生体医工学
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Annual58 巻, Abstract 号
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  • 日本生体医工学会
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 2-96
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー
  • 成瀬 恵治
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 98-99
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    我々の体は外界からだけではなく体内においても様々な力学的・機械的刺激(メカニカルストレス)を受容し、応答することで正常な生理機能を維持している.メカニカルストレスの受容応答機構は細胞分裂、発生過程、臓器機能発現など広範な時空間スケールにわたる生理機能の調節に寄与しており、メカニカルストレス受容応答機構の破綻が様々な病態に関与していることを示唆するエビデンスが集積されてきた.メカノセンサー分子→細胞→組織→臓器→個体レベルでの縦糸的研究に各種臓器の疾患という横糸的研究を加えた布陣をとり、メカノバイオロジーを切口とした病態解明を基に、新規治療法を開発するメカノ医療(メカノメディスン)の確立を目指し、これまでに数々の新規研究方法や研究システムを開発し問題を解決してきた.

    本講演ではメカノバイオロジーに関する基礎医学的研究、特にメカニカルストレス受容機構を概説し、その研究過程で派生した再生医療(自己集合化ペプチドを用いた3 次元培養+メカニカルストレス負荷システム)・生殖補助医療(マイクロ流路良好運動精子分離システム・ストレッチ刺激負荷受精卵培養システム)への展開を紹介する.

    参考文献

    1. Molecular identification of a eukaryotic, stretch-activated nonselective cation channel. Science, 285, 882-886, 1999.

    2. Mechanical behavior in living cells consistent with the tensegrity model. PNAS, 98, 7765-70, 2001.

    3. Subcellular positioning of small molecules. Nature, 411, 1016, 2001.

    4. Fabrication of reconfigurable protein matrices by cracking. Nature Materials, 4, 403-406, 2005.

    5. TRPV2 is critical for the maintenance of cardiac structure and function in mice. Nature Commun, 5: 3932, 2014.

    6. Elimination of fukutin reveals cellular and molecular pathomechanisms in muscular dystrophy-associated heart failure. Nature commun 10: 5754, 2019.

  • Suki Béla
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 100
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    Understanding, diagnosing and treating respiratory diseases is more important now than ever due to increasing pollution as well as the current and future pandemics. Inhaled air may contain dust, bacterial and viral particles that can irritate a person's nose, throat or airways. This irritation can easily turn into an allergic reaction. Furthermore, if particles reach deep alveolar regions of the lung, bacterial and viral particles can cause severe pneumonia leading to some form of acute respiratory distress syndrome (ARDS). For example, the SARS-Cov-2 virus can bind to cell surface receptors on type II alveolar epithelial cells and following internalization and replication, the virus may cause a lung disease, the Covid-19, which, in its severe form, invariably requires mechanical ventilation. The mortality rate of ARDS unrelated to SARSCov-2 is between 30% and 40%, whereas that of Covid-19 is higher than 50%. Thus, detection of particles, diagnosing the early symptoms and treating patients with the mild and severe form of lung diseases require tools that combine engineering and physics with biology, immunology and nanomedicine. In this presentation, I will discuss 4 areas of interdisciplinary research that are at the forefront of respiratory diagnostics and therapeutics. 1) Modeling the interaction of particle properties, airflow and complex airway geometry to better understand where inhaled particles are deposited. Our recent work suggests that particle transport in a complex branching structure can be modeled using a Markov chain approach which not only provides a deposition map, but can also be used to optimize inhalation strategies for targeted delivery of drug particles. 2) Mechanical ventilation methods to minimize the risk of full blown ARDS and maximize resources for optimal strategies ventilating patients. First, I will describe 2 types of mechanical ventilation, airway pressure release ventilation (APRV) and variable ventilation (VV), both of which have the potential to mitigate ARDS and accelerate recovery. Next, I will describe a new engineering method to safely individualize management of multiple patients using a single ventilator. 3) A novel method, called ZVV, which can be used both as a diagnostic and a therapeutic tool when ARDS patients require mechanical ventilation. The diagnostic aspect of ZVV is related to the specific mode of ventilation offered by VV, namely, that tidal volume and frequency is varied from cycle-to-cycle. Analyzing each breath separately, allows us to reconstruct the impedance spectrum Z of the respiratory system over a range of frequencies. Features of Z can in turn guide ventilation protocols, while VV itself helps recruiting the lung and hence minimizing ventilator-induced lung injury. 4) Mechanical vibrations utilized as therapeutic means to reduce irregular breathing in preterm infants. I will describe 2 methods of applying mild vibrations to infants that have the potential to reduce irregular breathing and hence the risk of sudden infants death syndrome. Before concluding, I will highlight possible areas where engineering and physics can be further utilized to solve outstanding biological and medical problems of our times. In summary, it may be expected that the presented engineering and physics methods together with other methods that already exist or are waiting to be developed, will help public health combat respiratory diseases in the future.

  • 山海 嘉之
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 101-102
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    「サイバニクス(Cybernics)」は、脳/ 神経科学、行動科学、ロボット工学、IT、人工知能、システム統合、生物学、心理学、哲学、倫理、法律、ビジネスなどの異なる領域を結びつける新分野であり、その展開が活発化している。「人」と「サイバー・フィジカル空間」を融合する「サイバニクス」は、ロボット産業、IT 産業に続く「サイバニクス産業」というイノベーション推進の中核を担うものであり、人・テクノロジー・医学を対象とする「生体医工学」の分野を更に発展させ大きく貢献できるものである。現在、サイバニクス・コンソーシアムでは、医療・福祉・生活(職場環境を含む)分野で、さまざまな革新的技術の創出、社会実装の推進、未来開拓への挑戦が進められている。

    サイバニクス領域の代表的な研究開発事例であるHAL は、脳神経系由来の生体電位信号によって人とHALをつなぎ、人とロボットを機能的に融合する世界初の「装着型サイボーグ」ということができる。生体医工学分野から見ても非常に興味深いものである。HAL を装着すると、脳と身体とHAL との間でのインタラクティブなバイオフィードバック(iBF:interactive Bio-Feedback)ループが構築され、神経と神経、神経と筋肉の間のシナプス結合が強化・調整される。新たな医療技術として医療機器承認された医療用HAL による機能改善・機能再生治療は、サイバニクス治療、HAL-Therapy、HAL- Treatment と呼ばれ、日・米・欧、アジア、中東などの国々で共通の医療機器プラットフォームとして展開が活発化している。ドイツでは公的労災保険が適用され、日本では従来は治療法がないとされた難治性神経筋難病疾患(SMA、ALS、筋ジストロフィーなど8 疾患)に対して治療効果が示され、公的な医療保険が適用されている。

    本講演では、「生体医工学のグローバル展開に向けて」という当該学術集会の大きなテーマに沿って、革新的サイバニックシステムによる医療イノベーションとその世界展開、また、非医療分野でのフレイル対策の観点から身体機能低下者への自立支援・生活支援、労働現場での作業支援、再生医療とHAL による新医療技術開拓への取り組み、予防・早期発見・健康管理のための動脈硬化や心機能などのバイタルセンシング、生活全般の観点から最先端AI ロボットによる作業代行など、医療・福祉・生活分野(職場環境を含む)における様々な革新的サイバニクス技術の展開について最新情報を交えながら講究する。

  • 伊達 勲
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 103-104
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    外科手術が低侵襲性を求められる時代となり、神経内視鏡による外科治療は患者への負担を軽減できる治療手技としてますます普及することが予想される。また、最近、神経内視鏡と顕微鏡手術の間に存在する、神経外視鏡によるdisplay surgery(heads-up surgery)が大いに注目を集める状況になっている。岡山大学脳神経外科では神経内視鏡・外視鏡による脳神経外科手術にいち早く取り組んできた。私たちの行っているこれらの手術ならびに手術室におけるそのセッティングについて、本講演ではビデオを中心に提示し、解説する。

    1.閉塞性水頭症に対する第3 脳室開窓術(ETV):従来の脳室腹腔シャント術に代わって第一選択になることが多い。軟性鏡の先端にCCD カメラが搭載され、画質が格段に向上し、安全性が高まった。

