生体医工学
Online ISSN : 1881-4379
Print ISSN : 1347-443X
ISSN-L : 1347-443X
Annual56 巻, Abstract 号
選択された号の論文の450件中251~300を表示しています
 
  • 栗城 眞也
    2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S233
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    本研究ではインターネット依存者の安静時fMRI信号を,健常者との比較のもとに解析した.3Tスキャナーで計測した信号は小脳を除く全脳の90領野(AALアトラスによる)間の機能的結合(Functional Connectivity: FC)の計算により解析した. 領野間の全4005結合から統計的に有意で重要な領野を選択する方法に注力した結果,全脳で数個のノードとなるAAL領野が特定された.ノード領野は,健常者と比べて低下ないし増高している結合が集中している部位を意味する.このような結合性の変化は,IADグループに見られる過度のインターネット使用による障害と関連することが示唆される.本研究は,東京電機大学の教員・院生の他,久里浜医療センター,早稲田大学,明治大学との共同により行われた.

  • Omid Jamalipournokandeh, Toyohito Shibui, Reina Yoshikawa, Kazuo Yana, ...
    2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S234-01
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    The significance of the continuous daily healthcare monitoring through IoT devices has been widely recognized in order to maintain healthy and active mental state. In this study, we propose a method to examine if flow related psychological indices such as anxiety, self-esteem, will for meaningful life, resilience and self-efficacy could be associated with the heart rate daily rhythm to assess mental soundness. Continuous heart rate monitoring was made for 20 healthy subjects aged 25-57. We have found that two extracted heart rate rhythm parameters: 24-hour cosinor amplitude A24 and Autonomic Switching Rate ASR, defined as the maximum value of the derivative of the extracted double cosinor rhythm, are highly correlated with some of the psychological indices. Multiple regression analysis showed the highest correlation with the rhythm parameters (r=0.654). The result implies the heart rhythm parameters which IoT device provide could be objective indices for the assessment of mental health status.

  • Issaku Kawashima, Toru Takahashi, Tomoki Kikai, Fukiko Sugiyama, Hiroa ...
    2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S234-02
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    Mindfulness-based interventions (MBI) might improve the controllability of mind-wandering (MW), that is, the ability to decrease MW frequency, to notice MW, and to shift attention from MW. This study investigated whether such controllability of MW mediates the effect of the mindfulness-based intervention (MBI) on depression. Since the MBI, which instructs participants to be aware of the occurrence of, and their engagement in, MW, might bias self-reports of MW, a measurement method that does not rely on subjects' verbal report is needed. Therefore, we estimated MW intensity using one-second electroencephalogram (EEG) samples and a machine learning model developed previously. We recorded EEG before and after MBI, and observed fluctuations in mind-wandering during a 14-minute meditation and quantified the three types of MW trait. The magnitude of the change of depressive symptom and ability to shift attention from MW were correlated. This MW trait is a plausible mediator between MBI and depression.

  • 山口 郁博, 岸 哲史, 東郷 史治, 中村 亨, 山本 義春
    2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S235
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    講演者らは脳の皮質-視床-皮質ループの結合状態(フィードバック係数c2)を脳波から推定する方法を提案し、睡眠脳波への実施例を報告してきた。この推定方法は高い時間分解能で頑健な推定を行えることから医用展開が期待でき、実用化に向けて次のような検討をさらに進めている。A)推定結果の測定サンプリング周波数依存性、 B)時間窓幅依存性、 C)電極位置依存性、D)ウェアラブル脳波との組合せ。講演ではその最新の結果について報告する。[1] Yamaguchi et al. “A Robust Method with High Time Resolution for Estimating the Cortico-Thalamo-Cortical Loop Strength and the Delay When Using a Scalp Electroencephalography Applied to the Wake-Sleep Transition” Method of Information in Medicine (in print).[2] Yamaguchi et al. Spectral analysis method for sleep-state cycle based on the cortico-thalamo-cortical loop strength estimation. International Conference on Noise and Fluctuations (ICNF) 2017.

  • 田中 綜一郎, 吉田 久, 宮内 正晴, 中野 直樹, 加藤 天美
    2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S236
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    近年,筆者らは難治性側頭葉てんかん患者の皮質脳波から,各チャンネル間のコネクティビティ形態を定量的に可視化するために,相関関数を用いたコネクティビティ解析法を提案した.コネクティビティ解析は,相関関数の最大値とその遅れ時間の線形結合をコネクティビティ強度として定義し,コネクティビティ強度の逆数を辺長とする最小木を構成することによって可視化するものである.また可視化以外にも全チャンネル間のコネクティビティ強度の上位1%の平均を時間的に追跡することで,コネクティビティ形態が時間とともに変化することも示した.本研究では,新たに難治性側頭葉てんかん患者2名を加え,てんかん発作初期,中期,ならびに末期における皮質脳波のコネクティビティ解析を行った.発作初期は,平均コネクティビティ強度が高かった.これはてんかん焦点付近から異常興奮脳波が脳全体に伝播していくためであると考えられる.またコネクティビティ解析による可視化は,PETによるてんかん焦点推定位置と同様の結果を示した。発作中期は平均コネクティビティ強度が低下しており,神経細胞群が独立に興奮状態であることを示していると考えられる.末期になると平均コネクティビティ強度は再び上昇し,空間的な同期性が高まった.コネクティビティ解析結果から,てんかん発作初期と異なるコネクティビティ形態が示され、抑制性の脳波の出現などが推察される.

  • 白戸 元気, 堀 潤一
    2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S237
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    非侵襲で容易に計測できる脳波は,自然に近い環境で脳機能を解明する手段として有効な方法である.しかし,電極数が限られる上,頭蓋骨の低伝導特性の影響により脳波の空間分解能は不十分である.そこで,脳波の空間分解能を改善する方法として,脳皮質電位イメージングが提案されている.脳皮質電位イメージングの精度は,脳波逆問題の解法において,いかに計測雑音や伝達行列の誤差による影響を軽減できるかが重要である.ここで,計測雑音とは電極インピーダンスや瞬き,体動によるアーチファクトなどの計測環境によるものであり,伝達行列の誤差とは電極貼付位置のずれや頭部形状の個人差,導電率のばらつきなどのモデル設計における歪みによるものである.本研究ではTTLS(Truncated Total Least Squares)とシグモイド関数型フィルタ特性を組み合わせて脳皮質電位イメージングの精度向上を目指す.本方法より雑音と誤差を抑制することに加え,雑音と誤差の情報が未知の場合でも脳波逆問題に適用できる.精度比較を行うため,計算機シミュレーションによって作成した脳波から脳皮質電位の推定を行い,真値との相対誤差を算出した.また,実脳波として視覚誘発電位へに応用し,信号伝搬経路の可視化を行った.

  • Hiroyuki Mino, Kazuo Yana
    2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S238
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    The objective of this study was to investigate whether the estimation accuracy of the parameters in one-memory self-exciting point process (SEPP) of the von Mises type with a known hazard function could be approximately evaluated by the Cramer-Rao lower bound (CRLB) in inhomogeneous Poisson processes (IHPP) of the von Mises type, as it would be impossible to analytically calculate the CRLB in SEPP.In this study, in order to understand the properties of the accuracy in the maximum likelihood estimation, computer simulations were performed for 100 sample realizations.The results of computer simulations suggest that the variance of the estimated parameters of SEPP would be agreed well with that of the CRLB of IHPP.In conclusion, it is implied that an optimum parameter space in neural spike trains could be constituted with the CRLB of IHPP in terms of minimizing the variance of the parameter estimates, i.e., maximizing Fisher's information.

  • 志村 孚城
    2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S239
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

     わが国の高齢者の死亡事故の件数は、他の年代が減少あるいは横ばい傾向にあるのに対して、右肩上がりに推移している。原因の多くが認知症であることが判明しているので、警視庁は、平成29年3月21日に認知症対応のために道路交通法を改正した。実施から一年が過ぎようとしているが、色々な局面で今後の課題が噴出している。これらは相反する課題、経済的課題、診断技術的課題などで、従来の手法の延長線上で解決することは難しい。新しい工学技術を導入して解決の道を探ることがBME on Dementiaの使命と考え、諸君にその道標を示すことが本講演の目的である。相反する課題: 1.高齢者から免許を取り上げれば事故は減るが、その人の生活を支援する体制が必要である。2.国は在宅ケアを推奨するが、日常生活の中で事故に遭遇しない工夫ができていない。経済的課題:1.現在の実地判定は路上運転まで広げないと正確でない。2.18項目の違反を摘発する方法が限定される。3.徘徊を検知する経済的方法が必要である。診断技術的課題:1.現在に認知機能検査で十分か? 2.認知症の種類によって、MCIをどの様に対処するべきか? 3.かかりつけ医のレベルが揃えられるか?

