日本医真菌学会総会プログラム・抄録集
Print ISSN : 0916-4804
第50回 日本医真菌学会総会
選択された号の論文の133件中51~100を表示しています
ポスター(括弧内番号はセレクテッド・シンポジウム発表を示す)
  • 高畑 ゆみ子, 比留間 政太郎, 杉田 隆, 武藤 正彦
    セッションID: P38
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
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    33歳、女、看護師。既往歴に、足白癬を思わせる症状はない。約10年前より右第1趾爪の変色、変形をみとめる。現症は、右第1趾爪甲の内側1/3が、縦に黄白色の線状を多数認め融合する。初診時、直接鏡検にて真菌要素陽性、培養にて、アスペルギルス属の菌が得られたが、正確な同定がなされず、汚染菌と判断した。イトリゾールパルス療法を施行したが、15カ月目、難治であったため、病的爪甲を全て掻爬し、得られた病爪について、直接鏡検、真菌培養および分子生物学的検討を行った。直接鏡検では、2分岐性に増殖する不規則に太い菌糸を認め、アスペルギルス属菌が分離された。rDNAの塩基配列解析では分離菌株の配列と爪由来の配列は、両者とも一致した。分離菌は、形態学的にAspergillus sydowiiと推定され、分子生物学的に確認された。本菌による爪真菌症は、文献上17例を数えるが、臨床像や経過の記載があるものは4例のみであった。それらの臨床的な特徴をまとめて報告する。
  • 藤田 純, 渡邉 晴二, 河崎 昌子, 田邉 洋, 望月 隆
    セッションID: P39
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
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    患者:60歳女性。初診:平成17年8月。主訴:左肘の皮下腫瘤。現病歴:生来健康であった。10年以上前より左肘に皮下腫瘤を認め、近医内科にて治療を受けていたが不変。その後放置していた所、徐々に増大した。H17年頃より疼痛が出現したため、同年6月下旬に石川県立中央病院整形外科を受診。腫瘤部より穿刺吸引して得られた内容液の培養で真菌が分離されたため当院紹介。初診時現症:左肘頭部に50×50×25mm大、弾性硬で下床と可動性、中央部に波動を伴う淡紅色のドーム状に隆起した皮下腫瘤を認めた。圧痛はなかった。画像所見:左肘頭部のX-P像で境界不明瞭な皮下腫瘤あり。MRIで肘頭部の皮下脂肪織に径40mmの腫瘤を認めた。壁は不均一で厚く、関節面との交通は認めなかった。組織所見:切除標本の腫瘤内の内腔にHEで透明、PAS染色陽性の菌糸状菌要素が認められた。菌学的所見:切除組織の一部をサブロー培地で培養したところ、発育の速い灰白色絨毛状のコロニーが得られた。スライドカルチャーでは、2∼5隔壁を有する表面平滑、三日月形のカーブした大分生子が多数認められた。以上よりFusarium sp.の菌と同定した。更にrRNA遺伝子のITS領域の塩基配列を決定し相同性検索を行いF. solaniと同定した。整形外科での分離菌もともにF. solaniと同定した。治療:嚢腫全摘出を施行した。その後再発は認めていない。
  • 大内 健嗣, 杉浦 丹, 吉澤 奈穂, 佐藤 友隆, 畑 康樹
    セッションID: P40(SII-4)
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
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    79歳男性。左乳癌・胸骨傍リンパ節転移があり集学的治療を行った既往がある。放射線性肺炎に対しステロイドパルス療法を施行し、プレドニゾロン25mg/day内服中であった。左膝に擦過傷を受傷後、同部位に排膿を生じるようになった。初診時、左膝に瘻孔形成と排膿を伴う4cm大の暗赤色局面を認め、皮膚生検では、真皮から皮下織にかけての膿瘍と巨細胞を伴う肉芽腫。PAS染色、グロコット染色で濃染する豊富な菌糸を認めた。潰瘍および膿からSDA培地に数回培養したところ、いずれも灰白色綿毛状の集落を形成した。集落のコーンミール培地でのスライド培養では、菌糸の側面に生じた分生子柄の先端および側面にScedosporium 型分生子とGraphium型の分生子束を形成した。2回のスライド培養でも閉子嚢殻を認めなかったが、菌株のrRNA遺伝子のITS領域塩基配列を検討し Pseudallescheria boydii と一致し、同菌と同定した。肺病変は認めず、皮膚 P. boydii 感染症と診断し,itraconazole 200mg/dayの内服を4週間行ったところ、病変は瘢痕治癒した。P. boydii は子嚢菌に属する糸状菌で、環境中に生息し、貫通性外傷を受けた局所への真菌要素の直接接種によって起こるとされる。本菌による播種性感染症は致命率が高いことから、早期に正しい診断に基づいた治療を開始することが求められる。
  • 山田 瑠美, 西尾 亜理, 足立 真
    セッションID: P41
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
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    8歳女児。初診5ヶ月前に運動会があった。その後右下眼瞼に紅色結節が出現。現症:右下眼瞼に扁平な大豆大の紅色結節があり、痒みなどの自覚症状はなかった。組織:真皮に形質細胞、リンパ球、類上皮細胞、および異物巨細胞を混じる密な炎症細胞浸潤を認める。PAS染色で好酸性に染まる円形の物質が散見され、同部位にファンギフローラ染色で蛍光を発する要素を認めた。Sabouraud培地で生検切片を培養したところ白色ないし黒色の絨毛状のコロニーを形成。スポロトリキン反応陰性。ヨウ化カリウム内服にて次第に結節は平坦化し10週間で治癒した。真皮内のasteroid bodyは、はっきりしなかったが、培養および臨床経過より小児に多い固定型sporotrichosisと考えた。
  • 徳久 弓恵, 高畑 ゆみ子, 武藤 正彦
    セッションID: P42
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
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    【症例1】18歳、男性、高校生。初診日:2004年8月13日。現病歴:2000年の沖縄旅行後より左手掌に自覚症状のない茶褐色斑が出現した。約1年放置し、近医を受診、手掌黒癬の診断にて塩酸ネチコナゾール処方され略治した。2004年初旬再び同部位の茶褐色斑が再発、拡大してきたため近医を受診し、その後当科紹介受診となる。現症:左手掌に胡桃大境界明瞭な不整形の茶褐色斑を1ヶ所認めた。手掌は軽度の多汗を認めた。経過:ビホナゾールクリーム外用2ヶ月で治癒し、その後の再発は認めていない。【症例2】55歳、男性、無職。初診日:2005年12月16日。現病歴:初診の約1年前より左第4指腹に自覚症状のない茶褐色斑を認めた。外傷歴無。現症:左第4指腹に大豆大の境界鮮明な茶褐色斑を1ヶ所認めた。直接鏡検にて、茶褐色の隔壁を有する菌糸を認めた。経過:塩酸アモロルフィン外用1ヶ月で治癒し、その後の再発は認めていない。【真菌学的検査】症例1,2共に病変部を擦過し得た落屑をサブローブドウ糖寒天培地にて培養したところ不規則に隆起する漆黒糊状のコロニーを得た。遺伝子解析にてHortaea wernekiiと同定した。
  • 小林 めぐみ, 清 佳浩, 伊藤 弥生, 高橋 栄里, 武重 陽子
    セッションID: P43
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
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    症例、71歳女性.初診、平成18年4月5日.基礎疾患に糖尿病、慢性関節リウマチあり.両3,4指爪甲の肥厚、変形を主訴として当科受診.初診時、両3、4指爪甲は爪郭から1/3のところで縦に断裂し、爪甲下角質増殖を認めた.KOH直接検鏡にて仮性菌糸と桑実型の胞子を検出.病理組織ではGrocott染色、PAS染色いずれも無数の菌要素を認めた.ATG寒天培地による培養の結果、Candida albicans が分離され、非培養法による菌種の同定でもカンジダ属のみ同定.PCRを用いた非培養法でもカンジダのみ検出された.以上の検査所見から、爪カンジダ症と診断した.同年4月8日よりフルコナゾール100mg/dayの連日投与を開始.治療開始2ヶ月後には、後爪郭から末梢に向かい2mm程度正常な爪甲を認めた.
  • 北見 由季, 西尾 亜理, 杉山 美紀子, 香川 三郎, 飯島 正文
    セッションID: P44(SII-5)
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
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    症例:72歳男.初診:2005年10月26日. 既往歴:うつ病,解離性障害で加療中. 現病歴:約4年前より口内炎が出現,近医外科でケナログ®軟膏を処方され症状は一進一退.また他院で上口唇部のひりひり感に対しリンデロンVG®軟膏やゲンタシン®軟膏を処方され漫然と外用していた.3週間前に近医皮膚科で舌カンジダ症に対しITCZ100mg/日内服を行うも軽快せず,口腔内症状を主訴に当科を紹介受診.初診時現症:舌背,下口唇粘膜に白苔を認めた.上口唇に皮疹はなかった.白苔の鏡検で仮性菌糸を認め口腔カンジダ症と診断.治療と経過:ファンギソン®シロップによる含嗽を開始.4週間後の再診時,上口唇全体に前医で処方された軟膏が塗布され,発赤と軽度腫脹を認めた.黄色痂皮が付着し膿疱も混在.人中部のひげは粗であるが易脱毛性はなかった.組織:真皮中_から_下層におよぶ非特異性慢性炎症像を呈し,PAS,Grocott染色で角層内に菌糸を認めた.菌学的所見:膿疱と痂皮の鏡検で仮性菌糸を認めるも明らかな毛に対する寄生はなかった.痂皮と組織の真菌培養はSabouraud培地では表面平滑,白色,クリーム状の集落を得た.CHROMagar® Candida培地では2種類の集落を得,緑色の集落はスライド培養で厚膜胞子を認めCandida albicansと同定.ピンク色の集落は厚膜胞子を認めず,ID 32 Cアピを用い,C.parapsilosisと同定.口腔内の白苔からはC.albicansのみを認めた.以上よりカンジダ性毛瘡と診断しITCZのパルス療法を施行,口腔カンジダ症にはフロリード®ゲルを用い,ともに軽快.
