関節リウマチ (RA) は多発性の関節痛と関節腫脹を主症状とする原因不明の破壊性, 進行性の炎症性関節疾患である.その特徴は滑膜の炎症に始まり, 関節軟骨, 骨破壊に至る過程であり, 関節構成体の破壊, 修復の活動性を関節液や血清などを測定することによって評価する手法が関節マーカーである.今回我々は第一段階として各種疾患における関節液中のマトリックス成分関連関節マーカーを分析し, 次いで個々のRA症例における関節マーカーと滑膜組織中のMMPs陽性細胞数, 滑膜の組織学的評価指数を測定した.採取した関節液をMorgan-Elson法によりビアルロン酸 (HA) , HPLC法によりコンドロイチン4硫酸 (C4S) および6硫酸 (C6S) , EIA法によりpCOL II-C (コンドロカルシン) , ケラタン硫酸 (KS) を測定した.また血清をEIA法によりKSを測定した.全人工膝関節置換術もしくは関節鏡視下滑膜切除術の際に滑膜組織を採取し, 滑膜にはH-E染色とABC法での免疫組織化学染色 (IHC) を施し, 発現したMMPs (MMP-1, 3, 8, 9, ) 陽性細胞の計測を行った.滑膜の組織学的評価指数としてRooneyらの方法により6項目 (Synoviocyte hyperplasia, Fibrosis, Proliferating blood vessels, Perivascular infiltrates of lymphocytes, Focal aggregates of lymphocytes, Diffuse infiltrates of lymphocytes) からFibrosisのパラメターを除いたスコアを用いて炎症スコアとした.変形性膝関節症 (OA) 関節液ではHA, C4S, C6S/C4S, C6S/HA, RA関節液ではHA, C4S, C6S, C6S/C4Sで健常者と比較し有意差を認めた.HA濃度が低下を示したのは滑膜組織からの産生低下, 関節液の貯留などが考えられる.またC4Sが高値であることは滑膜細胞でC4S産生が亢進したため, あるいは血液成分の滲出からの増加によるものが考えられた.H-E染色では, RA滑膜は絨毛状に増殖し, 表層細胞は多層化していた.その下層には好中球, マクロファージ, リンパ球がびまん性に浸潤し, 胚中心を有するリンパ濾胞を認めた.さらに, 血管増生や線維芽細胞の増殖などの肉芽組織像を認めた.IHCではMMP-1, 3陽性細胞は滑膜表層に多く, MMP-8, 9陽性細胞は表層かう深層まで全層に認められた.特にMMP-8は好中球からの発現が多く, MMP-9は肉芽組織での好中球, 単球系細胞および破骨細胞に発現が多く認められた.MMPs (MMP-1, 3, 8, 9) と炎症スコアはOAとRA間で有意差を認めた.このことはリウマチ性関節炎では軟骨破壊が優勢であるのに対し変形性関節症は軟骨破壊と再生が同時に観察されることが関与していると考えられる.RAおいてMMP-3は滑膜炎の反映であると可能性が高いと考えられているが, HAとの相関は認めなかった.このことはHAが必ずしも炎症を示す関節マーカーではないことが示唆された.MMPsはすべての間で有意な相関を認め, MMP-1, 3, 9では炎症スコアとも有意な相関を認めた.MMPsは互いに調和し, RA関節の破壊に強く関与していることが示唆された.
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