日本看護技術学会誌
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15 巻, 2 号
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原著
  • 棚﨑 由紀子, 深井 喜代子
    2016 年 15 巻 2 号 p. 124-134
    発行日: 2016/08/20
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は, 冷え症の女性高齢者に対するフットマッサージの冷え症状の緩和ケア技術としての有用性を, 生理的 ・ 主観的指標によって検討することである. 被験者は冷え高齢者25名 (73.4±5.4歳) と対照としての健康高齢者27名 (71.3±4.3歳) とし, 無作為化によらない2群比較を行う準実験研究デザインで行った. フットマッサージは足部から下腿部を20分間, 両手掌で軽擦して行った. その効果を皮膚温, 血流量, 心拍変動等の生理指標とPOMS短縮版, 下肢の温かさの主観的指標により評価した. その結果, 両群ともに皮膚温, 血流量は介入前と比べて有意に上昇し, 心拍数は低下した. また, 右足への介入後に血圧は有意に低下し, HFは上昇, LF/HFは低下した (P<0.05). さらに, 両群の下肢の温かさの自覚も有意に増した (P<0.05). 以上のことから, 冷え高齢者に対するフットマッサージは, 冷え症状を緩和するケア技法として有用であることが示唆された.

  • 能登 裕子, 村木 里志
    2016 年 15 巻 2 号 p. 135-145
    発行日: 2016/08/20
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー

     車いす移送は, 看護 ・ 介護の現場において頻度の高い援助技術であるが, その操作指標は明確とされていない. 本研究は, 段差への乗り上げ介助操作の安全 ・ 快適性を向上することを目的とし, 介助負担と乗り心地の双方を考慮した操作姿勢の指標について検討した. 60歳代女性介助者に段差乗り上げ介助操作をさせ, 介助者の操作姿勢角と車いす走行軌跡および主観評価との関係を分析した. その結果, 前輪 ・ 後輪操作とも, 持ち上げ前の車輪と段差端との距離, 最大持ち上げ高さの増加に伴い主観評価の低下を認めた. 前輪操作時は肘角度の増大と車いすとの距離の縮小, 後輪操作時は脇角度の増大と車いすとの距離の縮小は, 車輪の持ち上げ高さや持ち上げ角度を増加させ, 介助者の身体的負担感の増加および乗り心地の低下を招くことが示された.
     本研究により, 乗り上げ前の前輪 ・ 後輪位置と段差乗り上げ時の介助者の姿勢を指標とした操作により, 介助者の身体的負担感の軽減と乗車者の乗り心地の改善に結びつく示唆を得た.

研究報告
  • ―清潔ケア, 感染予防, 周術期ケアに関する分析―
    加藤木 真史, 菱沼 典子, 佐居 由美, 大久保 暢子, 伊東 美奈子, 大橋 久美子, 蜂ヶ崎 令子
    2016 年 15 巻 2 号 p. 146-153
    発行日: 2016/08/20
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー

     2001年に実施した看護技術に関する実態調査から10年を経て, 国民に提供されている看護技術の現状を改めて把握し, 看護技術の課題を検討することを目的に質問紙調査を行った. このうち, 本論文では清潔ケア, 感染予防, 周術期ケアに関する分析結果を報告する.
     看護技術の実践内容やその理由を問う46項目からなる自記式無記名の質問紙を作成し, 2012年7月~12月にかけて全国5ヵ所の研修会に参加した看護職476名に配布した. 質問紙は458名から回収 (回収率96.2%), 有効回答数は374(有効回答率81.7%) であった. 回答者は経験年数5年未満から35年以上までを含む看護師, 准看護師, 助産師, 看護教員であった.
     石鹸を使わずタオルのみで清拭を行うと回答した臨床家が半数を占めるなど, 清潔ケアの提供方法は10年間で変化していた一方, ウォッシュクロスの使用に関する臨床実践と看護基礎教育の乖離は変わっていなかった. また, 手指衛生や術前剃毛などの技術が, ガイドラインや研究成果により推奨される方法で実施されていない現状が明らかになった. 看護技術の原理原則に含まれる不明な根拠を明らかにする研究に取り組むとともに, 研究成果の積極的な普及が必要であると考えられた.

  • ―フローチャートの妥当性検討―
    吉良 いずみ, 細野 恵子, 加藤木 真史, 菱沼 典子, 田中 美智子, 井垣 通人, 丸山 朱美, 加藤 京里
    2016 年 15 巻 2 号 p. 154-162
    発行日: 2016/08/20
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー

     排便状況を判断するフローチャートの妥当性について, 新たに収集したデータを基に分類因子および排便自覚の一致度と排便パターン分類から検討した.
     健康成人38名の2週間の排便記録をフローチャートで分類した結果, 〔便秘Ⅰ群〕には便秘と下痢の≪混合群≫と考えられるものが含まれ, 〔良好Ⅰ群〕には2週間を各週でみると良好とはいえないものがあり, 1週ごとの割合から基準を再定義した.
     その結果【便形】<形のないゆるい便が2回に1回以上>で〔下痢群〕が, 【便形】<1週間はゆるい便が2回に1回以上>により≪混合群≫が分類された. また, <残りの1週間は硬便が4回に1回以上>により≪要観察群≫が, 【便形】<毎週硬便が4回に1回以上>, 【排便日数】<7日以下/2週間か>により「便秘Ⅰ ・ Ⅱ群」, 「良好群」が分類できる改訂版が作成された. 改訂版の排便パターン分類と「排便自覚」は中程度の一致であった.