  • 石崎 純子, 澤田 美月, 伊藤 治夫, 原田 敬之
    セッションID: P45
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
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    Malassezia感染症として癜風とMalassezia folliculitisが知られている.Malasseziaは前者の病変部では菌糸型を,後者では胞子型をとって増殖している.一方,近年脂漏性皮膚炎やアトピー性皮膚炎の病変部にも胞子型の増殖を認めることから,その発症ないし増悪因子として何らかの役割を果たしているとみなされている.今回,我々は脂漏部位にみられた紅斑性病変のMalasseziaの寄生形態を確認するため,脂漏性皮膚炎,アトピー性皮膚炎,膿疱性痤瘡,皮膚筋炎の患者の顔面の紅斑よりKOH鏡検にて検討した.その結果,これらの疾患においてもMalasseziaの菌糸型を認める症例を経験した.紅色皮疹の病変に何らかの関連があるものか,単に腐生的に増殖したのみか,また菌糸型を呈しやすい背景,リスクファクターなどについて考察した.
  • 柴田 智子, 高原 正和, 上ノ土 武, 松田 哲男, 古江 増隆
    セッションID: P46
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
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    79歳、男性。3月下旬に転倒し、顔面に擦過傷と鼻骨骨折を受傷したが、放置していた。擦過傷は自然に軽快した。以前より、膵癌を指摘されており、化学療法目的に4月5日に当院第3内科に入院となった。化学療法を開始したところ、4月18日より右眉毛部から右鼻唇溝、右頬部にかけて発赤腫脹と熱感を認め、徐々に拡大した。丹毒の診断でチエナムの点滴を開始されるも眉毛部には膿瘍を伴ってきたため、当科紹介となった。初診時には右眉毛部に膿瘍の形成、右頬部から鼻唇溝にかけて浸潤と軽度熱感を伴う紅斑を認めた。また右頬部には非連続性に皮内から皮下にかけての硬結が存在していた。硬結の部分より生検を施行した。病理組織学的には真皮内にリンパ球、好中球、組織球の密な浸潤を認めた。また、生検組織の一部をPDA培地に接種したところ、白色と橙色からなる皺壁をもつコロニーが得られ Nocardia sp.であった。他の細菌、抗酸菌、真菌は検出されなかった。本症例を皮膚ノカルジア症と診断し、ミノサイクリン200mg内服を開始した。原因菌の詳細については現在検索中である。
  • 長 環, 豊田 美香, 中山 浩伸, 上野 圭吾, 知花 博治, 上西 秀則
    セッションID: P47(SIII-1)
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
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    ファルネゾールはC. albicansの菌数認知伝達機構(クオラムセンシング)の伝達分子の一つであるが、果実・野菜などに含まれる精油の成分でもある。
    C. albicansにおけるファルネゾールの情報伝達機構については、現在のところ細胞内二成分制御系のCHK1遺伝子の関与(Kruppa M, et al. 2004 Eukaryot Cell)のみ報告されている。またファルネゾールは脂溶性を示し細菌の細胞膜では蓄積されることから、C. albicansでは細胞表層にファルネゾールの受容体が存在するのではないかという作業仮説を立てた。そこでC. albicans のゲノムDNAマイクロアレイの手法を用いた網羅的遺伝子解析を行い、ファルネゾールで発現誘導される膜たん白が想定される遺伝子を2つ選抜した(第49回本大会総会)。動物細胞をファルネゾールで処理すると核内レセプターFXRを発現することから、動物細胞と同様なシグナル伝達が存在するかどうかについてin silico analysisを行ったところ、その配列と選抜した2遺伝子とは相同性を示さなかった。またFXRのオーソログもC. albicansのゲノム配列からは検索されなかった。これら遺伝子の組換え体構築やCHK1との関係などについて報告する。(会員外共同研究者:青山俊弘、鈴鹿高専・電子情報工学、R.Calderone、Gaorgetown Univ.)
  • 鈴木 孝仁, 岩口 伸一
    セッションID: P48(SIII-2)
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
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    Van der Walt(1967)が記載したsexually active strainに相当するCandida albicans NUM51株では、接合型遺伝子MTLaおよびMTLαが異型接合状態で存在し、二倍体と四倍体の細胞が培養中に混在する。クローン化された優性なミコフェノリック酸耐性遺伝子とMTLα2とからMTLα2:MPARブラスターを作成し、MTLa遺伝子破壊株B1を得た。B1株では、培養中の細胞は二倍体から構成されるようになり、核相の変換を伴うsexually activeの形質が失われた。また、ソルボース培地上でMTLαが座乗する5番染色体の一方を喪失させたTN1株でも同様にsexually activeの形質が失われたことから、核相を変換するsexually activeの形質には接合型遺伝子の異型接合性が必要であることが判明した。また、接合型遺伝子座における異型接合性が失われたこれらの変異株では、カザミノ酸―グルコース培地での菌糸形成能が失われることも判明した。これらの事実から、C. albicans 接合型遺伝子には形態形成における多面的な制御に関わっている可能性が示唆された。非会員共同研究者:竹内まり子, 中西典子(奈良女子大・理・生物科学)
  • 岩口 伸一, 鈴木 孝仁
    セッションID: P49
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
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     C. albicansはヒトの口腔、腸管などの常在菌で、多数分離される日和見感染真菌である。臨床から分離される菌株に比べ、研究室で長期間継代培養で保存されてきた菌株では染色体電気泳動核型の多様性が大きい。現在はDMSOを用いて超低温庫で保存する方法、L-乾燥法が行われているが、このような技術が普及する以前には半年ごとに植え継ぐ保存方法がとられていた。このような長期間の保存状態が染色体核型の変化をもたらす要因の一つではないかと考え、検証した。 STN22u1(URA3/ura3:ARG4)株を、乾燥による影響の少ないMIN斜面培地で23℃で長期間培養を行った。培養開始から2ヶ月後と6ヶ月後にMIN寒天平板培地に広げ、各株任意にコロニーを選択し、単集落を得た。その単集落をMIN液体培地で培養後、パルスフィールドゲル電気泳動法により染色体電気泳動核型の変化を調べた。その結果、2ヵ月後では16株のうち2株で余剰染色体(4.5)が見られ、6ヵ月後では30株のうち10株で余剰染色体(7.5/snc)が認められ、長期間の培養が染色体再編成を生じる原因の1つであることが確かめられた。この長期間培養で染色体再編成が起こった要因として、栄養状態の変化や乾燥というストレスが考えられた。(会員外共同研究者:西山由希子、濱口美帆)
  • Niimi K, Harding D. R. K., Holmes A. R., Lamping E., Niimi M., Cannon ...
    セッションID: P50
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
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    Over-expression of multidrug efflux pumps is a major cause of clinically significant resistance to anticancer drugs and to antifungals such as fluconazole (FLC). The structure-directed discovery of potent antifungal chemosensitizers that overcome FLC resistance requires the identification of specific pump inhibitors and characterization of their sites of interaction. Screening of a 1.9 million member D-octapeptide combinatorial library identified a specific inhibitor of the Candida albicans ATP-binding cassette transporter Cdr1p. This inhibitor is a surface active peptide derivative with a single modifying group attached within the C-terminal tri-arginine motif. It chemosensitized a Saccharomyces cerevisiae strain hyper-expressing Cdr1p but not strains hyper-expressing other fungal transporters or the azole target enzyme Erg11p. The Cdr1p-chemosensitizer interaction was stereospecific and was genetically characterized using spontaneous chemosensitization suppressors of Cdr1p-mediated FLC resistance in S. cerevisiae that involved single nucleotide changes exclusively in CDR1. The strongest suppressors each increased the positive charge of one of four amino acid residues predicted to be located within the external loops 1, 3, 4 and 6 of Cdr1p. The suppressor mutations provided the first map chemosensitizer interactions with Cdr1p.
  • Lamping E., Nakamura K., Ranchod A., Holmes A. R., Niimi K., Niimi M., ...
    セッションID: P51(SIII-3)
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
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    Candida krusei is naturally resistant to azole antifungals. In a previous study (Med Mycol, 2001, 39:109-116) portions of two C. krusei ABC efflux pumps were isolated: ABC1 and ABC2. The objective of the present study was to express Abc1p and the azole drug target Erg11p of C. krusei in Saccharomyces cerevisiae in order to investigate their role in C. krusei azole resistance. The entire ABC1 gene was cloned and found to contain one intron. Northern analysis revealed constitutively high levels of expression of ABC1 during logarithmic growth and its repression in stationary phase. Azoles had no effect on the expression of ABC1. Heterologous expression of C. krusei ABC1 in S. cerevisiae conferred moderate levels of resistance to fluconazole and a number of other xenobiotics. S. cerevisiae cells expressing ABC1, and C. krusei wild type cells, were “chemosensitized” to fluconazole by a variety of compounds possibly through their inhibition of the drug pump Abc1p. The expression of C. krusei ERG11 was induced greatly by azoles. We also show clear evidence for multiple copies (two or more) of ERG11 in the supposedly haploid C. krusei wild type strains. Our data suggest that the low susceptibility of C. krusei to azoles is likely caused by a combination of the constitutive expression of the azole drug pump Abc1p and the increased expression of the azole drug target Erg11p from multiple gene copies.
