生体医工学
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Annual60 巻, Abstract 号
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  • Guoan Li
    2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 64_1
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー

    The development of adjacent segment degeneration (ASD) is a major concern after lumbar spinal fusion surgery, but the causative mechanisms remain unclear. This paper discusses our research using a combined in vivo and in silico method that investigates the changes of biomechanical responses of the adjacent segments after lumbar fusion of patients under weight-bearing standing conditions. The in vivo adjacent disc height changes before and after fusion were measured using a dual fluoroscopic imaging system (DFIS), and the measured in vivo intervertebral positions and orientations were used as boundary conditions of the patient-specific three-dimensional (3D) finite element (FE) models to simulate intrinsic biomechanical responses of adjacent discs to fusion of the diseased segments. Our data demonstrated that fusion could cause alterations in adjacent disc biomechanics, and the combined in vivo and in silico method could be a valuable tool for investigating causative factors of ASD after lumbar fusion surgery.

  • 佐藤 大輔, 五十嵐 小雪, 山代 幸哉
    2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 65_1
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー

    抑制は、私たちの生活において絶え間なく生じ、不可欠な要素の一つである。つまり、抑制に関する問題を解決することは、人の意志や行動を抑制する機能について知るために極めて重要とえる。私たちは、あらゆる生活活動の中で、自身の意思や行動を抑制している。例えば、「道路を横断しようとした場合に、車が近づいてくることを確認して、その行動を中断する」「バスケットボールの試合でシュートをしようとしたが、相手選手が邪魔をしてきたため、シュートを中止する」といったものがあげられる。このような人の抑制行動は、多様な感覚入力にもとづく反応抑制機能によって調節される(Bari & Robin 2013)。反応抑制機能は、反応を遅延するpostponing、反応を抑制するrestraint、反応を中断するcancellationに分類されるが、感覚入力の種類(感覚モダリティ)による制御の違いについては未だ議論の最中である。さらに、反応抑制機能は、過去の経験やトレーニングによって大きく変化することが知られている。中でも、長期間・継続的にトレーニングを重ねているアスリートは高い抑制機能を有していることが報告されている。そこで、本セッションでは、以下の点に注目して、これまでの研究や我々の研究室で得られた知見ついて紹介する。1) 感覚モダリティによる反応抑制機能の違い 2) 長期的なトレーニングによる反応抑制機能の変化

  • 日比野 浩
    2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 66_1
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー

    聴覚を司る内耳蝸牛には、トランスデューサ、増幅器、電池、フーリエ変換器に相当する細胞や組織が備わる。この特異な臓器が働くロジックと病態の理解を目指し、医工連携に立脚した技術を用いながら「生きた動物」を研究してきた。音は、蝸牛に達すると、感覚上皮帯にナノ振動を生じる。そして、この細胞層の感覚細胞により、機械的刺激は電気信号へ変換され、神経や脳へ伝わる。蝸牛には、感覚上皮帯に振動増幅器が、別の細胞層に生体電池が分布する。これら部品の成立や相関の機序には謎が多い。そこで光干渉振動計を感覚上皮帯に対して最適化し、この細胞層を観測した。そして交流振動の特徴と直流動作を同定した。これらは蝸牛の高感受性の基盤の一つと推定された。 次に、特殊微小電極により別の細胞層を解析し、生体電池が2つのK+濃淡電池から成ることを示した。また、計算科学により、空間的に離れた生体電池と感覚上皮帯が電気的に連結して相互作用することを明らかにした。さらに薬剤性難聴の病態解明や難聴治療薬の開発への貢献を志向し、薬物の振る舞いと効き目を同時に測るモニタリングシステムを、理工系素材「導電性ダイヤモンド」に基づく針状センサを使い創出した。静注した耳毒性薬物を蝸牛で新技術により追尾すると、薬物の動態とその標的である生体電池の障害は、異なる時間経過を呈した。このような融合研究による蝸牛の作動原理の解明とその展開の可能性を共有する。

  • 林 豊彦
    2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 67_1
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー

    To provide a comprehensive service of Information, Communication Technology (ICT)- based assistive technology to persons with disabilities in Niigata City, Niigata IT Support Center for Persons with Disabilities was established in 2008, based on collaboration between Niigata University and Niigata city government. However, a survey of the knowledge and use of the disabled for dominant ICT-based assistive products made it clear that they did not use such products well, even lacking their knowledge. The reason of such miserable situation was that specialists in medicine, well-being and education directly connected to the disabled had little knowledge of such products. Then, I have been carrying out two different activities strategically: 1) directly supporting the disabled in collaboration with specialists in other fields; and 2) giving workshops or lectures to the specialists. Consequently, we now support more than 700 persons with every sort of disability and give nearly 60 lectures annually.

  • 木村 裕一
    2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 68_1
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー

    本講演では、良い論文の書き方について査読者の目線から説明する。 論文はこれまでに進めてきた研究成果を纏めるものであり、研究の進捗の過程で必ず書かなければならないものでもあるが、特に若手の研究者や大学院の学生では、どうやって書けばよいのか、何に注意をすれば良いのかと迷うことが多いのではないだろうか。 そこで、査読するものの立場から見て、分かりやすく読み易い論文にするには何処に注意を払えば良いかについて、出来るだけ具体的に説明を行う。十分な質問の時間を確保する予定なので、論文の書き方について日頃から疑問に思っていることを持ち寄っていただき、疑問点や解決策を会場で共有したいと考えている。

  • 横澤 宏一
    2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 68_2
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー

    本講演では、学術論文や論文誌における査読のもつ意味と、査読者や編集者の果たすべき役割についてお話ししたい。必ずしも正解があるわけではないので、できる限り会場で出席者と議論したい。特に若い研究者にとって、査読者は論文の掲載を阻む障壁であるかのような印象を受ける。しかし、論文は厳しい査読を経て初めて公表に耐えうる完成度になることが多く、 査読は論文の質を担保する上で欠かせないプロセスである。その意味で、論文の完成は著者と査読者、編集者の共同作業でもある。査読者には著者が見落としている観点での指摘や、論文の質を向上させるための建設的で具体的なコメントをお願いしたい。査読によって掲載論文の質を担保することは論文誌の質を保証することになる。査読者の考え方は時に様々なので、査読コメントを整理、補完し、最終的に採否を決める編集者の役割も極めて重要である。 競争的資金などの審査を担当して多くの申請書を比べて読む機会があると、採択される申請書がどういうものか自然と理解できるようになる。査読を担当することは、自分の関連分野の最新の研究成果を誰よりも早く知ることができるだけでなく、論文の書き方を理解する上でも有用である。

  • 大野 ゆう子
    2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 69_1
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー

     ACP(advance care planning)は、終末期医療の一端で語られることが多いが、生き方全般において身近な人・専門家・関係者と同じテーブルで話し合い、自ら納得した将来の変化に備える意思決定のあり方shared decision makingである。研究もいろいろな人と同じテーブルで話しながら、自らの感性により話(刺激)を増幅・変調しinspirationへ変換して異次元の研究に反映させていく、すなわちAIP(advance inspiration planning)作用といえる。研究をディスカッションする面白さの一方で、どうやったら研究教育職につけるのか、そもそも自分は研究者に向いているのかと悩む。レヴュアーにどう返事を書くかと考える頭で、帰ったら洗濯しなきゃと考える。不条理な話に泣きながら解決策を探しつつ、研究の突破口を探す。この振れ幅の毎日の中に発見・発明があり、次のテーマもある。だれでもやっていることだが、多様・異質であるほど振れ幅は大きくなり感性は鍛えられる。このセッションでは、その鍛えられた感性を生かし、振れ幅の大きさを懐の深さとして活躍されておられる先生方にご講演をいただき、そのバイタリティーに触発されたく思う。

  • 秋山 庸子
    2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 69_2
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー

