日本看護技術学会誌
Online ISSN : 2423-8511
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17 巻
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原著
  • 沼田 祐子, 角濱 春美, 大久保 暢子, 早瀬 良, 佐々木 杏子, 三上 れつ, 菱沼 典子
    原稿種別: 原著
    2018 年 17 巻 p. 95-103
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/20
    ジャーナル フリー
     根拠のある新しい看護技術の普及は看護にとって喫緊の課題である. この課題に対し, イノベーションという言葉がしばしば用いられるが, その意味するところはあいまいである. そこで本研究は, 根拠のある新しい看護技術の普及戦略モデルを構築するために, 現在の日本の看護における「イノベーション」の概念を明らかにすることを目的とした. 研究方法はRodgers (2000) の概念分析の手法を用い, 「イノベーション」「看護」を含む和文献15件を分析した. その結果, 日本の看護におけるイノベーションの先行要件は, 問題の存在に気づき, 解決するために新しい技術を採用する過程であり, その過程に作用する要因があった. 属性は既存の看護技術や行動様式にとり替わる根拠に基づく技術の内容であり, その技術が組織に取り入れられることが一次的帰結, 取り入れた技術の施行による成果が二次的帰結であった. 看護におけるイノベーションは, 先行要件から帰結まで, 新しい看護技術の普及過程を示すものであり, 普及に影響する要因を含むものであった.
  • 柾本 常子, 矢野 理香
    原稿種別: 原著
    2018 年 17 巻 p. 104-113
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/20
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は, 留置針を用いた点滴静脈内注射において, 熟練看護師が行う穿刺部位選定のための, 観察と動作の特徴を明らかにすることである.
     2年目から3年目の看護師 (以下, 比較群) 11名, 熟練看護師13名を対象に, 留置針を用いた点滴静脈内注射実施の条件下で, 模擬高齢患者の前腕部に穿刺部位を選定するまでの実施を依頼し, 録画した. 録画した動画をもとに穿刺部位選定のための観察項目, 各動作の目的などについてインタビューを実施した.
     その結果, 触診時の手指の動作は, 比較群9種類, 熟練群11種類の合計12種類が抽出された. 部位選定時間は, 熟練群147.4±83.2秒, 比較群111.8±37.2秒であったが, 観察項目数, 動作数なども含めて, 2群間に有意な差はなかった. 比較群は, 左手背静脈網, 右前腕尺側皮静脈などに選定部位が点在する傾向があるのに対し, 熟練群の61.5%は, 左前腕橈側皮静脈を選択し, 選定部位が集中している傾向にあった.
実践報告
  • ―教材用血圧計4号機を活用した教育効果の検討―
    児玉 裕美, 萩原 智子, 岡田 なぎさ, 辻 慶子, 仲前 美由紀, 鷹居 樹八子
    原稿種別: 実践報告
    2018 年 17 巻 p. 114-119
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/20
    ジャーナル フリー
     看護学生が血圧測定技術の習得に効果的な練習ができることを目的に, 減圧速度と測定値が可視化される教材用血圧計の開発を行った. 初代の1号機から改良を重ねた3号機では, 「減圧速度」の技術習得には効果を認めたが, 「コロトコフ音の聴き取り」には効果を認めず, 測定値検出精度が低いことが理由として考えられた. そこで測定値検出精度を高めた4号機を完成させ, 教育効果を検討した. 研究対象は, 看護学科1年生で3号機を使用して練習した58名 (以下, 3号機使用群) と4号機を使用して練習した54名 (以下, 4号機使用群) である. 「減圧速度」は, 3号機使用群同様, 4号機使用群でも技術習得に効果を認めた. 「コロトコフ音の聴き取り」は, 4号機使用群が3号機使用群より正しくできていた (P<0.05) . 教材用血圧計4号機の測定値検出精度が高まったことで, 学生は自己の技術を正確に振り返ることができ, 効果的な練習につながったと考えられる.
  • 栗田 愛, 宇城 令, 水野 美香, 藤井 徹也
    原稿種別: 実践報告
    2018 年 17 巻 p. 120-124
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/20
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は, 構成的参加観察により, 看護師93名が実施しているグリセリン浣腸の液温と加温の実施状況を明らかにすることとした. その結果, 64名の看護師がグリセリン浣腸を加温していた. 看護師が患者に実施する直前に測定したグリセリン浣腸の容器表面温度の平均は31.6±4.9℃であり, 28.8℃未満が32名, 28.8℃以上35.2℃未満が38名, 35.2℃以上38.9℃未満が18名, 38.9℃以上40.7℃未満が1名, 40.7℃以上が4名であった. 今後は, 自律神経系や循環動態, 腸蠕動との関連を考慮し, 安全に実施可能なGEの液温を検討していく必要性がある.
  • ―実施時間の差異によるランダム化比較試験―
    見谷 貴代, 小宮 菜摘, 築田 誠, 細名 水生
    原稿種別: 実践報告
    2018 年 17 巻 p. 125-130
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/20
    ジャーナル フリー
     本研究は, 5分間と10分間のハンドマッサージの実施時間の違いによる生理的および心理的効果を明らかにすることを目的として健常成人女子学生23名を対象にランダム化比較試験を行った. 基本属性, ハンドマッサージ実施前後の体温, 脈拍, 血圧, 唾液アミラーゼ, 心拍変動スペクトル解析, 疲労・ストレス・リラックス度 (VAS) , 気分状態 (POMS) について調査した.