  • 赤澤 堅造, 奥野 竜平
    2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S240
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    認知症予防には,正常集団から軽度認知障害(mild cognitive impairment MCI) への移行予防, MCIから認知症への移行の予防,認知症の増悪予防,である.米国のnun研究に見られるように,認知症予防の非薬物的な効果は認められている.認知症に対する音楽療法は,3編のコクランレビューがある.「被験者数が少なく,研究の方法論的な品質が低いため,メタ解析を実施できなく,有益な結論を導出できなかった」,との結論である. しかし成果を示す研究報告は多くあり,現状を把握する必要があると考えた.まずメタ解析の研究報告を参考にし,そして最近の文献のレビューを実施した後,効果量を用いてエビデンスを比較し,音楽療法によって得られる認知症予防の効果の現状および課題をまとめた.なお, 結果は次の通りである.認知症に関しては,音楽療法は不安の改善に効果量が中程度である,という結果が得られている.MCIに関しては,楽器演奏により認知機能改善が見られ,正常集団については,楽器演奏が認知症の危険度を低下させる,ことが示されている.

  • 伊藤 友孝, 奥野 彰太, 白井 智貴, 鈴木 みずえ, 谷 重喜
    2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S241
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    超高齢社会を迎え,高齢者の生活の質(QOL)の維持と向上が重要な課題の一つとなっている.特に,歩行中の転倒は重大な怪我を引き起こし寝たきりの状態に陥る危険性が高く,転倒の要因の解明と予防が急務である.そこで,本発表では高齢者の歩行の様子を計測し個人毎の歩行特長を明らかにできる歩行計測・診断システムを構築し,実際に高齢者の歩行診断を行って歩行の特長や転倒との関連性などについて検討した結果を報告する.また,歩行の状態の改善を目指して開発した歩行訓練補助システムについても紹介する.歩行の状態を改善するためには,自らの歩行状態をきちんと把握することが重要である.そこで,上述の歩行計測・診断システムと組み合わせて使用する形の歩行訓練補助システムを開発した.歩行器をベースに,自身の歩行状態が周囲に投影されて提示されるようになっており,安全かつ効果的に訓練が可能である.発表では,高齢者に実際に試用して頂いた結果についても紹介する.

  • 山下 知子, 山下 和彦, 清水 裕子, 山田 憲嗣
    2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S242
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    地域の高齢者の慢性疾患管理,転倒骨折予防に加えて,日常生活機能の向上が重要である.対策として,一定以上の歩数維持,コミュニティへの参加が有効であると報告されている.本研究では,歩くことの習慣化と,健康意識の向上を目的にICTを用いた活動支援システムを開発し,歩数や身体機能への影響を18ヶ月間調査した.本システムは対象者が持つ活動量計に記録される歩数データがクラウドに記録でき,対象者へ活動データをリアルタイムにフィードバックが行える.対象者は高齢者563名(72.3±5.1歳,65~88歳)であり認知症と非認知症で分けた2群で解析した.認知症と診断されている対象者は11名(77.6±5.1歳,66~82歳)含まれている. その結果,転倒と密接に関係する下肢筋力は非認知症群は有意に向上し,認知症群も向上傾向であった.また,認知症群の中でも下肢筋力が低い転倒リスク群に該当する対象者の向上率が高いことがわかった.歩数は平均で非認知症群は8000歩,認知症群は7000歩を維持しており,3メッツ以上の歩数割合が60%以上であったことから,歩行の質が高まっていることが推察された.以上より,本システムは健康意識を高め,身体機能の改善に有効であることが示唆された.

  • 高瀬 潤一, 福井 美宝, 本田 昭洋, 大浦 嘉幸, 志村 孚城
    2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S243
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    日本では,少子高齢化や地方の過疎化に伴う経済低下問題の中,経済発展と社会的課題の解決を両立するSociety 5.0政策が策定された.Society 5.0とは狩猟社会(Society 1.0),農耕社会(Society 2.0),工業社会(Society 3.0),情報社会(Society 4.0)に続く新たな社会制度であり,Society 5.0で実現する社会は,IoT(Internet of Things)で全ての人とモノがつながり,様々な知識や情報が共有され,今までにない新たな価値を生み出し,ロボットや自動走行車などの技術で,少子高齢化,地方の過疎化,貧富の格差などの課題を克服していく取り組みである.このSociety 5.0構想を基にした高齢者のトレーニングの負荷誤調整によるケガの防止策に取り組む事を目的とする.

  • 山家 智之
    2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S244
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    日本生体医工学会も、日本医学会の分科会の一つであり、国家の医療システムが変動する際に学会レベルの関与が必要である場合も多いので、専門医制度の会議にも参画して、協力を要請されることになる。2023年問題を受けて、長年の懸案であった専門医制度が大改革されることとなり、批判も多いが、現在、プロフェッショナルオートノミーの元に、各学会が、各診療科の専門医制度をリードする運びとなっている。専門医指定病院の偏在等に伴い、研修志望者の偏在も問題になっているが、現在のところ、医学会の分科会以外に、専門医制度の教育を担える信頼できるシステムは一つも存在しないので、批判が多くても、医学会の分科会は協力し合ってシステムを進めなくてはならない。これらの制度変更に伴って、特に女性の場合、医師・研究者のライフイベント時の雇用や研修システムが大きく様変わりしつつある。新専門医制度のシステムでは、医学部卒業後、2年間の初期研修を経て、内科外科などの19の基本領域の診療科に関して3年間の研修に進み、更にその後、臓器別の診療科に関するサブスペシャリティ研修に進むことになる。博士号を取得するために4年間の大学院を合わせると、8~12年間、学位と専門医に必要になる。特に女性の場合、出産の年齢制限を考えた時、結婚や出産などの大きなライフイベントを、40歳までに終わらせることが、かなり難しくなることを意味している。

  • 繁富 香織
    2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S245
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    近年,働く女性に注目が集まり,管理職への女性の登用,各種講演会などでの女性講師の増加,リケジョを対象としたイベント企画など,社会的に女性の活躍が期待されている.このような社会の動きに合わせて,育休制度の充実など,子育てや介護などのライフイベントと仕事とを両立してこなせるように,いろいろな制度やシステムが変化しつつある. 働く女性が徐々に多くなっているが,それでもなお十分な理解が得られないことや,辛い場面に遭遇することもある.LAJ (Ladies' Association of The Japan Society of Mechanical Engineers)では,そんな時に気軽におしゃべりしてストレス発散したり,気分転換したり,時には解決策も見つけられる場を提供し,メカジョネットワークを広めることを目的に全国で活動している. 本講演では,わたしの所属する日本機械学会での女性支援の取り組みと北海道大学の女性支援室ついて紹介する.さらに,わたしが長年取り組んでいる折紙工学の医療への応用研究と実用化について,学生で起業を起こした経験や現在取り組みについて述べたいと思う.