  • 花岡 希, 普後 一, 新見 昌一
    セッションID: P52
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
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     Candida albicansは口腔内や消化管の常在微生物叢を構成する真菌であるが、免疫不全患者に対して重篤な深在性真菌症を引き起こす。この菌は二形性と呼ばれる形態的特徴を有し、血清や栄養飢餓、pH等の刺激により酵母形から菌糸形へと可逆的に細胞形態が変わる。形態変換に関わるcAMP系やMAPK系のシグナル伝達系は、病原性発現(宿主への接着、組織侵襲性の増強、分泌性プロテアーゼやフォスホリパーゼ産生等)にも重要であると考えられているが、その詳細な分子機構は明らかではない。 プロテインフォスファターゼ(PPase)は、環境に対する応答や細胞周期、細胞増殖等のシグナル伝達系に重要な役割を有している。C. albicansには29種類のCaPPaseが存在すると推測されているが、我々は、既報の遺伝子および生育に必須であると推定される遺伝子を除く20種のCaPPase遺伝子を破壊し、増殖や形態変換に関わるCaPPaseを見出した。 本研究ではC. albicansの病原因子の発現に関与するPPaseの探索を目的とし、各遺伝子破壊株のカイコガ幼虫に対する感染能を解析した。この方法は細菌等でマウス感染実験と同等の評価が出来ることが報告されている 既知の病原性低下株であるCasit4破壊株およびCayvh1破壊株は、カイコガ幼虫を用いた場合でも有意に病原性が低下することを確認し、その他のCaPPase破壊株の中にも有意に病原性の低下を示すものがあった。現在、これらのCaPPase破壊株の機能解析を行っている。
  • 上野 将明, 小笠原 綾子, 渡部 俊彦, 三上 健, 松本 達二
    セッションID: P53
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
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    【目的】C. albicans は,日和見感染の原因菌の一つである。本菌は酵母形,菌糸形の二相性を示すが,この形態変化が病原性に深く関与していることが明らかにされている。しかし,そのメカニズムには不明な点が多く形態変化機構の解明はカンジダ症克服の第一歩につながると考えられる。今回我々は,ヒトβ受容体遮断薬であるプロプラノロールが C. albicans の形態変化を制御することを見い出し,そのメカニズムについて解析を行ったので報告する。【方法】真菌:C. albicans NIH A-207 株を10%血清含有サブロー培地で培養することにより菌糸形の誘導を行った。菌糸形成率の測定:C. albicans にプロプラノロールを添加し,37℃ で1,3,5時間振とう培養後,菌糸形成率を測定した。cAMPの測定:プロプラノロール処理した C. albicans をガラスビーズで破砕し,上清を回収してcAMP EIA system ( AMERSHAM) を用いてcAMP量を測定した。また,上清中のタンパク濃度を吸光度280nmで測定し,タンパクあたりのcAMP量を測定した。【結果・考察】C. albicans にプロプラノロールを添加すると菌糸形成が抑制され酵母形での分裂が促進された。C. albicans の形態変化にはcAMPを介した刺激伝達経路が関与し,菌糸形成時にはcAMPの増加が認められる。しかし,プロプラノロールを添加した菌体では,cAMP量はプロプラノロール未添加群と比較して変化が認められなかった。このことから菌糸形成シグナルにおいて,プロプラノロールはcAMPより下流域のシグナルを抑制することで菌糸形成を抑制し,このため酵母形分裂を促進させていることが示唆された。
  • 知花 博治, 上野 圭吾, 中山 浩伸, 宇野 潤, 長 環, 宮川 洋三, 三上 襄
    セッションID: P54
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
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    Candida albicans, C. glabrata, Cryptococcus neoformans, Aspergillus fumigatus の全ゲノムシークエンスが2004年から相次いで報告されたことから、これらのゲノム情報をプラットフォームとして、遺伝子型解析、マイクロアレイ解析による病原因子の探索、抗真菌薬の標的の探索など様々な分野に応用されている。しかし、各遺伝子の機能についてはSaccharomyces cerevisiaeとの比較解析への依存が高く、特にin vivoでの遺伝子機能については推測の域に留まることが多い。そこで、我々はin vivoを含む網羅的な遺伝子機能情報が、病原真菌研究の第2プラットフォームであると考え、まず4菌種の中で最も遺伝子操作が簡便なC. glabrataを用いて、網羅的な遺伝子の機能解析を進めている。機能解析の過程において、抗真菌薬の開発は最優先課題と考えており、これら4菌種のゲノム情報を元に抗真菌薬の標的候補を約200遺伝子抽出し、各遺伝子のプロモーター領域にテトラサイクリン応答型プロモーターを挿入した株を構築した。今回、それら遺伝子機能解析の進捗状況等を報告する。会員外共同研究者: 笹本 要、住江祐介、木下妻智子(千葉大)、青山俊弘 (鈴鹿高専)、釣谷克樹、中井謙太(東大)
  • 中山 浩伸, 田辺 公一, 知花 博治, 新見 昌一
    セッションID: P55
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
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    抗真菌薬の多くが,アゾールに代表されるステロール合成阻害剤であるにも関わらず,ステロール取り込みと薬剤耐性機構との関連について取り上げられていなかった。しかしながら,我々の研究等からCandida glabrataAspergillus fumigatusで,嫌気条件下でしか起こらないとされていたステロールの取り込みが,宿主体内や好気条件下でも起こることが明らかとなった。これは臨床上,アゾールがC. glabrataに効きにくいことと合致し,真菌のステロール合成阻害剤に対する新しい薬剤耐性機構の存在を示唆する。実際,この機構をもつ耐性菌が,従来の培地にステロールを加えることで臨床検体より初めて単離された。ステロールが取り込まれても,エルゴステロールの合成は引き続き起こることから,アゾールの耐性機構の解明およびステロール合成系における新たな分子標的の検索において,ステロールの取り込みと合成の両面からステロールの恒常性維持機構の解明が必要と考え,ステロールトランスポーターの同定と機能解析およびステロール合成に関わる酵素群の機能解析を行っている。本発表では,同定したステロールトランスポーターの条件変異株についての表現型解析について結果を報告し,アゾール耐性との関連を考察する。(会員外共同研究者 鈴鹿高専 青山俊弘,竹森大樹)
  • 原 貴彦, 宇野 潤, 知花 博治, 三上 襄, 中山 浩伸, 飯村 穰, 宮川 洋三
    セッションID: P56(SIII-4)
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
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    現在、わが国は高齢化社会を迎え易感染性宿主における日和見感染症が医療現場の重要な問題になりつつあり、なかでもヒト常在菌である病原性酵母によるカンジダ症はその主要な部分を占めている。Candida属酵母においては一昨年、C. albicansおよびC. glabrataの両者で相次いで全ゲノムシークエンスが公開され、これらの菌種に関する研究も新たな時代を迎えた。これらの菌種においては、Tetracycline (Tet) による応答性遺伝子発現制御系 (TETシステム) が中山ら (Microbiol., 1998, Infect. Immun., 2000) によってすでに確立され、必須遺伝子を解析する上でとくに有利であることが立証されている。こうした背景から、われわれはカンジダ症対策の一環として、カンジダ症の主要な原因菌とされるC. albicansおよび通常一倍体として増殖するために遺伝解析が容易とされるC. glabrataをおもな材料として、新たな抗真菌剤の標的となり得る必須遺伝子群の探索を試みている。 われわれは必須遺伝子を効率よく分離・同定する一つの手段として、一倍体ゲノムをもつC. glabrataの温度感受性変異(以下、TS変異)株を用いる方法を考案した。TS変異体は、低温では正常に増殖できるが、特定の遺伝子の変異により高温(発育制限温度)においてその遺伝子産物(タンパク)の高次構造が変化したことにより不活性化し、その結果、高温でのコロニー形成能を欠損したいわゆる条件致死変異体の一種である。これまでに当研究室において得られた多数のTS変異株について性状解析を行った結果、その多くは安定性が高く、Reversion頻度が低いこと等から、これらの変異株を宿主としてC. glabrata Genomic DNA Library より各変異に対する相補性遺伝子のスクリーニングを行った。これまでに様々なTS変異に対する相補性遺伝子の解析から、細胞周期制御、形態形成、細胞壁合成系、タンパク合成系等、種々の重要な細胞内事象に必須のタンパクがTS変異により異常を呈していることが示された。また、これらとは別に、TETシステムを用いることにより、C. albicansのリン酸代謝制御系における負の制御因子PHO85in vitro, in vivo の両面において重要な役割を果たしていることも示された。以上の結果より、これらの遺伝子群は、将来、抗真菌剤開発に際しての有力な標的候補になる可能性が示唆された。
  • 小山 友嗣, 李 慧敏, 宮川 洋三
    セッションID: P57
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