    「さらさら」「しっとり」「すべすべ」といった触感は、様々な素材の使用感や快適性を決定づける重要な感覚であるが、五感の中でも客観的な評価が難しい感覚であるといわれてきた。日常生活においては、触感は感覚的な言葉、すなわち形容詞やオノマトペで表されるが、このような感覚を定量化し、客観的に評価することを試みてきた。触感を定量化したいというニーズは高く、その対象は繊維製品、家電製品、化粧品などさまざまである。ここでは、シャンプーのすすぎ時の“きしみ”の感覚を定量化することで、きしみのないシャンプーの製品設計を行った事例を紹介する。洗髪すすぎ時の“きしみ”の感覚は、洗髪時に不快な感覚を生じるため、シャンプーの使用感を決定づける重要な感覚である。この感覚を定量化し、さらにシャンプー製剤の処方設計に落とし込むまでの一連の試行錯誤を通じて、触感の定量化の難しさと面白さについて紹介する。上記の事例のように、さまざまな触感の背後にある物理的因子を明らかにし、触感を引き起こす物理現象をモデル化し、計測できるようにするための考え方や手法について紹介する。さらに、最近の研究として、触感によって人が感じる快・不快の特徴に関する研究や、人工知能を用いた触感の推定の試みについても紹介する。

  • 吉崎 亜里香
    2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 70_1
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー

    幼児期の睡眠の問題は、後年の心身発達や精神疾患・肥満など様々な側面のリスク要因であることがわかっており、発達早期からの支援の必要性が注目されている。また、子どもが睡眠の問題を抱えている家庭では養育者の育児ストレスが高いことも指摘されており、家庭全体のQOLに関連する問題として捉えられている。これらの知見から、睡眠への介入は子ども本人への支援の視点のみならず、家庭支援という視点でも非常に重要と考えられる。一方で、本邦は諸外国に比して子どもの睡眠時間が短いことで知られる上、共働き・核家族の増加をはじめとする近年の家庭生活の変化や、メディア曝露の増加や低年齢化等の社会生活の変化に伴い、子どもの睡眠健康はさらなる危機に瀕している。発表者らのグループでは、このような背景に対して、小児睡眠・発達の専門家と養育者のインタラクションを通じて乳幼児の睡眠習慣を改善するためのスマートフォンアプリケーション「ねんねナビⓇ」を開発し、複数の自治体・大学との連携により社会実証を行ってきた。また、AI開発の専門家との連携により、本邦の文化と家庭ごとの背景・生活状況に応じて調節された助言を抽出するシステムのAI化を推進してきた。睡眠と子育てのリテラシーと、家庭に合わせたスモールステップの助言を養育者に届けることで、養育者の育児負担を減じながら、発達早期における健康的な睡眠習慣づくりを通じて健全な発育と現代の子育てを支援する。当日は実際の支援システムや社会実装での結果について紹介する。

  • 吉本 佳世
    2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 70_2
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー

    手術支援ロボット技術の発展により,低侵襲手術の適応範囲が広がってきている.低侵襲手術においては切開部が小さいために回復が早いという利点がある一方で,従来の開腹手術において使用できていた器具の挿入が難しいという問題がある.そこで,低侵襲手術やロボット支援下手術により行われる心臓手術の1つである僧帽弁形成術を対象に,画像処理技術の1つである拡張現実感(Augmented Reality : AR)技術を用いた手術支援システムを提案し,原理確認実験により有効性を検証した.従来,直接挿入していた計測器具の代わりに,ステレオ内視鏡画像を用いて取得した情報に基づき器具を仮想表示することでサイズ選定の支援を行うものであり,計測時間の短縮を可能とする.また,主に消化器内の観察用途でも内視鏡が用いられるが,内視鏡は視野が狭いため消化管全体の形状の把握や以前の診断結果との比較が困難である.ステレオ内視鏡により消化管内部を撮影したステレオ画像を用いて3次元情報を取得し,消化管を3次元的に展開することで,腫瘍や炎症の位置関係が把握しやすい画像の作成の試みについても紹介する.

  • 生田 幸士
    2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 71_1
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー

    欧米、中国、アジアの研究大学には20年以上前から存在する生体医工学分野の学科、専攻は日本では希少である。人材育成を忘れ、企業や一部の大学、研究機関を中心に開発費の提供する日本の行政手法は新産業育成の基本から外れている。本学会では2015年から生田や石原、橋爪らME推進委員会の委員長らを中心に、生体医工学分野の学科、専攻の新設促進を模索し、大会でシンポジウムを開催してきた。本シンポジウムでは、すでに学科、専攻を開設運用されてこられた教授をお招きし、教育、運営上の課題などを講演いただき、現在学科の新設を企画検討中の会員の知的支援を目的としている。日本が得意とする科学技術分野の活用だけでなく、学部時代の解剖学、生理学、生化学など基礎医学との融合教育が必須となる。筆者は2008年から2013年までの名古屋大学工学部のGCOE(グローバルCOE)プロジェクトで、学部と修士課程の工学部学生に医学部の解剖実習に合流して関節や臓器を触ることで、人体の力学特性の体感と空間把握を得るプログラムを含めた。さらにUCLAと研究協定を締結し、海外のバイオエンジニアリング学科の学生、教員との交流を深めるため年間2回の国際交流企画を実行した。これらの効果は生体医工学分野の研究で博士取得した学生が増強されたことが収穫となったが学科増設には至っていない。

  • 石原 謙
    2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 71_2
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー

    世界の先進国では、社会的ニーズと産業的ポテンシャルの高さに応えるべく医工学・ME系学部学科が設置され、多くの人材を輩出している。翻ってわが国での国公立大では、ようやく大学に設置され始めたところである。受験生のためのWeb情報では全大学に約50件の医用生体工学系関連の学科があり、国公立は20件、私立が30件とあるが、実態は臨床工学技士や放射線技師等の養成コースか、工学部の研究室での研究テーマを選択できるというのがほとんどである。学科名として「(生体)医工学」「(生体)医用システム工学」などを標榜し、最先端の研究開発を組織的に行っているのは、東北大学・東京農工大学や、東京女子医大と早稲田大など数えるほどしかない。 それに対して、医療系機器開発支援は、30年来大小を取り混ぜ、官民で多くの助成事業が長らく続いているが、世界を先導するような画期的成功は、山中伸弥教授 CYBERDYNEの山海嘉之教授、田中耕一氏などこれまた数えるほどで、山海教授や田中氏の偉業はひとえに個人の偉大なる才能と努力の賜である。現行助成制度の目標は理解できるが、研究者から見ると、事務手続に手間がかかりすぎ、掣肘が強く、予算年度に縛られた短期間不自由の支援制度で、創造的成果に結びつくとは必ずしも言い難い。コロナ禍での日本の失態が何よりの証拠である。 近視眼的成果を求めぬ医工学系学科あるいは学部の設置と、それを支える中長期的に実績を育むメンター意識が何よりも大切である。それなくして、日本での医工学系学科も未来も無い。

  • 増谷 佳孝
    2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 72_1
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー

    公立大学法人広島市立大学情報科学部では,2012年度に医用情報科学科が新設され,2016年度には大学院情報科学研究科に医用情報科学専攻が発足しました.本学科・専攻は,バイオ情報学,医用画像工学,医用ロボット,脳情報科学,医用情報通信の5つの分野の研究室より構成され,情報科学を通して将来の医療産業を担う人材を育成しています。また,学内のみならず,地域の他大学と連携して「臨床情報医工学プログラム」を実施してきました.同プログラムでは講義,病院での臨床実習,企業でのインターンシップなどを通して,医療系・情報系・工学系の異分野が融合した教育・研究を展開し,臨床現場での実践力を備えた人材の強化を行いました.さらに,地域の高校生等を対象とした「ひろしま医工学スクール」を年1回開催し,国内外の先端的研究者の講演やハンズオンチュートリアルにより,医工学がどのような学問かを広く知ってもらう機会を提供しています.本講演では,広島市立大学におけるこれらの医工学教育に関する取り組みを紹介し,これまでに得た知見と展望について述べます.

