日本看護技術学会誌
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10 巻, 3 号
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研究報告
  • 細野 恵子, 井垣 通人
    2012 年 10 巻 3 号 p. 4-9
    発行日: 2012/01/15
    公開日: 2016/08/01
    ジャーナル フリー
     蒸気温熱シートによる湿熱加温が健康な若年女性の排尿回数および QOLに与える影響を明らかにする目的で,健康な若年女性 50名を対象に,1日の排尿回数を調査し,排尿回数が 7回/日以上の 15名を対象として,蒸気温熱シートを 3日間 (対照期 3日) 貼付 (腰部適用 7名,下腹部適用 8名 ; 平均貼付時間 9.3 ± 1.9/日) し,排尿回数とQOL,バイタルサインの変化を測定した.その結果,腰部あるいは下腹部への湿熱加温により,排尿回数の有意な減少を認めた.QOL (MOS36-Item Short-Form Health Survey-v2 ; SF-36v2) の変化では有意な改善は認められなかったが,下位尺度「日常役割機能 (精神) において改善傾向が認められた.38~40℃の穏やかな湿熱加温は自律神経活動を刺激し,交感神経活動の抑制あるいは副交感神経活動の亢進を促すことが報告されており,本試験においても湿熱加温による自律神経活動の変化が排尿回数の有意な変化および QOLの改善をもたらす可能性が示唆された.
  • 加藤 京里
    2012 年 10 巻 3 号 p. 10-18
    発行日: 2012/01/15
    公開日: 2016/08/01
    ジャーナル フリー
     本研究は,入院患者に対する後頸部温罨法について,生理学的指標,主観的睡眠および快感情との関連を明らかにすることを目的とした.入院中の女性 (61.8 ± 22.2歳) 6名を対象者とし,連続した3日間,就寝前に 40℃ 10分間の後頸部温罨法を実施した.
     後頸部温罨法を実施後,実施前に比較して手掌皮膚温が有意に上昇した (p=0.039)鼓膜温は有意な変化は認められなかった.対象者は後頸部温罨法によって温かさと気持ちよさを感じていた.温罨法施行中の快には,唾液アミラーゼが低下するような休息的快と,唾液アミラーゼが上昇する活動的快が含まれた.夜間の主観的睡眠状況については,研究前と研究3日目の比較において OSA睡眠調査票得点における総得点 (p=0.011),疲労回復得点 (p=0.008) が上昇し,睡眠の改善をみせた.
     後頸部温罨法は,唾液アミラーゼの上昇を伴う活動的快と唾液アミラーゼの低下を伴う休息的快が生じ,手掌の皮膚温上昇をもたらし,睡眠を促す可能性があることが示された.
  • 萩野谷 浩美, 佐伯 由香
    2012 年 10 巻 3 号 p. 19-28
    発行日: 2012/01/15
    公開日: 2016/08/01
    ジャーナル フリー
     本研究は,ストレス評価に唾液 αアミラーゼ活性 (sAA) が有用であるか否かを調べることを目的とした.
     健康な成人女性 7名 (27.9 ± 8.7歳,21~47歳 ) を対象として,暗算と足浴を各10分間行った際の sAAの変化を心拍数,スキンコンダクタンス,Visual Analogue Scale の変化と比較検討した.その結果,暗算開始前と比較して開始後でいずれの測定項目も有意に上昇し (p <0.05),sAAと各測定項目との間に有意な相関があることが明らかとなった (rs=0.631~0.798).sAAは,心拍数やスキンコンダクタンスなどの自律神経機能と同様に交感神経活動を反映しており,客観的にストレスを評価するための指標となりうると考えられた. 今回使用した携帯型 sAA測定機器は簡便で侵襲性もなく測定できることから,今後は患者のストレス評価だけでなく,臨床でのアセスメントやケアの客観的評価,看護研究にも応用できると考えられた.
  • ─最近5年間の消防署記録から─
    肥後 すみ子, 深井 喜代子
    2012 年 10 巻 3 号 p. 29-38
    発行日: 2012/01/15
    公開日: 2016/08/01
    ジャーナル フリー
     岡山県内一都市に発生した入浴事故の原因について,消防署の全面的な協力を得て調査した.平成 17年度から 21年度の5年間に同市で発生した入浴事故のうち,救急車が出動し,消防署が対処したケースは死亡例52,回復例 165であった.これらの事例の消防署記録から,入浴事故の実態とそのリスク要因を検討した結果,以下のことが明らかになった.①入浴事故の回復例は死亡例の約3倍であった.②死亡例は回復例より 14歳高年齢であった ( p <0.05).③入浴事故は冬季の 18時から 22時の時間帯に自宅で発生することが多く,家族との同居例が 89%であった.④回復例では夏季の低値をのぞき入浴事故発生に季節性はみられなかった.⑤死亡診断名の 63.5%は心肺停止であったが,それにいたる病態は不明であった.⑥回復例では意識消失の自覚症状が最も多く,その大半が浴槽内で発生していた.ついで気分不良と意識障害が多かった.⑦回復例では診断名の 34.6%が脳血管系疾患で,高血圧症との関連が推測された.⑧洗い場では高齢者の転倒や小児の外傷が多かった.
     以上のことから,わが国では入浴事故は複雑な要因が重なって日常的に少なからず発生していることが推測された.本調査では倫理上,警察対応となった事故事例は扱えなかったが,今後,それらを含めたデータ分析を行い,わが国における安全な入浴方法を探究していく必要がある.
資料
  • 大野 夏代, 小板橋 喜久代, 河内 香久子, 柳 奈津子, 兼宗 美幸, 木村 伸子, 坂本 めぐみ, 中山 久美子
    2012 年 10 巻 3 号 p. 39-43
    発行日: 2012/01/15
    公開日: 2016/08/01
    ジャーナル フリー
     【目的】国外で発表された看護技術としての指圧 ・ マッサージに関する成果より,それらの使用状況や効果,留意点を概観することを目的とした.
     【方法】CINAHL with Full Text より “acupressure” and ” nursing” をキーワードとし,全文が入手可能であった病者を対象とした英文文献 11件を対象とした.対象者の地域 (国),対象となる症状,用いた経穴と適用方法,研究デザイン,評価方法についてデータを整理した.
     【結果】対象となる症状は,呼吸困難,陣痛,嘔気嘔吐などであった.指圧 ・ マッサージは,標準的なケアに指圧 ・ マッサージを追加して適用された.使用頻度の高い経穴は「内関」「三陰交」「足三里」であった.アウトカムの評価は被験者の主観的な症状の程度と生理的指標を組み合わせたものが多かった.事故など有害事象の報告はなかった.
     【結論】 1.指圧 ・ マッサージは,全文献において症状緩和に有効であった. 2.指圧 ・マッサージを,もともと伝統医療のひとつとして用いる地域 (国) において,看護技術としても実践されている状況が確認された.日本においても指圧 ・ マッサージは人々の健康増進のために一般的に用いられているため,臨床現場において看護技術として採用することを検討できる土壌がある. 3.看護技術としては,位置を特定しやすく,衣服の着脱を要しない,前腕や下腿の経穴が多く用いられた.
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