  • 山口 さち子, 関野 正樹
    2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S246
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    研究者のライフイベントについて考えると、若手研究者間の情報交換においては、結婚、出産・育児とそれにともなう研究生活の変化がよく話題に上がる。筆者らは2子の育児中の若手研究夫婦であるが、子供の誕生というライフイベントで研究生活が変化したことがライフイベントと共生する研究生活という考え方を意識する契機となった。これは育児期間中に以前の研究専従時間を維持することに拘泥するより、互いに時間は減っても二人ともが納得できる研究時間を確保できるよう、夫婦で研究生活の変化を積極的に受容しようという意識変革である。筆者らの場合は、研究時間の生産性を意識することや学会発表や調査出張のスケジュールはお互い尊重するという姿勢を持つことで、現在に至るまで双方納得できる研究生活を送ることが出来ている。実践にはスケジュールの共有や便利家電の導入、外部保育サービスの利用(特に病児保育)もその役割を担った。

    出産・育児については研究時間の制限といったネガティブな印象が先行するが、男女共同参画の観点からは、若手研究者が明るい希望を持って出産・育児というライフイベントを迎え、そして無理のないワークライフバランスで研究生活を送ってほしいと願っている。本シンポジウムで筆者らの体験談などを伝えることで、生体医工学分野で活躍中の若手研究者の参考になれば幸いである。

  • 小谷 博子
    2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S247
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    日本における女性の参画は徐々に増加しているものの、他の先進諸国と比べて低い水準である。「世界経済フォーラム」の2017 年版「男女格差報告」によれば、日本は144 カ国中114 位で、主要7 カ国(G7)で最下位であった。また、内閣府「平成24 年版男女共同参画白書」によれば、日本の年齢階級別労働力率は未だに「M 字カーブ」を描いており、女性が結婚・出産・育児を機に一旦仕事を中断することで、20~30 代にかけて一度労働力率が落ち込んでいる。特に、研究分野における女性の参画は、日本は14.6%であり、英国の 37.8%、米国の 33.6%、ト?イツの26.8%と比べ、国際的に見て非常に遅れており、OECD 加盟国のなかで最低レベルである。今回の大会では、初めて保育室が設置されていることを皆様ご存じだろうか。筆者は、大学院から本学会に加入しているが、出産後は泊まりがけとなる学会への参加は諦めていた。ようやく我が子も中高生となり、2 年ほど前から学会へ再び参加しているが、女性研究者の数は少ないままである。今回、大会長の岡本先生のご配慮により「男女共同参画に関するシンポジウム」を企画する機会を頂き、女性研究者の一人として大変感謝している。今後、生体医工学に興味を持つ女子学生を増やし、出産後もパートナーとともに育児をしながら研究を続けることができる環境を整えていくことは、この分野の発展のために大切なことであると思われる。

  • KAZUO HIRAKAWA, SATOSHI TAKAYANAGI, NARIAKI NAKURA, AKIRA SAITO, SHUNS ...
    2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S248
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    Purpose of this study was to evaluate taper structure related to adverse local tissue reaction (ALTR) for femoral neck in total hip arthroplasty.Methods: 197 cases for 6 degree taper averaged 15-year follow up and 48 large metal head and 2486 cases with 12/14 taper were clinically evaluated.Results: We had no revision cases caused by ALTR from trunnion part with 6 degree taper. Forty eight cases extra-large CoCr femoral head (40 mm or more) had 5 ALTR (10.4%) during first 5 years and 12/14 taper technology combined with 26~28mm (titanium body & titanium neck) occurred 3/2486 (0.12%).Discussion: Trunnion part of locking mechanisms were better with polished structure had no problems for 15 years with uncemented titanium stem. These data suggest that polished taper with 6 degree trunnion part of femoral neck had better results compared to other taper junction regarding metal debris or corrosion products induced ALTR.

  • 関根 一光, 馬場 麻人, 浜田 賢一
    2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S249
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    [緒言]我々はこれまで血管代用デバイスや皮膚ボタンなどの生体軟組織を対象として,生体親和性に優れるチタン(Ti)表面をウレタン様Ti表面へと修飾することで,繊維芽細胞様細胞の材料表面への接着性の向上と癒合性を促進する表面修飾法の検討をおこなってきた。この手法を整形外科や歯科領域で用いられる硬組織代替デバイスへの応用を目的とした検討をおこなった。[材料と方法]#400で研磨したJIS2種Ti材を60℃恒温環境で水酸化Ti処理し,さらに酸性コラーゲン溶液とイソシアネート-ベンゼン溶液によりウレタン様処理を施し,これをOH-Col試料とした。また比較試料を研磨のみの未処理試料,水酸化Ti処理のみのOH試料,研磨試料にコラーゲン溶液を塗布したCol試料とした。各試料は試料上への骨芽細胞様細胞MC3T3-E1の表面播種後,24時間および48時間での細胞接着性試験をおこなった。試料表面を洗浄後,蛍光染色像の確認と任意領域での計数,および生着対象表面での生細胞数濃度を評価した。[結果とまとめ]以前に報告した繊維芽細胞と同様に,OH-Col群が最も生細胞数生着が多く,未処理群との比較では24時間後で1.5倍,48時間後で2倍強となった。結果より,異なる接着性細胞株においても接着性が優位となったことから,硬組織代替インプラントにおいてもTiウレタン様表面の早期細胞接着性と癒合促進の可能性が示せた。

  • 岡田 悠希, 楠 正暢
    2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S250
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    生体硬組織と類似の構造を持つハイドロキシアパタイト(HA)は、医療、バイオなどの分野で応用されている生体材料である。このHAの異方性を効率的に利用することを目的として、パルスレーザーデポジション(PLD)法による結晶配向制御技術の開発を行っている。従来の方法では、高品質なc面配向HA膜を得るには、サファイア単結晶基板上へのエピタキシャル成長が必要であった。しかし、フッ化アパタイト(FA)膜をバッファ層に用いれば、アモルファス石英基板上でもc面配向HA膜が得られることを昨年明らかにした。このFAバッファ層の膜質(X線回折半値幅、平滑性)とHAメイン層の膜質の関係を調べる中で、前者は後者にほとんど影響していないことを示唆する結果が得られた。膜厚が極めて薄い場合には結晶性が低下するという結晶膜の一般的性質を考慮すれば、十分な膜厚のFAバッファ上にHAを成長させることが好ましいが、上記の実験結果は結晶性が不十分なFA上でも高品質HAが作製できる可能性を示している。そこで本実験では、FAバッファ膜厚を段階的に薄くしていった場合のHA膜の結晶性を評価し、FAバッファの臨界膜厚について調べる実験を行った。その結果、膜厚7.5nm以上では完全c面配向の高品質HAが得られ、それ以下ではc面配向HA以外のピークが現れ始め、0.5nmになるとc面配向HA膜を示すピークが得られなくなることが分かった。

  • 渡部 由香, 岡田 悠希, 常峰 知也, 楠 正暢
    2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S251
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    歯や骨の主成分であるハイドロキシアパタイト(HA)は、六方晶の結晶構造に由来する電気的異方性を有している。この性質を利用して、クロマトグラフィやバイオセンサ、人工関節など広い分野での応用が行われている。我々は、異方性の特長をさらに効率的に活用することを目的として、配向制御HA膜作製法の研究を行ってきた。その結果、パルスレーザーデポジション法を用いて、基板種を選択することにより、実験的にa面、c面配向HA膜を作り分けることに成功した。後者については、エピタキシーを期待して六方晶系のサファイア単結晶基板やZnO膜上に実現することができ、その成長メカニズムは概ね理解することができたが、前者についてはAu膜上でのみ確認されており、成長メカニズムについては明らかになっていなかった。そこで本研究では、a面配向HAの成長メカニズムについての検討を行った。Auの表面エネルギーに着目し、成膜中の真空度と成長温度を踏まえ、Au-HA界面でのHA粒子のマイグレーションと結晶核形成について考察した。その結果、Volmer-Weber型の成長モデルで説明することができることが明らかとなった。

  • 江口 佳那, 南部 雅幸, 黒田 知広
    2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S252
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    睡眠障害のひとつである周期性四肢運動障害(PLMD)は,睡眠時の不随意運動(PLMs)によって不眠や日中の眠気を引き起こすだけでなく,PLMsによる瞬間的な血圧の上昇によって心血管系疾患への罹病リスクを高める恐れがある.このため,早期発見と適切な治療が重要となるが,確定診断に必須である終夜睡眠ポリグラフ(PSG)検査は金銭的・時間的な患者負担が大きく,結果として適切な診断・治療を受けていない潜在患者が存在する可能性も高い.さらに,夜毎に発生頻度が異なるとされるPLMsを患者が簡易に計測・記録する手段に乏しいため,医師も患者の症状を正確に把握できていないのが現状である.我々は,PLMDの事前スクリーニング,および確定診断後の経過観察を対象として,PSGと同じく表面筋電図に基づくウェアラブルなPLMs検出装置の開発に取り組んでいる.本稿では,プロトタイプの設計に先行して実施した2チャネル下肢表面筋電図によるPLMsの終夜観察結果について報告する.我々は,PLMsが母趾および足関節にまたがる不随意運動であることに着目し,バイオメカニクスの観点からPLMsに関連すると考えられる母趾外転筋と前頸骨筋の表面筋電図の計測を実施した.二つの筋肉の表面筋電図を観察した結果,双方にPLMsとみられる筋電の活性化が見られること,睡眠時間の遷移に伴ってその発現状態が変化することを確認した.

