日本医真菌学会総会プログラム・抄録集
Print ISSN : 0916-4804
第49回 日本医真菌学会総会
選択された号の論文の176件中1~50を表示しています
特別講演
  • Wieland Meyer
    セッションID: SP
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
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    Members of Cryptococcus neoformans (C.n. ) species complex cause life-threatening infections. Its taxonomy is an open question, with 2 anamorph species originally described: C. neoformans & C. gattii. Mating experiments linked them to the teleomorph genus Filobasidiella, establishing 2 varieties: C.n. var. neoformans = F.n. var. neoformans (serotypes A, D & AD) & C.n. var. gattii = F.n. var. bacillispora (serotypes B & C). C.n. var. grubii, was established as a separate variety causing most infections. Molecular data suggested C.n. var. gattii as a new species, C. bacillisporus, recently renamed as C. gattii. PCR-fingerprinting, AFLP, URA5, PLB1 & ACT1 RFLP analysis, sequencing (ITS, URA5, PLB1 & ACT1) & microsatellite analysis have been used to study the genetic diversity of the C.n. species complex. PCR-fingerprinting, AFLP & RFLP analysis divided more than 1000 global isolates into 8 molecular types. VNI/AFLP1 & VNII/AFLP1A = C.n. var. grubii, serotype A; VNIII/AFLP3 = hybrid between C.n. var. grubii & C.n. var. neoformans, serotype AD; VNIV/AFLP2 = C.n. var. neoformans, serotype D; & VGI/AFLP4, VGII/AFLP6, VGIII/AFLP5 & VGIV/AFLP7 = C. gattii, serotypes B & C. AD hybrid isolates (VNIII/AFLP3) revealed patterns that correspond to a number of molecular types, suggesting recombination events leading to diploid or aneuploid strains. VNI & VGI are the predominant genotypes worldwide. Similar regional profiles of tree-derived & clinical isolates support an epidemiological link. The Vancouver Island outbreak is caused by the rare genotype VGII/AFLP6, which seems to be emerging in temperate climates (Greece & Colombia). Whole genome sequence analysis of the strains H99 (C.n. var. grubii ), B3501 & JEC21 (C.n. var. neoformans ) & WM276 (C. gattii ) has shown different levels of microsatellite abundance & polymorphism per variety/species & large variations in the flanking regions. The genotypic variation found among the 8 molecular types lies within a comparable range of that found in established fungal species, suggesting further speciation of the C.n. species complex. The specificity of the microsatellite flanking regions to a certain genotype is adding evidence to the existence of separate species.
教育講演
  • 安藤 勝彦
    セッションID: ED
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
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    <生物多様性条約>
     生物多様性条約(The Convention on Biological Diversity: CBD)は 1993 年 12 月 29 日に発効し、日本はすでに 1993 年 5 月 28 日にこれを批准している。現在、日本を含め 188 カ国が加盟している。CBD は、以下に示す 3 つの柱から構成されている。
     (1)生物多様性の保全
     (2)その構成要素(生物資源)の持続可能な利用
     (3)その利用から生ずる利益の公正かつ衡平な分配
     一般に、CBD は地球上の生物の多様性を保全しようという趣旨の点から環境条約として理解されている。しかし、“生物資源の持続可能な利用”および“その利用から生ずる利益の公平な配分”の内容は、まさに経済条約の側面を有していることに注目すべきである。
    <遺伝資源の取得の機会>
     CBD の第 15 条に「遺伝資源の取得の機会」の条項があり、ここでは、他国の遺伝資源を利用したい場合の条項が述べられている。その第 1 項には、1.各国は、自国の天然資源に対して主権的権利を有するものと認められ、遺伝資源の取得の機会につき定める権限は、当該遺伝資源が存する国の政府に属し、その国の国内法令に従う。第 5 項には、5.遺伝資源の取得の機会が与えられるためには、当該遺伝資源の提供国である締約国が別段の決定を行う場合を除くほか、事前の情報に基づく当該締約国の同意を必要とする。また、第7項では、7.締約国は、遺伝資源の研究及び開発の成果並びに商業的利用その他の利用から生ずる利益を当該遺伝資源の提供国である締約国と公正かつ衡平に配分するため・・・・・適宜、立法上、行政上又は政策上の措置をとる。その配分は、相互に合意する条件で行う。と述べられている。以上のように、海外の遺伝資源については、その国に管轄権があることから、勝手に日本に持ってくることは、バイオパイラシー、すなわち生物資源の海賊行為、とみなされ、国際的な非難の対象となるのである。くれぐれも、バイオパイラシーの汚名をそそがれることのないように、CBD を十分認識したうえでの海外生物資源への慎重なアクセスが望まれる。
    <おわりに>
     (独)製品評価技術基盤機構(NITE)、バイオテクノロジー本部(DOB)では、CBD に則った方式で海外微生物探索を行っている。2003 年にインドネシアとの共同研究を開始し、2004年からはミャンマーならびにベトナムとも共同研究を開始した。また、2004 年にはインドネシアから移動したインドネシア産の微生物を企業へも提供し、その有用性の解析を行っている。2005 年には、同様にインドネシア産だけでなくミャンマー産およびベトナム産の微生物を希望する企業へ提供する予定になっている。さらに、2005 年の 11 月には、企業の研究者と合同でベトナムの微生物調査を行いたいと予定している。このような情報は、NITE のホームページ (http://www.nite.go.jp) で公開しているので、興味のある方は見ていただきたい。
シンポジウム 1
難治性の深在性真菌症に対する最近のアプローチ—糸状菌感染を中心に
  • 吉田 耕一郎
    セッションID: SI-1
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
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    深在性真菌症の予後は発症早期から適切な治療が施行できるか否かに左右されるので、早期診断が治療成功のキーポイントとなる。他の感染症と同様に本症の診断も原因真菌を感染巣から無菌的に分離・同定することで確定する。しかし深在性真菌症では宿主の全身状態が不良な場合や出血傾向のある症例が多く、侵襲的検査を積極的に施行できないことも少なくない。そこで早期診断の観点から、本邦の臨床現場では真菌症血清補助診断法が重視されてきた。欧米では高リスク患者における監視培養の重要性が強調されており、血清診断法を重く用いる傾向はわが国の特徴である。現在、わが国で開発された (1→3)-β-D-グルカン測定法を始め、カンジダマンナン抗原、D-アラビニトール、アスペルギルスガラクトマンナン抗原、クリプトコックスグルクロノキシロマンナン抗原などの各測定法を臨床現場で応用可能で各々に評価を受けている。測定方法の改善により同じ物質の測定系においてもその有用性は向上してきているが、いずれの血清診断法も臨床的に十分に満足できる成績の得られないのが現状であり、その運用状況も施設または主治医によって様々である。 中でも (1→3)-β-D-グルカン (β-グルカン) 測定法には複数の異なる測定キットがあり、基準値も 20 pg/mL と 11 pg/mL の 2 通りに分けられる。キットによっては非特異反応を生じ偽陽性が多く認められる結果、特異度の低いものや、逆に感度の劣るものがあり、臨床上の混乱の元になっていた。私たちの施設ではこの β-グルカン測定における非特異反応出現の問題に着目し検討を重ねてきた。その結果、アルカリ処理法で検体の前処理を行うキットでは高頻度に非特異反応が出現することが明らかになった。そこで長崎大学および生化学工業 (株) と協力してさらに検討を行った。その結果、現行アルカリ前処理液の組成を改良することで、非特異反応を生じにくい新しいアルカリ前処理液の開発に成功した。現時点ではこの前処理液はコマーシャルラインには乗っていないが、本学会開催時には現行前処理液から変更されているものと思われる。また、β-グルカン測定は米国 FDA の承認が得られ、ファンギテルの商品名で米国での臨床応用が始まっている。現時点では良好な成績が発表されているが、わが国のいずれの方法とも異なるもので、基準値も異なる数値が設定されているため、本邦への早期導入は混乱のもとにならぬよう慎重であるべきと考えている。この他、研究室レベルでは新しい真菌抗原の検出法も開発されつつあるようで、今後の成果に期待したい。 本シンポジウムでは β-グルカン測定を中心に真菌症血清診断法の進歩してきた過程と今後の方向性について述べてみたい。
  • 上 昌広
    セッションID: SI-2
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
