昭和大学病院での最近の臨床分離菌の動向を, 1997年12月1日から12月3日に臨床分離された272株の検体と1998年4月13日から4月15日に分離された213株の検体を合計して集計処理を行い, 1990年7月から1992年6月時との比較解析を行った.
検出菌は1990~92年と同様
Staphylococcusaureus, Pseudomonas aeruginosaが多く, 常在菌や自然環境に分布する菌も多く分離された.最も多く分離されたのは
S.aureusの110株であり, この64%はmethicillin-resistant
Staphylococcus aureus (MRSA) であり, この頻度は1990~92年と同等であった.一方
P. aeruginosaは81株検出されたが, 13薬剤中9薬剤以上の多剤耐性を示した株は6%と減少していた.また, coagulase-negative staphylococci (CNS) は耐性菌が増加し,
Streptococcus agalactiaeはβ-1actam薬の感受性が高く,
Enterococcus属は, セフェム系, アミノグリコシド系, CLDM, STに対し自然耐性であり,
Enterococcus faecalisはペニシリン系, カルバペネム系, VCMに対しては1990~92年同様感受性であったが, ニューキノロン系の耐性株は増加した.
Enterococcus faeciumは,
E.faecalisに比べ耐性株が多く, ペニシリン系, カルバペネム系, マクロライド系, ニューキノロン系にも感受性は低かった.
Stenotrophomonas maltophiliaは, β-lactam薬の多くに自然耐性であり,
Escherichia coliは, ほとんどの抗菌薬に感受性であった.腸内細菌の
Citrobacter freundiiと
Enterobacter cloacaeは, 同様の耐性化機序を持ち, 第一, 第二世代セフェム, ペニシリン系薬剤に対して, 多くの耐性菌を認めた.
Klebsiella pneumoniaeは, ペニシリンに対し自然耐性であり, 他の抗菌薬には感受性であった.
Serratia marcescensは第一, 第二世代セフェム, ペニシリン系の多くに耐性であり, 第三世代セフェム, カルバペネム系, アミノグリコシド系, ニューキノロン系が有効だった.
K.pneumoniaeと
S.marcescensには, extended-spectrum β-lactamase (ESBL) 産生を疑う株を認めた.感受性パターンは各菌ごとに特徴的であり, MRSAやmethicillin-resistant CNS (MRCNS) , 多剤耐性
P.aeruginosa, ESBL産生腸内細菌など多様な耐性菌が多数出現しており, 起因菌に対する適切な抗菌薬の選択に加え, 弱毒菌や常在菌の混合感染による抗菌薬使用後の菌交代症も考慮した治療を行う必要があろう.
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