  • 平野 義明
    2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S253-01
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    RFID(電波による個体認識)技術をベースとした「レコピック」システムは、UHF帯パッシブICタグを使用しながらも、アンテナシート近傍に電波を局在化することで医療機器や生命維持装置への電波的影響を極小化し、医療現場の安全面と管理対象物の読取り精度を両立した個体管理システムであることを特長とする。特に「レコピック」の性能が発揮される環境としては、病院内の狭小スペースにおいて沢山の管理対象が混在している状況であっても、管理が必要な対象物のみ読み分けることができる。但し、その場合には運用マッチングした最適なICタグ選定やその貼付位置など幾つかの重要な要素が運用ノウハウとしてある。その意味では「レコピック」は数あるセンサデバイスシステムの中でもハード面、制御ソフト面、運用ノウハウの三位一体により、その優位性を保持していると言える。現在、医療現場における「レコピック」の活用は病棟、手術、外来など多岐に渡り拡大しており、具体的にはME機器管理(聖路加国際病院様)や、受診患者のステータス管理(虎の門病院付属健康診断センター様)での通常業務の中で自動認識するシステムとして実運用されている。また、弊社は「レコピック」で一定期間取得・蓄積されたデータからあらゆる切り口をもって定量的効果の検証にも取り組んでいる。

  • 三浦 寿朗, 川口 弘之
    2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S253-02
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    目的国内における中央材料部での器材確認業務の状況は、経験豊富な作業者により器材とその名称を確認しさまざまな作業を行っているが、近年経験豊富な作業者がなかなか採用できない問題が発生してきている。その為器材へのバーコードの刻印や電子タグの取り付け等、様々な方法が採用され始めてきているが、多くのコストを必要とし、導入後の耐久性も問題となっている。カメラの画像認識技術を活用することにより手術器材を同時に複数本認識することが可能かどうかの検証を行い、その後滅菌コンテナへの再セット組へ導入し検証を行った。本技術により、これまで成熟度が求められていた作業が誰にでもできる作業となり、業務の大幅な効率化や正確性、手術部での安全性や効率化が期待できるものと思われる。方法認識はカメラによるブロブ解析(画像を任意のしきい値を基準として、0と1の2値化処理を行い、これにより画像を分析する手法)で対応する。事前に1器材毎の画像をブロブ解析により面積、周囲長、拡散をデータ化し器材の基準データとしてデータベースを作成する。この基準データを基にカメラの下に複数本の器材を置く事で1器材毎に基準データとマッチングさせて瞬時に複数器材の特定を行う方法を採用する。認識された器材は外周を緑色で囲いを行い、認識できなかった器材は赤、複数の候補が認識されたものは黄色で囲う事で、目で見てわかりやすい方法を採用した。

  • 保坂 良資, 川上 裕生
    2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S254
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    ようやく注目され始めたRFIDは1995年頃には実用化されていた。当時は高価な物品管理に限られたが、無電源で稼働するワイヤレスシステムに一部では熱い視線が注がれた。著者は1998年頃より、認知症老人(当時は痴呆症と称された)対策やベッドサイドでの患者認証に向けて提案を続けた。当時のRFIDはLF帯であり、2004年に秋田大学病院がはじめてHF帯RFIDを患者認証に用いた。しかしHF帯RFIDは原理的に認証域が小さい。これを改善したのがUHF帯RFIDであったが、当時は不安定であった。著者は2006年頃より2013年まで、札幌医科大学病院などでUHF帯RFIDによる院内患者追跡や小型ME機器の所在管理を実現した。最近では電磁的安全性担保のために、低電界強度システムによる個体管理を推進している。この20年間でRFIDタグのコストは1/50ほどになり、認証域は50倍ほどになった。バ-コ-ドもまた大きく進化した。GS1によるデ-タフォ-マットの一元化もさることながら、特殊印刷によるステルス化なども医療応用への高い適性を示している。画像システムによる認証も、CPU能力の向上などにより実用化の域に達した。RFID以外のワイヤレスシステムとしてはzigbeeは注目に値する。その潜在能力は高い。このような認証システムが、最適化されて現場に供されれば医療現場の効果的な認証が実現されよう。

  • 今井 大貴, 川村 勇樹, 竹森 久美子, 伊藤 浩行, 山本 衛
    2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S255
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    皮膚は,表皮,真皮,皮下組織の三層で構成されており,生体内において機械的保護作用や体温調節機能などの重要な役割を担っている.真皮は,細胞外マトリックスとそれを産生する線維芽細胞によって構成されている.真皮を構成する細胞外マトリックスの代表として,コラーゲンとエラスチンがあり,コラーゲンは皮膚の剛性を,エラスチンは皮膚の伸展性や弾性を支配的に決定する因子と考えられている.このような両成分のネットワーク構造は,皮膚組織の力学的特性と密接に関係しており,紫外線曝露などで生じる光老化に起因して,この構造が変化することによって,皮膚の伸展性が低下していくと同時に,皮膚に皺やたるみが生じる.そこで本研究では,紫外線照射によって損傷した皮膚の修復を促進させる手法を探索するための基礎データを提供することを念頭におき,比較的低強度の紫外線を照射したヘアレスマウスの背部皮膚に対して吸引負荷試験を実施した.得られたデータから,剛性やヤング率を算出し,皮膚組織の力学的特性を評価した.また,紫外線照射後にエラスチン含有ワセリンを塗布した皮膚に対しても同様に力学的評価を実施した.これらの結果より,紫外線照射のみを施した群と比較し,エラスチン成分を塗布した群では,皮膚の剛性やヤング率が低値を示す傾向が認められた.

  • 森松 賢順, 藤田 彩乃, 綾 晃記, 西山 雅祥, 成瀬 恵治
    2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S256
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    組織や器官を構成する細胞は、ずり応力、圧力、伸展圧縮等の機械刺激を受容し、細胞自身や組織の機能維持に利用している。 特に、 膝等の軟骨組織や歯周組織等は、歩行や咬合等の日常生活に伴った圧力にさらされている。しかしながら、これらの組織に存在する細胞の圧力に対する受容応答メカニズムの解明には未だ研究の余地があった。その理由の一つは、高圧力下での細胞動態の分子レベルでのイメージング技術が多く存在しないことである。本研究では、細胞の高圧受容応答メカニズムの解明を最終目的とし、静水圧負荷下での細胞及び、細胞内分子の挙動計測を実施した。その結果、大気圧下(0。1 MPa)では、軟骨細胞及び歯根膜細胞の形態に顕著な変化は見られなかったが、20 MPa以上の静水圧を負荷すると、細胞およびその内部にある細胞骨格分子であるアクチンストレスファイバーの縮小が見られた。減圧後も加圧処理を施した同じ細胞の観察を続けたところ、基板表面に沿って広がる様子が観察された。これらの知見は、生理的な閾値を超える力学刺激が軟骨組織や歯周組織の破壊を促進することを示唆する。本研究で開発した実験系を用いることで、軟骨組織や歯周組織での細胞の圧力負荷受容応答メカニズムの解明が今後期待され、そこで得られる知見は基礎研究のみならず、臨床応用に寄与するものと考える。

  • 藤田 彩乃, 森松 賢順, 西山 雅祥, 高柴 正悟, 成瀬 恵治
    2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S257
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    歯根膜は、歯と顎の骨の間に垂直に配向し、咀嚼や歯ぎしりなどにより常に伸展刺激や圧力刺激などの機械刺激にさらされている。歯周炎に罹患した部位では、炎症性サイトカインが歯周組織のリモデリングを修飾し複雑化するため、機械刺激に対する歯根膜組織の応答機構の理解は非常に困難であった。また、臨床前段階での機械刺激による歯根膜組織の知見の創出並びに薬効効果の定量を実施するためには、機械刺激による歯根膜組織のin vitro構成システムが必要不可欠となっていた。そこで本研究では、伸展刺激と圧力刺激の歯根膜細胞への影響を調べた。伸展刺激下で歯根膜細胞を培養した結果、伸展刺激方向に対して細胞が垂直方向に配向した。この結果から、歯根膜組織は歯と顎の骨との間に垂直に配向することで歯を支持していることが示唆された。次に、高静水圧下での歯根膜細胞の形態変化を計測した結果、20 MPa以上で細胞形態が変化したが、細胞骨格には変化が見られなかった。これらの結果は、過度な機械刺激は歯根膜組織の破壊を誘発することを示唆した。本研究の遂行によって得られる過度な咬合力の指標の知見は、機械刺激下での歯周組織の恒常性や、歯周組織リモデリングのメカニズムの解明につながる上に、健康な口腔内環境の維持に重要な役割を担う。

  • 矢野 哲也, 小笠原 知里, 八尾谷 亮太
    2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S258
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    細胞機能の改変のための細胞内への物質導入技術として大気圧低温プラズマを用いた方法の開発が進められている.現状では,物質導入効率を向上させるための最適なプラズマ照射条件を見出すために試行錯誤的な試験が行われている段階である.そこで,本研究では,プラズマ処理過程における細胞膜性状の変化について調べた.