  • 桝田 晃司
    2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 72_2
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー

    東京農工大学工学部では、2019年4月に大規模な組織改編を行い、「生体医用システム工学科」を設立しました。医学部を有しない国立大学では初めての試みであり、同名の学科は他大学には存在しないユニークな位置付けになっています。設立に際しては、電気電子工学科と物理システム工学科から有志の教員が集まり、2016年から準備を進めてきました。キャッチフレーズは「未来の医療技術は君が創る」とし、医療分野に貢献する技術者養成を標榜しています。カリキュラムは「電子情報系」「物理系」「生物医療系」の3本柱とし、1年次前期からそれらを学べるよう設計しました。特に「生物医療系」の科目構成には困難を極め、主に外部の非常勤講師に頼ることとなりました。10数名の医師を招聘して構成したオムニバス講義「臨床医学概論」では、各診療科で使われている医療機器の紹介とともに、医療現場の立場から工学者への期待が投げかけられ、学生のモチベーション向上に役立っていると思われます。1学年の学生定員は58名、それに伴い教員数も14名と少なく、改組前と比べて講義負担が2倍以上に増えました。学生実験についても、生体計測や超音波計測などのテーマを全くのゼロから立ち上げました。設立から3年が経過し、ようやく落ち着いて来たと思いたいところですが、第1期生がこの春に4年生となり、卒業研究、就職と大学院入試を控え、日々調整が続いています。

  • 山家 智之, 白石 泰之, 山田 昭博
    2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 73_1
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー

    神武天皇が朝廷を開き、聖徳太子が十七条の憲法を定め「日出る処の天子」の国を整え、ペリーが襲来して維新から、科学・技術・軍事に必要性により帝国大学の制度が整えられ、1907年、東北帝国大学が仙台の地に設立されました。「研究第一」を掲げ、早くからME研究に着手され、私ども「抗酸菌病研究所」では、呼吸音研究の必要性から、心音図、超音波の開発に進み、世界で最初の「超音波心臓断層法」が開発されています。人工心臓研究も進み、大学病院では日本で最初の空気圧駆動補助人工心臓患者の長期生存に成功し、ME研究が患者さんの救命に直結しています。赫々たる伝統に基づき、わが国初の「大学院医工学研究科」が、東北大学に設置されました。医学の理論と、工学の理論は、全く異なります。と、言うことが判明したのは最初期の「教授会」での激論です。「医工学は工学である」「いや、そうではない」侃侃諤諤たる議論が続き、わが国でも初の試みとして「医工学研究科」の体制が整っていきました。医学系出身者にも工学系出身者にも広く門戸を開き、医学出身者には工学中心の教育、工学系出身者には医学教育を中心に、それぞれ最適な教育カリキュラムが組まれます。奨学金等も充実させ、広く人材を求めているので、国籍年齢性別に差別なく研究がすすめられ、教授よりはるかに年上の会社の社長さんの博士号などもありました。是非、一度、覗いてみてください。

  • 佐久間 一郎
    2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 73_2
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー

    生体医工学の意義は,基礎的な生命科学と臨床的な診断・治療システム開発をつなぐことを可能とする,新たな診断用・治療用医療機器・医療技術の実現に貢献するという意義と生命現象の定量的かつ再現性よい測定・分析・制御手法を提供することにより,生命科学研究の進歩に貢献するという意義を持つ.この基礎となる学理は,人体と物質・システムの相互作用を理解する学問である.ある特定の工学分野の深い知識を備え,さらに生体医工学に関する俯瞰的な視野,医学生物学等に関する基礎知識を獲得できるような教育体系の確立が求められる.

  • 堀 純也
    2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 74_1
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー

     1977年にME技術教育委員会が設立され,第2種,第1種,特殊という3つの試験を実施する計画でME技術実力検定試験が始まった.1979年に第1回第2種ME技術実力検定試験(以下,第2種試験)が実施されたが,過去問を紐解いてみると問題の出題形式や問題数も変遷が見られる.第1種ME技術実力検定試験(以下,第1種試験)は,1995年に第1回試験が実施され,第4回から選択問題を導入,第25回には出題形式の大幅な見直しを行った. 改めてME技術実力検定試験の目的を振り返ると,第2種試験は,「医用生体工学技術を応用したME機器の安全管理を中心とする医用生体工学に関する知識をもち,適切な指導者のもとでそれを実際に医療で応用しうる資質を検定する」ことを目的としている.第1種試験は,この中の「適切な指導者」の育成を目指している.つまり,高度な専門知識をもちあわせている人を育てることが,必ずしも第1種試験の目指すところではないことから,現場で起こり得る問題や現象を中心に出題の題材として扱い,問題の中に与えられた条件・情報等から解決策を探る力を検定する内容に見直しをした.さらに,新型コロナウイルス感染症拡大を受けてオンライン試験を導入するなどの工夫も行った.本セッションでは第1種試験の例題解説も含めて,各試験の変遷と試験で求める能力・資質について述べる.

  • 西中 知博
    2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 75_1
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー

    補助人工心臓治療が適応される重症心不全患者は、体外設置型補助人工心臓の選択肢しかなかった時代には院内生活が必須であった。植込み型補助人工心臓の普及により、補助人工心臓装着患者の在宅療養、社会復帰が可能となり、その症例数は増加傾向にある。同時にその在宅療養期間は、今後更なる長期化が予想される。植込み型補助人工心臓装着患者では、重症心不全患者の在宅療養に伴う一般的管理に加えて、補助人工心臓に関する管理が必要となる。補助人工心臓関連機器の管理、および補助人工心臓ドライブライン体壁貫通部管理は代表的な重要課題である。また、連続流式補助人工心臓の使用に伴う動脈脈圧低下および関連する各種病態、ならびに大動脈閉鎖不全症、消化管出血等の出血性合併症、および脳血管障害を含む各種合併症に関連する管理も重要である。これらの管理の向上を達成させることは補助人工心臓装着患者の臨床成績、生活の質の向上、および患者の社会復帰の促進に重要であり、そのために在宅医療の果たすべき役割は極めて重大である。

  • 植野 彰規, 前田 祐佳
    2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 75_2
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー

     植込型の左室補助⼈⼯⼼臓(以下,LVAD)を装着した患者に対しては,退院前に⾎圧測定の重要性が教えられ,他の健康管理指標(体重や脈拍数など)とともに⾃宅での定期的な測定,記録を習慣づけるように指導が⾏われる。しかしながら,植込型LVAD患者ではLVADそのものが連続流式であることに加えて,⾃⼰⼼臓からの拍出が乏しい症例が多いため⼀般的に脈圧が低く,⾃宅カフ式⾎圧計では測定困難な症例も少なくない。そのため,カフレス⽅式で在宅での⾎圧測定を実現する技術の開発が求められている。 本発表ではこれらの問題点を整理するとともに,解決に向けた⽅策について検討状況を報告する。特に,ガイドラインで管理が求められている⾎圧は平均⾎圧で,平均⾎圧が⼼拍出量と全抹消⾎管抵抗の積で求められること,ならびにLVAD内部では⼼拍出量がモニタされていることに着⽬し,抹消⾎管抵抗の相対変化を検出することを主眼とした技術について検討状況を報告する。

  • 政金 生人
    2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 76_1
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー

     在宅血液透析は自分のライフスタイルに合わせた十分な透析を行うことが最大のメリットであり、代替する腎機能はプログラムによっては健常腎の50-60%にも及び、生存率は献腎移植に匹敵すると報告されている。しかしながら、我が国では約35万人の維持透析患者の0.2%、約760人がその恩恵に浴しているのみである。普及が進まない理由の一つには、施設血液透析の機器や治療パターンをそっくり自宅に持ち込むことへの不安、患者本人と家族の負担感がある。生体医工学技術を使って、この不安、負担感を軽減し、より質の高い治療モードにできないだろうか。 在宅血液透析でなんとしても回避したい治療中のアクシデントは、穿刺針の自然抜去による大量失血、透析低血圧によるショックである。そして、誰にでも起きうる脳卒中や心臓発作が治療中におきた場合どうするか、これらのアクシデントによる透析中の直接死をいかに回避するかである。在宅血液透析は患者にとっては日常生活の一部であるため、これらのアクシデントを予見し回避するためのモニタは、非拘束型、非接触型機器である必要がある。心拍数、呼吸数、血圧、体温、体動などの生態情報を統合し、それが日常的・安全な領域での振幅なのか、危機的な状況が発生したのか、あるいはそこに向かいつつあるのかという判断がなされるのが理想である。 世界で標準的な週3回透析治療では、2日間のインターバルが生じる。これがバイオリズムを乱し、透析患者の睡眠障害の原因となり、インターバル後に循環器合併症を発生させるメカニズムと想定されている。このバイオリズムの乱れ、治療モードが生体に与える負荷を数値化、可視化できれば、在宅血液透析では治療プログラムを随意に変更出来るため、よりその人のバイオリズムにシンクロする治療プログラムを設定することができる。 我が国の在宅血液透析を阻む因子には、ゼロリスク社会における医療者の逡巡もあるが、これは生体医工学技術により安全性を究極に高めること、異常発生時の緊急サポート体制を整備することである程度解消できる。その上で患者の個別の生体状況に即した治療プログラムを組むことができれば、一歩先の治療法に進化させることができる。

