日本医真菌学会総会プログラム・抄録集
Print ISSN : 0916-4804
第50回 日本医真菌学会総会
選択された号の論文の133件中101~133を表示しています
ポスター(括弧内番号はセレクテッド・シンポジウム発表を示す)
  • 渡辺 哲, 佐藤 綾香, 豊留 孝仁, 落合 恵理, 永吉 優, 橋本 佳江, 亀井 克彦
    セッションID: P88
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    Aspergillus fumigatus による感染症は臓器・骨髄移植患者をはじめとする免疫低下宿主に突きつけられたダモクレスの剣である。本菌の病原因子は未だ明らかでなく、蓋し感染機構についても十分な理解がなされているとは言い難い。本感染症の症例数は近年増加の一途を辿っており、可及的速やかな対策が求められている。固より有効な抗真菌剤の開発が急務であることは論を俟たないが、加えて本菌の病原性を解明しそれを制御することが可能となれば、本感染症の制圧に資するところ大であると思われる。今回我々はマウスの免疫を抑制し、本菌を経気道的に2日間連続で接種し、接種終了直後、24、48時間後の肺病理組織を観察した。直後および24時間後の肺組織内では菌は大部分胞子のままであり、炎症細胞は好中球とマクロファージが主体であった。48時間後には菌糸形態へと変化し、菌体周囲の炎症細胞はマクロファージ主体となり、好中球が目立たなくなっていた。貪食された胞子も菌糸を伸長させており、細胞内において殺菌が十分に行われていないことを窺わせた。また、アポトーシスの惹起を思わせる像、核の破砕物と思われる顆粒状物質を多数貪食しているマクロファージも観察された。今回得られた結果は我々が過去本菌培養上清を用いて行った知見と併せ、本菌菌糸から産生される何らかの好中球機能抑制物質が生体内での生存に寄与している可能性を示唆していると思われる。(会員外共同研究者:河合利春)
  • 木村 雅友, 佐野 文子
    セッションID: P89
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    アレルギー性真菌性副鼻腔炎は本邦では稀な疾患であり、培養で真菌が同定されている症例もかなり少ない。今回アルテルナリアによるアレルギー性副鼻腔炎の症例を経験したので報告する。症例は32歳男性である。10年前から続いていた鼻閉感が最近増強し、頭痛をともなったので受診した。右鼻腔内にポリープの充満を認め、CTで右篩骨洞および右蝶形骨洞に軟部組織陰影が認められた。手術により上記副鼻腔の真菌塊様組織をできる限り摘除した。これらは病理組織学的に好酸球の島状集簇とシャルコライデン結晶が散見される粘液塊で、そのなかにほとんど無色の真菌菌糸が散見された。グロコット染色では分生子連鎖や隔壁のある菌糸が認められ膨化変性も見られた。提出された標本の培養でAlternaria alternataが分離された。
  • 押方 智也子, 釣木澤 尚実, 齋藤 明美, 安枝 浩, 田中 真紀, 高鳥 浩介, 谷口 正実, 秋山 一男
    セッションID: P90
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    症例は、79歳男性。66歳、非アトピー型喘息を発症。喘息診断時、同時に肺気腫を指摘された。78歳時、胸部異常陰影を指摘され、胸部CTにて左S1+2領域に約4cm大の空洞と内腔にfungas ballを認め、喀痰、気管支肺胞洗浄液では真菌は検出されなかったが、沈降抗体にてAspergillus flavusA. fla)陽性が確認されたため、肺アスペルギローマと診断し、ITCZ 100mg投与を開始した。ITCZ投与後も空洞は増大し、MCFG 300mg変更後も空洞の増大と浸潤影、胸水貯留を認めた。AMPH-Bは副作用で使用できず、VCZ 400mg使用後も効果は一時的であり、左肺の空洞は8cm大に増大、周囲の浸潤影、経気管的播種、胸水貯留のため呼吸不全が進行し死亡した。胸水産生量が増加した頃より喀痰を認め、真菌培養にて繰り返し大量のPenicillium digitatumP. dig)が検出された。また、経過を通じて血清と胸水でA. flaおよびP. digの沈降抗体陽性が確認された。沈降抗体の吸収試験ではA. flaおよびP. digが陽性であり、A. flaP. digの共通抗原性が示唆された。繰り返し培養でP. digが確認されたことより本症例の起炎菌はP. digであると考えられた。P. digが人体において病原性を呈した報告は極めて少なく、貴重な症例と考え報告する。
  • 竹本 浩司, 山本 寛, 吉田 耕一郎, 二木 芳人
    セッションID: P91(SV-1)
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】深在性真菌症の中で治療に難渋し、極めて予後不良な疾患の1つである侵襲性肺アスペルギルス症に対してL-AMBやVRCZは第一選択薬として使用される可能性が高い。今回、L-AMBとVRCZの本症に対する有効性を評価するため、L-AMBおよびVRCZのアスペルギルスに対するin vitro殺真菌活性と免疫不全マウスアスペルギルス呼吸器感染モデルにおけるin vivo抗真菌活性を検討した。
    【実験方法】(1)in vitro; A. fumigatus H11-20を培養液中で菌糸を伸長させた後にL-AMBあるいはVRCZを添加し(0.125-64 µg/ml)、被験菌の代謝活性を測定することで両剤のin vitro殺真菌活性を測定した。(2)in vivo; cyclophosphamideを用いて免疫不全状態を惹起させたddYマウスに107 conidiaの胞子を気管内に接種し、感染4時間後から3日間1-10 mg/kg L-AMB(1日1回)または10-40 mg/kg VRCZ(1日2回)を尾静脈内に投与した。感染14日後までの生存日数と感染3日後の肺内菌数を指標に両剤のin vivo抗真菌活性を測定した。
