間では短大生, 大学生ともに「社会性」の平均値が最も高く, 「政治性」および「経済性」の値は低かった.さらに, 短大生は「宗教性」が- (マイナス) であり, 大学生は+ (プラス) であることが示された.このことは短大生は, 宗教に対して相対的な価値観が低いことを意味し, 逆に, 大学生は相対的に価値観が高いことを示している.価値志向の方形表においては, 短大生および大学生の価値志向の特性が特定の行および列に集中し, その分布もほぼ共通していたことが明らかにされた.次に, 集中した因子を抽出して詳しく調べると, 原テストにおいて共通する志向形は, 「政治性」が- (マイナス) で「社会性」が+ (プラス) であることが明らかになった.このことは人間関係が気にかかり, 力で意志を通すことをよしとしないという価値志向であることを意味している.同様に, 抽出因子の潜在志向においては, 「社会性」の+ (プラス) だけが共通としてあげられた.「社会性」が+ (プラス) とは価値志向において人間愛が中心であり, 他者への献身に価値をもとめ, 交わり・共感・連帯感を重んじるタイプである.以上, 短大生と大学生の看護系学生を対象に価値志向に関する調査・分析を行った結果, 短大生, 大学生に共通した価値志向の特性が把握された.現在における価値志向を把握することは, 個人や集団に対する対応の仕方や教育などの場における対象の特性を知る意味で, 非常に重要な事柄であると考える.また, これら価値志向の変化にかかわる要因を分析することは, 心理学や人間科学という分野においてもきわめて重要であると考える.
  • 門脇 昭一, 北村 朋之, 笠原 敏男, 冨士 幸蔵, 斉藤 豊彦, 吉田 英機
    1996 年 56 巻 4 号 p. 423-433
    発行日: 1996/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    前立腺肥大症16例における組織学的構築と前立腺肥大症の発生および増殖に関係するとされている種々のホルモンの末梢血中濃度との関係について検討し, 加えて10例にchlormadinone acetate (CMA) を投与し, 投与前後の組織構築変化とホルモン濃度変化との関係についても検討した.前立腺体積は経直腸的前立腺超音波検査により求め, 前立腺組織は経直腸的前立腺針生検または経尿道的前立腺切除術により採取した.ホルモンは末梢血中のIuteinizing hormone (LH) , follicle stimulating hormone (FSH) , prolactin (PRL) , testosterone (T) , estradio1-17β (E2) 濃度を測定し肥大症前立腺の組織構築をmorphometryを用いて検索し比較検討を行った.各組織構成成分比率では, 腺管成分が35.0%であるのに対し, 間質成分は65.0%と間質優位であった.末悄血中のLH, FSH, PRL, T, E2濃度と間質成分とを比較したところ有意な相関は認められなかった.しかし相関係数ではTと間質成分vol.%とがr=0.435 (p=0.092) とその傾向が見られたため, E2を変化させずTを低下させるといわれているCMAを投与し, その前後で各構成成分比率および体積を比較した.その結果T濃度は5.5±2.4ng/mlから1.7±0.9ng/mlと有意に減少し, 平均前立腺体積も43.3±19.8cm3から35.5±15.1cm3と有意に減少したが, 各構成成分比率では有意な変化は認められなかった.このことから肥大症形成時には重量の増加と間質成分vol.%の増加が認められ, これにはTが関与しているといわれているが, 一旦完成された肥大症が縮小していく過程においては, 肥大症発生時とは異なったテストステロン作用機序が存在するのではないかと推察された.
  • 井上 克己, 鈴木 俊一, 小橋川 啓, 斎藤 豊彦, 吉田 英機, 佐々木 春明, 太田 道也, 高西 竜太, 池内 隆夫, 甲斐 祥生
    1996 年 56 巻 4 号 p. 434-438
    発行日: 1996/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    1984年から1993年までの最近10年間に昭和大学病院および昭和大学藤が丘病院泌尿器科で経験した腎細胞癌189症例を対象に臨床的に検討した.Stage Iが122例, stage IIが17例, stage IIIが13例, stage IVが37例で, 189症例全体の疾患特異5年生存率は71%であった, Stage別にみると, stage Iが91.7%, stage IIが90.0%, stage IIIが52.0%, stage IVが6.6%であった.また, 189例中93例 (49.2%) が偶発癌であった.偶発癌は75.3%が院内外からの紹介患者で, 96.7%がCT, USで発見されていた.偶発癌は79.6%がstage Iであり, 5年生存率は88.9%と, 臨床癌の55.8%と有意な差を示した.最近, CT, USなどの画像診断機器の普及により, 偶発癌として発見される腎細胞癌が多くなっている.偶発癌は院内の他科や, 周辺の病院から紹介される症例が多いことから, 腎癌治療成績の向上にはこれらの施設との連携が重要であると思われる.