    2.脳室内腫瘍摘出:内視鏡下の生検で確実に組織診断ができる。症例によっては透明のシリンダーチューブを挿入しそのまま腫瘍摘出も可能である。

    3.下垂体腺腫およびトルコ鞍近傍腫瘍に対する内視鏡的経蝶形骨洞手術

    神経内視鏡単独で行っている。磁場式ナビゲーションの併用、high vision から4K への高画質化を進め、より精細な画像で手術を行っている。

    4.顕微鏡と神経内視鏡を併用するhybrid 手術

    神経内視鏡は視野角が0 度だけではなく、30 度、70 度など顕微鏡では見えない部分を見るための視野角が設定されている。顕微鏡と神経内視鏡を併用する手術をhybrid 手術とよんでいるが、その代表的症例のビデオを提示する。

    5.3D の外視鏡導入- heads-up surgeryの幕開け

    外視鏡が3D で、かつhigh vision あるいは4K の高画質となり、3D 眼鏡をかけてdisplay を見ながら行うheads-up surgery が注目を集めている。術者、助手、手術を学ぶ研修医や学生、を含め、手術室内にいる全員が術者と画面を共有しているため、術者との一体感が強く、教育機関における手術指導の効果は大きい。外視鏡は顕微鏡に比べて鏡筒がないためはるかに小さく、また術者は頭をあげて正面のdisplay を見ながら手術を行うので、疲れも少ない。岡山大学では2018 年より3D 外視鏡を用いた手術を導入し、従来、顕微鏡で行っていた手術を3D 外視鏡で行う手術に少しずつスイッチしている。

    以上、私たちが行っている神経内視鏡・外視鏡手術の実際を動画を中心に紹介したい。

  • 平木 隆夫
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 105
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
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    CT を撮影しながら、CT 画像をガイドに病変に針を刺入して行うInterventional Radiology(IVR)(日本語名:画像下治療)には、肝がん、腎がん、肺がんなどがんの治療が可能なアブレーションや腫瘍に対する生検、膿瘍に対するドレナージなど様々な手技がある。体に切開を加えることなく針を刺入するのみで行えるため、患者の体に優しく(低侵襲)、超高齢化社会におけるがん医療として需要が高まっている。しかし反面、CT 装置の近くで手技を行う医師は被曝するという欠点がある。我々は、岡山大学での医工連携により2012年からCT ガイド下IVR 用の針穿刺ロボット(Zerobot®)を開発している。2014 ~16 年度には日本医療研究開発機構(AMED)委託事業「医療機器開発推進研究事業」として研究開発をすすめ、医薬品医療機器総合機構(PMDA)からの助言も踏まえながら、2015 年度末には臨床応用可能なロボット(委託製造元:メディカルネット岡山)を完成させた。ロボットは6 自由度の動作が可能であり、操作インタフェースを用いて遠隔操作できるため術者は被曝しない。基礎安全性試験や電磁両立性試験を含む多数の非臨床試験を実施し、ロボットの性能および安全性を評価した後、2018 年には、初めての臨床試験(First-in-Human 試験)を特定臨床研究(jRCTs062180001)として実施した。10 例の患者において腎、肺、副腎、縦隔、筋など様々な部位でロボットを用いた生検を行ったが、全例で成功した。ロボットの製品化を目指して2020 年度はAMED 委託事業「革新的がん医療実用化研究事業」にて医師主導治験を開始する予定となっている。

  • 荒木 元朗
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 106-107
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
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    近年、手術支援ロボット(da Vinci サージカルシステム)手術、いわゆるロボット手術が導入され、急速に普及している。日本でda Vinciは2009 年11 月薬事承認され、2012 年4 月に前立腺がんのda Vinci 手術(ロボット補助下前立腺全摘(RALP))に対して初めて保険が適用された。2016 年4 月には腎臓がん手術(ロボット補助下腎部分切除(RAPN))も保険収載された。ここまではすべて泌尿器科領域の手術であった。2018 年4 月に新たに12 術式の保険収載が認められ、肺がんや直腸がん、胃がんなどにも拡大し、ロボット手術数は増加傾向にある。日本は米国に次ぐ世界第二のダビンチ保有国であり2018 年3 月時点で約300 台が国内に存在し、アジア全体の半分以上のロボットが日本に存在する計算になる。

    ダビンチは低侵襲手術において革命的な変化をもたらしている。ダビンチの特徴は以下の3 つである。

    1.低侵襲:傷が小さい、出血が少ないという従来の腹腔鏡手術の利点を保持

    2.良好な視野:拡大視野かつ三次元視野(3D)

    3.細かい操作:手術操作を行う鉗子が関節機能を有し、人間の手以上の細かな作業が可能

    前立腺癌に関してはメタアナリシスにおいて開腹術と比較してロボット手術は

    1.出血・輸血率が少ない

    2.尿禁制が優れている

    3.癌の断端陽性率が低い

    4.勃起神経温存に優れている

    ということが示された。

    また腎癌に関しては大規模多施設共同研究において従来の腹腔鏡手術と比較してロボット手術は

    ・Trifecta(断端陰性、合併症なし、温阻血時間≤25 分)の達成率が高い

    ことが示された。

    このように従来の方法と比較しより良好な結果が示されている。

    他に泌尿器科領域では保険適応外であるが他に腎盂尿管移行部狭窄症に対する腎盂形成術や腎腫瘍・腎動脈瘤・尿管狭窄などに適応のある自家腎移植も行われている。岡山大学はこれらの手術を日本で初めて行った。

    問題はコストである。定価2 億7000 万円という本体価格と毎回の手術にかかるdisposable のポート及び鉗子代のコスト削減が望まれる。

    最近ダビンチ以外の手術支援ロボットも発売され、この領域は益々の発展が期待される。

  • かみや ひろゆき 神谷 浩之
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 108-109
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー
  • 熊谷 岬, 田中 明, 吉澤 誠
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 110
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    近年,撮影した皮膚映像の色変化から脈波(映像脈波;VPG)を非接触で抽出し,心拍数などの生理指標を得る技術が注目されている.また,同時に計測された複数点の脈波間の伝播時間(PTT)の差と血圧との間に相関があることも報告されており,血圧推定への応用も期待されている.しかしながら,PTTは血圧だけでなく血管のコンプライアンスによっても変化するため,血圧推定のためにはキャリブレーションを定期的に行う必要があることが知られている.一方で,我々の研究グループでは周期成分分析(PiCA)を繰り返し行うことで従来法と比べより精度の良い脈波抽出法を提案し,VPGの脈波形状に対して指尖容積脈波と同様の解析が行える可能性を示した.そこで本研究では手腕部を対象とし,血圧および末梢血管のコンプライアンスの変化がPTTと脈波形状に与える影響について検討した.手の昇降や温熱刺激などによって末梢部位の血圧や血管抵抗を変化させた際の映像から提案手法を用いてVPGを抽出し,PTTや脈波形状の特徴量の変化について比較した.その結果,末梢の血行動態の変化に応じて,脈波伝播速度だけでなく,加速度脈波解析におけるパラメータなどの形状から得られる指標も特徴的な変化を示した.これらのことから,血圧の変化と血管コンプライアンスの変化によって脈波伝播特性がそれぞれ異なる変化をすることが明らかになった.

