昭和医学会雑誌
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57 巻, 1 号
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  • 小林 洋一, 浅野 拓, 小原 千明, 品川 丈太郎, 神保 芳宏, 片桐 敬
    1997 年 57 巻 1 号 p. 13-23
    発行日: 1997/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
  • ―特に希釈溶液量の差異による影響について―
    高 用茂, 生田目 公夫
    1997 年 57 巻 1 号 p. 24-29
    発行日: 1997/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    シスプラチン (cisplatinum; CDDP) の腹腔内投与法における希釈溶液量による吸収経路への影響について犬を使用し実験的に検討した.実験方法はCDDP2mg/kgを希釈溶液量によってA群: 5頭 (生理食塩水100mlに希釈) , B群: 5頭 (生理食塩水200mlに希釈) の2群に分けた.CDDP腹腔内注入は16-gauge catheterからbolus投与した後, 門脈血, 末梢血ならびに肝組織内CDDP濃度を測定した.その結果, 1) A群の門脈皿Tota1, free-CDDP濃度はB群に比較して有意 (p<0.05) に高値を示した.2) A群の末梢血Total, free-CDDP濃度はB群よりも有意 (p<0.05) に低値であった.3) AUCからも1) , 2) の成績が裏付けられた.4) 肝組織内CDDP濃度は, A群で有意 (p<0.05) に高値を示した.以上の結果から, 高濃度CDDP腹腔内投与法は, CDDPを門脈系へと促進吸収させ標的臓器への有効な投与法であると考えられた.
  • 広田 曄子, 星山 佳治, 川口 毅
    1997 年 57 巻 1 号 p. 30-36
    発行日: 1997/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    初生養護が小児科領域の医書の中でどのように記載されているかについて歴史的流れの中で文献学的に検討した.その結果, 初生養護は小児科領域の医書において治療や臨床医学的処置だけでなく予防医学の観点からも重要なこととして古くから詳細な記載がされてきた.中国の「千金方」をはじめ「小品方」などの医学の伝承を受けて平安時代に丹波康頼によって我が国で最初に編纂された「医心方」に記載されており, 以来江戸時代にいたるまで多くの医書においてもほぼ同様の記載となっている.しかし, 江戸時代後期になると従来の初生養護にかかわる処置を継続しようとする古方派と従来の考え方を否定し新しい知見に基づいた有持桂月等をはじめとする新しい日本独自の初生養護に対する考え方の台頭など江戸時代にはかなり自由な思考が数多くなされており, まさに百家争鳴の感がある.さらに, この時期には離乳や臍ヘルニアの治療といった新しい治療などの記載や予防的観点から厚着をさせないことや満腹するまで乳を与えない, あるいは日光浴をさせ風邪の予防に心掛けるなど今日の予防医学においても通用するいくつかの知見がみられた.このように我が国の医書にみる初生養護の変遷について振り返ってみることにより現在の新生児に対する保健予防や治療においても通用する知見も多く見られ今後の医療発展にも大きく貢献する事が期待された.
  • 第1報腸管の病態変化
    坂本 泰寿, 吉田 英生, 諸星 利男
    1997 年 57 巻 1 号 p. 37-43
    発行日: 1997/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    卵白アルブミン (OVA) で感作されたラットを用い, OVAで経口的にチャレンジ後, まず1時間後においてβ-ラクトグロブリン (BLG) を経口的に投与し, 4時間まで経時的にBLGの血中濃度をELISA法にて測定した.血中には負荷30分より出現し60分, 120分, 240分にて最高血中濃度を呈した.本実験では, 最高血中濃度を240分値, 即ち2時間値とし, 1, 3, 6, 12, 24時間後 (それぞれを1群, 2群, 3群, 4群, 5群に分け) にBLGを経口的に投与し, 各群で腸管透過性を比較検討した.BLGの血中濃度は1群, 3群, 5群に出現し, 各群間では有意差は認められなかった.しかし, 2群, 4群では全くBLGの出現は認められなかった.小腸病理組織所見 (HE染色) によると, 2群の組織所見では, 小腸絨毛の著しい浮腫により, BLGの吸収障害がおきたものと考えられた.4群の組織所見では, 小腸吸収上皮細胞に代わって, 杯細胞の著明な増加による, BLGの吸収障害がおきたものと考えられた.このように3相性に, しかも同程度にBLGの腸管吸収が認められた機序に関してはIgEdependentの即時相だけでなく, 遅発相, 後遅発相も関与して抗原吸収に影響を及ぼしている可能性が示唆された.
