小児悪性奇形腫は原発部位だけではなくその組織型も多岐にわたり進行例も多いため, 外科療法に加え化学療法や放射線療法が併用されている.近年になり多剤併用療法を主体とした化学療法により, 治療成績は徐々に向上してきているが, 一方で多量の抗癌剤投与は副作用を強く発現し易く, 長期生存例が増えるに従って, 将来的にも様々な問題が生じる可能性がある.当教室では, yolksac carcinomaをヌードマウス腫瘍として継代し得たので, その生物学的特性を検討し, 併せて抗癌剤感受性試験を行った.原腫瘍は, 1歳4カ月女児に発生したAltman IV型の腫瘍で, 腹部CTにて仙骨前面に5×4cmの腫瘤と肝多発転移を認めた.血清AFP173, 000ng/mlと高値を示し, 生検にてyolk sac carcinomaと診断された.Openbiopsyの際に摘出した腫瘍片の一部をヌードマウスの背部皮下に移植し継代した.継代腫瘍は組織像, 血清AFPの高値, DNA ploidy patternの一致から原腫瘍の特性を継承していた.
in vitro抗癌剤感受性試験は, MTT assayを用いて5-FU, THP-ADM, CDDPの3剤について検討した.Inhibition indexは, THPADMでは5μg/m1以上の濃度で80%以上となり, CDDPでも6.25μg/mlの低濃度で80%以上となった.しかし5-FUでは60%以上となるには100μg/m1以上を必要とした.また,
in vivo感受性試験として各抗癌剤を腹腔内投与し, コントロール群との推定平均腫瘍重量比からInhibition rateを求めその効果を判定した.結果は5-FU 18.2%, THP-ADM 21.6%, CDDP 99.8%であり, CDDPで高い抑制率を示した.ヌードマウス継代腫瘍が原腫瘍の特性をよく反映していることを考慮すると,
in vitro及び
in vivo感受性試験の結果より, 本症例のyolk sac carcinomaに対しては, CDDP単剤投与でも十分な抗腫瘍効果が期待できると思われた.今後小児悪性奇形腫に対して様々な検討をしていく上で, 当教室でヒトyolk sac carcinomaをヌードマウス継代腫瘍として確立し得たことは研究モデルとして有用である.また適正な抗癌剤の選択をするにあたっても小児の長期予後を考え, 抗癌剤感受性試験を用い, 必要最小限の治療を模索する必要がある.
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