日本看護技術学会誌
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14 巻, 3 号
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論  壇
原  著
  • 小池 祥太郎, 武田 利明
    2015 年 14 巻 3 号 p. 223-230
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/01
    ジャーナル フリー
     看護師が輸液中の患者から採血する場合,輸液をしている側の上肢を採血部位として選択することは少ない.これは輸液が血液データに影響することを避けるためである.しかし,輸液を実施している側の上肢から採血した場合,輸液がどのように採血データに影響するかは明らかとなっていない.そこで,本研究では輸液実施側の中枢側・末梢側と輸液の影響がない反対側の採血データを比較し検討することを目的とした.実験動物として,日本白色種雄性ウサギを選択し,ウサギの耳介をヒトの上肢に見立てて,左耳介静脈からソリタ®T3Gを投与し輸液実施部位の中枢側・末梢側,そして反対側にあたる右耳介静脈から採血を行った.その結果,総蛋白・アルブミン・ナトリウム・クロール・カルシウム・マグネシウムの中枢側データは反対側にくらべて有意に低く,血糖・カリウムは有意に高かった.また,すべての項目で末梢側データと反対側で有意な差は認められなかったが,一部のデータで限局的に影響がみられた.よって,輸液実施部位より中枢側は採血部位として不適切であるが,末梢側は適切な採血部位としての可能性が示唆された.
  • 大﨑 真, 武田 利明
    2015 年 14 巻 3 号 p. 231-237
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/01
    ジャーナル フリー
     点滴による静脈炎発症後の看護ケアとして,症状緩和のために冷罨法が行われているが,冷罨法の目的である炎症抑制効果に関する具体的な検討はなされていない.そこで本研究では,点滴による静脈炎に対し効果的な冷罨法の温度を明らかにすることを目的とし,ラットを用いた実験研究を行った.薬物を投与して実験的にラットの尾部に静脈炎を作製後,薬物注射部位の表面温度を 10℃,15℃,20℃となるよう冷罨法を施行し,罨法を施行しない対照群と肉眼的所見,腫脹について,症状の経過を比較検討した.その結果,腫脹の項目において温度による明らかな差が認められた.したがって,本実験条件下において静脈炎に対する冷罨法の適正温度は 20℃であると考えられた.
  • 菊池 麻由美
    2015 年 14 巻 3 号 p. 238-247
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/01
    ジャーナル フリー
     運動機能障害のある患者が長期療養する筋ジストロフィー病棟では,ポジションに関する言葉をほとんど交わさずに,タイミングよく行うポジショニングが観察される.本研究では,この技がいかにして成り立っているのかを,この病棟で働く3人の看護師への参加観察と個別インタビューによって記述的に探求した.
     このポジショニングは,患者の感覚や意図を「わかる」ことと,それを「する」ことを分けて語ることが困難な技であった.この接続は言語的および前言語的な層,すなわち,時間,患者の身体が示す物理的に観察できる標,かもしだされる雰囲気,身体に触れて感じとる感触,看護師-患者間で共有する苦痛-楽などの身体感覚,患者の姿に重なって見える未来の患者の動きや感覚の層で起こっていた.
研究報告
  • -STAI・自律神経活動測定による術前不安の軽減の検討-
    熊倉(小林) 美咲, 小林 たつ子
    2015 年 14 巻 3 号 p. 248-256
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/01
    ジャーナル フリー
     全身麻酔で開腹手術を受けることが決定した15名の子宮筋腫の患者に対して,術前不安の軽減を目的とした呼吸法の介入による効果を検討した.介入は,手術が決定した外来時に呼吸法を指導し,入院1週間前より1日1回3分を目安とした在宅での呼吸法の練習を依頼した.また,練習(在宅)の状況を日誌に記入するように依頼した.日誌の内容は,呼吸法実施前後のSTAI(状態不安)と呼吸法実施時の体験の自由記載である.入院後手術前日には,呼吸法前後のSTAI(状態不安)に加え,自律神経活動(心拍変動)を測定した.