  • ―四肢障害に眼障害が重複した看護―
    大音 清香
    1997 年 57 巻 1 号 p. 44-55
    発行日: 1997/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    昭和大学リハビリテーション医学診療科において, 1994年7月~1996年7月までの慢性関節リウマチ患者155例中, 四肢の運動機能障害に眼障害を伴っている50例について, 日常生活, 社会環境での障害状況を調査し, チーム医療における看護の関わりを検討した.その結果, 慢性関節リウマチに伴う眼疾患としては, 白内障, シェーグレン症候群, 角結膜炎が多くみられ, 重複した障害により日常, 社会生活での種々の障害を生じていた.慢性関節リウマチに眼疾患が伴うと双方の機能障害は違うが, 能力障害は同じである.四肢の運動機能障害のうち手指の障害では巧緻性の障害が生じ, 下肢の障害では移動動作の障害が生じる.これらに眼障害が重複すると, 日常生活動作は障害はあるものの自立可能であるが, 日常生活関連動作は補装具, 自助具の工夫活用をしても困難な動作が生じている.重複障害は生活, 社会環境において, 気象状況により疼痛や視力への影響に相違があり, また公的設備のうち誘導ブロック, 押しボタン式信号機など, 一方の障害者用に工夫されているものがあるが, 却って障害となる.看護は, 日常生活動作や日常生活関連動作の障害状況に応じた関わりが必要である.
  • ―ソマトスタチン含有ニューロンとの形態学的相関について―
    堀 泰典, 須賀 川圭子, 落合 英彦, 中井 康光
    1997 年 57 巻 1 号 p. 56-63
    発行日: 1997/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ラット視床下部・下垂体系におけるグルタミン酸含有ニューロンの分布と微細構造を免疫電顕的に観察し, さらにグルタミン酸含有ニューロンとソマトスタチン含有ニューロン間のシナプス相関について, 二重免疫電顕的に観察した.グルタミン酸様免疫陽性ニューロンは, 視床下部の室周囲核および弓状核に多数分布していた.これらグルタミン酸様免疫陽性ニューロンには免疫陰性で性質不明のニューロンから多数のシナプス入力を受けている像がみられた.さらに, 弓状核においてグルタミン酸様免疫陽性ニューロン同志間のシナプス形成もみられた.正中隆起外層では, グルタミン酸様免疫陽性終末が下垂体門脈系毛細血管の血管周囲腔の基底板に直接接しているのが確認された.二重免疫電顕的観察により, 弓状核においてソマトスタチン様免疫陽性終末がグルタミン酸様免疫陽性ニューロンの細胞体にシナプスを形成している像, および室周囲核においてグルタミン酸様免疫陽性ニューロンとソマトスタチン様免疫陽性ニューロンの両ニューロン相互間のシナプス形成が観察された.以上の観察結果から, グルタミン酸含有ニューロンとソマトスタチン含有ニューロンは, 視床下部でシナプスを介して相互に情報連絡を行っている可能性, およびグルタミン酸は神経伝達物質としての機能の他に視床下部ホルモンとして下垂体前葉ホルモンの分泌調節に関与している可能1生が示唆された.
