雑種成犬を対象に, プロポフォールと亜酸化窒素により麻酔の維持を行い, その際の呼吸・循環動態, 臓器血流量および組織酸素分圧などの推移について検討した.麻酔導入後, 循環諸量測定用カテーテルを挿入し, 臓器血流量は肝臓 (LBF) , 膵臓 (PBF) , 腎臓皮質 (RCBF) , 腎臓髄質 (RMBF) などの4カ所で, 組織酸素分圧の測定は肝臓 (P
LO
2) と腎臓 (P
RO
2) の2点とした.実験準備が終了してから60分以上が経過し, その上呼吸・循環動態が安定した時点において, 各パラメータの測定を行い, 対照値 (S
0) とした.対照値採取後, プロポフォール単独投与群 (A群) , 亜酸化窒素併用群 (B群) では吸入ガスに亜酸化窒素を用い, 吸入酸素濃度をA群と同様に40%とした.A群, B群のそれぞれにプロポフォール3mg・kg
-1・h
-1 (S
3) を持続投与し, 45分後に2回目の測定を行った.次いでプロポフォールの投与量を5mg・kg
-1・h
-1さらに10mg・kg
-1・h
-1と増加させ, それぞれ投与量変更後45分 (S
5, S
10) に測定を行った.亜酸化窒素併用群 (B群) ではS10においてmAP, CI, LVdp/dt max, LBF, RCBF, RMBF, P
LO
2, P
RO
2はプロポフォール単独投与群 (A群) に比して有意に減少した.またB群でPBFはS
5とS
10においてA群に比して有意に減少した.以上の結果より, プロポフォールで麻酔を維持し, 鎮痛を目的として亜酸化窒素を用いる場合は, 循環抑制作用の発現を回避するためプロポフォールの投与量は5mg・kg
-1・h
-1までにすべきと思われる.
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