生体医工学
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Annual59 巻, Proc 号
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  • 志村 孚城
    2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 600-602
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    Dementia progresses to healthy people, PCSD, MCI and Dementia. The initial research was the development of curative for Dementia. Various imaging techniques and neuropsychological tests for diagnosis, non-drug therapy, care technologies such as robots, etc. were the research subjects. Recently, when research on curative have been stalled, the entire research has been paradigm-shifted toward pre-Dementia stage. Therefore, the research subject of BME on Dementia should be also moving toward the prevention of dementia, because I believe that synergistic effects with other technical fields are important in pursuing results. Finally, as an example, I would like to introduce the Neuropsychological Test named CWPT, which enables classification of minor brain functions before Dementia. This test has already gained evidences and has been put to practical use as a screening for local residents in Japan. We have created English version of the test. If you are interested, please contact me.

  • 浅川 毅
    2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 603-605
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    ディサービスやショートスティ等の介護現場では,施設利用者のQOL(Quality of Life)向上を目的として,各利用者の状況に応じた生活プログラムを実施している.家庭と密に連絡を取り状況の共有を図っている.効果を高めるためには,利用者ごとにQOL項目を精査し,それに基づいて介護施設と家庭とが有機的に連携して取り組み,お互いの役割を見極めて効果的な生活プログラムを準備・実施する必要がある.しかしながら,介護現場は日常的に多忙であり,直面する業務のため,利用者それぞれの家庭の役割にも考慮した生活プログラムの開発に十分な時間が割けない現状である.そこで,本研究では,まずQOL項目について,ICF(国際生活機能分類)の分類から「活動」と「参加」の領域を重視した項目を配置した.「活動」においては個人レベルと生活レベルの観点,「参加」においては社会レベルと人生レベルの観点より項目だてと目標設定を行い,全国老人福祉施設協議会会員355 施設へのアンケート調査をもとに精査して決定した.そして,決定したQOL項目を用いて,要介護者のQOL向上のための生活プログラムを自動生成して実施結果をデータベース化するコンピュータシステムを開発した.各施設における導入や利便性を高めるために,本システムは普段使用しているブラウザ上から利用できるものとして開発した.本稿では,開発したシステムの詳細とその利用について論じる.

  • 赤澤 堅造, 奥野 竜平, 一ノ瀬 智子, 田部井 賢一, 近藤 瑛佑
    2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 606-608
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    認知症を薬により根本から治すという治療法は,まだ確立していない.米国で修道女Nunを対象とした認知症の縦断研究「Nun Study」があり,認知症の予防あるいは進行を予防するためには,神経・精神活動や適度な運動を盛んにするということが重要であることが示唆されている.つまり非薬物的な介入の重要性が示されている.楽器演奏および音楽療法などの介入に対するエビデンスは十分ではないが,着実に蓄積されつつある.本研究では,これに焦点をあて,健常者,MCI者,認知症患者を対象として,認知症予防のエビデンスン関する文献調査を実施し,その結果を報告する.筆者らは,障害のある方々が容易に楽曲を本格的に演奏できるアクセシブル電子楽器サイミスを開発し、この10数年にわたり,福祉施設や医療施設での利用を推し進めてきた.プログラム化した楽譜をコンピュータに内蔵させ楽器サイミスである.スイッチ,タッチパネル,エアバッグ等のユーザインタフェースが利用できる.本報告では,これらのデバイスの概要,そして健常高齢者,福祉施設における障害のある中高年者,中重度の認知症患者への使用例などを紹介する

  • 政金 生人, 古薗 勉, 若井 陽希
    2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 609-610
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

     在宅血液透析(Home Hemodialysis: HHD)は自らのライフスタイルに合わせて、十分な透析量を確保出来る理想的な透析治療であり、また単位時間内の除去効率・除水量を低下させるため、施設血液透析より安全な治療といえるが、維持透析患者のわずか0.2%がその恩恵を享受しているのみである。

     我が国ではHHDに介助者の存在を必須としており、独居者や同伴者が高齢な場合などHHDの道は事実上閉ざされ、その普及を妨げる要因になる。しかしながら患者の生体情報を収集し、AIによる自動診断から、患者へのアラートや緊急出動態勢発動を行うことができれば、介助者の負担を限りなく低減でき、その先の将来を見通す基礎になる。

     HHD治療中に起きるトラブルは、患者の居眠りや思い違いなどのミス、抜針や血圧低下など治療に由来するトラブル、健康人にも起こる心臓病や脳卒中などの急変である。これらを察知する指標には、患者の意識状態、血圧や脈拍、体動パターン、治療機器の状況などがあるが、新しい生体指標も提案されてきている。

     諸外国では患者と医療者の契約のもと自己責任でHHDが行われており、治療中のトラブルで不幸な結果を招いても医事訴訟に発展することはほとんどない。しかしながらゼロリスク社会の我が国では、あらゆるトラブルに対応できる遠隔モニタリングシステムの構築が、患者と介助者の負担を軽減しHHD普及の必須要件と考えられる。

  • 長崎 光弘, Hoang Dinh Loc, 西村 多寿子, 峯松 信明, 水口 一, 窪木 拓男
    2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 611-613
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    強く噛み締めたり擦り合わせて歯に非常に強い力を加えるブラキシズムは、歯が欠けたり顎関節症を引き起こす恐れがある。また、開閉口筋の同時緊張により、上下の歯が接触せず筋肉に負荷を及ぼす擬似クレンチングと呼ばれる状態も存在する。これらは生体への為害作用が異なるため、簡便で正確な自動検出が望まれている。そこで本研究ではこれらについて、開閉口筋の筋電信号と口腔内の生体音を特徴量として機械学習を用いた自動検出を試みた。被験者は健常な成人男女12名であり、咬筋部、顎下部、オトガイ部、輪状軟骨部の筋電信号及び右側の下顎角部における生体音を計測した。これらの信号のメル周波数ケプストラム係数を特徴量とし、ブラキシズム、擬似クレンチング、その他の3クラスの隠れマルコフモデルを作成した。単一の特徴量を扱うモデルと複数同時に扱うモデルの両方を作成し、モデルごとに交差検証によりブラキシズムと擬似クレンチングの検出に対するF値を算出した。ブラキシズムのF値について、筋電を個別に用いたモデルでは咬筋部で高く77.2±8.1%であった。音響信号を個別に用いたモデルでは60.1±16.0%であった。また、複数の特徴量を同時に扱ったモデルのうち最も高かったものは81.7±8.5%であった。この結果から被験者間のばらつきは大きいものの、ブラキシズムや擬似クレンチングについて適切に特徴量を組み合わせることで自動検出が凡そ可能であることが示唆された。

  • 中原 英博, 河合 英理子, 伊藤 剛, 宮本 忠吉
    2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 614-616
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    【背景】灸は,皮膚上の部位で艾を燃焼させ温熱刺激を生体に与える代替療法である。しかしながら,定量的なデータが不足しており、根拠に基づく医療手段として確立していない。【目的】本研究では,ヒトに対して灸刺激を行った際の心拍数及び血圧応答を明らかにすることを目的とした。【方法】被験者は,20名(男性13名 女性7名)の健常学生を対象とした。被験者は,実験室入室後,心電図用電極,血圧計及び皮膚温度計を取り付け,十分に安静にした後測定を行った。実験は,測定開始後2分間の時点で灸に点火し,その後6分間の心拍数,血圧及び皮膚温度を計測した。灸の施術部位は,右足の足三里穴を用いて行い,皮膚温度計の先端が足三里穴の中心部に位置するように医療用テープで固定した。灸点火前と後の比較は対応のあるt検定を用いた。【結果】心拍数は,灸に点火した後,皮膚温度が上昇するにしたがって緩やかに低下し,皮膚温度が低下するにつれて増加した。心拍数の値は,点火前(皮膚温度:平均30℃)の平均値64.3±7.5拍/分から皮膚温度が最高に達した際(皮膚温度:平均45度)に平均値62.3±1.3拍/分へと有意に減少した(p=0.005)。平均血圧には有意な変化は認められなかった。また,皮膚温度が38度に維持される温灸器を利用した場合においても,同様の徐脈効果が認められた。【結論】灸がもたらす局所的な温熱刺激は,ヒトの心拍数減少効果をもたらすことが明らかになった。

  • 日夏 俊, 鈴木 大輔, 石塚 裕己, 池田 聖, 大城 理
    2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 617-619
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    顔認証や指紋認証をはじめとする生体認証手法は,PCやスマートフォンなどの端末にも搭載されており,幅広く普及している.しかし,各手法における脆弱性を利用した攻撃例が報告されている.特に,偽造した生体情報を提示するなりすまし攻撃により,各手法を突破できる可能性が示されている.一方で,血流を光学計測して得られる光電容積脈波(PPG: Photoplethysmogram)を利用した認証手法(PPG認証)が研究されている.PPGは他の生体情報と比較すると計測部位や姿勢などの制約が少ないことや,PPG計測機能を搭載したスマートウォッチが普及していることから,PPG認証も今後普及する可能性がある.したがって,PPG認証に関しても事前に脆弱性を調査して,起こり得る攻撃を予測するとともに,同攻撃への対策を検討することが求められる.対策を備えたPPG認証を実現するため,我々は現在までPPG認証の脆弱性を調査し,様々な部位で計測可能なPPGの利点に着目した攻撃を提案した.同攻撃は,PPG認証に使われる本来の計測部位とは別の部位において,対象者に気づかれないように不正計測したPPGを利用して認証を突破する.我々は被験者実験を行い,既存のPPG認証が同攻撃により突破される可能性を示した.本発表では,同攻撃への対策として,計測部位特有の情報を利用する手法を提案し,被験者実験により同対策の有効性を検証した結果を報告する.