  • 冨成 直紀, 土肥 健純, 桑名 健太
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 111
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    近年,超音波診断装置の性能向上により,胎児期に発生する疾患の発見が可能となった.胎児期疾患は胎児期に治療を行うことで出生後の障害を抑制できることが報告されており,胎児期治療は今後の発展が期待されている.胎児期治療後の経過観察において胎児は母体内にいるため,体外から母親と区別して生体情報を計測することは難しい.そのため胎児にセンサを取り付けて計測を行う研究がなされているが,センサの生体適合性,電力供給の問題がある.そこで本研究では微小気泡を含む感圧モジュールの超音波ドプラ画像解析に基づく圧力計測を基盤とした生体情報計測法を提案し,圧力計測法の原理確認を目的とする.提案手法の実現には超音波診断装置と微小気泡が封止された感圧モジュールを用いる.感圧モジュールは体内に埋植され,体内の圧力変化をモジュールの薄膜部を介し,内部の空間に伝える.圧力変化したモジュール内部を超音波診断装置で撮像すると,圧力変化に伴う微小気泡の挙動変化により超音波画像の輝度値に変化が生じる.この輝度値変化を画像処理により解析し,圧力を推定する.本演題では管路内に微小気泡を封入し,管路内圧力を変動させることで感圧モジュールが圧力を受けた状態を模擬し,超音波パルスドプラ画像の輝度値解析を行うことで原理確認を行った.その結果, 0-20 kPaの圧力範囲において,高輝度値領域の画素数が圧力増加に伴い直線的に増加することを確認した.

  • 大矢 貴史, 大友 春輝, 菊地 鉄太郎, 佐々木 大輔, 松浦 勝久, 清水 達也, 福田 憲二郎, 染谷 隆夫, 梅津 信二郎
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 112
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    日本において創薬コストの削減は大きな課題である。創薬コストの削減を達成するために近年注目されている手法は、ヒトiPS細胞由来心筋細胞を利用した、前臨床試験である。現状の前臨床試験は、主に動物実験により行われているが、ヒトと動物では、種間特性・薬物動態が異なることから、必ずしもヒトと同じ薬効を示さないことがあった。この課題を解決するために、ヒトに近い反応を示すヒトiPS細胞由来心筋細胞により構築したin vitroの細胞組織を利用した薬効評価システム確立に関する研究が注目を集めている。本研究では、作製したヒトiPS細胞由来の細胞外電位などの情報を低侵襲なモニタリングが可能な、厚さ500 nmの超薄膜センサの開発を行った。開発したセンサは、生体適合性を有するパリレンフィルムをベースとしており、細胞外電位を計測するための厚さ100 nmの金電極がパターニングされている。非常に薄いため、測定対象物表面の複雑な形状に沿うように対しても密着し、動きに追従しながら細胞外電位のモニタリングが可能である。作製した超薄膜センサを利用し、ヒトiPS細胞由来心筋細胞の拍動に追従しながら、細胞外電位を多チャンネルで測定することに成功した。また、アドレナリン等の薬剤に応答する様子を細胞外電位波形から確認することに成功したため、作製したセンサはヒトiPS細胞由来心筋細胞の薬剤応答を評価するためのセンサとして、有効であると考えられる。

  • 久保田 康佑, 眞田 笑吉, 吉田 和弘, 酒井 利奈, 氏平 政伸
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 113
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    【背景】体内埋め込み材料として用いられているチタンは、骨との親和性が高い事から癒着を引き起こしデバイスの抜去に難渋するという問題がある。そこで優れた生体適合性と硬度を有するDiamond Like Carbon(以降DLC)をチタンにコーティングすることで骨との癒着を防止する材料になり得ると考えた。本研究は、DLCコーティングが骨形成抑制へ与える影響をin vitro試験により評価することを目的とした。【方法】純チタン2種プレートにイオン化蒸着法によりDLCコーティングを施した。比較対照には純チタン2種を用いた。細胞にはマウス頭蓋冠由来骨芽細胞様細胞(MC3T3-E1)を用いた。培養液は α-MEM [10 % ウシ胎児血清、1 % 抗生物質添加]を用い、37℃、5 % CO 2インキュベータ内で培養した。骨形成抑制評価は、DLCおよびチタンプレートにそれぞれ培養面積0.3 cm2となるシリコン製チャンバーを取り付け、6 × 104 cells/mlの細胞懸濁液を0.2 ml/wellで播種し、4日間培養を行った。培養後、血球計算版を用いて細胞数を数え、ラボアッセイTMALPを用いることで単位細胞数当たりのALP活性を算出した。【結果・考察】DLCコーティングチタンのALP活性はチタンに比べて有意に低い値を示した。これより、DLCコーティングチタンは骨形成を抑制する可能性が示唆された。

  • 中間 菜月, 服部 薫, 高田 淳平, 西村 剛毅, 森脇 涼, 川崎 瑛太, 長尾 充展, 後藤 康裕, 坪子 侑佑, 岩崎 清隆
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 114
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    大動脈二尖弁疾患とは通常3枚ある弁尖が分離発育せず2枚となる先天性疾患である.弁尖が癒合する位置や交連角度の違いにより弁開口形態が多岐にわたり,上行大動脈拡大に影響するとされるが,弁形態ごとの上行大動脈の血流パターンは明らかでない.本研究では,二尖弁疾患における弁形態と上行大動脈の血行動態との関連を定量化するべく,生体大動脈の流量・圧力環境を創出可能かつ,4D-MRIを用いた流れの可視化と血行力学的パラメータの計測が可能な拍動循環シミュレータを開発した.

     4D-MRIでの撮像を可能とするため拍動回路の構成要素には非磁性体材料を採用し,流体循環部がMRIのガントリー内に設置可能なサイズに設計した.左室モデル,大動脈弁モデル,弓部大動脈モデル,大動脈コンプライアンスタンク,リザーバタンクからなる一巡回路として構成し,左室モデルの駆動空気圧と末梢抵抗により体循環の血圧・血流を調節可能とした.トリムしたウシ心膜をウシの下行大動脈に縫合することで弁尖枚数や交連角度を任意に設定可能な大動脈弁モデルを作製し,弓部大動脈モデルはヒトの解剖学的形状を模擬し,撮像時のアーチファクト低減のためシリコーンのみで作製した.

     三尖の大動脈弁モデルにおいて4D-MRIで撮像した結果,ヒト上行大動脈の流れと同様に左室最大収縮時に直進,収縮末期には時計回りに回旋する流れを取得でき,MRI環境に対応した拍動循環シミュレータを新たに開発できた.

  • 佐藤 有理生, 中谷 慎太郎, 西田 信一朗
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 115
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
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    輝度が正弦波的に振動する視覚刺激を注視したとき、対光反射はその振動と同調することが近年明らかになった。また、左右一方の瞳にのみ光刺激が行われた場合,対光反射は同側だけでなく対側の瞳孔に対しても生じることが知られているが,左右の瞳に対して異なる光刺激が行われた場合の対光反射については議論の余地がある。この研究では、左右の目に異なる周波数の視覚刺激を入力したときの瞳孔の収縮の時間変化について示す。10名の実験参加者を対象に、左目に1.2Hz、右目に1.5Hzの視覚刺激を与えたときの応答を計測した。瞳孔径の時間変化について周波数解析を行った結果、視覚刺激と同じ2つの周波数帯にスペクトルのピークが検出され、瞳孔の時間的変化は2つの波形の重ね合わせとして観測されることが明らかになった。この結果は、瞳孔に生じる対光反射は左右の瞳への光刺激を等しく扱っている可能性を示唆している。この研究は、定常刺激型注視物体認識システムの研究だけでなく、医学やその他の分野への応用も期待できる。

  • 谷城 博幸
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 116
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
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    平成25 年の薬事法改正で、単体としてはそれまで法規制外として扱われてきた医療用ソフトウェアを医療機器プログラムとして医療機器規制の枠組みに取り込んだ。医療機器プログラムは、ソフトウェアとしての「動的」な特性を生かし、改良に向けた設計開発コンセプトをそのままに、試行段階から製品化までを具現化することが容易である。医療機器を取り巻く現状に目を向けると、医療機器プログラムに限らず、ソフトウェアの「動的」な特性を生かした医療機器の開発や改良が国内外でも目覚ましい。AI を活用した昨今の診断用医療機器を例にとれば、旧来の医療機器と比べてもかなり「動的」であるといえる。

    一方、薬機法下でも、先駆け審査指定制度の試行的導入や再製造単回使用医療機器の制度化等が図られ、それらの制度を活用した今までにない新たな医療機器も承認されている。先駆け審査指定制度をはじめとする試行的に導入された制度については法制化が進められ、令和元年12 月に改正薬機法が公布された。また、「動的」な考え方を生かした医療機器規制も改正法の中で制度化された。改正薬機法の趣旨には、「動的」な規制への姿勢を伺うことができ、審査においてもその姿勢に追従して臨む必要性があると考える。

