高度不飽和脂肪酸含有油脂 (PUFA) 並びにカキ肉エキスのアルコール代謝に及ぼす影響を検討した.健常成人8名 (男性女性各4名, 年齢24.8±2.4歳, 身長163.9±9.2cm, 体重54.6±8.9kg) を対象とし, Placeboを用いて1週間以上のwashout期間をおいて2群2期の二重盲検クロスオーバー法にて行った.被験者はPUFA含有油脂食品 (サンバランス) 6カブ.セルとカキ肉エキス配合食品 (ディノバランス) 18錠, またはそれぞれ同量のPlaceboを服用し, 30分後にウイスキー (アルコールとして0.39/kg) を服用した.ウイスキー服用前, 服用後15分, 30分, 45分, 60分, 75分, 90分, 120分, 150分, 180分に静脈より採血を行い, エタノールとアセトアルデヒド濃度の測定はガスクロマトグラフィーにて行った.食品服用群はPlacebo服用群よりアルコール服用後30分, 60分の血中エタノール濃度が有意に低下した (p<0.05) .血中アセトアルデヒド濃度は両群間で有意差はなかったものの, 全体的に食品服用群で低下する傾向が示唆された.エタノール代謝として, C
msx以降の曲線は各個人でほぼ直線化しており, 0次速度と仮定した場合の相関係数は0.963±0.038 (n=16) と高い相関を示した.またエタノールの薬物動態学的パラメータでは, 食品服用によりt
maxは41.3±17.5分から56.3±25.0分へと有意に遅延 (p=0.018) し, AUCは30613.4±12135.6min・μg/mlから23448.7±8985.1min・μg/mlへと有意に減少 (p=0.026) し, エタノール代謝を0次速度と仮定した場合の直線 (regression line) の傾きk
0は1.99±0.60μg/minから1.65±0.67μg/ml/minと有意に低下 (p=0.007) した.その他, regressionlineのY切片C
0, 見かけの分布容積Vにおいても有意差が認められたが, bioavailability (F) が低下したためと考えられた.アセトアルデヒドの薬物動態学的パラメータでは両群問で有意差を認めなかったが, 全体的にAUCが低下する傾向が認められた.この傾向はアセトアルデヒド脱水素酵素の欠損者で多く認めめられた.これらのことから, PUFA並びにカキ肉エキスはエタノールの吸収を抑制し, 体内におおいてエタノールからアルデヒドへの代謝速度を低下させ, アセトアルデヒドの体内への蓄積を抑制する可能性が示唆された.アセトアルデヒドの体内への蓄積の抑制に関しては, 被験者の自覚症状, 他覚所見で頭痛, 眠気, 発汗, 脈拍増加の出現が減少していることからも示唆できるものと考えられた.
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