日本重症心身障害学会誌
Online ISSN : 2433-7307
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第一報
巻頭言
  • 細田 のぞみ
    2018 年 43 巻 3 号 p. 417-418
    発行日: 2018年
    公開日: 2021/03/18
    ジャーナル フリー
    「看」という字は、「手」と「目」からできています。重症心身障害のある方の医療には看護師の「目」と「手」が必要不可欠であることは言うまでもありませんし、当法人が受託している看護研修事業を通し、看護が病院から地域まであらゆる場所で必要とされていることを実感しております。 9月28日・29日に東京で開催された第44回日本重症心身障害学会学術集会では、素晴らしい講演やセミナーがありました。私は2日目の「いのち輝く生活を他職種と協働で支える看護の専門性を考える」というシンポジウムに参加し、改めて「看護の力」を再確認することとなりました。 相模原市では、平成23年度より重症心身障害児者の支援を目的として、訪問看護事業と看護研修事業が行われております。訪問看護事業は、在宅の準超重症児者と超重症児者が対象で、医療保険としての訪問看護90分に連続して、無料で福祉サービス分90分を追加し、訪問時間を180分とすることで、保護者の介護負担の軽減を図ることを目的としています。90分だけでは家族の負担を軽減できないだろう、180分にすれば、多忙を極める母親が美容院にいくことができるかもしれない…と考えてのことだと市の担当者からこぼれ話をお聞きしたことがあります。そして看護研修事業は、重症心身障害児者を看ることができる訪問看護師を増やすことを目的としています。この事業の開始当初から、当法人が市から委託をうけ、研修の企画から実施まですべてを担っており、地域貢献のために私どもが力を注いでおりますので、概略をご紹介したいと思います。 研修プログラムを企画するにあたり、単に知識や技術を伝えるだけの研修にはしたくないという強い思いがありました。訪問先の親子の現状だけでなく、その親子のこれまでの経過を知り、また将来像を見据えて看護できるようになってほしい、そして在宅生活を支えるには医師や看護師だけでなく、様々な専門職との連携が大切であるということを知ってほしいと考えたのです。そのため、各方面の関係機関からご協力をいただき、行政・医師・日本重症心身障害福祉協会認定の重症心身障害看護師・理学療法士・歯科衛生士など多彩な講師陣による講義、大学病院NICU病棟や特別支援学校の見学、ご家庭や生活介護施設での現場実習などの多彩なプログラムを企画し、年に8~10回程度、週末に実施しています。また、研修中に、広く市民を対象とした公開講座や公開シンポジウムを開催することにいたしました。 この研修は3年を1クールとしており、2クール目に入った平成26年度からは、この事業の目的に、「講演会開催により、在宅の重症心身障害児(者)とその家族が安心した生活を送れるように地域社会への啓発と関係機関のネットワーク構築を目指す」という文言が加わり、市が、私どもが3年間積み重ねてきたことを認めてくれたのだと嬉しく思っております。 2クール目の3年目、平成28年度には、「重症心身障害児者・医療的ケアのある障害児とともにくらす~私たちが望むさがみはら~」をテーマに、大きなシンポジウムを行いました。その際に、市内にある社会資源の紹介DVDを作成し、シンポジウム会場で参加者の皆様に見ていただき、また「重症心身障害児者に関わる相模原市の社会資源と福祉の制度」というタイトルのパンフレットを作り、市民に配布することができました。 受講してくださっている看護師の勤務先をみると、訪問看護ステーションだけでなく、病院、クリニック、施設、生活介護事業所、児童発達支援事業所、保健センター、学校など多岐にわたっており、看護師が様々な場所でその専門性を発揮していることがわかります。また、看護師以外にも、医師、ヘルパー、訪問リハを担当している理学療法士や作業療法士、相談支援事業所の相談員、ケースワーカー、児童相談所の職員、行政など様々な方面からの参加があり、地域で実にたくさんの職種が重症心身障害児者の支援に意欲的に関わっていることを実感しております。この研修が、地域で、職種を超えて、顔の見えるネットワークをつくるために大きな役割を果たしていることを感じており、このような機会を与えてくれた市に心から感謝しております。