日本看護技術学会誌
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1 巻, 1 号
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日本看護技術学会創立記念講演
原著
  • 角濱 春美
    2002 年 1 巻 1 号 p. 11-19
    発行日: 2002/09/20
    公開日: 2016/10/21
    ジャーナル フリー
     本研究は入所という環境変化を体験する高齢者の睡眠覚醒リズムを在宅から入所へと継続的に明らかにすることを目的とした. 睡眠覚醒リズムの判定には, 活動計 (アクチグラフ) を用い, 痴呆度はNMスケールを, ADLはBarthel Indexを用いて把握した.
     対象はショートステイを利用する高齢者11名, 平均年齢85.3歳で, 同施設での入所を3~20回経験していた.
     在宅時と入所時の睡眠データの比較では, 活動量, 睡眠時間, 覚醒時間, 睡眠の分断を示すSleep Episode, リズムの振幅を示すAmplitudeともに有意差は認められなかった. 視察法により睡眠覚醒パターンの分類をしたところ, ①在宅時 ・ 入所時ともに単相性睡眠であり, 昼夜明確な5例, ②在宅時 ・ 入所時ともに多相性睡眠で昼夜不明確な5例, ③在宅時不明確で入所時明確に移行した1例, の3つに分類できた. 昼夜不明確群は明確群に比し, 活動量が低く, 覚醒時間が短く, 睡眠時間が長く, リズムの振幅が低く, 統計学的有意差が認められた. さらに, 不明確群は, 痴呆度が高く (p=0.047), ADLが低い (p=0.0008) という特性を有していた.
     高齢者の援助を行うにあたっては, 高齢者個々の睡眠覚醒リズムの昼夜明確性に適応したケアを行っていく必要性があることが示唆された.
  • 櫻井 利江
    2002 年 1 巻 1 号 p. 20-27
    発行日: 2002/09/20
    公開日: 2016/10/21
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は, カテーテル治療の術後などに適用される, 体動制御を伴う仰臥位保持において, 時間予告が自律神経系活動に及ぼす影響を明らかにすることである. 研究協力に承諾の得られた21~35歳までの健康な男女を対象とし, 時間予告と体動制御を組み合わせた3群に男女比を同一にして無作為に振り分け, 135分間の仰臥位中の心拍変動を測定した. 心拍変動解析は祖視化スペクトル法 (Coarse Graining Spectral Analysis ; CGSA) で行った. 交感神経活動, 迷走神経活動ともに, 体動制御下においては時間予告の有無による有意差が検出されたが, 時間予告のされない条件が同一で体動制御の条件の異なる群間での有意差は検出されなかった. また時間予告により迷走神経優位の状態は維持されたが, 時間予告のない群では交感神経優位の状態が続いていた. これらの結果により, 時間予告の有用性が示唆された.
  • 縄 秀志
    2002 年 1 巻 1 号 p. 28-35
    発行日: 2002/09/20
    公開日: 2016/10/21
    ジャーナル フリー
     本研究は, 婦人科外科患者における術前から術後1週間の気分, 痛み, 自律神経活動の経時的変化を明らかにすることを目的とした.
     気分の測定には研究者作成の 「とてもだるい (-4点)~とてもいい気分 (+4点) 」 の9段階スケールを, 痛みの測定には Visual Analogue Scaleを使用した. 自律神経活動の測定には, 心拍変動スペクトル解析法の祖視化スペクトル (Coarse Graining Spectral Analysis) 法を用いた.
     研究の承諾が得られた子宮筋腫または卵巣嚢腫の開腹術を受ける患者6名を被験者とした.
     術前における自律神経活動は, 交感神経活動が亢進する場合と副交感神経活動が亢進する場合があり, 手術に望むストレス反応が顕著であった.
     気分, 痛み, 自律神経活動ともに1病日から2病日にダイナミックに変化し, 手術侵襲反応を示した. この時の自律神経活動は, 交感神経活動の亢進あるいは副交感神経活動の亢進を示した.
     3病日以降の気分, 痛みは回復傾向を示した. 自律神経活動は, 交感神経活動が安定する場合には術後いったん低下した副交感神経活動が回復していた. また, 交感神経活動の亢進する場合には副交感神経活動が低迷していることが見出された.
  • 縄 秀志
    2002 年 1 巻 1 号 p. 36-44
    発行日: 2002/09/20
    公開日: 2016/10/21
    ジャーナル フリー
     研究承諾が得られた子宮筋腫または卵巣嚢腫の開腹術を受ける患者4名を被験者とし, 術前から術後1週間, 継続して背部蒸しタオル温罨法ケアを行い, ケア前後の気分, 痛み, 自律神経活動の影響について検討した.
     気分の測定には研究者作成の 「とてもだるい (-4点)~とてもいい気分 (+4点)」 の9段階スケールを, 痛みの測定には Visual Analogue Scaleを使用した. 自律神経活動の測定には, 心拍変動スペクトル解析法の祖視化スペクトル (Coarse Graining Spectral Analysis) 法を用いた.