     その結果,入院までの1週間の呼吸法実施前・後をくらべたSTAI得点は7日間において有意に減少した.さらに,入院後手術前日における自律神経活動は,呼吸法実施前にくらべて実施後にHF(副交感神経活動指標)が有意に増加した.呼吸法実施前と実施後のLF/HF(交感神経活動指標)や心拍数は変化しなかった.入院後手術前日においても,呼吸法前と後をくらべたSTAI得点は有意に減少した.このことにより,今回の呼吸法の効果に持続性はないが,呼吸法実施後には確実に術前不安が軽減することが示唆された.
  • 高橋 有里, 武田 利明
    2015 年 14 巻 3 号 p. 257-265
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/01
    ジャーナル フリー
     精神科領域で使用される筋肉内注射製剤に起因する硬結に関し,看護師の経験と患者への思いを明らかにすることを目的に,質問紙調査および聞き取り調査を行った.その結果,つぎのことが明らかになった.
     多くの看護師が硬結を経験しており,処置上の不都合を自覚,また,患者の困っていた様子を感じていた.硬結の性状は,薬剤の種類による特徴があり,特に油性の持効性注射剤に起因する硬結が大きく重症であった.看護師は,硬結に対しさまざまなケアを行っていたが,対峙する内容や,わからない,何もしていないとの回答もあった.自身が行っているケアによる硬結の改善の兆候は感じられていなかった.看護師は硬結が発生した患者に対し,同情や自責の念,専門職としての責務を自覚しつつも,有効性を実感できるケアを提供できておらず,硬結予防や硬結ケアに対し確かな方法を求めていた.
  • 青木 光子, 宮腰 由紀子, 野島 一雄, 相原 ひろみ, 野本 百合子
    2015 年 14 巻 3 号 p. 266-273
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/01
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,生体データに基づく効率的な床上移動援助動作教育プログラム開発に資するために,ボディメカニクス指導および補助具活用による学生の床上移動援助動作時の積分筋電図(iEMG)の変化を明らかにすることである.
     19歳の女子学生7名を被験者として,ボディメカニクス指導前後,補助具使用の有無の条件における,臥床患者の水平移動動作時の上腕二頭筋・僧帽筋・脊柱起立筋・大腿四頭筋の表面筋電図測定を行った.その結果,iEMGは,ボディメカニクスの指導前後で,上腕二頭筋,僧帽筋が指導後に有意に減少したが,脊柱起立筋・大腿四頭筋では有意差は認められなかった.さらに,ボディメカニクス指導後における補助具「なし」と「あり」のiEMGは,補助具「あり」で上腕二頭筋が有意に減少した.僧帽筋・脊柱起立筋・大腿四頭筋は有意差はみられなかったが,補助具「あり」のほうが低値であった.ボディメカニクスを活用すること,さらにボディメカニクスとともに補助具を使用することで効率的で負担の軽い動作となることがiEMGの測定によって確認され,iEMGを活用した床上移動援助動作の教育プログラムの開発が可能であることが示された.
その他(技術研究成果検討委員会報告)
  • -看護実践報告の文献検討の結果から-
    佐竹 澄子, 大久保 暢子
    2015 年 14 巻 3 号 p. 274-281
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/01
    ジャーナル フリー
     日本看護技術学会技術研究成果検討委員会ポジショニング班では,看護職が行うポジショニングを既存の研究成果と臨床知から言語化し,臨床看護師に広く公表していく活動をしている.今回は,看護職が実践するポジショニングに焦点を当てた文献から,看護職が行うポジショニングが「技」となる要素を明らかにすることを目的に検討を行った.医学中央雑誌(1999~2013年)で,ポジショニングに関連する用語について検索した2,241件のうち,看護職が実践するポジショニングの「技」に関する文献67件を研究対象とした.結果,看護職が行うポジショニングが「技」となる要素には,看護師の対象への「思い」や「考え」から「その人に合った体位や構え」が生み出されていること,安楽や苦痛の軽減,ストレスの緩和を目的に,その人自身の動きのなかで「その人に合った」実践がされていること,「その人に合った」とは,その人の身体に適していること,その人の希望,意志に合っていることという複合的な意味を含んでいると考えられた.
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