    ブタ赤血球3 μ LをPBS1.5 mLに添加した細胞分散液をマイクロチューブに入れ,液面にヘリウムガスプラズマを一定時間照射した後,試料1.0 mLに蒸留水2.0 mLを添加して赤血球を急速に低張曝露することで,赤血球を浸透圧溶血させた.この過程における試料の透過光強度は,液中の散乱体である赤血球の膨潤,崩壊に伴い,時間的に急増,漸増した後に定常に達した.緩和時間を近似により求め,照射時間および電極間電圧を変えてプラズマ処理した各試料について比較した.その結果,短時間照射の試料では緩和時間の増加が認められ,より長時間照射した試料については緩和時間の低下が確認された.緩和時間の増加は試料に含まれる赤血球膜の脆弱性の低下を意味する.これは,プラズマ照射によって膜脆弱性の高い赤血球が崩壊した結果,試料に含まれる赤血球の平均的な膜脆弱性が低下したためと考えられる.電極間電圧を高くした条件では,緩和時間の増加から減少に遷移するまでの時間が短くなった.すなわち,同様のプロセスがより速く進行していると考えられる.

  • 樋口 俊介, 藤田 恭平, 小松 由佳, 馮 忠剛, 小沢田 正, 佐藤 大介, 中村 孝夫, 白石 泰之, 梅津 光生
    2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S259
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    【背景・目的】近年、心筋組織の細胞外マトリクス(ECM)から作成されたハイドロゲルが細胞培養の足場として用いられている。本研究ではEDAC架橋剤により山羊心室筋ECMゲル(vECMゲル)の力学特性を向上させ、EDAC-vECMゲルの細胞培養適合性を検討した。【方法】細断された山羊の心臓はSDS溶液とTriton溶液により脱細胞化され、Pepsin溶液で消化し、心室筋ECM溶液を調整した。その後pH値と塩濃度の調整を経て37℃‐5% CO 2 インキュベータ内でゲル化させた。作成したゲルにEDAC溶液を加え室温で24時間架橋処理した。vECMの濃度(7.5 mg/ml、12.5 mg/ml、17.5 mg/ml)およびEDAC濃度(0 mM、10 mM、30 mM、 50 mM、100 mM)を組み合わせて計15種類のゲルを48-wellのプレートの中に作成した。ラット胎児線維芽細胞を5000 cells/wellで播種し、3日間培養を行った。そのうちの4種類のゲルで24時間後の細胞生着率、3日間の細胞増殖率、またEDAC濃度0 mM、10 mM、50 mM、100 mM のゲルの3日後のLDH放出率を測定し、EDAC-vECMゲルの細胞培養適合性を評価した。【結果】細胞生着率は無処理より処理したゲルのほうが低かったが、3日後には処理したゲル上の細胞増殖率はより高かった。LDH放出率は処理したゲルにおいて無処理より低かった。これらの結果からEDAC処理した心室筋ECMハイドロゲルは細胞培養適合性を有していると判断できた。

  • 山岡 哲二, 神野 千鶴, 馬原 淳, 森本 尚樹
    2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S260
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    海外で販売されている脱細胞弁、血管、真皮、神経などは、いずれも、ヒト由来(同種)の脱細胞組織であるが、ドナー不足が深刻な本国の状況を考えて我々は異種由来超小口径脱細胞血管を検討してきた。一方、本研究では、「自己」由来組織の利用によるという新たな再生医療戦略を検討している。自家組織であるので「脱」細胞する必要は無く細胞成分を殺滅するのみである。その具体的対象疾患は、母斑あるいはメラノーマなどの皮膚腫瘍である。細胞(正常細胞・母斑細胞・メラノーマ細胞など)および組織に0.1~1000MPaの静水圧を10分程度印加し、細胞の生存率や組織の変性・損傷の度合いを評価した。得られた組織の自己由来殺細胞真皮としての有用性は、ヌードマウスあるいはミニブタに数週間から1年間移植して評価した。結果、全ての細胞は200MPa 10分間の加圧で完全に死滅することが確認された。また印加に伴う真皮組織損傷は、200MPaまでは確認されなかったが、さらに高い圧力処理では、耐圧性の低いタンパク質から変性する様子が確認された。さらに、200MPa静水圧10分加圧した組織は生体組織の構造と機能を高次に保持しており、移植可能な自己由来真皮として有用であり、皮膚腫瘍のあたらな治療法を確立できたと考えている。全ての実験は、国立循環器病研究センター、関西医科大学、京都大学の倫理委員会および必要の叔父艇動物実験委員会の承認を得て実施した。

  • 伊藤 俊幸, 馮 忠剛, 小沢田 正, 佐藤 大介, 中村 孝夫
    2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S261
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    【背景】細胞外マトリクスのコラーゲンやエラスチン線維、細胞骨格のアクチン線維またはDNAなどの生体高分子線維は生体構造の主要な構成要素である。生体高分子線維は細胞の力学的環境や力学的状態に寄与しており,細胞の分化や遊走に影響を及ぼす。【目的】生体高分子線維の形状シミュレーションにより、そのエントロピー弾性を検討する。【方法】線維の形状を微小な直線ステップのマルコフ連鎖と考え、モンテカルロ法を用いて形状の模擬を行う。さらに線維の末端間距離を求めその出現確率からエントロピー弾性を求めた。シミュレーションでは持続長が範囲20μmから1000μmまで、線維長が持続長の0.2倍から10倍までをそれぞれ7つをセッチングし、計49種の半屈曲性線維に対して行った。なお,ステップ長は1μmである。【結果】上記49種類の半屈曲性線維のシミュレーションにより、末端間距離の出現確率は末端間距離と線維長の比が0.99~1.00の範囲内に最大値が現れた。よって、線維のエントロピー弾性には圧縮力領域と引張力領域があり、引張力の最大値は屈曲性高分子ポリマーより著しく小さいことを分かった。また本研究では、圧縮力領域と引張力領域との転換点におけるエントロピー弾性力がゼロであることについて、実験シミュレーションも行った。

  • 岩永 進太郎, 中村 真人
    2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S262
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    近年、細胞やバイオマテリアルを利用して組織を再構築する研究の一つとして、ボトムアップ組織工学が注目をされている。このボトムアップ組織工学では、組織構築のために予め微小なパーツ(バイオパーツ)を細胞などから調整し、それらを組み立てることで重厚な組織構造を作製することが行われている。我々もバイオパーツの集積による高速組織作製を目指し、とりわけ、ファイバー状バイオパーツに注目をした。本研究では、まずマスターモールドを3Dプリンターで作製し、ついでアガロースゲルでマスターモールドを型取りすることにより、細胞担持マイクロファイバー用のモールドを作製した。このモールドを用いることで、様々な細胞種でファイバー状バイオパーツの作製が可能であった。次に、作製した細胞担持マイクロファイバーを用いて、チューブ状組織構造の作製を試みた。金属ニードルとシリンジを用い、アルギン酸マイクロゲルファイバーを作製した。作製したゲルファイバーを支持体とし、その周りに細胞担持マイクロファイバーを巻きつけることで組織構造体を作製した。組織構造体作製後、キレート剤を用いて支持体であるアルギン酸マイクロゲルファイバーを分解し、チューブ状組織構造体を得ることに成功した。重厚組織の作製には組織へ培養液を還流することが重要であるため、チューブ状組織の高速作製によって、還流可能な重厚組織作製への応用に展開していくことが期待できる。