この10月から平成30年度の研修事業がはじまったところです。今年で8年目、今後もよりよい研修をめざしたいと思います。 住み慣れた地域で自分らしい暮らしを最期まで続けることができるよう構築されつつある地域包括ケアシステムは高齢者だけが対象ではないと思います。障害のある方もない方も、子どもから大人まで対象になるべきものだと思います。そのために、医師、ヘルパー、生活支援員、リハビリテーション担当者、相談支援員などの多職種をつなぐ、そして病院と地域をつなぐ、扇のかなめのような役割を果たすのが「看護の力」なのではないでしょうか。在宅でも、病院でも、施設でも、生命と生活を支える看護の力に、今後もより一層期待したいと思います。       
原著
  • 仲田 惣一, 久守 孝司, 石橋 脩一, 太田 陽子, 田島 義証
    2018 年 43 巻 3 号 p. 419-424
    発行日: 2018年
    公開日: 2021/03/18
    ジャーナル フリー
    われわれは、気管切開術後症例に喉頭気管分離術を施行する際に、気管切開孔 (以下、気切孔) を切除する術式(以下、切除法)と温存する術式(以下、温存法)を行ってきた。2009年6月から2016年7月までの間に喉頭気管分離術を施行した気管切開術後症例17例を対象に、切除法と温存法の有用性を後方視的に検討した。切除法10例、温存法7例で、切除法の6例、温存法の1例に気管食道吻合を行った。手術時間は切除法269±62分、温存法160±50分、出血量は切除法120±55g、温存法31±45gであった。切除法では術後に気管腕頭動脈瘻1例、無気肺1例、温存法では縫合不全1例、気切孔皮膚狭窄1例を認めた。温存法は、気切部の剥離が不要で剥離範囲も狭いことから、手術時間が短く、出血量も少なかった。また、肺側気管の剥離操作や気管偏位がなく、気管腕頭動脈瘻の発生リスクは気管切開術と同等に低いと考えられた。以上より、気切孔を温存する喉頭気管分離術は、症例を選べば、有用な術式と考えられた。
  • 宮﨑 つた子, 木村 めぐみ
    2018 年 43 巻 3 号 p. 425-432
    発行日: 2018年
    公開日: 2021/03/18
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、医療的ケアが必要な障害児を育てる母親の事例を通して、母親の蓄積的疲労の変化とその特徴を明らかにすることである。2015年6月から2016年2月の間、対象の属性、養育・環境要因、蓄積的疲労徴候インデックス(以下、CFSI)、自由記載を約2か月毎に質問紙を用いて調査を行った。対象は、医療的ケアが必要な障害児の母親6名で、年齢は37.50±6.51歳、就労ありが3名、就労なしが3名であった。児の年齢は4.72±1.78歳で、児の医療的ケアの内容は、在宅酸素療法3名、経管栄養1名、胃瘻5名、吸引6名、吸入2名であった。対象者のCFSI特性項目群別平均訴え率の結果、7つの分類で一般女性の平均値を上回っていた。蓄積的疲労の年間変化では、どの時期においても一般女性の平均値を上回っている対象者が多く、年間を通して常に蓄積的疲労を感じていた。自由記載からは、児の健康状態で母親自身の疲労やストレスの変化を自覚している対象者が多く、個々の状況やニーズに添った多角的な視点からのサポートが重要と考えられた。
  • 林 佳奈子, 桶本 千史, 八木 信一
    2018 年 43 巻 3 号 p. 433-441
    発行日: 2018年
    公開日: 2021/03/18
    ジャーナル フリー
    医療ニーズのある子どもと家族の支援の際に看護職者が行った看護連携の実際と看護連携に対する意識を明らかにすることを目的に、A県内の看護職者1,398人を対象に郵送法で無記名自記式質問紙調査を行った。分析対象327人の回答を分析した結果、看護職者の多くは病院の看護師と連携し、患児や家族の心身面や医療的ケアについて検討したり、初めての疾患に遭遇し患児特有のセルフケアや療養行動に戸惑いながら子どもと関わっており、保育機関や普通教育機関の看護職者は同じ機関同士で連携を図っていた。また、多くの看護職者は看護連携を必要とし、連携を行う上で職種間や患者・家族との連絡の取りやすさと絶え間ない情報交換、人員や時間の確保、話し合う場の設定を必要と捉えていた。子どもと家族の生活に携わる多機関の看護職者が垣根を越えて相互に手を取り合いながら支援することで、医療ニーズのある子どもと家族がより生活しやすい社会の構築につながると考える。