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    易感染性宿主における日和見感染症は、わが国の医療の進歩と抗生物質の広汎な使用にともない、現在の医療現場のひとつの重要な課題になりつつある。なかでも健康人にも常在する病原性酵母によるカンジダ症は高齢者人口の増大によりさらに重要な課題となっており、これに対する対策は今後、一層重要度を増すものと思われる。臨床的現場におけるカンジダ症対策としては、従来からその原因菌であるCandida属酵母に対する種々の抗真菌剤の投与がなされてきたが、選択毒性や耐性菌の問題を抱え、今後ともよりよい抗真菌剤の開発が期待されている。一昨年、C. albicansとともにC. glabrataにおいても全ゲノムシークエンスが公開され、医療現場からの要請に対してもまた、生物学的側面においても、ゲノム情報を基礎としたアプローチが期待される時代に入ってきたといえる。そこでわれわれはカンジダ症対策の一環として、よりよい抗真菌剤の開発をめざし、ゲノム情報を活用しつつその標的候補を効率よく選別する方法の開発を試みている。Candida属酵母のゲノムの約1割が菌の生育にとって不可欠ないわゆる必須遺伝子とされているが、これらは新規抗真菌剤の標的候補と考えられ、われわれはこれを効率的かつ機能的に探索・分離・同定する方法として温度感受性変異株に着目した。その際、親株には一倍体で増殖し比較的遺伝解析が容易とされているC. glabrataを用いた。一般にTS変異体は、低温では正常に増殖できるが、特定の遺伝子の変異により高温(発育制限温度)においてその遺伝子産物(タンパク)が高次構造の変化により不活性化された結果、高温でのコロニー形成能が失われたいわゆる条件致死変異体の一種である。したがって、各変異株のTS変異に対して相補活性をもつDNA断片は必須遺伝子を保有している可能性がきわめて高い。今回は、C. glabrataGenomic DNA Library を構築し、これより各変異に対する相補性遺伝子を効率よくスクリーニングするための条件を種々検討した。これにより得られた知見から、いくつかのTS変異株の興味ある性状が明らかになった。
  • 冨士原 浩介, 山本 太一, 宮川 洋三
    セッションID: P58
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
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    医療の高度化や抗生物質および免疫抑制剤の広範な使用に伴い、現在、高齢化社会を迎えたわが国の医療現場においてはいわゆるImmunocompromised Hostにおける日和見感染症対策が重要度を増しつつある。分子生物学的観点からは、一昨年、カンジダ症の主要な原因菌である Candida albicansおよびC. glabrataの全ゲノムシークエンスが公開され、本分野においてもポストゲノムの時代を迎えたといえる。これらを背景にわれわれはカンジダ症対策の一環として新規抗真菌剤の開発を展望し、ゲノムが通常一倍体で遺伝解析が容易とされるC. glabrataを材料として、その温度感受性変異株を用いて抗真菌剤の標的候補となり得る必須遺伝子群の探索を試みている。 新規抗真菌剤の開発において、基本的に重要な点は、 Candidaが真核生物であるため、やはり選択毒性の問題であろう。その点で細胞壁を標的とした抗真菌剤が主流をなしている現状も当然のことと思われる。したがって、われわれが最近試みている抗真菌剤の標的候補となり得る必須遺伝子群の探索においてもこのことは当然考慮されるべきものと考える。真菌の細胞壁構造を正常な状態に維持すること(cell wall integrity)は、この菌の生存に直接関わる必須の条件である。われわれがこれまで当研究室で分離した温度感受性変異株のなかにもこうしたcell wall integrityが高温(発育制限温度)において失われた株がいくつか見出された。しかしながら、これらの株は高温条件においても1M sorbitol存在下では増殖能をほぼ完全に回復した。これと類似の現象として PKC1遺伝子の破壊株におけるcell wall integrityの消失が1M sorbitol存在下で回復することが報告されている。これらとの関係についても言及したい。
  • 山田 剛, 槇村 浩一, 安部 茂
    セッションID: P59(SIII-5)
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
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    白癬菌は、宿主組織への侵入過程で、ケラチン分解酵素をはじめとする様々な物質を産生していると考えられている。しかし、本菌の宿主感染に関する分子メカニズムの解析は遅れており、未だ不明な点が多い。演者らは、その原因の一つであった外来遺伝子を導入・発現させるための形質転換系を構築した[Med. Mycol. 43, 533-544, (2005)]。現在、本形質転換系を基に、主要な白癬菌の一つであるTrichophyton mentagrophytesの細胞に二種類の形質転換用ベクターを導入し、外来遺伝子を発現させるための系の構築を進めている。その際、これまで形質転換体の選抜に使用してきた抗生物質である、ハイグロマイシンBに加え、形質転換体を選抜するための新たな薬剤が必要となる。そこで今回、ハイグロマイシンB同様、幅広い抗菌スペクトルを有する抗生物質であるジェネティシンの可能性について検討を行った。胞子およびプロトプラストを利用し、本菌のジェネティシンに対する感受性を予備試験的に調査したところ、500 μg/ml程度の濃度で菌糸の発育が顕著に抑制されることが判明した。現在、ジェネティシン耐性遺伝子であるネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(nptII)を含む形質転換用ベクターを構築し、ジェネティシン耐性を有するT. mentagrophytes形質転換体を作出中である。
  • 渡部 俊彦, 小笠原 綾子, 三上 健, 松本 達二
    セッションID: P60
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
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    【目的】Cladosporium cladosporioides は、浴室の壁や水筒のゴムパッキンなどに発生する黒カビの一種で、病原性は低いが、アレルギーの原因になるとも言われ、衛生的にも黒カビの増殖は好ましくない。本菌は、消毒剤や抗真菌剤で容易に除去出来るが、生活環境に高頻度で発生するため、人体への影響が懸念される消毒剤や抗真菌剤を使用した発生防止や除去は、あまり好ましくない。我々は、人体に無害で、本菌の増殖を抑制できる物質を検索したところ、C. cladosporioides の増殖・拡散がシステインによって抑制されることを見出したので報告する。【方法】C. cladosporioides NBRC4457 を、システイン含有ポテトデキストロース培地に加え、27℃で、培養し、増殖状態を観察した。【結果・考察】C. cladosporioides を静置培養すると、培養液表面部にバイオフィルムを形成する。本菌の胞子形成は培養液中では起こらず、空気に触れる面でのみ起こることから、バイオフィルム上で増殖する菌が、胞子の形成・拡散に関与していると考えられた。C. cladosporioides の培養系にシステインを加え、培養を行ったところ、バイオフィルムの形成が抑制される結果が得られた。また、システインを含んだ寒天培地上では、システイン未添加群に比べ、菌の増殖が著しく低下する結果が得られた。以上の結果から、システインには、C. cladosporioides の増殖を抑制する効果のあることが明らかになった。
  • 池田 玲子, 澤村 果菜子, 山口 正視, 川本 進
    セッションID: P61
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
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    【目的】われわれは、C. neoformansの感染成立における他菌種との相互作用に着目し、C. neoformansS. aureusS. epidermidisが付着し、Cryptococcusが死滅することを報告した。この度は、さらに2菌種の付着に関与する細胞表層物質とStaphylococcusの認識部位について検討した。【方法】S.aureusC.neoformansの莢膜主成分glucuronoxylomannan (GXM)のα-1,3 mannanから成る主鎖を認識する可能性が示されていた。そこでmannanからオリゴ糖シリーズを調製し、これらの画分によるS.aureusの凝集塊形成を測定した。一方S. aureusから表層タンパクを抽出し、GXMおよびオリゴ糖との相互作用を表面プラズモン共鳴装置ビアコア3000を用いて検討した。【結果および考察】C.neoformansS.aureusの付着は電子顕微鏡で明瞭に観察された。2菌種の混合培養によるC.neoformansの死滅はα-1,3 mannanにより阻止された。また、S.aureusはmannotriose以上のオリゴ糖の存在下で凝集塊を形成した。さらに表面プラズモン共鳴装置による測定で、GXMを固定化リガンド、S. aureusタンパクをアナライトとした系で相互作用が観察され、この相互作用もmannotrioseの容量依存的に阻止された。オリゴ糖の立体構造を検討した結果、mannotriose以上にポケット構造がくり返し形成された。従って、S.aureusはこの構造を認識しC. neoformansに結合する可能性が示された。
  • 澤村 果菜子, 池田 玲子
    セッションID: P62
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
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    【目的】 C. neoformansS. aureusの混合培養系で、S. aureusC. neoformansの周囲に付着し、C. neoformansのDNA断片化を伴う死滅が観察された。そこで、S. aureusの付着に起因するC. neoformansの新規死滅機序を解析する目的で、活性酸素種の関与を検討した。
    【方法】 C. neoformansS. aureusを混合培養し、経時的にC. neoformansへのS. aureusの付着率、C. neoformansの生菌数を測定した。また、プロリン、3-hydroxyanthranic acid (3HAA)等の生菌数変化に及ぼす影響を検討した。
