昭和医学会雑誌
Online ISSN : 2185-0976
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57 巻, 3 号
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  • ―多機能性生体防御物質―
    戸田 眞佐子, 島村 忠勝
    1997 年 57 巻 3 号 p. 175-189
    発行日: 1997/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    Tea is one of the most popular beverages in Japan. We unexpectedly found that green tea immobilized cholera vibrios within several seconds and agglutinated them. Therefore, we examined the biologic functions of tea and catechin.
    Tea and catechin possesed antibacterial and bactericidal activities against various bacteria that cause food poisoning and diarrheal and respiratory diseases and also possessed fungicidal activities against Trichophyton. Catechin damaged the lipid bilayer of bacterial cell membranes. Catechin also caused morphologic changes in T. mentagrophytes evident on scanning and transmission electron microscopy. We also found that in the presence of catechin oxacillin had antibacterial activity against methicillin resistant Staphylococcus aureus at concentrations less than its minimum inhibitory concentration. Tea and catechin also inhibited the toxic activities of Vibrio parahemolyticus thermostable direct hemolysin (Vp-TDH), S. aureus a -toxin, cholera hemolysin, and cholera toxin. They had protected against V. cholerae O1 in animal models. Tea and catechin inhibited the infectivity of both influenza virus A and B in vitro. Black tea prevented influenza virus infection in mice. Furthermore, gargling with black tea significantly inhibited influenza infection in volunteers. Catechin also had mitogenic activity on B cells.
    These findings suggest that tea and catechin might be applied as prophylactic and therapeutic agents against infectious diseases.
  • ―SCIDマウスを使用して―
    大谷 謙太
    1997 年 57 巻 3 号 p. 190-197
    発行日: 1997/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    超音波メスを表皮表面より作用させると真皮成分は温存され, 効果的に表皮成分のみを除去する事が可能である.今回, 超音波メスのこの特性を表皮内癌であるボーエン病の治療に応用できるのではないかと考えSCIDマウス (severe combined immunodeficiency mice: SCID) にボーエン病患者の病変部を移植し, 超音波メスを作用させ表皮成分 (ボーエン病の病変部) を除去した.その結果, 最長4カ月の経過観察にてボーエン病の再発は認められず, また, 超音波メスを作用させないコントロールでは, 移植後5カ月においても典型的なボーエン病の組織像を呈していた.さらに, 毛根部に対する超音波メスの作用効果をヒト正常頭皮を使用して調べ, その結果, 表皮成分は毛包狭部まで完全に除去されている事を確認した.ボーエン病は, 毛根部において基底膜は温存されるものの, 毛包漏斗部までが異形細胞に浸潤される.超音波メスの表皮破砕作用は, 毛包狭部まで及んでいるため, ボーエン病の病変部を完全に除去していることが示唆された.また, 上皮化は, 真皮内に残存した表皮成分よりおこることが示唆された.今回, 我々の試みた超音波メスによるボーエン病の治療が臨床応用されると以下のような利点が考えられる.1.手技が簡単, 2.侵襲が少ない, 3.手術時間が短い, 4.外来治療ができる, 5.術後の安静が不要である, 6.Safetymarginが自由に決められる, 7.耳介部, 鼻部 (特に, 鼻背部, 鼻翼部) , 眼瞼部など, 通常の外科的手術の行いにくい部位にも応用できる可能性がある.以上より, 高齢者に多いボーエン病の治療として, 有効な方法になりうると考えられる.