  • Haruka HORIUCHI, Takaaki SUGINO, Masashi KOBAYASHI, Yohei WADA, Yasuro ...
    2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 620-622
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    Automatic and long-term monitoring of respiratory is in great demand for lung diseases. It gets required greater in these years due to COVID-19 pandemic to reduce medical staff fatigue for checking patient conditions frequently for long time. Kobayashi et al., in our team, developed a device measuring respiratory condition by quantizing the displacement between the 6th and 8th ribs. We introduce long short-term memory (LSTM) neural network to classify patient respiratory signals into the two states of normal and low-functional respirations. The signals were checked by a medical doctor manually for classified into the two states. In the process, they were transformed to frequency-domain spectra with complex-valued wavelet transform, and then quantized the respiratory wavelet spectra due to the large number of spectra patterns. After that, the LSTM learned and classified the processed respiratory signals. The experimental results showed the feasibility to detect the two states.

  • 伊藤 剛, 澤井 亨, 大槻 伸吾, 仲田 秀臣, 嶋田 愛, 中原 英博, 宮本 忠吉
    2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 623-625
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    先行研究で異なる強度での運動開始前後の経時的な心肺反応が、運動形態とそのトレーニング強度の違いに依存することを明らかにした。しかし、短・長期的な生理的適応の発現に対するトレーニング強度の差が運動中の呼吸循環機能にいつ・どの程度影響を及ぼすのかは明らかではない。被験者は大学生アスリート16名、 大学生アスリート16名を対象とし、95%および80%強度のトレーニング群に振り分けた。HIT後、最大酸素摂取量は両群で有意に増加した。ステップ負荷運動時の最高心拍数はTr6以降95%TGにおいてのみ有意に増加し、Tr8後には運動開始直後の心拍増加反応が認められた。運動時の呼吸循環代謝系におけるHITトレーニング強度依存性の適応変化は、主に循環調節系を中心にTr6以降に発現することが判明した。

  • 兒玉 浩希, Katsuhiro Ishida, Haruyuki Hirayama, Keita Kishi, Takeshi Miyaw ...
    2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 626-628
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    Flap ischemia and consecutive flap loss is an innate complication in reconstructive free flap surgery. With the development of machine learning, time series analysis based flap failure prediction has become possible. With the laser doppler flowmetry pocket device (PocketLDF) by JMS it has become possible to measure skin perfusion every second. In this trial skin perfusion in addition to blood pressure, pulse and respiratory rate were measured in 3 patients and flap failure prediction based on the Auto-Regressive Moving Average (ARMA) model and the Long Short Term Memory (LSTM) network was conducted.Accurate perfusion prediction with the ARMA model for stationary processes and with the LSTM network for non-stationary processes was possible. In comparison with real time observation by the attending doctor, the ARMA model was able to predict flap ischemia ahead of time.

  • 河村 祐貴, 岡田 直, 山田 大輔, 光野 優人, 松橋 眞生, 高橋 良輔, 池田 昭夫
    2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 629-631
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    背景:難治性てんかんでは脳磁図で棘波をもとに電流源双極子を推定することが一般的である。その一方で棘波を認めず鋭一過波のみであった報告例は乏しい。目的:脳磁図で発作間欠期の鋭一過波のみ認めた例で他の検査結果、転帰との関連をあきらかにする。方法:2015年から5年間に術前評価目的に脳磁図を施行したうち、棘波を認めず鋭一過波のみであった15例(男:女7:8、平均年齢29.0歳)のビデオ脳波モニタリング、頭部MRI、PET、手術の有無、直近の発作の有無を後方視的に調べた。脳磁図は306チャンネル全頭型脳磁計 Neuromag Systemを用い、発作間欠期60分以上記録した。結果:脳磁図施行時の臨床診断は、前頭葉てんかん3例、側頭葉てんかん11例、その他1例であった。6例で鋭一過波の双極子が集簇した。そのうち4例で画像上病変を認め、3例でその病変近傍に双極子が求まった。非集簇例では、全例で画像上病変を認め、1例で病変近傍に双極子が求まった。集簇4例と非集簇5例で画像病変を含んだ切除術が行われ、全例で発作が消失した。結論:MEGの鋭一過波に基づく焦点検索は特異度が棘波に劣ると考えられるが、画像など他の検査手法と組み合わせることで良好な治療成績を期待できる。

  • 小松 陽子, 古賀 賀恵, 篠崎 亮, 清水 祐輔, 功刀 浩
    2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 632-634
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    "加速度計と心拍計を備えたウェアラブル心拍センサを装着すれば、加速度から活動量や睡眠時間帯を推定することができ、R-R間隔から自律神経系活動の指標を求めることができる。うつ状態では活動量の低下や自律神経不全などを伴うことが報告されているため、ウェアラブル心拍センサを用いたうつ状態の客観的な評価が診断や経過判定等の支援に役立つことに期待が寄せられている。本研究では、ハミルトンうつ病評価尺度8点以上の気分障害患者53名(平均年齢39±12歳、双極性障害19, 大うつ病性障害34)と健常者58名(平均年齢36±12歳)を対象として、15時~連続3日間、ウェアラブル心拍センサ(myBeat WHS-1、ユニオンツール(株))を前胸部に装着させ、R-R間隔と加速度を測定した。加速度から推定した覚醒時間帯、睡眠時間帯ごとの心拍変動値、活動量をMann-Whitney 検定を用いて比較した。健常者群と比較して患者群は、どちらの時間帯もR-R間隔が短かく、睡眠時間帯において副交感神経系活動指標であるHFは抑制されていた。患者群の覚醒時間帯の活動量は小さかった。以上から、ウェアラブル心拍センサを用いて測定された覚醒時間帯、睡眠時間帯ごとの心拍変動や活動量が診断や経過判定のための客観的指標となる可能性が示唆された。本研究は国立精神神経医療研究センター倫理委員会の承認を得て行われ、被験者の研究参加に際しては書面での同意を得た。"

  • MINGNAN HE, Mrio IWAI, Koichiro KOBAYASHI, Takaaki NISHINO, Reina WATA ...
    2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 635-637
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    Due to the labor shortage at Long-Term Care Health Facilities, the number of fall accidents is increasing at night. Therefore, to make up for labor shortages and assist with operations, it is necessary to construct a monitoring system that can detect the getting up action of the people requiring nursing care. So, in this study, we proposed a monitoring system that can detect the getting up using the infrared camera. As a verification result, we found that by using the near-infrared reflective sheet, it became easy to detect and track the actions and the features of the actions could be obtained. In addition, we proposed an algorithm that is a novel and specific to the body movement that proceeds to bed fall.

  • 藏富 壮留, Palmer Jason, 陳 鵬, 姜 銀来, 横井 浩史, 平田 雅之
    2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 638-640
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    目的:身体障害に対する機能再建を目指して,我々は頭蓋内脳波 (iEEG)を用いた体内埋込型ブレインマシンインターフェースの研究・開発を行ってきた.本研究では,頭蓋内電極を留置したてんかん患者を対象として,iEEGから手首の速度ベクトルを推定し,ロボットアームを3次元制御することを目的とした.

    方法:ROSで作成したロボットアームの動画を患者に模倣させ、そのときのiEEGを記録した.iEEGの周波数帯域毎のパワーを算出し,独立成分分析(ICA)と部分的最小二乗回帰(PLS)を用いて感覚運動野に特異的に分布する成分を選択することにより次元を圧縮した.抽出した成分と患者に見せたROSのロボットの速度を用いて、サポートベクター回帰(SVR)により手首の速度ベクトルを推定した.ロボットアームは,7自由度のサーボモータ干渉駆動機構で関節角度制御するものを利用した.制御にはROSを用いた.推定した速度を積分して目標位置を決定し,幾何学的に逆運動学の解を求め,各関節の角度制御を行った.