  • 柳生 右京, 中川 桂一, 加藤 拓真, 塚本 哲, 佐久間 一郎, 小林 英津子
    2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S263
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    細胞は外部刺激に対して応答することが知られている.メカニズム解明が盛んに行われており,高速刺激が少ない変位で細胞応答を誘発できることがわかった.本研究室ではこれまでに,10kHzオーダの瞬間的な刺激を細胞に負荷するために,パルスレーザ照射によりカンチレバーを振動させ,細胞を10kHzオーダの周波数で刺激するデバイスを開発した.しかし,カンチレバーは駆動後減衰するまで振動するため,細胞を複数回刺激しており現象は複雑である.そこで我々は,細胞に単発の瞬間的刺激を負荷することを目的に,磁気によるカンチレバー制御システムを開発した.レーザによる駆動に加え,磁気によるカンチレバー挙上を組み合わせることで,刺激の単発化を実現する.カンチレバーはコバルトコーティングのものを用いた.マイクロ秒オーダの現象に追従できる時間応答性,カンチレバーを十分量挙上するための磁場強度,レーザ系との統合性という要求の元,コイルと回路を設計した.コイルは,レーザ光路をの為に,鉄芯に一部空洞を設けた.時間応答性と磁場強度の要求仕様を満たすべく,パラメータ検討を行い,巻き数140回,外径35mmのコイルを作製した.水中で実験を行い,磁気によるカンチレバーの変位を確認した.そこで,磁気による変位開始時にパルスレーザの照射を行ったところ,振動中心が磁気によりマイクロ秒オーダでシフトし,時間幅20us程度の単発の瞬間的刺激の波形を得た.

  • 松本 龍之介, 工藤 信樹
    2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S264
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    我々は,ソノポレーションを樹状細胞(DC)への抗原導入に応用することを目指し,カバーガラス上に接着培養したDCを用いて検討してきた.しかし,実際の免疫療法では,浮遊培養したDCに抗原を導入するプロトコルが用いられており,最適なソノポレーション条件も異なることが予想される.本研究では,カバーガラス上での伸展状態が異なる2種類のDCにソノポレーションを行い,膜損傷の発生率を比較した.実験にはマウス骨髄由来の樹状細胞株(DC2.4)を用いた.浮遊細胞は超音波の放射圧で容易に吹き飛ばされてしまうため,播種後の培養時間を0.5時間と48時間の2条件に設定し,足場上での伸展状態が異なる2つの試料,浮遊模擬細胞試料と接着細胞試料を作成した.培養後,細胞に直径約2 μmのバブルリポソームを1個付着させて中心周波数1 MHz,波数3波,最大負圧0.6 MPaの超音波パルスを1回照射し,蛍光染料(SYTOX Blue)で細胞膜の損傷を検出した.実験の結果,膜損傷率は接着細胞では93%(13/14),浮遊模擬細胞では30%(3/10)となり,培養足場への細胞接着状態が膜損傷の発生率に大きな影響を与えることが確認された.また超音波照射後に気泡が消失する割合は,接着細胞では78%,浮遊模擬細胞では10%であった.これは,浮遊模擬細胞が気泡の膨張・収縮を妨げているためと推測され,浮遊細胞へのソノポレーションでは,接着細胞よりも強い超音波照射が必要とされることが示された.

  • 石原 美弥
    2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S265
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    光音響イメージングは、光吸収に基づく熱弾性過程を経て音響波が発生する現象を利用する。光を吸収した物質から音響波を発生させ、この音響波を検出し、信号の発生源が特定される。これにより、光吸収体の位置情報を取得することができる。これが光音響イメージングの原理である。生体の散乱係数が光と比較して3桁程度小さい超音波を検出信号とすることで、生体透過性が向上する利点があり、光イメージング技術の中では、より深部まで可視化できる特徴がある。ヘモグロビンなどの生体内の光吸収体を対象としたイメージングの場合には、イメージングプローブが不要であり直接可視化できることから、光音響イメージング分野においてヘモグロビンを対象にした血管画像の研究は先行している。光と超音波を使ったイメージングは非侵襲的に実施できる。これは元来、他のイメージング技術と比較した場合の利点であり、さらに、造影剤やイメージングプローブの利用がないということで、探索的臨床研究のハードルが低い。本発表では、防衛医大で実施している医師主体の探索的臨床研究について紹介する。

  • 大嶋 佑介, 古賀 繁宏, 渡部 祐司
    2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S266
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    外科領域におけるナビゲーション手術では、ICGなどの蛍光造影剤によって生体組織をリアルタイムに可視化できる光イメージング技術として、術中センチネルリンパ節同定や冠動脈バイパスグラフト造影法などですでに臨床応用されている。しかしながら、蛍光プローブを用いて術中にがん細胞自体を光らせる、がんイメージング技術に関しては、がん細胞のみを特異的にかつ高感度で検出する方法の確立が律速段階となり、実用化に至っていない。一方で、ラマン分光法や多光子励起蛍光顕微鏡を用いた、ラベルフリーでがんを可視化する革新的な光学技術の実用化が注目されている。本研究では、ヒトがん細胞を移植した動物モデルを用いて、がん転移巣と原発巣におけるがん細胞とその周辺環境の分析を独自に構築したラマン分光システムを用いて行った。その結果、原発巣と転移巣において細胞外基質の分子組成に明らかな差を認めた。これらの結果に基づいて、ヒト検体を用いた解析を行った結果、ラマン分光法および多光子励起イメージングにより、がん細胞の特徴を明らかにすることに成功した。

  • 橋本 守
    2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S267
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    神経の可視化するコヒーレントラマン散乱硬性鏡の開発を行った.近年,小さな創傷と早期回復を見込めることから内視鏡下での外科手術が一般的術式として行われ,同時に患者のQOL向上のために神経温存術の採用されるようになっている.このため,内視鏡下において神経を可視化する技術開発が強く望まれるようになってきた.本研究では,コヒーレントアンチストークスラマン散乱(CARS)を用いて,ミエリン鞘が豊富に含む脂質のCH2伸縮振動により有髄神経を可視化する硬性鏡を開発した.開発した硬性鏡は,長さ270 mm, 直径 12 mmの鏡筒を持ち,直径650μm の視野内で0.91%の画像歪み,8.9% の強度一様性でCARS画像を取得できる.講演では,開発した硬性鏡を用いて,ラット坐骨神経の可視化例,家兎前立腺近傍の神経の可視化例等を紹介する.また,より鏡筒長を長くし,550 mmとした硬性鏡による観測例等について紹介し,本手法の有効性について議論したい.

  • 近江 雅人
    2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S268
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    最近、整形外科分野において関節炎等の疾患の症例が多くなっている。この分野においては、疾患の早期発見と治療に高解像度の画像構築システムが必要である。そこで我々は、より正確な関節炎診断の実証に向けて、非常に有効な最適な光プローブを持つ光コヒーレンストモグラフィー(OCT)に着目した。本研究では、整形外科分野での診断のための KTN 光プローブを持った硬性内視鏡型OCTシステムを開発した。KTN 光学スキャナーを新たにOCTシステムにおける自由度を持ったサンプルアームに使用することによって、生体組織のイメージングを実証した。本システムは生体組織の表皮下数ミリメートルの深さで14.2ミクロンの空間分解能を持ち、測定感度は92.3dBである。

  • 松浦 祐司, 吉岡 希利子, 木野 彩子
    2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S269
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    非侵襲に血糖値を測定する手法として,中赤外域に存在するグルコースの基本振動ピークを検出することにより,高精度な血糖値測定が可能な方法について紹介するとともに,開発を行っているシステムの構成とその評価結果を報告する.本研究ではまず,フーリエ変換赤外分光器(FT-IR)を用いたシステムの構築を行った.中赤外光を低損失に伝送することができる中空光ファイバを用い,その先端にATRプリズムを取り付けたプローブを導入することにより,角質が存在しない口腔粘膜などを測定対象とすることが可能になった.このプリズムを上下の口唇で挟む状態で測定を行ったところ,グルコースの明瞭な指紋スペクトルを得ることに成功した.また,このスペクトルをもとに計算した測定値の糖負荷試験後の経時変化は,採血により測定した血糖値の推移によく追従し,測定誤差は20%程度となった.次に波長の異なる複数の量子カスケードレーザ(QCL)を用いたATR測定系を構築した.QCLの波長は,グルコースのピラノース管構造に起因する吸収ピーク波数に近い1152 cm-1と,グルコースの吸収が現れない1186 cm-1とし,それぞれの波長における吸収値の差分を取ることにより,スペクトルのベースライン変動の影響を抑制することが可能になり,口唇を対象とした実験の結果,血糖値と光学吸収値との相関値R2は0.65程度となった.