    本講演では、新たな規制の枠組みの下、「医療機器レジストリ」の活用等も意識した「動的」な医療機器審査の方向性について講演する。

  • 月原 弘之, 本村 昇, 佐久間 一郎, 小野 稔, 髙本 眞一
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 117
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
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    近年、各方面において様々な医療データベースが構築され、各分野において医療・福祉の質の向上を目指した応用が期待されている。心臓血管外科分野においては日本心臓血管外科手術データベース(JCVSD)が構築された。1999 年にその概念が作られ、大学病院医療情報ネットワーク(UMIN)を介したデータ入力が開始された。その後参加施設および登録症例数は継続的に増加し、2019 年12 月現在、成人心臓血管部門ではそれぞれ597 施設、673,547 症例、先天性部門ではそれぞれ120 施設、89,565 症例にのぼり、現在では全国の全施設より全ての手術症例が登録されている。

    入力項目はthe Society of Thoracic Surgeons(STS)National Database に基づいて作成され、現在、項目数は約500 へと増加している。大きく術前、手術、術後情報に分けられ、それぞれについて詳細が入力される。JCVSD データに基づきリスクモデルが構築され、本邦におけるリスク解析モデルであるJapanSCORE が作成されてその有用性についても報告されてきた。また、データの質の管理と向上を目的として定期的なサイトビジットが実施され、非常に高い入力の正確性も報告されており、現在の日本の心臓血管外科手術を評価する上で極めて重要な役割を担ったデータベースとなっている。

    この全国データを利用した様々な研究プロジェクトも遂行され、解析結果が世界へ発信されている。今後は外部機関との連携により、データベースを活用した医療技術の評価および医療機器開発への応用・展開も期待される。

  • 諸岡 健一
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 118
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    近年,人体臓器を撮影対象としたMR・CTや4K内視鏡,細胞・組織を含む人体標本を撮影するスライドスキャナなど,医療画像装置の高精度化に伴い,高精細な画像を使った診断・治療が行われている.この高精細医療画像から,これまでの画像では得られなかった情報(例えば,細い血管)を捉えることが可能となり,それにより診断・治療の正確性の向上が期待できる.一方,人工知能(Artificial Intelligence: AI)は,一般画像,音声,自然言語処理など様々な分野で優れた性能を示し,医療分野においても,CT・MR画像からの人体組織抽出や癌検出など画像診断では様々な成果が報告されている.また,治療におけるAIを導入した研究も最近盛んに行われている.我々は,これまで,医療画像から人体組織の3次元形状を復元し,その形状情報とAIを用いた治療・診断支援に関する研究を行っている.この3次元形状は,患者体内の状態を3次元的に捉えやすいことから,患者への説明や手術計画に用いられる.また,臓器の3次元形状を使って治療中の患者体内を再現することで,手術手技を訓練する手術シミュレーションや,手術中に患者体内の情報を提供する手術ナビゲーションなどへの応用もある.本発表では,これまでの研究成果を示しつつ,3次元形状とAIの診断・治療応用について紹介する.

  • 古川 亮, 岡 志郎, 田中 信治, 川崎 洋
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 119
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    軟性内視鏡での診療において,腫瘍のサイズを知ることは,治療の方針を決定するために重要であるが,従来行われてきた目視での計測や,メジャー鉗子での計測は,さまざまな人的要因による推定誤差の問題などがあり,より客観的な計測手法が求められている.さらに手術ロボットが医療現場で利用されるようになってきており,内視鏡による3次元計測技術の重要性が高まってきている.我々の研究グループは,従来の内視鏡の鉗子孔に対して超小型パターン光源を挿入することで,3次元計測を可能にするシステムを開発してきた.我々のシステムでは,DOEと呼ばれる光学素子を利用することで,対象までの距離にあまり影響されずに,明瞭なパターンを投影することができる.投影されるパターンは格子パターンに段差によるコードを付加したもので,内視鏡画像からCNNによって高精度に格子構造と段差コードを取得することができる.これにより,高い精度で3次元計測を行うことができる.本講演ではこのシステムの技術要素と,3次元計測結果を紹介する.

  • 中村 光宏
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 120
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    近年,患者の遺伝情報や生体情報に基づいて患者個々に適切な治療を行う個別化医療が注目されている.その一方で,個別化医療の実現に向けた膨大な数の遺伝・生体情報で構成されるデータベースを基にしたデータマイニングの研究が隆盛を極めている.医用画像もまた人体の解剖学的構造や病変の有無を写し出す絵だけではなく,患者個々の形質を特徴づけるマイニング可能なデータであると考えられており,そのデータを定量的に解析するRadiomicsが脚光を浴びている.Radiomicsとは,放射線医学の“Radiology”に生物学分野におけるデータを統合し網羅的に解析する研究領域を意味する“-omics”を加えた学術分野である.Radiomicsでは,腫瘍などの関心領域から肉眼的に確認できない高次元の定量的画像情報(腫瘍球面性や画像ざらつき,画素統計量など)であるRadiomics特徴量を抽出し,それらと臨床データや病理組織学的データ,分子生物学的データなどを相関させて,腫瘍の組織型や悪性度といった表現型あるいは腫瘍の表現型に依存する患者の予後や治療効果に注目した研究が進められている.本研究の目的は, CT画像から得られるRadiomics特徴量に基づいて肺定位放射線治療の予後を予測することである.臨床情報やRadiomics特徴量を複合的に扱うことで,高精度かつ低侵襲に予後を予測できれば,早期肺癌に対する治療戦略を変更でき,個別化医療の実現につながると期待している.

  • 吉元 俊輔
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 121
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    体組成や筋骨格の状態,身体運動や環境との相互作用といった身体ダイナミクスを簡便,高速かつ精緻に可視化することができれば,運動機能の評価や最適化が可能になり,健康寿命延伸やQoL向上への貢献が期待できる.小型で身体への調和性が高い計測装置の実現には,電気によるスマートな検出方法と機械学習による推定手法を駆使した,能動的電気センシングが有効である.これまで,インピーダンス計測により生体組織の組成分析や断裂などの異常検知を行う方法,前腕部の変形を電気的に検出することで手指の運動を推定する方法,電気接触抵抗を利用して接触圧力分布を計測する方法に代表されるように,対象部位への電圧印加により内部や界面のインピーダンス分布を検出し種々の情報を可視化する,能動的電気センシング手法を探求してきた.本発表では,その取組の一部を紹介する.

  • 田邊 宏樹
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 122
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    ヒトの社会認知や社会性に関わる脳機能研究は,その当初から現在に至るまで,そのような能力が個人の脳内でどのような神経基盤・脳内表現になっているのかを調べる研究がほとんどである。一方で,社会性の一側面が現れるコミュニケーション場面でのやりとりはリアルタイム性を持ち,ダイナミックで相互作用的であることにその本質がある。その点に着目し,社会的に相互作用している二人を対象としたいわゆる「ハイパースキャン研究」が,複数個体のリアルな相互作用を重視する研究者を中心に急速に広まっている。用いられる脳活動計測装置はさまざまであるが,最近ではMRIやMEGよりも二者相互作用の実験環境を容易に構築できるNIRSやEEGを使った研究が増加している。しかしながら,現状のハイパースキャン研究を一括りにはできない。計測パラメータをみても,MRIはBOLD信号,NIRSでは酸化・脱酸化ヘモグロビンの濃度変化,EEGやMEGでは神経細胞由来の電気的/磁場変化であり,時空間特性が大きく異なる。さらに現状では解析手法もバラバラであり,統一的な手法などはない。そこで本演題では,まずそれぞれのハイパースキャン研究についていくつか例を挙げて紹介し,この研究領域の現状と今後の展開について議論する。