  • 三枝 英人, 草間 薫, 小林 伸枝
    2018 年 43 巻 3 号 p. 443-448
    発行日: 2018年
    公開日: 2021/03/18
    ジャーナル フリー
    鼻閉による鼻呼吸の障害は息苦しさとともに睡眠時無呼吸、不眠、日中の眠気などQOLに影響することが報告されているが、このことは重症心身障害者にとっても同様かそれ以上の問題である。最近発売された抗アレルギー薬であるフェキソフェナジン塩酸塩と交感神経α受容体作動薬である塩酸プソイドエフェドリンの配合錠(ディレグラ®)は鼻閉を伴うアレルギー性鼻炎に対して有効であり、懸念される交感神経刺激作用による副作用の発現頻度は少なく安全と報告されている。しかし、今回、アレルギー性鼻炎のために高度の鼻閉を認めた重症心身障害者5名(周辺児を含む)に対して、同剤を投与したところ、3名に自傷行為、攻撃行動、突然走りだすなどの異常行動が出現した。これらの異常行動は同剤の中止により2日以内にすみやかに消失した。重症心身障害者においては、自律神経系の恒常性がきわめて不安定であり、健常者では問題ないとされる程度の交感神経刺激作用であっても異常行動が誘発される可能性が高いため注意が必要と考えられた。
  • 田邊 文子, 片桐 浩史, 汐田 まどか, 北原 佶
    2018 年 43 巻 3 号 p. 449-455
    発行日: 2018年
    公開日: 2021/03/18
    ジャーナル フリー
    重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))は、急性疾患罹患後、急性期治療は終了しても入院前の生活に戻るためには時間を要する。介護する家族は、入院中に増えたケアの必要性の判断が難しく、退院後も入院前の生活に戻る見通しを持てないまま不安を抱えていることがある。当センターでは、急性期病院での治療後、地域生活への復帰を目的とした入院を行ってきた。重症児(者)のケアは個別性が高く、症例ごとに対応してきたが、入院した症例を振り返ることによって、以下の共通のプロセスがあることがわかった。1)疾病・障害の評価と機能予後の見立て、2)医学的管理と集中的なリハビリテーション、3)ケアの見直しと生活のシミュレーション、4)社会資源の利用調整、このプロセスには、生活モデルの視点からみた見立てと調整が重要であり、医療型障害児入所施設の専門性を活かせる中間施設1)としての役割である。課題は、小児期から成人期までを総合的な視点で、入院生活から日常生活までコーディネートする機能の充実である。
  • 森本 真仁, 浜田 茂明, 北岡 泰介, 京谷 庄二郎
    2018 年 43 巻 3 号 p. 457-464
    発行日: 2018年
    公開日: 2021/03/18
    ジャーナル フリー
    重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))の薬物療法は総じて多剤併用である。そこで薬剤師が介入することで、処方の適正化や看護師の業務負担軽減に有用か検討するため本研究を行った。対象者は入院中の重症児(者)134人、対象薬は過去6か月変更のない処方とした。薬剤師が事前評価し、介入必要あり84人、必要なし50人に分類した。介入必要ありと判断した84人に対し、医師と処方の再検討を行い84人中69人で合計132種類、2.0 (1.1 − 2.2)種類/日/人(中央値(四分位範囲:25−75%))が減薬となった。減薬理由は「病状の安定」が43件で最も多く、抗てんかん薬と緩下剤が多く減薬された。この結果、134.7(54.1 − 215.3)円/日/人(平均(95%信頼区間下限−上限))の薬剤費が削減された。介入後、看護師にアンケートを行ったところ、薬剤師の処方介入が看護師の薬剤関連業務の負担軽減につながったことが推測された。本研究結果より、重症児(者)に対して薬剤師が処方介入することで、処方の適正化や医療費の削減、看護師の業務負担軽減に寄与できる可能性が考えられた。
  • 坂本 浩一, 大畠 雅之
    2018 年 43 巻 3 号 p. 465-470
    発行日: 2018年