  • 瀧 宏文
    2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 76_2
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー

    在宅血液透析は自分の生活スタイルに合わせて透析を実施することができるだけでなく、感染症流行時においても安心である。一方、医療スタッフが常駐しているわけではないため、安全確保が重要課題である。当社は、京都大学とミリ波レーダ技術を用いた非接触生体情報センシング技術を共同開発し、2021年2月に生体情報を取得可能な研究用機器「VitaWatcher」を発売した。本機器はミリ波レーダにより人の位置を自動検知し、呼吸や拍動に伴う体表面の変位を非接触で測定できる。健常者を用いた社内実験では、4例における座位安静時における呼吸ベルトから得られた呼吸数とミリ波レーダ信号から得られた呼吸数の相関が0.99を超えており、非接触で高精度の呼吸状態推定が可能であることが示唆された。また、高サンプリング周波数に改良したモデルでは、座位安静時における心拍間隔の高精度測定に成功した(日本睡眠学会定期学術集会2021)。ミリ波レーダ計測はカメラと異なり、プライバシーの問題が発生しづらい。そのため、在宅透析時の常時モニタリングに適する。在宅透析時の生体情報データを蓄積し、様々なインシデントを検出・予測するアルゴリズムを開発することで、血液透析時の安全性向上に貢献できると考えられる。

  • 神山 英昇, 北間 正嵩, 清水 孝一
    2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 77_1
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー

    人工透析療法では,高流量の体外循環を確保するため,動脈と静脈を皮下吻合する自己血管内シャントが多用される.しかし内シャントは,壁の薄い静脈に動脈圧がかかることや穿刺ストレス等で狭窄や閉塞を起こしやすい.このような問題により,その日常管理が重要となる.しかし現在の管理手法は,視診,聴診,触診など検査者の技能や経験に大きく依存し,遠隔医療や在宅治療には不向きである.また,狭窄や閉塞の確定診断にはX線血管造影検査が行われるが、これも在宅治療実現の障害となっている.これに対して我々は,近赤外光を用いた血管透視法の利用を提案してきた.この方法によれば,安心安全な光を用いて内シャント部を可視化できる.また,適切な画像処理および判定アルゴリズムにより,内シャント部狭窄の兆候を早期に自動検出できる.これらの特長から,内シャント日常管理が在宅で可能となれば,今後患者数の増加が見込まれる在宅透析が大きく前進すると考えられる.また提案手法によれば,穿刺前から血管状態を定量的に把握できるため,穿刺部位の選択や定期的な指導など,医師に対する診療支援にも有用性が高い.これまで,内シャント可視化システムを開発し,生体模擬試料を用いて,局所的な血管狭窄や偏心性狭窄の検出など,内シャント日常管理の可能性を実証してきた.本報告では,提案手法および試作システムを紹介するとともに,在宅治療に向けての諸課題について述べる.

  • 黒田 知宏, 杉町 勝, 木村 裕一, 大城 理, 村垣 義浩, 佐久間 一郎, 鈴木 孝司, 鎮西 清行, 吉元 俊輔, 櫻井 理紗, 黒 ...
    2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 78_1
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー

    The clinical trials act of Japan, enforced April 2018, which allows only medical doctor license holders to perform clinical trials using unauthenticated medical devices had a strong impact to medical device development researches which are mainly performed by engineering researchers. The authors conducted online survey for understanding impact of the act on medical device development researches in November 2021. The total number of responses was 46, 35% of them are forced to modify or abort their original research plan, although most of them has no need to do so. This survey result clarifies that education for review board members about medical device development researches and slight amendment of the act to enable medical device development researches are required for promotion of medical device development researches.

  • 関野 正樹, 吉元 俊輔, 小田垣 雅人, 齋藤 淳史, 中澤 公孝, 西川 敦, 樋脇 治, 美馬 達哉
    2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 78_2
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー

    臨床研究法WGでは,医療機器開発に関する研究に対し医行為の該当性を判断するための参考資料として,身体の構造もしくは機能に影響を及ぼすかどうかを判断するための別表の作成を進めてきた.本班では,生体の磁気刺激を対象とした別表作成を進めている.特に,磁気刺激の中でも先進的な研究である経頭蓋磁気刺激(Transcranial Magnetic Stimulation: TMS)を中心に,誘導電界による刺激作用が支配的となる周波数帯域を対象として,安全性のガイドラインや総説,臨床研究の結果などの文献を整理した.また,TMS以外にも磁界の生体作用に関する文献とそれらに基づく国内外の規格やガイドラインなどを広く調査した.本発表では,これまでに調査・議論した生体の磁気刺激に関する安全性や各種ガイドラインに基づき,この度作成した別表を示すとともに,その解釈や活用方法について紹介する.また,磁気刺激を用いる研究を安全に実施するための条件について論じる.

  • 増尾 明, 佐久間 拓人, 加藤 昇平
    2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 79_1
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー

    筋萎縮性側索硬化症に代表される神経難病リハビリテーションにおいて、対象者の意思伝達手段の確保は極めて重要な課題である。本研究は,神経難病患者の意思伝達を支援するBrain-Computer Interface(BCI)に適した認知課題特性の検討を目的に、認知課題遂行時における機能的近赤外分光法(fNIRS)による生体信号を計測し、脳賦活反応を分類するモデル性能を評価した。健常成人10名を対象に,spectratech社製のOEG-SpO2を使用し、前頭前野領域を関心領域とする16チャネル計測を実施した。脳機能計測には安静30秒とタスク30秒で構成されるブロックデザインを使用し,暗算課題、音楽想起課題、心的書字課題、および心的回転課題を遂行時のfNIRS信号を3試行ずつ計測した。取得した生体信号より、時間窓6秒、ステップ幅0.6秒でセグメンテーションし、最大値、最小値、算術平均、標準偏差、および側性指標による特徴量を抽出した。特徴選択は主成分分析およびUniform Manifold Approximation and Projection、学習器はRandom Forestをそれぞれ用い、3分割交差検証により性能を評価した。本稿では、各認知課題の正答率および脳賦活反応から、fNIRS-BCIに適した認知課題特性および神経難病リハビリテーションへの応用可能性を検討する。

  • 佐藤 充, 近藤 世範, 岡本 昌士, 高橋 直也
    2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 79_2
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー

    自然災害や事件・事故の発生により、遺体が発見された場合には個人の識別を行う。この時、生体指紋としてDNAや歯科所見を利用するが、遺体の腐敗や欠損が理由となり識別困難となる場合が存在する。また、今後発生が予測される南海トラフ巨大地震では甚大な被害が予想されるため、損傷の可能性が低い部位を用いた個人識別手法の確立は急務である。そこで、本研究では胸椎の形状を生体指紋として用いた個人識別法を開発し、本手法を用いることによる個人識別精度を調査した。本手法では死後画像の胸椎の高さ、幅、奥行きにおける各最短径を三次元座標に変換し、対照となる生前画像についても同様に変換する。三次元座標中の二点間の距離、すなわちユークリッド距離を算出する。第1胸椎から第12胸椎までを算出し、これらの合計値が最小となったペアが同一人物であると見なされる。用意したCT画像は生前画像559症例と生前及び死後の画像が存在する82症例である。合計641症例の生前画像中から82症例の画像照合によって本手法の個人識別精度を評価した。結果として、10個以上の椎体のユークリッド距離の合計を基に個人識別した場合の精度は100%となった。4個以上の椎体を使用した場合の精度は97%以上となった。本手法を用いることで高い精度で個人識別が可能である。また、少ない椎体数でも個人識別候補を絞り込める可能性がある。