    【結果および考察】(1)in vitro; L-AMBおよびVRCZはいずれも殺真菌的に作用し、MIC以上の作用濃度では薬剤添加24時間後まで真菌の増殖を抑制した。 (2)in vivo; 最終生存率から求めたL-AMBのED50は5.51 mg/kgであり、VRCZのED50 (22.1 mg/kg)の約1/4と有意に低値であった。臨床用量の効果を比較すると、5 mg/kg L-AMB投与群の生存日数は10 mg/kg VRCZ投与群(ヒトに6 mg/kgの用量で投与した際のAUCと同等の値を示す本実験系での投与量)よりも有意に延長した。また、5 mg/kg L-AMB投与群の肺内菌数は10 mg/kg VRCZ投与群よりも有意に減少していた。以上のことから、本感染モデルに対するL-AMBのin vivo活性はVRCZよりも優れていると考えられた。
    【結論】L-AMBは侵襲性肺アスペルギルス症に対してVRCZと同等以上の治療効果を期待できることが示唆された。
  • 上原 雅江, 井出 京子, 永井 啓子, 羽毛田 牧夫, 佐野 文子, 亀井 克彦, 西村 和子
    セッションID: P92(SV-2)
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    Penicillium marneffei は東南アジアの一部の地域に分布する温度依存性二形性真菌であり、マルネッフェイ型ペニシリウム症の起因菌である。タイにおいて、AIDS患者の日和見感染症として本症は重要である。今回AIDS患者の血液より P.marneffei を分離した。症例は41歳、タイ人女性。 2005年8月、粟粒結核にてAIDS発症(CD4 79/μl)、4剤にて治療し経過は良好であった。同年11月、HAART開始。直後より40℃台の発熱が持続。2006年2月10日提出の血液培養より P. marneffei が分離されたため、マルネッフェイ型ペニシリウム症と診断して2月14日よりAMPH-Bを開始し、 28 日よりMCFG、続いて ITCZ に変更して加療中で、経過は良好である。PCRを含めた抗酸菌検査は、全て陰性であった。分離株のサブロー寒天培地、27℃培養の集落は始め白色フエルト状で、次第に黄色から黄緑色となり、培地内に深紅色色素を拡散、顕微鏡的には箒状体は散開性で先端フィアライドから分生子鎖を形成していた。BHI寒天培地、37℃培養の集落は細かい襞のある灰白色の酵母様で、顕微鏡的には短菌糸より構成されていた。なお、今回の菌種確定検査は千葉大・真菌センターで行った。本菌種による感染は、わが国では3例目であるが、培養に成功した例は本邦初と考えられる。AIDS患者の増加と海外交流の著増に伴い、輸入真菌症原因菌を分離する危険性が高いことを認識した。国籍、渡航歴などの患者背景は、輸入真菌症原因菌を同定するための重要な鍵である。   (会員外共同研究者:佐久総合病院総合診療科 高山 義浩)
  • 落合 恵理, 亀井 克彦, 佐藤 綾香, 渡辺 哲, 永吉 優, 豊留 孝仁, 渋谷 和俊
    セッションID: P93(SV-3)
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    我々はこれまでに、わが国のハウスダストから分離された黒色真菌Stachybotrys chartarumの胞子を経気管的に反復投与したマウスの肺動脈において中膜および内膜の肥厚による狭窄が惹起され、原発性肺高血圧症に類似した血管病変が生じることを明らかにした。S. chartarumには細胞毒性を有するsatratoxinを含むtrichotheceneを産生する株と、これを産生しない株とがあることが知られている。そこで、本研究ではこれら2株を用いて肺動脈病変形成における相違を検討した。
     S. chartarumの菌株は米国の住居から分離されたtrichothecene 産生株(ATCC201211)およびtrichothecene非産生株(ATCC201863)を用いた。各株の胞子懸濁液を2週間に3回ずつ経気管的にddYマウスに反復投与し、計6回の投与終了後7日目の肺およびその他の諸臓器について病理組織学的検討を行った。その結果、trichothecene産生株を反復投与した場合に約40%のマウスに肺動脈壁の肥厚あるいは内腔の狭窄が認められた。一方、trichothecene非産生株では肺動脈病変を有するマウスは認められなかった。このことより、S. chartarumによる肺動脈病変の形成にはtrichotheceneが関わっている可能性が示唆された。
  • 明見 能成, 菅田 辰海, 三上 襄, 村山 そう明
    セッションID: P94
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    背景と目的:好中球減少時の血液疾患患者に C. albicans で引き起こされたカンジダ血症を、それぞれフルコナゾール感受性株による症例と耐性株による症例に分けて臨床・真菌学的背景を比較検討した。方法:1997 年1 月より2001 年12 月までの5年間の症例で、基礎疾患、年令・性別、化学療法、抗生剤使用状況、好中球減少症、粘膜炎の状態、過去と入院時の抗真菌剤使用状況、監視培養結果を検討した。また、菌株は培養で C. albicans と同定し、amphotericin B, 5-fluorocytosine, fluconazole, itraconzole, miconazole, voriconazole, micafungin の7種類の抗真菌剤に対する薬剤感受性を、NCCLS M27-A法で調べた。さらに、それぞれの菌株のchromosomal DNAをPFGEで解析し、その相同性を検討した。結果:C. albicans によるカンジダ血症を生じた15症例のうち、10例がフルコナゾール耐性で、5例が感受性株であった。すべての患者において、アゾール投与中にカンジダ血症が発症し、口内炎の併発、発症前に監視培養が認められた。耐性株症例では全症例に、過去にアゾール系抗真菌剤の複数回投与が認められたが、感受性株症例では1例のみであった。また、PFGEの結果、15株に相同性はなく外因性の院内感染は否定された。耐性株は、第3世代アゾールであるvoriconazole (MICs >2µg/ml)を含めてすべてのアゾール系抗真菌剤(fluconazole > 64µg/ml, Itraconazole > 32µg/ml)に耐性であった。考察:C. albicansのアゾール耐性はC.kuruseiとは異なり、第3世代アゾールであるvoriconazoleにも交叉耐性を示す傾向があるので、amphotericin Bやmicafungin などの機序の異なる抗真菌剤の投与が治療上必要と思われる。Myoken Y et al. Haematologica 2006; 91: 287-88.