    公開日: 2021/03/18
    ジャーナル フリー
    長期間の経鼻胃管留置による経腸栄養が行われている重症心身障害児(者)に対しては胃瘻造設が考慮されるが、胃瘻晩期合併症を予防するためには胃壁および腹壁の適切な位置への胃瘻造設が重要である。当科で施行された重症心身障害児(者)に対する腹腔鏡下胃瘻造設術に関して検討を行った。対象期間は2015年9月から2017年12月で、年齢は2−41歳、手術術式は胃瘻造設術が5名、胃瘻再造設術が1名、噴門形成術+胃瘻造設術が1名であった。体幹変形が強い症例に対してもポート数を増やして腹腔鏡下に胃の牽引操作を行うことで、胃壁の適切な位置に胃瘻造設が可能であった。また、術前の日常注入体位での胃瘻部マーキングにより腹壁の適切な位置に胃瘻造設が可能であった。全例術後経過は良好で、胃瘻造設による合併症を認めていない。腹腔鏡下胃瘻造設術は重症心身障害児(者)に対する胃瘻造設の標準術式として有用であり、また術前の注入体位でのマーキングが有用であると考えられた。
  • 岡田 裕介, 市山 高志, 石川 尚子, 伊住 浩史, 杉尾 嘉嗣
    2018 年 43 巻 3 号 p. 471-475
    発行日: 2018年
    公開日: 2021/03/18
    ジャーナル フリー
    重症心身障害児(者)入所施設である当センターの入所者におけるHelicobacter pylori(以下、H.pylori)感染状況を検討した。対象は、2013年9月から2014年3月の間の当センター長期入所重症心身障害児(者)77例(男性:女性=52例:25例、年齢2~53歳、中央値27歳)。方法は、対象者に対し便中H.pylori抗原と血中抗H.pylori IgG抗体検査を行った。いずれかが陽性であれば感染者とした。感染者には、ランソプラゾール・アモキシシリン・クラリスロマイシンによる一次除菌療法を行った。77例中18例(23.4%)が抗原陽性、33例(42.9%)が抗体陽性で、35例(45.5%)が感染者だった。また経管栄養者の感染率(28例中17例、60.7%)は、経口摂取者の感染率(49例中18例、36.7%)に比し、有意に高かった(p<0.05)。さらに19歳以下では、経管栄養者の感染率(60.0%)が経口摂取者(8.3%)に比し有意に高かった(p<0.01)。除菌療法の成功率は60.0%だった。当センター入所者ではH.pylori感染者が多く、特に経管栄養者では高率だった。また一次除菌療法の成功率は、60%にとどまった。
  • 落合 順子, 緒方 健一, 尾石 久美子, 宮崎 ひさみ, 西田 明美, 宮本 めぐみ
    2018 年 43 巻 3 号 p. 477-485
    発行日: 2018年
    公開日: 2021/03/18
    ジャーナル フリー
    人工呼吸器を装着している療養者にとって大規模災害が発生した場合、避難するためには多くの困難が想定される。本研究では2016年の熊本地震の際の在宅人工呼吸療法療養者と家族の避難行動と、どのような支援を受け自宅に帰ることができたのかを明らかにするために、7名の母親と在宅職員にインタビューを行った。その結果、数日間避難するための必要物品の量が多くひとまとめにすることは不可能であるため、震災後であっても避難用に物品をまとめている療養者はいなかったことが明らかとなった。迅速な医療機関の避難の受け入れがあったこと、医療機関に生活の場を移した療養者と家族に対し、在宅職員が巡回しケアを行ったこと、日中の預かりサービスを行ったことによって全員元気で自宅に帰ることができていた。必要物品の保管方法や移動支援についての課題と、在宅サービス事業所と医療機関とのシームレスな連携が必要であることが示唆された。
症例報告
  • 徳光 亜矢, 斉藤 剛, 岩佐 諭美, 鳥井 希恵子, 竹田津 未生, 林 時仲, 楠 祐一, 岡 隆治, 平元 東
    2018 年 43 巻 3 号 p. 487-492
    発行日: 2018年
    公開日: 2021/03/18
    ジャーナル フリー