  • 山脇 成人
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 123
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    働き盛り世代を襲ううつ病は、長期休職や自殺などの要因となり、その社会的損失は甚大であり、その脳科学に基づく治療法開発は喫緊の課題である。近年、fMRIを用いたうつ病の脳機能解析研究が急速に進展し、うつ病の神経回路異常などの病態解明が進んでいる。演者らはうつ病患者のfMRI脳機能解析から、意欲低下に関連する背外側前頭前野(DLPFC)の機能低下、反芻症状(くよくよと反復考える)に関連する後部帯状回(PCC)の機能亢進を認め、これが抗うつ薬(SSRI)治療によって改善すること、およびDLPFC-PCCの機能的結合がうつ病のバイオマーカー候補となることを報告した。一方、DLPFCとPCCの機能が拮抗関係にあることから、DLPFCを標的とするfMRIニューロフィードバック(NF)が、PCC機能も抑制し、うつ病の非薬物治療法となりうることから、探索的臨床試験を行った。その結果、抑うつ症状や反芻症状などが改善し、その抗うつ効果が確認された。次に、より簡便で実用化可能なうつ病のNF治療開発のために、健常人を対象に、DLPFCを標的とするfNIRS-NFを行い、抑うつスコア(BDI)、反芻スコア(RRQ)の改善度、安全性およびNIRS-NF前後のfMRIによる脳機能変化を解析した。本セッションではこれらの研究成果を紹介するとともにfNIRSの将来展望について私見を述べる。

  • 江田 英雄
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 124
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    近赤外分光法(NIRS)に関する最初の論文は、1977年にScience誌に投稿された。NIRSの1chの装置が製品化されたのは1990年代初頭であった。NIRSが計測するヘモグロビンパラメータは、脳活動や筋肉活動を説明する可能性を持っていた。その後、脳イメージングに使うNIRSは、機能的磁気共鳴イメージング(fMRI)と同様の名称として、fNIRSと呼ばれるようになった。fNIRSのISO/IEC国際規格は、日本が主導して議論をすすめ2015年に発行された。しかしながら、ほぼ同時期に開発が進められたX線CTやMRIの普及と比較すると、fNIRSの普及は高くない。本発表では、脳イメージングにあたってfNIRSのメリットを振り返るとともに、今後の課題をまとめる。

  • 清水 昭伸
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 125
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    胚子,小児,成人の死体を対象に,時間軸や空間軸に沿った多元計算解剖モデルについて報告する.まず,胚子や小児の時空間モデルを構築する際の少数サンプルの問題,急速な成長やトポロジー変化による問題を解決する新しい方法について述べる.次に,成人の死体の肺を対象とした深層学習ベースの超解像について紹介する.

  • 本谷 秀堅, 横田 達也, 清水 昭伸, 岩本 千佳, 大内田 研宙, 橋爪 誠
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 126
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    膵癌腫瘍の成長とミクロな解剖構造の関係を表現するモデルを構築する。いずれもKPCマウスの医用画像より構築する。前者の腫瘍の成長については時系列の全身MRI画像より構築する。後者のミクロな解剖構造については、腫瘍の3次元病理顕微鏡画像より構築する。腫瘍の病理顕微鏡画像の3次元化のために、まず腫瘍の標本を連続的に薄切し、すべての病理顕微鏡画像を取得し、次にそれら画像を積み重ねる。我々は(1)時系列MRI画像より対象の時間変化を正確に記述することと、(2)積み重ねた病理画像より滑らかな3次元画像を構築することと、(3)MRI画像中の腫瘍と3次元病理画像の対応付けをすることのそれぞれのために、新たな非剛体位置合わせ法を開発した。

  • 佐藤 嘉伸
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 127
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    運動器に関して、機能・病理・経時変化を統合したマルチスケール多元計算解剖モデルとその応用について述べる。具体的に、(1) 深層学習に基づく、医用画像からの筋骨格領域のセグメンテーション、(2) 個別化運動器バイオメカニクス解析に必要な解剖情報である筋付着部、筋線維走行など、筋骨格機能解剖のモデル化、および、(3) 大規模データベースからの筋骨格加齢変化モデル、について述べる。最後に、人工知能(深層学習)の発展も含めて多元計算解剖学の将来展望について述べる。

  • 森 健策
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 128
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    本講演では、人工知能と多元計算解剖モデルを利用した診断治療支援システムについて述べる。多元計算解剖学は、(1)空間軸、(2)時間軸、(3)機能軸、(4)病理軸の4 つの軸から人体の解剖構造を理解し、その結果を基に種々の種々の診断治療支援を行う新しい学術領域である。この4 つの軸で張られる空間の中において解剖構造を解析し、診断治療に必要な情報を提供することが求められる。人工知能、機械学習技術を用いることで、より的確な解析と情報の提示が可能となる。本講演では、機械学習を用いた解剖構造解析、10 倍程度のスケールの差異をカバーするマルチスケールレジストレーション、解剖構造解析に基づく内視鏡手術支援、そして、人工知能技術を用いたリアルタイム内視鏡診断支援システムを紹介する。機械学習を用いた解剖構造解析では、大量の画像データベースを用い、大局的な解剖構造から局所的な解剖構造までを解析可能者手法を紹介する。マルチスケールレジストレーションでは、マクロな構造とミクロな構造を対応付ける手法、ならびに、微細な解剖構造を取得できるマイクロCT 画像を用いて、臨床の場で撮影されるCT 像を高解像度化する手法を示す。内視鏡手術支援では、解剖構造解析結果に基づき腹腔鏡手術をナビゲーションする手法を紹介する。加えて、大腸内視鏡検査中に、機械学習技術を用いてミクロレベルでの形態解析に基づきリアルタイムで病理検査的診断を行う手法についても示す。

  • 小林 英津子, 馬 青川, 金 大永, 正宗 賢, 中川 桂一, 佐久間 一郎
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 129
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    手術ロボットの安全で効果的な制御システムを実現するためには、術中情報が有用である。しかし、この情報は限られているため、治療に対する正確応答を予測することは困難である。もし多元計算解剖情報を術中情報と組み合わせる、患者固有のモデルを構築することができれば、ロボットは術中の生物学的反応を正確に予測することが可能となり、より安全な治療が実現できる。以上の背景より我々は、(1)多元計算解剖モデルの個別化に有効な術中局所情報の取得法の開発、(2)術中局所情報と多元計算解剖モデルの統合による患者固有の多元計算解剖情報の構築手法の開発、(3)患者固有の多元計算解剖情報に基づく手術支援ロボットの制御法の開発を行ってきた。本報では、内視鏡下手術、口腔外科手術を対象に行ってきた以下の成果について報告する。(i)内視鏡下大腸外科手術を対象とした、術中限定情報と術前精密情報を組み合わせたナビゲーションシステム(ii)膵体尾切除術を対象とした、力学に基づく膵臓損傷の分析、(iii)口腔外科手術を対象としたナビゲーションおよびロボットシステム。

  • 成瀬 康
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 130
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

     我々は,いつでもどこでも計測が可能なウェアラブル脳波計の開発を行っている.これを利用することで,病院や研究室以外での脳波計測が容易となってきている.これにより,脳波を使った応用の範囲が広がっている.我々は,無意識や言語化が困難な情報を可視化することで初めて実現できるシステムの開発を目指した研究を行っている.例えば,音の違いに反応する事象関連電位であるミスマッチ陰性電位を利用したニューロフィードバックトレーニングにより,日本人が聞き分けることが苦手な「right」と「light」の違いが認識できるようになることを明らかにした.また,英語を聞いている時の脳波を計測し,N400に相当する事象関連電位を抽出することで,その人の英語の能力の推定が可能であることも明らかにした.さらに,テレビゲームを行っているときの脳波を計測し,エラーをしたときに発生する事象関連電位であるエラー関連陰性電位を抽出することで,ゲームへの没入度の推定ができる可能性が示唆された.このように,脳波を利用することで無意識および言語化が困難な情報を取り出すことができる可能性が示唆された.

