日本看護技術学会誌
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11 巻, 3 号
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原著
  • ─先輩看護師と実施する体位変換時の身体感覚に焦点を当てて─
    山口 みのり
    2013 年 11 巻 3 号 p. 4-12
    発行日: 2013/01/20
    公開日: 2016/07/08
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,先輩看護師との体位変換の実践場面における身体感覚に着目して,新人看護師が看護技術を習得していく過程を明らかにすることである.研究方法は,参加観察法と半構造化面接法による質的記述的研究で,研究参加者は新人看護師5名であった.5月の病棟配属後,新人看護師は先輩看護師との生活行動援助を繰り返した.はじめは先輩看護師の行為についていけないと感じたが,それは援助のリズムを学ぶことにつながっていた.何度も実践することで,徐々に技術のコツをつかむと,6月を迎えたころには技術習得の手ごたえを感じ,先輩看護師と一体感のある動きを創出するようになった.また,自分のやりやすい方法を見い出し,患者にできることを促すことを通じて,患者へのまなざしも芽生えていた.7月から8月になると,患者を体位変換する際に得た身体感覚を頼りに,患者の身体状況をアセスメントし,患者に合わせて援助方法を選択するようになっていった.
  • 菊池 和子, 高橋 有里, 深浦 彦彰, 三浦 奈都子, 石田 陽子, 似鳥 徹
    2013 年 11 巻 3 号 p. 13-18
    発行日: 2013/01/20
    公開日: 2016/07/08
    ジャーナル フリー
     多発性硬化症の再発予防薬としてインターフェロンの自己注射が行われる.
     本研究は多発性硬化症患者を対象として,われわれの開発した大腿部筋肉内自己注射部位の皮下組織厚アセスメント式が有用であるかを明らかにすることを目的とする.
     皮下組織厚は皮膚表面から筋膜までの厚さ,とした.多発性硬化症患者 18人 (全例女性) を対象とし,BMI値および上腕部背面のアディポメーター測定 (triceptsskinfolds : TSF) 値を使用したアセスメント式による皮下組織厚を算出し,超音波診断装置 (エコー) による皮下組織厚の測定を行い,式から算出した値と,エコーによる皮下組織厚の測定値の関連を相関係数により分析した.BMI値使用の算出値とエコーによる皮下組織厚は有意に相関 (P<0.01) し,TSF値使用の算出値とも有意に相関 (P<0.05) していた.BMI値から算出する方法が有用であると考えられ,極端に体格が大きい者でない場合は,TSF値による算出値も有用と考えられる.
  • 後藤 大地, 田中 裕二, 藤田 水穂
    2013 年 11 巻 3 号 p. 19-27
    発行日: 2013/01/20
    公開日: 2016/07/08
    ジャーナル フリー
     本研究は,心臓外科手術前後における適切な呼吸訓練のあり方についての知見を深めるため,スーフル®による呼吸訓練に着目し,その訓練が循環動態,自律神経活動,中枢神経活動に及ぼす影響を検討したものである.年齢や既往歴,治療方針の影響を防ぐため健康な成人10名を被験者とし,安静時,呼吸訓練時 (5分間),その後の回復時について循環動態,自律神経活動 (訓練時をのぞく),脳波等を連続的にモニターした.その結果心拍数,血圧変動,大脳皮質活動は,呼吸訓練時において,安静時および回復時,もしくは一方と比して有意に上昇,活性化し,副交感神経活動は訓練終了5分後に比して20分後で有意に低下した (p<0.05).また,心拍数は訓練開始後3分で最大値に達し,回復するのに15~20分を要した.この結果より,今回の呼吸訓練は心負荷を生じること,交感神経活動の興奮および副交感神経活動の抑制を引き起こすこと,大脳皮質を賦活化し,特にα波の発現になんらかの影響を及ぼすこと,さらに術前訓練においては訓練方法を1回につき3分以内にし,15~20分以上の間隔をとったのちに訓練を再開するという方法が適切であると示唆された.
研究報告
  • ─ブリストル便形スケールと日本語版便秘評価尺度による分析─
    細野 恵子, 堀岡 恒子, 久光 雅美
    2013 年 11 巻 3 号 p. 28-34
    発行日: 2013/01/20
    公開日: 2016/07/08
    ジャーナル フリー
     便秘症状を有し活動レベルが著しく低い高齢患者 (平均年齢84±10歳) 25名 (男性4名,女性21名) を対象に,下腹部への長時間温罨法による湿熱加温刺激の影響と便通改善の有効性を検討する目的で,温罨法介入前後の便通状態と下剤使用量,浣腸 ・ 摘便の回数,バイタルサインの変化を測定した.温罨法には蒸気温熱シート (めぐりズム蒸気温熱パワー®肌に貼るシート : 花王株式会社製) を使用し,1日6.7±0.7時間の温罨法を7日間連続貼用した.便通状態の評価には『ブリストル便形スケール』と『日本語版便秘評価尺度 (CAS-ST版) 』を使用し介入前後の比較を行った.その結果,介入前後における便形スケール,便秘評価尺度,排便回数の有意な変化が示され,意識状態や活動レベルの低い高齢患者においても長時間の湿熱加温は便秘症状の改善に有効であることが確認された.また,収縮期血圧の有意な低下と拡張期血圧の減少傾向からリラクゼーション効果の可能性,皮膚および循環器系への影響のないことから長時間の継続的な本温罨法の安全性も示唆された.便形スケールは被験者の主観的情報が得られない場合でも便通状態の判定に有用であることが示唆された.今後の課題として,被験者からの主観的データが得られない場合においても客観的評価が可能となる評価方法の検討や尺度開発が必要と思われる.