  • 戸嶋 和也, 西谷 萌, 一寸木 佑, 田丸 司, 和坂 俊昭, 森田 良文
    2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 80_1
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー

    【目的】我々の研究グループは把握力調整能力評価トレーニングデバイス(以下,iWakka)を開発した.iWakkaは設定した目標値と把持力の誤差を検出するため,複数施行における時系列データから,高齢者の運動学習を定量化できる可能性がある.本研究の目的は,iWakkaによる運動学習の定量化が軽度認知機能低下者(Mild cognitive impairment : MCI)を判別する評価指標となるかを検討する.【方法】健常高齢者(以下,Normal Cognitive : NC群)10名とMCI群の10名を対象とした.iWakkaは視覚追従課題を提供する.視覚追従課題とは,把握力の目標線とiWakkaを操作することで得られる把握力の実測値との平均絶対誤差を定量化する.これをAdjustability of Grasping Force (以下,AGF)と定義する.今回はランダム課題とリピート課題を用いて,それぞれの課題に対する運動系列学習記憶を定量化する.それぞれの課題に対して,AGFの学習率を定義して比較した.加えて認知機能評価として,TMTA/B,FAB,レイ複雑図形の模写と遅延再生を評価した.なお,本研究は当院の倫理審査会の承認を得て実施した.【結果】それぞれの課題の学習率を比較すると,NC群ではリピート課題の方が有意 (p<0.01) に高かった.一方,MCI群では差が認められなかった.また,リピート課題において認知機能評価との相関を認めた.このことからiWakkaから得られる学習率は認知機能を表す可能性が示唆された.【考察・まとめ】iWakkaによる運動学習の定量化は,認知機能低下を判別するための評価指標となる可能性が示唆された.

  • 三谷 海人, 綾部 誠也, 山田 美裕宇, 森村 和浩, 熊原 秀晃
    2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 80_2
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー

     本研究は,身体負担適正化支援デバイス開発のための基礎的研究として,脈波に基づく二重積(Double Product:以下DP)の評価法を開発することを目的とした.被験者は,心疾患既往のない20歳から74歳までの男女41名であった.運動負荷は,自転車エルゴメータを用いた多段階運動負荷試験とした.脈波は,Photo Plethysmographyにて1,000 Hzで得た脈波を二次微分し加速度脈波として評価した.脈波の解析は,数値解析ソフト(MATLAB)を用いた.心拍数,収縮期血圧,DPの標準検査法は,心電図・血圧負荷システム(Tango 社製)とし,二誘導心電図を導出し,上腕カフによる血圧計測を行った.脈波に基づく収縮期血圧指標として試行値の日内変動は, 221.6±378.5から40303±71319 mV(16.6±26.4%から16.5±28.2%)であった.同運動負荷時は,座位安静に比して,50 wattsが99.4%,100 wattsが289.5%,150 wattsが387.9%であった. 運動時の脈波に基づく収縮期血圧指標は,標準的方法で測定した収縮期血圧との間に有意な相関関係を認めた(r = 0.928,p < 001).同様に,心拍数とDPの相関性も有意であった(心拍数:r = 0.999,p < 0.001,DP: r = 0.959,p < 0.001). 本研究の結果は,脈波PPGセンサから推定した脈拍数と血圧指標の積がDPBPの推定法として有用である可能性を示唆する.脈波PPGセンサによる収縮期血指標は,一定の日内・日差変動を含むものの,それらは,運動負荷時に伴う変動に陵駕される範囲であった.

  • 土屋 智裕, 中林 実輝絵, 髙山 卓, 藤島 理恵, 小島 茂樹, 櫻田 勉, 柴垣 有吾, 一之瀬 真志, 小野 弓絵
    2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 81_1
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー

    血液透析では短時間で体内の水分および老廃物が除去されることにより血圧低下や有痛性筋痙攣など透析の中断につながる合併症を引き起こすことがある。重篤な場合には透析中に心血管合併症を発症することもあり、その原因の究明および予防が喫緊の課題となっている。そこで透析患者の全身の循環動態の変化を詳細に検討することを目的として、拡散相関分光法を用いて透析患者4名の血液透析中の下肢前脛骨筋血流を計測した。透析中は筋血流量の計測に加えて15~30分毎に血圧の測定も行い、これらを併せて末梢血管抵抗を算出した。透析中の血圧が開始時点から1割以下の低下でとどまった血圧維持群では、透析の進行とともに下肢筋の血流量が半分程度まで減少し、循環血液量の低下に伴う末梢血管抵抗増加の補償作用により、血圧が維持されていると示唆された。一方で透析中の血圧が透析開始時点から2割以上低下した血圧低下群では、下肢筋の血流量が1.5倍程度増加し、透析治療中に昇圧薬の投与を行っても血圧低下や血流量の増加が改善しない症例も散見された。透析中低血圧を引き起こしやすい患者では、体液量および血圧の低下に対して交感神経性血管収縮が機能せず、むしろ末梢血管抵抗が減少することで動脈血圧が低下すると考えられる。透析中の筋血流計測は透析中に生じる血管調節不全を検出するうえで有用であり、今後、透析中合併症の予測・予防等への応用が期待できる。

  • 梅井 克行, 泉 樹里, 梅田 百合子, 岩田 まり, 中西 一秀
    2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 82_1
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー

    【はじめに】血液透析の治療効率はバスキュラーアクセスであるシャントの状態により大きく影響を受ける。シャントの血流状態が悪ければ脱血不良や再循環が生じ効率が低下する。今回、血流量以外のパラメータとして血管抵抗指数(Resistance Index : RI)に着目し、数値流体力学(Computational Fluid Dynamics : CFD)解析でRIが再循環率に与える影響を検証した。【方法】3D血管モデルを作成し、CFD解析ソフトであるOpenFOAMでシミュレーションを行った。シャント血流量を500ml/min、脱血速度は200ml/minとし実際の流速を模擬した血流を流入させた。設定したRIは0.94、0.80、0.60、0.50、0.0(定常流)で、計算は非圧縮性非定常流用のソルバーを使用し、再循環率は可視化用プログラムのParaViewで見積った。【結果】再循環率はRI0.94、0.80、0.60、0.50、0.0の順にそれぞれ28.1%、11.6%、0.44%、0.29%、0.0%であった。また、流入する血流の流速が30cm/s以下になると返血から脱血へ逆流する血流が顕著に観測された。【考察】RIが高ければ、血流波形は急峻なピークを呈し、最低速度が小さくなる。最低血流速度が脱血速度を下回る時間が長いほど返血からの逆流が増加し、再循環率が高くなると考えられた。

  • 小幡 大輔, 黒田 聡, 菅原 俊継, 早川 康之, 清水 久恵, 髙橋 昌宏
    2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 82_2
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー

    [はじめに]これまで我々は、磁性粒子を利用して血液回路関連の異常対応訓練シミュレータについて、主に透析の条件で検討してきた。今後、アフェレシスやECMO等への仕様拡大を目指しているが、特にアフェレシスのように低流量であると、磁性粒子が沈降して血液回路内を循環できない可能性が考えられた。そこで本報告では、磁性粒子が血液回路内で循環可能な限界流量について検証した。[方法]血液回路(内径4mm、全長150cm)を水平に設置し、粒子径20µmの磁性粒子懸濁液を50mL/minから400mL/minの透析とアフェレシスを想定した流量で、ローラポンプにより循環させた。循環中に血液回路の流入口と流出口を撮影し、その際の流動状態と画像から推定された磁性粒子の量を比較した。[結果] 磁性粒子懸濁液は、100mL/minより流出口まで一様に堆積を伴う流れとなり、160mL/minより均質流であった。また、磁性粒子の量は、100mL/minまで流入口に対して流出口の方が少なかったが、120mL/minより同量となった。[まとめ]磁性粒子が血液回路内で循環可能な限界流量は120mL/minであることが示唆された。しかし、アフェレシスを想定すると50mL/minで循環させるため、粒子径を小さくする等の検討が必要である。また、臨床を想定すると血液回路の様々な設置の条件での検討が必要であると考えられた。