    【結果および考察】 S. aureusの付着は、混合培養開始後3時間から認められた。しかし、C. neoformansの生菌数減少にはおよそ12時間を要した。C. neoformansS. aureusの混合培養系にプロリンを添加した結果、C. neoformansの生菌数減少が抑制された。プロリンは真菌のColletotrichum trifoliiにおいて活性酸素種を消去することによりアポトーシスを抑制することが報告されている。また、C. neoformansで検出され、抗酸化作用が知られている3HAAの添加でも混合培養系での生菌数変化に影響が認められた。以上の結果から、S. aureus によるC. neoformansの細胞死誘導の過程で活性酸素種の関与が示唆された。
  • 田嶋 磨美, 杉田 隆, 原田 聡, 西川 朱實, 坪井 良治
    セッションID: P63
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
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    【はじめに】皮膚常在真菌であるMalasseziaは、癜風、マラセチア毛包炎、脂漏性皮膚炎、アトピー性皮膚炎などの病態に関与するが、その鱗屑中の存在形態は異なる。すなわち癜風は菌糸形を呈するのに対して、その他の疾患は酵母形を呈する。本研究では、in vitroでの菌糸誘導条件を確立し、Megasort®を用いてMalasseziaの菌糸特異遺伝子の検出を試みた。【材料および方法】In vitro菌糸誘導:各種アミノ酸、脂質等の組み合わせにより効率的な菌糸誘導条件を検討した。菌糸特異遺伝子検出:in vitroで誘導された菌糸形および酵母形からcDNAを合成し、約30万のMegacloneビーズを作製した。競合ハイブリダイゼーション後、セルソータにより菌糸形で発現量の高いビーズを採取しシーケンスを行った。【結果および考察】菌糸誘導:in vitro培養系にリン酸アンモニウムおよびグリシンを添加するとM. globosaが最も効率的に菌糸形を呈した。これは癜風の起因菌がM. globosaであるとする報告と一致する。菌糸特異遺伝子検出:30万のビーズからセルソーターで7800を採取しシーケンス・クラスタリング後、ホモロジー解析を行った。現在、抽出された32の遺伝子について機能解析を行っている。
  • 原田 聡, 杉田 隆, 田嶋 磨美, 津福 久恵, 坪井 良治, 西川 朱實
    セッションID: P64
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
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    【はじめに】皮膚常在真菌であるMalasseziaはアトピー性皮膚炎の増悪因子である。本菌は細胞外にリパーゼを分泌することにより皮脂を分解しそれを自らの栄養源としている。この度は、アトピー性皮膚炎の標準的治療薬であるステロイドおよびタクロリムスがMalasseziaの分泌性リパーゼ産生および遺伝子発現に及ぼす影響について検討した
    【材料および方法】菌株:アトピー性皮膚炎患者皮膚の主要構成菌種であるM. globosaおよびM. restrictaの臨床分離株を用いた。リパーゼ遺伝子変動:degenerate PCRによりリパーゼ遺伝子をクローン化し、各種薬剤存在下での遺伝子発現変動をreal-time PCRを用いて調べた。分泌性リパーゼ産生:各種薬剤存在下でpNPP法によりリパーゼ活性を測定した。
    【結果および考察】臨床濃度に相当するステロイド存在下では、リパーゼ遺伝子の発現およびタンパク産生の抑制が認められた。一方、タクロリムスは、臨床濃度の約1/60以下で遺伝子発現およびタンパク産生の亢進が認められた。しかしながら、タクロリムスは臨床濃度ではMalasseziaに対して殺菌的に働くので、リパーゼ活性の亢進は臨床上問題にならないと考えられる。
    【会員外共同研究者】内田夕貴、斉藤美沙
  • 石橋 芳雄, 杉田 隆, 西川 朱實
    セッションID: P65
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
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    [目的] 好脂性酵母であるマラセチアは、近年アトピー性皮膚炎の増悪因子として注目されている。皮膚ケラチノサイトから分泌されるサイトカインが皮膚の病態に関与すると考えられるが、マラセチアとの関連性については不明である。本研究ではアトピー性皮膚炎患者皮膚から高頻度に検出されるMalassezia globosaM. restrictaの2菌種について、マラセチア刺激時におけるヒトケラチノサイトのサイトカイン応答をプロファイリング解析した。
    [方法] ヒトケラチノサイトは、PHK16-0b株化細胞および初代培養(NHEK)細胞を用いた。サイトカイン分泌は、Cytokine antibody array法により解析した。また、サイトカインの遺伝子発現は、cDNA microarray法により解析した。
    [結果と考察] ヒトケラチノサイトにM.globosaを感染させた場合、IL-5、IL-10、IL-13などのTh2型サイトカインおよびIL-6、L-8、RANTESなどの炎症性サイトカインの分泌が認められた。一方、M.restricta感染細胞ではTh2型サイトカインであるIL-4のみの分泌が認められた。さらに、マラセチア感染に伴い、これらのサイトカインのmRNA発現も亢進することが確認された。これらの結果は、M. globosaM. restrictaはヒトケラチノサイトに対してそれぞれ異なるTh2型サイトカイン応答を誘導することを示しており、それぞれのサイトカインが相乗的に作用することによりTh2免疫応答の誘導を介したアトピー性皮膚炎の増悪に関与しているものと考えられる。
  • 森田 真由, 石橋 健一, 三浦 典子, 安達 禎之, 大野 尚仁
    セッションID: P66
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
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    【目的】我々はこれまでに真菌細胞壁主要構成成分であるβ-グルカン(BG)に対する抗体がヒト健常人血清中に存在することを報告した。本発表では抗BG抗体の各クラス別力価、反応性について検討したので報告する。【方法・結果】健常人 (77例) の抗BG抗体力価を Candida albicans 細胞壁BG (CSBG) を標準固相抗原として測定した。抗ヒトIgG+M+A, IgG, IgA, IgMを二次抗体として用い各クラスの抗BG抗体力価を求めた。総抗BG抗体力価にはかなりの個人差が存在し,最大14000ユニット,最小240ユニットであった。また、クラス別に比較すると75例でIgGが最も高い吸光度を示した。さらに、クラス別にも個人差があり吸光度の平均値の2倍を示す個体がIgMで7例、IgAで7例、認められた。次に各クラス別の抗BG抗体反応性を可溶性抗原添加による競合ELISA法により検討したところ、β-1,6グルカンとβ-1,3グルカンに対する抑制率が異なる例が存在した。【考察】ヒト血中抗BG抗体は力価、クラス、特異性において著しい個人差のあることが明らかとなった。抗真菌活性や免疫賦活化作用の個人差と密接に関連している可能性があり、興味がもたれる。
  • 佐藤 友隆, 永尾 圭介, 畑 康樹, 谷川 瑛子, 天谷 雅行
    セッションID: P67(SIV-1)
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
     5歳、男児、マレーシア在住日本人。体重22kg。当科初診の約1ヶ月前に軽度の打撲後、頭頂部に腫瘤を形成するようになり、マレーシアの市中病院外科を受診。抗生物質内服,外用に反応せず腫瘤は肉芽腫としてレーザーで切除されたが、脱毛斑となり拡大するため帰国し、当科を受診。初診時、頭部に直径約3cm大の潰瘍を認め、周囲に瘢痕性脱毛斑を伴っていた。周囲の毛髪は容易に抜毛し、両側頚部リンパ節の腫脹を認めた。毛髪の直接顕微鏡検査にて、真菌要素を認めなかったため、外用剤の中止と洗浄で経過観察したが、一週間後に培養で白色粉状の集落を認め、再度毛髪の直接顕微鏡検査で真菌要素を認めた。培養所見、スライド培養所見からTrichophyton mentagrophytes complexと同定し、菌株のrRNA遺伝子のITS領域塩基配列を検討し、Arthroderma vanbreuseghemiiと一致したことから同菌によるケルスス禿瘡と診断した。イトラコナゾール50mg/日内服で加療を開始し、潰瘍は軽度軽快傾向を認めたが、5週間内服でも毛髪に菌要素を認めたため、100mg/日内服に増量。約4ヵ月で瘢痕治癒した。齧歯類との接触はあったようだが感染経路は不明。ケルスス禿瘡の原因菌として、Trichophyton mentagrophytes complexはマレーシアにおいても念頭に置く必要がある。
  • 高橋 容子, 佐野 文子, 西村 和子, 亀井 克彦
    セッションID: P68
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
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    我々は2003年の医真菌総会で74歳,女性に生じた Trichophyton tonsurans による ブラック・ドット型頭部白癬の1例を報告した.初回の治療は 2002 年 12 月から 9 週間,テルビナフィン (125 mg/日) を内服し,直接鏡検,培養の陰性化とともに,臨床所見の消失を確認して治療を終了した.以後の経過観察で,再発の兆候は認めなかったが,内服終了 2 年後の 2005 年 2 月の再来時に,前回の病巣部にほぼ一致して再発を認め,培養で再び T. tonsurans を分離した.2 回目の治療はイトラコナゾール (100 mg/日) を 22 週間継続し,菌培養の陰性化を確認して治療終了とした.内服終了 8 か月後の 2006 年 5 月に 3 か月前から頭部に痒みがあるとして再来したが,すでに前頭部から頭頂部に広範に ブラック・ドットが広がっており,毛髪も粗になっていた.直接鏡検,培養ともに陽性であった.再発を繰り返しており,治療に抵抗性であるため,今回,初診時,2005 年再発時および今回の再発時分離株の3株について,テルビナフィン,イトラコナゾール,アムホテリシン B,フルシトシン,フルコナゾール,ミコナゾール,ミカファンギンにつき MIC 値を測定し,比較したところ,これら抗真菌剤に対する耐性獲得傾向は認められなかった.なお,対照として,最近流行している柔道選手から分離された同菌種 3 株を用いたが,薬剤感受性はほぼ同レベルであった.現在,感受性の高かったテルビナフィン (125 mg/日) の経口投与を再開し,経過観察中である.