  • ─ある助産師の皮膚洗浄技術の効果から─
    古田 祐子, 安河内 静子
    2013 年 11 巻 3 号 p. 35-45
    発行日: 2013/01/20
    公開日: 2016/07/08
    ジャーナル フリー
     乳児の皮膚トラブルに対するM助産師の皮膚洗浄法の有用性を検証することを目的に,当該皮膚洗浄開始から症状消失までに要する日数および表皮pH ・ 水分 ・ 油分の変化を明らかにした.
    皮膚トラブルを有する乳児10人を被験者として調査した結果,紅斑,丘疹,鱗屑,びらん,乾燥の皮膚症状は当該皮膚洗浄後3日から7日 (平均5.4日) で消失した.また,皮膚洗浄当日,表皮pHが5.7以上の乳児が7人おり,水分量が30%未満のものが3人いた.しかし,洗浄7日では,9人の乳児が表皮pH5.6以下の弱酸性となり,水分量は10人全員が30%以上となった.
     これらの結果から,当該洗浄法は乳児の皮膚トラブルを早期に改善し,表皮酸性度を好適状態にする方法として有用であることが示唆された.
  • 谷地 和加子
    2013 年 11 巻 3 号 p. 46-55
    発行日: 2013/01/20
    公開日: 2016/07/08
    ジャーナル フリー
     倦怠感のある外来がん化学療法を受ける患者への背部温罨法の有用性を明らかにすることを目的とした.対象者は倦怠感を自覚し外来がん化学療法を受けている患者であり,15分間の安静臥床 (対照群 6名 ) と約 50℃ 15分間の背部温罨法 (罨法群 12名 ) の調査を行った.血圧 ・ 脈拍 ・ 体温,倦怠感尺度 Cancer Fatigue Scale (以下 CFS) の質問紙調査および翌日の CFSの郵送調査を比較検討した.その結果,体温は罨法群の前後で有意差があった (p =0.02).対照群の前の総合的倦怠感平均得点は,23.00 (SD 3.58) 点,罨法群では,25.08 (SD 7.31) 点であり,前後の CFS総合的倦怠感得点 ・ 身体的倦怠感得点 ・ 認知的倦怠感得点は,有意差があった.罨法群の総合的倦怠感得点は前と 15分後,15分後と翌日で有意差があり,前と翌日では有意差はなかった.罨法後のインタビューの内容分析では,【気持ちがいい】【気持ちが落ち着き楽になる】【リラクゼーション】【爽快感】などの 12カテゴリーが抽出された.本研究では,背部温罨法は倦怠感のある外来がん化学療法患者に対し心地よさをもたらすケアであることが示唆された.
  • 山口 みのり
    2013 年 11 巻 3 号 p. 56-64
    発行日: 2013/01/20
    公開日: 2016/07/08
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,就職直後の新人看護師が看護技術を実践する様相を明らかにすることである.なかでも,状況依存性の高い体位変換の実践場面に着目する.研究方法は,参加観察法と半構造化面接法による質的記述的研究である.就職直後である4月に焦点を当て,新人看護師がどのように思い,考えながら体位変換を実践するのかを具体的に記述した.研究参加者は2009年もしくは2010年に就職した新人看護師5名であった.就職直後,新人看護師は患者に触れて初めて,患者の身体状況に実感を伴って気づき,思っていた想像と違うことに驚いた.患者にどう援助したらいいか分からないと怖さや不安を感じるが,どうしたらできるようになるかを考えるようになっていった.就職直後,新人看護師の得た身体感覚は,患者の身体状況を把握する手がかりとなっており,技術習得の基盤となっていくと考えられる.
  • 三浦 奈都子, 石田 陽子, 山下 希美, 熊谷 真澄, 及川 正広, 武田 利明
    2013 年 11 巻 3 号 p. 65-73
    発行日: 2013/01/20
    公開日: 2016/07/08
    ジャーナル フリー
     本来血管に投与されるべき薬剤がなんらかの理由で血管外に漏出した場合,周囲の皮膚組織に傷害を引き起こすことがあるため迅速に対処する必要がある.先行研究は,過去に発生した血管外漏出 (EV) に関して想起した内容を検討する後ろ向き調査であり,状況や症状に不明確なものが多い.また,EV後の症状をアセスメントする際に統一した評価項目は使用されておらず,ケアの経過を追跡したものではない.そこで,本研究では,新たに考案したEVアセスメントシートを用い,臨床現場で起こっているEVに関するより詳細な実態を把握するとともに,その症状をアセスメントする際の指標となる項目や評価基準を検討することを目的に調査を実施した.その結果,EVの報告は51例で,漏出した薬剤の種類は15種類であった.発生時間は午前9~11時台,発見者は看護師,発生部位は両前腕内側がそれぞれ最も多かった.EV直後の症状として腫脹 (87.5%) の出現が最も多く,ついで発赤 (63.0%),圧痛 (53.2%),疼痛 (46.9%),硬結 (33.3%) であった.ケアの効果を評価するためにも,統一したアセスメントシートを用いた詳細な観察と記載が必要であると考える.
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