    四肢の浮腫と低タンパク血症、低アルブミン血症を呈した67歳の重症心身障害者に対し、中鎖脂肪酸(medium-chain triacylglycerol;MCT)による治療を試みた。分岐鎖アミノ酸高配合の栄養補助飲料の摂取では症状も血液検査上も改善を認めなかったが、毎食の主食や副食に1日約9gのMCTをふりかけて摂取したところ、浮腫は消失し、血清アルブミン値の顕著な改善がみられたほか、血清コリンエステラーゼ値、総リンパ球数などの栄養指標となるデータも改善した。MCTは腸管に負担をかけずに摂取できる脂質、すなわち高カロリーの栄養補給を可能にする食品である。味も臭いもなく、食事本来の味を損なうことなく摂取でき、栄養状態を改善することができた。さらにMCTが有するタンパク質の合成刺激作用や分解抑制作用により、低タンパク血症の改善に有効であったと考えられた。
  • 武市 知己, 齊藤 晃士
    2018 年 43 巻 3 号 p. 493-500
    発行日: 2018年
    公開日: 2021/03/18
    ジャーナル フリー
    われわれは過去に、右に凸の胸椎側彎で縦隔左方偏位に伴い食道が下行大動脈に騎乗後さらに左側に回り込んで走行し、食道内カテーテル留置を契機に食道出血のため死亡した2例を報告した。今回、致死的出血には至っていないが同様の食道走行パターンが確認された2例を経験したので追加報告する。症例1は異染性白質ジストロフィーの36歳男性。誤嚥時の胸部CT検査で、胸椎は右に凸の側彎で左主気管支と下行大動脈が交差する部位で食道が下行大動脈に騎乗しさらに左側へと大きく回り込んで下行していた。胃瘻管理中で食道内カテーテルの長期留置歴はなく、食道出血の既往はない。症例2は脳性麻痺の53歳女性。経鼻経管栄養中にコーヒー残渣様胃残が持続し、胸部CT検査で、同じく右に凸の胸椎側彎でカテーテルを留置された食道が下行大動脈へ騎乗し左側に回り込み、左主気管支と下行大動脈で挟み込まれていた。食道内視鏡検査で食道粘膜のびらん発赤を認め、カテーテル刺激による食道出血と考えられた。
  • 越野 恵理, 奥村 亜希子, 髙﨑 麻美, 滝澤 昇, 三浦 正義
    2018 年 43 巻 3 号 p. 501-506
    発行日: 2018年
    公開日: 2021/03/18
    ジャーナル フリー
    重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))は、下肢麻痺や呼吸不全など深部静脈血栓症(deep vein thrombosis;DVT)を発症するリスクを多く有している。今回われわれは、突然の左下肢腫脹と広範囲な深部静脈血栓を認めた症例を経験した。症例は43歳女性。X-3日に気管支炎を認め抗菌薬投与を行った。X日に左下肢全体の腫脹が出現し、蜂窩織炎を疑い、抗菌薬治療を継続した。しかし、左下肢腫脹は改善せず、X+3日に下肢静脈エコー検査で左総腸骨静脈からヒラメ筋静脈に及ぶ広範囲な血栓を認めDVTと診断した。選択的Ⅹa因子阻害剤の内服を開始し、左下肢腫脹は軽減し、血栓は消退傾向となった。重症児(者)は、DVTのリスクを多く有しているにもかかわらず、報告例のほとんどは無症状で偶発的に発見されたものであった。下肢の腫脹に対してDVTを鑑別に挙げ、積極的に下肢静脈エコー検査を行うことが重要と考えられる。また、今回使用した選択的Ⅹa因子阻害剤は頻回の採血による用量調整が不要で、出血等の副作用を伴わずに血栓の縮小を得た。
  • −2名の母親の語りから−
    伊藤 千尋, 佐藤 朝美, 廣瀬 幸美
    2018 年 43 巻 3 号 p. 507-514
    発行日: 2018年
    公開日: 2021/03/18
    ジャーナル フリー
    幼児期の医療的ケアが必要な在宅重症児の母親が、障害児通所支援を利用したことによる子どもの成長発達をどのように感じているのか、母親の認識を明らかにすることを目的として、在宅重症児の母親2名に半構造化面接を行った。その結果、【子どもの伝えたいことが伝わるようになってきた】【子どもが人との交流を楽しめるようになった】【子どもが通園を楽しみながら成長している】【いろいろな方法で家族が子どもに関われるようになってきた】【専門職の手を借り、施設ではいろいろな体験ができるようになってきた】という成長への認識が示された。母親は、医療ニーズの高い重症児でも専門職により安全性が確保されれば成長を促すことができると認識していることが明らかになった。
  • 鳥井 希恵子, 斎藤 剛, 岩佐 諭美, 徳光 亜矢, 竹田津 未生, 林 時仲, 楠 祐一, 岡 隆治, 平元 東