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    造血幹細胞移植は技術改良が進み、治療関連合併症が減少したため、多くの造血器腫瘍に対する標準的治療の一つとなっている。しかし、移植片対宿主病(GVHD)・前処置毒性・感染症などの治療関連合併症が問題となり、その適応は少数の若年患者に限られてきた。1998 年、イスラエルのグループはフルダラビンなどのプリン誘導体を前処置に用いれば、治療関連毒性を大幅に軽減できることを示した。骨髄抑制期間が減少し、口内炎などの粘膜障害の頻度が低下したため、患者は移植中も経口摂取が継続できるようになり、移植に要する入院期間は減少した。この移植はミニ移植を称され、50歳以上の高齢患者や臓器障害を有する患者も移植の対象と考えられるようになった。また、悪性リンパ腫や転移性腎細胞がんなどの一部の固形がんにも有用性が示され、ミニ移植の症例数は急速に増加した。このように、ミニ移植は造血器疾患の治療に大きな福音をもたらしたが、克服すべき問題点も多い。特に真菌感染は大きな課題である。ミニ移植開発当初は好中球減少期間が短いため、そのリスクは減少すると予想された。しかし、最近の研究で、ミニ移植後でも真菌感染の頻度は低下しないこと、従来型移植とミニ移植ではその臨床像が異なることが明らかになった。このため、ミニ移植後の真菌感染対策には独自の工夫が必要と考えられるようになった。特に、ミニ移植後の真菌症は発症時期が遅れ、多くが外来で診断されることには留意が必要である。ミニ移植での真菌感染対策では、無菌管理などの入院施設を用いる方法は意味をなさず、抗真菌剤の予防投与に関心が集まっている。現在、新規抗真菌剤の開発が進行し、近年中に臨床医が使用できる抗真菌剤の種類は大きく拡大する。ミニ移植での真菌感染対策は、このような薬剤の特性を活かし再構築されるであろう。例えば、外来で使用できるように予防薬は経口の剤型を持つことが必須である。この点でキャンディンは問題がある。また、アスペルギルスが真菌感染の主因を占めるため、アスペルギルスに感受性を有することが求められる。この意味でフルコナゾールは第一選択から外れる可能性が高い。抗真菌剤の長期連用は耐性を誘導する危険性があり、その使用は最小限に留めるべきであることは言うまでもない。ボリコナゾール予防投与患者に接合菌感染が増加するなど、既に一部で問題になりつつある。この問題を解決するには、至適予防投与量、期間の検討が必要であるが、これらについては、世界でも殆ど検討されてこなかったのが実情である。更に、薬剤相互作用の検証も重要である。年齢的要因、民族学的要因を検証していく必要があろう。薬剤相互作用の強いアゾール系製剤の問題点である。このように抗真菌剤の予防投与に関しては、克服すべき多くの問題点がある。問題点を明確に捉えた、簡潔な臨床研究が必要である。
  • 時松 一成
    セッションID: SI-3
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
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    アスペルギルス症を代表とする糸状菌感染症は,アムホテリシン B が第一選択薬として長い間使用されていた。しかし,アムホテリシン B は,発熱や嘔吐,腎毒性などの副作用が高率に発生するため,臨床的に投与量や投与期間が不十分な症例も多く,糸状菌感染症は難治性感染症とされた一つの要因であった。また,経口薬による外来治療ではイトラコナゾールカプセル薬が用いられているが,患者によっては安定した吸収が得られない場合があることが指摘されていた。2002 年末に発売されたミカファンギンは,アスペルギルス属に対しても有効性の高い注射用抗真菌薬である。真菌細胞壁の合成を特異的に阻害するという新たな作用機序を有し,ヒトに対する毒性も低いため,わが国の現状では,アスペルギルス症に対するミカファンギンの使用頻度は、アムホテリシン B とほぼ同程度か越えるであろうと推測される。今年の中旬に発売されたボリコナゾールは,アスペルギルス属に対して殺菌的な作用を有すること,注射剤から経口剤の切り替えが可能であることより,アスペルギルス症に対する重要な治療法の選択肢一つになると考えられている。更に,リポソーム・アムホテリシン B,イトラコナゾールの注射剤およびシロップ剤が,今後,わが国においても使用が可能になると予想されている。これらの抗真菌薬は,従来の抗真菌薬を製剤的に工夫し,毒性の軽減,吸収の安定性を改善したものであり,すでに,海外においては集積されたエビデンスとしての報告がある。 このように,今後,ますますアスペルギルス症に対する治療薬剤の選択肢は増加し,その治療方法も大きく変化すると予想される一方,薬剤選択の多様性から生じる臨床現場の混乱を避けるため,新たな標準的治療法の確立が望まれる。 本シンポジウムでは,主に血液領域と呼吸器内科領域にみられるアスペルギルス症について,新規抗真菌薬の特性,我々の実験や経験例,国内外のエビデンスなどから,新規抗真菌薬の予防投与と経験的・標的治療における位置づけを明らかにする。更に,今後期待される抗真菌薬の併用療法の展望についても述べる。
  • 安岡 彰
    セッションID: SI-4
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
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    HIV 感染症の日和見感染症の中で真菌症が占める割合は高く、HIV 診療拠点病院を対象とした日和見感染症の調査ではエイズ発症疾患の第 1 位はニューモシスチス肺炎で 31.1%、第 3 位が食道カンジダ症で 14.3%、クリプトコックス症が 2.8% を占めていた。ニューモシスチス肺炎はエイズ発症疾患としてきわめて重要であるが、すでに治療指針は確立されたものがあり、適切に治療されれば死亡率は 5% 程度に抑えられる。しかし実際は診断の遅れが目立つため、早期にニューモシスチス肺炎を疑うことが重要である。カンジダ症は口腔、食道、女性性器感染として頻回にみられる。治療はアゾール系抗真菌薬で容易であるが、長期の治療にともなって薬剤耐性の問題が発生する。また HIV 感染症ではカテーテル関連カンジダ症の発生率が高いことも銘記すべきである。クリプトコックス症は HIV 感染症における難治性真菌症の一つであり、典型的な髄膜炎症状・所見を呈さないままに重篤化し、播種性病変となる場合も少なくなく、この場合の治療方法が今後の課題である。
     エイズ診断指針には含まれていないが、高度免疫不全状態ではアスペルギルス症も重要な日和見感染症である。高度免疫不全(CD<20 μl)に加えて、副腎皮質ステロイドホルモンの使用や、白血球減少の要素が加わるとリスクが高く、高度免疫不全状態で死亡した患者の剖検では、少なからずアスペルギルス感染を認める。慢性免疫不全状態で発生するため治療成績は著しく悪く、新しく登場した抗真菌薬の使用方法も含めて今後検討が必要である。
     最近では抗ウイルス薬の併用療法(Highly Active Anti-Retroviral Therapy; HAART)により、HIV 感染者の予後が大きく改善した。しかし高度免疫不全状態で発生した日和見感染症の治療成績が、HAART によって必ずしも向上しているわけではない。日和見感染症の治療薬と抗ウイルス薬の相互作用や副作用の相乗により治療が困難となる場合や、HAART を開始することにより免疫再構築症候群を発症し、原疾患のコントロールが困難になる場合がある。本症候群の治療として副腎皮質ステロイドホルモンを使用すると、新たな日和見感染症を発症するリスクも生じるなど問題も多い。本シンポジウムでは HIV に伴う真菌症の治療と、HAART の関連を中心に報告したい。
  • 光武 耕太郎
    セッションID: SI-5
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
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    臓器移植後における感染症は、拒絶反応とともに臨床医がまずクリアすべきハードルである。臓器移植にみられる深在性真菌症は数% から 10% 程度とウイルス感染や細菌感染と比べて発症頻度が低いにもかかわらず、致死率は高い。患者は移植を受ける時点で臓器不全に伴う感染防御能低下があり、これに外科的侵襲に免疫抑制療法が加わる。さらに早期診断の難しさに加え、抗真菌薬の選択の幅は広いとは言えず、予防的抗真菌薬投与もエビデンスと呼べるものが少ない、などがその理由としてあげられる。
    主な原因真菌はカンジダとアスペルギルスである。侵襲性アスペルギルス症は、肺移植患者での頻度が高いが、特に重篤な播種性アスペルギルス症は肝移植でもみられる。また心移植ではカンジダよりアスペルギルスが優位との報告もある。侵襲性アスペルギルス症は死亡率が極めて高いことが問題であり、移植後の患者の死亡原因として、侵襲性アスペルギルス症は、肺移植で 9.3%、肝移植で 16.9% とする報告もある。
    深在性真菌症はひとたび発症すると治療に難渋することから、診断や治療よりもまず、予防や先制攻撃的治療に重点をおくことになる。とはいえ、抗真菌薬の予防投与は移植実施施設や移植臓器によって異なっており、予防投与は患者毎に、臨床経過やリスクを考慮して行い、全例に行なうべきではないとの意見もある。また薬剤の選択においても、アスペルギルスに対する効果の弱いナイスタチンやフルコナゾールでいいのか、アスペルギルスを考慮するならばイトラコナゾールの内服が必要ではないのか、投与方法や投与期間はどうあるべきかなど、真菌症予防に関して解決すべき問題は多い。さらに、移植領域における特徴として、深在性真菌症の発症には immunomodulating virus としてサイトメガロウイルスやヒトヘルペスウイルス 6 との関連が指摘されている。免疫グロブリンや抗ウイルス薬によるサイトメガロウイルス感染予防を行なうと、深在性真菌症の発生頻度は低下し、間接的に予防につながるというものである。
    治療においては、β-グルカン合成阻害薬であるミカファンギンは、安全性も高くアスペルギルスやアゾール耐性カンジダに対しても良好な抗真菌活性を示す。免疫抑制薬との相互作用もほとんどないため移植領域でも有用性が期待される。さらに、新たなアゾール系薬のボリコナゾールが上市され、アムホテリシン B のリポソーム製剤がようやく国内でも使用可能となるようである。移植領域でとくにやっかいなアスペルギルス症に対して、使用可能な薬剤の選択の幅がひろがり、これらの薬剤は深在性真菌症の予防や治療に組み込まれていくことになる。
  • 小川 賢二
    セッションID: SI-6
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
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    慢性型肺アスペルギルス症は肺結核治癒後の遺残空洞内に発生する頻度が高い。1996 年 から 2001 年の国立病院機構全国アンケート調査では、先行疾患の約 50% が肺結核症であった。当院における 1996 年度調査では 29 症例中 26 例 (89%)、2004 年度調査では 30 症例中 26 例 (87%) に肺結核既往歴を認めた。本症の診断には、レントゲン画像、喀痰検査、血清学的検査が主に行なわれている。上記 59 症例の画像所見は、菌球型が 47%、空洞壁肥厚型が 32% を占めた。喀痰培養で検出した菌は A. fumigatus が 78%、A. niger が 13%、A. flavus が 2% であった。血清学的検査では、沈降抗体陽性率が 81%、抗原陽性率が 11%、β-D グルカンが基準値を上回った症例が 39%、アスペルギルス特異的 IgE 抗体が基準値を上回った症例が 60% であった。この他、臨床症状として、血痰、喀血が高頻度に認められた。次に治療法であるが、抗真菌剤の全身投与、局所投与が行われていた。抗真菌剤としては主にアムホテリシン B、イトラコナゾール、ミカファンギンが使用されていた。この他補助療法として、エラスターゼ阻害剤であるミラクリッドの併用や、アレルギー的要素が関与していると考えられる症例にはステロイドの併用も行なわれていた。ミカファンギンは慢性壊死性肺アスペルギルス症にたいする有効性が高く、使用量、使用期間、併用薬などの検討を加え本シンポジウムにて報告する予定である。
     著者らは、第 40 回の本学会シンポジウムにて、アスペルギルス属の産生するエラスターゼが病原因子に関与していることを発表した。その後さまざまな検討を加える中で、菌自身が産生するエラスターゼ阻害物質を発見した。この物質は分子量 7525.8 であり、各種エラスターゼに対する阻害活性を調べたところ、A. fumigatusA. flavus 由来のエラスターゼに対してはほぼ 100% の阻害活性を示した。なお、ヒト好中球由来エラスターゼに対して 72.8%、ブタ膵由来エラスターゼに対しては 5.5%、緑膿菌由来エラスターゼに対しては阻害活性を示さなかった。ミラクリッドでは高濃度にしても 60% 程度しか阻害活性が得られず、臨床効果を得にくい状況にあったが、本物質の発見により新しい治療法の開発につながる可能性も出てきた。今後さらなる検討を加え、報告する予定である。
    共同研究者:奥村欣由,二改俊章(名城大・薬・微生物)
シンポジウム 2
分子医真菌学の新展開
  • 渋谷 和俊, Jean-Paul Latge
    セッションID: SII-1
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
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    侵襲性アスペルギルス症の主たる起因菌である Aspergillus fumigatus における病原因子について検討した.これまでに病原因子として報告されたものの中からプロテアーゼ,ロッドレット,分生子カタラーゼならびに菌糸カタラーゼの4者を選び,遺伝子離断法により各因子の単独欠損変異株および後2者の重複欠損変異株を作成し,表現形ならびに感染実験における病態について検討した.
    この結果,菌糸カタラーゼ欠損株のみに親株と比して持続した病原性の低下が認められた.また,ロッドレット欠損株では,感染初期に病変の拡大が抑制される傾向をみたが,感染後期には親株で形成された病変と同じく,肺に広範な壊死が認められた.侵襲性アスペルギルス症の成立に関与する本菌の病原因子としては,菌に由来する組織障害性因子よりも菌自体を宿主の感染防御機構から防御・回避する因子が重要な働きを担っている可能性が示唆された.