  • 長崎 洋司, 下野 信行
    セッションID: P95
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    症例は62歳女性。42歳時に強皮症と診断され、プレドニゾロン7.5mgの内服治療を受けていた。平成17年12月31日発熱、咳嗽出現し、近医で入院加療されていた。血液・中心静脈カテーテル(CVC)先端培養よりStaphylococcus capitisCandida albicans を検出し、胸部レントゲン・CTで多発結節性陰影を認め肺塞栓症と診断された。各種抗菌剤投与されるも改善乏しく、2月20日当科に転院した。転院時の心エコーでは大動脈弁に疣贅様の所見を認め、カンジダによる心内膜炎も疑われた。また、血液培養でもCandida albicansが分離された為、転院前のmicafungin(MCFG)からvoriconazoleに変更した。しかしながら病勢のコントロールが困難で、2月26日にCVC、尿カテを抜去したが、尿路感染からのPseudomonas aeruginosaの敗血症を合併した。その後、カンジダ血症に対してMCFGの併用、FFLCZの投与を行った。経口摂取、経管栄養が十分に行えず、やむをえずCVCを再挿入した。しかし、治療にもかかわらず3月10日死亡した。
    CVCの挿入は重症患者に多く、感染のハイリスクである。当院での過去9年間のカンジダ血症患者の検討では約98%の患者にCVCが挿入されており、そのうちカテーテルを抜去しなかった場合の死亡率は高率であった。本症例のようなカテーテル抜去困難例に対する治療法は今後十分に検討する必要がある。
  • 田中 たかし, 石橋 弘子, 奥富 隆文, 滝沢 登志雄, 若林 裕之, 山内 恒治, 斧 康雄, 山口 英世, 安部 茂
    セッションID: P96
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    ウシラクトフェリンのペプシン分解でできる抗菌ペプチド・ラクトフェリシンB(以下LFcinB)に着目し、口腔カンジダ症治療への応用を検討した。LFcinBについてのカンジダ発育阻止試験として、96穴平底マイクロプレートにC.albicansとLFcinBを加え37℃5%CO2存在下16時間培養後クリスタル紫法によりカンジダ菌糸形発育度を測定した。マウス口腔カンジダ症モデルでは、プレドニゾロンにより免疫を抑制したマウスにC.albicansを口腔内感染させた。LFcinBは飲料水に加え投与した。LFcinBの効果は生菌数、舌の状況および組織所見より評価した。 LFcinBの抗真菌活性の発現条件を試験管内で検討した。その結果 LFcinBの抗カンジダ活性は、培地中の塩濃度が0.1M以上高いと低下すること、また、0.67mg/mlのα2マクログロブリン(以下α2MG)の存在で阻害をうけることを見出した。また抗真菌剤フルコナゾールとの併用で、相加的抗真菌効果が認められた。一方、マウス口腔カンジダ感染モデルでの治療効果を検討した結果、0.04%のLFcinBを含む飲料水を3日間与えた群において3日目の口腔内の菌数が、無処置対照群の菌数8.3×105CFUに対し3.2×105CFUと低下し、マウスの舌症状の改善が認められることを明らかにした。 LFcinBを適切に用いることで新たな口腔カンジダ症に対する有効な予防、治療法の開発をめざしたい。
  • 久島 達也, 石橋 弘子, 西山 彌生, 山口 英世, 安部 茂
    セッションID: P97(SV-4)
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
     口腔カンジダ症モデルを用いて感染初期における舌背側表面へのC. albicans の付着から侵入までの過程について検討し、昨年度は、感染後6時間以内に侵入を始めることを報告した。今年度更に侵入の際のC. albicans の付着状態を明らかにした。
     酵母形C. albicans を免疫抑制状態のICR マウス舌へ綿棒で接種した。その結果、菌を含む粘液様物質が1時間よりも3時間群の舌表面でより明確となることがSEM像によって認められた。次に舌を生食およびtrypsin 液で洗浄後、破砕し、それぞれ洗浄液中および洗浄後に残存する生菌数を調べた。Total CFUは1時間よりも3時間群で増加し、3時間群の生食洗浄液の生菌数は1時間群と比べ減少したが、trypsin 洗浄液さらに舌ホモジェネートでは1時間群よりも増加した。それと対応してSEM でtyrpsin洗浄後の舌表面を観察すると、菌と付着物が1時間群ではほとんど見られないのに対し、3時間群では一部除去されずに残った。それらの除去されない菌は舌乳頭陰窩に特徴的に局在していた。また3時間群では菌糸が舌乳頭表面上や凝集塊中で発育する状態が認められ、さらに凝集塊から伸びた菌糸が舌組織表層に侵入した。
     以上より、接種後3時間で増殖した菌は凝集塊および菌糸を形成し、舌背側組織内へ侵入することが明らかとなった。その際、C. albicans は乳頭陰窩に顕著に認められ、生食洗浄だけで舌から遊離しない状態となっていた。
  • 天内 孝昌, 又賀 泉, 中村 康則, 仲村 健二郎, 久和 彰江, 青木 茂治
    セッションID: P98
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    【研究目的】Candida albicans(以下C. albicans)はヒト真菌症の主たる起因菌であるが、感染経路により種々の部位に炎症症状を引き起こすことが知られ、その一つに骨関節炎がある。ラットに経静脈的にC. albicansを投与し発症させた実験的カンジダ性骨関節炎はヒト・カンジダ性骨関節炎のモデルとして有用であるが、発症機序については不明な点が多い。その解明の一端として、炎症発症部位、発症の頻度および症状と経過について肉眼的に観察し、さらに骨および関節における形態的変化をマイクロCTにより経日的観察を試みた。
    【材料と方法】C. albicans 細胞を1個体当たりの投与容量が1×107個となるように接種用懸濁液を調整した。この菌液を4.5週齢のSD系雄ラット40個体の尾静脈に接種し、経日的に体重測定や外観所見および行動を観察した。発症確認後は関節における経時的骨形態変化をマイクロCTにより観察・解析を行った。
    【結果】菌接種群の60%に関節炎発症を認め、なかには同一関節に再発や多発性に発症したものも認められた。またマイクロCTによる観察では、炎症性変化と考えられる関節構成骨の形態変化が確認できた。
  • 植田 啓一, 宮原 弘和, 佐野 文子, 内田 詮三
    セッションID: P99
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    沖縄美ら海水族館で飼育中の既往歴無しの水槽内繁殖のバンドウイルカ(Tursiops truncatus:雄:4歳,体長:265cm,体重:220kg)に,白血球数の顕著な上昇を伴わない血液像中のリンパ球の減少が確認され,体温上昇,体重の減少,嘔吐が頻発した.真菌感染症を疑い血液検査,呼気,前胃内容液,糞便等の真菌学的検査で Candida tropicalis 等の non-albicans が検出され,X線検査で気管支に炎症像が確認されたことにより non-albicans Candida 感染症と診断した.初期治療薬としてフルコナゾール(FLCZ:4mg/kg/day 7日間と2mg/kg/day 3日間)の静脈内投与を行ったが,効果を認めず7日間の休薬後に,薬剤感受性試験で有効であったミカファンギンナトリウム(MCFG:3mg/kg/day)の投与を開始した.投与9日目の前胃内容液では Candida tropicalis 等の菌量が減少し,呼気、鼻腔内スワブからもこれらが検出されなくなったこと,一般状態が回復したことにより,イトラコナゾール(ITCZ:4mg/kg/day)の経口投与に切り替え,血液学的検査値が正常となった投与14日目で治療を終了した.鯨類において non-albicans 感染症は,重篤な症状を引き起こすことが判明し,人の治療と同様にMCFGで十分な治療効果を得ることが分かった.今後,千葉大学真菌医学研究センターとの共同研究により当館の飼育イルカの真菌の調査を行い,感染源や感染ルートの解明,感染症の予防,治療方法の検討を行う予定である.