     背部ケアは, 気分の有意な上昇と痛みの有意な軽減をもたらし, 周手術期患者の主観的側面に効果のある介入であることが明らかになった.
     背部ケアは, 副交感神経活動が低く交感神経活動が亢進している場合には, 副交感神経活動を増加させ交感神経活動を低下させる傾向がある. また, 副交感神経活動が高く交感神経活動が低い場合には, 副交感神経活動を低下させ交感神経活動を増加させる傾向を示した. したがって, 背部ケアには, 副交感神経活動と交感神経活動を「ある (安定した) バランス」に整える作用がある可能性が示唆された.
  • 武田 利明
    2002 年 1 巻 1 号 p. 45-50
    発行日: 2002/09/20
    公開日: 2016/10/21
    ジャーナル フリー
     褥瘡発生の内的要因として重要な栄養低下を考慮した褥瘡の病態動物モデルを用いた実験的研究を実施し, 治癒遅延化褥瘡の発生を早期に予測する方法について検討した. 栄養不良ウサギの大腿骨第三転子部に500g/cm2 (370mmHg) の圧力を4時間加え実験的に褥瘡を作製した結果, 治癒遅延に移行する褥瘡と速やかに治癒する褥瘡が発生した. これらの褥瘡について, 病巣とその周囲の正常皮膚の表面温度について比較検討した結果, 病巣部では皮膚表面温度が低下する傾向にあった. また, 治癒遅延化となる褥瘡では皮膚表面温度が1℃低下していることが明らかとなった. 治癒遅延化褥瘡では, 真皮下層の血管網に多発性の血栓形成が認められ, 圧迫部位局所における重篤な循環障害のため皮膚表面温度が低下したと考えられた. この皮膚表面の温度は, 病巣に触れることなく容易に測定することが可能で, 得られた値は客観的データである. したがって, 臨床で使用可能な放射温度計を用いた皮膚表面温度の測定は, 難治化褥瘡の発生を早期に予測する方法として有用であると考えられた.
研究報告
  • -第1報 日常生活援助技術について-
    菱沼 典子, 大久保 暢子, 川島 みどり
    2002 年 1 巻 1 号 p. 51-55
    発行日: 2002/09/20
    公開日: 2016/10/21
    ジャーナル フリー
     看護の日常業務や教育の中で, 看護技術の実施は各施設や各個人に任されているため, 実際にどのように提供されているか, どのように教えられているかは, 知られていない. 看護職が提供する看護技術の質の保証を考えていくために, 今回, 看護技術の実態を知る目的で調査を行った. 清拭, 足浴, 経管栄養などの技術について, 26項目からなる無記名の調査用紙を作成した. 2001年5月~10月にかけて, 全国の各種研修会の参加者1,932名に調査用紙を配布し, 1,414名 (回収率73. 2%) の回答を得て分析した. 回答者は経験年数5年未満から35年以上までを含む看護師, 看護教員, 准看護師, 助産師, 保健師であった.
     清拭に関しては, ウォッシュクロスの使用の有無やその使い方について, 臨床と教育機関との間で乖離があり, 前腕部の拭き方はほぼ一致していたが, その根拠は検証されていないものであった. 経管栄養食の注入速度は, 経験年数によって差があった. 調査結果から, 頻繁に行われている日常生活援助の技術が, 施設や経験年数などによって異なる方法で提供されていること, 根拠が不明確な看護技術があること, また基礎教育で教える方法と臨床で使われている方法に乖離があることがわかった.
  • -第2報 医療技術と重なる援助技術について-
    菱沼 典子, 大久保 暢子, 川島 みどり
    2002 年 1 巻 1 号 p. 56-60
    発行日: 2002/09/20
    公開日: 2016/10/21
    ジャーナル フリー
     実際の日常業務や教育の中で, 看護技術がどのように提供されているのか, あるいは教えられているのか, またその技術が適応される理由は何なのかは必ずしも明らかではない. 今回常々疑問に思っていたいくつかの看護技術について, 実態調査を行った. バイタルサイン測定, 点滴漏れのときのケア, 筋肉内注射時の脂肪厚のアセスメントなどに関する26項目からなる無記名の調査用紙を作成した. 2001年5月~10月にかけて, 全国の各種研修会の参加者1,932名にアンケート用紙を配布し, 1,414名 (回収率73.2%) の回答を得て分析した. 回答者は経験年数5年未満から35年以上までの看護師, 看護教員, 准看護師, 助産師, 保健師であった.
     今回の調査結果から, 脈拍, 呼吸, 体温に関して多様な測定方法が用いられていること, またその測定値に対する判断基準も1つではない現状が明らかになった. 留置カテーテル抜去前のクランプテストは, 必ず行うから無駄なので行わないまで, さまざまな状況が示された. 発熱時に約8割がクーリングを行っていたが, その目的はバラバラであった. これらの結果は, 看護技術の根拠あるいは効果の研究の必要性が高く, 研究に裏付けされた看護技術の基準を作成し, 看護職に共通する技術にしていかなくてはならないことを改めて示している.
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