  • 竹尾 漢治
    セッションID: SII-2
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
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    Cryptococcus neoformans (クリプトと略記)は、深在性真菌症の重要な起因菌である。また、我々の研究から本菌の細胞周期制御は、真核生物の単純なモデル Saccharomyces cerevisiae と異なることが分かっている。演者は、先ずクリプトの細胞周期制御の特徴を述べ、次に細胞周期制御の中心的遺伝子のクリプトからのクローニングとこの遺伝子の特徴を述べる。
    出芽酵母では細胞分裂により大きな母細胞と小さな娘細胞ができる。S. cerevisiae では、この小さな娘細胞が生長して一定の体積以上になると、細胞周期の”スタート”がかかり、DNA 合成開始、出芽開始、紡錘紡錘極体の複製(核分裂の開始)を引き起こす。このように S. cerevisiae の“スタート”は強力、いいかえると細胞周期は融通がきかない。クリプトでも指数増殖期では S. cerevisiae と同様に DNA 合成開始に引き続いて出芽し、DNA 合成完了後核分裂が起った。しかし、強いストレス下では様相が一変した。溶存酸素濃度低下(クリプトは発酵能を欠く)では、細胞が大型化、細胞壁が肥厚化、さらに、ほとんどの細胞は未出芽であるにもかかわらず G2 期にあった。同様の変化は栄養条件の悪化した定常期への移行期でも、またラット肺への感染時でも認められた。細胞周期制御の中心に位置するサイクリン依存性キナーゼ CDC28/cdc2 ホモロッグ(または Cdk1 )の遺伝子をクリプトからクローニングし、そのアミノ酸配列を決定した。S. cerevisiaeSchizosaccharomyces pombe の CDC28/cdc2 と高い相同性(アミノ酸ベースで約 70%)を示した。GDSEID モチーフ即ち Glycine、Aspartic acid、Serine、Glutamic acid、Isoleucine、Aspartic acid よりなる配列は特異的で、これまで知られているCdk1全てに共通しているが、Cdk1 以外の Cdk では保存されていない。単離したクリプトの Cdk1 でも本モチーフが保存されていることより、本遺伝子は確かに CDC28/cdc2 ホモログということが出来た。PSTAIRE モチーフ即ち Proline、Serine、Threonine、Alanine, Isoleucine、Arginine、Glutamic acid 配列部位はサイクリンとの結合部位であり、ほとんどすべての Cdk1 に共通している保存性の大変高いサイトである。しかし、本菌のCdk1では本来のPSTAIREモチーフ中で、Alanine が Serine に置き換わっていた。PSTAIRE モチーフが完全には保存されていないのに、Cdc28/cdc2 活性欠損を相補できる Cdk1 としては、これまで線虫 Caenorhabditis elegans、細胞性粘菌 Dictyostelium discoideum、原虫Leishmania major のみであり、クリプトのものはその第 4 例であった。本菌の Cdc28/cdc2 の特異性を示すと言うことが出来る。
  • 長 環
    セッションID: SII-3
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
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    クオラムセンシング (QS) とは、細菌がその存在環境における菌密度を感知し、その密度に応じて病原因子遺伝子の発現を制御するシステムのことである。細菌における QS システムは主に 3 つの因子に分けられる。即ち菌密度の指標となる自己産生ホルモン様物質 (QS 分子)、QS 分子と結合する転写活性因子、および病原因子を含むターゲット因子からなっている。このように、QS システムは細菌の感染機構と関連が深く、新しい感染症治療のターゲットとして近年精力的に研究が進められている。
    真菌における QS の研究は、2001 年 Nickerson らが C. albicans の培養上清中に QS 分子として farnesol を発見、単離、精製したことから注目され始めた。本菌の病原性の一つである酵母形から菌糸形への形態変換が菌密度の影響を受けることは、古くから知られている現象であるが、Nickerson らは、この現象が farnesol を介した QS システムの稼動によるものと報告した。
    我々は C. albicans の形態変換機構の分子生物学的解析を行っているが、これまで研究に使用してきた JCM 9061 株は、C. albicans の研究で汎用されている SC5314 およびその派生株に比べ菌糸形成を誘導できる菌密度がかなり低いという特徴がある。我々はこの株は QS に対する感受性が高いと考え、この株を C. albicans の QS システムの機構解明に利用する計画を立てた。一方 C. albicans の全ゲノムシークエンスの公開に伴い、遺伝子を網羅的に研究することが可能になった。そこで、広範囲の遺伝子が発現する可能性のある QS 現象の解明に、網羅的な遺伝子解析のできる DNA マイクロアレイの利用が、魅力的な戦略の一つであると考え解析を行っている。
    発表では細菌で明らかにされている QS システムの紹介、C. albicans で現在までに解明されている部分と問題点、前述の我々が構築した QS 実験系と DNA マイクロアレイの結果により推察されたQS関連遺伝子などを紹介する。
  • 宮川 洋三
    セッションID: SII-4
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
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    わが国では現在、高齢化社会を迎え易感染性宿主における日和見感染症、ヒト常在菌である病原性酵母によるカンジダ症が医療現場の深刻な問題になりつつある。われわれはその対策として、カンジダ症の主要な原因菌とされる Candida albicans および通常一倍体として増殖するために遺伝解析が容易とされる C. glabrata をおもな材料として、新たな抗真菌剤の標的となり得る必須遺伝子群の探索を試みている。
     Saccharomyces cerevisiae ではその遺伝子の約 10% が必須遺伝子とされているが、昨年、C. albicans につづき C. glabrata の全ゲノム解読が完了し、これら病原真菌についてもポストゲノムの時代に突入しつつある。これらの菌種においては、Tetracycline (Tet) による応答性遺伝子発現制御系 (TETシステム) が中山ら (Microbiol., 1998, Infect. Immun., 2000) によって確立され、必須遺伝子を解析する上でとくに有利であることが立証されている。
     われわれは抗真菌剤の有力な標的候補と考えられる必須遺伝子を効率よく分離する手段として、C. glabrata より、その必須遺伝子に変異を持つと思われる条件致死変異体としての温度感受性変異株(以下、TS 変異株)の分離を試みている。これまでに EMS 処理後のコロニーから、高温(発育制限温度)でのコロニー形成能を失った多数の TS 変異株を取得した。これらの株について性状解析を行った結果、その多くは安定性が高く、Reversion 頻度が低いこと等から、これらの変異株を宿主として C. glabrata Genomic DNA Library より各変異に対する相補性遺伝子をスクリーニングすることが充分可能であることが明らかになった。これら相補性遺伝子は必須遺伝子である可能性が高いと考えられる。さらにわれわれはこれとは別に、TET システムを用いることにより、C. albicans および C. glabrata のリン酸代謝制御系における負の制御因子 PHO85 の必須性についても in vitro, in vivo の両面からの検討を試みている。これらの遺伝子必須性が TET システムにより証明されれば、抗真菌剤開発に際しての有力な標的候補になるものと考えられる。
    共同研究者:冨士原浩介1, 原 貴彦1, 河邉 亮1, 花田 零1,
          宇野 潤2, 知花博治2, 三上 襄2, 中山浩伸3
         (1山梨大・生命工学, 2千葉大・真菌センター, 3鈴鹿高専・生物応用化学)
  • Ann R. Holmes, Richard D. Cannon
    セッションID: SII-5
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
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    The most common cause of high-level azole resistance in clinical isolates of Candida albicans is over-expression of drug efflux proteins, in particular, the ABC-type membrane transporters Cdr1p and Cdr2p. We examined the function of individual efflux proteins by expressing them in the genetically tractable yeast Saccharomyces cerevisiae. Individual CDR1 and CDR2 alleles were cloned and hyper-expressed in an S. cerevisiae expression system (host strain AD1-8u- and transformation cassette constructed in plasmid pABC3) that correctly trafficked the hyper-expressed efflux pump protein to the host yeast plasma membrane.
    Recombinant S. cerevisiae strains were constructed that expressed variants of one allele (A) of the C. albicans ATCC 10261 CDR1 gene generated by low-fidelity PCR mutagenesis. Specific regions of the CDR1 gene, such as the Nucleotide Binding Domain (NBD) were deleted and replaced by mutagenised PCR-generated fragments. One recombinant had a reduced fluconazole Minimum Inhibitory Concentration (MIC) of 75 μg/ml relative to the parental A allele strain (200 μg/ml), reduced rhodamine 6G (R6G) efflux, and contained two unique amino acid substitutions (F371S and R420S) in NBD1. Comparative SDS-PAGE analysis demonstrated reduced amounts of Cdr1p in the plasma membrane of this strain, possibly due to instability of the mutant polypeptide. In another mutant CDR1 allele strain, a L1021S mutation, immediately N-terminal of the NBD2 Walker B motif, conferred reduced pump activity without reducing Cdr1p expression in the plasma membrane. The hyper-expression system was also used to investigate natural allelic variation in both CDR1 and CDR2 in eight strains. Whereas only one strain had non-synonymous single nucleotide polymorphisms (SNPs) within the CDR1 gene, that gave minor functional change, the CDR2 alleles of seven strains contained both intra- and inter-strain non-synonymous SNPs. Functional variation between CDR2 alleles was detected, and confirmed by site-directed mutagenesis of individual SNPs.
    The use of a heterologous hyper-expression system has facilitated analysis of allelic variation and identified amino acid residues important for function in the C. albicans drug efflux genes CDR1 and CDR2.
シンポジウム 3
話題の皮膚真菌症の最前線
  • 望月 隆
    セッションID: SIII-1
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
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    Trichophyton (T.) tonsurans 感染症は 1990 年初頭から北アメリカ各地、スエーデン、韓国、ドイツなどの格闘技愛好者の間に流行している。本邦においては 2001 年から培養で本菌によることが確認された集団発生例が報告されたが、おそらく 1995 年頃以前から当初レスリング部員、その後柔道部員の間で集団発生が始まっていたと考えられる。昨年の本学会においては、本症の発生状況を明らかにするためにシンポジウムが行われ、本症が高等学校、大学などの柔道、レスリング競技者を中心にすでに全国的に蔓延していること、当初強豪校を中心としていた感染の範囲が拡大していること、家族への二次感染例があること、一般への拡散はいまだ確認されていないことなどが明らかになった。したがって、今後は効果的な治療、予防策の提案が急務と考えられる。現在のところ本症の診断、治療のガイドラインとしては「柔道選手の皮膚真菌症 ブラシ検査・治療・予防のガイドライン」(比留間政太郎他 編集室なるにあ 2003 年 9 月)、ならびに「Trichophyton tonsurans 感染症の診断・治療・予防のガイドライン2004」(T. tonsurans 感染症対策委員会編 順天堂大学医学部皮膚科学教室 2004 年 6 月)が提示されている。今回は一高等学校柔道部を対象としたヘアブラシによるサンプリングを通じて、ヘアブラシ法を行うタイミング、特に乱取りを含む稽古の前後でのヘアブラシ法の所見の変化、そして稽古直前の抗真菌剤外用のヘアブラシ法への影響についてのデータを添えつつ、ガイドラインの紹介を行う。(共同研究者:田邉 洋、河崎昌子、安澤数史、若狭麻子、石崎康子)
  • 加藤 卓朗
    セッションID: SIII-2
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