  • 佐々木 一真, 新江 義正, 中根 紀章, 山内 忍, 奥 知子, 本橋 由香, 佐藤 敏夫, 阿岸 鉄三
    2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 83_1
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー

    【目的】維持透析患者で測定したシャント音信号に対してウェーブレット変換による時間-周波数解析を行い、各周波数成分の振幅スペクトルの大きさをカラーマップ画像として表示し、この解析結果画像間の一致度を表す正規化相互相関係数Rの変化から、シャント音の経時変化を総合的に評価する方法について検討している。今回は、径狭窄率や狭窄数、狭窄長の異なるAVFモデルを作製して擬似シャント音を測定、分析することで狭窄形状や狭窄数の違いがシャント音の音響特性に与える影響について実験的に調査した。【方法】動静脈吻合部下流の流出路静脈に径狭窄率を20%毎に変化させた狭窄長の異なる単一狭窄病変を模擬したAVFモデルと、複数狭窄病変を模擬したAVFモデルを作製した。このモデル内に拍動流循環システムを用いて水を拍動流として流し、流出路静脈上で擬似シャント音を測定した。そして、狭窄がない場合の擬似シャント音と狭窄病変を有するモデルで測定した擬似シャント音のRを算出し、その変化を実験的に調査した。【結果と考察】単一狭窄病変では径狭窄率が増加するにつれてRや回路内流量は一様に低下する傾向が見られたことから径狭窄率に加え、狭窄長もシャント音の音響特性に影響を与える可能性があると考えられた。また、複数狭窄病変では、下流狭窄部で周波数成分の低下やRが上昇しており、測定部位によってもRの変化に違いがみられることが確認できた。

  • 瀬川 新, 根本 充貴, 甲斐田 勇人, 山口 明乃, 木村 裕一, 永岡 隆, 山田 誉大, 北島 一宏, 石井 一成
    2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 83_2
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー

    【目的】局所糖代謝を示すFDG-PET像(以下PET像)はがんなど病変局所が高輝度で表れるため病変スクリーニング等に有用であるが、高代謝組織等も同様に強調され、誤診断の要因となる。本研究では、深層画像生成をPET像局所異常検知に応用した肺野内病変強調法を提案する。【手法】提案法は、CT像から深層画像生成で推定した病変を含まないPET像を推定し、CT像と同時撮像の実PET像と推定像の差分により病変強調を行うものである。画像推定深層ネットワークは病変によるPET像の輝度値上昇を含まない正常肺野PET/CT像40例のAxialスライスのみ用いて学習される。病変による輝度値上昇を含まない推定PET像が推定されるため、画像差分により病変強調がなされると期待する。提案法では肺野内の画像変換を効率的に学習するため、病変強調および学習の前処理として肺野領域の自動抽出と肺野外画像パターン除去を行う。提案法の定量評価には、病変とその周辺の画素値統計量から算出されるSNRを用いる。【結果考察】肺野12病変を含む有病PET/CT像12例を用い提案法の評価実験を行ったところ、提案法による強調像上の病変SNRは平均5.70であった。実PET像のSNR平均より0.68の向上を確認し、強調像と実PET像のSNRに対するWilcoxon符号順位検定から2群間の有意差がみられたことから提案法の有用性を確認した。

  • 堀田 蛍, 菅原 俊継, 清水 久恵, 大西 新介
    2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 84_1
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー

    【背景】冬季の北海道内にて、屋外の救急現場で外傷患者に輸液を行い、輸液が輸液回路内で凍結する経験をした。先行研究にて、低温環境では輸液の温度が屋外気温近くまで低下することを明らかにした。外傷患者の予後不良の原因となる低体温が34℃以下であるため、輸液の温度を34℃以上に維持するための温度低下防止策の検討が必要であると考えられた。これまで輸液回路の保温等を試みたが、十分な効果が得られなかった。本研究では輸液回路の加温の効果について検討した。【方法】長さ200cmの輸液チューブを100cmのエックステンションチューブで延長した輸液回路を使用した。輸液回路の加温には、チューブカバーヒータを使用した。加温箇所と加温温度は予備実験にておおよその見当をつけた回路末端側100cm、50℃前後とした。温度測定には熱電対(温度センサ)を用い、回路末端の輸液の温度を測定した。輸液は10分間行い、輸液開始直後の0分から1分毎に温度を測定した。【結果・考察】加温温度50℃では、輸液の温度が最高で33.6℃までしか加温されなかった。加温温度55℃では、輸液の温度は輸液開始直後(0分)で31.7℃、4分経過時で40.0℃(最高温度)、10分後に33.1℃であった。2分~8分で目標温度の34℃以上を維持する結果であった。加温温度60℃では最高温度が42℃を超えたため、適切な温度ではないと考えられた。【まとめ】回路末端側100cmを55℃で加温することは、輸液の温度低下防止に効果がある。

  • 野原 大人, 木元 廉, 日坂 真樹
    2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 84_2
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー

     本学医療科学科は臨床工学技士の養成校の一つとして,これまで多くの臨床工学技士を輩出してきた.特に,本学で利用してきたMoodleは臨床工学技士国家試験対策用e-Learningシステムとして大きく寄与している.一方,近年のスマホ世代の学生に対しては,モバイルデバイス(スマートフォンやタブレットPC)を用いた新たなe-Learningシステムが望まれており,携帯性や簡便生,機能性に優れたモバイルデバイス用アプリケーションソフトウェア(アプリ)の開発を進めてきた. 本研究室で開発を進めているAndroidアプリ(LinCo)は,直近11年分の臨床工学技士国家試験の過去問題(5択問題)を収録し,単語検索や手書きメモ機能,回答選択肢のシャッフル機能(標準・中級・上級の3モード),サーバーによるデータ収集機能など学生および指導者にとって利便性が高い機能を有する.本研究では,このLinCoの回答選択肢シャッフル機能とデータ収集機能を用いた学修効果について検討した.3名の学生が,1週間間隔で標準モード(選択肢の改変なし)と上級モード(選択肢のランダムシャッフル)を取り組み続けると,初期段階では上級モードの正答率は著しく低かったが,しだいに2つのモード間の正答率の差は小さくなる傾向があった.上級モードでは,過去問題の安易な理解だけでは正答できず,正確な内容理解を促せる結果が得られた.

  • 坪子 侑佑, 森村 隼人, 長嶋 耕平
    2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 85_1
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー

    著者は工学部を卒業し、大学院、ポスドクと現在に至るまで医療機器開発・評価に関する研究に携わってきたが、その中で幸い複数の医工連携プロジェクトを経験することができた。まだまだ若輩者ではあるが、生体医工学領域における、より若手の研究者の皆さんあるいは学生さんの参考となることを期待し、主に循環器疾患を対象とした”再生医療研究”、”人工臓器開発・評価のための大動物実験”、”ヒトの病変を模擬する非臨床評価試験系開発”を中心に、著者のこれまでのいくつかの施設でのネットワーク形成や研究開発の経験を紹介したい。また、医学部のない大学において、若手研究者として自身が主体となって医師・臨床工学技士の先生方と医工連携の共同研究を開始するに至った経緯と、現在の取り組みの一部を紹介したい。

  • 前田 祐佳
    2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 85_2
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー

    本発表では医療機器メーカーやヘルスケア関連企業へのマッチング活動、学内の産学連携部署との取り組みなどの実例を紹介する。発表者は、在宅健康管理に関する研究に従事しており、生活習慣病に起因する動脈硬化の予防および疾患の早期発見に関して、低拘束な計測デバイスによる課題解決を試みている。医療機器開発及びヘルスケア機器開発において、産業界との連携は不可欠と考えられる。しかしながら若手研究者は企業との連携関係を築く機会を得がたく、自身の研究シーズを機器開発へ展開する際に困難が生じる。本学での研究シーズと産業界のニーズとのマッチングに関する取り組みを紹介するとともに、産学連携マッチングイベントへ出展した「立位における低拘束な血行動態評価システムの開発」および「在宅健康管理に向けた無意識生体情報モニタリング」について、実体験を踏まえて紹介する。