    2018 年 43 巻 3 号 p. 515-518
    発行日: 2018年
    公開日: 2021/03/18
    ジャーナル フリー
    重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))施設において、急性閉塞隅角緑内障(急性緑内障発作)の2例を経験した。発見時の症状は、1例は意識消失、もう1例は啼泣と結膜充血であった。急性閉塞隅角緑内障は、放置により短期間で失明につながる場合があり緊急対応が必要である。重症児(者)は、発症時の症状を訴えられない場合が多いことに加え、普段から閉眼不全がある、顔位により目が圧迫される、自ら刺激してしまうなどの理由により、結膜充血などの眼症状が慢性的に認められる場合も多く、発症時の変化に気づくのは難しいこともある。また、発症の誘因となり得る散瞳作用のある内服薬を使用する機会も多く、腹臥位などの体位によっても発症が誘発される危険性がある。白内障も誘因となるため高齢者の発症が多いという特徴がある。今後重症児(者)の高齢化に伴い急性閉塞隅角緑内障の発症が増える可能性があり、注意が必要である。
  • −40歳以上女性の骨密度の検討から−
    吉田 彩子, 影山 さち子, 平尾 準一, 吉原 重美
    2018 年 43 巻 3 号 p. 519-524
    発行日: 2018年
    公開日: 2021/03/18
    ジャーナル フリー
    当院に入院中の重症心身障害者で40歳以上の女性 15例の骨密度を測定し、骨粗鬆症と骨折に関連する要因を検討した。さらに、筋緊張を筋緊張評価スケールmodified Ashworth scale (MAS)で評価した。結果 ① 全体の骨密度young adult mean (YAM)の平均値は62.2 %、骨粗鬆症は11例(73.3%)、骨折者は6例(40.0 %)。閉経群は高齢で、骨粗鬆症は7例中6例(85.7%)、骨折者は4例(57.1%)。 ② 骨粗鬆症群と非骨粗鬆症群の比較では、平均年齢に有意差はなかった。骨粗鬆症群では抗けいれん薬の使用剤数が有意に多かった。③ 骨粗鬆症群の骨折例での抗けいれん薬使用剤数が有意に多かった。④phenytoin (PHT)使用群では有意に骨密度の減少と骨折率の増加が認められた。⑤ 大島分類1かつMAS 0の症例で骨粗鬆症と骨折の頻度は有意に高かった。⑥ body mass index (BMI) 15kg/m2未満および20kg/m2以上の群に骨折を認める例が多かった。これらから、骨粗鬆症と骨折の予防対策として、抗けいれん薬の整理、適切な体重管理、筋肉の緊張による骨への荷重が課題と考えられた。
論策
  • 鈴木 沙織, 宮﨑 つた子
    2018 年 43 巻 3 号 p. 525-530
    発行日: 2018年
    公開日: 2021/03/18
    ジャーナル フリー
    在宅において医療的ケアが必要な児をもつ養育者の困難に関する文献研究を行った。検索の手順は医学中央雑誌Web版Version5を用い、1996~2015年の国内医療系雑誌を中心に「家族/母/親」「子ども」「小児」「医療的ケア」「小児在宅」「NICU退院後」「育児」の7つのキーワードで検索を行い、そのうち原著論文で、在宅での困難の具体的内容が記載された29文献を研究対象とした。論文の内容を概観し、研究の動向と養育者の困難に関して分析した。その結果、困難に関して述べられている研究は年々増加していた。在宅で医療的ケアが必要な児の養育者の困難には【医療的ケアに関連した困難】【子どもの状態に関連した困難】【社会生活に関連した困難】【養育者・家族・きょうだいに関連した困難】の4つがあり、在宅療養の中で様々な体験をし、複雑な思いを抱えて生活していた。医療的ケアが必要な児と養育者の困難を緩和するためには、多角的視点から在宅療養を捉えたサポートの検討が必要である。
  • 徳島 佐由美
    2018 年 43 巻 3 号 p. 531-536
    発行日: 2018年
    公開日: 2021/03/18