  • 堀 拳輔, 董 居忠, 岡本 啓公, 関 将志, 村石 浩, 齊藤 典生, ティティ ルイン, 原 秀剛, 渡辺 宝, 橋本 雄幸, 王 波 ...
    2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S270
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    [目的]先進国では、肺がんによる死亡者数が第1位である。胸部単純X線像では、肺腫瘤は肋骨や縦隔の重複による見落としが多く、CTは胸部病変検出の重要な検査法であるが、被ばく線量が多い。トモシンセシスは、X線管を機械的に移動させ、制限された角度30~74方向の投影像から、断層像を再構成でき、解剖学的構造の重複を減らし、CTと比べて被ばくを低減できる。一方、撮影方向数を減らし、固定したX線管でトモシンセシスができれば、短時間撮影とシステムの簡略化が可能である。本研究では、少数方向撮影による胸部トモシンセシスの可能性について検討した。[方法]種々の模擬結節を含む胸部ファントムを1°毎に360°回転させ、単純X線撮影装置で撮影した。逆投影法で4, 6, 8, 16, 32, 64方向撮影によるトモシンセシス像を再構成し、視覚及びコントラストノイズ比(CNR)、Artifact Spread Function(ASF)を用いて定量的に評価した。[結果]4方向トモシンセシス像で、視覚的に10mm以上の模擬結節を明瞭に描出できた。各方向からの線量を一定とした条件での本研究では、線量が16倍増える従来の64方向像を基準とした時、4方向像のCNR比は34%となったが、線量増加に伴うSNRの影響を考えると、CNR値は妥当な数値と考えられた。ASFを用いた奥行き分解能評価では、4方向像は64方向像と比べて良好であった。[結論]4方向トモシンセシスは肺内結節検出技術として臨床応用できる可能性が示唆された。

  • 高本 裕紀, 孫 光鎬, 佐藤 正平, 西根 広樹, 松井 岳巳, 峯下 昌道
    2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S271
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    慢性閉塞性肺疾患(COPD)は大気汚染や喫煙により発症しCOPDによる死亡者数は世界的に増加傾向にある.COPDの診断ではマウスピースを口に咥えるスパイロメーターが用いられるが,医療従事者の立会が必須である.本研究では,非接触計測が可能でマウスピースを使用しないために医療従事者の立会を必要せず,スパイロメーターと同等の診断が可能なCOPDスクリーニングシステムを開発する.COPDスクリーニングシステムは座位の被測定者の正面から胸郭の呼吸運動を捉える出力10mW,周波数24GHzのドップラーレーダーと,椅子の背面に設置した体動除去用の同規格のドップラーレーダーで構成される.位相が90℃異なるドップラーレーダーのI,Q出力に逆正接復調処理とアンラッピング処理を行い胸郭の呼吸運動を求め,被測定者の前と後に設置するレーダーで計測する体動は位相が180°異なることを利用して体動を除去する.精度検証のために,健常な男子大学生5名(男性5人,平均22.6歳±1歳)を対象とし,健常モデル(通常のスパイロメーター吹き込み口)、疑似COPDモデル(スパイロメーター吹き込み口の反対側にストロー(直径0.6mm,長さ21cm)を装着)のそれぞれに対して2回ずつ計測を行いCOPDに伴う気管支狭窄の影響を受ける1秒率(最初の1秒間で吐き出した量/努力性肺活量)を求めた.提案法で得られた1秒率とスパイロメーターによる1秒率には高い相関が認められ(r=0.93),100%の感度と特異度が得られた(閾値=1秒率70%).

  • 平野 雅也, 松尾 太郎, 中村 凜, 渡辺 貞雄, 橋爪 絢子, 孫 光鎬, 廣田 宗司, 中村 大輔, 箱崎 幸也, 松井 岳巳
    2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S272
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    高齢者の死亡原因の上位を占める肺炎の超早期発見を目的として,周波数24GHz,出力10mWのドップラーレーダーをベッドのマットレス下に設置し,肺炎発症に伴う呼吸数,心拍数,自律神経活性の変化を同時計測するシステムを開発した.マットレスの下に設置したドップラーレーダーの出力波形には胸郭の呼吸運動に伴う相対的に大きな信号と,心臓の拍動による体表面の微小振動に伴う微弱信号が混在している.このためドップラーレーダーの出力波形に移動平均を施して呼吸波形を抽出した後,ドップラーレーダーの出力波形と呼吸波形の差分を取ることで心拍波形を抽出した.心拍波形より心拍間隔の時系列を求め,多項式でフィッティング後4Hzでリサンプルし,40秒ごとのフレームに自己回帰(AR)法で周波数解析を行い,心拍数変動指標(HRV)を求め自律神経活性を評価した.研究倫理委員会の承認を得た後,元気会横浜病院の入院病棟のベッドに本システムを設置し,高齢の慢性疾患患者の長期間連続モニターを行った.その結果,レントゲンによる医師の確定診断に先立ち,入院当初には肺炎徴候のなかったアルツハイマー型認知症入院患者(79歳女性)において,肺炎の初期症状と思われる数時間に及ぶ継続的呼吸数の増加,同時間帯におけるHRV指標の副交感神経活性を示すHFの減衰と付随する心拍数の上昇が認められた.医師による確定診断よりも早い超早期に,肺炎の初期症状を発見できる可能性が示唆された.

  • 根岸 寿明, 孫 光鎬, 桐本 哲郎, 佐藤 正平, 松井 岳巳
    2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S273
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    感染症の大流行に備えるためには,空港検疫において,高感度な感染症スクリーニングシステムの開発が必要とされている.現在,空港検疫では健康状態の自己申告とサーモグラフィによる体温検査が中心となっている.しかし,体温検査を基としたスクリーニングは,外気温や服薬や飲酒などの影響を受けやすいという問題点が指摘されている.そこで,感染症有症者の心拍数と呼吸数を新たな計測項目として加えた高感度な感染症スクリーニングシステムが提案されている.血流による顔色の微小な変化をCCDカメラで捉え,心拍を計測する.呼吸数に関しては,サーモグラフィで鼻腔付近の温度変化から呼吸を計測する手法が代表的な方法である.本研究グループでは,CCDカメラとサーモグラフィを併用することで非接触に心拍・呼吸・体表面温度を計測し,高感度な感染症スクリーニングシステムを開発している.しかし,同システムには被測定者の体動により生じるノイズの除去や顔の自動検出によるシステムの自動化などの課題がある.本研究では,顔と鼻のトラッキングを新たにシステムに導入することでノイズ除去とシステムの自動化を実現した.また,システムの心拍数と呼吸数の推定精度についてBland-Altman法と記述統計により評価を行った.

  • 新関 久一, 鵜川 成美, 齊藤 直
    2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S274
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    睡眠は生命維持に不可欠な生理的欲求であり,睡眠不足とくに徐波睡眠の欠如は,肥満や高血圧,糖尿病,記憶障害など様々な疾患の素因になると考えられている。したがって睡眠時にどの程度徐波睡眠が現れるかを定量的に評価することは重要である。睡眠段階の推定には睡眠ポリグラフ検査が用いられるが,脳波,眼電図,筋電図の計測が必要であり,また睡眠段階の判別は時間を要するため,簡便な計測法の開発が望まれている。従前から睡眠段階と自律神経活動との関連が示唆されており,ノンレム睡眠からレム睡眠への遷移では交感神経活動が賦活し,ノンレム睡眠では副交感神経活動が亢進する。先行研究で呼吸性不整脈(RSA)の位相同期度(λ)は自律神経活動の指標になり得ることが明らかにされており,本研究ではλが徐波睡眠を予測する指標になるのではないかと推測し検討を行った。25名のボランティアで睡眠時に脳波と心電図の同時計測を行った。心電図のR波間隔からRSAを抽出し,R波の振幅変調から呼吸を推定した。RSAと呼吸の瞬時位相差からλを10秒の窓で算出し,2分間の移動平均を求めた。脳波からδ波を抽出し,その振幅を求めた。δ波振幅とλの相互相関解析および自己相関解析から,λとδ波振幅の相関は高く,その周期はほぼ一致することが明らかとなった。λは睡眠時の徐波睡眠時間帯を推定する指標になりうると結論した。