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    皮膚真菌症の発症、感染機序を考えると、皮膚や粘膜の常在菌が増殖・形態変化して発症する内因性感染症(カンジダ症、癜風)と外部から菌が侵入して発症する外因性感染症に大別される。環境は外因性感染症の原因真菌の生息場所あるいは感染経路として関係するが、さらにその場所は室内(人工)環境、屋外(自然)環境(植物なども含む)および動物に分けることができる。室内環境で感染する皮膚真菌症の代表は白癬(Trichophyton rubrumT. mentagrophytes など)である。演者らの検討などから最も多い足白癬では患者から散布された白癬菌が塵埃など室内環境中に生存し、病変のないヒトの足底や趾間に付着することが証明された。この場合、環境は感染経路中の一過性の生存場所といえる。患者説明に必要な環境中の白癬菌の除菌方法などについて最近の知見を紹介するとともに、環境から分離される白癬菌相について問題提起したい。また空中浮遊菌であるアスペルギルスが室内環境で感染し、皮膚アスペルギルス症を発症した例を経験したので供覧する。これに対し、屋外環境で感染するのは白癬(Microsporum gypseum )、スポロトリコーシス、黒色真菌症などであるが、これらの原因菌は土壌など環境中に生息しているのが通常の状態で、外傷などを契機に偶発的にヒトに感染する。動物から感染するのは白癬(Microsporum canis など)、クリプトコックス症などである。
  • 比留間 政太郎
    セッションID: SIII-3
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    爪真菌症の研究は、経口抗真菌薬 itraconazole (1993)、terbinafine (1997)の登場で極めて進歩した。このシンポジウムでは最近 5 年間の進歩をまとめると伴にわれわれの仕事を紹介する。 疫学では、爪真菌症の罹患率(7-13%)が明らかにされ、さらに発症の危険因子(加齢、末梢循環不全、HIV患者、癌患者、糖尿病、臓器移植患者、家族内の足白癬患者の存在など)の解析が進められている。 診断では、病爪からの検体の採取の方法(clipping, curettage, drilling)の検討がなされ、採取された検体に対しては、日常診療における診断法の改良(蛍光法、PAS 染色法)、遺伝子診断の導入、非白癬性爪真菌症の診断とその実態、耐性菌出現の検討などがなされている。10 人に 1 人は爪真菌症といわれ、臨床分野では重要な問題であることが注目され、真菌研究センターなどでの診断相談サービスが必要であると考えている。 臨床面でも多方面から進歩がみられる。病型分類は、DLSO、WSO、PSO、TDO に分類されるが、WSO の亜型が報告され、菌の侵入経路にいても再検討の必要がある。治療に重要な爪の成長速度の研究、重症度分類(Scoring clinical index for onychomycosis: SCIO)の試み、小児の爪真菌症の実態調査、マスメディアの果たす役割、QOL への影響などが検討されている。 治療は、 itraconazole パルス療法、terbinafine 短期療法の効果が報告され、これらの臨床効果はほぼ確立された。今後は、1. 再発の防止、2. ハイリスク患者の同定(治療に反応しない患者群、再発しやすい患者群)、3. 新しい治療の試み(新薬の開発、投与法・投与量の改良、併用療法の検討)などが課題となる。治癒率の向上、再発防止などを目的として、外用療法(nail lacquer)や外科的療法などの併用療法を行うことにより、dermatophytoma、dormant phase conidia に対する治療が、より効率良く行える可能性がある。また、治療前後での免疫能への影響も報告され、慢性白癬病巣からの菌の排除により、トリコフィチン反応が正常化することが報告されている。 爪真菌症の治療の原則は、1) 正確な診断、2) 早期発見と早期治療、3) 病態の正しい把握にある。更なる進歩に向かって、研究が行われており、その一部を紹介する。
  • 清 佳浩
    セッションID: SIII-4
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    マラセチア属真菌は現在11菌種から構成されている。本菌は、皮膚の常在菌の一つで、頭部・顔面・胸部・背部等脂漏部位に多く分布している。マラセチアによって生じる疾患には、感染症である癜風、マラセチア毛包炎、マラセチア敗血症があり、関連疾患には、フケ症及び脂漏性皮膚炎、顔面・頚部のアトピー性皮膚炎が主体である。10 年前には 2 菌種にしか分類できなかったマラセチアが再分類されて 11 菌種となったことで、本菌の分布状態や病変とのかかわりなど様々な事項について検索が行なわれてきている。近年では、培養法では存在するすべての菌種が検出できないことが判明し、非培養法によって健常皮膚、病変部における菌種の検索が行なわれている。本シンポジウムでは現在まで報告されてきた内容について整理して報告する。
  • 中村 遊香
    セッションID: SIII-5
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    皮膚科領域において、真菌を原因とする主な人獣共通感染症には、皮膚糸状菌症、クリプトコックス症およびスポロトリコーシスがある。中でも皮膚糸状菌症は動物から人への感染が起こることが古くから知られているにも関わらず、制御困難な疾患である。皮膚糸状菌症は、感染源となる動物種によって病原となる菌種がある程度想定することが可能であるが、飼育動物の多様化によって思わぬ動物から感染する場合もあり、疫学的に注意を要する疾患でもある。Microsporum canis は猫や犬からの分離頻度が高い菌種であり、罹患動物や保菌動物との接触によって人が発症する場合が多い。我が国ではペットブームによって海外から病原菌が付着した動物の輸入が増加したことにより、ペットショップを介して他の動物種へ感染が蔓延していることも多くみられるようになった。特に最近では、愛玩動物から伴侶動物へと呼称が変わったことに示されるように、従来よりも人間と密着して生活していることから、感染が増加傾向にある。例えば、分子生物学的な菌種同定が普及したことに伴って、Trichophyton mentagrophytes のテレオモルフの 1 種で、我が国では分離報告の認められなかった Arthroderma benhamiae が齧歯類を中心に全国的に蔓延していることなどが判明している。
     クリプトコックス症は、鳩を主とする鳥類の糞便が汚染されていることが知られており、人への感染源としてもこれら鳥類の堆積糞が重要視されているが,猫や犬などの鼻腔にある程度常在することが疫学的に明らかにされており,注意が必要であると思われる。また,最近では日本国内で斃死するコアラからも高率に血清型 B の Cryptococcus neoformans が分離されることが明らかとなっており,これら動物の動物園間の移動に伴う病原性菌の汚染拡大も危惧される。
     スポロトリコーシスは,我が国の皮膚科では比較的古典的な真菌感染症であるが,動物から人への感染は報告されていないために,人獣共通感染症として認知されていない。しかし,欧米では本疾患に罹患した動物(特に猫)から受傷した,軽度の引っ掻き傷などから感染することが知られており,人獣共通感染症として注意を要する疾患であると考えられている。
     動物は人と同様に、直接鏡検による病原体の証明,分離培養による菌種の同定で診断されるが,分子生物学的な技術によって病原体の同定作業は迅速かつ正確に行えるようになった反面,診察室における直接鏡検標本の評価能力が向上しないと言う,医療現場と同じ問題が起こっている。
     治療方法も,グリセオフルビンに加えて新規の全身投与が可能な抗真菌剤が国内で入手可能となったことから,確定診断さえ行われば速やかに治療することが可能となっている。しかし,費用の問題や治療終了の判定基準が無いことなど,問題は山積している。
シンポジウム 4
真菌感染と自然免疫
  • 柴田 信之, 大川 喜男
    セッションID: SIV-1
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    Candida albicans の主な抗原性は細胞壁最外層に存在するマンノースのみから成る多糖であるマンナンが担っている。この構造は Saccharomyces cerevisiae の細胞壁マンナンと基本骨格は共通であり、タンパク質の Asn 残基に N-グリコシド結合でインナーコアと呼ばれるオリゴ糖を介して α-1,6 結合からなる長い主鎖が存在し、これに α-1,2 および α-1,3 結合からなる側鎖がたくさん結合した櫛形構造である。大きく異なる点は Candida 属では側鎖にさらに β-1,2 結合でマンノースが結合していることである。この Candida マンナンの特徴といえる β-1,2 結合マンノース残基の存在様式を詳細に調べると、次の 3 つのタイプに分類することができる。
    1)側鎖の途中にリン酸基を介して結合する β-1,2 結合のみから成るマンノオリゴ糖
    2)側鎖の非還元末端側 α-1,2 結合マンノースに直接結合する β-1,2 結合マンノオリゴ糖
    3)側鎖の非還元末端側 α-1,3 結合マンノースに直接結合する β-1,2 結合マンノオリゴ糖
     1)のタイプのβ-1,2結合マンノース残基は C. albicans の serotype A および B の菌株に共通の抗原であり抗原因子 5 の本体であるのに対して、2)のタイプの β-1,2 結合マンノース残基は serotype A の菌株に特異的に存在しており抗原因子 6 の本体となている。この抗原構造は C. albicans 以外に C. tropicalis, C. glabrata, C. lusitaniae に含まれていたが、その側鎖の長さは異なっていた。一方、3)のタイプの β-1,2 結合マンノース残基は C. guilliermondii, C. saitoana に含まれていた。C. albicansC. guilliermondii マンナンの側鎖には、さらに α-1,6 結合による分岐も存在しており、S. cerevisiae のマンナンと比べてかなり複雑な構造となっている。
     β-1,2 結合マンノース残基を含む分子は C. albicans マンナンの主抗原として働くだけでなく、Candida 菌の細胞への接着やサイトカイン産生誘導などの生物活性も調べられているので、これらについても紹介する予定である。
  • 安達 禎之, 大野 尚仁
    セッションID: SIV-2
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    Candida albicans などの真菌の細胞壁には (1→3)-β-D-glucan が含まれている。β-glucan に対する免疫認識は主に自然免疫系により担われていると考えられており、樹状細胞やマクロファージに発現する C-type レクチンに属する Dectin-1 は β-glucan に結合する膜タンパク質として菌体の認識に関わっている。しかし、真菌感染あるいは真菌に対応する免疫機構が関連する疾患において Dectin-1 がどのような役割を演じているかは明確ではなく、これらを明らかにすることは感染防御や炎症性疾患の発症と対策を考慮するために重要であると考えられる。まず、β-グルカンは構造に多様性があることから、Dectin-1 がどの様な構造特異性に基づき真菌多糖を認識するのか検討した。Dectin-1 は Candida 由来の (1→6)-long branched (1→3)-β-D-glucan と Schizophyllum commune 由来の (1→6)-monoglucosyl branched (1→3)-β-D-glucan に結合し、3 重ラセンの (1→3)-β-D-glucan により強い親和性を有していた。次に Dectin-1 の β-glucan 認識能と細胞活性化能を解析するために、Dectin-1 変異体および Dectin-1 モノクローナル抗体を作製し、結合活性に関するアミノ酸残基を他の C-type レクチンと比較した。その結果、Dectin-1 は DC-SIGN などのmannose 結合性 C-type レクチンとは全く異なるアミノ酸残基を用いて、Ca2+ 非依存的に β-glucan を認識することが示された。Dectin-1 による細胞の活性化機構の解析には従来、β-glucan を主成分とする酵母 Saccharomyces cerevisiae 由来の zymosan が汎用されている。zymosan は、TLR2 発現細胞に作用し NF-kB の活性化を引き起こす。Dectin-1 は TLR2 発現細胞において zymosan の NF-kB 活性化能を促進した。この促進作用は β-glucan 非結合性 Dectin-1 変異体では起こらないことから、β-glucan の認識が重要であった。一方、zymosan のクロロホルム-メタノール処理物は Dectin-1 結合性を保持しているにも関わらず TLR2 との共発現でも NF-kB を活性化できなかった。Candida 由来の精製 β-glucan も同様に共発現細胞でも全く NF-kB の活性化を示さないことから、Dectin-1 による β-glucan 結合シグナルのみでは NF-kB を活性化するには不十分で、Dectin-1 以外の受容体からの NF-kB 活性化シグナル誘導も重要であることが示唆された。
  • 藤田 禎三
    セッションID: SIV-3
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
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    免疫系は、初期感染防御において重要な働きをする自然免疫(innate immunity)と、特異的な認識機構とその記憶に特徴を持つ獲得免疫(acquired or adaptive immunity)に分けることができる。自然免疫は本来生体に備わっており、生体に侵入した病原微生物にただちに働くという特徴を持つ。そして、引き続き起こる獲得免疫の反応を確実なものとする。自然免疫は、獲得免疫を持たない無脊椎動物においても普遍的に生体防御に機能している。また、自然免疫は非特異的に働く貪食作用が中心と考えられていたが、現在では、微生物表層に存在する一定の繰り返しパターンを持った構造を異物として認識し、自己と非自己を識別できると考えられている。このようなパターン認識分子として現在急速に研究が展開されている Toll 様受容体(TLR)に加えて、エフェクター機能を併せもつコレクチンとフィコリンがあり、近年注目を浴びている。本分子は認識に関与するレクチン領域とエフェクター機能に関与するコラーゲン領域を持つハイブリッド分子であり、微生物表層成分を直接認識する真のパターン認識分子である。 一方、補体とは、生体に侵入した微生物を排除するための重要なエフェクターとして生体防御に機能している一群の蛋白の総称である。補体は、約 30 種以上の血清蛋白質と膜蛋白質によって構成され、補体系を形成している。補体系は、抗体を認識分子として機能する古典的経路が先に発見されたため、抗体を補うという意味で補体と名付けられた。さらに、コレクチンのうちマンノース結合レクチン(MBL)とフィコリンは、新規セリンプロテアーゼの MASP と複合体を形成し、新たな補体活性化経路(レクチン経路)を活性化し、生体に侵入した微生物を排除する。本シンポジウムでは、MBL とフィコリンなどの生体防御レクチンの認識機構と自然免疫における役割について概説する。
  • 荒谷 康昭
    セッションID: SIV-4
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
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    ミエロペルオキシダーゼ(MPO)は主に好中球のみに存在し、単球にわずかに検出されるほかには MPO を保持している組織は同定されていない。感染等によって活性化した好中球は、NADPH オキシダーゼにより酸素からスーパーオキシド(O2-)を、次いで O2- から過酸化水素(H2O2)を産生する。さらに、MPO により H2O2 と塩素イオンから次亜塩素酸(HOCl)が産生される。ヒトの単離好中球を用いた試験管内実験では、MPO 欠損好中球は殺菌能の低下が認められる。しかし、我が国では 40,000 人に 1 人、欧米では 2,000 から 4,000 人に 1 人の頻度で存在しているといわれる MPO 欠損患者の大半は健康な生活を営んでおり、時にカンジダ菌に易感染性を示す傾向が認められるに過ぎない。すなわち、個体の真菌感染防御における MPO の役割はいまだ明確ではない。そこで、MPO のノックアウトマウス [MPO (-/-) マウス] を作製して、このマウスの真菌易感染性を解析した。