    結果:ICA,PLS,SVRによりiEEGから手首の速度を推定し,ロボットアームをリアルタイム3次元制御するシステムを構築した.

    結論:頭蓋内脳波に基づく,ICA,PLS,SVRを用いた手首の速度ベクトルの推定は、ロボットアームのリアルタイム3次元制御に有用である可能性を示した.

  • 永野 友香, 白石 泰之, ナラコット アンドリュー, 山田 昭博, 山岸 正明, 山家 智之
    2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 641-643
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    先天性心疾患に対する外科的治療として延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)製3弁付き導管を用いた右室流出路再建術が行われている。臨床成績により中長期的な安定性が示されていることから、ePTFE弁の医学的な有用性が示されている。本研究では工学的なアプローチから生体内の右心系の拍動流下におけるePTFE弁葉内の力学状態を定量評価することを目的として、3台の高速度カメラを用いた3枚の弁葉の挙動を同時に撮影可能な装置の構築を行った。撮影方法として屈折率の変化を小さくするために水中カメラを用いた。1台のカメラで2枚の弁葉を撮影するために3台のカメラを120°ごとに配置した。さらに、対象物の中心をとらえるためにカメラにθ軸回転ステージを取り付けることで角度をつけた。また、3台のカメラを無線通信で同時に操作するために水中アンテナを作成しカメラに張り付けた。各カメラペアの校正および対象物の三次元表面再構築を行うために、円柱型の校正対象物および直径0.8mmのドットによるランダムパターンが印字された対象物を撮影し、取得したステレオ画像を用いて三次元再構築した。構築した3方向等角投影カメラ配置の撮影装置により、対象物の三次元表面の再構築が可能であることを確認した。以上の結果より、構築したシステムを用いてePTFE弁葉の三次元表面を再構築し、弁葉挙動を解析しうることが示唆された。

  • ベン フェイ, 小川 万由子, 小野 弓絵, リン ブンエイ
    2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 644-646
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    がんはその進行とともに80%近くの患者が痛みを訴え、QOLの低下につながっている。腫瘍の切除後や原発部位以外に痛みを訴えるものも多く、がん性疼痛の知覚のメカニズムの解明が望まれている。本研究では痛みのあるがん患者に特徴的な脳部位を調べ、脳の機能的結合ネットワークに与える影響を明らかにすることを目的とした。食道がんまたは頭頸部がんを有する103名のがん患者のFDG-PET画像から、脳領域の画像を抽出し、痛みの有無により活動が変化している関心領域を決定した。また関心領域をシードとして、デフォルトモードネットワークならびにセイリエンスネットワークに関連する脳部位との代謝的結合を調査した。痛みのあるがん患者では、両側の扁桃体、海馬、橋の活動が増加し、中帯状回、楔前部の活動が減少した。またこれらの領域のいずれからも、デフォルトモードネットワークの脳領域との有意な代謝的結合性が確認された。痛みのない患者群では、これらの領域からの代謝的結合性は確認されなかった。以上のことから、痛みのあるがん患者では、慢性痛により辺縁系の活動が増大し、デフォルトモードネットワークを抑制することで痛みの認知感覚や内臓感覚が変化している可能性が示された。

  • 渡辺 隼人, 下條 暁司, 高野 一義, 大西 祥貴, 白石 秀明, 横澤 宏一
    2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 647-649
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    "【目的】2台の脳磁計を光ファイバで接続したハイパースキャニングシステムを構築し、脳活動計測を行ってきた。しかし、同時記録された脳活動、特に同期的活動を検討する際に、異なる脳磁計で記録されたデータを直接比較できるかは未確認であった。そこで本研究では、2台の脳磁計を用いて同一被験者の一次感覚野を刺激し、その際の活動部位を推定し、その結果を比較した。【方法】101 ch custom-type ヘルメット型脳磁計(Elekta-Neuromag)および306 chヘルメット型脳磁計(Vectorview, Elekta-Neuromag)を用いた。2名の被験者に2k Hzの純音両耳刺激、チェッカーボード左下視野刺激、正中神経電気刺激を与えた際に生じる脳磁場を2台の脳磁計で記録した。得られた脳磁場データに基づいて各々の刺激に対する一次感覚野の活動部位を推定した。【結果と考察】活動部位の推定位置は、聴覚刺激では上側頭回(聴覚野)、視覚刺激では右半球鳥距溝付近(視覚野)、正中神経刺激では頭頂葉(体性感覚野)に正しく推定された。これらの推定位置について、2台の脳磁計間ではわずかに位置の変動が見られたが(< 20 mm)、Desikan-Killiany atlas (Desikan et al., 2006) の範囲内では同一脳部位であった。通常、二者の脳活動の同期について検討する際には一定の範囲を持つ領域同士で比較することから、この結果は2台の脳磁計を用いた同期の推定を許容することを示唆する。"

  • Nina Pilyugina, Yoshiki Aizawa, Akihiko Tsukahara, Keita Tanaka
    2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 650-652
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    The octave illusion is an auditory phenomenon that occurs when two tones with one-octave difference are simultaneously played to both ears repeatedly. This paper aimed to find the most efficient way to classify participants into illusion (ILL) and non-illusion (non-ILL) groups by comparing the amplitude of ASSR at the auditory cortex for the ILL and non-ILL groups using brain data recorded with magnetoencephalography (MEG) among machine learning and deep learning techniques. We used three methods: support vector machine, convolutional neural network, and ensembling neural network for executing data's features. Despite longer training time and less accurate classification results, which could be the result of hyperparameter choice, we believe that ensembling convolutional neural networks is the most efficient way for classification ILL and non-ILL data.

  • 金 柱亨, 小野 弓絵, 高野 一義, 渡辺 隼人, 柳生 一自, 横澤 宏一, 白石 秀明, 齋藤 卓弥
    2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 653-654
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    非言語コミュニケーションの成立に関わる脳活動を調べる目的で、脳磁計を2台を用いたハイパースキャニング実験を行った。知り合い関係にある14ペア28人の健常被験者に対し、互いの顔のリアルタイム映像あるいは録画映像を20秒観察して、映像がリアルタイムか録画か回答する課題を各40試行行った。大脳皮質の62領域におけるθ、α、β帯域活動の平均振幅波形を最小ノルム法により推定し、±1秒以内の時間ずれを許して各施行、1秒間毎に最大となる相関係数を算出した。20秒の提示時間のうち、ペアの対応する脳部位の活動が中程度以上の相関を示した時間の割合(相関時間)について、提示した映像条件と被験者の回答条件を要因とした二元配置分散分析と下位検定を行った。既知の顔の再認に関わる右中前頭回のα波帯において有意な映像条件の主効果と交互作用が確認され、リアルタイム映像条件では被験者の回答に関わらず相関時間が長く、録画映像条件では、ペアの両方あるいは片方がリアルタイム映像と誤って回答した条件において、両方が録画映像と回答した条件より相関時間が長かった。即ち、中前頭回の相関時間は、提示映像がリアルタイム映像の場合だけでなく、録画映像の場合にも被験者がリアルタイム映像と判断すると長くなった。中前頭回の同期活動は、他の脳領域の変調を受けながらリアルタイムコミュニケーションの成立を判断する脳活動指標であると示唆される。

  • 松永 諒, 樋脇 治
    2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 655-656
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    我々は、これまで、頭皮上に置いたコイルにより静磁界を脳に透過させ脳活動に伴い変動する磁界を計測する方式の磁界バイアス式脳機能計測技術を開発した。本技術により体性感覚誘発信号計測を行うことにより、はやい脳信号が高い空間分解能で計測できることを実証した。本研究では、視覚誘発信号の計測を行ない本技術の有効性について検討した。磁界バイアス式脳機能計測技術を用いて視覚誘発信号を計測するためのシステムを開発した。コイルを外後頭部隆起(Inion)の50mm上の点(MO)から15mmの間隔で左右各2列、上方3列、下方2列の範囲の縦6列横5列の30点にコイルを配置し、各コイルの上端に設置した磁界センサにより、30チャネルの磁界信号を計測するシステムを構築した。視覚刺激として白黒格子パターン反転刺激を行なった。刺激視野の視角は44.3°(横)×27.3°(縦)、各格子の大きさ0.81°刺激間隔1秒で視覚刺激を行った。被験者には単眼で画像の中心を注視するよう指示し、300回の加算平均により視覚誘発信号を計測した。その結果、MOの上方15mmの位置(MA15)に刺激後250msに最も大きな振幅の信号が局所的に観察された。MA15の位置は、第一次視覚野近傍の頭皮上の位置であり、磁界バイアス式脳機能計測技術によりはやい視覚誘発信号が高い空間精度で計測可能であることが実証された。 

