昭和医学会雑誌
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72 巻, 1 号
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特集:災害拠点病院として昭和大学病院の果たすべき役割
特別講演
教育講演
図説
原著
  • 齋藤 悠, 砂川 正隆, 岩波 弘明, 五味 範浩, 貴島 健, 齊藤 洋幸, 須賀 大樹, 福島 正也, 渡邊 一惠, 久光 正, 谷川 ...
    2012 年 72 巻 1 号 p. 100-107
    発行日: 2012/02/28
    公開日: 2012/12/14
    ジャーナル フリー
    Parkinson病(以下PD)は,錐体外路症状を呈する神経変性疾患であるが,自律神経症状を主とする非運動性症状も併発することが多く,特に便秘は高率に発症する.しかし,PDにおける便秘の発症機序は明らかにされておらず,治療法も確立されていない.
    腸管運動は外来性の自律神経と内在性の腸管内神経叢(enteric nervous system: 以下ENS),ならび神経叢と平滑筋との間に位置するカハールの介在細胞によって調節されているが,我々はENSのドパミン神経系に着目し,PDモデルラットにおける便秘への関与を検討してきた.ドパミンは,ドパミンレセプターのうちD2レセプター(以下D2R)を介して,腸管運動に抑制的に作用することが知られているが,PDモデルラットの大腸腸管は,ドパミンに対する感受性が亢進し,これは腸管壁のD2R数の増加による可能性について既に報告している.
    しかし,腸管における各種神経細胞の分布は,消化管の部位によって異なることが報告されている.そこで本研究では,PDモデルラットの小腸腸管のドパミンに対する感受性を検討し,更にD2Rの拮抗薬であるdomperidoneのPDモデルラットの便秘に対する有効性を検討した.
    PDモデルラットは,雄性Wistar系ラットを用いて,6-Hydroxydopamine hydrobromideを用い,片側黒質―線条体ドパミン神経を選択的に障害することで作製した.Krebs液中で,摘出した小腸の腸管運動を記録しながら,ドパミン受容体作動薬であるapomorphineを投与したところ,PDモデルラットの腸管の収縮運動は対照動物のそれに比べ有意に長時間抑制された.次にPDモデルラットにdomperidoneを投与したところ,小腸腸管の輸送能の低下が改善されるとともに,投与前に比べ排便量が有意に増加した.以上の結果から,PDモデルラットの便秘には,腸管のD2Rの異常が関与しており,D2Rの拮抗薬が便秘症状改善には有効であることが示唆された.
  • 梅村 宜弘, 本間 まゆみ, 塩沢 英輔, 矢持 淑子, 瀧本 雅文, 太田 秀一
    2012 年 72 巻 1 号 p. 108-117
    発行日: 2012/02/28
    公開日: 2012/12/14
    ジャーナル フリー
    Diffuse large B-cell lymphoma(DLBCL)は,悪性リンパ腫において最も多い組織亜型で,臨床的および腫瘍生物学的にきわめて多彩な腫瘍であり,さまざまな予後因子や予後予測モデルが提唱されている.DLBCLは,通常Ki-67陽性率が40%以上と高く,高悪性度リンパ腫とされている.Ki-67は細胞増殖マーカーのひとつで,多くの腫瘍において悪性度や予後とよく相関することが知られている.細胞周期の進行は,ユビキチン―プロテアソーム経路によるタンパク質分解により調節されている.Skp2は主にp27などの細胞周期の抑制分子を標的としてユビキチン化を行うタンパク質で,Skp2の過剰発現は細胞周期回転を促進し,腫瘍の発生や増殖速度と関連があるとされている.今回われわれは,DLBCLにおける細胞周期関連タンパク質の発現を免疫組織化学的に検討し,subtypeとの関連や臨床病理学的特徴を解析した.対象は,昭和大学病院で診断されたDLBCL 33例で,男性17例,女性16例,年齢は47歳~93歳で,年齢中央値は76歳であった.33例をCD10,MUM1,Bcl-6の免疫組織化学的染色を用いたアルゴリズムにより,germinal centre B-cell like(GCB)typeとnon-germinal centre B-cell like(non-GCB)typeに亜分類した.