  • 西川 拓也
    2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 86_1
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー

    医工連携を進めるにあたり、特に若手研究者は他分野へのつながりが乏しく研究を開始することすら難しい場合が少なくない。他分野の研究者へとつながる「場」が重要となる。医学系研究者が生体医工学会の学会活動を通じて、工学系の研究者とつながり共同研究を開始した経験を踏まえ、若手研究者がどうやって医工連携を進めていくかについて議論する。

  • 桑名 健太
    2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 86_2
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー

    若手研究者が研究経験を積んで,新たな研究テーマを立ち上げるようになってくると,臨床の意見を聞きたい,研究室にない技術を導入したい,等の要求が高まってくる.このとき,学会は一つの連携のきっかけをもたらす場ではあるものの,若手研究者にとっては成果発表の場と位置付けられていることが多く,分野の異なる研究者とどのように接点を持てばよいかわからないという状況がある.演者自身も学位取得までは学術集会に参加し成果発表を行うことが学会の活動と認識していたものの,学位取得後に学術集会の運営に関わり,その領域の先生方に存在を認知いただいたことが,その後様々な連携の構築につながったと考えている.そこで本演題では,工学基盤技術の研究を行う研究室から医工連携・産学連携が盛んな研究室へ異動した後,学会運営を通して連携を構築してきた演者の経験を踏まえ,異分野との連携構築における学会の一つの活用法を紹介する.

  • 荒船 龍彦
    2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 87_1
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー

    学位取得後アカデミックポストに進んだ場合,博士論文の内容のテーマを中心にして自らの研究の主軸を設定する場合がほとんどと思われる.その博士論文テーマに関連した小さい研究テーマを複数立ち上げることはできるだろうが,逆に博士論文テーマ以外の研究分野や,全く異なる疾患対象領域などにテーマを増やしていくのは労力と時間を要し,一人でそれを創出するのはさらに困難であると思われる.筆者は学位取得後3年間大学に在籍し,その後,当時独立行政法人であった産業技術総合研究所のポストに着任した.学部生,大学院生を多く擁し,学生1人1人に研究テーマを持たせることで人数分のテーマを運用する大学教員と異なり,研究所所属の研究員は外研生として大学から学生を迎え入れない限り,1人でなるべく多くの研究テーマを同時に運用する必要があることから「1人で1研究室」と称されることもあり,また筆者が在籍していた研究グループにはまさにそういった研究者が数多く所属していた.研究所所属の研究者となって,急遽研究テーマを量産する必要が出た際に,どういったポイントを重視して,どのような外部人材との接触から効率的に新しい研究テーマを創出し,運用したのか,筆者の研究所所属4年間の間の取り組みを紹介し,今後医工連携,産学連携テーマを増やし,平行して複数を運用する必要にある若手研究者の参考になるノウハウとして共有する.

  • 川崎 瑠斗, 佐伯 壮一, 鈴木 崇弘
    2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 88_1
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー

    近年,自家再生組織の培養技術向上により,再生医療の実現が急速に進んでいる.培養組織における組織力学特性は移植後の生着性に影響を与えると考えられるため,培養工程中の非侵襲 in situ 検出法の確立が求められる.原子間力顕微鏡(AFM)を用いた評価が適用され始めている.これは接触法による表面計測であり,組織内部の断層可視化計測は不可能である.更に,培養工程の最適化には,コンタミネーションを回避しつつ経時的かつ完全非接触・非侵襲に組織力学特性の定量評価が求められる.本研究では,再生組織力学特性のマイクロ断層評価法の確立を目的に,ドップラーOCT(OCDV)に非接触荷重負荷デバイスとして超音波トランスデューサを導入したUA-OCDVシステムの構築を行った.本実験では,サンプルとしてHDF細胞をコラーゲンゲルで包埋し,3次元培養したヒト培養真皮に適用した.UA-OCDVにより検出したヤング率は従来手法にて計測できたヤング率とのオーダーの一致が確認できた.更に,培養日数の異なる複数のサンプルに対する適用実験では,培養日数によるヤング率の増加が確認できた.これは,生育に伴うコラーゲン線維の増加によるものであると考えられることから,再生組織力学特性の検出妥当性が確認され,経時的に非侵襲断層評価可能であることが示唆された.

  • 石井 亮輔, 古川 大介, 佐伯 壮一
    2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 88_2
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー

    加齢や光老化によって真皮上層におけるコラーゲンやエラスチンの組織変性が起因となり,粘弾性力学特性が変化しシワやたるみが発生する.本研究では,多機能OCTを用いたヒト皮膚マイクロバイオメカニクス断層診断システムを構築する.本システムは,ヒト皮膚に荷重負荷する吸引デバイスとOCTによって構成されている.血流によって生じる微小変動に対し,隣接干渉信号から位相差を求める血管網検出に加え,吸引圧による皮膚変形を画像相関解析(OCSA)に基づきひずみ速度分布として算出し,粘弾性力学特性をマイクロ断層可視化することができる.20代被験者の前腕屈側部内側を静置安定し,3次元毛細血管網検出後に,正弦波吸引負荷による動的粘弾性試験を実施した.その結果,表皮層と真皮上層それぞれのひずみ速度の時間推移を比較すると,位相差が発生することを確認でき,真皮上層では位相が遅れることから粘性要素を検出していると考えられる.また,3次元毛細血管網断層とひずみ速度断層像を比較みると毛細血管がある場所では,周辺組織に対しひずみ速度が大きく発生していることが可視化された.これは毛細血管が弾性的であることからひずみ速度が大きくなると考えられた.これより,毛細血管とひずみ速度の相関関係を考察することが可能であると考えられる.よって,皮膚内部の力学特性をマイクロスケールにて断層可視化でき,スキンメカニクスの評価可能であることが示唆された.

  • 佐伯 壮一, 福山 裕人, 井上 敬介, 平田 智之, 塚原 義人
    2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 89_1
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー

    近年,変形性膝関節症(OA)等のロコモティブシンドロームによる労働力低下が懸念され,初期OA診断法の確立が望まれている.そこで,Optical Coherence Tomography (OCT)に基づき,荷重負荷による軟骨内部の組織変形及び関節液流動をひずみ速度の時空間分布として断層検出するOCDS (Optical Coherence Doppler Straingraphy) システムを構築した.OCDSシステムの初期OA臨床診断応用のため,関節内視鏡とロボットマニピュレータを実装したRMA-OCDS (Robot manipulating Arthroscopic OCDS)システムを提案する.提案診断法の妥当性検証のため,ブタ関節軟骨より採取した正常軟骨及びコラゲナーゼ酵素処理を2時間施し粘弾性を変化させた模擬変性軟骨サンプルをRMA-OCDSに適用した.その結果,軟骨内部の組織変位及び関節液流動によるひずみ速度の断層可視化を行うことで,RMA-OCDSシステムの有効性が示唆された.