  • 大谷 康介, 江田 大輝, 伊藤 陽介, 小林 哲生
    2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 657-659
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    脳神経活動に伴って発生する磁場(MEG)は非常に微小であるため高感度のセンサが必要である。近年、MEG用のセンサとして光ポンピング磁気センサ(OPM)が注目されている。MEGは信号源を推定するために多チャンネル同時計測が必要である。本研究では、K、Rbの2種類のアルカリ金属原子を封入した一辺5cmの立方体型のガラスセルを用いたハイブリッド型OPMによりセル内部に設定した近接した10点におけるMEGの同時計測を行った。実験では、開眼閉眼によるα波帯の事象関連脱同期(ERD)と、聴覚誘発脳磁界(AEF)を計測した。ERD計測では、被験者の後頭部付近にセンサを配置し、4sごとに鳴るビープ音に従って開眼閉眼を計100回行った。また、比較対象としてビープ音にかかわらず常に閉眼状態を維持する常時閉眼実験も行った。AEF計測では、被験者の右後側頭部付近にセンサを配置し、音刺激を非磁性のイヤーピースを介して左耳に計200回呈示した。ERD計測では多くのチャンネルで開眼時にα減衰が明瞭に観察できた。一方、AEF計測では、全てのチャンネルで有意なAEF信号を得ることはできなかった。この原因として、センサ面と頭皮の距離が約3 cmと遠いために、AEF信号が距離に応じて減少した結果と考えられる。今後、ヒータの設計や断熱方法を検討しセンサ位置と頭皮の距離を縮めることにより本センサの生体磁気計測への応用を目指す。

  • 大塚 明香, Hironori Nishimoto, Koichi Yokosawa, Shinya Kuriki
    2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 660-662
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    The frequency characteristics of spontaneous rhythms and evoked steady-state responses resulting from the electrical activity of the cortical neurons and physiological rhythms such as respiration and heartbeat are related by an even frequency ratio. Furthermore, the frequency of the heartbeat is correlated with body mass index (BMI), suggesting that the rhythmic properties of the body, including the brain, may be harmonically and hierarchically organised by a common continuum based on the constraints of biological structure. In this study, we investigate the harmonic structure as a mechanism of biological rhythms using magnetoencephalographic (MEG) signals. MEG detects magnetic field components derived from neuronal activity as well as physiological muscle movements. Simultaneous detection of the biomagnetic signals (and noise) enables a unified verification at the individual level, which may have various applications such as optimization of the audiovisual environment according to the biological characteristics of the individuals.

  • 上原 弦, 小山 大介, 河端 美樹, 足立 善昭, 宮本 政和, 河合 淳, 樋口 正法, 春田 康博
    2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 663-664
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    脳磁場計測においては環境磁気雑音の影響を避けることが重要であるが、このために参照センサを利用した雑音除去の方法が用いられている。しかしながら、参照センサが環境磁気雑音だけではなく脳磁信号も検出してしまうという懸念があった。そこで、全く別のデュワに収められた参照センサを利用すればこの懸念が低減できると考え、校正された脳磁計ファントムを用いてこの方法を検討したところ良い結果を得ることができた

  • 白水 洋史, 増田 浩, 福多 真史, 亀山 茂樹
    2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 665-666
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    目的:内側側頭葉てんかん(MTLE)症例の術前検査におけるMEG再検の有用性を検討する.

    方法:MTLEの術前検査においてMEGを行った82例(男性42例,女性40例;手術時10~66歳,平均30.9歳)を対象とした.術前に行ったMEG回数,各MEG検査における所見,結論について検討した.MEG所見については,いわゆるMTLEパターン(anterior horizontal or vertical pattern),その他の集積,所見無し/ノイズなどで分類し,MEGによる結論については,5段階(1. MTLE確定,2. MTLE疑い,3. TLE,4. 側方性のみ,5. 結論不可)で評価した.

    結果:術前に行ったMEG回数は1回(42例,51.2%),2回(31例,37.8%),3回(9例,11.0%)であった.1回目MEGでMTLE確定ないし疑いの結論が得られたのは27例(32.9%)であり,結論不可は38例(46.3%)であった.MEG再検で,MTLE確定ないし疑いの結論が得られたのは,2回目で18例(45%),3回目で1例(11.1%)であった.MEG再検により評価がグレードアップしたものは19例(47.5%)であり,最終的にMTLE確定/疑いとなったのは40例(49.3%),TLE疑いも含めると50例(61.6%)であった.

    結論:MEG再検により診断率が向上することが示された.現在本邦では,MEGは患者1人に付き1回しか保険算定できないが,2回目以降の検査も保険算定できることが望まれる.

  • 土屋 真理夫, 石田 誠, 大沢 伸一郎, 柿坂 庸介, 菅野 彰剛, 神 一敬, 張替 宗介, 中里 信和
    2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 667-669
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    緒言:眼球と頭部を一側に向反させるてんかん焦点は前頭眼野に存在し、発作起始側を示唆する側方兆候として重要視されている。今回我々は、同発作を呈した左前頭葉てんかん症例において、脳磁図が焦点診断に有用であった経験を報告する。症例:症例は21歳女性で、5歳時に全身けいれんでてんかんを発症した。13歳より意識が保たれた状態で両側眼球および頭部が右に向反する発作が出現した。当科で包括的てんかん精査を行った。ビデオ脳波モニタリングでは発作間欠時、発作時ともに脳波異常を記録できなかった。MRIでは左前頭葉中心前溝から脳室にかけて”transmantle sign”を認め、皮質形成異常(focal cortical dysplasia; FCD)が疑われた。FDG-PETでは同部位の糖代謝低下を認めた。結果:脳波脳磁図の同時計測において、脳磁図のみでてんかん性活動を記録できた。棘波信号源はMRI病変に一致して推定された。後日施行された切除検体によりFCD type IIbの診断が確定した。考察:てんかんの包括的精査において、各種所見を一元的に説明できる仮説を構築することは治療方針に極めて重要である。本症例では、脳磁図がてんかん診断に果たした役割は大きかった。実臨床では脳波と脳磁図の特徴を考慮したうえで、脳波で明らかな異常を認めない場合には脳磁図を積極的に考慮すべきであろう。

  • 石田 誠, 柿坂 庸介, 菅野 彰剛, 大沢 伸一郎, 浮城 一司, 神 一敬, 冨永 悌二, 中里 信和
    2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 670-671
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    【背景】てんかんの原因病変である限局性皮質異形成(focal cortical dysplasia; FCD)では、皮質機能局在が健常者と異なる場合がある。今回我々は、中心溝近傍のFCDを有した頭頂葉てんかん例において、体性感覚野の異常局在を体性感覚誘発磁界(somatosensory evoked magnetic field; SEF)により、術前に推測しえた一例を経験したので報告する。

    【症例】症例は左利きの14歳女児で、1歳時に右半身の運動症状を繰り返した。薬剤抵抗性に経過し、右上肢を強直させる発作を繰り返したため、外科治療を目的に精査入院となった。入院時、右上下肢にMMT 4/5の運動麻痺を有した。感覚低下は中度知的障害のため評価困難であった。脳波で左中心部の発作間欠時棘波を、MRIでは左頭頂葉にFCDを疑う所見を認めた。後脛骨神経刺激SEFは左右とも正常であったが、正中神経刺激SEFでは左刺激は正常、右刺激でN20mを認めず、P25mと考えられる成分が確認された。その等価電流双極子の位置は中心溝上に推定されたが、下肢の領域に近接していた。硬膜下電極留置による正中神経刺激体性感覚誘発電位によって、SEFの異常と一致する所見が確認された。この領域を温存し病変の切除術を行ったが、皮質下線維の障害と考えられる上下肢の麻痺の悪化を認めている。

