目的; 最近胃癌と
Helicobatter pylori (H.pylori) 感染との関連が注目されている.今回我々は
H.pylori感染及び食生活習慣の胃癌発生との関連を疫学的に検討するためにnestedcase-control studyの手法を用いて研究を行った.研究方法; 東京都内の某健保組合に所属している40歳以上の男性5768名について, 1988年7~9月に生活習慣調査を実施し, その内849名については血清を採取して凍結保存し, 以後悪性新生物発生状況を追跡している.その中から胃癌が発生したもの15名と, 胃癌を含む悪性新生物の発生が確認されておらず, 胃癌発生例と同年齢の者2名づつの30名, 合計45名を観察対象とした.これらについて
H.pylori抗体 (
HP抗体) , ペプシノゲン (PG) I, PGII, PGI/IIを測定し, 分析検討した.結果; 1.全体の
HP抗体陽性率は64.4%であった.胃癌症例群では陽性率は80.0%, 対照群では56.7%であった (オッズ比3.06; 95%信頼区間0.72-13.0) .2.PGI/IIは胃癌症例群では2.13, 対照群では3.75であり, 有意差が認められた (P<0.05) .3.食生活習慣では胃癌症例群は対照群に比較して, コーヒーを飲む回数が有意に多かった.4.多変量解析の結果, PGI/IIが胃癌発生に対して最も強い影響を与えていた (オッズ比11.2; 95%信頼区間2.13-59.3) .結論; 胃癌発生に
H.pylori感染単独でも影響を与えるが, PGI/II低下の影響が大きく, また食生活習慣でも, 胃癌発生に影響があることが示唆された.
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