  • ―正常範囲の検討と骨髄異形成症候群 (MDS) に伴う骨髄線維化について―
    石田 憲毅, 鬼塚 淑子, 九島 巳樹
    1997 年 57 巻 3 号 p. 198-208
    発行日: 1997/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ヒト骨髄組織は細網線維のまばらな網状構造に支えられているが, 時に細網 (好銀) 線維の増加が認められることがある.病的な状態では一部の白血病, 骨髄異形成症候群 (MDS) , 慢性骨髄増殖性疾患などで骨髄線維化がみられる.今回, 骨髄線維化が原疾患の診断, 治療法の決定, 予後の推定などにどのような関係があるのか調べるために研究を行った.まず骨髄の好銀線維の量について, 剖検症例を用いて, 正常範囲の検討を行った.すなわち, 非血液疾患の剖検例から採取した骨髄組織をホルマリン固定, 脱灰操作後パラフィン包埋切片を作製し, 鍍銀染色を行った.光学顕微鏡的にその骨髄組織標本を観察し, 骨髄好銀線維の量をスコア化して半定量的に表した.その結果, 加齢により骨髄好銀線維は増加する傾向があった.また男性の方が女性より線維の量がやや多い傾向がうかがわれたが, 有意差はなかった.非血液疾患剖検例では線維化の程度はBauermeisterのscoringsystemで全例スコア2+以下, すなわち「線維化数」3以下であった.骨髄巨核数と骨髄線維化あるいは加齢との関係では, 巨核球系細胞のマーカーであるCD61の免疫染色を加えて検討したが, いずれも有意差はなかった.コラーゲンtypeIII, V, VIなどの免疫染色で骨髄組織を鍍銀染色と比較してみると, 大部分は類似の染色性を示したが, 両染色法の間にくい違いのみられる症例も少数認められた.この原因の解明は今後の研究に期待される.なおコラーゲンtypeIVとラミニンは骨髄内では血管基底膜のみに陽性であった.次に, 骨髄異形成症候群 (MDS) の剖検症例 (15例) を用いて, 同様の骨髄組織標本を作製して非血液疾患剖検例との比較を行った.鍍銀染色ではMDS症例でBauermeisterのscoring systemのスコア3+やスコア4+, われわれの線維化数で4と5を示す症例もみられた.また同年齢層の非血液疾患症例と比較して, 線維化の強い症例が多くみられた.このことは線維化を伴うMDS症例が一般に予後不良であるため, 剖検例の検索ではそのような症例が多くなるためと思われる.MDS症例でも男女差や骨髄巨核球数と骨髄線維化との関連はみられなかった.コラーゲンtypeIII, V, VIの免疫染色では非血液疾患例と同様に鍍銀染色と類似の染色性を示したが, やはり少数例で両者に多少の差がみられた.今後は生検例を用いて, 個々の症例の経過中における骨髄線維化を含めた骨髄組織の変化についても検討が必要である.
  • 細田 多穂
    1997 年 57 巻 3 号 p. 209-217
    発行日: 1997/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    下肢切断患者における和式生活では, 屋内と屋外で靴の脱着を要する習慣のため, 靴を脱ぐと義足長の変化と共に, アライメントの異常から踵部が浮く尖足位となり, 膝の不安定性を生じるなどが大きな問題であった.そこで, 靴を脱いでも, 靴を履いても義足長の変化に適応でき, 歩行時の義足のバランスと膝の安定化を向上させる, 独自のF J footを開発使用してきた.F J footの特徴は足継手を従来の位置からより前方にずらすと共に, 従来の継手位置に上下二つのゴム製バンパーを挿入したものである.今回, 下肢切断者に対して, 本F J footと従来のconventional foot, SACH footの3種類を裸足と靴ばき歩行において比較検討すると共に, 健常成人との対比からF J footの有効性を歩行周期と歩行時足底圧の動態より検証したので報告する.1) .対象は, 現在までF J footを使用した下肢切断者40症例である.性別は男性22例, 女性18例である.健常成人は男性10例とした.2) .解析方法は平地歩行時の歩行周期における各相の比率を加速度計を応用したphase meterで測定した.足底圧パターンはpressure gaugeを義足足部の踵中央部, 第一中足骨骨頭部, 第5中足骨骨頭部に相当する足底部に装着し, 圧力分布を解析した.3) .結果は (1) 歩行周期解析では, 靴ばきと裸足で比較するとconventional foot及びSACH footが, 靴ばきでは健常成人に近い割合を示したが, 裸足では, 全足底接地と立脚中期の割合が極端に減少し, 蹴りだし期が異常に増加する大きな違いを認めた.即ち, 靴ばきと裸足での変化が異常に強く現れている.しかし, F J footではこれに比し, 靴ばきと裸足の変化が有意に少なく (P<0.05) , 健常成人同様のパターンに近いことが明確に認められた. (2) 足底圧パターンでは, conventional foot, SACH footが第1中足骨骨頭部, 第5中足骨骨頭部での圧力値の立ち上がりが著しく遅れ, 特にconventional footでは靴ばき時に第5中足骨骨頭部に圧力が作用していたにも関わらず, 裸足の状態になると圧力は全く検出されず, 靴ばきと裸足での著しい変化を認めた.これに比較し, F J footでの靴ばきと裸足における変化は有意に少なく (P<0.05) , 圧力の立ち上がりや圧力分布から見て, より健常成人に近い結果が得られた.これらの結果より, F J footは裸足と靴ばき歩行の両立に極めて有効で, 和式生活での生活活動向上に十分寄与できたものと考える.