    【考察】FCDにおける非典型的な機能局在を術前に非侵襲的に予測しえたことは、てんかんのみならず脳腫瘍などの術前診断に、SEFは有用であることを示す。

  • 岡村 朗健, 橋詰 顕, 香川 幸太, 片桐 匡弥, 瀬山 剛, 栗栖 薫, 飯田 幸治
    2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 672-674
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    【【背景】High frequency oscillations (HFO)はてんかん原性ネットワークの潜在的指標と考えられている。脳磁図の周波数解析の方法として、センサーを垂直方向に脳表へ射影して脳表上に周波数ごとにパワーを表示する、傾斜磁振動トポグラフィー(gradient magnetic-oscillation topography: GMOT)を開発した。【方法】2018年1月から2020年5月までに広島大学脳神経外科において焦点切除術を施行された病変を有する難治てんかん11例を対象とした。男性7名、女性4名で、平均年齢23.0歳(2-47歳)であった。術後病理所見は、Glioma 7例、Cavernous hemangioma 2例、Hippocampal sclerosis 1例、Focal cortical dysplasia type II 1例であった。頭蓋内電極設置は2例で施行されていた。術後発作転帰はEngel class I 10例、Engel class II 1例であった。脳磁図解析では、全検査時間について1秒おきに、HFOのうち200-330 Hzのパワーを脳表に描出するGMOTを作成した。パワーが800 (fT/cm)^2/Hz 以上をfast ripples (FR)と定義した。3-35Hzの波形についてECD推定により解析し、GMOTの結果と比較した。【結果】ECDは8/11例(72.7%)で病変近傍に集簇した。GMOTはFRを9/11例(81.8%)で病変近傍の脳表に描出した。頭蓋内脳波を施行した2例では、ictal onset zoneとGMOTで得られたFR領域との距離は3cm以内であった。【結論】GMOTによるHFOの解析結果はECD推定法とほぼ同様の結果を示した。

  • 工藤 俊介, 金矢 光久, 冨田 教幸
    2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 675-677
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    脳磁図(MEG)による認知症などの脳機能の診断の指標として自発脳活動の周波数解析結果(MF:mean frequencyなど)が有用であると報告されている。診断において有用であるためには同一被験者が別サイトもしくは別日に検査を行った際に同一の診断結果が得られるような安定性が必要である。しかし、そのサイト固有のノイズや液体ヘリウム(LHe)循環器、被験者から発生しうるノイズによって周波数解析結果は容易に歪められてしまう。そこで本研究では全頭型センサアレイMEGで様々な状況下において収録した自発脳活動データに対してDSSP(Dual Signal Subspace Projection)法を適用し、結果のばらつきが低減されるかを調査した。歯科治療金属の帯磁によるノイズがあるデータに対してDSSPを行ったところ各被験者でMF値が改善された。また、左鎖骨付近に磁性体を張り付け、脳近傍から強力な妨害信号が入ることを想定したデータに対してもDSSPを行ったところ各被験者でMF値が改善された。特にノイズを与えることなくクリーンな状態で収録したデータに対してDSSPをかけたところ、DSSPなしの場合とMFの値はほとんど変化がなく、α波帯の周波数スペクトルが変化しないことが確認されたためDSSPをかけることによるデメリットが極めて少ないことが示唆された。

  • 岩崎 弘益, 岡留 寛斉, 渡邉 晃介, 桝田 晃司
    2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 678-679
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    我々はこれまで、肝臓を対象とし、3次元超音波ボリューム中のBモードとドプラモードの融合による血管構造の再構成や解析、複数のボリュームを用いた空間的な拡張などを画像処理の手法を用いて行ってきた。しかし、仰臥位や側臥位といった体勢、呼吸状態の変化による血管網構造の再現性や、定量的な変形については検証が不十分であった。そこで本研究では、同一の被験者で得られた血管網構造の再現性の検証と、体勢と呼吸状態の変化に伴う臓器全体および局所的な変形の定量評価を試みた。肝臓血管網の撮像には、3次元プローブを搭載した超音波診断装置(Philips EPIQ Elite)を用い、6名の被験者に対して様々な体勢や呼吸状態にて超音波ボリュームの撮像を行い、門脈および肝静脈の2系統について、中幹から右葉を含む領域の血管網を再構成した。同一被験者で異なる状態の血管網構造から、共通分岐点間の空間レジストレーションを行い、共通分岐点間距離を導出した。その結果、同一の体勢・呼吸状態にて撮像した血管網同士の方が、異なる状態の血管網同士より、共通分岐点間距離が小さくなる傾向を確認した。また年齢による変化の有意差についても検証した。本研究により、3次元血管網の構造解析による臓器性状評価の可能性が示された。

  • 武井 真輝, 清水 太一, 小林 勇太郎, 桝田 晃司
    2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 680-681
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    " カテーテル治療では現在,X線透視画像を用いて誘導しているが,超音波画像を用いることで,患者の負担が軽減される可能性がある.しかし,血管内に存在するカテーテル自体が超音波画像中では認識が困難である.先行研究として,カテーテル先端に搭載したPZTの振動と超音波のドップラーシフトを利用したものがあるが,この手法では挿入可能な血管の太さに限界がある.そこで本研究では,血管内のカテーテル先端から微小気泡を噴出し,その動きをオプティカルフロー法で検出することで,超音波ボリューム中のカテーテル先端位置を推定することを目的とする. カテーテル先端から微小気泡を噴出する実験装置を開発し,超音波診断装置の4Dモードで撮像した.取得したボリュームデータに対し,輝度の閾値を設けて計算対象領域を限定し,オプティカルフローを計算した.微小気泡の動きを検出したフロー分布から,平均方向ベクトルと分布の重心を計算した.それらから空間的な配置の関係を求め,微小気泡の噴出速度から推定される位置偏差から,カテーテルの先端位置を推定した.噴出速度0.1mm/sの条件で検出を行った場合,3次元座標中での誤差は,(x,y,z) = (2.19, -3.88, -0.38) mmであった.この値は2次元アレイトランスデューサによる焦点サイズよりも十分小さいため,本研究により,提案した手法で生体内のカテーテルを屈曲できる可能性が示唆された."

  • 赤澤 堅造
    2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 682-684
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    "ヒトの随意的な運動制御の基礎として,力制御および位置制御がある.力制御の仕組みは良く分かっているが,位置制御はまだ十分には分かっていない.特に力―筋長関係の下行脚における位置制御の仕組みはほとんど解析されていない.筆者は次の5種の研究により,位置制御の仮説を提案する.1)カエル半腱様筋の収縮力学特性を計測した(山代谷真之ら,生体医工学 2003).2)この結果に基づき,新しい2モード筋モデルを提案した(Akazawa, Adv Biomed Eng 2019).フィラメント滑走モードと伸展によってばね様特性が発現するSTモードである.3)ヒト指伸筋を対象として.等尺性収縮(力制御)および位置制御(指位置を一定値に維持)における運動単位の発射周波数を比較した(Kanosueら,Jpn J Physiol1983).いくつかの運動単位では,位置制御での発射周波数が低かった.4)ヒト指伸筋は下行脚で動作している(Llewellynら, Nature 2008).5)ヒト指伸筋の運動単位の振る舞いを明らかにするために上記の筋モデルを用いてシミュレーションを実施し(Akazawa. Adv Biomed Eng 2020),筋内の一部の運動単位がSTモードで動作することにより,安定な位置制御が可能であることが示された."

  • 戸谷 伸之, 松田 成司, 中島 潤
    2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 685-686
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

     高齢化社会において,ヒトの体調管理は事故防止のために重要な課題となっている.このためには病院に入院している患者はもとより,在宅中や屋外における体調や運動(歩行状態や姿勢等),さらには自動車の運転中の状態チェックなど高齢者の行動範囲でモニタリングを可能とする「見守りシステム」が必要になると考えられ,センシング技術やそこで取得された様々な情報を広い領域で長時間連続的に共有するための通信方式の導入が検討されている. 屋外を自由に行動する高齢者の見守りについては,長距離伝送が可能かつローコストで継続的な運用が可能な無線通信システムの導入が有効であると考えられる.近年,消費電力が低く,かつ広い範囲での通信を可能とする無線通信ネットワーク方式であるLPWA(Low Power Wide Area-network)が開発され,様々な分野への応用が期待されている.これに含まれる通信規格には様々なものがあるが,使用される電波帯域は遠達性の良いサブギガ帯(約900 MHz)が多く,伝送距離は数十km,伝送速度は数百kbpsまでのものがある. 本研究では,屋外を自由に行動する高齢者を見守るために必要であると考えられる情報(体調に関わる指標,現在地,活動状況等)を複数種類提案し,これらをLPWAを用いて伝送し,共有する方式の有効性について検討する.