  • 有川 公三
    1996 年 56 巻 4 号 p. 439-447
    発行日: 1996/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    Magnetic Resonance Angiographyにて手の末稍血管描出法の条件を健康成人で設定し健康成人ボランティア20名 (男性11名, 女性9名) , 臨床3例において同条件でMRAを施行し臨床的有用性を検討した.末梢血管, 特に手におけるMRAの報告は血管径, 血流速, ハード面の問題もあり描出が難しく報告も少ない.MRAの診断精度は, MR機器 (メーカー, 制作年代, 機器の改良の如何) , 撮像方法, 画像表示法, 読影システム, 読影者の能力によってかなり左右されるものであり, また, 方法は画一的なものでなく検査部位, 疾患によって必要とする精度の高い情報を得るために, いろいろな方法から選択しなければならない.今回, 健康成人の協力を得て手の末梢血管のMRA画像描出のために常時撮像できる条件Flip角90度, 繰り返し時間TR35ms, エコー時間TE16ms, スライス厚2mm, 撮像視野FOV17cm, 平均加算回数NSA2, 表示マトリックス141×256, 室温22度を設定し, また, 従来の撮像法の欠点を改善したMultiple Slide Slice法で明瞭な画像を描出できた.設定した条件にて健康成人ボランティア20名, 臨床3例にMRAを施行した結果, MRAは無被爆, 無侵襲の検査で, その特徴をいかすことで手の分野においても臨床的に有用であると考えられた.
  • 劉 延慶, 佐原 正明, 梅 建, 成田 和広, 花川 一郎, 笠原 絵利, 久光 正
    1996 年 56 巻 4 号 p. 448-453
    発行日: 1996/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ウィスコンシン液 (UW液) は臓器保存液として広く普及し, 肝臓移植ではその保存性が実質細胞レベルで確認されている.しかし肝機能全体の保存には機能栄養血管および胆管系の組織機能の保存も重要であり, 移植後の成績に大きな影響を与えると考えられる.血管内皮細胞は, 刺激により内皮由来弛緩因子 (endothelium-derived relaxing factor: EDRF) や内皮由来収縮因子 (endothelium-derived contracting factor: EDCF) , その他を分泌し血管平滑筋などに影響を与えることが知られている.今回, 我々は内皮細胞を積極的に取り除いた門脈と内皮細胞を温存した門脈との間に摘出後どのような相違があるかについてKrebs液を対照としUW液による家兎の摘出門脈標本のノルエピネフリンによる収縮力を指標として比較した.門脈の収縮力を測定する時は36℃のKrebs液中で行い, 保存は4℃のKrebs液か4℃のUW液の中で行った.内皮細胞を積極的に取り除いた門脈では, Krebs液保存群は保存時間が長くなるにつれて門脈の収縮力は減弱し72時間後では30% (保存前を100%とする) になった.UW液保存群も保存時間が長くなると門脈の収縮力は減弱したが, その割合はKrebs液ほどではなく72時間後で65%であった.一方, 内皮細胞を温存した門脈を用いた実験では異なった結果が得られた.すなわちKrebs液保存群では保存時間が長くなると収縮力が増大し, 72時間後で213%になった.UW液保存群でも保存時間が長くなると収縮力は増強したが, 増強の程度はKrebs液ほどではなく72時間後で118%であった.これらの結果は (1) 内皮細胞を除去した門脈では72時間の保存中に4回行った収縮力測定の際, それぞれの測定前に流した酸素化された灌流液による再灌流障害がKrebs液による保存では強く生じ収縮力を低下させたのに対し, UW液による保存では再灌流障害が少なく, 収縮力が比較的維持された. (2) 内皮細胞を温存した門脈では保存中に遊離されるEDRF等により平滑筋弛緩が生じるが, これらの弛緩因子遊離がUW液による保存では抑制されたため摘出時の収縮力が比較的維持されたためと考えられた.今回の実験から門脈の収縮力はKrebs液よりもUW液中で保存した方が (内皮細胞の有無にかかわらず) 保存時間が長くなっても摘出直後の収縮力に近い収縮力を維持することが明らかになった.