  • 植田 啓一, 宮原 弘和, 真壁 正江, 内田 詮三
    セッションID: P100
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    近年鯨類で報告されている真菌症例は, 死後の病理検査により判明していることが多く,生存中に確定診断され,治療が行われた例は少ない.沖縄美ら海水族館では,1975年∼2005年の間に7個体8症例の真菌感染症が確認された.確定診断のもと治療を施し,現在予後観察中である症例は,バンドウイルカ(Tursiops truncatus) の Candida albicans による気管支炎・肺炎1例, バンドウイルカとオキゴンドウ(Pseudorca crassidens)の Candida albicans による前胃真菌炎症各1例,バンドウイルカの non-albicans 感染症1例,ミナミバンドウイルカ(Tursiops aduncus)の Aspergillus sp. による肺炎1例である.これらは全て水槽内繁殖の10歳以下の個体で,感染初期においては顕著な白血球の上昇を伴わず血液像中のリンパ球数の減少,呼吸音の濁音,呼吸孔内壁の白色化と嘔吐,短期間での体重の減少がみられた.血液生化学検査と呼気,呼吸孔内壁,前胃内容液,前胃壁,糞便の真菌学的検査,内視鏡による食道,前胃壁の観察,肺野のX線検査により確定診断を行った.真菌症発症の原因としては,幼少期からの広範囲抗菌薬使用による菌交代,耐性菌の発現,その他ストレス等による体力,免疫力の低下が関係していると推測された.今後は他の研究機関と協力し,飼育鯨類の常在真菌の調査等を行い飼育,健康管理に反映させる予定である.
  • 小川 晴彦, 藤村 政樹, 槙村 浩一
    セッションID: P101(SV-5)
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    (背景)担子菌(Basidiomycetes:BM)の関与が疑われ、喀痰好酸球が増加する難治性アトピー咳嗽(AC)の経験から、我々は1)アレルギー性気道疾患におけるBMの即時型皮内反応陽性率が健常人より有意に高いこと、2)慢性咳嗽患者の咽頭真菌培養で、BMの検出率が Candida に次いで高いこと、3)BMによる難治性ACでは抗真菌薬が有効であることを報告してきた。(目的と対象)喀痰真菌培養でBMが検出された8名の慢性咳嗽患者の臨床像を明らかにし、分離株を菌種レベルまで同定する。(結果)症例は20歳から68歳。男性5名、女性3名。咳嗽に関するガイドラインに基づくと、AC3名、咳喘息3名、診断不能2名であった。検出されたBMは形態学的同定が不能であり、クランプも見いだせなかったので、分離菌株の28SrDNA塩基配列を解析したところ、全株が Bjerkandera adusta (以下BJA)であることが判明した。また全例、抗真菌薬が咳嗽に有効であった。(結論)20,000種以上存在するBMのなかで、BJAは慢性咳嗽の原因もしくは増悪因子として注目すべき環境真菌である。
  • 山本 摂也, 宇野 潤, 深井 俊夫, 三上 襄
    セッションID: P102
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】抗真菌活性を有する物質を各種真菌の培養液を用い抗Aspergillus fumigatus活性を指標に探索した結果、ある種の糸状菌からA. fumigatus,Candida albicans,Cryptococcus neoformansなど広い真菌に対し抗菌活性を示すアルケニルベンゼン(alkenylbenzene)誘導体を見いだした。今回は、この物質の病原真菌に対する抗真菌活性を中心に化学構造と生産菌について報告する。
    【方法】抗真菌物質生産真菌をポテト寒天培地(Potato Dextrose Agar)にて静置培養した後、菌体を酢酸エチルで抽出し、アルミナカラムクロマトグラフィーと分取薄層クロマトグラフィー等の分離精製により活性物質を単離した。構造は、NMRおよびMALDI-TOF-MSを用いたマススペクトルにより解析した。抗真菌活性は、MIC値として96穴のマイクロプレートを用いた微量液体希釈法により測定した。生産菌は、形態学的検討とribosomal RNA遺伝子の5.8S rDNAを含むITS(internal transcribed spacer)領域の塩基配列を解析中である。
    【結果】抗真菌活性物質は数種以上見いだしているが、その主要物質はNMR等の結果からアルケニルベンゼン(alkenylbenzene)誘導体であった。本物質のMIC値はA. fumigatus に1.0-2.0μg/ml,Tricophyton mentagrophytesに1.0μg/ml, C. albicans に0.125-0.25μg/mlおよびCry. neoformans に0.5-1.0 μg/mlであった。
  • Bong Joo Parko, Jong Chul Park, Hideaki Taguchi, Kazutaka Fukushima, S ...
    セッションID: P103
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    Epigallocatechin-gallate (EGCg), a main constituent of tea catechins present in green tea extracts, is known to possess both direct bactericidal activity and the ability to potentiate the effects of certain antibiotics. This is the first report to investigate the antifungal activity of Candida albicans and non-albicans Candida spp. to EGCg and to compare with six antifungal agents, amphotericin B (AMPH), fluconazole (FLCZ), flucytosin (5FC), itraconazole (ITCZ), micafungin (MCFG), and miconazole (MCZ), using a method following the National Committee for Clinical Laboratory Standards (NCCLS) M27-A guidelines. Among the tested species, C. glabrata exhibits the highest activity to EGCg (MIC50, 0.5–1μg/ml and MIC90, 1–2μg/ml) compared favorably with FLCZ, although they were slightly less active than to AMPH, 5FC, MCFG, ITCZ, and MCZ. C. guilliermondii and C. parapsilosis (MIC50, 1–4μg/ml and MIC90, 2–16μg/ml) were also active to EGCg, although they appear to be slightly less susceptible to EGCg than C. glabrata and the other antifungal agents tested. Moreover, the activity of C. krusei strains (MIC50, 2μg/ml and MIC90, 4–8μg/ml) to EGCg was approximately 2 to 8-fold higher than those of 5FC and FLCZ. Our data indicate that EGCg can inhibit clinically pathogenic Candida species, although the concentrations of EGCg for antifungal activity were slightly higher than those of tested antifungal agents on the whole. Based on these results, we suggest that EGCg may be effectively used as a possible agent or adjuvant for antifungal therapy in candidiasis.
