日本看護技術学会誌
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10 巻, 1 号
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原著
  • 今井 美香, 平井 真理, 桑原 裕子, 岩瀬 敏, 西村 直記, 清水 祐樹, 菅屋 潤壹, 藤井 徹也
    2011 年 10 巻 1 号 p. 93-102
    発行日: 2011/04/20
    公開日: 2016/08/01
    ジャーナル フリー
     本研究は,仰臥位と座位姿勢において怒責時の胸腔内圧 (以下怒責圧) の違いが直腸内圧に及ぼす影響と,怒責のかけやすさの差異を調査し,排便のしやすい体位について検討した.健康な成人男女 19人 (男性 12人 ,平均年齢 32.4 ± 11.5歳) を対象に,室温27℃,湿度 50%に設定した人工気候室で実験を行った.被験者は仰臥位および座位それぞれの体位で,15秒間の怒責 (10,20および30mmHg) をかけ直腸内圧を測定した.怒責圧と直腸内圧はサンプリング周波数1 kHzで A/D変換し記録した.また自記式質問紙を用いて排便のしやすさについて回答を得た.
     仰臥位 ・ 座位とも,怒責圧の上昇に応じて直腸内圧も上昇した.仰臥位 ・ 座位ともに怒責圧 10mmHgにくらべ 30mmHgで直腸内圧が高かった (仰臥位 : 6.8 ± 1.0 vs 17.3 ±2.6mmHg,p=0.002,座位 : 9.7 ± 1.8 vs 20.4 ± 3.0mmHg,p=0.01).また同じ怒責圧下で得られる直腸内圧は,座位のほうが仰臥位に比し有意に高かった (怒責圧 30mmHg時,17.3 ± 2.6 vs 20.4 ± 3.0mmHg,p=0.018).主観的には,被験者は日常生活で和式トイレを使用している被験者1名をのぞき,座位のほうが怒責をかけやすいと感じていた.座位のほうが仰臥位に比し同じ怒責圧で直腸内圧はより高く,生理的 ・ 主観的に座位のほうが怒責をかけやすく排便しやすいことが示唆された.
  • ─血管径・深さ・皮膚色の非侵襲的計測─
    木森 佳子, 須釜 淳子, 中谷 壽男, 福田 汐里, 宮地 利明, 紺家 千津子, 大桑 麻由美, 真田 弘美
    2011 年 10 巻 1 号 p. 103-110
    発行日: 2011/04/20
    公開日: 2016/08/01
    ジャーナル フリー
     末梢静脈内カテーテル留置法では,対象静脈が目視困難な場合,確実な穿刺,合併症の発生に影響を及ぼす.本研究の目的は目視困難静脈の穿刺技術向上に向け,目視の可否による血管径 ・ 深さ,動脈との位置関係を超音波診断装置で,皮膚色を色差計で計測し違いを明らかにすることである.研究デザインは実態調査型研究である.対象者は健常若年女性 20名,計測静脈は 58本,計測動脈は 18本であった.その結果,目視の可否に有意差があったのは深さのみで,血管径,動脈との位置関係,皮膚色は同等であることが明らかになった.静脈の深さの平均 (SD) は,目視可能静脈が2.7 (0.7) mm,目視困難静脈が4.6 (1.8) mmであった (p=.0001).目視の可否の分離値は 3.0mm (AUC=0.919,95%CI 0.84-0.99)で,深さ3mm以上の留置カテーテル用末梢静脈は目視困難になることが明らかとなった.したがって,目視困難な静脈は深さ3mm以上の穿刺技術が,動脈穿刺の防止は,目視の可否に関わらない穿刺技術の必要性が示唆された.
研究報告
  • 今井 美香, 平井 真理, 桑原 裕子, 岩瀬 敏, 西村 直記, 清水 祐樹, 菅屋 潤壹, 藤井 徹也
    2011 年 10 巻 1 号 p. 111-120
    発行日: 2011/04/20
    公開日: 2016/08/01
    ジャーナル フリー
     目的 : 本研究では,仰臥位と座位で排便時の怒責圧の強さの差異が循環系に及ぼす影響を検討した.
     方法 : 健康な成人男女 21人 (平均年齢 32.7 ± 10.1歳) を対象に,室温 27℃,湿度 50%に設定した人工気候室で実験を行った.被験者は仰臥位および座位姿勢をとり,1回 15秒の怒責をかけた.怒責圧は10,20および 30mmHgとし,その時の血圧と心拍数を測定した.
     結果 : 仰臥位と座位ともに,怒責圧が高いほど血圧 ・ 心拍数の変化は大きかった.血圧や心拍数の変化は怒責中のみならず,怒責解除後も怒責圧が高いほど大きかった.また怒責圧 30mmHgの場合では,Ⅰ相から Ⅱ a期の収縮期血圧の変化量が座位 41.43 ±13.30,仰臥位 26.86 ± 19.59mmHg (p<0.001) と,座位のほうが大きかった.怒責圧10 ・ 20mmHgでも同様であった.また,Ⅰから Ⅱ a期,Ⅲから Ⅳ相の心拍数で座位のほうが有意に大きな変化量を示した (p<0.01)
     結論 : 排便時に強く怒責をかけるほど循環系へ与える影響は大きく,また同一怒責圧時における循環系の影響は座位のほうが大きいことが明らかになった.
特別寄稿
  • ─文献検討の結果から─
    大久保 暢子, 牛山 杏子, 鈴木 恵理, 佐竹 澄子, 小板橋 喜久代
    2011 年 10 巻 1 号 p. 121-130
    発行日: 2011/04/20
    公開日: 2016/08/01
    ジャーナル フリー
     日本看護技術学会技術成果検討委員会の一組織であるポジショニング班では,看護職が行うポジショニング技術を既存の研究成果と臨床知から言語化し,臨床看護師に広く公表していく活動をしている.本研究では,活動の第一段階として看護職が行うポジショニングの定義を明確にすることを目的とした.また看護学同様,理学療法学におけるポジショニングの定義を調査し,看護学の定義と比較検討した.調査対象は,国内の大学に所蔵される看護学分野および理学療法学の国内外の教科書および参考書計 253冊で,方法は,ポジショニングの言葉が記載されている箇所を定義,目的の観点から抽出し,看護学,理学療法学ごとに共通性を分析し,定義と目的と導いた.倫理的配慮は,対象書物に偏りがないよう関東にある大学の最新版を採用した.結果,看護学における定義を「対象の状態に合わせた体位や姿勢の工夫や管理をすること」とし,目的は,安楽,合併症 ・ 廃用症候群の予防,気分転換などがあがった.理学療法学の定義は,対象者以外に介助者との関係も含んだ内容であり,看護学とは異なる点があった.今後は,上記の定義を仮定義として扱い,さらに臨床看護師のポジショニング技術の実践内容を分析したうえで,看護におけるポジショニング技術の言語化を進めていく予定である.
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