本研究は75歳以上の人工股関節全置換術(Total Hip Arthroplasty: 以下THA)を受けた高齢者に術後の困難を聴取し,生活の質低下予防につながりうる看護実践への示唆を得ることを目的とした.初回THA実施後の後期高齢者9名に対し術後の初回外来受診時に半構造化面接を行った.対象者属性,退院後からインタビュー時点の生活状況,THA後の困難事象等を尋ね,内容分析を行った.分析の結果【退院後も症状が続くこと】【介護・福祉サービス利用の手続きが必要だったこと】【家庭内で家事役割の分担が必要だったこと】等8カテゴリが生成され,術前に,術後の痛み等の症状によって歩く速度や姿勢が異なる感覚を抱きうることの説明や,退院直後の腫れや痛みによって動作に時間がかかる時期にサービス利用ができるよう必要な申請を行うこと,また家庭内で家事役割の分担をして退院後の生活に備えるよう対応する必要性が示唆された.