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は経験豊富な看護師の語りから重症心身障害児(以下、重症児)の個別性に応じた看護ケアについて明らかにすることである。重症児の看護経験3年以上もしくは施設におけるクリニカルラダー評価がⅢ以上の看護師を対象に半構造化面接にて質的記述的に分析を行った。調査期間は2016年6月~8月である。研究参加者は小児専門病院と重症児療育センターの合計11名の看護師で、面接時間は平均59.1分であった。重症児の個別性に応じた看護ケアの方法として、【快適な状態を保つケア】、【合併症状に応じたケア】、【事故の出現を予測したケア】、【感情を読み取って応じるケア】、【発達を促すケア】を抽出した。経験豊富な看護師は重症児の身体的特徴から合併する症状を見据えたケアに個別性を見出していた。快適な状態を保てるように重症児の感情に応じ、不快な状況を取り除く看護ケアを実践し、発達を促すケアを行っていた。
  • 松井 欣也, 藤井 鈴子, 寺倉 智子, 徳永 修, 宮野前 健
    2018 年 43 巻 3 号 p. 537-542
    発行日: 2018年
    公開日: 2021/03/18
    ジャーナル フリー
    A病院の重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))病棟において、「食べる楽しみ」を提供し、様々な実演調理を通して食育活動に取り組んだ。言語聴覚士、作業療法士、児童指導員、保育士、管理栄養士、看護師、療養介助専門員との共同作業で、フレッシュジュース、ソフトクリーム、チョコフォンデュなどを企画し、実施した。2014年2月から1年後の4月までに22回実施し、食材は54品目、メニュー数は11種類とした。患者家族、病棟スタッフからは、「視覚、嗅覚、聴覚、触覚、味覚の五感を通して食べることを楽しめた」、「料理が出来上がっていく過程を見て期待感を楽しめた」と療育スタッフからも高評価が得られた。重症児(者)の摂食嚥下機能を正しく把握し、安全な食事形態、介助の仕方の工夫などしながら、美味しく食べられるよう支援することも重要である。今後も継続して、重症児(者)病棟における食育活動、フードサービスの向上に努めたい。
短報
  • 鈴木 由美, 森野 誠子, 山本 重則, 石原 あゆみ, 眞山 義民
    2018 年 43 巻 3 号 p. 543-550
    発行日: 2018年
    公開日: 2021/03/18
    ジャーナル フリー
    重症心身障害児(者)病棟ではウイルス感染症が容易にアウトブレイクする。多くの患者が自覚症状を訴えにくく早期発見が難しいため、重大な転帰や隔離の遅れとなりやすい。また、多職種が患者に直接接触する活動や業務により短期間で感染が拡大する。アウトブレイク時に迅速に各種活動や業務の制限を決定し周知するため、2012年から「院内感染防止対策上の指示内容確認票」を作成して活用した。感染制御チーム(infection control team; ICT)が院長らとともに協議し、各項目3段階の制限レベルを「院長指示」として決定、文書と電子カルテで全職員に周知した。5年間に計5回この確認票を活用した。これにより迅速に、全必要項目に関して検討し、「院長指示」を全職種に周知可能となった。またICTの時間と労力を現場の指導等に費やすことが可能となり、現場もより速やか、かつ的確に対応可能となった。本確認票は現場職員が一目で了解でき、多職種が迅速かつ組織的に連携してアウトブレイクに対応できる、大変有用な方法であると考えられる。
  • 杉 理江, 林 武文
    2018 年 43 巻 3 号 p. 551-556
    発行日: 2018年
    公開日: 2021/03/18
    ジャーナル フリー
    四国こどもとおとなの医療センターにおいて2014年4月1日~2016年10月31日の間に、血清マグネシウム値を測定した重症心身障害病棟に入院中の患者92名を対象とし、重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))の血清マグネシウム値と酸化マグネシウムが与える影響について後ろ向きに検討を行った。調査期間中において、生活の自由度が低い重症児(者)は血清マグネシウム値が低い傾向があり、酸化マグネシウムの投与により血清マグネシウム値が補正された可能性があった。また、酸化マグネシウム投与患者の血清マグネシウム値の変動は投与量に相関はなく、長期投与で上昇する傾向があった。
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