日本看護技術学会誌
Online ISSN : 2423-8511
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16 巻
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総説
  • 大橋 久美子, 縄 秀志, 佐居 由美, 矢野 理香, 樋勝 彩子, 櫻井 利江
    2017 年 16 巻 p. 41-50
    発行日: 2017/12/20
    公開日: 2017/12/20
    ジャーナル フリー

     目的 : 「気持ちよさ」をもたらす看護ケアならびに対象者に生じる反応 ・ 効果とその測定指標を明らかにする.  
     方法 : 医学中央雑誌webで「気持ちいい」「気持ちよい」「気持ちがいい」「気持ちがよい」「気持ちよさ」をキーワードに検索した52件の文献を対象に, Cooperの統合的文献レビューを行った.   
     結果 : 効果の測定時期は, 実施中, 実施直後, 実施後, 翌日以降の4つに分類された. 気分 ・ 心理行動的側面の効果要素として, 基礎研究で【気分のよさ】【症状の緩和】【活力の高まり】が, 臨床研究で【気分のよさ】【症状の緩和】【活力の高まり】【関係性の広がり】【生活行動の拡大】【生活リズムが整う】のカテゴリーが抽出された. 測定指標は, 質的指標では言動や表情と語りが, 量的指標では独自に作成した尺度が主に用いられていた. 生理学的側面は【体温上昇】【自律神経活動の安定】【循環動態の安定】であった.   
     考察 : ケア後の変化に視点を移したとき「気持ちよさ」をもたらす看護ケアの可能性の広がりと価値に気が付いた. 「気持ちいい」のその後の効果の推移に目を向けることが重要である.

原著
  • 原 好恵, 篠崎 惠美子
    2017 年 16 巻 p. 51-60
    発行日: 2017/12/20
    公開日: 2017/12/20
    ジャーナル フリー

     油性注射剤の筋肉内注射による硬結発生の実態は明らかでない. 乳がん治療薬フルベストラントによる硬結発生の実態, 筋肉内注射技術と注射時の看護ケアの実態を把握することを目的として, 自記式質問紙調査を行った. 全国のフルベストラントを使用している病院で勤務する看護師169名のうち有効回答の得られた54名を対象とした. 各項目は記述統計, Fisherの正確確率検定を用いて分析した. 硬結は30施設 (55. 6%) で発生しており, 患者の体型や合併症に関係なく発生し, 治療開始3ヵ月以降の患者に多い傾向があった. 第一選択部位は「クラークの点」 (66. 7%) が最も多く, 硬結発生と有意な関連 (P<0. 01) が認められた. よって「クラークの点」を優先的に選択する看護師が硬結を経験しやすい可能性があるが, 選択部位の工夫だけでは硬結予防が確実ではないと考えられた. 硬結予防のために行われていたケアはマッサージ (3施設) のみであり, ケアの実施が少ない現状が把握できた.

研究報告
  • ―教材用血圧計3号機を活用した教育効果の検討―
    児玉 裕美, 岡田 なぎさ, 萩原 智子, 辻 慶子, 仲前 美由紀, 鷹居 樹八子
    2017 年 16 巻 p. 61-69
    発行日: 2017/12/20
    公開日: 2017/12/20
    ジャーナル フリー

     本研究は, 看護学生が血圧測定技術を習得するための教材として, 血圧計の開発を行い, その効果を検討した. 研究対象は, A大学看護学科にH25年度入学の通常血圧計を使用して練習した1年生61名 (以下, 通常血圧計使用群), H27年度入学の教材用血圧計を使用して練習した58名 (以下, 教材用血圧計使用群) である. 効果は, 「マンシェットの巻き方 (3項目) 」, 「減圧速度」, 「コロトコフ音の聴き取り」について, 教員による他者評価で行った. 「マンシェットの巻き方」と「コロトコフ音の聴き取り」には差がなかったが, 「減圧速度」は教材用血圧計使用群が, 通常血圧計使用群より正しくできていた (P<0. 01). 教材用血圧計では減圧速度が可視化されるため, 自己の減圧速度を客観的に評価でき, 正確な技術習得につながったと考えられる. 今後は, 「マンシェットの巻き方」や「コロトコフ音の聴き取り」にも効果的な練習ができるよう教材の検討をしていく.

  • 髙橋 甲枝, 清村 紀子
    2017 年 16 巻 p. 70-76
    発行日: 2017/12/20
    公開日: 2017/12/20
    ジャーナル フリー

     三角筋での筋肉内注射は, 腋窩神経損傷の危険性が指摘されるものの簡便性の観点から臨床では頻用されている. 先行研究において, 安全な三角筋筋肉内注射部位を特定するために解剖体から腋窩神経の形態学的データの収集がなされているが, 防腐処理された三角筋を骨格から切離した解剖体でのデータを生体に適応することが妥当であるという検証はなされていない. そこで, 解剖体データの生体への適応可能性を検討することを目的として, 磁気共鳴画像法 (以下MRI : magnetic resonance imaging) を用いて, 肩峰角から腋窩神経と伴行する後上腕回旋動脈までの距離を計測し, 現在までに収集した計44の女性解剖体の結果と比較した. 結果, 被験者5名の肩峰角から後上腕回旋動脈までの距離のMRIデータは解剖体の肩峰角から腋窩神経までの距離のデータと近似しており, 解剖体で得られた結果は, 生体での安全な注射部位を特定していくためのデータとして活用可能性が示唆された.