     MPO (-/-) マウスは、クリーンな飼育環境下では何ら異常を示さない。ところが、Candida albicans を鼻腔内投与すると、野生型マウスはまったく死亡しなかったのに対し、MPO (-/-) マウスは感染後 5 日目までに重度の肺炎を起こして大半が死亡した。さらに、Aspergillus fumigatusCandida tropicalis、および Trichosporon asahii を感染させた 2 日後の肺における殺菌能も、野生型マウスに比べて有意に低下していた。また、Cryptococcus neoformans に対する MPO (-/-) マウスの感染防御能の低下は、感染後 1 週間を経過してから顕著に現れた。すなわち、MPO はこれらの真菌に対する生体防御に重要な役割を担っていることが示された。次に、MPO (-/-)マウスの C. albicans に対する易感染性を NADPH-オキシダーゼのノックアウトマウス (CGD マウス) と比較した。CGD マウスの感染重篤度は、投与した菌量依存的に増大した。一方、MPO (-/-) マウスは、低量の菌を投与すると野生型マウスと同程度の軽度な感染しか示さなかったにもかかわらず、高量を投与すると CGD マウスに匹敵する重篤な感染症状を示した。すなわち、MPO は多量の菌が感染した際の生体防御機構として、NADPH オキシダーゼと同等の重要性を有していることが明らかとなった。
    共同研究者:倉 文明1,渡辺治雄1,高野幸枝2,鈴木和男2,小山秀機3
          (1国立感染研・細菌,2国立感染研・生物活性,3横浜市大・木原研)
  • 川上 和義
    セッションID: SIV-5
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    クリプトコッカスは細胞内寄生真菌と考えられており、その感染防御には細胞性免疫、すなわち Th1 依存性の免疫応答が必須である。実際、本感染症はエイズや血液悪性疾患など細胞性免疫能が低下した患者において大きな問題となる。マウスを用いた動物モデルでも、Th1 関連サイトカイン産生が障害されると肺感染が悪化し、高頻度に中枢神経系への播種性感染がみられるようになる。逆に、Th1 関連サイトカインの投与によって感染防御能の亢進が認められる。 従来、自然免疫は獲得免疫が成立するまでの「繋ぎ」として機能する非特異的な防御免疫機構ととらえられていた。しかし、自然免疫の時期に起こる様々な反応が、その後の獲得免疫応答の「質」、すなわち Th1 型か Th2 型かを決定する重要なイベントであることが明らかになってきた。NKT 細胞および γδT 細胞はこの時期に活性化を受け、種々のサイトカインを産生することで免疫調節作用を発揮することが知られている自然免疫リンパ球である。我々の研究では、Vα14+NKT 細胞あるいは γδT 細胞を欠損したマウスを用いて、クリプトコッカス感染防御におけるこれらリンパ球の役割について解析を行っている。経気道的にクリプトコッカスを感染させたマウスでは、それぞれ MCP-1 依存的、非依存的に両リンパ球の肺内および所属リンパ節への集積が認められた。NKT 細胞欠損マウスでは、IFN-γ 産生とともに遅延型過敏反応の低下がみられ、肺内からの真菌の排除が有意に障害された。逆に、NKT 細胞の特異的活性化物質である α ガラクトシルセラミドを投与されたマウスでは、IFN-γ 産生の増加とともに真菌の排除が有意に促進された。一方、γδT 細胞を欠損したマウスでは、クリプトコッカス感染後の IFN-γ 産生が増加し、感染防御能が有意に亢進した。この時 IL-4 および IL-10 産生には影響はみられず、TGF-β 産生が有意に低下していた。 これまでの結果から、自然免疫リンパ球である Vα14+NKT 細胞と γδT 細胞が互いに反対の作用を示すことにより、クリプトコッカスに対する感染防御を協調的に制御していることが明らかになった。これは、Vα14+NKT 細胞による過剰な防御免疫応答(炎症反応)を γδT 細胞が調節している可能性を示唆している。現時点では、これらの分子機構は不明であるが、今後は両リンパ球によるクリプトコッカス抗原の認識機構が解明されることによってさらにその理解が深まるものと期待される。
ワークショップ
外科,救急・集中治療領域における真菌感染症の現状と対策
  • 遠藤 重厚, 佐藤 信博
    セッションID: WS-1
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    救急医療の現場においては、多発外傷、広範囲熱傷、中毒など重篤な基礎疾患を有する患者に対して、必然的に集学的治療を行う結果、抗生剤、免疫抑制剤、ステロイド剤などの長期投与、中心静脈栄養あるいは血液浄化法時のカニューラ類の使用などにより compromised host に陥り、真菌症を合併することが少なからずみられ、年々増加傾向にあり、診断が重要視されてきている。
     カブトガニの血球抽出液を用いたエンドトキシン測定法としてのリムルステストは、岩永らにより研究されゲル化法から比色法、そして比濁法へと進歩した。これらにより β-グルカン値を測定することにより真菌症の診断法として用いられている。
     我々は、以前は比色法により β-グルカン値を測定してきたが、この数年は比濁法にを用いて β-グルカン値を測定している。
     今回は、β-グルカン値を測定することによるこの約 20 年における真菌症の推移にについて報告する。
  • 有嶋 拓郎
    セッションID: WS-2
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    集中治療室に入室する患者はさまざまな病態や病期であり、しばしば感染症の同定や治療に難渋する。深在性真菌症は頻度こそ少ないがこうした疾患のひとつである。われわれは、神戸らの開発した Candida 属 5 種と Aspergillus fumigatus を同時に同定できる測定系を用いて真菌の遺伝子診断を積極的に臨床的応用してきた。
    (I)臨床的意義 10 例の臨床上深在性真菌症が強く疑われた症例に対して診断と通常の検査を比較したところ遺伝子診断は培養検査に比較して良好な感度(p<0.05)で白血球数や CRP は高い傾向にあった。血液、腹水、胸水、髄液などの検体からの PCR 陽性結果は臨床所見に合致するものであった。本測定系での測定感度は 50-100 CFU/ml 程度であったことから、常在菌との区別の困難な痰、尿の陽性例においても相当量の菌数の存在を意味しており治療開始の判断材料となった。さらに真菌の多重感染が認められると、その後の予後は単感染のときより有意に悪くなり、真菌の単感染から多重感染が成立する時期が薬剤投与の至適時期と考えられた。
    (II)工夫 検率出の向上のため深在性真菌感染症の頻度が高い化学療法・放射線治療下の小児悪性腫瘍症例を対象に、血液検体を 24 時間以上培養した後に遺伝子診断することで診断率の向上が可能か否かを検討した。5 人の小児悪性腫瘍患者(年齢 3 から 14 歳)の 0.5 ml の静脈血 14 検体に対して PCR を実施し、うち 11 検体は培養検査も同時に実施した。結果は 14 検体中 10 検体 (71%) で真菌遺伝子を検出し 2 検体で複数感染も認めた。血液培養を実施した 11 検体中 7 検体 (64%) では遺伝子診断が陽性であったが、培養検査は全て陰性であった(χ2=5.63、p<0.05)。1 日培養の効果を実証すべく in vitro にて C. albicnas を SA 培養ボトル(日水製薬)で 34℃ 24 時間培養してコロニー形成試験を実施したところ 104 から 105 倍に増殖し、遺伝子診断の感度も 103 程度上昇した。
     現在、発熱持続や白血球の減少といったイベントにあわせて検体を採取し、36℃ の恒温槽での培養を加えて遺伝子診断を実施している。ベッドサイド検査と違いまだ十分簡便とはいいがたいが適中率を向上させることで多種同時測定系の臨床意義は高まっていくものと思われる。
    共同研究者:武澤 純1,2,神戸俊夫3,菊池韶彦31名大病院・救急部・集中治療室,2名大・院・救急医学,3名大・医・分子標的治療学)
  • 竹末 芳生
    セッションID: WS-3
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    Candida 属は 4 番目に高率な血流感染の原因菌であり,とくに治療の遅れが予後を不良とするため,より早期の治療開始が必要とされている.米国では Candida 属による colonization の段階で治療を開始する pre-emptive therapy や,さらに最近では抗真菌薬予防投与が,肝移植をはじめ重症患者を扱う外科 ICU で行われている.ここで深在性真菌症は,カテーテル関連性血流感染や呼吸器感染,尿路感染では経験することがあるものの,真菌性腹膜炎では通常見られるような腹腔内膿瘍を形成することは極めて少なく,その実態がなかなかつかめない.Critically ill 患者において,真菌による Tertiary(第 3 の) peritonitis を併発することは決して稀ではないが,腹部症状が顕著でなく,この疾患概念が日本では未だ定着していないこともあり,不明熱として扱われ見過ごされている現状がある.また外科領域でターゲットとなる感染部位が不明のまま抗真菌薬を empiric therapy で使用する場合も多いが,その一部にこの腹膜炎が関係していることが推察される.そこで,本発表では Primary,Secondary,Tertiary peritonitis の各病態における真菌感染の関与について概説し,併せて Candida 属による Tertiary peritonitis に対する治療戦略について述べることとする.
  • 有馬 陽一, 炭山 嘉伸
    セッションID: WS-4
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    術後真菌感染症の診断は困難であることから、従来より、危険因子、抗細菌薬に不応の発熱、β-D グルカンなどの血清学的診断、これらに監視培養の結果を加えた抗真菌薬の適応規準が用いられてきた。教室では、2000 年からこの適応で、FLCZ や MCFG の early presumptive therapy を行ってきた。今回、真菌感染症を疑い、抗真菌薬を投与した術後感染症例を検討し、あらためて、抗真菌薬の適応を検討した。
    対象・方法:2000 年 1 月から 2004 年 12 月までの教室消化器手術の術後感染発症例 278 例のうち、抗真菌薬を投与された、52 例を対象とした。これらにつき、リスクファクター、術後感染部位、投与までの抗細菌薬の投与期間と薬剤の種類、抗真菌薬投与の理由・投与期間・薬剤、最終病原菌、最終診断を検討した。
    結果:抗真菌薬投与開始時に疑われた感染部位では、カテーテル感染 11 例、腹腔内感染 41 例(うち縫合不全は 35 例、膵液瘻 6 例)であった。抗真菌薬投与までの抗細菌薬の投与は、平均 2.3 薬剤、11.7 ± 4.1 日。抗真菌薬投与の理由では、ハイリスク因子は「術後症例」、「血管カテーテル留置」、「抗細菌薬不応の 38℃ 以上の発熱」、β-D グルカン(ファンギテック G)の高値(平均 20.2 pg/ml)、「監視培養で真菌陽性」であった。最終診断は、カテーテル感染を疑われた 11 例中、カテーテル感染 5 例(真菌 0 例、CNS 4 例、MSSA 1 例)、腹腔内膿瘍が疑われた 41 例では、40 例が腹腔内膿瘍で、その原因微生物は P. aeruginosa 11株、MRSA 3株、E. cloacae 7株、B. fragilis 11株、Enterococcus spp. 18株、Serratia 4株、Candida albicans 1株)であった。腹腔内膿瘍が否定された 1 例は MRSA による椎間板炎であった。全体を通して最終的に真菌が関与したのは腹腔内膿瘍の 1 例のみであった。
    結論:消化器外科の術後感染症では、カテーテル感染を除くと、真菌感染は極めて希であった。カテーテル感染を除く消化器術後感染で、抗細菌薬不応の発熱は、最終的には縫合不全とそれに伴う腹腔内膿瘍、および膵液漏であり、繰り返し吻合部の状態を検討すべきである。ただし、抗真菌薬による副作用や原疾患に対する治療上の不利益はなかった。よって、真菌感染の診断が難しく、決定的な手法が確立されていない現在では、ある程度の early presumptive therapy は許容できると考えられた。
  • 木内 哲也
    セッションID: WS-5
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    脳死提供者からの死体臓器移植の進まないわが国では、始めに腎臓、続いて肝臓・小腸、さらに肺・膵臓と、心臓以外の臓器移植のほとんどの領域で生体提供者からの移植技術が発達してきた。なかでも生体肝移植は、その需要の大きさから国内の肝移植の 99% 以上を占め、世界で最もその経験の豊富な国として、欧米諸国に影響を与えるまでになっている。臓器移植医療における深在性真菌症対策の経験は、多くの領域で諸外国に数十年遅れて始まり、わずか十数年の内に、欧米諸国と同様の経験をたどってきている。 臓器移植後の深在性真菌症は、そのほとんどが CandidaAspergillus によるもので、その頻度は腹腔臓器では小腸・肝・膵移植で、胸腔臓器では肺移植で高いとされる。発生の危険は移植される臓器の種類だけでなく多くの因子に左右され、移植前の臓器不全と菌交代の程度、手術侵襲と初期の移植臓器機能、免疫抑制の強度、などが挙げられる。しばしば初期の感染兆候が弱く、抗真菌薬の使用に関しては免疫抑制剤を中心とした他の併用薬剤との相互作用が問題となる。 臓器移植領域においても Candida 感染は内因性の菌交代の影響が大きく、肝移植では消化管、肺移植では気道の colonization の影響が無視できず、前者では腹腔内への播種化も起こりやすい。Aspergillus 感染は気道を介した外因性因子(あるいはその後の colonization)の影響が大きく、胸腔内臓器移植に特異的と考えられがちであったが、欧米と同様に肝移植などでは少数ながらわずかずつ頻度が増えており、ひとたび顕在化するとその死亡率は高い。
     限られた情報ではあるが、移植臓器別に経験的危険因子が挙げられ、初期の一律予防 universal prophylaxis からハイ・リスク群での標的予防 targeted prophylaxis への移行が推奨されているが、初期治療の遅れが予後を決定づけることから先制攻撃治療 preemptive treatment の必要が言われながら、証左に基づいたハイ・リスク群の特定と先制攻撃治療の基準についてはまだ充分に証明されていないものが多い。 術前状態や手術因子、免疫抑制因子を含めた移植臓器の特性に基づいた症例の階層化を行い、臨床的裏付けに基づいたテーラー・メイドの指針、さらに免疫抑制減量を含めた安全で有効、かつ経済的な予防・治療の指針に到達するまでには、欧米でもわが国でも、多くの試案と検証を繰り返していく必要がある。
  • 立石 順久, 平澤 博之
    セッションID: WS-6
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】従来真菌感染症は血液,移植領域などの高度免疫抑制患者で問題となってきたが,近年の広域抗生物質の汎用や各種留置カテーテルの使用頻度の増加などとともに,重症疾患患者における免疫力低下が注目されるようになり,救急・集中治療分野においても大きな問題となってきている.しかし,真菌感染症の明確な診断基準はなく,さらにしばしば細菌感染も合併していることから,治療の開始基準や治療効果の判定に混乱がみられる.治療に際しても,アンホテリシン B は強い臓器傷害性をもつことやアゾール系の薬剤は,non-albicans カンジダやアスペルギルスに対する効果が期待しにくいことから,病勢が急速に進行し,臓器障害を伴いやすい ICU にて治療を受けている患者では治療法の選択が難しい.しかし,近年これまでの抗真菌薬とは作用機序の異なるミカファンギンが選択肢として加わったことにより,ICU 患者における真菌症治療に変化がみられるものと考えられる.そこで今回我々は救急・集中治療領域における深在性真菌症に対するミカファンギンの有効性及び安全性を検討したので報告する.