  • 川崎 恵吉
    1997 年 57 巻 3 号 p. 218-227
    発行日: 1997/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    骨形成因子 (Bone morphogenetic protein: BMP) は, 骨芽細胞の分化だけでなく筋肉や脂肪細胞などの間葉系細胞の分化過程でも重要な役割を担っていることが明らかにされつつある.また, BMPは骨芽細胞の分化を促進するだけでなく, 筋芽細胞の分化を抑制し, それらを骨芽細胞へ分化させる作用があることも報告されている.本研究では, BMPが横紋筋肉腫細胞にどのような影響をもたらすかを解析するために, 未分化なヒト横紋筋肉腫由来の培養横紋筋肉腫細胞の増殖と分化に対するrecombinant human BMP-2 (rhBMP-2) の作用を検討した.用いた細胞株はRD細胞とSCMC-MM-1細胞 (MM-1細胞) の2種類である.rhBMP-2はRD細胞の細胞増殖を抑制したが, MM-1細胞の増殖には変化を及ぼさなかった.RD細胞ではデスミンおよびミオシン陽性の筋管細胞の形成がrhBMP-2で抑制された.一方, MM-1細胞ではrhBMP-2によりデスミン陽性細胞の出現に大きな変動をもたらさなかった.また, rhBMP-2はRD細胞およびMM-1細胞におけるクレアチンキナーゼ活性を抑制した.rhBMP-2はRD細胞のアルカリフォスファターゼ (ALP) 陽性細胞数に変動をもたらさなかったが, MM-1細胞ではALP陽性細胞が増加した.また, rhBMP-2はRD細胞のALP活性には影響を及ぼさなかったが, MM-1細胞ではALP活性を促進した.さらに, rhBMP-2はMM-1細胞における上皮小体ホルモン (PTH) 応答性を上昇させたが, RD細胞のPTH応答性は促進しなかった.MM-1細胞をdiffusion chamberに挿入してヌードマウスの腹腔内に移植すると, rhBMP-2を添加した場合はchamber内にALP陽性細胞の出現が認められたが, rhBMP-2を添加しない場合にはALP陽性細胞をほとんど認められなかった.以上の結果より, rhBMP-2はある種のヒト横紋筋肉腫細胞の増殖を抑制し, それらを骨芽細胞の方向へ分化させる作用を有することが示唆された.しかし, これらの作用は各々の横紋筋肉腫脂肪によって異なる可能性も示唆されたので, さらに多くの横紋筋肉腫細胞での解析が必要であると考えられた.
  • 佐々木 和明, 内藤 延子, 中井 康光, 吉村 誠, 阪本 桂造, 藤巻 悦夫
    1997 年 57 巻 3 号 p. 228-236
    発行日: 1997/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    膝前十字靭帯では前内側線維束と後外側線維束が靭帯機能の重要な役割を担っている.しかし, 従来から, 前十字靭帯再建では, 単一束の移植腱を用いて再建にあたることが多い.そこで, 本研究において, この前・後の線維束に相当する線維束を移植腱の中に構成し, より機能的な靭帯を再建することを目的として二重束再建術を開発した.成犬膝において, 膝蓋腱を自家移植腱として用いた.移植腱は両端部を二叉にして, それぞれ2カ所ずつ大腿骨と脛骨に固定した.その際, 移植腱自体にねじりをもたせ, 最終的にX字型になるように固定することにより, 1本の移植腱に前内側・後外側線維に相当する2方向の線維束を構成した.術後経過を1, 3, 6, 12カ月で肉眼および組織学的に検索した結果, 移植腱内の2方向の線維束は順調に生着し, 成熟していることが確認された.さらに, 両端部を二叉にしたことにより, 移植腱内の血行再開が速やかに起こり, 術後1カ月で移植腱全域に血管が分布し, 線維芽細胞の旺盛な増殖が見られた.一方, 単一束移植腱を用いた対照群においては, 血管の増殖は辺縁部から中心部へと数カ月をかけて進行し, 線維芽細胞の増殖もそれに伴っていた.以上の結果から, われわれの考案した二重束再建術は, 従来の単一束再建術よりも, 機能的な前十字靭帯を再建するためにはより良好な結果が得られることが明らかになった.