  • 細川 篤, 稲福 和宏
    セッションID: P69
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    2004年11月に沖縄県内某高校柔道部員の体部白癬から Trichophyton tonsurans が琉球大学医学部附属病院では初めて分離・同定された。同柔道部員32名に頭部擦過培養検査(hair-brush法)を行った結果,陽性率は71.9%(23/32)であった。部員は寮生活であり高い培養陽性率を予想したが28.1%が陰性であり,感染・発症には洗髪など個人的要因も関与する可能性が考えられた。
  • 河井 正晶, 鎌野 マヤ, 千見寺 貴子, 高森 建二
    セッションID: P70
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    症例:4歳男児。千葉県在住。既往歴・家族歴:特記すべきことなし。現病歴:平成17年7月中旬に頭部に膿疱、痂皮を伴う肉芽腫性病変が出現。徐々に拡大し脱毛が進行した。近医にて抗生物質処方されるも軽快せず、同年8月22日当科受診となった。なお7月はじめに飼い猫の耳に脱毛を認め、動物病院で治療していた。初診時現症:頭頂部に黒褐色の厚い痂皮が付着する径4cm大の肉芽腫性病変を認め、毛髪は容易に抜けた。真菌学的検査:痂皮のKOHによる直接鏡検では真菌要素多数認め、毛髪では毛外性小胞子菌性寄生を認めた。サブローブドウ糖斜面培地で培養したところ、表面白色綿毛状、裏面黄褐色のコロニーが得られた。スライドカルチャーでは8∼10個の房室を有する先端の尖った紡錘形の大分生子を多数認めた。以上より本症例をMicrosporum canis によるケルスス禿瘡と診断した。治療と経過:イトラコナゾール50mg/日内服開始し、1ヶ月で鏡検陰性化し、発赤、痂皮は著明に減少した。2ヶ月で培養陰性化し、軟毛再生が顕著に認められるようになったため、イトラコナゾール50mgを週2回に減量した。4ヶ月後には頭髪ほぼ正常な状態になった。感染経路:飼い猫は生後1∼2ヶ月の子猫で、耳に脱毛を認め動物病院で抗真菌薬の投与を受けていた。この猫からの感染が考えられた。
  • 田中 聖子, 御厨 賢, 楠原 正洋, 橋本 隆
    セッションID: P71
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    58歳、女性。1年半前より右手首に虫刺様の紅色丘疹が出現したため、近医受診し抗菌薬加吉草酸ベタメサゾンクリーム外用で治療開始した。皮疹は軽快再燃を繰り返し徐々に拡大した。3ヶ月後には両頬部にも小紅斑が出現し、同外用剤で加療されていたが皮疹が拡大増悪するため当科を紹介された。初診時現症:顔面全体と両耳介、右頸部にかけて不規則な紅斑、漿液性丘疹と膿疱が多発混在し、一部は厚い黄色痂皮の付着が認められた。他胸部、右前腕、右手掌・手指、大腿部にも同様の皮疹を認めた。頸部の皮疹からの病理組織検査では、表皮内に好中球の浸潤と海綿状態が見られ、真皮にも好中球とリンパ球主体の細胞浸潤が認められた。PAS染色で角層と毛包周囲に菌糸形菌要素を認めた。鱗屑のサブローブドウ糖寒天培地による培養では、発育の早い白色粉状のコロニーを認め、Trichophyton mentagrophytes と同定した。治療はイトラコナゾール100mg/day内服を開始し、紅斑、膿疱の改善が見られたが、経過中厚い痂皮の付着が残存しアカツキ病様を呈した。8週間の内服で色素沈着とステロイド酒さによると思われる毛細血管拡張を残して略治した。
  • 小林 美和
    セッションID: P72
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    汎発性白癬5例を報告する。
    び漫性落屑型汎発性白癬の4例はすべて成人型T細胞性白血病リンパ腫(ATL)に合併し、うち2例は汎発性白癬の診断を契機にATLがみつかった。汎発性白癬を発症した時点でのATLの病型はそれぞれ異なっていたが、いずれの例も白癬は難治であり,T細胞機能の低下に関連したと考えた.
    もう1例は多発頑癬型であり、全身性ループスエリテマトーデスを合併していた。ステロイド剤の使用歴があり,抗CD20抗体による治験中に発症したためそれに連鎖するT細胞の消費によるとも考えた.ケルスス禿瘡も併発していたが、外用治療のみで汎発性白癬は軽快した。
  • 竹中 基, 西本 勝太郎
    セッションID: P73
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    角質増殖傾向の著明な足白癬は、抗真菌剤の外用療法のみでは難治であり、経口抗真菌剤必要なことが多い。しかし、角質増殖傾向の著明な足白癬は高齢者に多いこともあり、併用薬剤や副作用の問題で経口抗真菌剤の使用を躊躇することも多い。そのため、抗真菌剤の密封療法や尿素軟膏との併用療法が試みられており、70 から 80%の有効性が報告されている。今回われわれは、ゼフナートクリーム(一般名:リラナフタート)と皮膚軟化薬である5%サリチル酸ワセリン軟膏の併用療法を8週間行い、その効果を検討した。皮膚所見の改善度では、著明改善 25%、中等度改善 25%、軽度改善 50%であった。しかし、皮膚所見の改善度および真菌検査の結果で総合効果判定を行ったところ、75%の症例で、有効もしくは著効と判定された。副作用は認めず、サリチル酸ワセリン軟膏による皮膚刺激性も認められなかった。サリチル酸ワセリン軟膏は足白癬に保険適応もあることから、角質増殖傾向の著明な足白癬にたいして、ゼフナートクリームとサリチル酸ワセリン軟膏の併用療法は試みてみるべき治療法と考えられた。
  • 高畑 ゆみ子, 比留間 政太郎, 白木 祐美, 武藤 正彦
    セッションID: P74
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    Terbinafine 錠(TBF)は、爪白癬の治療として日本では125mg/日、6カ月間の連続投与が標準治療である。一方、月1回のパルス投与は患者のコンプライアンスが良く、本剤においても、パルス投与の有用性の検討は大切である。方法は、月1回TBF 500 mg/日x1週間の投与を、3回内服と足白癬に対して外用抗真菌剤単純塗布を行った。症例は30例(男14、女16、平均年齢53.5歳)、すべて爪白癬である。治療期間は9週間で、判定は12か月目に行った。成績は治癒80%、著明改善(70%以上改善)6.6%、改善(40-70%まで)無、やや改善(40%まで)6.6%、不変(副作用で中止)6.6%で、著明改善以上86.6%で、副作用は胃腸症状1名、薬疹1名(6.6%)で極めて優れた結果であった。本療法は、間歇投与であり、月1回で計3回の通院のみで治療ができ、患者への負担が少なく、かつ治療成績も優れたものであることが判明した。
  • 飯田 利博
    セッションID: P75
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    爪白癬に対してイトラコナゾール400mg/日によるパルス療法が2004年より一般的となり、治療の中心となっている。パルス療法終了時の有効性はすでに認められているが、その後の治癒あるいは再発・再燃などの経過についてはさらに経過観察が重要である。今回第一趾の爪に菌要素を認めた中等症(混濁比4∼6)と重症(混濁比7∼10)の罹患者に対し、イトラコナゾール400mg/日のパルス療法(7日間内服後3週間休薬)を3回行い、治療開始から6ヶ月後に効果を判定した。有効以上となった症例のみをその後2年間経過観察を行い、それらの治癒、再発・再燃について、以前行われていた連続内服療法やイトラコナゾール200mg/日のパルス療法と比較検討した。その結果、重症ではイトラコナゾール400mg/日によるパルス療法が最も有効な治療法であるが、中等症ではイトラコナゾール200mg/日パルス療法との間に優意差はなかった。
  • 小林 裕美, 中西 健史, 田宮 久詩, 石井 正光, 比留間 政太郎
    セッションID: P76
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
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    【目的】昨年の本学会において我々はイトラコナゾール(ITCZ)パルス療法の爪白癬に対する6ヵ月後の効果をscoring clinical index for onychomycosis (SCIO) を用い重症度別に検証し、患者満足度を中心に報告した。今回は、患者の生活習慣が治療効果に及ぼす影響を検討するとともに、治療開始から12ヵ月後の改善度を調査した。【方法】H16年9月∼11月に大阪市立大学および協力施設皮膚科を受診した爪白癬患者にITCZパルス療法を行うと同時に患者の生活習慣(飲酒、喫煙、靴をはく時間、靴の種類、スポーツ習慣の有無など)に関するアンケート調査を実施した。改善度とSCIOについて生活習慣の項目ごとに比較し、治療効果に及ぼす因子について調査した。さらに、12ヵ月後の効果判定を行い、前回の結果と比較した。【結果】アンケート回答は、37例(年齢61.5±13.2歳、男性19名、女性18名、SCIO:19.2±7.3、爪混濁比:7.5±2.3)から得られた。喫煙、非喫煙者のSCIO値に差はなく、著効以上は喫煙者が33%、非喫煙者44%、飲酒者は36%、非飲酒者48%であった。スポーツ習慣のある患者のSCIO値は、ない患者よりやや高かったが治癒と著効例が多い傾向が見られた。靴の種類によっても治癒率に差がみられた。12ヵ月後の効果判定を行いえた23名(SCIO:20.5±7.8)の結果を6ヵ月後の判定時と比較すると、極めて有用30%→48%、有用以上91%→91%であり、12ヵ月後の改善率がより高い結果となった。