  • 梅 建, 佐原 正明, 劉 延慶, 田村 敏則, 朱 慧敏, 久光 正
    1997 年 57 巻 1 号 p. 64-68
    発行日: 1997/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ウイスコンシン液 (UW液) は臓器保存液として広く普及し, 肝臓移植ではその保存性が実質細胞レベルで確認されている.肝機能全体を保存するには実質細胞の保存に加えて機能, 栄養血管および胆管系組織の機能保存も重要であり, 移植後の成績に大きな影響を及ぼすと考えられる.移植後の肝不全防止にプロスタグラディンE1 (PGE1) が有用であり, ドナー肝にあらかじめPGE1を投与する方法も用いられている.また臓器保存液中にプロスタグランディン (PG) を添加することにより肝保存効果が高まることが報告されている.今回, 家兎の摘出門脈に対するPGE1添加UW液とUW単独液との保存効果を比較し, さらにフォルスコリンを用いてPGE1のサイクリックAMP (cAMP) 濃度増加作用と保存効果との関連性について検討した.保存効果の比較はノルエピネフリンによる門脈収縮を指標として行った.収縮力の測定は36℃のクレブス液中で行い, 保存は4℃のUW液, 4℃のPGE1+UW液, または4℃のフォルスコリン+UW液の中で行った.この結果, 門脈の収縮力はPGE1+UW液保存群の方がUW液単独保存群に比較し, 保存24時間後, 48時間後および72時間後のいずれにおいても有意に (p<0.05) 高く維持された.また, フォルスコリン+UW液保存群においてもUW液単独保存群に比べ高い収縮力を維持する傾向が認められた.両群の間には, 保存24時間後には有意差は見られなかったが, 保存48時間後には明らかな有意差が認められた.UW液にフォルスコリンを添加した群と比較するとPGE1を添加した群の方により強い門脈保存効果がみられた.以上の結果から門脈の収縮力はUW液単独保存に比べ, UW液にPGE1を添加した場合に保存効果が増強され, その機序の一部にはcAMPの濃度増加作用が関与していることが示唆された.
  • 長谷川 幸祐, 諸星 利男, 福井 俊哉, 河村 満, 杉田 幸二郎
    1997 年 57 巻 1 号 p. 69-78
    発行日: 1997/02/28
    公開日: 2010/11/19
    ジャーナル フリー
    パーキンソン病の運動及び知的精神機能障害には数多くの修飾因子が関与している.今回, われわれはパーキンソン病の臨床症状に関わる諸因子; (1) パーキンソン病患者の生活機能予後の悪化に関与する因子, (2) 痴呆を伴うパーキンソン病患者にかかわる因子, (3) 死因について, 1992年~1996年の4年間にわたり追跡し, 検討を加えた.対象は昭和大学神経内科に受診中のパーキンソン病患者, 49例, 平均年齢67.9歳 (51~89歳) .男性16例, 女性33例 (男女比1: 2.1) である.方法は (1) 1992年時に初発症状, 罹病期間, Hoehn-Yahr重症度, 抗パーキンソン病薬の内容と用量, X線CT上の脳萎縮所見, MRIT2強調画像上の高信号病変 (大脳基底核は除く) , 及び知的精神機能を検討し, 1996年の生活機能を障害程度から5段階に区分し, 上記諸因子と生活機能予後の関連性について重回帰分析を用いて分析した. (2) 4年間の観察期間中に, 新たに痴呆が発症した群における上記諸因子の特徴, 死亡例の死因を検索した.4年間の追跡の結果, 加齢, 高い重症度, かな拾いテストの低得点が生活機能予後を悪化させる要因であった.受診時高齢者・高齢発症者に痴呆の発現率が高く, 運動機能の低下に伴い知的機能が平行して高率に低下した.死亡例は10例, 死因発症前のHoehn-Yahr重症度は, いずれもIII度以上で, IV度以上が50%を占めていた.直接死因は肺炎6例, くも膜下出血2例, 転倒による急性硬膜下血腫1例, 麻痺性イレウス1例であった.以上よりパーキンソン病の予後悪化には, 加齢や運動機能の低下の他に前頭葉機能の低下が関与すると結論づけられた.