  • 椛澤 由博, 角田 ゆう子, 岡松 孝男
    1997 年 57 巻 3 号 p. 237-244
    発行日: 1997/06/28
    公開日: 2010/11/19
    ジャーナル フリー
    小児悪性奇形腫は原発部位だけではなくその組織型も多岐にわたり進行例も多いため, 外科療法に加え化学療法や放射線療法が併用されている.近年になり多剤併用療法を主体とした化学療法により, 治療成績は徐々に向上してきているが, 一方で多量の抗癌剤投与は副作用を強く発現し易く, 長期生存例が増えるに従って, 将来的にも様々な問題が生じる可能性がある.当教室では, yolksac carcinomaをヌードマウス腫瘍として継代し得たので, その生物学的特性を検討し, 併せて抗癌剤感受性試験を行った.原腫瘍は, 1歳4カ月女児に発生したAltman IV型の腫瘍で, 腹部CTにて仙骨前面に5×4cmの腫瘤と肝多発転移を認めた.血清AFP173, 000ng/mlと高値を示し, 生検にてyolk sac carcinomaと診断された.Openbiopsyの際に摘出した腫瘍片の一部をヌードマウスの背部皮下に移植し継代した.継代腫瘍は組織像, 血清AFPの高値, DNA ploidy patternの一致から原腫瘍の特性を継承していた.in vitro抗癌剤感受性試験は, MTT assayを用いて5-FU, THP-ADM, CDDPの3剤について検討した.Inhibition indexは, THPADMでは5μg/m1以上の濃度で80%以上となり, CDDPでも6.25μg/mlの低濃度で80%以上となった.しかし5-FUでは60%以上となるには100μg/m1以上を必要とした.また, in vivo感受性試験として各抗癌剤を腹腔内投与し, コントロール群との推定平均腫瘍重量比からInhibition rateを求めその効果を判定した.結果は5-FU 18.2%, THP-ADM 21.6%, CDDP 99.8%であり, CDDPで高い抑制率を示した.ヌードマウス継代腫瘍が原腫瘍の特性をよく反映していることを考慮すると, in vitro及びin vivo感受性試験の結果より, 本症例のyolk sac carcinomaに対しては, CDDP単剤投与でも十分な抗腫瘍効果が期待できると思われた.今後小児悪性奇形腫に対して様々な検討をしていく上で, 当教室でヒトyolk sac carcinomaをヌードマウス継代腫瘍として確立し得たことは研究モデルとして有用である.また適正な抗癌剤の選択をするにあたっても小児の長期予後を考え, 抗癌剤感受性試験を用い, 必要最小限の治療を模索する必要がある.
  • 益山 恒夫, 鈴木 俊一, 井上 克己, 吉田 英機
    1997 年 57 巻 3 号 p. 245-251
    発行日: 1997/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    精巣腫瘍は化学療法の進歩により飛躍的に予後が改善された腫瘍である.しかし悪性度の判定が困難であり, 予防的化学療法の適応に迷うことがある.そこで今回我々は細胞増殖能を反映するとされているAgNoRsとKi-67の測定を試み, その臨床的意義について検討した.対象は1982年から1994年に昭和大学病院泌尿器科において精巣腫瘍として治療され, AgNoRsおよびKi-67を染色し得た26例である.対照として不妊症の診断のため施行した精巣生検組織のうち, 精索静脈瘤患者のJohnsen's score 8以上の病理学的異常のない精細管10例を用いた.AgNORsはパラフィン包埋標本を鍍銀染色し, 1000倍顕微鏡下に腫瘍細胞の核内染色顆粒数を計測した.Ki-67はシランコーティングしたパラフィン包埋標本をMIB-1抗体をもちいてSAB法にて染色し, 腫瘍細胞1000個の養成細胞率を算出した.AgNORsの結果は精巣腫瘍の6.70±1.50に対し対照は2.62±0.40と精巣腫瘍で有意 (p<0.001) に高かった.セミノーマに限ってもAgNORsは7.08±1.61と, 対照に対し有意差 (p<0.001) を認めた.またKi-67は精巣腫瘍の33.65±13.34%に対し対照は2.76±1.96%と精巣腫瘍で有意 (p<0.001) に高かった.セミノーマに限ってもKi-67は29.10±9.76%と有意差 (P<0.001) を認めた.Stage別ではAgNORs, Ki-67ともにstageIとIIの間で有意差を認めなかった.また, AgNORsとKi-67との間には相関を認めなかった.AgNORsやKi-67による悪性腫瘍の細胞増殖能は様々な腫瘍において検討されているが, 対照より有意に高く, 悪性度と相関するとされている.しかし, 精巣腫瘍においてAgNORsとKi-67とを同時に比較検討した報告はない.今回の我々の検討結果からAgNORsとKi-67は精巣腫瘍においても増殖マーカーとして有効であることが示唆された.増殖能の高い症例は悪性度が高く, 再発転移を起こす可能性が高いと考えられるため, AgNORsやKi-67は精巣腫瘍術後の予防的化学療法の適応の指標となり得ると考えられた.