  • 安田 みなみ, 大久保 保暢子
    2016 年 15 巻 2 号 p. 163-171
    発行日: 2016/08/20
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー

     【目的】看護基礎教育における解剖生理学教育に関する文献数の推移, 看護系大学における解剖生理学教育の現状を文献およびシラバスを基に整理し, 看護基礎教育における解剖生理学教育の今後の課題を考察した.
     【方法】文献およびシラバスの検討. 文献は検索データベース医学中央雑誌にキーワーズを投入し, 1982年以前~2011年の検索期間を設けて検索を行い105文献を対象とした. シラバスは, 2011年時点の看護系大学200校のシラバスをホームページから検索し, 収集可能な計199大学を対象とした. 分析方法は, 「解剖生理学に該当する科目名」「教授方法の枠組み」「単位認定者の職種」などの収集項目を定め, それに従い文献およびシラバス内容を収集した. 収集データを量的分析するため名義尺度に変換し, 統計ソフトにて単純集計, 図表化し, 研究目的に沿って検討を行った.
     【結果】論文数は2007年以降, 増加傾向だったが, 特定著者に偏っていた. シラバスでは, 科目名は多様であるにも関わらず, 解剖学 ・ 生理学の教員が二分して講義し, 器官系統別に身体をみる枠組みで教育する大学が8割であった. 他枠組みを教育方法とするのは5大学で, 「食べる」「トイレに行く」などの日常生活行動から身体をみる枠組みであった. 立体的に身体を理解する教育が奨励されているが, 解剖実習の実施は医学部看護学科などで実施されているのみで, 以外の看護系大学は設備不足から短時間の解剖見学であった.
     以上, 看護基礎教育全体で解剖学と生理学を統合して教授できる人材が必要であり, より充実した解剖生理学の授業を行うには施設環境の整備も必要と考えられた. 加えて, 看護の視点から解剖生理学教育の論文数を増やすことが, 看護教員で解剖生理学教育を行う必要性を社会が認める一歩になると推測する.

  • 宍戸 穂, 矢野 理香
    2016 年 15 巻 2 号 p. 172-182
    発行日: 2016/08/20
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は, 清拭方法, 研究デザイン, 測定方法とそれらに基づく効果にどのような特徴があるかということに焦点をあて, 清拭に関する国内外の先行研究の内容と動向を明らかにすることである. Cooperの統合的文献レビューの方法を参考に行った. 国内文献は医学中央雑誌web版, 海外文献はCINAHL web版およびPub Medを用いて, 「清拭」をキーワードとし, 文献検索を行った結果, 24件の国内文献と9件の海外文献が分析の対象となった. 国内では, 主に健康成人を対象とした新たな清拭方法の検討, 海外では患者を対象に他の清潔援助と比較した清拭の有効性の検証がされていた. 清拭が心身に及ぼす影響として, 清浄度および角質水分量が上昇するが, 皮膚表面温度は清拭方法によって異なること, 対象者の不安や不快を緩和する可能性があることが明らかとなった. しかし, 測定に使用した器具が異なることや尺度が統一されていないため, 清拭方法による効果の差違や主観的評価と客観的評価の関連については明らかになっているとは言えなかった.

短報
  • ―4週間から2週間への短縮化の可能性―
    井垣 通人, 菱沼 典子, 細野 恵子, 吉良 いずみ, 田中 美智子, 加藤木 真史, 加藤 京里, 丸山 朱美, 留畑 寿美江
    2016 年 15 巻 2 号 p. 183-187
    発行日: 2016/08/20
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー

     本研究は看護師が臨床現場にて, 先に報告 (細野ら 2016) された排便状況を分類 ・ 判断するフローチャートを使用するにあたっての排便状況の調査期間を検討したものである. 排便状況の調査期間を4週間としてきたが, ケアの判断および開始を早める可能性を考え, 調査期間を2週間に短縮する検討を行った. 参加者148名 (平均年齢37.0±13.7歳) の「排便日数」「排便回数」「便の硬さ (便性状) 」および「便量」について, 4週間調査と連続2週間調査の同等性を検討した結果, 「排便日数」および「排便回数」について, 4週間調査と連続2週間調査の平均1週間の人数分布はほぼ同等であり, 両者で有意な違いはなかった. また, 「便の硬さ」について, 「硬い」「普通」「泥状」「水様」の4週間調査と連続2週間調査の平均1週間の割合に有意差はなく, 「便量」についても, 4週間調査と連続2週間調査の平均1週間の「母指頭大」「中間」「手拳大以上」の割合に両者で有意な違いはなかった. 以上の結果より, 本フローチャートの調査期間は2週間へ短縮することが可能であることが確認された.

  • ―貼用なし清拭と貼用あり (7,10秒) 清拭との比較―
    宍戸 穂, 矢野 理香
    2016 年 15 巻 2 号 p. 188-194
    発行日: 2016/08/20
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は, 高齢者を対象に, 清拭時の拭き取り前における有効な温タオルの貼用時間を角質水分量, 経表皮水分蒸散量 (TEWL), 皮膚表面温度および主観的評価から検討することである. 調査方法は, 準実験デザインとし, 老人保健施設に入所する高齢者7名 (平均年齢81.6±7.9歳) の片側の前腕内側において, 拭き取り前に温タオルを短時間 (7秒, 10秒) 貼用する清拭と拭き取りのみの清拭を実施し, 角質水分量および経表皮水分蒸散量の測定と対象者の主観的評価から有効な貼用時間を検討した. その結果, 7および10秒間の貼用を取り入れることで, 皮膚表面温度が上昇し, 対象者にあたたかさと気持ちよさを提供し, さらに角質水分量が上昇し柔軟性が増すことで, 拭き取りによる摩擦刺激から皮膚を保護できる可能性が考えられた.

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