  • 章 斯楠, 小野 弓絵
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 131
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    【目的】ヘッドマウントディスプレイ(HMD)は、仮想現実(VR)を体験する装置として普及しているが、使用中に頭痛や吐き気などのVR酔いを経験することがある。本研究ではVR酔いの発生を生体信号から判別するバイオマーカーの探索を目的として、VR視聴時の不快感に伴って現れる脳波と心電図の特徴について検討した。

    【方法】若年健常被験者5名に対し、HMD (HTC VIVE)を用いてCGで作製された30秒間のVR映像を座位にて視聴させた。視聴中の主観的不快感の変化をアナログ圧センサにより取得し、CG視聴中脳波のデルタ、シータ、アルファ、ベータ波帯域強度と心臓自律神経指標の変化を算出し、相関解析を行った。また、映像の視聴後にsimulator sickness questionnaire (SSQ)を取得してVR酔いの程度を評価した。

    【結果と考察】VR酔いが発生した被験者(SSQ > 40)において、主観的不快感の増減と統計的に有意な相関関係を示した生体指標として、頭頂葉のデルタ波帯域活動、中央部(Cz)・頭頂葉・後頭部のベータ波帯域活動が検出され、いずれも負の相関を示していた。心臓自律神経活動と主観的不快感との相関関係は確認できなかった。自己の空間・運動知覚の情報統合が行われる頭頂葉の脳波活動が、VR酔いのバイオマーカーとして有用である可能性が示された。

  • 押山 千秋, 三輪 洋靖, 安室 忍, 西村 拓一, 岩木 直
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 132
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    メンタルローテーション(以下MR)は心の中に思い浮かべたイメージを回転変換する認知的機能を使った課題である(Kosslyn et al., 1998).高齢者の脳では背側系の機能が弱まり腹側系の機能が相対的に優位になる(Moriguchi & Hiraki. 2009)ことから,MR トレーニングによって高齢者の背側系の神経基盤を強化すると,加齢による背側系の機能低下を減弱できる可能性がある.MR トレーニングは,幅広いニューラルネットワークの活性化した(Berneiser J et al. 2016)ことが明らかになっているが,回転負荷の違いによるトレーニング効果については明らかになっていない.そこで我々は,手のMR 課題を回転負荷の違う「難易度1」「難易度2」「難易度3」3 段階に分け,それぞれの難易度における高齢者の学習効果をfMRI で評価することを計画した.まず,適切な難易度設定を行うために予備実験として,参加者A に対して3 段階の難易度別にfMRI で評価を行い難易度を修正,脳活動に差がみられる難易度で参加者B をfMRI で評価,2 週間のMR トレーニング後に再評価,2 回のfMRI 評価から全体と難易度別でMR トレーニング効果を検討した.結果,全体では,空間処理を担う背側視覚系の活動が有意に増加し,物体の形などの処理を担う腹側視覚系と前頭前野で活動が有意に減少していた.難易度別では,トレーニングの効果がない難易度においては脳活動にもあまり変化がないことが明らかになった.この結果を参考に高齢者を対象に行ったMR トレーニングについても報告する.

  • 赤澤 堅造, 奥野 竜平」, 一ノ瀬 智子, 竹原 直美, 田部井 賢一, 近藤 瑛佑, 前田 義信
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 133
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    【目的】筆者らは文献レビューを実施し認知正常者、軽度認知障害、認知症患者において、楽器演奏が認知症予防に効果があることを示し、本学会において報告した。またアクセシブル電子楽器サイミスを開発し、健常高齢者が「故郷」などの簡単な曲を合奏できることを報告した。本研究では、中重度認知症患者を対象にして、スイッチおよびタッチパネルをユーザインタフェースとして、サイミス演奏ができるか否か、そして楽器演奏のために重要な認知機能を明らかにすると共に演奏時の感情を把握することを目的とした。また健常人を対象にしてエアバッグの利用の演奏可能性を明らかにする。【方法】認知症患者30名(平均年齢91.1歳±3.9、MSE14.1±5.0)を対象とした。タッチパネルまたはスイッチを使って、童謡を演奏した。神経心理検査としてMMSE、立方体・ネッカー立方体模写、FAB、NPIを、そして口頭でのインタビューを実施した。【結果】演奏不可能群Nと演奏可能群がいることが判明した。楽器演奏には視空間認知が保たれていることが重要であることが示唆された。N群は「楽しさ」を示しており、認知症予防として段階的に個人演奏の介人へと移行することができるか、今後の臨床研究で明らかにする必要がある。加えた力にエアバッグの圧が概ね比例することを確認した。演奏プログラムを開発し、エアバッグを利用して比較的容易に簡単な曲の演奏が可能であることを確認した。

  • 合田 明生, 志村 孚城, 伊藤 洋二, 村田 伸, 兒玉 隆之, 中野 英樹, 大杉 紘徳
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 134
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    認知症の問題行動は,認知症高齢者の在宅生活の継続を阻害する主な要因である。問題行動の緩和に向け,様々なロボットによる効果が報告されているが,コミュニケーションロボットを用いた報告は少ない。本研究では,コミュニケーションロボットを用いたロボット介在療法(Robot Assisted Activity;RAA)を行い,認知症高齢者における問題行動の緩和効果,およびその背景にある神経心理学的要因を検証した。対象は,認知症高齢者10名(年齢81.2±7.3歳,MMSE 21.3±5.0点)とした。通常ケア期間(3ヶ月)に続けて,RAA実施期間(3ヶ月,週2回,30分/回)を設けた。測定は,通常ケア期間前・後,RAA実施期間後の3時点で行った。測定項目は,問題行動の評価であるDBD,RAA実施前・後の唾液コルチゾールおよび安静時脳波とした。解析の結果,DBDおよび唾液コルチゾールには,各測定間で有意差はなかった。一方で脳波には,通常ケア期間前・後に比較して,RAA実施期間後に,RAA実施後のPzのα/βパワー比が有意に高値(p<0.05)を示した。Pzのαパワー増大は精神的リラックスを反映する。よって3ヶ月間のRAAにより,認知症高齢者ではRAA実施後のリラックス効果を得られるようになった事が示唆された。今後はRAAの頻度や期間を再考し,問題行動の緩和に向けたRAAプログラムを検討していく。

  • 伊藤 友孝, 白井 智貴, 渡邊 瑛亜, 鈴木 みずえ, 谷 重喜
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 135
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    超高齢社会を迎えた日本では,高齢者の生活の質(QOL)の維持と向上が重要な課題の一つである.特に,歩行中の転倒は重大な怪我を引き起こし寝たきりの状態に陥る危険性が高く,転倒の要因の解明と予防が急務である.本発表では,多数の高齢者の歩行の計測結果を基に,歩行タイプや転倒の危険性について分析を行う.そして,Tinetti歩行評価や転倒予防自己力感尺度,転倒リスクといった他の評価手法との関連について議論する.また,施設に設置して歩行状態のチェックや改善に用いることができる歩行訓練補助システムについても紹介する.歩行の状態を改善するためには,自らの歩行状態を正しく把握することが重要である.また,個々に異なる歩行特徴や転倒リスクに合わせてトレーニングを行うことも必要となる.今回の発表では,第一段階のプロトタイプを高齢者に実際に試用して頂いた結果を紹介する.

  • 志村 孚城, Tayebi Mourad, Evans Keiko
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 136
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    CKPTはMCI以前の脳の軽微な機能低下を検知する神経心理テストであり、認知症の研究がMCI以前にパラダイムシフトし始めた今日、国際的に注目されている(1-3)。2018年9月よりオーストラリアのチームと英語版を研究開発する共同研究を開始させた。英語版の新しポイントは、a:被検者の年齢を60歳以前にも対応できるように問題数の倍増、b:テストの実施時に使うパワーポイントの中にナレーター動画を組み込みテストを実施するテスターの説明差による誤差を極小化したことである。

    1)Takaki Shimura etal: A neuropsychological test(CKPT: Color Word Pick-out Test) to be able to detect the slight disorder of prefrontal lobe: classify the level of the preclinical stage of Dementia, 24th International Conference on Neuroscience and Neurochemistry, July23-24,2018 in Birmingham, England.2)Takaki Shimura etal: A Neurophycological test for Mild Cognitive Impairment and Preclinical Stage of Dementia, Global Conference on Oral Health & Mental Disorders,July 01-02,2019 in Rome, Italy.3)Takaki Shimura etal: CWPT(Color Word Pick-out Test) Available for Classifying the Slight Disorder on the Preclinical Stage of Dementia, HSOA Journal of Alzheimer’s and Neurodegenerative Diseases, 2-5,Sep.23,2019.

