全身麻酔で開腹手術を受けることが決定した15名の子宮筋腫の患者に対して,術前不安の軽減を目的とした呼吸法の介入による効果を検討した.介入は,手術が決定した外来時に呼吸法を指導し,入院1週間前より1日1回3分を目安とした在宅での呼吸法の練習を依頼した.また,練習(在宅)の状況を日誌に記入するように依頼した.日誌の内容は,呼吸法実施前後のSTAI(状態不安)と呼吸法実施時の体験の自由記載である.入院後手術前日には,呼吸法前後のSTAI(状態不安)に加え,自律神経活動(心拍変動)を測定した.
その結果,入院までの1週間の呼吸法実施前・後をくらべたSTAI得点は7日間において有意に減少した.さらに,入院後手術前日における自律神経活動は,呼吸法実施前にくらべて実施後にHF(副交感神経活動指標)が有意に増加した.呼吸法実施前と実施後のLF/HF(交感神経活動指標)や心拍数は変化しなかった.入院後手術前日においても,呼吸法前と後をくらべたSTAI得点は有意に減少した.このことにより,今回の呼吸法の効果に持続性はないが,呼吸法実施後には確実に術前不安が軽減することが示唆された.
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