ポジショニングには,対照的な2つのアプローチが存在する。第1は,知覚マップ上に示される競合製品群の位置関係を起点に自社製品の位置取りを検討する「相対性ポジショニング」であり,第2は,製品群の相対的な違いよりも,自社製品のみと結びつくユニークな価値の探索・提供を重視する「独自性ポジショニング」である。幾つかの研究は,相対性ポジショニングは製品差別化に貢献しないこと,あるいはその効果が独自性ポジショニングよりも小さいことを主張する。しかし,双方のポジショニングの効果を定量的に検討した研究は存在しない。そこで本論は,わが国の実務家から得られたサーベイ・データに基づき,製品差別化に対する各ポジショニングのインパクトを分析した。その結果,独自性ポジショニングは製品差別化に寄与する一方で,相対性ポジショニングについては有意な効果が認められないことが明らかになった。