  • 福島 和貴, 笠原 宏之, 滝澤 香代子, 細江 智夫, 河合 清, 河合 賢一
    セッションID: P104
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】抗真菌剤の開発が求められていることから,我々は真菌由来の新規骨格を有する抗真菌性物質を探索している。今回,Eupenicillium shearii IFM54447の新規代謝産物としてユニークな構造を持つeushearilide (1)を単離し,その化学構造,抗真菌活性,また作用機序の一部を明らかにしたので報告する。【方法および結果】E. shearii IFM54447を米培地 450 g(米150 g 入りルー瓶 3 本)で25 ℃,21日間培養した後,CHCl3-MeOH (1:1) の混合溶媒で抽出した後,酢酸エチル-水で液液分配を行い,酢酸エチル抽出エキス15 g を得た。本抽出物をシリカゲルクロマトグラフィーおよび逆相HPLCによる分離精製を繰り返すことで,eushearilide (8 mg) を得た。positive FAB-MS (C29H54NO6P),1H, 13C, 31P-NMRおよび各種二次元NMRスペクトルから, (1)の構造を24員環エステルとコリンリン酸エステルであることを明らかにした。(1)はCandida, Cryptococcus, Aspergillus, Trichophyton spp. など多くの病原真菌に有効であった。また(1)は,ミトコンドリアの強烈な膨潤を誘起し,電子伝達酵素の阻害によるミトコンドリア毒性を示し,阻害部位は,阻害剤が珍しいComplex IVと考えられた。
  • 南條 育子, 古賀 裕康, 坪井 良治
    セッションID: P105
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】外用抗真菌薬の選択にあたり,in vitro 抗真菌活性は有用な情報となる.しかし,標準化された測定法により市販薬剤の in vitro 抗真菌活性を比較検討した報告は少ない.そこで我々は,糸状菌ならびに酵母の標準化試験法を用いて,表在性真菌症の起因菌である皮膚糸状菌 (Trichophyton属菌種) とCandida albicans に対する外用抗真菌薬11剤の in vitro 活性を比較検討した. 【材料および方法】T. rubrumT.mentagrophytes および C.albicans は,保存株を各10株使用した.外用抗真菌薬として,ルリコナゾール(LLCZ),ラノコナゾール(LCZ) ,ビホナゾール(BFZ), ケトコナゾール(KCZ),硝酸ミコナゾール(MCZ),塩酸ネチコナゾール(NCZ),クロトリマゾール(CTZ), 塩酸テルビナフィン(TBF) ,塩酸ブテナフィン(BTF),塩酸アモロルフィン(AMO) およびリラナフタート(LNF)の11剤を用いた.薬剤の最小発育阻止濃度(MIC)を,皮膚糸状菌については本学会の提案法,また C. albicans についてはM27-A2法(NCCLS)の各微量液体希釈法で,それぞれ若干の改変を加えて測定した.【結果および考察】アゾール系薬剤であるKCZ,MCZ,BFZ,NCZおよびCTZの活性は,皮膚糸状菌に対しては薬剤間に大きな差はみられなかったが,C. albicans に対しては差がみられ,KCZの活性(MIC90:0.0078μg/ml)が最も強かった. TBF(アリルアミン系),BTF(ベンジルアミン系)およびLNF (チオカルバミン酸系) は,皮膚糸状菌に対してアゾール系薬剤より強い活性を示す傾向にあり,中でもTBF(Trichophyton spp.MIC90:0.016μg/ml)で強かった.いずれの薬剤も C. albicans に対する活性は上述のアゾール系薬剤より弱かった.AMO(モルホリン系)の活性は,いずれの菌種においてもアゾール系薬剤と大きな差はみられなかった. LLCZおよびLCZは,他のアゾール系薬剤と異なり,皮膚糸状菌に対して強い活性を示し,TBFとの比較においても勝った(Trichophyton spp.MIC90:いずれも0.002μg/ml).特にLLCZの活性は最も強く,白癬の主要病原菌である T.rubrum に対するMIC範囲は≦0.00012 から 0.00024μg/mlと極めて低かった.LLCZおよびLCZは C. albicans に対しても高い活性(MIC90:いずれも0.13μg/ml)を示し,外用抗真菌薬として優れた in vitro 抗真菌活性を有すると考えられた.
  • 西山 彌生, 蓮見 弥生, 山口 英世, 安部  茂
    セッションID: P106
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    ポリエン系抗真菌薬アムホテリシンB(AMPH)は幅広い抗真菌スペクトルと強い抗真菌活性を示すことから、1962年に上市されて以来、現在でも深在性真菌症治療薬のゴールドスタンダードとされている。AMPHは真菌の細胞膜エルゴステロールと結合して、膜の機能障害を引き起こす。しかし、ヒト細胞膜を構成するコレステロールに対しても親和性を有するために、毒性が問題となっている。最近、AMPHの抗真菌活性を維持しつつ副作用を軽減させたリポソーム製剤アムビゾームが国内においても臨床導入されるに至り、その有効性が期待されている。一方、真菌細胞に対するAMPHの膜障害作用については数多くの報告があるものの、真菌の細胞形態にどのような影響を及ぼすかについてはほとんど知られていない。そこで、我々は A. fumigatus を試験菌として、AMPH作用後の微細形態について検討した。MIC濃度のAMPHを作用させた場合には、菌糸の不整形化、菌糸先端の膨化、破裂像が観察された。細胞内微細構造の変化としては、隔壁の形成異常、細胞膜の剥離・断裂・小胞形成、およびミトコンドリアの崩壊・溶解像が認められた。これらの結果から、AMPHが Aspergillus 菌糸に激しい形態変化を引き起こすことによって殺真菌効果を発揮していることが明らかとなった。今後、さらに詳細な作用メカニズムの形態学的検討を行う予定である。
  • 槇村 浩一, 金子 孝昌, 菅又 美穂, 山口 英世, 安部 茂
    セッションID: P107
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    真菌感染症の診断、起因菌の同定、および感受性等の性状検査を施行する上で、菌株の培養と分生子の回収等の操作は必須である。そこで、気道感染症またはアレルギー起因菌となる糸状菌等病原真菌から、(1)分生子を環境への飛散を伴うことなく回収することにより、植え継ぎ、あるいは抗真菌薬感受性試験に利用でき、(2)また必要に応じてアルコール等を用いた固定を行う事によって、菌体曝露の危険なく遺伝子解析等を可能にする「安全培養管」を開発したので報告する。本培養管は、スクリューキャップ中央に注射針による貫通可能なブチルゴムを有したクロラムフェニコール添加YM寒天斜面培地である。このゴム部を介して分生子回収液(0.05% Tween 80添加生理的食塩水)または、菌体固定液(エタノール)を開封することなく注入することが可能となり、実験室内の汚染を防止できる。本培養管の安全性(培養管内封じ込め)を確認するため、, Aspergillus flavusTIMM2935を本培養管内にて培養(豊富な分生子着生を確認)後、安全キャビネットの試料保護試験法に準じて継代培養操作、ならびに試料固定操作を行い、分生子が環境中に飛散しないことを確認した。本培養管を用いることによって、糸状菌の取り扱いが困難であった一般微生物検査室においても、感染、感作、または実験室環境汚染を恐れることなく取り扱うことが可能となった。