  • 遠藤 済, 大久保 幸枝, 高橋 雄彦, 島村 忠勝, 原 征彦
    1997 年 57 巻 1 号 p. 79-86
    発行日: 1997/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    C3H/HeN, 雄マウスより得た腹腔マクロファージ (Mφ) にin vitroで (-) epigallocatechin gallate (EGCg) を単独またはLPSとの併用で作用させ, Mφの炎症性サイトカイン (TNF, IL-1) 産生および炎症性サイトカインの作用に対するEGCgの効果を検討した.Mφ上清中のTNF活性はL-929細胞傷害を指標に, またIL-1様活性はマウス胸腺細胞の3H-Thymidineの取り込みにより, それぞれ測定した.その結果, EGCg単独ではMφのTNF産生を刺激することはなかったが, LPSとの併用においてEGCg5μg/mlは低濃度 (0.1μg/m1) LPSによるMφのTNF産生を充進した.しかし, 高濃度 (1.0μg/ml) LPSによるTNF産生にはなんら影響を及ぼすことはなかった.また, LPS 0.1μg/mlとEGCg 10μg/m1を同時に短時間Mφに作用せたところ, EGCgはLPSのTNF産生を抑制した.IL-1様活性の場合にもEGCg単独ではMφ上清中にIL-1様活性は全く見られなかったが, LPS (0.1~1.0μg/ml) との併用においてEGCg (5~10hg/ml) はLPSのIL-1様活性を抑制した.次に, mouserecombinant TNF-α (250pg/ml) あるいはrecombinant IL-1β (250~500pg/ml) をEGCg (5~10μg/ml) で一定時間処理し, それぞれの活性に及ぼすEGCgの影響を検討したところ, EGCgはrTNF-α活性を約30%, rIL-1β活性を約70%抑制した.以上の結果よりEGCgは過剰に産生されたサイトカインやそのサイトカインの作用を恒常的に抑制する作用のあること, および直接サイトカイン活性中和能を有することなどが判明した.
  • 池田 東美明, 福井 規之, 小山 陽子, 水川 啓子, 香川 豊明, 世良田 和幸, 武田 昭平, 外丸 輝明
    1997 年 57 巻 1 号 p. 87-90
    発行日: 1997/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    昭和大学藤が丘リハビリテーション病院は, リハビリ治療専門の都市型リハビリテーション病院として, 平成2年6月に開院した.また平成4年5月には, 手術室が開設され, 平成8年3月までに手術症例数が1449症例に達した.主に脊椎, 四肢関節機能障害のための機能不全やスポーツ障害などに対する手術が施行されている.麻酔管理上の特徴としては, 大量出血が予想される股関節や脊椎の手術では, 各種の自己血輸血法と術中の低血圧麻酔法を併用することで同種血輸血の回避に努め良好の結果をえている.また手術の特徴としては, 内視鏡による検査や手術が膝, 股, 肩関節で増加傾向にある.さらに変形性関節症の増加に伴い股関節や膝関節の人工関節置換術が増加傾向にある.
  • ―保存的療法適応の検討―
    土居 浩, 豊田 泉, 松本 清, 桑澤 二郎
    1997 年 57 巻 1 号 p. 91-95
    発行日: 1997/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    従来, 脊髄硬膜外血腫は通常外傷によるものが一般的であり, その治療法は椎弓切除および血腫除去とされてきた.しかし外傷性や動静脈奇形からの出血でない特発性の脊髄硬膜外血腫の場合, 自然治癒する症例が報告されるようになった.年齢的にも, 病変の脊髄レベルを考慮した場合, 手術侵襲は決して低いとは限らない症例も存在し, 治療の選択は慎重でなくてはならないと考えられるようにもなっている.今回われわれは68歳, 女性で突然の後頸部痛後の左上下肢麻痺を主訴とし, 第3頸椎から第6頸椎レベルにわたる頸髄左背側に脊髄硬膜外血腫が存在し, 明らかに脊髄を圧迫する所見を認めたが, 血腫の厚さは最大で7mmで, 発症後徐々に知覚, 運動障害ともに軽減傾向にあり, 手術を行わず, 十分な神経症状のモニタリングのもと, 保存的療法で自然治癒した症例を経験した.今後画像診断の進歩とともに症例の増加も予想され, 早期診断と手術治療も含め的確な対応が重要と思われた.
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