また,Skp2,p27,Ki-67の免疫組織化学的染色を行い,それぞれ低倍率視野で陽性率の最も高い部分を求め,高倍率(対物40倍)で3回カウントし,1視野同一面積あたりの腫瘍細胞全体における陽性細胞数の割合を算出した.DLBCL 33例において,Skp2高発現(50%以上)例は10/33例(30%),p27低発現(50%未満)例は13/33例(39%),Ki-67高発現(60%以上)例は15/33例(45%)であり,Skp2高発現例ではKi-67の発現が有意に高かった.p27とKi-67およびSkp2とp27の発現については統計学的関連は認められなかった.33例を亜分類した結果,GCB typeは13例(39%),non-GCB typeは20例(61%)であった.GCB type 13例においては,Skp2,p27,Ki-67の発現に,統計学的関連は認められなかった.Non-GCB type 20例においては,Skp2高発現例でKi-67の発現が高い傾向があった.p27とKi-67およびSkp2とp27の発現については統計学的関連は認められなかった.GCB typeとnon-GCB typeのsubtype間の比較では,non-GCB typeに高齢患者が多い傾向がみられた.Skp2,p27,Ki-67の発現についてはいずれも統計学的有意差は認められなかった.DLBCLにおいて,Skp2高発現群ではKi-67の発現が有意に高く,DLBCLの腫瘍細胞における細胞周期の進行にSkp2が関与していることが示唆された.Skp2の高発現は細胞増殖周期の亢進状態を反映していると考えられ,DLBCLの増殖性と悪性度を考えるうえで有用な指標のひとつになると考えられた.
症例報告
  • 河村 陽二郎, 嶋根 俊和, 川口 顕一朗, 徳留 卓俊, 下鑪 裕子, 中村 泰介, 秋山 理央, 渡邉 彩, 三邉 武幸
    2012 年 72 巻 1 号 p. 118-123
    発行日: 2012/02/28
    公開日: 2012/12/14
    ジャーナル フリー
    中咽頭癌に対しては,放射線療法,動注化学(放射線)療法,化学放射線同時併用療法,手術療法など様々な報告がある.今回,われわれは中咽頭癌T4aN3M0症例に対し,S-1, Nedaplatin/放射線同時併用療法(以下SN療法)を行い良好な結果をえることができたので報告する.
    症例は67歳,男性で咽頭部違和感,頸部腫瘤を主訴に当院へ紹介された.左扁桃周囲に中咽頭腔内を大きく占める腫瘍を認め,細胞診ではClass V(扁平上皮癌)であった.CTにて中咽頭癌(T4aN3M0)と診断しSN療法を行った.
    一次治療後の造影CT検査では原発巣の腫瘍は消失していたが,左頸部リンパ節腫脹は残存し,超音波下穿刺吸引細胞診でclass Vであったため,左頸部郭清術を行った.しかし摘出検体ではViableな癌細胞は認められず,一次治療はcomplete response(CR)と判定した.
    経過観察期間はまだ浅く8ヵ月であるが,再発,転移は認めていない.SN療法は進行中咽頭癌に対して根治治療,器官・機能温存の観点から有効であると考えられた.
  • 梶 泰隆, 吉川 泰司, 山村 亮, 西川 洋生, 丸山 博史, 田中 宏典, 稲垣 克記
    2012 年 72 巻 1 号 p. 124-127
    発行日: 2012/02/28
    公開日: 2012/12/14
    ジャーナル フリー
    症例は61歳女性,転倒受傷後1年で右膝に腫瘤を認め,近医でガングリオンの診断にて穿刺を受けた.その後,穿刺部からろう孔が形成され,ろう孔部よりゼリー状の内溶液が漏出するため紹介となった.初診時身体所見では,右膝に腫脹・発赤および可動域制限はなかったが,ろう孔よりゼリー状の内容液を認めた.MRI上,膝蓋下にT1強調像で低信号,T2強調脂肪抑制像で高信号の多房性腫瘤陰影を認めた.以上より,右膝蓋下ガングリオンと診断し,手術にて摘出した.病理組織検査でガングリオンと確定診断された.摘出後症状も消失し,MRIでも再発を認めていない.
