ストレッチャー移送が乗車者の自律神経系と心理的指標に及ぼす影響について検討するため, 健康な男女40名 (平均年齢22.1歳) を対象に, 全長50mの直線コースを, 2種類の移送速度 (5km/時, 7km/時) で移送した. 自律神経系の指標として, 唾液アミラーゼ活性, 心拍数, LF/HF, 手掌発汗量, 皮膚電位活動 (SPL, SPR), 呼吸数を測定した. また乗車者が感じている不安 ・ 緊張をVASで測定した. 移送により変化がみられたのはSPR, 呼吸数, VASであり, VASは速度による差もみられた. また移送に伴うVASの変化と呼吸数の変化との間には正の相関がみられたことから, 移送中の速度や加速度の変化, 振動等の力学的刺激が, 不安 ・ 緊張を引き起こし, そのことが呼吸に影響を及ぼしていると考えられた. 健康成人でも移送に伴い, 呼吸数が増えていたので, 重症患者の移送では, 力学的刺激を与えないように静かに, ゆっくりと移送する, また, 移送中の不安 ・ 緊張を取り除く配慮が必要であるとの示唆を得た.
抄録全体を表示