  • 常深 祐一郎, 嶋津 苗胤, 服部 尚子, 小宮根 真弓
    セッションID: P77
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    イトラコナゾール400mgパルス療法開始前の肝胆道系酵素値(開始前値)が基準値内の患者群(開始前値正常群)と基準値の2.5倍以内の異常を有する患者群(開始前値異常群)に分け、さらに65歳未満群(非高齢者)と65歳以上群(高齢者)に分け、各群でパルス療法開始後の肝胆道系酵素値の推移を検討した。2クール目または3クール目直前の検査でいずれかでも開始前値より50%以上肝胆道系酵素値の上昇したものを開始後上昇、50%未満の上昇にとどまるものを開始後不変とした。基準値の2.5倍を超えたものを中止とした。開始後上昇は開始前値正常群と開始前値異常群で108人中15人(13.9%)と34人中5人(14.7%)で差はなかった。高齢者では33人中7人(21.2%)で、非高齢者の109人中13人(11.9%)と比較して有意差はないものの開始後上昇の割合が高い傾向にあった。中止症例は非高齢者1人(0.9%)、高齢者1人(3%)で両者とも開始前値正常群であった。イトラコナゾールパルス療法では、開始前の肝胆道系酵素値異常が軽度な場合は、正常な場合と比べてパルス療法中の悪化のリスクは同等で、投与可能である。高齢者では非高齢者と比較して肝胆道系酵素値の軽度の上昇をみることが多いが、投与中止に至る割合は非高齢者と同等で少数である。
  • 清島 真理子
    セッションID: P78(SIV-2)
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    われわれは高齢者に生じたスポロトリコーシスに対し、ヨウ化カリウム(KI)およびイトラコナゾール(ITZ)により各1例の治療を行った。ITZ治療例ではITZおよびその変化体(OH-ITZ)の組織内濃度を測定する機会を得たので、その結果も含めスポロトリコーシスの治療法について検討した。症例1は79歳女性。6か月前より右前腕に皮膚潰瘍、結節があり、培養でSporothrix schenckiiを検出した。KI内服により潰瘍は2週間で消失し、2か月後には培養陰性となった。一方、症例2は75歳女性。2か月前に左大腿の皮膚潰瘍、結節に気づいた。培養でSporothrix schenckiiを検出。胃腸障害を起こしやすいという既往歴からKIではなく、ITZを選択し、100mg/日1週間、200mg/日8週間内服した。なお温熱療法も勧めたが、実際の施行状況は不明であった。6週後に潰瘍は消失したが、8週後にも培養陽性であったため、切除術を行った。症例2においてITZ内服後、組織のITZおよびOH-ITZ濃度を測定したところ、ITZおよびOH-ITZは過角化、表皮肥厚の著明な組織には十分集積しているが、真皮内濃度は低く、真皮を病変の場とする深部皮膚真菌症では治療に適さないと考えられた。これらの所見から現在のところITZよりKIが本症に対し有効な治療法と考えられるが、KIは作用機序が明確でなく、臨床的には胃腸障害を起りやすいなどの点から今後の検討が必要である。
  • 五十棲 健, 榎本 韻世, 槙村 浩一
    セッションID: P79
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    49歳女性,糖尿病患者の右第_I_趾熱傷潰瘍部に特異な黒色局面を形成した症例を経験した。前医で処方されたステロイド含有軟膏を外用後,熱傷形成から約6ヶ月後に当科を受診。局面は19×11mm大,熱傷潰瘍部ほぼ全体を覆うように、黒い敷石状を呈し、極めて弾力性を帯び、潰瘍部に固着。擦過等の軽い外力では容易にはがし難かった。局面の直接鏡検および病理組織所見により,その局面は黒色真菌がまさに菌の集塊をなしているかのような様相を呈していた。炎症性細胞浸潤および肉芽腫反応はほとんど認めなかった。この局面および生検組織を抗生剤加サブローブドウ糖寒天培地25℃で培養したところ,当初暗緑色,次第に黒色を呈する菌の集落を得た。32℃では発育は極めて緩徐であったが,数週間以上かけて鮮やかな黒色かつ結節状に膨隆する菌の集塊を形成した。スライドカルチャーおよび走査電顕にて,クラドスポリウム型主体、一部シンポジオ型に分岐する分生子の形成を認めた。同株の28S rDNA(D1/D2)領域塩基配列528bpが Cladosporium sphaerospermum (AB100654他)と単系統のcladeを形成し、100%の一致が得られたため、同菌と同定。MIC (μg/ml)はAMPH/0.5, 5-FC/8.0, FLCZ/64.0, ITCZ/0.25, MCZ/0.25, MCFC/<=0.03。Debridement後局所AMPH処置,ITCZ200mg2ヶ月内服とし略治。PubMed(Medline)検索を施行したが、これまで黒色真菌により同様の黒色局面が形成された症例の報告を認めない。特異な黒色局面の病因と培養された菌の特性につき考察を加えて報告する。
  • 御厨 賢, 田中 聖子, 楠原 正洋, 橋本 隆, 蜂須賀 裕志
    セッションID: P80(SIV-3)
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    15歳、女性。宮崎県宮崎市在住。1年前より左手掌に自覚症のない小褐色斑が生じ、徐々に増大したため蜂須賀クリニックを受診した。初診時現症:左手掌に境界明瞭な径約1cmの円形淡褐色斑が存在。局面は擦過により容易に鱗屑の採取が可能で、直接鏡検で隔壁を有する菌糸が観察された。サブローブドウ糖寒天培地による培養にて黒色のコロニーが得られた。スライドカルチャーでは分生子柄より形成される1から2細胞性の小分生子を認め、走査電顕でシンポジオ型分生子形成が観察されたためHortaea werneckii と同定した。黒癬は、1983年に名嘉真らにより沖縄県で本邦第1例目が報告され、以来我々が調べ得た限りでは23例の報告がなされている。今回自験例の報告とともに、自験例を含めた24例について若干の統計的考察を行った。発症地域としては17例が九州地方と最も多く、そのうち9例が沖縄での報告であった。男女比は3:5で、発症年齢は20歳までの若年者に多い傾向が認められた。部位的には手掌が24例中19例と最多であった。
  • 柳原 誠, 花川 博義, 河崎 昌子, 石崎 宏, 望月 隆, 宇田川 俊一
    セッションID: P81
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    症例:75歳、男性。長靴をはいて土いじりをする。初診:平成18年3月20日。主訴:左第4趾間の掻痒性の皮疹。既往歴・家族歴:特記する事はない。平成18年1月頃に掻痒性の皮疹に気付いた。現病歴:右第4趾間から足底にかけて3cm x 4cm程の鱗屑を伴う発赤があり、趾間中央に褐色で厚い角質様のものが付着していた。付着物のKOH検査により褐色の菌要素が認められた。経過:分離培養を行った後テルビナフィンクリームを外用した。3週間後、4月10日の再来時の分離培養で、1回目の培養と同様のコロニーが得られた。4月17日には角化性皮疹はなくKOH(–)、鱗屑の培養も(–)であった。しかし4月24日に発赤と鱗屑が残っていたためアスタット軟膏を外用した。6月13日には皮疹の消退を確認した。菌学的所見: 褐色の付着物をサブロー培地に接種し、27℃で培養したところ、気中菌糸の豊富な成長の速い黄土色のコロニーが得られた。スライドカルチャーでは褐色で隔壁のある分生子柄がやや屈曲して長く伸び、先端部近くに房状に生じたポロ型分生子は褐色、楕円形または棍棒形、先端は丸く基部はやや裁断状で、横隔壁により通常4細胞、表面滑、先端から2番目の細胞が特に大きく膨らんでいるため全体としてわずかに湾曲しているという特徴が観察された。Curvularia属菌を考え、ポテトデキストロース寒天平板培地で培養したところ、黒っぽいコロニーを形成した。
  • 前田 学, 谷 健次, 米光 康
    セッションID: P82(SIV-4)
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    2004年7月から7ヶ月間に県立岐阜病院皮膚科で加療中のシェーグレン症候群(Sjs)34例とSjs疑い42例およびnon-Sjs33例(男17名、女92名、年齢61.1±11.7歳)を対象に舌苔のカンジダを培養・同定し、検討した。総検体数は188件で、方法はスワブ(棉球)にて舌表面をまんべんなく軽く10回擦過し、即、平板培地を用いて塗沫培養を行い、数日以内に菌集落5個以上のものを陽性とした。その結果、総検体188件中160件(85.1%)に菌集落陽性で、内39件は1種類、44件に複数の菌集落を得た。1種類中28件(71.8%)にC. albicans が得られ、その他には C. tropicalis 3件、C. famata 2件、C. glabrataCryprococcus neoformans (C. neoformans) 各々1件で不明4件であった。一方、複数の菌集落44件中、C. albicans と他菌種組合せが33件(75%)でその他の複数菌種組合せは11件(25%)であった。他菌種の延べ集計ではC. glabrata 39件、C. tropicalis 11件、C. dubliniensisC. parapsilosis は各々6件、C. guilliermondiiS. cerevisiae は各々3件、C. famataCryprococcus lanrentii は各々2件, Rhodotorula glutinisC. neoformans は各々1件で,不明は14件であった。菌種別の合計では C. albicans は63件、C. glabrata 40件、C. tropicalis 14件、C. dubliniensisC. parapsilosis 各々6件の順に多かった。Sjs群では他群に比較して菌集落が多く得られ、Sjs疑群では特に C. albicans を主とする菌種が目立った。口渇症状あり群(口渇群)とない群別に各菌種との相関を検討した結果、C. albicans とそれ以外の菌では、あり群に有意にそれ以外の菌が多かった(<0.05)。一方、C. glabrata では、同様な傾向(0.1<<0.15)がみられたが、それ以外の菌では有意差はみられなかった。 以上より、Sjs群はカンジダ菌が多く、口渇群は弱毒株がより多く検出されると分かった。この原因は不明であるが、唾液分泌との相関や、生体免疫能の低下による可能性を考え、現在検討中である。
