昭和医学会雑誌
Online ISSN : 2185-0976
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71 巻, 2 号
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特集:近年の原発性肺がんに対する診断と治療
最終講義
原著
  • 久保 哲也, 石川 慎太郎, 藤原 博士, 三村 直巳, 砂川 正隆, 佐藤 孝雄, 久光 正
    2011 年 71 巻 2 号 p. 167-174
    発行日: 2011/04/28
    公開日: 2011/11/18
    ジャーナル フリー
    生体における血液流動性の低下は,心臓血管系疾患の重要な誘因の1つである.環境の変化に対して,自律神経系や内分泌系を通じて,末梢血管抵抗や心機能を変動させて,循環系は調節される.また生体へのさまざまな刺激は血小板凝集能,白血球粘着性,赤血球変形能などの性質を変化させる.例えば,生体へのストレス負荷は血小板凝集能を高め,血液流動性を低下させる.運動をおこなう際には,心臓血管系が活性化されることは周知であるが,血液流動性の変動に関する報告は散見に乏しい.そこで今回,強度の違う走運動の負荷が血液流動性に与える影響について検討した.約150gのウィスター系雄ラットを用いた.走運動は,ラット用トレッドミルを用い,約75分間,5~10m/分の低速(低強度)群と5~25m/分の高速(高強度)群の負荷を与えた.また対照群は実験群と同時間,餌と水の摂取を制限した状態で静置した.運動直後,ペントバルビタール麻酔下で開腹し,下大静脈より採血した.血液サンプルは,ヘパリンナトリウム,EDTA-2K,クエン酸ナトリウムで凝固を阻止し,各検査に用いた.血液流動性の検査には,Micro Channel Array Flow Analyzer(MC-FAN)を,血小板のADPに対する反応性の検査には,血小板凝集能測定装置(PA-20)を用いた.また血漿中の血糖値,コルチコステロンおよび乳酸値を測定した.ストレスの指標となるコルチコステロンは,対照群に比べ,高速群は有意に増加(P < 0.05)し,低速群では有意な差は認められなかった.MC-FANにおける血液通過時間は,高速群では対照群に比べ有意な増加(P < 0.05)を示し,流動性の低下がみられた.血小板凝集能についても高速群では凝集の指標となる大きな凝集塊形成が増加(P < 0.05)し,凝集能が亢進した.また,低速群では,高速群とほぼ同量の水分喪失が生じたにもかかわらず,血液流動性および血小板凝集能には,対照群との間に有意な差は認められなかった.これらのことから強い強度の運動では,血小板凝集能を亢進することで血液流動性を悪化させる可能性が示された.健康分野やリハビリテーション分野に用いられている運動指導プログラム作成に寄与することが期待される.
症例報告
  • 蒔田 勝見, 緑川 武正, 八木 秀文, 相田 邦俊, 坂本 道男, 横山 輝和, 奥之薗 輝也
    2011 年 71 巻 2 号 p. 175-180
    発行日: 2011/04/28
    公開日: 2011/11/18
    ジャーナル フリー
    Multidetector CT(以下,MDCT)にて出血部位を診断し得た小腸出血の1手術例を経験したので報告する.症例は85歳の男性.下血を主訴に緊急入院となった.輸血等,保存的治療を行うも循環動態は不安定となった.上下部消化管内視鏡検査で出血部位を同定できなかったが,2回目のMDCTにて小腸出血部とその責任血管を同定し得たので小腸出血と診断し,緊急手術を施行した.手術所見では回盲部より70cm口側回腸に動脈性出血部位を認め,小腸部分切除を行った.病理検査ではAngiodysplasia(以下,AGD)と診断された.本例の如く小腸出血の診断にMDCTが有用であった報告は本邦6例のみであるが,320列MDCTによる鮮明な術前画像診断による報告はみられない.今後,診断機器,画像処理の進歩に伴いより確実な検査になり得ると思われる.
  • 伊藤 亮太, 関原 力, 相楽 光利, 小原 周, 渥美 敬, 扇谷 浩文
    2011 年 71 巻 2 号 p. 181-186
    発行日: 2011/04/28
    公開日: 2011/11/18
    ジャーナル フリー
    症例は3か月女児,左下肢を動かさない事で近医受診後,精査目的で来院した.血液検査では軽度の炎症反応を認めた.単純股関節レントゲンでは左大腿骨近位骨幹端に骨吸収像と不整像を認めた.超音波で左股関節裂隙の開大を認め関節液の貯留を疑った.MRIでは左股関節内,周囲の軟部組織,骨幹端に周囲組織の炎症浸潤,骨髄浮腫または膿貯留を疑わせ,骨頭内の一部はモザイク状の所見を認め骨髄炎を疑わせた.関節穿刺液とdebrisの培養検査では陰性であったが臨床的に骨髄炎型化膿性股関節炎と診断し,鏡視下洗浄およびデブリードマンおよび抗菌薬投与にて良好な経過をたどった.骨髄炎型に対し鏡視下治療を行った報告はなく,貴重な1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.
  • 長谷部 寛子
    2011 年 71 巻 2 号 p. 187-191
    発行日: 2011/04/28
    公開日: 2011/11/18
    ジャーナル フリー
    近年交通事故による外傷性股関節脱臼は稀ではないが,スポーツ中の受傷は少なく,骨頭骨折の合併はさらに稀である.われわれはバスケットボールプレー中受傷した症例を経験したので報告する.症例は27歳男性,バスケットボールプレー中転倒し受傷.単純X線およびCT検査で骨頭骨折を伴う股関節後方脱臼と診断,同日全身麻酔下で徒手整復した.後日,骨頭骨片の脱転を認め,観血的整復固定術を試行.術後1年で股関節の違和感はあるが,スポーツ活動に問題はなく,画像上大腿骨頭壊死は認めない.受傷機転は転倒時に強いshearing forceが骨頭にかかったためと思われるが,その理由は不明である.現在大腿骨頭壊死は発生していないが,治療経過で整復後の骨片の評価が遅くなったことが反省点である.
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