    【対象と方法】2003 年 7 月から 2005 年 3 月の 1 年 9 ヶ月間に当科関連 3 病院の ICU に入室した患者で,腋窩温で 37.5℃ 以上の発熱を有し、かつ診断根拠として 1)真菌学的検査又は病理組織学的検査により原因真菌が証明された患者(確定診断例),2) 監視培養で真菌が複数部位から検出された患者(真菌症疑い例),3) β-D-グルカン陽性の患者(真菌症疑い例)のいずれかの項目を満たす患者を対象とした.なお,2), 3) については別に定めた深在性真菌症発症のリスクファクターを有することを条件とした.前記の条件を満たす,34 例にミカファンギンの投与を開始しこのうち,投与期間が 5 日未満の症例など 5 例を除外し 28 例を対象に (I) 臨床症状・所見の改善度,(II) 真菌学的効果,(III) 胸部 X 線・CT・内視鏡検査等の画像所見の改善度,(IV) 真菌の血清学的検査所見の改善度を指標に効果判定を行った.
    【結果】15 例でカンジダが証明され,13 例は疑い症例であった.アスペルギルス症と確定診断が得られた症例はなかった.年齢は 62.5±19.0,男性 18 例,女性 10 例であった.投与量および投与日数は主治医判断とし,それぞれ平均 110.7±45.8 mg,13.0±6.6 日であった.カンジダ症の 11 例(73.3%),疑い症例の 8 例(80.0%)で有効と判定した.投与量による有効性の差はみられなかった.また non-albicans カンジダ 5 例中 4 例で有効であった.34 例中 10 例(29%)に因果関係は明確ではないが何らかの有害事象がみられ,肝酵素の上昇 4 例,皮疹 3 例,高ビリルビン血症 2 例等であった.いずれも生命に関わるような障害は認めなかった.
    【まとめ】救急集中治療領域の深在性真菌症に対するミカファンギンは高い有効率を示し,新たな治療法の一つとなりうるものと考えられる.
    共同研究者:織田成人,中西加寿也,奥 怜子,北村伸哉,森口武史,相川直樹
モーニングセミナー
病原真菌の観察法
  • 西本 勝太郎
    セッションID: M-1
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    皮膚糸状菌は寄生形態の単純さに比べ、培養では形態的に大きな差異を示す一群の真菌からなっており、他の菌種、たとえばアスペルギルス属や、生物学的性状に依存することの多い酵母の同定とは、異なったとらえ方が要求される。また原因菌の分離と同定を行う前に、その病変の性状から推定される原因菌種に的を絞って、検索を進めることができるという特徴も持っている。
     皮膚糸状菌症において、原因菌の種までの同定が求められるのは、
       1)珍しい症例の検索時
       2)疫学的調査
       3)難治例などで、原因菌の薬剤に対する感受性が必要とされる場合
     などがある。
      治療だけを目的とした場合、皮膚糸状菌症の診断は、カセイカリ鏡検によって比較的容易に確定することができる。カセイカリ鏡検の有用性はこれのみでなく、その寄生形態によって目的とする菌種を絞ることができ、寄生形態と、培養によってえられた皮膚糸状菌菌種との間に矛盾がないことも正確な同定のために必要である。
     同定の第一歩は、純培養の真菌をえることから始まる。臨床的な病型や、あるいは露出部の炎症性白癬などから推定される感染源によって目的とする菌種を絞り込み、場合によっては分離用の培地を選ぶことも考える。生えてきた菌の中から形態的な特徴にもとづいてコロニーを拾い上げ、純培養とする。
     真菌の「分類学」と「同定法」は別物である。皮膚糸状菌についてもこれは当てはまる。近年分子生物学的な手技が急速に取り入れられ、菌種の同定に際してもその有用性が確認されたとはいえ、肉眼的・顕微鏡的形態の特徴をキイとした菌種の同定はまだ基本的な手技として残る。皮膚糸状菌の特徴として、コロニーの形態が綿毛状から湿潤性に近いものまで幅広く、顕微鏡形態についても、大分生子、小分生子など菌種の特徴となる器官の産生能が、菌種によって極端に異なることがあげられる。また Trichophyton rubrum などは菌種内の変異が大きい。
     本セミナーにおいては、成書に記載された皮膚糸状菌のいくつかの菌種について、その形態的な特徴を他菌種との比較においてまとめ、同定法のポイントとして述べる。
  • 矢口 貴志
    セッションID: M-2
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    内科領域の主な真菌症として、カンジダ症、アスペルギルス症、クリプトコッカス・ネオフォルマンス症、接合菌症、新興真菌症が挙げられる。これらの原因菌のうち、以下のものについて解説する。
    1.アスペルギルス症原因菌
    アスペルギルス症原因菌として最も重要な菌種は A. fumigatus であり、原因菌の約 70% を占めている。その他、病原菌として頻度が高い種は A. nigerA. flavusA. terreusA. nidulans などである。また、近年、Aspergillus 属のテレオモルフ teleomorph (有性型)である NeosartoryaEmericellaEurotium 属に含まれる種が病原菌として報告されている。Aspergillus 属のコロニーは、分生子の形成にともない緑色、黒色、黄色、黄緑色、茶色、白色など菌種特有の色調を帯び、菌種によっては菌核を形成する。形態的には、分生子の連鎖構造である分生子頭、分生子形成構造の総称であるアスペルジラに着目する。とくに、分生子柄の先端部である頂のうの形状・分生子形成細胞(フィアライド)が単列もしくは 2 列であるか、分生子の形状、大きさによって種が分類されている。Aspergillus 属のテレオモルフは、アナモルフ(無性型)の形状によって属が分類され、種の分類は子嚢胞子の表面構造が指標となっている。
    2.接合菌症原因菌
    接合菌症の原因となる真菌は、RhizopusRhizomucorAbsidia および Cunninghamella 属にほぼ限られている。その中で、Rhizopus oryzaeR. microsporus var. rhizopodiformis が多く、ついで C. bertholletiae が分離される。Mucor 属はきわめて稀で誤同定もある。上記 4 属の分類の主な指標は、仮根の有無と位置、胞子嚢柄の分岐の有無、アポフィシス(胞子嚢柄の先端部分の構造)の有無、胞子嚢の形である。多くの接合菌類は性的にヘテロタリックで、性の異なる2つの株(+、 - )を交配することによって接合胞子を形成し、これは種の特徴を示している。
    3.新興真菌症原因菌
    新興真菌症の原因となる真菌として、Pseudallesheria boydiiPaecilomyces 属、Fusarium 属、スエヒロタケなどを供覧している。P. boydii は楕円形_から_紡錘形、平滑、褐色の子嚢胞子とScedosporiumGraphiumSporothrix 型の 3 種の分生子形成様式が特徴である。Paecilomyces 属は Penicillium 属によく類似しているが、コロニーの色調と、フィアライドの先端が細まり、ペニシリ(分生子形成構造の総称)が不規則、散開状になる点が異なる。
ランチョンセミナー 1
呼吸器真菌症の診断と治療
  • 二木 芳人
    セッションID: LI
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    呼吸器真菌感染症は、近年においても免疫不全患者の重大な合併症であり、又、肺に既存の器質的障害を有する患者にとっては最も難治性の感染症の 1 つである。昨今、新しい診断技術が臨床現場に導入され、その活用によって一部の真菌感染症では早期診断とそれに基づく早期治療が可能となり、予後や臨床経過の改善も得られるようになっている。さらに近年相次いで開発され臨床応用が開始された、あるいは開始されようとしている新規内用抗真菌薬は、その治療成功の可能性を拡大するものとして大いに期待もされている。しかし、他方、この領域における臨床的な検証試験は我国では不十分で、十分な根拠なく経験的な併用療法や高用量療法が容認されているのも事実である。逆に包括医療制度が進む高次医療施設では、経済的な側面から種々抑制がかかっている事も事実であり、エビデンスに裏付けられた、より論理的な抗真菌薬療法を実施していく事が、この問題を解決する最良の方法であると考えられる。昨今の目覚しい診断技術、治療薬の開発の裏に潜む問題点をこのセミナーでは幾つか明らかにしたい。
ランチョンセミナー 2
真菌の菌種同定への新しい試み
  • 槇村 浩一
    セッションID: LII-1
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    診断と治療が困難な真菌症に対する研究教育は、今日益々重要となっている。しかしこれに反して医真菌研究のために利用できる情報は限られていると言わざるを得ない。そこで、分散限局している医真菌研究・教育資材の効率的利用と、研究者相互の情報交換を計る目的で、病原真菌画像情報をデータベース化し、それらをインターネットサーバ上で公開することによる学術画像情報の国際的相互利用システムを開発し、「病原真菌データベース」(英名:Pathogenic Fungi Database、略称:PFDB)http://www.pfdb.com/ として公開を続けている。本データベースの独創性は、医真菌学及び病原真菌に関する貴重な画像データを世界各国の研究者から無償で提供を受け、起因菌別、疾患別に整理した構成のオンライン公開を行なうことによって、著作権を提供者に残したまま、世界研究者が 容易に(誰もが、自由に、無料で)利用できる知的基盤の整備を指向する点にある。本データベースによって、重要な研究分野でありながら研究者が少なく、研究教育に必要な高品質画像情報の入手が困難であった本研究領域の研究者間における相互援助/協力のシステムが構築できる。実際に国内外研究者より提供された画像情報の供覧を含めて、本データベースの利用と画像提供の実際について紹介したい。
  • 二宮 淳也
    セッションID: LII-2
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    爪白癬の起因菌同定は通常、サブローブドウ糖培地を用いた培養法によってなされているが、爪中の菌の多くは死菌であり、KOH 直接検鏡で陽性であっても培養成功率が低く、同定に至らないという問題点が、かねてより指摘されてきた。近年、皮膚糸状菌のリボソーム DNA 遺伝子の ITS 領域を PCR で増幅し、制限酵素分析によって同定する PCR-RFLP 法が、菌種の同定に簡便かつ迅速・正確な方法として注目されている。
    今回、すでに検出された菌の同定に留まらず、PCR 法のメリットの一つである、サンプル内に存在する微量の菌を検出・同定できるという点を、爪白癬においても活かすことができないか検証してみた。
    一定期間内に当院皮膚科外来を受診した爪白癬患者 100 例について、罹患爪のサンプルから直接、起因菌の DNA を抽出し、PCR-RFLP 法を用いて同定を行った。更にこれと同時に行った培養法と比較検討した結果を報告する。また、この PCR-RFLP 法の成否に関わる条件や問題点についても若干の検討を加えたのでお話しする予定である。
ランチョンセミナー 3
造血幹細胞移植時の真菌感染対策
  • 福田 隆浩
    セッションID: LIII
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    深在性真菌感染症は、造血幹細胞移植 (HCT) 後の感染症死亡の中で最多である。近年、発症頻度が増加している侵襲性アスペルギルス症 (IA) を中心に概説する。従来は fluconazole 予防・AMPH-B 治療が HCT 後の真菌感染対策のスタンダードとされていたが、免疫不全状態の HCT 患者では IA 発症後の生存率は 20% 以下であった。遷延性好中球減少、GVHD やステロイド投与などの危険因子がある場合、胸部 CT や血中ガラクトマナン抗原検査 (GM) を用いた IA の早期診断を試みて、治療が遅れないようにする点が重要である。Febrile neutropenia 時の empiric 治療において、liposomal AMPH-B、itraconazole、voriconazole、caspofungin などは、有効性の面で AMPH-B より劣らず、安全性が高いことが報告されている。Itraconazole の IV・OS や micafungin は、移植後の真菌感染予防において fluconazole よりも有効であると報告されている。また抗真菌剤 2 剤を用いた併用療法のデータや移植前に IA を合併した時の対策についても概説する。