  • 小川 良磨, 秋田 新介, 武居 昌宏
    2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 89_2
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー

    電気インピーダンストモグラフィ(EIT)は,外周に多数配置した電極から電流を印加し,測定したインピーダンスZから導電率分布σを画像再構成する方法である。近年、リンパ浮腫などの皮下細胞外液のσに時間・空間局所的変化が生じる疾患を非侵襲かつ高速に可視化する診断技術として期待されている。しかしながら、σの時間・空間変化が局所的に生じる場では、測定したZに及ぼす影響が非常に小さいため、高精度でσを可視化することは難しい。そこで本研究では、このような可視化の問題を解決するために、局所的変化を抽出可能なスパースベイズ学習(SBL)を用いた周波数差EIT(fd EIT)を提案した。提案手法は、ステップ1: ブロック化列ベクトルの形成、ステップ2:σの先験情報を用いた皮下脂肪識別、ステップ3:時間相関抽出から構成される。提案手法を評価すべく、健常者15名に対して長時間立位と脚拳上により下肢起立性浮腫を発生させる実験を行い、細胞外液の時間・空間局所変化の可視化を行った。空間平均導電率〈σ〉SATは、従来法である生体電気インピーダンス法(BIA)によるインピーダンス〈z〉BIAと強い正の相関を示し(相関係数0.715<R<0.957、n=15、p<0.05)、長時間立位時に減少し、脚拳上時に増加した。〈σ〉SATは皮下細胞外液のナトリウムイオン濃度変化と関連し、σの局所最大位置は大伏在静脈と関連していた。

  • 矢野 哲也, 浅野 昂佑, 石塚 空
    2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 90_1
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー

    緒言 連続流血液ポンプを通過する赤血球には高いせん断応力が負荷され,血球損傷が問題となることがある.本研究では,赤血球脆弱性に着目し,体外循環中のその変化について調べた.方法 リザーババッグと遠心ポンプ(SP4538X,テルモ)をチューブで接続した回路に,クエン酸ナトリウム抗凝固ブタ血液600 mLを充填し,ポンプ回転数と流路抵抗を調節して流量5 L/min,ポンプ差圧100 mmHgとし,血液温度を37 ℃に保って循環させた.循環開始後,予め定めた時刻に回路から採取した血液3 mLを遠心分離し,赤血球6 μLをリン酸緩衝生理食塩水1.5 mLに添加し,試料液を調製した.蒸留水0.50 mLを入れたキュベットにレーザ光を入射し,透過光パワーの連続計測を開始後,試料液1.0 mLをキュベットに注入した.試料液中の赤血球が浸透圧によって膨潤,崩壊することにより透過光パワーは増加する.透過光パワーの時間変化の速度が血球脆弱性を反映するものであることを事前に確認している.結果および考察 当初,血球脆弱性は循環時間の経過とともに単調に亢進することを予想したが,実際の結果はそれに反し,循環初期に見かけの脆弱性が低下した後に亢進する傾向を示した.試料液中の血球には加齢度の違いなどにより脆弱性の分布が存在し,循環初期段階で脆弱性の高い血球が崩壊し,見かけの脆弱性低下が生じた可能性が考えられる.結言 体外循環装置による循環中の赤血球の見かけの脆弱性は単調に亢進するものではない.

  • 東藤 貢, 栗田 寛子
    2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 90_2
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー

    心筋細胞は細胞内の化学エネルギーが機械エネルギーに変換されることで、外力を必要としない自己拍動能を持っており、そのような機能を利用することで、心筋細胞を動力源とするバイオアクチュエータの開発も可能であると考えられる。そこで、本研究では、再生医療分野でも着目されているヒトiPS細胞由来心筋細胞(hiPS-CM)を用いたバイオアクチュエータの作製を試み、その拍動挙動を再現する理論モデルの構築を試みた。hiPS-CMシートとPDMSチューブを組み合わせたチューブ状hiPS-CM三次元構造体を作製し、高速光計測システムを用いた拍動挙動の測定と、流体駆動を確認するためのチューブ内流動測定を行った。その結果、チューブ内の順流が確認され、拍動挙動はデジタル画像相関法を用いて最小主ひずみの経時変化として評価された。さらに、本研究では定量的評価と拍動挙動の再現を可能にするため、心臓の複雑な収縮メカニズムを組み込んだマルチスケールhiPS-CM組織体理論モデルの構築を試みた。Guccioneらが提案した筋線維の能動的収縮力の理論モデルと組み合わせたオリジナル粘弾性モデルを構築し、実験値との比較を行った。その結果、理論モデルにおいて実験値の応力-ひずみ挙動と類似したヒステリシスループが確認され、本研究で構築した理論モデルがhiPS-CMチューブの拍動挙動の再現に適していることが示唆された。

  • 酒井 香太郎, Nursetia Darma Panji, 武居 昌宏
    2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 91_1
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー

     胃体積測定の手法として電気インピーダンストモグラフィー法(EIT法)を使用することを提案した。今回、4人の健康な被験者についてEIT法による胃測定実験を行った。人体実験においては、液体食料を用意し、飲用前と、飲用後にEIT測定を実施した。この実験条件間で、食事前後の導電率分布変化をEIT法により可視化することを試みた。実験の結果として、食事前後の導電率分布の変化平均<σ>=0.197Ωを得た。飲用前に比べて飲用後は導電率が上昇した。画像再構成領域全体に占める導電率変化の発生した領域の体積割合V=12.17%を得た。飲用前に比べて飲用後に体積が増大したことを測定できたと言える。千葉大学工学研究院生命倫理審査委員会令和2年 承認番号29-13「生体内組織の電気的測定法による定量化研究」この研究は日本学術振興会、JSPS外国人特別研究員制度により支援されています。

  • Abdullah Norain, Daisuke Miyazaki, Ei Yamamoto, Kosuke Ueki, Masaaki N ...
    2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 91_2
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー

    Nowadays, titanium alloys are being used as orthopedic implant devices due to their low elastic moduli which can suppress stress shielding phenomenon during long-term implantation. In the present study, the effects of elastic modulus differences between titanium alloys and bone on bone formation during early stage of healing were investigated. Ti-6Al-4V ELI (Ti-64:110 GPa) and Ti-29Nb-13Ta-4.6Zr (TNTZ:60 GPa) were used as materials for implant plates, and then were fixed on rabbit窶冱 femur after artificial half-circular defect was made. After 3 weeks, the rabbits were euthanized, and cross-sections of the femurs were evaluated by scanning electron microscopy, hematoxylin-eosin (HE), and Vickers hardness test. This study found that both implant plates resulted in similar amounts of new bone formation, but more mature bone was formed when using the TNTZ implant plate. Further, smaller but harder callus was formed when using the TNTZ implant plate, compared to using the Ti-64 implant plate.

  • 川村 勇樹, 大政 光史, 山本 衛
    2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 92_1
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー

    Total hip arthroplasty (THA) is a surgical procedure in which a painful osteoarthritic hip joint is replaced with an artificial hip joint. Joint dislocation is one of the most critical problems not only for human but also for canine THA. We have newly proposed an artificial hip joint which has a simple structure to prevent joint dislocation. The proposed joint has the structure with a femoral head partially covered with an acetabular cup. In the present study, the dislocation moment due to the impingement was assessed using finite element analysis. The dislocation moment was approximately 415, 166, and 8 N・mm in the case of the 1.5, 1.0, and 0.5 mm inset height model of impingement, respectively. This result indicates that the acetabular cup with the structure for preventing dislocation has an ability to resist the excess rotational movement which induces joint impingement.

  • 髙根沢 佑斗, 坂本 信, 小林 公一, 佐々木 朋裕
    2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 92_2
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー

    膝内側側副靱帯(Medeial Collateral Ligament; MCL)は大腿骨内上顆から脛骨内側部にかけて走行している靱帯であり,主に膝の外反動揺性を制限する役割を担う.これまで,in vitroにおけるMCLの力学的特性やin vivoにおけるMCLの長さ変化に関する研究は行われてきたが、in vivoにおけるMCLの剛性を評価した研究はほとんどない.そこで本研究では,ストレイン超音波エラストグラフィ(Strain Ultrasound Elastography; SE)を用いて,膝関節屈曲角度変化に脛骨回旋負荷を加えた際の膝MCLの剛性変化を評価することを目的とした.対象は健常男性8名とした.測定肢位は仰臥位,膝屈曲角度0°, 30°, 60°, 90°, 120°の5角度について,無荷重,脛骨内外旋トルクを作用させた.MCLの剛性は,超音波リニア型プローブに音響カプラを装着し基準物質とすることでSE法により測定し,音響カプラのひずみに対するMCLのひずみの比をStrain ratio(SR)と定義し,評価を行った.SR値が小さくなるほど剛性が高いことを表す.MCLの剛性は,いずれの膝関節屈曲角度においても無荷重条件下と比べて,脛骨内旋トルクを作用させた場合には剛性が低く,脛骨外旋トルクを作用させた場合には剛性が高くなった.また,無荷重および脛骨内外旋トルクを作用させた場合のすべてに対して,膝伸展位0°において剛性が最も高く,屈曲角度が増加するにつれて剛性は低下し,最大屈曲位120°で剛性が最も低くなった.以上の結果より,MCLは,膝伸展位および脛骨外旋位において制動能力が高いことを明らかにした.

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