  • 高木 大輔, 大楠 美佐子, 藤井 貴明, 川本 進
    セッションID: P108
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    Cryptococcus neoformans は免疫力の低下している患者、特に日本において増加傾向にあるとされるAIDS患者にとって致命的な感染症を引き起こす酵母様真菌である。本菌に関しては、2005年全ゲノムの解読が完了し報告されたが、プロテオーム解析などタンパク質に関する報告はほとんどない。酵母のモデル生物であるSaccharomyces cerevisiaeにおいては、ゲノム情報のみならず、タンパク質解析の手法はすでに確立されている。しかし、本菌は莢膜を持つこと、細胞壁組成がS. cerevisiaeとは異なることなどから、従来の酵母からの抽出法では回収率が十分ではない。そこで、今回我々は本菌に適したタンパク質抽出法の検討を行った。菌株は当センター保存のC. neoformans数株を用いた。細胞破砕法として、酵母破砕に適しているとされるガラスビーズによる破砕を中心に、凍結乾燥法と組み合わせたビーズ破砕や乳鉢による破砕、フレンチプレスによる破砕等の方法を検討し、細胞の破砕率とタンパク質の回収量を比較した。また、ガラスビーズによる破砕では、ビーズの直径、破砕容器内充填量、タンパク質溶解bufferと菌体量の比率などの条件検討も行い、C. neoformansのタンパク質回収に最適な細胞破砕条件を得たので報告する。
  • 金子 孝昌, 槙村 浩一, 塩田 量子, 杉田 隆, 渡辺 晋一, 山口 英世, 安部 茂
    セッションID: P109(SVI-1)
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    本検討は,1)生化学性状を利用したMalassezia属菌種簡易同定法の開発,および2)本法を利用した,ヒト体表における本菌の分布を調べることを目的とした. 我々は,発育必須成分およびTween40を添加した酵素基質培地(クロモアガーマラセチア/カンジダ:CHR)を用い,Malassezia属9菌種を鑑別できる生化学性状を利用した同定法を開発した. 本法はCHRにおける沈殿物形成性,各種鑑別培地(サブローブドウ糖斜面培地,CremophorEL斜面培地,Tween60エスクリン斜面培地)における発育性,およびカタラーゼ試験を利用するものである. 本法はMalassezia属9菌種11株(type and reference strains)を用いて確立した.これに基づいた本菌体表分布の検索から,以下の結果を得た. i)CHRは,従来用いられてきた改良DIXON培地およびオリーブ油重層サブローブドウ糖斜面培地と比べ,Malassezia発育支持能,雑菌抑制能および分離能に関して最も優れていた. ii)本法を利用することにより,臨床分離株の同定が可能であった. iii)調査したアトピー性皮膚炎や脂漏性皮膚炎,尋常性乾癬の中で,特に脂漏性皮膚炎においてM. restrictaが優位菌として分離された. iv)ヒト体表におけるMalassezia属菌種分布状況を調査したところ,M. slooffiaeが優位菌として外耳道微生物叢を構成していることが示唆された. 以上より,本法はMalassezia属菌の同定ツールとして有用性が高いことが示された. 本菌の病原性ならびに宿主における生態学的知見が得られる可能性が示唆された.
  • 豊留 孝仁, 落合 恵理, 渡邉 哲, 田口 英昭, 亀井 克彦
    セッションID: P110
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    ヒストプラズマ症は輸入真菌症の一つとして知られている。近年、流行地との往来増加などにより、わが国での報告例が増加しており、国内感染例を含めて今後も更なる増加が予測されている。このような背景からヒストプラズマ症の診断・治療も一層重要性を帯びてくると考えられ、更なる知見の積み重ねが求められている。現在、迅速診断の一つとして、ヒストプラズマH抗原及びM抗原特異抗体検出による血清診断が行われている。しかし、厚生労働省研究班は現在市販されている診断試薬では国内の症例に対して十分な感度が得られなかったことを報告している。我々は血清診断法改良のための基礎的解析として、新規ヒストプラズマ抗原の探索を行っている。菌体タンパク質の抽出は酵母形としたH. capsulatum CDC105株を純水中で懸濁・洗浄後に0.1% Triton X-100中で激しく攪拌することにより行った。得られたタンパク質混合物を二次元電気泳動により分離を行い、真菌医学研究センターにて保存されているヒト患者血清を用いて抗原タンパク質の検出を行い、患者血清中抗体と反応する9つのタンパク質を見出すことが出来た。これらのタンパク質を同時に電気泳動分離を行ったゲルより切り出し、TOF-MS/MSにより分析を行った。解析を行った結果から、9種類のタンパク質が推定された。現在、これらタンパク質について一次構造を確認中であり、これも含めて報告を行う予定である。
  • 上村 なつ, 槇村 浩一, 安部 茂
    セッションID: P111(SVI-2)
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    Pneumocystis jiroveciiは培養困難な真菌であり、鏡検検出率が低い。近年ではヒトからヒトへの水平感染や健常者でのcolonizationが報告されている。その補助診断法としてPCR(polymerase chain reaction)法が活用されているが、簡便性に欠ける等の問題点がある。それを解決する目的で新規遺伝子増幅法:LAMP(Loop-mediated Isothermal Amplification)法が開発された。本法は、1種類の酵素を使用して一定温で反応が進行するDNA増幅法である。6領域を認識する4種類のプライマーにより感度および特異度が高く、短時間の検出が可能である。今回、18S ribosomal DNA塩基配列から本菌特異的なプライマーを設計し、LAMP法によるPneumocystis症の遺伝子診断法を開発した。鋳型量100コピー/tube以上あれば30分以内で安定な検出が可能であった。Candida属やAspergillus属等の他の真菌との間に交叉反応は認めなかった。リアルタイム蛍光検出時に熱解離曲線の解析を行えば、非特異的な反応やプライマーダイマー増幅を鑑別しうる。反応結果は、リアルタイム解析の他に、蛍光試料や濁度の利用による目視判定も可能であり、簡便な方法である。気管支肺胞洗浄液や喀痰等の臨床検体における検討結果も併せて報告する。
  • 梅山 隆, 佐野 文子, 亀井 克彦, 新見 昌一, 西村 和子, 上原 至雅
    セッションID: P112(SVI-3)