  • 小崎 慶介
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 137
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    重度の肢体不自由のある子どもとその家族にとっての生活上の困難さは単に運動機能障害に止まるものではない。当然合併する疾患や障害(知的、視聴覚、音声言語・咀嚼、発達障害など)によって様々な内容と程度の困難さがある。しかしたとえ障害が当初肢体不自由のみであったとしても、副次的に日常生活活動上、多くの制約を生じうる。これが本人や家族の社会参加の機会を日常的に制限し、結果として生じる経験不足から知的発達や対人コミュニケーション能力の発達を阻害する可能性がある。最近になって開発の進展が著しい各種の移動支援機器、コミュニケーション支援機器、入力支援機器などを、従来の制度運用上支給が認められてきた年齢よりも低年齢時から積極的に活用することにより、重度肢体不自由児の社会参加の機会が増加して従来よりも高い知的発達や対人コミュニケーション能力を獲得することが期待されている。これにより、当事者の意思決定支援が本人を取り巻く多くの関係者にとって容易になり、在宅生活を送ることを選択しやすくなるのではないだろうか?このような支援には、医療・福祉・教育・就労支援などの多角的な関わりが求められるが、2019年12月に施行された成育基本法がそのプラットフォームの役割を果たすものと期待される。

  • 植田 瑞昌, 東 祐二
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 138
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    近年、わが国では医療の進歩とともに新生児死亡率は激減し、世界一の水準にある。一方で重い障害が残り、医療的ケアが常に必要となる子どもは増加している。また、家庭用医療機器類など技術の進歩により、多くの重度の障害がある子どもが早期から自宅での生活を送ることができるようになった。しかし、重度の障害がある子どもは日常生活すべてにおいて介助を必要とする場合が多く、とくに排泄は生命・健康を保つために欠かせない行為でありながら、自立して行うことが難しい。また、その介助に対する本人及び家族の身体的・精神的負担は、非常に大きくなっている。さらに、日本のバリアフリー住宅の多くは、手すりの設置と室内段差の解消が基準となり、高齢者対応が主である。成長・発達過程にある障害のある子どものための住環境は十分とは言えない。特に重度の障害がある子どもは、適切な時期に適切な住環境・福祉用具を整えることが重要である。したがって、自宅で生活を送る重度の障害のある子どもとその家族のために住環境を整え、生活の質を向上させ、子どもの成長を促す環境づくりに関する研究は喫緊の課題であると考える。そこで、本セッションでは、障害がある子どもの排泄動作獲得までの事例をもとに、自宅で生活する重度の障害のある子どもの成長や発達を促すための住まいづくりと福祉用具について、建築学的観点から現状と課題を明らかにする。

  • 中川 誠司
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 139
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    聴覚は視覚と並んでコミュニケーションに重要な感覚であり,特に言語コミュニケーションにおいては主要な役割を果たす.とりわけ乳幼児期の聴覚環境は言語能力の発達に重要であり,乳幼児期に十分な聴覚情報が入力されない場合は,発話能力も十分に形成されないことが多い.一方,乳幼児においては成人と同様の手法による聴覚検査や聴覚補償が困難であり,独特の技術やノウハウが必要となる.本発表では,新生児や乳幼児を対象とした聴力スクリーニングや聴力検査の手法や,聴覚補償技術を紹介する.

  • 小谷 博子
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 140
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

     福祉のまちづくりを進めるためには、ハード整備を進めるだけではなく、整備したバリアフリー施設を円滑に利用するための人的支援や情報提供などのソフト面での対応を進める必要がある。私は、2017年より公共のプラネタリウム施設において障がい児や乳幼児の親子向けのコンサート活動を行ってきた。プラネタリウムでのコンサートを開催する理由は、重症心身障害児のような寝たきりの子どもも、桟敷席ならばゆっくりプラネタリウムを鑑賞でき、手助けが必要なときは、ボランティア学生たちがサポートすることで、暗く段差のあるプラネタリウムでも安心してコンサートと星の鑑賞を楽しめるようにサポートしたいという思いからである。コンサートを実施後のアンケートでは、93%の親が子どもはコンサートを楽しんでいたと回答し、97%が障害者や乳幼児でも参加しやすいコンサートであったと回答していた。外出(社会参加)の機会が制限される方々にとって、このようなバリアフリーイベントは「外出して楽しい時間を過ごすことが出来た」という成功体験を得られ、仮に不具合があっても、サポートしてくれるスタッフがいることによる安心感があり、その環境下で対処法を体験できることは大きな自信に繋がる。外に出かけてみようというモチベーションにより、イベントへの参加が「一生に一度の経験」ではなく、繰り返し経験可能なものに転換することができるのではないかと考えられる。

  • 朔 啓太
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 141
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    医療機器イノベーションを実現するためには、そのプロセスにおいて乗り越えなければならない障壁がある。魔の川は、研究ステージと製品化に向けた開発ステージの間に存在する障壁、死の谷は、開発ステージと事業化ステージの間に存在する障壁、ダーウィンの海は、事業化ステージと産業化ステージの間に存在する障壁である。研究を研究で終わらせないためにはこれらの障壁を越え、社会に届くまでの努力が必要であるが、必要とされる知識や技術は各ステージで大きく異なる。本セッションでは、特に出口に近い、ダーウィンの海のステージに焦点を当て、そこを越えるための知識や経験を有するエキスパートから教えを請いたい。

  • 鈴木 孝司
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 142
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    医療機器の開発・事業化のプロセスは非常に多くのステップで構成されている。大学発ベンチャーや異業種からの新規参入企業にとっては、流通のために必須不可欠な法規制対応(医療機器としての承認・認証・届出)がゴールになりやすいが、それは目に付きやすいハードルの1つであってゴールではない。同様に保険償還も収益化の手段の1つに過ぎず、それそのものはゴールではない。では医療機器ビジネスのゴールは何か?それはもちろんビジネスとしての成功であり、企業として適切な収益が得て、走り続けられる体制を確保することによって、安定的に医療機器の供給を継続することと、新たな医療機器開発に向けた投資をすることである。本発表では、医療機器ビジネスにおける収益化の仕組みについて概説すべく、まず保険制度や診療報酬制度(技術料・特定保険医療材料)について紹介し、特に技術料については、その根幹をなす考え方である「難易度、時間、技術力等を踏まえた評価(平成15年3月28日の閣議決定で定められた基本方針)」について言及する。また、保険外診療や健康増進に関するビジネスモデル等も紹介する。そして高額医療機器について、保険制度上の評価と病院経営上の考え方が異なる事例を紹介し、医療機器ビジネスを考えるきっかけを提供する。

  • 江川 民
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 143
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    革新的な医療機器を治療に携わる全ての人は常に求めていらっしゃると思います。メディカルデバイスメーカーも常に革新的で医療の質、ひいては患者さんの臨床アウトカムとQOLを改善するデバイスの開発を精力的に行っています。ただし、コンセプトは素晴らしくても実用化にいたらないケースや、実用化されても薬事承認に阻まれるケース、また薬事承認が取得できたとしても、デバイスの開発費、製造コストを賄うだけの保険償還価格が取得できないケースなど、これらが原因で継続したデバイス提供が困難になる側面もあります。メーカーが重要視する実用化に至るメディカルデバイスとは?その成功例と失敗例を交えながら、最重要ポイントを整理し、実用化に至るデバイスに求められる要素についてメーカーの立場から提言させて頂きたいと思います。

  • 櫻井 公美
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 144
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    医療機器開発の成功とは医療機器の承認をとることではなく、医療現場をはじめとする社会への実装化です。