  • 天野 有二, 鈴木 彰文
    2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S275
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    肺音(呼吸音)の聴取は肺疾患等の診断において重要な役割を担っている。肺音の特徴分析により、聴診における診断支援・定量化、肺音のリアルタイムモニタリング、長時間記録された肺音の自動分析などの実用化が期待できる。本研究ではクラックル(断続性ラ音)の特徴分析について検討を行った。クラックルは一つの波形において周期が時々刻々と変動することが多いため、一波形全体をフーリエ分析するだけでは特徴の抽出が不十分であり、IDW(initial deflection width)・2CD(two cycle duration)などの指標があわせて使用されてきた。解析信号を用いて、クラックルの瞬時周波数および瞬時帯域幅を求めた。さらに瞬時周波数の高さや変動の様子を視覚的に把握しやすくするために、瞬時周波数に対応する色で波形に色付けすることを試みた。100 Hzから1.8 kHzの範囲において対数スケールの瞬時周波数と色とを対応させ、色付けをした。解析には教育用CDに収録された肺音を使用した。コースクラックルは気管支拡張症および肺炎、ファインクラックルは肺線維症、過敏性肺臓炎および関節リウマチのものを用いた。コースクラックルについては瞬時周波数により波形の特徴を示すことができた。肺音波形を色で表示することでクラックルの特徴を視覚的にわかりやすく示すことができており、一つの表示手法として有効であるといえる。

  • 小林 晃太郎, 中尾 恵, 徳野 純子, 陳 豊史, 松田 哲也
    2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S277
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    イメージング機器の進歩により微小結節が発見される機会が増加している。術前にはCT画像が撮影されて、結節の位置を把握後に手術が行われるが、手術時に肺は脱気して変形するため、結節の位置が異なってしまう。そこで、本研究では手術中の微小結節の位置を同定できるように脱気変形のモデル開発を目指している。その前段階として脱気変形の知見を得るために、ビーグル犬の摘出肺を対象に離散ラプラシアンに基づいた位置合わせにより表面変位の解析を行い、変位量をカラーマップにして表示した。位置合わせにより算出した変位と手動でポインティングにより算出した変位の差は平均で1mm程度であり、変位分布に大きな誤差がないことを確認した。また、変表面位は肺門部からのユークリッド距離に対して滑らかに変位している傾向がみられた。

  • 坂井 仁美, 前田 寿美子, 高野 則之
    2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S278
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    肺表面に嚢胞や腫瘍が発生する原発性自然気胸や肺腫瘍といった肺疾患に対する治療には,主に自動縫合器を用いて患部を含む肺組織を部分的に切除する手術が行われている.手術により原因となる部分を切除することで,再発リスクは大きく低下するとされている.しかし,原発性自然気胸では,治療後に手術で縫合した切除線であるステープルライン近傍で肺嚢胞が新たに発生し,再発する場合がある.一方,肺腫瘍に対しても同じように部分切除により治療を行うが,術後に肺嚢胞が形成されて気胸を起こす確率は圧倒的に低い.これらの切除法の最大の違いは,ステープルラインの形状である.肺嚢胞に対しては,局面をなす肺表面に対して直線状(I型)あるいは外に凸の形状に切除する.一方,肺腫瘍に対しては肺の深部に向かって凸(V型)に切除する.ステープルラインの形状の違いがその周辺に及ぼす張力および方向性に影響を与えている可能性が考えられる. 本研究では,肺の構造を考慮し,I型およびV型それぞれの部分切除を行った2種の簡易モデルを作成した.これ対し,FEMAP with NX Nastranを用いて有限要素解析にてステープルライン周辺に発生する応力を解析,比較した.その結果,フォンミーゼス応力での解析において,I型モデルで肺嚢胞が再発するとされているステープルライン端にV型よりも高い応力が発生する傾向が見られた.

  • 原 伸太郎, 磯山 隆, 斎藤 逸郎, 小野 俊哉, 阿部 裕輔, 安樂 真樹
    2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S279
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    近年、救急領域においてECMOのデバイス開発や術後管理などが飛躍的に発展したことで重症呼吸不全による世界的に普及が進んでいる。今後、ECMOを用いた治療は移植へのブリッジデバイスとしての長期耐久性や管理、小児用のECMOといったことが中心に開発されると考えられる。小児用ECMOとして用いる装置が成人用と異なる点として、体格の小さい子供には成人用はプライミングに必要な充填量が多いこと、小児は成長に応じて必要な血液流量が増加していくことが挙げられる。特に血液ポンプでは、カニューレや人工肺による圧力損失を補償するために高揚程・低流量な差圧流量特性が必要であり、また長期耐久性となるとvWFなどの断裂を防止するために低回転数での駆動も必要となる。そこで本研究では、ECMO用血液ポンプとして開発しているシーケンシャルフローポンプを小型・低回転化するために、数値流体解析を用いた検討を行った。境界条件は仮想流体として密度1045kg/m3、粘度3.6mPa s、回転数と流量をパラメーターとして差圧流量曲線、流体効率およびせん断応力などの検討を行った。結果として、これまでとインペラー形状を大幅に変更することで、回転数2000rpmでの流量3L/minの条件の時に374mmHgの差圧となった。また流体効率は最大15.3%とこれまでのシーケンシャルフローポンプの中で最も高い効率となった。

  • 住倉 博仁, 川越 佑智, 大沼 健太郎, 花田 繁, 築谷 朋典, 水野 敏秀, 本間 章彦, 武輪 能明, 巽 英介
    2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S280
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    本研究では、急性虚血性腎障害に対し、選択的腎灌流を迅速、かつ低侵襲で実現可能なカテーテル式血管内留置型血液ポンプの開発を実施している。今回、カテーテル式血液ポンプのポンプ性能の向上を目的とし、数値流体解析(Computational fluid dynamics 以下、CFD)と遺伝的アルゴリズム(Genetic algorithm 以下、GA)を応用した自動最適化システムを構築し、高いポンプ性能を実現する血液ポンプの形状に関し基礎的な検討を行った。本研究にて構築した自動最適化システムは、3次元CAD (SolidWorks/SolidWorks Japan)、汎用数値流体解析ソフトウェア(STAR-CCM/Siemens)、および最適化ツール(HEEDS/Siemens)から構成した。最適化における目的関数は、ポンプ性能の向上を目的とし、揚程の最大化とした。解析モデルの設計変数は、血液ポンプにおけるインペラの流入・流出角(3変数)、インペラ軸径(2変数)、および流出口の高さ(1変数)を設定した。CFDは、解析結果より圧力分布を求め、揚程を算出した。また、GAの計算は、初期世代数30固体、進化させる世代数20世代とした。最適化の結果、オリジナルデザインと比較し、揚程に関して優位な形状が多く生成された。また、最適デザインは、オリジナルデザインと比較し、14%の揚程の向上が確認された。

  • 築谷 朋典, 水野 敏秀, 武輪 能明, 片桐 伸将, 竹下 大輔, 角田 幸秀, 飯塚 慶, 秋山 大地, 巽 英介
    2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S281
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    動圧軸受を応用した非接触駆動の遠心ポンプを中心として,カニューレ,金属製コネクタ等を併せて体外設置型補助人工心臓システムを完成させた.このシステムは左心補助,右心補助ともに適用することが可能であり主にBridge-to-desicionに用いることを想定している.これまでに各種非臨床試験を実施しつつ,従来評価基準の存在しなかった体外設置型連続流ポンプ補助人工心臓システムの評価ガイドライン作成事業の下その評価法についても併せて検討した.医療機器としての基準が確立している機械的・電気的・生物学的安全性試験以外の項目として,1. 水力学的性能試験2. 耐久性試験3. 溶血試験4. 慢性動物実験(左心補助,右心補助)を実施し,システムの基本性能ならびに安全性の評価を行った.1. 補助人工心臓システムは最大回転数の7000 rpmにおいて約10 L/minの流量を拍出可能であった.2. 拍動流下(平均流量5.0 L/min)において60日(1例のみ120日)間の連続運転が可能であった.3. 安定な回転を実現する最小の回転数である3000 rpmにおいても動物血を用いた溶血指数は0.01未満であった.4. 体外設置型補助人工心臓の現状を鑑み,左心補助3例,右心補助3例の慢性動物実験を実施し,いずれもポンプ内部および回路内に顕著な血栓形成を認めなかった

feedback
Top