今年のテーマは毎日の生活の中で元気が出るカジュアルな服装、楽しく装う普段着(2)である。
モデルは「ひのみね療育園」の男性2人と女性4人である(内5人は長期入所中、1人は在宅で生活している方である)。
施設から送られてきたモデルの写真、年齢とサイズから何が似合うかを個別にイメージしながら既製服の中から洋服、帽子、靴下までトータルコーディネートを考えて選んでみた。
ちょっとしたお出かけ、コンサート、美術館、ショッピングへ、外には楽しいことがたくさんある。お出かけがたとえいつもと同じ場所でも、いつもと雰囲気の異なる素敵な洋服で外出することを提案したい。
おしゃれに装うことで普段と異なる自分を発見し、ワクワク、ドキドキする感情が芽生える。さらに注目され、褒められる喜びによって表情に変化が生じる。短時間の外出であっても装い一つで楽しい時間に変わることが期待される。
非日常的な、ささやかな幸せな時間を装いは与えてくれる。障害があっても、なくても、普通に豊かに暮らす。その中の一つの試みが装いであると思う。
さて、今年のモデルたちはどんな変身ができたでしょうか。
黒の短いジャケットに白黒のツイードのショートパンツに白のカットソーを組み合わせた。さらに黒のタイツで足長効果を演出してみた。お化粧をし、幅広の帽子をかぶり、ネックレスを付けたら、華やいだ感じになった。内面からの輝きが見られ、大人っぽくも初々しさがにじみでていた。
ベージュ色のタートルの半そでのニットは、裾のフリンジが楽しくて新鮮である。今回はパンツに合わせたが、スカートにも合わせても素敵である。髪をセットし、化粧しているうちに不安な表情が消え、自信に満ちた美しい笑顔になってきた。会場に駆け付けた母親は「こんなに素敵になって、こんな姿が見られて幸せです」と大変喜び、涙していた。
送ってきたメールの写真では、車椅子から着ているものすべてピンク一色で女の子かしらと思ったが、可愛らしい男の子であった。
そこで、男の子らしさと可愛さをグレイのシャツに黒と赤の大きなチェック柄のパンツに紺色のジャケットを合わせた王道ワークスタイルにした。紺色の帽子をかぶり、全身で喜びを表現していた。
インパクトのあるオレンジと黄緑とベージュのカラフルなドレスに着やすさ抜群の白のニットのカーディガンを重ねて可愛らしさを表現してみた。また、レギンスはドレスの中のオレンジを履くことで全体が統一された色調になった。髪は長い付け髪をすることでお出かけの雰囲気になったが、会場の花道を緊張しながら(お化粧をするときから普段と異なる雰囲気に緊張が続いていた)、エスコートされている姿は、一生懸命モデルを務めているのが分かり、大人の雰囲気が漂っていた。
真珠色のワンピースにフワフワの毛皮をアクセントにして、ベージュの帽子に長い付け髪をつけ、華やかなパーティーに、いつご招待されても大丈夫な装いとなった。インナーには黒の透ける素材のチュールの長袖を着て、靴下も黒を履き、ベージュと黒でコーディネートした。どうぞ素敵なパーティーを楽しんでくださいという雰囲気である。本人はこの洋服を見た瞬間から「私好き」といい、終始にこやかにモデルを楽しんでいた。
フード付きジャケットアイテムはカジュアルな街着である。ワーカーズからイメージしたカーゴパンツとの組み合わせが新鮮で面白い。この装いを見たスタッフは庄野さん好みと言い、本人も好きと言う。皆の意見が一致した装いとなった。大人のカッコよさが光っていた。満足そうな表情が印象的であった。
(氏名の掲載および写真は家族の了解を得ています)
今回のファッションショーは、日本重症心身障害学会本部からの100,000円と2年分の寄付131,770円からの100,000円の合計20万円を財源とした。
23年度の寄付金は96,961円あり、今までの繰越55,475円(利息12円含む)と合わせると152,436円である。平成24年度分はこれに重症児学会本部からの補助金を加えた額の予算となる。
平成24年度は私たちが行う最後のファッションショーとして晴れの日をテーマとする。
ひのみね療育園の橋本先生ならびに職員の皆様、モデルになってくださった利用者とその御家族に深謝します。また、会場の皆様の多大な好意に感謝の気持ちでいっぱいです。このショーが多くの重症児に携わる方々が重症児の衣服や生活に役立つこと等を提案し、発表できる場に発展していくことを切に願っている。
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