原著
  • 倉本 直樹, 渡邉 順子, 篠崎 惠美子
    2017 年 16 巻 p. 28-35
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー

     確実な血管確保のためには, 十分な血管怒張を得て穿刺部位を判断する必要がある. 血管怒張を促す技術は関連書籍に示され, 健常者を対象として検証が行われているが, 実施者により方法がさまざまであり, 看護技術として確立していない. 本研究は臨床現場において, 看護師42人による血管確保場面延べ143件をビデオ録画し, 駆血, ストローク, タッピングの所要時間と, 穿刺部位の温罨法の有無を分析した. その結果, 患者の年齢が高いほど駆血時間は長い傾向が示され, 駆血とタッピングの所要時間は血管確保部位の判断が難しい場合で長く, 温罨法は抗がん剤を投与する場合に実施していた. 以上より, 加齢に伴う血管形質や循環の変化により血管怒張を得るまでの時間が延長すること, 血管確保部位の判断が難しいと駆血とタッピングの所要時間が長いこと, 温罨法は抗がん剤の投与を受けた場合に実施されることが示唆された.

短報
  • 住吉 和子, 中尾 美幸
    2017 年 16 巻 p. 36-40
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー

     女子大生18名 (甘酒群11名, 対照群7名) を対象に, 甘酒の摂取が便秘に及ぼす影響を明らかにするために, 2週間150mLの甘酒を摂取してもらった. 実験は倫理委員会承認後に本人の了解を得たうえで開始した.
     効果の評価は, 日本語版便秘評価尺度 (以下MT-CAS), 排便頻度, 便秘の辛さを用いて, 便秘尺度の得点, 排便頻度, 排便の辛さの得点をWilcoxsonの符号付き順位検定を用いて, 甘酒群と対照群をそれぞれ比較した. 排便の頻度は, 甘酒摂取群が有意に改善し (P=0.046), MT-CASの合計得点 (P=0.009), 「便の回数」 (P=0.025) で有意に改善していたが, 排便の辛さは両群に有意な差はみられなかった.
     以上の結果から, 1日1回の甘酒の摂取により, 便秘が改善される可能性があることが示唆された.

研究報告
  • 尾黒 正子, 荻野 哲也, 高林 範子, 佐々木 新介, 甲谷 愛子, 虫明 小緒, 中尾 美幸
    2017 年 16 巻 p. 1-9
    発行日: 2017/05/31
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー

     ストレッチャー移送が乗車者の自律神経系と心理的指標に及ぼす影響について検討するため, 健康な男女40名 (平均年齢22.1歳) を対象に, 全長50mの直線コースを, 2種類の移送速度 (5km/時, 7km/時) で移送した. 自律神経系の指標として, 唾液アミラーゼ活性, 心拍数, LF/HF, 手掌発汗量, 皮膚電位活動 (SPL, SPR), 呼吸数を測定した. また乗車者が感じている不安 ・ 緊張をVASで測定した. 移送により変化がみられたのはSPR, 呼吸数, VASであり, VASは速度による差もみられた. また移送に伴うVASの変化と呼吸数の変化との間には正の相関がみられたことから, 移送中の速度や加速度の変化, 振動等の力学的刺激が, 不安 ・ 緊張を引き起こし, そのことが呼吸に影響を及ぼしていると考えられた. 健康成人でも移送に伴い, 呼吸数が増えていたので, 重症患者の移送では, 力学的刺激を与えないように静かに, ゆっくりと移送する, また, 移送中の不安 ・ 緊張を取り除く配慮が必要であるとの示唆を得た.

  • 田中 美智子, 江上 千代美, 近藤 美幸, 長坂 猛
    2017 年 16 巻 p. 10-20
    発行日: 2017/05/31
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は, 若年者と高齢者を対象に, 温熱刺激を眼周辺に加えた際の自律神経系の反応や唾液コルチゾール濃度, 主観的評価について検討することである. 対照および温熱条件で, SDNN, rMSSDおよびLogL×Tは高齢者と若年者間で有意差が認められたが, 他の項目では違いが認められなかった. 温熱条件の経時的変化でrMSSDが回復時に上昇し, L/Tは貼用時に低下する傾向が高齢者に認められたが, 若年者には認められなかった. 高齢者における両条件の貼用前と貼用時の変化では, 快不快の感覚は温熱条件のほうがより快を感じていることが示された. 高齢者は腋窩温が若年者より低い傾向にあったが, 温熱刺激を行った際の温度感覚の値は若年者と同等もしくは若年者より高かった. 眼への温熱刺激は高齢者にとって, 若年者にくらべ, 反応が鈍い部分も認められたが, ストレッサーとしてではなく, リラクセーションとしての効果がもたらされるケアであることが示唆された.

短報
  • ―療養病棟での患者上方移動援助時における腰部負担および援助環境について―
    田丸 朋子, 阿曽 洋子, 本多 容子, 伊部 亜希
    2017 年 16 巻 p. 21-27
    発行日: 2017/05/31
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー

     療養病棟での上方移動援助における看護師の腰部負担の実態および援助環境との関係を, 移動援助動作アセスメントツール (TAMAツール) を用いて調査した. 187例の上方移動援助におけるTAMAツールの総合点 (腰部負担) を求め, 「環境の整備」に関する項目 (援助環境の様子) との関係を分析した. 環境の整備に関する7項目のうち, 援助環境がよい項目のなかで最も多かったのは「援助の人数」の63.1%であり, 補助具を使用した例が1.6%と最も少なかった. 重回帰分析では「援助の人数」の偏回帰係数が1.61と最も高く, ついで「ベッドの高さ」が1.22であった. このことから, 看護師は整備されていない環境で援助することが多い実態が明らかとなった. また, 複数で援助を行いやすく, ベッドを適切に調節しやすい援助環境を整えることが, 看護師の移動援助による腰部負担を減らすことにつながるといえる.

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