    今後は抗アスペルギルス作用をもつ抗真菌剤の選択肢が増えるが、CT や GM を指標とした pre-emptive 治療などの真菌感染対策を確立していく必要がある。
ランチョンセミナー 4
新規抗真菌剤の治療戦略—短期治療によるQOL向上—
  • 比留間 政太郎
    セッションID: LIV-1
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    足白癬が難治である理由として、治療開始 1 から 2 週間後に、かゆみなどの軽減に伴い治療を中断し、再発を繰り返すためといえる。足白癬の治療効果促進のためには、患者コンプライアンスを向上させ、治療期間を短縮しても十分な効果を示す薬剤の開発が求められる。ルリコナゾールは、新規イミダゾール系抗真菌剤で、広域な抗真菌スペクトルと強力な抗真菌活性をもち、皮膚角層中で優れた薬物貯留性を示す。本薬の臨床試験は、外用抗真菌剤臨床評価法(日本医真菌学会)に基ずき、従来の薬剤塗布期間(4 週間)を半分に短縮して試験を実施した。第 III 相臨床試験では、ルリコナゾールクリーム 1% は 2 週間の薬剤塗布で対照薬(1% ビホナゾールクリーム)の 4 週間塗布に対して、真菌学的効果(76.1%)及び皮膚症状改善度(91.5%)の非劣性が検証され、塗布開始 2 週後の真菌培養成績では、対照薬に対して有意に高い消失率を示した。また、一般臨床試験、比較試験の短期間塗布試験でも、本クリームは、白癬及び皮膚カンジダ症・癜風に対して有効であり、液剤もクリームとの同等の臨床効果が得られた。副作用発現率は 2.5% であり、主なものは軽微な皮膚炎であった。ルリコナゾールクリーム 1%・液 1% は治療期間を短縮させ、患者コンプライアンスの向上が期待できる新しい外用抗真菌薬である。
  • 渡辺 晋一
    セッションID: LIV-2
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    近年優れた外用抗真菌薬が開発され、白癬患者の治療は容易になったはずであるが、水虫で悩んでいる人は多い。しかし現在市販されている抗真菌外用薬はいずれも優れた抗菌活性を示し、しかも副作用も少ないため、薬剤側に大きな問題点はない。しかも皮膚糸状菌に関する限り、薬剤耐性菌はない。そこで、水虫がなかなかよくならない原因としては、医師側の診断の間違いと患者側が中途半端な治療をしていることが挙げられる。
    今ある外用抗真菌薬は、入浴や皮膚のターンオーバーなどで皮膚から消失してしまうため、毎日外用しなければならず、特に足白癬の場合は角層が新しい角層に置き換わる 4 週間以上の外用を続ける必要がある。しかし大部分の水虫患者は忙しくなるとそのうちに外用を忘れてしまう。特に 2 週間も外用を続けると、痒みなどの自覚症状はなくなってしまうため、水虫患者の大部分は真菌が消失する前に外用を中止・中断してしまうことが多い。また一端足白癬が軽快してもしばしば再発を繰り返すために、よくならないと悩んでいるのかもしれない。以上から現在ある外用抗真菌薬の欠点はコンプライアンスが悪いということである。そこで新しい外用抗真菌薬に望まれているものはコンプライアンスの向上、つまりいかに治療期間を短縮できるかである。そこで今回、足白癬患者を対象としたアンケート調査を行い、足白癬患者の通院状況・薬剤使用のコンプライアンスの実態を明らかにした。
イブニングセミナー 1
アトピー性皮膚炎におけるマラセチアの関与
  • 杉田 隆
    セッションID: EI-1
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    好脂性酵母 Malassezia は、ヒト皮膚に高頻度に定着しアトピー性皮膚炎 (AD) の増悪因子として知られている。AD 患者皮膚の Malassezia 叢を非培養法を用いて高精度に解析したところ、M. globosa および M. restricta が主要構成菌種であることを見い出した(東医大・坪井良治 教授との共同研究)。菌叢は、患者血清中の特異 IgE 抗体値とも相関する。すなわち、M. globosa および M. restricta に対する IgE 抗体値は、他の菌種よりも有意に高い。このことから、Malassezia 属の中でもこれら 2 菌種が AD の増悪に重要な役割を演じてると考えられる。
     皮膚 Malassezia の除菌により特異 IgE 抗体値が低下し、AD の症状が改善される場合がある。抗真菌薬の中でもケトコナゾール (KTZ) とイトラコナゾール (ITZ) は、全ての Malassezia 菌種に対して低濃度で増殖を阻止するが他の抗真菌薬は菌種により感受性に差異が認められる。さらに KTZ/ITZ は、AD 治療薬であるタクロリムスと相乗作用を示し、各々の薬剤を併用することで MIC を低下させることができる。
     本セミナーでは、主に菌学、特異抗体および薬剤感受性の面から AD と Malassezia について論じる。
  • 坪井 良治
    セッションID: EI-2
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    アトピー性皮膚炎 (AD) はアトピー素因を背景に特定の部位に湿疹性病変を繰り返す疾患である。従来より Candida, Malassezia をはじめ種々の微生物の感染が AD の悪化因子としてよく知られている。Malassezia は皮膚の常在菌であるが、その定着により菌特異的 IgE 抗体価も上昇する。そのため、国内外で AD 患者に対してイトラコナゾール (ITZ) やケトコナゾール (KTZ) による抗真菌療法が実施されたが、皮疹の程度が周期的に変化する AD の特性から、抗真菌薬の有効性が確定されたとは言いがたい。
    最近、我々は明治薬大・杉田 隆 講師との共同研究により、AD 病変部に局在する Malassezia を菌由来 DNA を直接検出する方法で同定・定量することを報告した。その結果、M. globosa および M. restricta が主要分離菌種であり、健常者に比較し特定の遺伝型の Malassezia の定着が多いことも判明した。
    以上の結果を基に、成人型 AD 患者 20 例に、使用中の外用薬(ステロイドないしタクロリムス)に上乗せする形で 2% KTZ クリームを外用させたところ、Malassezia の除菌率は 90% 以上で、臨床効果も同程度に認められた。また、成人型 AD 患者に対して ITZ 100 mg/d を 4 週間内服投与させたところ、Malassezia の菌量と特異的 IgE 抗体価は減少し、臨床効果も認められた。明らかな臨床効果が認められない症例においても、使用中の外用薬の量を減量できた。
イブニングセミナー 2
酵母の薬剤感受性試験法の現状
  • 内田 勝久, 山口 英世
    セッションID: EII
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
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    1980 年代以降、深在性真菌症発生率の上昇、新規抗真菌薬の相次ぐ臨床導入、抗真菌薬(特にアゾール系薬)耐性菌の出現により、再現性が高く、しかも臨床的に意味のある薬剤感受性試験法の必要性が強く認識されるようになった。 米国 National Committee for Clinical Laboratory Standards (NCCLS) を中心として精力的に進められてきた酵母の感受性試験法に関する検討は、 NCCLS M27 と呼ばれる標準法として結実した。本法の再現性は言うに及ばず、Candida spp.とアゾール系薬とくにフルコナゾール (FLCZ) との組み合わせでは in vitro 感受性と in vivo 臨床効果との間に良好な相関性が見られることが確認されている。しかし上記の組み合わせ以外の病原真菌ー抗真菌薬の組み合わせについては in vitro - in vivo 相関性がほとんど得られていないこと、キャンディン系薬の感受性試験法が未だ標準化されていないなど、今後に残された未解決の問題も少なくない。 わが国では、最初の NCCLS 法である M27-P ガイドラインが発表された 1992 年頃から、本学会標準化委員会は当時国内で市販されていた薬剤を対象に標準法の作成作業を開始した。試験培地その他の基本的条件は M27-P に準拠したが、M27-P ではマクロ法のみを提示したのに対して、本学会法は自動化に対応可能なミクロ法を採用し、1995 年に発表し、今日に至っている。その後本法をそのまま製品化した保険適用検査キットが市販さている。一方 NCCLS ではミクロ法も併せて標準化し、現在はこのフォーマットが主流となっている。本セミナーでは、われわれの研究グループが Japan Antifungal Surveillance Program で得た成績と文献的考察に基づいて、酵母の薬剤感受性試験の現状と課題を解説するとともに、本学会法について終末点の判定基準を早急に改訂すべきであることを提言し、会員の方々の御意見を賜りたい。
ポスター
  • 鈴木 健一朗
    セッションID: P-1
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    研究用あるいは検査のレファレンス用などの微生物資源は大学、あるいは公的機関に設置されたカルチャーコレクションが供給してきた。最近では広く動植物、微生物、遺伝子を対象として生物資源センター (BRC) という概念が生まれ、BRC には収集・保存する生物資源とそれに付随する情報の充実、知的財産権や安全に関する知的基盤の整備によってバイオテクノロジーと生命科学を支援することが期待されている。NBRC は中核的 BRC を目指し、ゲノム解析部門、生物遺伝資源開発部門とともに国内における微生物資源の充実を図っている。また、昨年度より特許微生物寄託センターも設置された。NBRC は、平成 17 年 3 月末で、28,051 株の微生物を保有し、約半数を分譲対象としている。登録株の約 7 割が糸状菌と酵母であり、真菌類が多いことが特徴である。平成 16 年度には 6,144 株を分譲した。 NITE-DOB は、アジアの 11 カ国とアジアコンソーシアム (ACM) を構築し、アジアの微生物資源の保全と有効利用に重点を置いて国内外の微生物の利用環境の向上を進めている。現在 NBRC は、特にタイ (BIOTEC) および中国 (IM-CAS) とそれぞれ生物資源センターの連携を軸にした微生物資源の相互移転や共同研究を推進している。また、人材育成や OECD の専門家会合における BRC 運営の標準化や国際ネットワーク構築にも積極的に取り組んでいる。
  • 高島 昌子, 辨野 義己, 小幡 裕一
    セッションID: P-2
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    バイオテロ、生物多様性条約、知的財産権など生物材料の移転には多様な問題が関与している。知的財産権については平成 14 年に文部科学省から「研究開発成果としての有体物の取扱いに関するガイドラインについて」が出された。 理研バイオリソースセンター微生物材料開発室(理研 BRC-JCM)は、これら社会および研究のニーズに沿った世界レベルのバイオリソース事業を行うセンターの一員として活動している。
     理研 BRC は生物遺伝資源(バイオリソース)の寄託を受け、これを収集・維持・保存・増殖ならびに提供を行っているが、譲渡および寄託にあたっては、寄託者の権利を守るため、譲渡・寄託者と当センターとの間で「生物遺伝資源譲渡同意書」もしくは「生物遺伝資源寄託同意書」を、またリソースの提供の際には当該リソースの利用における権利と義務を明確化にするため、依頼者と当センターとの間で「生物遺伝資源提供同意書」を取り交わしている。BRC-JCM においても本年度からこれら同意書を導入し、譲渡・寄託者の権利の保護、および提供依頼者の権利と義務の明確化につとめている。提供同意書には、当該リソースの使用目的を明記していただくと共に、これを扱うため必要な環境が整っていること、第三者への転売および譲渡の禁止、リソースおよびこれに由来する産物のヒトへの直接使用の禁止等が記載されており、これらに同意いただいた機関に提供を行っている。
  • 三上 襄, 西村 和子
    セッションID: P-3
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    真菌医学研究センターでは,医真菌学研究の進展と伴い,多くの病原真菌と放線菌株を収集してきた.当センターが全国共同利用研究施設としてなり,国内外の研究者との共同研究がさらに活発となり,新興・再興感染症の原因菌を含む,多くの菌株が収集され,現在では,約 277 菌属,1,400 種の病原真菌と17菌属,95 種の病原放線菌が保存され,2004 年度では,病原真菌と放線菌株の総計は 12,600 株に達している.
