昭和医学会雑誌
Online ISSN : 2185-0976
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70 巻, 1 号
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特集:最近の糖尿病薬物治療の進歩 ―糖尿病治療の目指すもの―
最終講義
特別講演
  • 小林 和夫
    2010 年70 巻1 号 p. 70-73
    発行日: 2010/02/28
    公開日: 2011/05/27
    ジャーナル フリー
    現代においても,感染症は人類に甚大な健康被害を提供している.最近まで,日本を含めた先進諸国では感染症を解決された過去の疾患と錯覚し,その対策を怠ってきた.しかし,都市化による過密,人口の集中,貧困,交通機関の発達による人民の高速移動,国際化,環境破壊や温暖化など,現代社会の直面している状況が感染症の増加に関与している.感染症は病原体と宿主の生存戦争である.再興病原体は抗微生物薬に耐性を獲得し,また,新興病原体は人類に新たな脅威を提供している.加えて,感染症の人為的・意図的脅威として,炭疽菌による生物テロリズムが発生した.宿主側の要因として,感染抵抗力の減弱(人口の老齢化,免疫抑制薬/臓器移植や免疫疾患)が易感染性を惹起している.本講演では,感染症の現状や制圧戦略について,概説する.
教育講演
原著
  • 野田 真喜, 保阪 善昭, 宇田川 晃一, 鈴木 啓之, 倉林 仁美
    2010 年70 巻1 号 p. 82-89
    発行日: 2010/02/28
    公開日: 2011/05/27
    ジャーナル フリー
    口蓋裂手術の予後を決定するものとして多くの因子が関与しており,元々の顎裂の重症度もその一因子と考えられる.そこで今回われわれは,上顎歯槽模型による両側唇顎口蓋裂児の顎裂幅の程度と上顎歯槽弓形態の成長変化の関連性についてに比較検討を行った.対象は当院で治療を行った両側唇顎口蓋裂患者のうち,口蓋形成術前,乳歯列期に適切な上顎歯槽模型を採取し得た患者10例とした.左右の顎裂幅の合計が,10mm以下の群(A群)5例と10mm以上の群(B群)5例に分けて比較検討を行った.口蓋形成術前ではB群はA群に比較して,前方歯槽幅は有意に小さく,後方歯槽幅径,前後径,前方部前後径は明らかな差は認めなかったが,乳歯列期では,両群間のすべての項目において明らかな差を認めないという結果となった.今回のわれわれの研究からは,顎裂幅の程度による上顎歯槽弓の成長変化に与える影響は少ないと考えられた.
  • ―言語課題と被験者実演課題の比較―
    小林 仁美, 関 啓子, 三村 將
    2010 年70 巻1 号 p. 90-96
    発行日: 2010/02/28
    公開日: 2011/05/27
    ジャーナル フリー
    被験者実演課題(Subject-performed tasks:以下SPT)は記銘学習の際,実物を用いた実演を通じて記憶する方略で,言語だけで記銘する言語課題(Verbal-tasks:以下VT)よりも再生レベルが高いとされている.これらは被験者実演効果(以下SPT効果)と呼ばれている.このSPT効果の理由としては,実演の際,視覚や聴覚,運動感覚,触覚など複数のモダリティーを用いて符合化することが有効であるという説や,運動プログラムなどの構成要素に効果が起因する説など,いくつかの説が提出されているが,その詳細な脳内基盤は明らかとなっていない.そこで本研究では,SPT効果のメカニズムを検討する目的で,学習時にVT条件とSPT条件で記銘し,fMRIを用いて再認時の各条件における脳内賦活部位を撮像し,比較検討を行った.functional MRI(fMRI)撮像には1.5T GE SIGNA MRIを用い,撮像条件はvoxel size 4.7×4.7×5.5,TR=3sec,TE=60msec,EPI BOLD法とした.被験者は右利き健常者8名(平均年齢59.4歳)であった.まず,行為文の学習をVT条件 (文字・音声呈示),SPT条件 (文字・音声呈示+物品+被験者の実演)の2条件で実施した.その後20分の休止をおき,記銘した行為文と同数のディストラクターを含む行為文の再認をfMRI (Event-design) 撮像下で実施した.行動指標では,VT条件よりSPT条件で再認正答率が高かった.fMRIにおいては,VT条件での再認では,両半球ともに有意な賦活が認められなかったにもかかわらず,SPT条件では,左右補足運動野および左の中心前回,中心後回で顕著な賦活が認められた.さらにSPT-VT条件では補足運動野に加えて縁上回での賦活も認められた.左右の運動野に賦活が認められたことから,SPT条件の再認の検索時に運動の再現が行われた可能性が示唆された.また,VT条件では認められなかった縁上回での賦活については,SPT条件での学習の際,被験者自身の行為の実演によって,運動覚を介して得られた視覚,触覚,物品に関する情報,さらに空間感覚および体性感覚情報などの多感覚から受容した複数のモダリティー情報が縁上回で統合され,再認時の検索に効果的に作用したことが,SPT効果に結びついたと考えられた.
症例報告
  • 乳井 美樹, 瀧本 雅文, 梅村 宜弘, 太田 秀一, 奥田 健太郎, 廣瀬 敬, 足立 満
    2010 年70 巻1 号 p. 97-104
    発行日: 2010/02/28
    公開日: 2011/05/27
    ジャーナル フリー
    症例は35歳の男性で,感冒様症状(咳嗽・微熱)と背部痛を主訴として来院した.胸部X線およびCT検査にて右上肺野に浸潤像を認め,経気管支的肺生検およびCT下肺生検による病理組織検査では,核異型の強い短紡錘形細胞の密な増殖像を示した.免疫組織化学的染色にて非上皮性腫瘍であることのほか特徴的な染色性を示さず,未熟な非上皮性悪性腫瘍(紡錘形細胞肉腫)と診断した.肺肉腫として放射線療法が施行され一時腫瘍縮小効果を得たが再増悪を来した.化学療法が施行されるも腫瘍縮小効果はなく,腫瘍の増大による呼吸床減少と心膜転移および心嚢液貯留による心タンポナーデの併発により,約1年9か月の経過で死亡し,剖検が実施された.剖検材料による腫瘍組織の遺伝子検査でSYT-SSXキメラ遺伝子の発現が証明され,滑膜肉腫(synovial sarcoma)と確定診断した.
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