  • 赤木 祐子
    1996 年 56 巻 4 号 p. 454-460
    発行日: 1996/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    糖尿病 (インスリン非依存型糖尿病: NIDDM) を基礎疾患とする透析患者について, 透析操作の前後での末梢血単核細胞サブセットの変動を追跡し健常者の血液と比較, 免疫不全との関連を検討した.CD3/CD19比は, 透析前後の変化は患者群, 健常者群ともに認められなかった.CD3陽性細胞中のCD8陽性細胞比およびCD3陽性細胞中のCD4陽性細胞比は健常者群で変化は認められなかったが, 患者群においてCD8陽性細胞が透析後1日目に22.9±9.5%低下, CD4陽性細胞率が透析後1日目に11.8±7.3%増加と有意な変動が認められた.単球 (CD14陽性細胞) 数は, 患者群において, 透析3日後に28.8±20.5%と有意に低下した.またNK細胞に発現するCD16陽性または/かつCD56陽性細胞は健常者群では30.7±25.7% (透析後1日) , 44.8±35.3% (透析後3日) 増加したのに対して患者群で47.1±25.6% (透析後1日) , 58.2±13.3% (透析後3日) と有意に減少した.リンパ球および単球分画中のIL-2 receptor陽性細胞の比率も健常者群で一定の傾向は認められなかったが, 患者群では2例で透析後1日目に顕著に減少した.糖尿病患者では透析により, CD8陽性細胞, NK細胞, IL-2receptor陽性細胞が減少し免疫不全状態がさらに助長される可能性が示唆された.
  • 長谷川 幸祐, 鈴木 衛, 佐藤 温, 福井 俊哉, 杉田 幸二郎
    1996 年 56 巻 4 号 p. 461-466
    発行日: 1996/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    症例は52歳, 男性.42歳頃より徐々に両側性の難聴, それに続き, 歩行時のふらつきに気付き, 進行するため, 発症から1年後当科受診・入院し, 脊髄小脳変性症 (オリーブ・橋・小脳萎縮症) が疑われた.入院時, 髄液所見が血性であったことが脊髄小脳変性症として問題点であった.その後, 上記症状はさらに進行し, 9年後には高度の感音性難聴 (両側) , 運動失調性構音障害, 四肢協調運動障害・筋緊張低下, 四肢腱反射亢進, 両側Babinski徴候陽性, 運動失調性歩行, 排尿障害を認めた.髄液検査ではキサントクロミーと, 蛋白量, 2価鉄の増加を認めた.頭部X線CT, 頭部及び脊髄MRI (T2強調) では脳槽, 脳室周囲の脳表, 脊髄を縁どるようなヘモジデリンの沈着を示唆する異常所見を認め, superficial siderosis of the central nervous systemと診断した.本例の示した病態は, superficial siderosis of the central nervous systemが脊髄小脳変性症の鑑別診断上留意すべき疾患であることを示唆しているものと思われた.
  • 渡辺 尚彦, 難波 玄, 大氣 誠道, 友松 英男, 鈴木 吾登武, 久木田 尚仁, 横川 友久, 奥野 敬一郎
    1996 年 56 巻 4 号 p. 467-473
    発行日: 1996/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    昭和大学病院耳鼻咽喉科において, 過去7年間に6例の総頸動脈・迷走神経切断症例を経験した.5例は頭頸部領域の扁平上皮癌の頸部転移症例で, 1例は副咽頭間隙に発生した小細胞肉腫であった.目的は根治手術が5例, 総頸動脈破裂の止血処置が1例であった.内2例にテフロン製人工血管による再建術を行った.合併症として, 反回神経麻痺を3例, ホルネル症候を2例, 脳梗塞 (片麻痺) ・術中心停止・消化管蠕動停止各1例を認めた.総頸動脈・迷走神経切断後の生存期間は最短1カ月, 最長1年7カ月であった.死因は再発腫瘍死3例, 遠隔転移2例, 全身合併症1例であった.術中心停止と消化管蠕動停止は迷走神経切断の影響と考えられ, いずれも患側は左であった.
  • 鬼塚 卓彌, 佐藤 兼重, 斎藤 昌美, 角谷 徳芳, 林 隆士, 門脇 哲郎
    1996 年 56 巻 4 号 p. 474-483
    発行日: 1996/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    髄膜脳瘤meningoencephaloceleは稀なる疾患で, 出生35, 000~40, 000に1例といわれている.我々はこれまで3例の症例を経験し, さらに, 髄膜脳瘤と誤診された皮様嚢腫の1例を経験した.いずれも冠状切開とintracranial approachで骨欠損部の修復をはかった.手術法の詳細について述べるとともに, 文献的考察を行った.
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