  • 凌 太郎
    セッションID: P83
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    Wegener肉芽腫症に対してプレドニゾロン(9mg/日)内服中の68歳、女性。初診の約1ヵ月前に、右手背をハンガーで擦過した。その後、創部が腫脹・排膿してきたため当科受診となった。
    初診時、右母指基部に4cm大の扁平隆起する肉芽腫性病変を認めた。炎症性潮紅と虫食い状の潰瘍を伴っていた。病理組織学的には化膿性肉芽腫像を呈したが、明らかな菌要素は認めなかった。膿汁および組織片培養より菌の発育を認め、生理生化学的性状からNocardia concava と同定した。本例は明らかな外傷歴を有し、他臓器に病変がなかったことから原発性皮膚ノカルジア症と診断した。塩酸ミノサイクリン(100mg/日)の内服治療を4週間行い、略治した。現在まで再発・再燃はみられない。
    会員外共同報告者
    佐賀大学医学部内科学皮膚科:井上卓也, 三砂範幸, 成澤寛
    同大学医学部附属病院検査部感染制御検査室:草場耕二, 永沢善三
  • 加納 塁, 渡辺 晋一, 長谷川 篤彦
    セッションID: P84
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    9歳齢、去勢雄のペルシャ猫が背部の皮下腫瘤を主訴に来院した。腫瘤は3年前に発現し、他院で2度摘出術をうけたが、半年前に再発した。摘出した腫瘤はそれぞれ病理組織学検査で真菌感染症と診断されたが、抗真菌薬は投与されていなかった。背部の皮下腫瘤は、大きさが約2.5X5cmと3.7X5cm、表面は不整で、弾性硬で可動性が認められた。また、大きい方の腫瘤は瘻管が2カ所で開口し、黄色の顆粒を含む血様膿汁が排泄されていた。この膿汁をPAS染色したところ、隔壁のある菌糸(幅3∼4μm)が確認された。また、腫瘤を生検し病理組織学検査を行ったところ、真皮下層に多数の菌塊が見られ、それらをとりまくように好中球、マクロファージ、線維芽細胞が多数認められ肉芽腫性炎を呈していた。生検材料および膿汁をサブローブドウ糖寒天培地上に接種して、27℃で培養したところ、発育の非常に遅い、隆起した白色菌糸状の集落が複数確認された。この集落を掻き取り鏡検したが、分生子の産生は認められなかった。次に菌塊から定法に従いDNA抽出後、28S ribosomal D1/D2領域のクローニングを行い、塩基配列の相同性解析を行ったところ、Arthroderma otaeのそれと100%一致し、またその他の皮膚糸状菌とは97%以下の相同性を示したため、分離株を Microsporum canis と同定した。本症例はイトラコナゾール10 mg/kgの1日2回の内服投与を1カ月行ったが、効果はみられなかった。そこで30 mg/kg1日1回に増量したところ腫瘤の縮小が認められ、現在治療継続中である。 今回菌腫から真菌を培養したが、形態的には同定できなかったが、分子生物学的手法により M. canis と同定した。猫および犬の M. canis 感染による菌腫の報告は非常に少ないが、抗真菌薬内服や外科的摘出を行っても治療困難とされている。本症例はイトラコナゾールの高用量投与に対して反応が認められた。
  • 杉山 和寿, 佐野 文子, 西村 和子, 亀井 克彦
    セッションID: P85
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    Chaetomium globosumは,通常環境汚染菌と考えられているが,時にヒトの皮膚に感染し,免疫不全患者では死に至ることもある.今回イヌの同菌種による皮膚感染例を経験した.症例は雑種犬,4ヵ月齢,雄,体重7.25Kg.初診10日前より頭部から尾根まで分布する落屑を伴った脱毛病変を発症し,特に左眼下部では直径約7cmの円形脱毛および発赤,皮膚の肥厚を認めた.直接鏡検で有隔性菌糸を認め,ウッド灯検査は僅かに発色した.培養でやや黄色を帯びた白色集落が得られ,Microsporum canis感染を疑い,患部の清浄清拭と外用抗真菌剤による治療を行った.治療後1および3週間後の培養検査でも,初診時の分離菌株と同様の菌が分離された.外用剤による局所治療とケトコナゾールの内服投与を併用したところ9週間後には症状が消失し,培養検査も陰転した.12週間後に投薬を終了したがその後再発はない.分離菌のサブロー(SDA)平板培地上の集落は特に構造物を持たないやや黄色を帯びた白色であった.ポテトデキストロース寒天(PDA)スラントでは,室温,約4週間培養で深緑色の集落となり,縮毛を伴った黒色子嚢殻を形成した.最終的にD1/D2領域の配列からC. globosumと同定した.SDAを用いた場合,本菌種の発育初期はM. canisに酷似している.また,PDAを用いても分生子形成までに4週間以上の日数を要し,形態学的な同定が難しい.過去に分生子形成の悪いM. canisによる皮膚糸状菌症と診断されている症例に本菌種による感染症例が埋もれていることが考えられた.
  • 村田 佳輝, 森 俊士, 佐野 文子, 鎗田 響子, 高山 明子, 西村 和子, 亀井 克彦
    セッションID: P86(SIV-5)
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    Colletotrichum gloeosporioides は分生子果不完全菌類 Coelomycetes に属し,植物の炭疽病菌で,ヒトでの感染は角膜真菌症,深部皮膚症例の数例が報告されているが,動物症例の報告はみられない.今回経験した症例は日本猫,避妊雌,10歳.1ヶ月前より元気,食欲の減退と左前肢端の自潰を伴う肉芽腫性病巣,鼻稜の腫脹で来院した.腹腔内に20 x 30 mmの腫瘤を触知したため,腹部X線およびエコー検査を行い,腫瘤を確認した.血液検査では白血球増多と血小板減少を認め, BUN,無機リン,AST,ALTが高値を示した.血清学的検査ではFIV陽性,FeLV陰性であった.腹腔内腫瘤のFNAで多数のリンパ球と菌糸を認め,左前肢端の潰瘍及び鼻稜の腫脹部分の塗抹でも同様の菌糸を認めた.左前肢端の潰瘍を抗生物質ポテトデキストロース寒天培地で培養したところ,黒色の付着器,単細胞性分生子をともなった表面白色で裏面深緑色の集落が分離され,D1/D2 領域の配列はAJ301909と100%一致し C. gloeosporioides と同定した.また,鼻稜の塗抹検体からも同遺伝子の部分配列を検出した.本分離株の抗真菌剤の感受性はAMPH; 0.5 μg/ml,ITZ; 0.5 μg/ml,MCZ; 0.5 μg/mlであったが,5-FC,FLCZ,MCFGには耐性を示した.ITZを20 mg/dayで9日間経口投与し,いったん症状の改善を認めたが,第9病日に全身状態の悪化および家族の希望により,安楽死となった.今回の症例は猫エイズによる免疫不全からの日和見感染症と推測された.本菌種は自然界に広く分布するので,今後ヒトにおいても免疫不全患者での感染に注意を要する菌種の一つである.
  • 村田 佳輝, 佐野 文子, 高山 明子, 鎗田 響子, 西村 和子, 亀井 克彦
    セッションID: P87
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    Arthrographis kalrae は表在性および深在性真菌症を発症させる人獣共通新興真菌症原因菌である.昨年の本会にて我々はイヌ口腔内より分離した本菌種につて発表したが,今回本菌種による感染例を経験した.症例は日本ネコ,8歳,去勢雄でFIV陰性,FeLV陰性,既往症としてヘルペスI型ウイルス慢性感染があり,昨年4月に1ヶ月前より左前頭部に持続性の潰瘍が有り来院,血液検査では好酸球の増加と血小板の僅かな減少がみられた.猫好酸球性潰瘍(FEPU)を疑い,ステロイド剤の投与を行ったところ,5月末には改善されたが,8月に再度悪化した.この時点の培養検査では Trichosporon sp.と同定し,ケトコナゾール外用を継続していたが,本年3月時点でも改善されず,再度分離培養を行ったところ,A. kalrae が分離された.現在,ケトコナゾールの内服,ミコナゾール外用により治療中である.分離株の集落はやや褐色を帯びたフエルト状で,裏面はやや黄色を帯び,分節型および出芽型分生子を形成し,37℃および42℃で酵母形発育を示し,ウレアーゼ陽性,シクロヘキシミド耐性,rRNA遺伝子ITS領域の配列がAB116536と100%一致したことから,A. kalrae と同定した.本分離株の抗真菌剤に対する感受性はITZ;0.5 μg/ml,MCZ;1 μg/mlであったが,AMPH,5-FC,FLCZ,MCFGには耐性を示した.今回の分離株は42℃でも良好な発育を示したことから,より強い病原性を持つことが示唆された.今後,本菌種は Trichosporon sp.との鑑別も含め日和見真菌症原因菌として注意が必要である.
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