  • 池田 和人
    1997 年 57 巻 3 号 p. 252-260
    発行日: 1997/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    免疫抑制剤ミゾリビンの作用機序を小形条虫-マウスの系を用いて検討した.AKR系雄マウスに小形条虫虫卵1000個を経口投与し (初感染) , その5日後に再度同数の虫卵を投与 (攻撃感染) した.初感染から9日目に, また攻撃感染から4日目に各マウスを殺し腸絨毛内に寄生している幼虫の有無を調べた.ミゾリビンの投与期間は, 初感染当日から4日間あるいは攻撃感染の当日から4日間で, 投与経路は経口であった.また, 初感染後のマウスにミゾリビンを経口投与し, 小形条虫虫卵抗原をマウス足蹠に皮内注射して, その肥厚を測定した.さらに, 攻撃感染と同時にマウスにミゾリビンを投与した後, 腸間膜リンパ節細胞を採取し, 同細胞の3H-チミジンの取り込みを調べた.得られた結果は以下の通りである. (1) 小形条虫虫卵の経口投与による初感染及び攻撃感染と同時にミゾリビン量を50, 100, 300, 600, 1800mg/kg (ただし1800mg/kgは600mg/kgを3回に分与) を4日間投与して9日目あるいは4日目に各マウスを殺して腸絨毛内に寄生しているシスチセルコイド数を調べたところ, 攻撃感染時にミゾリビン1800mg/kgを投与した群のマウス5例中全てに再感染が成立し, それ以外の群では初感染由来の成虫が確認されたのみで再感染は完全に阻止されていた. (2) 小形条虫虫卵1000個をマウスに経口投与した後, 7日目にミゾリビンの600mg/kg/日と1800mg/kg/日 (600mg/kgを1日3回に分与) を経口投与して, 虫卵抗原を足蹠皮内に注射し, 24時間目に両足蹠の厚さを測定して, ミゾリビンの足蹠反応の発現に及ぼす効果を調べた.1800mg/kgのミゾリビンの投与群と未感染のコントロール群の間には有意差 (p>0.05) は認められず, 足蹠の肥厚はみられなかった. (3) 攻撃感染と同時に600mg/kg/日あるいは1800mg/kg/日 (600mg/kgを3回に分与) のミゾリビンを4日間間歇的に経口投与し, 薬剤最終投与後3時間目にマウスを殺し腸間膜リンパ節細胞を採取, 同細胞への3H-チミジンの取り込みを調べたところ, ミゾリビン600mg/kg/日を4日間間歇投与した群では, 急激な取り込みの減少と回復状態の繰り返しが見られた.しかし1800mg/kg/日 (600mg/kgを1日3回) 投与した群では, 急激に取り込みが低下しその後の3日間は低いレベルがそのまま持続した.