  • 山中 綾華, 佐藤 生馬, 藤野 雄一, 松本 修一
    2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 687-689
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    近年,日本では高齢化に伴い,認知症患者が増加傾向にある.認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)のうちに治療を開始することで,認知症の発症の遅延や,認知機能障害を回復させることができる可能性がある.従って,MCIのうちにその兆候を捉え,早期治療を行うことが重要である.そこで,我々は高齢化に伴う認知症者増加の抑制のため自宅にてMCIの兆候を早期検出することを目的とし,日常的に取得できる複数の日常行動情報を用いたMCIの検出手法を検討した.本手法は複数の日常行動情報,例えば会話,歩行,行動パターン等からMCIを検出することで日々の生活の中での些細な認知機能の低下を捉える方法である.その中でも本稿では日常会話に着目し,MCI検出への適用可能性の検討を行った.MCI検出に必要な特徴量は,認知機能と関連がある会話時の音響特徴,言語特徴,意味特徴の3面とした.言語特徴は一部の認知機能の低下による“定量的な会話内容の変化”を検知するため,音響特徴は言語特徴の変化に伴う“話し方の変化”を検知するために抽出を行う.また,意味特徴は本手法において考案したものであり,認知機能の低下の初期症状として見られる短期記憶の欠落を図るために“意味内容の変化”の抽出を図る.本報告はこれらの3面の特徴からMCIの検出が可能と仮定した特徴量を検出し,実験を通して特徴量抽出法の妥当性を検討した結果について述べる.

  • 木田 直弥, 横山 徹, 清水 久恵, 山下 政司
    2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 690-691
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

     慢性腎臓病は腎機能の低下が持続し,血液透析治療が必要な疾患である.尿試験紙検査は尿異常による早期発見に有効であり,早期に治療介入することで進行も抑制される.しかし,新規透析導入患者数は未だ増加傾向にあり,要因としてかかりつけ医における検査環境の未整備が挙げられる.また,尿試験紙の判定手法には目視判定と機器判定があるが,判定に測定者の主観を伴うことや高額な装置が必要なことが課題とされる.そこで,本研究はかかりつけ医における尿試験紙検査の環境整備を目的に,安価かつ簡便で高精度な尿試験紙判定システムの構築を目指す.

     今回はスマートフォンで尿試験紙と色調表を同時に撮影し,ノートPC上での画像解析により取得した各色情報から尿試験紙判定を試みた.測定項目は慢性腎臓病の早期発見に重要な尿アルブミンとし,精度管理用試料を蒸留水により4濃度の半定量値に調製した.システムはプログラミング言語にPython,拡張ライブラリにはOpenCVを用いて構築し,撮影した尿試験紙画像より自動で色情報を取得し判定値を算出した.尿化学分析装置による機器判定と比較し,一致率と±1ランク一致率から判定精度を検証した.実験の結果,本システムは既存装置と同等の判定精度を示し,有用な判定法と考えられた.今後はシングルボードコンピュータを用いたスタンドアロン型装置を構築し,アルブミン/クレアチニン比について臨床的評価を行う.

  • 新江 義正, 奥 知子, 山内 忍, 本橋 由香, 佐藤 敏夫
    2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 692-693
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    シャント音の時間-周波数解析によって得られる周波数領域の経時変化を表す正規化相互相関係数Rと、時間領域での経時変化を表す基準化持続時間NDTから、バスキュラーアクセス(VA)機能を評価する方法を提案している。今回は、VAモデルで測定した血管抵抗指数RIと擬似シャント音から算出したRの関連性を実験的に調査した。

    内径6mmのタフシロンゲル製チューブとY型コネクタを用いて動静脈吻合部を有するVAモデルを作製し、吻合部下流に狭窄長10mmで径狭窄率を10%ずつ変化させたアクリル製狭窄パーツを留置した。タフシロンゲル製チューブ部分を生体ファントムに埋め込み、多機能型脈動ポンプを用いて拍動回数60回/分、Duty比35%、最高血圧120mmHg、最低血圧80mmHgで水を拍動流として流した。狭窄下流に加速度センサを装着し、BioSoundAnalyzerを用いて擬似シャント音を10秒間採取後、WaveletBmpAnalyzerを使ってRを算出した。また、上腕動脈に相当する部分に超音波診断装置のリニアプローブを当て、RIを測定した。RIを測定時には水流ポンプで微小気泡を作製し、これをトレーサーとしてを混合した水を同一回路内に循環した。

    径狭窄率が50%を超えるとRは低下し、これに伴ってRIも上昇することが確認できた。VAモデル内に留置する狭窄病変の形状を変化させて擬似シャント音とRIを測定し、その関連性が明らかとなれば、シャント音から狭窄病変の進展を推定できると考えられた。

  • 島崎 直也, 新江 義正, 奥 知子, 山内 忍, 本橋 由香, 佐藤 敏夫
    2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 694-696
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    透析用血液回路における静脈側エアトラップチャンバは、血液が空気と接触したり、血流の停滞によって血液凝固発生の好発部位である。そこで、数値流体力学(CFD)解析と粒子画像流速測定法(PIV)による流れの可視化をチャンバに関する各種設計パラメータと血液凝固発生の関係について検討した。

    血液流入口の(1)水平流入、(2)垂直流入とコーン形状の濾過網の(1)有、(2)無の組合せを変えた4種類のチャンバの解析モデルを作成した。解析タイプは定常解析で、流入条件として血液流入口から密度ρ=997kg/m3、粘性率μ=0.89mPa・sの水を流量200ml/minで流し、血液流出口には流出条件として平均静圧0Paを設定した。また、チャンバの体積に占める各流速成分が占める割合を算出することで、血液凝固の発生しやすさを定量化できるか検討した。次に、市販の透析用血液回路を用いて解析モデルと同じ形状のチャンバを作製し、PIVによるチャンバ内の流れの可視化を試みた。

    血液流入方式と濾過網の有無の組合せが異なる4種類のチャンバについて検討したところ、CFDによる理論解析とPIVによる流れの可視化結果を組み合わせることで、血液凝固が発生しにくいチャンバの最適形状について、定量的かつ個別に評価できる可能性が示唆された。また、チャンバの体積に占める各流速成分の割合から血液流入形状の違いが血流や血液凝固誘発に与える影響を明らかにできる可能性が示唆された。(586文字)

  • 富 弘樹, 奥 知子, 山内 忍, 本橋 由香, 佐藤 敏夫
    2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 697-698
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    "現在、臨床現場で使用されているストレートタイプと呼ばれる血液透析用留置針は、円筒状の留置針と針基部の接続部で血液の流路が不連続に拡大する。そのために接続部で血液の渦が発生し、それが実際の吸入口径を狭めてしまうことで確保できる脱血量が減少してしまうと言われている。そこで近年、留置針の根元をファネル形状にしたハイフロータイプと呼ばれる留置針が市販されている。これは、針の根元をファネル形状にすることで針基部との接続部に流路の不連続が生じないようにしたものである。しかし、ファネル形状にすることで、ハイフロータイプはストレートタイプと比較してどのくらい多くの脱血量を確保できるのか、あるいは吸引圧に違いが生じるのか等について実験的に明らかにした報告はあまり見当たらない。そこで本研究では、市販されているストレートタイプとハイフロータイプ留置針の流路長を20, 25, 30 mmに加工し、設定流量を変化させた時の実流量と吸引圧の違いについて調査した。

    その結果、ハイフロータイプの方が多くの流量を確保できることが確認できた。また、外筒長が短いほうが実流量を多く確保できるが、25 mmのストレートタイプと30 mmのハイフロータイプを比較すると、外筒長が長くてもハイフロータイプのほうが実流量を確保できることもわかった。各タイプの吸引圧を比較すると、ハイフロータイプは同じ吸引圧でもより多くの実流量を確保できることも確認できた。"

  • 巻田 浩輝, 奥 知子, 山内 忍, 本橋 由香, 佐藤 敏夫
    2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 699-700
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    我々は、血液凝固が発生しにくい理想的なチャンバ形状を提案することを目指している。そのためには、血液透析の臨床現場で発生している血液凝固過程を模擬する必要がある。そこで、カゼインナトリウム水溶液にクエン酸を添加することで、静脈側エアトラップチャンバ内で血液凝固塊を模擬したカゼインミセルを形成し、それが濾過フィルタで補足されることによって血液回路内圧が緩徐に上昇する方法について検討した。

    実験では、市販の垂直流入方式(縦流入)でコーン型濾過フィルタを持つ静脈側エアトラップチャンバを使用した。カゼインナトリウム水溶液を設定流量200ml/minで血液回路内に循環した。チャンバの液面調整ラインをシリンジポンプに接続し、そこからクエン酸水溶液を持続注入することで、血液凝固塊を模擬したカゼインミセル会合体を形成した。形成されたカゼインミセル会合体がコーン型濾過フィルタに捕捉されることで生じる回路内圧の上昇を連続測定した。