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    【背景と目的】コクシジオイデス症は感染症法第四類感染症全数把握疾患に規定された唯一の真菌症である。Coccidioides属は感染力が強いため健常者でも感染する例が多く、検査中の感染事故が起こりやすい。本研究は、コクシジオイデス属真菌を特異的に検出するPCR法プライマーの開発を目的として行った。【方法と結果】まず、C. immitisのゲノム配列より、PCRで増幅する領域をランダムに選別した。その領域を増幅するための20 merのプライマーを設計し、実際にC. immitisのゲノムDNAに対してDNA増幅を行った。増幅可能であったプライマーセットのうち、Coccidioides属以外の真菌とは反応しない組み合わせを選出した。この操作を繰り返すことにより、最も高い特異性を示すプライマーセットCoi9-1を選別した。プライマーセットCoi9-1を用いたPCR検出系により、19株のCoccidioides属より増幅可能であった。また、52種137株のCoccidioides属以外の病原真菌とは反応しなかった。予想外にも、5株のC. immitis由来のDNAより720 bp、14株のC. posadasii由来のDNAより630 bpのDNA断片を増幅することが示されたことから、PCR検出法によりアガロースゲル電気泳動による解析のみで2菌種の識別が可能になった。【考察】本研究により開発したプライマーセットにより、真菌培養を介さない簡便かつ迅速なコクシジオイデス症診断が臨床現場で可能となり、検査室事故の危険性を軽減させることが出来る。また、疫学研究にも高い価値を見出せると考えている。
  • 内田 隆夫, 槇村 浩一, 安部 茂, 飯島 正文
    セッションID: P113(SVI-4)
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    [目的]白癬の培養陽性率は必ずしも高くはない。また、菌株によっては典型的な表現形に基づいた手法では同定不能の菌株も少なくなく、正確な疫学調査のためには病巣からの直接の菌種同定法が望まれていた。そこでPCRを用いて臨床検体から直接糸状菌DNAを検出し、nested PCRにより菌種の同定を試みた。[材料・方法]今回我々は平成17年5月16日から同年8月17日までに川崎社会保険病院を受診した患者の臨床検体(初診、真菌鏡検査にて菌糸が確認されたもの)を試料として従来の形態学的同定法とPCR法の両方を行った。また、培養された検体を試料としたPCR法も行い、それぞれの陽性率、同定された菌相を比較し、それぞれの同定法の有用性を検討した。[結果]134人の206検体(皮膚126、爪80)について培養陽性率は57%(皮膚71%、爪34%)であった。皮膚のうち分けは Trichophyton rubrum 42検体、T. mentagrophytes 40検体、同定不能6検体、発育不良3検体(T. rubrumT. mentagrophytes の合併例1検体を含む)であった。爪のうち分けは T. rubrum 23検体、T. mentagrophytes 2検体、Candida albicans 1検体、同定不能1検体であった。培養された検体を試料としたPCR法とは38/117検体で形態学的同定法と不一致であった。臨床検体を試料としたPCR法についても発表する。[会員外共同研究者:ヤマト科学株式会社 石原克人]
  • 海老原 睦仁, 槇村 浩一, 佐藤 公美子, 坪井 良治, 安部 茂
    セッションID: P114(SVI-5)
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    爪真菌症の起因菌は培養検査で分離同定されるが、培養陽性率が低いために、十分な検討は成されていないのが現状である。そこで今回われわれは、爪真菌症の起因菌同定に寄与できる診断法としてnested PCR法を用いたdermatophyte及びnondermatophyte特異的遺伝子診断法を開発し、本症の臨床検体に対する非培養系による起因菌同定の可能性について検討した。菌特異的プライマーの設計にあたっては本邦で爪から分離される頻度が比較的高いと思われる各菌種を選定した。すなわちdermatophyte ではdermatophyte共通プライマー、T. rubrum、T. mentagrophytes、 nondermatophyteではAspergillus spp、Scopulariopsis brevicaulis、Fusarium solani、Fusarium oxysporum、Fusarium verticillioides の各種プライマー対を28S rDNA塩基配列から設計した。標準菌株および臨床分離株からDNAを抽出し、個々のプライマー対を用いたPCR法の特異性を確認後、未治療の爪真菌症患者の臨床検体50例に対しnested PCR法を施行した。その結果、78%(39/50例)にdermatophyte、34%(17/50例)にnondermatophyteを検出し、重複例を18%(9/50例)認めた。菌種としては、既報の分離培養の結果と同じくT. rubrumが高頻度に検出されたが、nondermatophyteの単独検出例も8例認められた。臨床像もあわせて報告する
  • 安澤 数史, 河崎 昌子, 望月 隆, 石崎 宏
    セッションID: P115
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
     爪白癬では培養率が低く、起因菌の同定は難しい。私達はPCRを用いて爪から直接白癬菌DNAを増幅し、これのRFLP法による菌種同定を行っており、その結果を昨年の総会にて報告した。今回は昨年以降増えた検体も合わせて報告する。
     金沢医科大学皮膚科外来において爪白癬が疑われる受診者108人より163の爪を得た。1つの検体は1つの趾爪から採取した為に、同一人物の他趾爪の検体を含む。全検体について、KOH検鏡法、PCR-RFLP法、培養法を行いその結果を比較した。PCR-RFLP法では、検体からDNAを抽出しPCRに用いた。rRNA遺伝子に挟まれるITS領域を増幅し、その制限酵素処理後の泳動パターンによって菌種の同定を行った。培養はクロラムフェニコールを含むサブローデキストロース寒天培地上で室温1ヶ月間行った。培養された菌の同定はコロニー形態、顕微鏡所見、PCR-RFLP法の結果によった。
     全検体の結果は、KOH法陽性127(80%)検体、培養法陽性30(18%)検体、PCR-RFLP法陽性118(72%)検体となった。KOH法陽性検体の82%、KOH陰性検体でも39%で菌種を決定できた。菌種については受診者別でまとめると、Trichophyton rubrumT. mentagrophytes:両種の比はPCR-RFLP法では60:22:2人となり、培養法では14:12:0人となった。
  • 安澤 数史, 河崎 昌子, 望月 隆, 石崎 宏
    セッションID: P116
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    他演題、PCR-RFLP法を用いた爪からの白癬菌同定において、爪検体から抽出したDNAより増幅されたPCR産物の制限酵素切断片長多型による白癬菌同定を行ってきた。この方法では様々な種間においても保存性の高い領域をプライマー配列として利用している為に、増幅されるPCR産物は白癬菌由来のものだけではない。今回それらのPCR産物に焦点を当て、どのような非白癬菌DNAが増幅されるのかについて報告し考察を加える。