  • 武井 貢彦
    1997 年 57 巻 3 号 p. 261-268
    発行日: 1997/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    慢性関節リウマチにおいて上位頚椎病変を合併することは少なくなく, 上位頚椎の亜脱臼による延髄及び脊髄の圧迫で急速な死の転帰をとることがある.突然死の原因として近年睡眠時無呼吸症候群 (Sleep apnea syndrome; 以下SAS) が注目されているが, RAにおけるSASの合併に関する報告は少ない.本研究では上位頚椎病変を有するRA患者に睡眠ポリグラフィー, 頚椎単純X線撮影及びMRIを施行し画像診断上の特徴よりSAS出現の危険因子を明らかにした.対象はRA患者7例で男性1例女性6例, 年齢は42歳から60歳, stage III: 5例, stageIV: 2例, class2: 1例, class3: 6例であった.1時間あたりの無呼吸回数 (apnea index) が5以上のものをSASとした.画像診断としてはatlanto-dental interva1 (ADI) , 残余脊柱管前後径 (space available for the cord; 以下SAC) , Perpendicular distance; 以下PD) , Redlund-Johnell値及rama1-height値を計測, MRIでは特に延髄腹側の状態を観察した.SASと診断された症例は3例で前方亜脱臼, 及び前方亜脱臼と垂直脱臼の合併が各1例ずつでいずれもMRIで延髄下部腹側の圧迫が認められた.また1例は顎関節破壊による2次性の小顎症を呈していた.延髄下部腹側の圧迫の認められない症例ではslee papneaは出現していなかった.前方亜脱臼を呈する患者ではSACが13mm以下, 垂直亜脱臼を呈する患者ではPDが7mm以下となり, MRI画像で肉芽などによる延髄下部, 上位頚髄の特に腹側の圧迫像が見られる場合にはSASを起こしている可能性が高かった.延髄下部腹側には呼吸リズム産生機構があることが示唆され, 亜脱臼の方向にかかわらずMRIでの延髄下部腹側の圧迫像の存在はSAS発症の危険因子と考えられた.
  • 片桐 仁
    1997 年 57 巻 3 号 p. 269-279
    発行日: 1997/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    骨折治癒過程における骨形成因子および仮骨の役割は, 先人により種々の方法で検討され, 近年明らかにされつつある.今回我々は, 骨折治癒過程における仮骨の役割と機械的刺激の影響を知る目的で, まず雑種成犬の腸骨に骨欠損を作製し, その部位に生じた3週目の仮骨を摘出して, 同犬の大腿骨に作製した横骨折内に移植した.さらに横骨折内に腸骨から採取した海綿骨を移植したモデルを作製し, 横骨折のみのものをコントロールとした.それぞれにつき骨折治癒過程を組織学的に検討した.その結果, 骨折後2週ではコントロールが他の2群より骨癒合が進んでおりwoven boneの形成がみられた.海綿骨移植群では, 未吸収の移植骨の壊死骨様骨片が認められた.仮骨移植群では移植部の細胞数の減少と血管腔の形成が認められた.骨折後4週においてはコントロールではgap内はwoven boneでみたされていた.海綿骨移植群ではwoven boneの配列がコントロールより多様である傾向がみられた.仮骨移植群では他の2群に比べwoven bone形成は遅れていた.骨折後7週において, コントロールではwoven boneは規則的に配列していた.海綿骨移植群においてもwoven boneの配列に規則性が見え, 骨折線もほぼ消失していた.仮骨移植群では移植部はwoven boneで埋まっているがまだ規則性に乏しい所見であった.次にこれらの犬の大腿骨の横骨折モデル (コントロール, 仮骨移植群, 海綿骨移植群) に対し創外固定器を用いて適度な固定を3週間行い, 固定器本体部のtelescoping mechanismを利用して軸圧負荷を加え, 骨折後7週目で組織学的に観察した.コントロール, 海綿骨移植群ともに骨折線は消失しており, 骨癒合はほぼ完成しているようにみられた.仮骨移植群でも骨梁の骨長軸方向への配列が見え始めていた.以上の結果より, 1) 骨折治癒過程の進展は2週では, コントロール, 海綿骨移植, 仮骨移植の順に優位であるが, 4週以後ではコントロールと海綿骨移植はほぼ類似の経過であった.2) 骨癒合促進には骨形成因子そのものより血管進入によるものの影響が強いものと示唆された.3) 仮骨は軟骨形成能も骨形成能も有しており, 環境因子により大きく影響を受ける.適度な固定ならびに軸圧刺激により骨形成能が促進され, 間欠的軸圧刺激 (dynamization) は通常の骨折治癒過程, 海綿骨移植の場合と同様に骨成熟を促進させることが観察された.