    医療機器を実装化するには、医薬品医療機器法の規定に適合しなければならないのはもちろんのこと、販路開拓、市販後の管理等、多岐にわたるプロセスが必要であり、開発当初からプロセスの全体像を理解した上で事業に着手することが重要です。また、患者や医療従事者のニーズの把握、競合製品との差別化ポイントといったビジネスの視点も必要です。

    昨今海外では特に、大手異業種企業が医療ビジネスに参入し、医療テクノロジーのイノベーションが加速しています。10 年以上外資系企業で経験したこと、そして現在、スタートアップ企業の製品上市を支援している立場から、米国が世界の医療機器市場で40% のシェアを占めている理由を例に、医療機器開発に必要な新たな視点を提示します。

  • 田中 宏和
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 145
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    医療機器分野では世界中で常に新しいテクノロジーが研究・開発されている。企業の研究開発は、その製品を使用する医師・患者にとって如何に有用であるか、患者のQOL にどう貢献できるかを軸に行っており、同時に製品のイノベーションを絶えず行わなければ彼らの期待に応えることはできない。米国で開発された全く新しいコンセプトのマウスピース型歯科矯正装置(Invisalign)は、まさに患者の利益を最大化させるために開発されたものであったが、新たなイノベーションは市場に浸透するまでに大きな困難を伴う。本講演では、海外で開発された新しい医療機器がどのように業界や市場に認知され、日本においてもどのように広がってきたのかについて話をしたい。

  • 木阪 智彦
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 146
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    広島大学ではバイオデザイン部門を包含したトランスレーショナルリサーチセンターが設置され、県医療関連産業クラスター形成事業の一環として設けられた共同研究講座にて、インド政府と連携した独自のプログラムを構築している。また、日本医療研究開発機構(AMED)次世代医療機器連携拠点整備等事業の採択を受け、国際競争力を飛躍的に高める普遍的医療機器開発を目指した拠点整備を行っている。

    少子高齢化が進む昨今、先進国向けの高機能・高価格な機器開発を目指していては、国内市場の縮小への対応と、拡大する新興国市場への進出は成し得ないことから、現場ニーズを満たす必要十分な機能と品質を備え、患者の手が届く価格で提供可能な機器を日本の技術力と信頼性を活かし開発することと、そのための人財育成エコシステム構築を目指している。

    これまでに、インドバイオデザインにフェローを派遣し、教員養成と関係組織とのネットワーク構築を完了した。2019年には、ひろしまバイオデザインフェローコースを開設し多職種による医療機器開発を推進するとともに、経産省「地域中核企業ローカルイノベーション支援事業」を中国経産局から受託し、ものづくり企業への学術指導と高度医療施設でのバイオデザインコースを実施した。国内外での活動(AMED先行拠点や日本医師会との連携、国際共同研究に基づく企業との協働)について、医工学領域での知財化と社会実装の取組を報告する。

  • 田中 徹
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 147
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    我が国の65歳以上の人口割合は1985年に10%、2005年に20%を超え、2018年は28.1%となった。この上昇傾向は今後も続き、2040年には35.3%になると予想されている。この超高齢化に伴って医療費も急激に増加しており、2017年度の生涯医療費は一人当たり2700万円に達し、75歳以上で生涯医療費の4割となる1000万円を費やしている。一人当たりの医療費を抑制して医療財政の悪化を防ぐには、特に高齢者の健康維持が重要である。そのため、日常生活の中で脈拍・呼吸・体温・血圧などのバイタルサインを継続的に記録して健康管理に利活用することが求められている。現在、リストバンド型をはじめとして多くのウェアラブルヘルスケア機器が開発・販売され、スポーツ愛好者などのいわゆるアーリーアダプタをはじめとして利用者が徐々に増加している。このような状況に鑑み、本OSでは高齢者にも使いやすい"指先や体表から継続的にバイタルセンシングする"ことに関して、センサデバイスからマーケットまでの現状をそれぞれの第一人者に御講演いただき、今後の課題や解決策について議論を深めたい。また、我々の研究室で開発している、つけ爪の内側に専用設計ICとLEDを実装して、爪上に装着したまま脈波・血中酸素飽和度・血圧等を不快感なく常時計測できる経爪型集積化光電容積脈波記録(PPG)システムに関しても紹介する。

  • 横田 知之
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 148
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    フレキシブルエレクトロニクスは、従来のシリコンエレクトロニクスにない、柔らかさやフレキシブル性といった特徴から、次世代のエレクトロニクスとして注目を集めている。特に、近年はその柔らかさを活かして、生体情報センシングや医療向けデバイスの開発が盛んに行なわれている。本講演では、厚さが約1 μmという極薄基板上に作成された様々なウルトラフレキシブルエレクトロニクスに関して紹介を行う。極薄基板上に作成されたデバイスは、非常に高いフレキシブル性を有しており、曲率半径が10 μm程度まで曲げてもデバイスの特性が劣化することはない、さらに、伸縮性基板と組み合わせることで、伸び縮みすることが可能なデバイスへの応用も可能である。これらのデバイスを皮膚に直接貼り付けることで、脈拍や血中酸素濃度、心電図や筋電図といった生体情報のセンシングに成功したので併せて紹介する。

  • 松井 弘之
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 149
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    現在利用されている腕時計型や衣服型などのウェアラブルデバイスには、電池などの電源、アナログフロントエンド、マイコン、無線通信モジュール、筐体など至る所にリジッドな電子部品が使用されている。本講演では、リジッド部品を一切持たない究極的なフレキシブルウェアラブルデバイスの実現を目的として、有機薄膜センサ、有機トランジスタ回路、有機パッシブ通信回路およびバイオ燃料電池の技術開発を行った最新の成果について紹介する。

  • 石井 耕平, 藤井 純也, 中井 静希, 飯間 颯太, 井上 雄介, 横田 知之, 斎藤 逸郎, 平岡 延章
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 150
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    爪の表面に貼り付けて使用するウェアラブルセンサとして付け爪型ウェアラブルセンサの開発を進めている。付け爪の一種であるジェルネイルは数週間の連続装着が可能であり、この中に計測回路、無線回路、電池を組み込むことで、長期間の連続計測を実現しようとするものである。爪の表面に配置するため、面積、体積の制約から、電源は容量数mAhの小型電池に限られる。このため実用化には省電力化が不可欠である。脈波計測を想定した場合、光源としてのLEDが不可欠な光電脈波計測法は、電力の制約上、長期間の連続計測には不向きである。本研究では、センサ素子への電源供給が不要な脈波計測として圧電効果を利用したピエゾフィルムによる爪表面からの脈波計測を試みた。これまでの研究から爪には脈波と同様の波形の微小ひずみが生じていることが示されている。このひずみを爪の表面に貼り付けた、ピエゾフィルムにより電気信号に変換する。実験では左手親指の爪に長さ10mm、幅5mm、厚さ28μmのピエゾフィルムを接着、安静状態において、出力信号を計測した。比較対象として左手人差し指に光電脈波計を取り付け、同時に計測した。実験より、ピエゾフィルムからは振幅約70mVの周期的な信号が得られた。また、その波形は光電脈波計から得られた脈波波形と同様の形状を示した。今後の課題としては、より多くの被験者での実験、ピエゾフィルムの形状最適化が挙げられる。

  • 鳥光 慶一, KEN MIURA
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 151
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    Long-term measurement of vital conditions is essential for analysis of health conditions. For this purpose, it is required for high biocompatibility of sensing devices without having skin irritations. As ambient measurement is ideal, wearable approaches could be one of the solutions. Here we use conductive polymer based fiber electrode for analysis. The silk/washi fibers was treated with PEDOT-base conductive polymer. Treatment with conductive polymer does not alter the characteristic of the base material, such as flexibility and texture. We use this electrode for ECG, EMG and ECoG measurement. We have been developing the usage of this electrodes for various kind of fields including medical and others. Establishment of research community, flexible-silk-electrode research, was helpful for promoting the research and forming spin-out business. Interaction with various field researchers are extremely important for developing new technologies and materials. Recent activities will also be reported.

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