  • 平塚 圭介, 田中 啓司, 三宅 康史, 有賀 徹
    2012 年 72 巻 1 号 p. 128-132
    発行日: 2012/02/28
    公開日: 2012/12/14
    ジャーナル フリー
    鈍的外傷にて上殿動脈に仮性動脈瘤を形成することは比較的稀である.38歳男性.交通事故で受傷した.第8病日に不安定型骨盤輪骨折に対して観血的整復内固定術を施行したが,創部の術後感染症を発症し,連日創部洗浄を行った.第41病日に突然の臀部痛が出現し,画像診断にて上殿動脈仮性動脈瘤の診断となった.第44病日に動脈塞栓術を施行し,以後症状は消失した.外傷性仮性動脈瘤と感染性動脈瘤の鑑別は臨床的にも非常に困難である.仮性動脈瘤における動脈塞栓術は有効な治療手段である.
  • 松永 朗裕, 豊島 洋一, 吉川 泰司, 渋木 崇史, 梶 泰隆, 助崎 文雄, 稲垣 克記, 中村 正則
    2012 年 72 巻 1 号 p. 133-137
    発行日: 2012/02/28
    公開日: 2012/12/14
    ジャーナル フリー
    成人女性に発症したアルカプトン尿症に伴う股関節症の1例を経験した.症例は58歳女性.右股関節痛を主訴に受診した.単純X線像から,末期変形性股関節症と診断し,人工股関節置換術を行った.術中所見で黒色骨頭を認め,オクロノーシスが疑われた.尿の黒変と尿中ホモゲンチジン酸陽性からアルカプトン尿症と診断した.腰椎単純X線像では椎間板の石灰化等の特徴的所見を認め,本症例を疑う重要な所見であった.現在,股関節痛なく歩容も改善し,経過良好であるが他臓器発症の可能性もあり,継続的な経過観察が必要である.
  • 小原 賢司, 牧内 大輔, 三原 研一, 鈴木 一秀, 西中 直也, 上原 大志, 筒井 廣明
    2012 年 72 巻 1 号 p. 138-143
    発行日: 2012/02/28
    公開日: 2012/12/14
    ジャーナル フリー
    【目的】Guyon管症候群は1908年にHuntらにより報告された低位尺骨神経麻痺である.今回Guyon管症候群を経験したので文献的な考察を加えて報告する.
    【症例】71歳,女性,無職.誘引なく出現した右環指・小指のしびれ,巧緻運動障害を主訴に近医にて内服,鍼治療等をされていた。症状の改善がないため約3週経過時に当院紹介受診.初診時,右還指・小指掌側の感覚鈍麻,鷲手変形,母指内転筋・小指外転筋の萎縮を認めた.またFroment徴候を認め,Guyon管部よりやや近位にtinel徴候を認めた.またJackson testおよびSpurling testは陰性であった.手関節MRIで明らかな異常は認めず,神経伝導速度は導出不能であった.以上よりGuyon管症候群と診断し,発症後約2か月にてGuyon管開放術を施行した.手術所見では,Guyon管より近位の尺骨神経部に暗赤色で10×5mm大の腫瘍を認めた.腫瘍は神経との癒着は少なく,丁寧に剥離をして摘出した.また掌側手根靭帯の切離および神経剥離も行いその他圧迫要素のないことを確認した.術後数日より症状の軽減がみられ術後6か月で鷲手変形は消失し,還指・小指のしびれや巧緻運動障害も改善している.
    【結語】Guyo管症候群に対してGuyon管開放術および腫瘍摘出術を行い,良好な症状の改善が見られた.
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