  • 小橋川 啓, 渡辺 政信, 吉田 英機, 本郷 茂樹, 竹田 稔
    1997 年 57 巻 3 号 p. 280-286
    発行日: 1997/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ラットのセルトリ細胞におけるインスリン受容体基質 (Insulin receptor substrate-1: 以下IRS-1とする) およびPhosphatidyl inositol 3-kinase (以下PI3-キナーゼとする) を介したインスリンの細胞内シグナル伝達機構について検討した.まず, ラットセルトリ細胞にインスリン受容体が存在しているのか検証を行なうべく, 生後20日齢のWistarラットの精巣より分離調整した初代培養セルトリ細胞を用い, その培養液中に糖とインスリンを添加後インキュベーションを行ない, 抗リン酸化チロシン抗体を用いたウェスタンブロッティング法でチロシンリン酸化を受ける細胞内タンパク質を検討した.この結果170kDa, 97kDa部に集積像を認め分子量からIRS-1およびインスリン受容体β-subunitと考えられた.次にインスリン受容体後の細胞内シグナル伝達系において, IRS-1と結合する細胞内タンパク質, すなわちPI3-キナーゼの作用が重要であると仮定し, PI3-キナーゼの阻害作用を有するwortmanninを用いてインスリン効果による細胞内への糖の取り込み制御反応およびDNA合成抑制反応について検討した.この実験では, 生後13日齢ラットの初代培養セルトリ細胞を用いた.また細胞内への糖の取り込み量は14Cで標識した3-O- [methyl14C] -D-glucoseを用い, DNA合成は3Hで標識した [methyl-3H] thymidineを用いてそれぞれの放射活性を測定した.結果はインスリン効果により, セルトリ細胞内への取り込まれる糖およびチミジンの量は増加するのに対して, wortmannin添加処理後の細胞では, このインスリン効果は抑制され, 糖およびチミジンの有意な取り込み抑制を認めた.以上から, われわれはラットの初代培養セルトリ細胞においてインスリン受容体後にIRS-1, PI3-キナーゼを介する細胞内シグナル伝達機構が存在していると推察した.
  • 武本 雅治, 雨宮 雷太, 藤巻 悦夫, 瀧川 宗一郎
    1997 年 57 巻 3 号 p. 287-292
    発行日: 1997/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    過去4年半に当院並びに関連病院にて加療した手指末節骨骨折290例309骨折に対し, カルテおよびX線写真をもとに受傷原因, 受傷時の骨折の状態, 骨折部位, 骨折型, 治療方法, 骨癒合状態, 治療期間, 機能障害などを調査して末節骨骨折の今後の治療方針について検討した.男性253例, 女性37例で男性に多く, 労働災害による受傷が大きな割合を占めた.骨癒合不全症例は44例を数え17骨折に対して骨接合術を行ったが骨癒合不全症例には骨折部位や骨折型また初期治療方法にそれぞれ特徴を認めた.末節骨骨折は案外, 医療側も患者側も軽い骨折と考えがちだが, 小骨折にも関わらず高度な損傷が多く, かつ骨折面の接触面積が小さい等の原因により治療に難渋する症例もありその治療は慎重であるべきであり, 骨折部位や骨折型等を考えた初期治療が重要であると思われた.
  • 内川 友義, 筒井 廣明, 三原 研一, 保刈 成, 鈴木 一秀, 上里 元, 大島 和, 菅 直樹, 牧内 大輔, 松久 孝行, 山口 光 ...
    1997 年 57 巻 3 号 p. 293-297
    発行日: 1997/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    筋力測定機KIN-COM 500Hを用い, 肩関節に既往のない健常成人10例 (男性5例5関節, 女性5例5関節) 計10例10関節について肩関節外旋運動筋力評価を行い, 肢位条件の変化により得られる結果について検討した. (1) 第1肢位および第2肢位でのFORCEの平均値, (2) トルクの3回のそれぞれの値と平均値, (3) 同一被験者で3回測定施行したデータの解析, (4) 連続18回運動, (5) 角速度の変化, (6) 肩甲骨を固定した場合としない場合との比較, (7) 個々の被験者における, 日常測定時に見落としやすいチェックポイントの7項目についての結果を, トルク測定装置を用いる場合の基本的な変動要因 (1) 機器の特性, (2) 測定方法による要因, (3) 被測定者における変動要因の3つに分けて考察した.肩関節が各運動ともshoulder complexとしての運動であることを考慮すると, 筋力測定機器は肩関節の単一筋の筋力測定目的には使用できず, 同機器を用いて肩関節の筋力評価を行う場合, 測定肢位や測定時の固定などを厳密に規定することは当然であるがそれでも再現性については疑問が残る.