     特に病原真菌の中で高度病原性輸入真菌については,DNA クローンを供給の主たるものとする方針から,Biosafety level 3 の 5 菌種の 111 株については DNA を調整して供給が可能な状態になるなど,バイオテロ対策も含めて新しい菌株保存機関としての体制を整備している.病原放線菌,特に Nocardia については,世界的な保存機関として,多くの菌株を保存しているが,真菌センターによって提案された多くの新種が含まれている.
    2002 年には,文部科学省の「新世紀重点研究創生プラン: RR2002」の実施に伴い,国はライフサイエンス分野において戦略的に整備することが必要な資源について,体系的な収集・保存・提供を行うことを目的に,「ナショナルバイオリソースプロジェクト」を立ち上げた.当センターは,病原微生物の中核的機関に選定され,阪大,東大,岐阜大(以上,細菌),長崎大(原虫)の 4 大学,理化学研究所 JCM および国立遺伝学研究所と協力して,プロジェクトを進めている.
    (協力者:福島和貴,亀井克彦,横山耕治,知花博治,佐野文子,矢口貴志,田中玲子,矢沢勝清,伊藤純子)
  • 浜野 圭一, 西垣 功一, 鈴木 基文
    セッションID: P-4
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    微生物資源センターまたは微生物カルチャーコレクションにおいて、保有する多数の微生物株の種同定および株識別は品質管理上、重要であり、そのための技術開発が必要である。昨年の発表では GP 法を病原性酵母の種同定および株識別への応用を試み、種および株レベルの識別が可能であることを示唆した。この時点における GP 画像 2 者間の類似度の比較(PaSS: Pattern Similarity Score)については、画像中の複数バンドの各々の特徴点(Spiddos: Species identification dots)を標準規格化した座標に反映し、総座標点の一致度で比較を行っていた。しかし、塩基配列情報を豊富に含むバンド形状を特徴点に置換する際の情報量の減少による識別精度低下の懸念があった。  そこで、今回は、GP 画像の識別精度の向上を目指して、標準規格化に用いる内部標準 DNA 試料をシングルからダブルへの改良とともに、PaSS 計算ソフトの改良を試みた。その結果、内部標準 DNA 試料のダブル化により、規格化精度そのものの向上が確認された。一方計算ソフトの改良については、バンド形状から塩基配列情報をより反映させることを目的として、バンド形状そのものの類似度で比較する方法、すなわち GP 画像を画素化してベクトルとみなし、対応するベクトル間の角度から類似度を算出する方法を開発した。このソフトを用いて、Candida albicans 12 株および Candida tropicalis 9 株について解析を行った結果、[1] Spiddos 使用時の計算結果同様、C. albicansC. tropicalis との間で明確なクラスタに分かれ、種レベルの識別には十分応え得ることを確認した。[2] 種内の比較においては株間のPaSS 値が 70% 以上となり、ゲノムの距離感を反映するような株識別が可能になった。[3] 計算操作が簡便になりユーザフレンドリーになった。【謝辞】本研究は、 JST の支援による埼玉県地域結集型共同研究事業(埼玉バイオプロジェクト)の一環として行われたものである。
  • ハナフィ アメド, 勝 正和, 三上 襄, 飯田 創治, 五ノ井 透
    セッションID: P-5
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    More than one hundred strains of Cryptococcus neoformans var. grubii (serotype A), mainly isolated from clinical specimens including AIDS patients in Japan, Brazil, Venezuela, Costa Rica, China, Thailand, Egypt, Italy, or Chile were used for molecular typing by means of microsatellites. Thirteen microsatellite regions were selected and specific PCR primers were designed to detect these. The DNA sequence analyses showed the presence of highly polymorphic regions in the repeats of two microsatellites. No variation was observed in the remaining 11 microsatellites. Based on the number of repeats, all strains of the var. grubii were classified into 6 molecular groups, and these were found to be associated with their geographical origins. Japanese isolates comprised a distinct microsatellite type based on either repeat, and were clearly differentiated from other Asian, European, North and South American and African isolates.
  • ビスワス スワラジット, 王 麗, 横山 耕治, 西村 和子
    セッションID: P-6
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    Mitochondrial cytochrome b genes (cyt b) of 8 strains of Candida kefyr were sequenced. Analysis of 396 bp nucleotide sequence revealed identical sequences in the intraspecies level. Phylogenetic analysis including published sequences of cyt b genes of common pathogenic Candida species revealed distinct position of C. kefyr. Either DNA or amino acid based tree conferred close relation of C. kefyr with C. glabrata. However, they differed from each other by 9.34 and 9.09%, respectively, for DNA and amino acid sequences. Specific oligonucleotide primers were designed from the differences of the closely related species for PCR based rapid identification of the fungus. These primers selectively amplified DNA only from C. kefyr; the DNAs of all other pathogenic Candida species tested, as well as those of medically relevant yeasts such as Cryptococcus neoformans, and Trichosporon cutaneum, were not amplified.
  • 横山 耕治, 王 麗, スワラジット ビスワス, 遠藤 成朗, 西村 和子
    セッションID: P-7
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    Histoplasma 属菌には,Histoplasma capsulatum var. capsulatumH. capsulatum var. farciminosumH. capsulatum var. duboisii を含み,有性世代の菌名である Emmonsiella capsulata も同菌種である.本属菌は輸入真菌症原因菌の一つで,Coccidioides immitis と共に危険度クラス 3 に属する.更に,人獣共通感染症の一つとして感染拡大の可能性が懸念されており,本属菌種の感染拡大防止,バイオテロを含めた速やかな対応のために迅速な診断や同定が必要である.診断には,深在性真菌症であるアスペルギルス症,カンジダ症,クリプトコックス症,マルネッフィ型ペニシリウム症などと区別する必要がある.我々は,ミトコンドリアのチトクローム b 遺伝子を解析し,主要な病原真菌と関連菌の解析を進め系統関係を明らかにしてきた.本属菌のチトクローム b 遺伝子の一部は本属菌に特異的な塩基配列を示し,この配列から特異的 PCR のためのプライマーを作製した.本プライマーを用いて PCR を行ったところ,本属菌の核酸に増幅反応を示し,深在性真菌症原因菌である,A. fumigatusC. albicansCr. neoformans から抽出した核酸において増幅は認められなかった.従って,Histoplasma 属菌の迅速同定が可能となった.
  • 高橋 容子, 鎗田 響子, 佐野 文子, 望月 隆, 亀井 克彦, 西村 和子
    セッションID: P-8
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    我々は 2001-2002 年に日本国内において Arthroderma benhamiae var. erinacei (ABVE) を 7 株分離した.6 株が交配型(+)で 1 株が(-)であった.このうち IFM 50998(+ 株)と IFM 51499(- 株)及び A. benhamiae African race (ABAF) の RV 30000(+ 株)と RV 30001(- 株)の 4 株を使用してそれぞれ交配を行い,その F1 progeny (F1) の 38-40 株について交配型,ITS 領域の遺伝子配列,ウレアーゼ遺伝子の一部につき遺伝子型を比較した.ABVE および ABAF 同士の交配により形成された裸子嚢殻は対峙線上に並列し,大きさは均一で,内部は子嚢胞子で充満していた.一方,ABVE と ABAF の交配による裸子嚢殻はいずれも ABAF 側にのみ形成され,小型で子嚢胞子の数は少なく,偽裸子嚢殻も多かった.それぞれの組み合わせにおいて,子嚢胞子を無作為に取り出し発芽させて得られた結果は ABAF 同士,ABVE 同士およびの ABVE(-)と ABAF(+)の F1 は交配型,ITS 領域の遺伝子配列,ウレアーゼ遺伝子とも親と同じ遺伝子型がほぼ 1:1 で出現した.一方,ABVE(+)と ABAF(-)の F1 は ITS 領域,交配型,ウレアーゼ遺伝子ともに ABVE 型が優勢であった.調べた遺伝子配列にはいずれの交配の場合も交雑は認められなかった.ABVE(+)と ABAF(-)の交配の場合,F1 の交配型ならびに遺伝子発現アンバランスから,この交配には何らかの致死的要因が働いていると推測された.よって Arthroderma benhamiae var. erinaceiA. benhamiae 種のなかで独立変種として区別するのが妥当と考える.
  • 河崎 昌子, 若狭 麻子, 安澤 数史, 田邉 洋, 望月 隆, 石崎 宏, 香川 三郎
    セッションID: P-9
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    白癬菌 Trichophyton 属の Arthroderma benhamiae 近縁種についてミトコンドリア DNA(mtDNA)および核 DNA(nDNA)の計 4 種類の遺伝子(ATPase gene, Actin gene, DNA topoisomerase II gene, rRNA gene)での塩基配列を基に系統関係を推定したところ T. erinaceiT. verrucosumT. mentagrophytes と共に A. benhamiae の anamorph と考えられる事は既に報告した。
    今回はさらに A. vanbreuseghemii, A. simii, T. tonsurans, T. interdigitale, T. rubrum, A. otae, M. gypseum 等について種内変異のある株を探し、それらについて上記遺伝子の塩基配列を決定し、系統関係を推定した。
    これまでのところ交配型の異なる株で僅かの塩基置換が認められるものがあったが、コロニーの肉眼的所見で T. mentagrophytes 様にみえる T. interdigitaleM. canis 様にみえる M. gypseum も、塩基配列における差異は見つかっていない。2 種の中間型の塩基配列を持つものも見つかっていない。今後さらに mtDNA および nDNA の異なる染色体上にあると思われる(連関していない)複数の遺伝子を調べ種内変異の範囲を検討して報告する予定である。
  • 河崎 昌子, 安澤 数史, 田邉 洋, 望月 隆, 石崎 宏, 西村 和子
    セッションID: P-10
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    これまでにミトコンドリア DNA の制限酵素切断片長多形(mtDNA-RFLP)によるタイプ分けで 15 タイプに分けられている Exophiala jeanselmei は核 DNA(nDNA)の rRNA 遺伝子の ITS 領域での ITS-RFLP によっても明確に区別された。
    1990 年以降当教室で遺伝子型を調べ得た E. jeanselmei 20 株について mtDNA-RFLP と ITS-RFLP 分析結果をまとめると E. jeanselmei タイプ 5(E. jeanselmei var. jeanselmei)が 11 株と最も多く、次いでタイプ 6 が 6 株、タイプ 10 が 2 株、Type 8 (E. jeanselmei var. lecanii-corni)が 1 株であった。これらはそれぞれ遺伝的には別のグループに属するがタイプ 6 とタイプ 10 には、このグループ独自の種名は記載されていないため、そのまま E. jeanselmei タイプ 6 または E. jeanselmei タイプ 10 と表記した。
    E. jeanselmei は遺伝的に極めて変異が大きいため ITS 領域の塩基配列を基に種を同定するには GenBank に登録されている配列の種名では混乱を招く場合があると思われる。出来るだけ近い将来に登録配列の種名が遺伝的に近いグループを示すものに修正される事が期待される。また配列を登録する時は、それが Type strain であるか否かを明記する事が期待される。
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