    カゼインナトリウム水溶液にクエン酸水溶液を3分間で5ml添加したところ、添加開始から50秒を超えた頃から回路内圧が上昇し始め、約150秒を過ぎると急激に回路内圧が上昇して200mmHgを超えた。測定終了後、チャンバを切断し、コーン型濾過フィルタ周辺の様子を観察したところ、コーン型濾過フィルタにカゼインミセル会合体が大量に捕捉され、コーンが目詰まりしている様子が確認できた。

  • 船場 大地, 森屋 雄斗, 奥 知子, 山内 忍, 本橋 由香, 佐藤 敏夫
    2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 701-702
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    脱血不良のモニタリングとして、ピローの目視が一般的に行われている。しかし、ピローは血液が停滞する部分であり凝血塊が発生しやすく、他の手段で代替えが可能であれば、ピローの設置を必須としないと指摘されている。そのため、脱血不良をモニタリングする新しい方法の確立が求められている。そこで我々は、脱血不良時に発生するバックフローによって引き起こされる血液回路振動の連続測定による脱血不良モニタリングの可能性について検討した。

    脱血不良状態を模擬するために、外形6mm、長さ15mmのアクリル製円筒ブロックの中央に孔径1.2mm及び0.6mmの孔を貫通させた2種類の脱血圧調整パーツを作製した。血液回路の動脈側アクセス接続部に調整パーツを1個、あるいは複数個直列に接続することで、段階的な脱血不良状態の模擬を試みた。血液回路の振動測定には、デジタル表示式振動計を使用した。脱血圧調整パーツを使い、段階的に脱血圧を変更していった際の血液回路振動の出力電圧変化を測定することで、脱血不良モニタリングの可能性について検討した。

    脱血圧ごとの血液回路振動の変位振幅変化を測定したところ、脱血圧と変位振幅には直線関係があることがわかった。この結果から、血液回路振動の変位振幅をモニタリングすることで、脱血不良を判断できる可能性が示唆された。

  • 佐々木 優貴乃, 島崎 直也, 中根 紀章, 奥 知子, 山内 忍, 本橋 由香, 佐藤 敏夫
    2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 703
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    ダブルルーメンカテーテル(DLC)先端の脱血口の血管へばりつきは、脱血不良を引き起こす大きな原因の一つである。我々は、タフシロンゲル製の人工血管を用いた血管へばりつきを高い再現性で実現できる評価システムを作製し、市販の4種類のDLCについて性能比較を試みた。

    市販されているサイドホール型(SH-DLC)、エンドホール型(EH-DLC)、コアクシャル型(CO-DLC)、パリンドローム型(PD-DLC)の4種類のDLCを使用した。塩化ビニル製チューブの側壁の一部を柔軟性のあるシリコンシートに置換し、シリコンシートに穴を開けて模擬血管にDLCを留置した。そして、塩化ビニル製チューブ下流にコネクタを介してタフシロンゲル製人工血管を接続し、その中心にDLCの脱血孔が位置するように調整した。脱血量を200ml/minに設定後、模擬血管内流量を400ml/minから50ml/minずつ段階的に低下させ、それぞれの条件下で1分間の模擬透析を行い、再循環率を求めた。また、へばりつきが発生する条件を実験的に明らかにするため、模擬透析中のDLC挙動の動画撮影を試みた。

    模擬血管内流量が脱血量より多い場合には、PD-DLCの再循環率が他の3種類のDLCと比べて5%程度高くなった。また、へばりつきが発生する直前のDLCの振動はCO-DLCが最も小さく、それに応じてへばりつきの発生頻度が最も小さかった。

  • 武笠 聡輝, 奥 知子, 山内 忍, 本橋 由香, 佐藤 敏夫
    2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 705-706
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    PCPS(percutaneous cardio pulmonary support)やECMO(extracorporeal membrane oxygenation)に代表される補助循環療法では、回路内での凝血、カニューレトラブル、遠心ポンプの異常などが発生する場合がある。本研究は補助循環療法中に発生する異常発見を目的とし、その基礎検討として工業設備診断に活用されている振動測定を応用して、補助循環回路の血液ポンプに使用される遠心ポンプヘッドの振動測定を試みた。初めに2種類の遠心ポンプヘッドを用意し、循環回路を作成した。次に遠心ポンプヘッドに振動センサを固定し、回転数を500~3000rpmまで500rpm毎に設定して、水を循環回路内に循環し、振動量を測定した。最後に振動量を分析し、2種類の遠心ポンプヘッドによる違いを比較した。各ポンプヘッドの回転数における振動量の平均値を算出した結果をみると、2種類のポンプヘッド間で平均値に違いが見られ、また回転数の上昇に伴って振動量が大きくなることが分かった。臨床現場では、異音の聴取やポンプヘッドに触れることにより異常を定性的に判断している。ポンプヘッドに異常が発生した場合、振動が変化することが考えられる。今後の課題として、空気の混入や血液凝固など、異常を模擬した状態における振動測定を行い、異常を定量的に判断できるかどうか検討を行う予定である。

  • 小池 耕彦
    2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 707-709
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    社会神経科学の研究分野は,心の理論と呼ばれる他者の心を類推する能力や社会行動の創発能力がどのような神経基盤に基づいているかを,実験心理学的な手法と脳機能イメジング技術を組み合わせ,あるイベントに相関した個人の脳活動として検討してきた.しかし社会能力の基盤となるコミュニケーションは個人のみではなしえない.自分と同様に情報を処理する他個体が存在し,情報を相互に交換できて初めて,コミュニケーションは成立する.これを考えると,コミュニケーションの神経基盤を解明するには,実際に他者と情報を相互交換している最中の脳活動を検討するべきだという立場の研究が現れた.この考え方の延長線上に,コミュニケーション中の二者の脳活動を同時に記録し,二者間脳活動相関などを指標としてコミュニケーションの神経基盤を明らかにすることを目指す,ハイパースキャニング(Hyperscanning)研究がある.著者らは,二台の機能的磁気共鳴現象画像法(fMRI)装置をオーディオ・ビデオ系で接続することで,コミュニケーション中の脳活動を二者からfMRIで記録する研究をおこなっている.本発表では,著者らがおこなったハイパースキャニング研究について概観することで,どのような仮説に基づいた研究が可能かを伝えたい.

  • 石田 開
    2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 710-712
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

     医用テレメータを安心かつ安全に運用するためには、電波環境の管理が極めて重要と言える。具体的には自施設内におけるチャネルの管理のみならず、近年では、他施設からの電波受信や、LED照明由来の電磁ノイズなどとの電磁干渉も問題となっている。電波環境の把握のためには、一般にスペクトラムアナライザが用いられることが多い。しかし、スペクトラムアナライザは一般的に高価であり、またマルチメータや各種の医療機器用チェッカなどと比較すると、その使用頻度も高いとは言えない。さらに、スペクトラムアナライザの使用にあたっては、電波工学や通信工学などの専門的な知識が必要となるため、医療従事者が使用するためにはハードルが高いと考えられる。故に、医療機関が独自にスペクトラムアナライザを導入することは比較的容易ではないと考えられる。従って、安価でかつ医療従事者でも簡便に電波環境を測定可能な手法の確立が望まれる。 そこで、医療機関でも容易に導入が可能な手法として、「医用テレメータの簡易スペクトラムアナライザ機能を用いた測定方法」および「ソフトウェア無線を用いた電波環境測定・評価方法」を提案する。本講演においては、これらの概要を解説するとともに、測定器としての精度を評価した結果についても報告する。また、これらを実際の医療現場で用いる際の注意点についても述べる。

  • 内藤 賢宏, 大西 謙吾
    2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 713-715
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    筋電義手の操作習得には医療専門職の元で訓練を行う必要があるが時間は限られており,訓練の時間最大化にはセンサの調整時間が最小限となることが望ましい.市販の義手用筋電センサでは感度調整は専用ソフトウエアや経験を要すことが使用継続の課題であり,本研究は第三者の介入による調整が低頻度でも,安定して動作する筋電義手用のセンサ信号処理法の開発を目的とする.本研究では筋電信号の特徴識別をベースとする感度調整法として品質工学のRT法を用い,従来のように義手使用者の随意的筋活動を誘導,確認しながら調整するのではなく,脱力・安静時の筋電を用いて筋活動の度合を安静時との相違度として算出する.基準を求めるサンプルデータと処理法の関係を調査するため, サンプルデータのSN比と感度の平均からRT法の基準を作成し,RT法処理により基準とサンプルデータの相違度を求め,その標本標準偏差と識別率の関係を,RT法の特徴量数が10,30,50個の場合で比較した.5名の被験者の結果では,特徴項目の個数による識別率の増減傾向が,偏差の増減により予測できることはなく,被験者により傾向が異なることが確認された.一部の被検者では特徴量数30個で相違度の偏差が高くなると識別率が増加する傾向があったが,サンプルデータの質を予測しうる指標を再度検討する.