     爪白癬の疑われる金沢医科大学皮膚科外来受診者108人から得た163の爪検体について検討した。検体よりDNA抽出後鋳型とし、ITS1&ITS4プライマーペア(White et al.,1990)を用いてPCRを行った。PCR産物に対し制限酵素処理(HinfI,MvaI)を行い、その泳動パターンによって菌種同定を行ったが、既知のパターンに当てはまらない非白癬菌由来のPCR産物について塩基配列を決定、相同性検索によってその菌種を推定した。
     現在までに、全163検体中33検体で非白癬菌由来と思われるPCR産物が得られた。そのうち、配列決定できたものにはAspergillus penicillioidesTrichosporon debeurmannianumCandida albicansC. guillermondiiなどが含まれた。白癬菌由来のPCR産物は118検体から得られた。
  • 二宮 淳也, 伊藤 弥生
    セッションID: P117
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    従来、爪白癬の起因菌は大多数がTrichophyton rubrumとされている。先に我々が報告したPCR-RFLP法による爪白癬の同定結果においても、T.rubrumの占める割合は90.4%で、これを裏付けている。今回、2004年から2006年にかけて、当科外来を受診しdermatophytomaと診断された29例について、培養法およびPCR-RFLP法を用いて起因菌を同定し検討を行ったところ、同定成功率は69.0%(20例)、このうち、T.mentagrophytesの比率は95%(19例)と、爪白癬全体における同定結果と全く異なるものであった。この結果は、dermatophytomaが、単に臨床形態が特異な爪白癬であるというのみならず、起因菌も他の爪白癬と異なる可能性を、強く示すものと考えられる。
  • 阿部 美知子, 小川 善資, 浅井 俊弥, 藤村 響男, 槙村 浩一, 久米 光
    セッションID: P118
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】:癜風の起因菌は,従来よりMalassezia furfur とされてきた。しかし1996年にGuéhoらが,Malassezia 属を7菌種に分類することを提唱,その後の検索により,現在では塩基配列の相違に基づいた11菌種に類別されている。 我々は,癜風の起因菌種の特定を目的として,一連の検討を行なった。【材料および方法】:癜風患者12例の皮膚落屑を検索材料として,以下の検討を行なった。1.直接鏡検。2.培養:クロモアガー・マラセチア/カンジダ培地,および前記培地にオリーブ油を重層した培地を使用,分離菌について生化学的性状検査および菌種特異的プライマーを用いたPCRにより同定した。3.患者材料からの直接PCRによる検出。4.分離菌種別のケラチノサイトからのサイトカイン誘導能。【結果】:直接鏡検では,全例に多数の菌糸および胞子の混在を認めた。培養では,オリーブ油重層培地で M. globosa の分離率が高い傾向を示したが,最も多く分離されたのは両培地ともに M. sympodialis であった。また,直接PCRによる検出では M. globosa, M.restricta および M.sympodialis の順に多く検出され培養成績とは乖離した。未検索ではあるが,分離菌種のサイトカイン誘導能とも合わせ勘案して癜風の起因菌について言及したい。
  • 津福 久恵, 杉田 隆, 坪井 良治
    セッションID: P119
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    尋常性ざ瘡は、脂腺毛包の慢性炎症性疾患である。病態について未だ不明な点が多いが、本疾患は毛包の異常角化に伴う過角化、皮脂腺からの皮脂分泌過多、毛包内での微生物の増殖と、それに伴う炎症と免疫反応によって生じると考えられている。毛包内微生物に関しては、Propionibacterium acnes (P. acnes)Staphylococcus epidermidis(S. epidermidis)Malassezia spp.などの関与が指摘されている。 従来はP. acnesが最も本疾患の発症に関与していると考えられてきたが、日常診療では抗生剤が効果を示さない症例も散見される。一方、皮膚常在真菌である好脂性酵母Malasseziaは、癜風、マラセチア毛包炎、脂漏性皮膚炎、アトピー性皮膚炎などの原因菌や増悪因子として知られ、病変部から、M. globosaM. restrictaなどが高頻度に検出される。今回われわれは、尋常性ざ瘡と微生物、特にMalasseziaの関与について検討した。 顔面に膿疱を有する成人のざ瘡患者33名から膿疱を採取した。膿疱から菌由来DNAを抽出し、PCRにて、P. acnesS. epidermidisの有無、Malassezia9菌種の菌叢解析、real time PCRによる主要、Malassezia構成菌種の定量を同時に実施した。その結果、P. acnesS. epidermidisMalasseziaはそれぞれ、症例の39.4%、96.9%、69.7%から検出され、個々の症例において、P. acnesMalasseziaは共存しない傾向が認められた。また、Malasseziaの中では、M. globosaが量的に多く検出された。以上の結果より、尋常性ざ瘡の病態に、Malasseziaが予想以上に強く関与していることが示唆された。
  • 高畑 ゆみ子, 杉田 隆, 比留間 政太郎, 武藤 正彦
    セッションID: P120
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】抗真菌薬投与によるMalasseziaの除菌により乾癬の皮疹の軽快が認められる症例があることから、本菌が乾癬の増悪に関与している可能性が考えられる。今回は、real-time PCR を用いて乾癬患者鱗屑中のMalasseziaを定量解析した。【材料および方法】山口大学医学部附属病院外来通院中の乾癬患者20例(皮疹部49検体、無疹部24検体)を対象として、患者の皮疹部と無疹部から鱗屑を採取し、そこから直接真菌DNAを抽出した。TaqMan probeを用いたreal-time PCRを用いて、鱗屑中のMalassezia全量および主要構成菌種であるM. restrictaおよびM. globosaを定量した。【結果および考察】M. restrictaおよびM. globosaは、ほぼ全例から検出され、頭頸部および体幹が四肢に比べて菌量が多かった。またいずれの部位においても、M. restrictaの方がM. globosaよりも多く定着していた。患者背景因子を解析したところ、正脂血症群の方が高脂血症群より有意にMalasseziaの菌量が多かった。本定量結果はこれまで報告されている他のMalassezia関連疾患とは異なる。これは乾癬患者の特異的な皮脂組成に起因すると考えられた。
feedback
Top