絶食状態にすることにより, 過酸化脂質 (LPO) と一酸化窒素 (NO) の形成を誘発し, それに対する8種の漢方薬 (小柴胡湯, 大柴胡湯, 黄連解毒湯, 三物黄〓湯, 十全大補湯, 帰脾湯, 当帰芍薬散, 釣藤散) の影響を検討した.実験動物は6週齢のCDF
1雄性マウスを用い, 絶食ストレスにより誘発したLPOとスーパーオキシドジスムターゼ (SOD) , グルタチオンペルオキシダーゼ (GSH-Px) 活性およびNOの変化を測定した.絶食2日後に各臓器を摘出し, LPO, SOD, GSH-Px, NOの測定を行い, 漢方薬は絶食状態の2日前から絶食1日後までの4日間, 1日1回経口で投与した.絶食による肝臓のLPOの増加は大柴胡湯, 黄連解毒湯, 三物黄〓湯, 十全大補湯, 帰脾湯, 釣藤散の投与で抑制された.腎臓と脳のLPOの増加は8種類すべての漢方薬で抑制を認め, 心臓のLPOは釣藤散を除く, 7種類の漢方薬で減少した.漢方薬によるラジカル消去系酵素であるSODとGSH-Px活性に対する影響を認めなかったことから, これらの漢方薬のLPO抑制作用は含有する抗酸化物質の直接的な抗酸化作用であると考えられた.漢方薬による各臓器のNO量の変化は相違していたが, 大柴胡湯, 三物黄〓湯, 十全大補湯, 帰脾湯, 当帰有薬散, 釣藤散ではLPO増加の抑制と同様のNO増加の抑制を認めた.以上より, 今回使用した8種類の漢方薬に関して, その抗酸化作用が作用機序に関与していることが示唆された.
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