  • 佐山 幸和, 島田 尊正, 阪田 治
    2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 716-717
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    現在,ストレス測定法として科学的に確立されている方法には唾液アミラーゼ活性,心拍数,脳波を用いたものがある.しかしながら日常生活のストレスを計測する場合、これらの手法は被測定者に新たなストレスを与える恐れがある.そこで,日常生活の中の動作を手がかりとしたストレス測定アルゴリズムがあればストレスを与えることなく有用であると考えられる.本研究では,タブレットを用いて,日常生活の中にある動作を手がかりとした低負荷なストレス測定アルゴリズムを検討し,その有効性を検証した.タブレットでは指の動いた時間と座標を測定することができる.被験者にはストレッサーとしてクレペリンテストを実施し,その前後で,タブレット上でパターンロックの解除の指の動作を行った.同時に唾液アミラーゼ活性と心拍数についても測定をした.被験者は10人で全員右利きであった.測定結果を比較したところ,クレペリンテスト後の指の動かす速度と心拍数の間に強い負の相関が見られた.このことは指の動かす速度は交感神経の活動を反映している可能性を示している.次に指の動いた座標から指の理想的な動きとの相対誤差(安定度)を評価した.その結果,クレペリンテスト後には右から左へのストロークにおいて安定度が低下し,安定度とストレスの間に負の相関がある可能性を示した.今後はより有効性の高い測定法や評価法を模索していく予定である.

  • 齋藤 瞭汰, 堀 潤一
    2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 718-719
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    PCが重度肢体不自由者にとってもコミュニケーションツールになるようなインタフェースの研究や開発が行われている.特に,従来から使用されていたマウスやキーボードに変わる入力装置として,生体信号から意思を推定する方法が研究されている.本研究では重度肢体不自由者でも機能が残存しやすい顔から筋電図と眼電図を計測し,2つの生体信号を併用したポインティングデバイスの開発を試みた.口の動きに伴う筋電図から方向を推定してポインタを移動させ,随意的な瞬きをした時の垂直眼電図から決定操作を行った.口の動きに伴って収縮する表情筋の中で,左右の大頬骨筋と口角下制筋に着目した.それら4つの筋電図と垂直眼電図をワイヤレス生体計測装置で同時に計測するための電極配置を考案した.その電極配置におけるポインタ移動の操作精度を評価する実験を行った結果,8方向への適切なポインタ制御を実現できた.さらに,瞬きを正しく検出するための垂直眼電図の閾値の検討を行った.

  • 山口 雄大, 小菅 智裕, 熊谷 寛
    2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 720-722
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    筋肉量の減少により日常生活に支障が出る病態であるサルコペニアが近年問題視されている。サルコペニアを評価する基準の一つとして、筋肉量の低下を裏付ける証拠が必要である。これは最も重要な必須項目であり、現在は生体電気インピーダンス分析法や二重エネルギーX線吸収測定法等で検査することができる。しかし高コストや大掛かりな施設が必要であるといった欠点も存在することから、従来よりも簡易的な評価方法が求められている。このことから私たちは新たな筋肉量の評価方法として、超音波画像と多チャンネル表面筋電図を併用する手法を検討している。多チャンネル表面筋電図とは多数の電極を列状に並べて取得する筋電図で、伝播波という運動神経活動由来の情報が得られる。伝播波解析から従来の筋電図よりも詳細な情報を得られ、これを超音波画像から推定する上腕二頭筋などの厚さの情報と合わせて比較することで新たな評価指標の基準になると考えた。そこで本実験では被験者から超音波画像と多チャンネル表面筋電図を取得し比較する。実際に伝播波の取得数と超音波画像を比較すると、皮下脂肪が厚いほど伝播波の取得数が少ない傾向が見られた。また伝播速度と超音波画像の比較では、上腕二頭筋が厚いほど伝播速度が速い傾向が見られた。本研究はこのような多チャンネル表面筋電図と超音波画像の比較から、最終的に筋肉の評価指標を新たに確立させることを目的としている。

  • 内藤 柚菜, ヤップ・ゲック シエン, 柴 玲子, 大塚 翔, 湯本 真人, 中川 誠司
    2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 723-725
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    音楽経験者と非音楽経験者を対象に,メロディーの輪郭 (連続する音列の音高の変化パターン)の変化に対するミスマッチ陰性電位 (MMN) を計測した。5つの連続するトーンバーストから構成される音列を刺激音とし,各構成音の音高を変化させて山形/谷形/上昇形/下降形の輪郭を持つ4つの刺激音を作成した.これらの刺激音を標準刺激とし,各標準刺激の第3音を変化させることでそれぞれに 5種類の逸脱刺激を作成した.標準刺激と5つの逸脱刺激の組み合わせを変えて4回のMMN計測を行い,各々の逸脱刺激に対して誘発されるMMNを観察した.その結果,非音楽経験者においては第3音の音高変化が大きいほどMMNが増大したが,音楽経験者では刺激音列のメロディーの輪郭変化に対してより大きなMMNが出現した.また,非音楽経験者においては山形,音楽経験者においては山形/谷形で逸脱刺激に応じてMMN活動強度が大きく変化したが,上昇形/下降形では刺激音に応じた変化が小さかった.さらに,音楽経験者では非音楽経験者に比べてMMN潜時の短縮が認められた.音楽経験により音列を群化して捉える能力が高まりメロディー輪郭の弁別能が向上したこと,およびメロディー処理に係る速度が亢進したことを示している.

  • 足立 善昭
    2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 726-728
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    【目的】全頭型脳磁計のほとんどは頭表面に対して法線方向の磁場を検出するが,ヘルメット型センサアレイの端部領域の脳の活動,例えば視覚野の活動による磁場分布は部分的にしか得ることができず,そのために磁場源の推定精度が劣化することがある。そこで,センサアレイの辺縁部に,法線方向のみならず接線方向の磁場も同時に検出できるベクトル型の磁束計を適用することで,ヘルメット端部の磁場源の推定精度の向上が図れるかどうかを数値実験で確認した。【方法】全頭型脳磁計を模した半球面(半径100 mm)に沿って,160個の法線方向を検出する磁束センサを均等配置した場合,またその最外周の32箇所を接線方向も検出するベクトル型磁束計として,合計224chセンサアレイとした場合など,様々な条件のセンサアレイを想定し,ヘルメット端部の等価電流双極子(ECD)の位置推定精度を比較した。ECDの深さは35 mm,強度50 nAm,センサの磁場分解能を5 fT/rtHzと仮定した。【結果】ヘルメット端部から上下 20mmの領域では,最外層のセンサをベクトル型とすることで,ECD推定位置のばらつきが約1.4倍小さくなり、また,224個のセンサを全て法線方向センサとして均等配置した場合よりもECD推定位置のばらつきが約1.2倍小さくなった。【結論】ヘルメット端部のセンサをベクトル型磁束計とすることで,センサアレイ辺縁部近傍のECD推定精度を改善できることがわかった。

  • 小山 大介, 河合 淳, 河端 美樹, 足立 善昭
    2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 729-731
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    近年、脳磁計では蒸発したヘリウムガスの再利用システムの導入が進んでいる。様々な方式が開発されているが、冷凍機を脳磁計のすぐ近くに置く、または直結させて循環させる方式が効率良くヘリウムを再利用できると期待されている。しかし、冷凍機が発する磁気ノイズや振動が脳磁図計測の際にノイズになる懸念がある。そこで本研究は、冷凍機に起因するノイズを脳磁計の観測データから除去する信号処理手法を開発することを目的とする。著者らはこれまでに、ノイズ源のそばに置いたフラックスゲート磁気センサ(FGM)で観測したノイズデータを脳磁計データから差分するモバイルリファレンスセンサ法を開発してきた。今回、冷凍機由来の磁気ノイズを除去するモバイルリファレンスセンサとしてFGMと振動計を利用することにし、これらの最適な配置を検討した。実験では磁気シールドルーム内にSQUIDで構成される脳磁計とパルス管型冷凍機を配置し、長さ約60cmのトランスファーチューブで接続した。振動計とFGMを床上、デュワ上、トランスファーチューブ上、冷凍機の上・横・架台上に置いて冷凍機運転時の振動や磁気ノイズを計測した。SQUIDで同時記録したデータとのコヒーレンスを導出した結果、振動計は冷凍機上に置いた場合、FGMは冷凍機横に置いた場合に最も高い値を示した。振動計及びFGMで構成するモバイルリファレンスセンサによって冷凍機由来のノイズを低減できる可能性を明らかにした。

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