  • 野中 誠, 門倉 光隆, 谷尾 昇, 山本 滋, 片岡 大輔, 大竹 普, 森 貴信, 井上 恒一, 高場 利博
    1997 年 57 巻 3 号 p. 298-301
    発行日: 1997/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    感染を伴った気胸の治療方針を検討した.過去7年間に経験した気胸症例のうち, ドレナージにて軽快せず, 患側に急性膿胸や肺化膿症を併発し, 抗生剤にて軽快しないために当科を紹介された6例を対象とした.1例には保存的療法を, 5例には外科治療を行った.保存的療法を選択した1例は, 真菌感染を併発したために抗菌剤投与を優先し, 軽快した.外科治療を選択した5例のうち2例は難治性肺瘻と限局性肺化膿巣, 他の2例は難治性肺瘻と急性膿胸の処置を行った.残る1例は薬剤性肝機能障害があり, 十分な抗生剤治療が行い得なかった症例であった.難治性気胸に対しては感染を併発する以前に外科治療を行うべきと考えるが, 感染を伴った場合には, 感染が治まった慢性期に肺瘻や拡張障害に対して手術を施行するのが安全と思われた.しかし, 抗生剤が無効であったり薬剤障害により感染を制禦できない症例では, やむなく急性期に手術を行う場面も存在する.
  • 種市 靖行
    1997 年 57 巻 3 号 p. 302-306
    発行日: 1997/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    大腿骨穎上遠位骨幹部骨折に対して, 逆行性髄内釘を施行した15例について検討したので報告する.骨折型はAO分類にて分類し, Neerの評価表を用い評価した.またXP計測として, 正側でのangulationについて計測し検討した.AO分類では33.A.14例33.A.23例33.A.32例33.C.21例33.C.32例32.B.22例32.C.21例で, 開放骨折は2例であり同側の脛骨高原骨折を伴っていた例が2例あった.Neerの評価表で, excellent: 5例satisfactory: 5例unsatisfactory: 1例failure: 2例廃用肢のため評価対象外となっているものが2例であった.failureの2例は多発外傷のため早期の可動域訓練の不可能であったものと, Nai1の折損を生じたものである.後方凸変形は0~10度, 平均2.7度であった.大腿骨軸傾斜角は76~90度平均83.7度であった.遠位骨幹部骨折では, 解剖学的整復位が得られ易い.穎上骨折では, ガイドピンの刺入方向によって整復がある程度決定してしまうことが予想された.また骨幹部・穎上部が高度に粉砕された場合は, 短縮に注意して横止めが必要である.可動域の面では同側の脛骨高原骨折を合併した場合は, 不利であると思われた.Nailの折損を生じたものは, 骨折線上に横止めの穴があり, そこに応力が加わり生じたものと思われた.
  • 小川 大介, 雨宮 雷太, 藤巻 悦夫
    1997 年 57 巻 3 号 p. 307-310
    発行日: 1997/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    胸骨に発生した内軟骨腫の一例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告した.症例は28歳女性, 1992年1月より前胸部腫瘤に気付くが放置, 翌年1月に前胸部痛が出現したため, 当科を受診した.単純X線撮影, CT, MRIより原発性胸骨骨腫瘍が疑われ, 生検の結果, 内軟骨腫と診断し, 手術を施行.胸骨膨隆部を中心に開窓, 掻爬, 自家骨とハイドロキシアパタイトを充填した.摘出標本でも内軟骨腫の病理診断であり, 術後経過も良好である.病理組織学的には, 内軟骨腫と, 分化型軟骨肉腫との鑑別は, 非常に難しいとされ, 画像診断や手術所見を加えて総合的に判定する必要がある.
  • 柏瀬 立尚, 門倉 光隆, 谷尾 昇, 野中 誠, 山本 滋, 片岡 大輔, 浅野 満, 小沢 敦, 饗場 正宏, 村田 升, 村上 厚文, ...
    1997 年 57 巻 3 号 p. 311-314
    発行日: 1997/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
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