     ハンドマッサージの実施前後で, 生理的指標では5分間群で脈拍と収縮期血圧が, 10分間群で脈拍と拡張期血圧が低下したが, いずれも数値の変化はわずかであった. 心理的指標では, 5分間群でVASの疲労度 (身体, 心理面) , ストレス度が低下し, リラックス度が上昇した. POMSの気分状態では, 緊張-不安, 抑うつ-落ち込み, 怒り-敵意, 疲労, 混乱が低下した. また, 10分間群ではPOMSの緊張-不安, 活気, 疲労が低下した.
     本研究では, 5分間というごく短時間の実施でもリラックスなどの心理的効果が得られ, 看護の現場において短時間のハンドマッサージが有用である可能性が示された.
原著
  • 小髙 亜由美, 高橋 勇太, 松田 友美, 石田 陽子
    2018 年 17 巻 p. 33-42
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/20
    ジャーナル フリー
     本研究では抗がん剤投与による静脈炎を, ウサギを用いて作製し静脈炎の病態を組織学的により詳細に観察すること, 作製した静脈炎に対し臨床で行われている罨法を実施し, その効果について組織学的に検討することを目的に実験を行った. その結果, 肉眼的には薬液注入後は6匹すべてのウサギで耳介静脈と周囲の血管が拡張し, 24時間後には耳介静脈の拡張とともに耳介に発赤を認め, 72時間後には耳介に強い発赤がみられ, 大きな違いを認めなかった. 組織学的には, 24時間後は耳介静脈周囲に浮腫がみられ, 血管内皮の傷害や血栓を認め, 72時間後にはその程度が重篤化していた. 72時間後の病態を比較すると, 薬液注入のみ施行したウサギが最も重篤で, ついで薬液注入後に温罨法を施行したウサギ, 薬液注入後に冷罨法を施行したウサギが最も病態が軽度であった. これらのことから, 静脈炎発生時に行う看護ケアとしては冷罨法が温罨法よりも静脈炎の病態を軽症にとどめる可能性がある.
  • 小島 悦子, 藤長 すが子, 草薙 美穂
    2018 年 17 巻 p. 43-50
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/20
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は, 温タオル清拭, 石鹸清拭, 清拭料清拭, 重曹清拭の4方法について, 皮膚表面pH, 油分量, ATP値の減少率, 皮膚表面温度および主観を比較し, 清拭方法による影響を評価することである. 調査方法は, 準実験デザインとし, 健康な成人男女15名全員に4方法の清拭を無作為の順番で実施した. 結果, すべての清拭方法において, 清拭前とくらべて清拭直後に末梢である第3指腹部の皮膚表面温度が上昇し, ATP量が減少したが, 重曹清拭は温タオル清拭や石鹸清拭とくらべ有意にATP減少率が低かった. 皮膚表面pHは, 温タオル清拭, 泡立て石鹸清拭, 清拭料清拭において入浴後と同じような経過をたどった. 主観的評価において, すべての清拭において爽快感, 快適感が得られた. 臨床では, 温タオル清拭を日常的に行いながら, 皮膚の汚れに応じて石鹸清拭を選択する必要があるが, いずれの方法においても清拭後の皮膚ケアが重要と考えられた.
  • 金子 真弓
    2018 年 17 巻 p. 51-60
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/20
    ジャーナル フリー
     起立・着座介助でとることの多い両足を前後にずらした立位での足向角と, 姿勢の安定性の関連を明らかにすることを目的とした. 対象は, 健常成人で, 女性28名, 男性6名, 平均年齢29.3歳であった. 足向角0度, 45度, 90度 (直角立ち) の足配置を決定し, それらの支持基底面積を測定した. さらに, 支持基底面積が0度と同等で足向角90度の足配置 (三角立ち) を決定した. 4種類の足配置の姿勢安定度評価指標 (IPS) と主観的安定度を測定した. その結果, 支持基底面積は足向角45度, 直角立ち, 0度と同等の三角立ちの順で大きかったが, IPSは, 三角立ち, 直角立ち, 45度, 0度の順で高かった. 主観的安定度は, 三角立ち, 45度, 直角立ち, 0度の順で高かった. 以上より, 両足を前後にずらした立位において足向角0度, 45度, 90度のなかで, 客観的に姿勢の安定性が高いのは足向角90度の足配置であることを明らかにした. さらに, 姿勢の安定性を高める足配置として, 支持基底面積以外に足向角が一つの要因となることが示唆された.
  • 前田 耕助, 習田 明裕
    2018 年 17 巻 p. 61-70
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/20
    ジャーナル フリー
     足部への異なる温度刺激が前頭前野の脳血流量に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした. 健常成人25名の足部に40℃, 16℃, 30℃の温度刺激を180秒間実施し, 近赤外分光法による左右の前頭前野の脳血流量の変化と温度の感じ方, 気持ちよさの主観的評価を行った. 結果, 左前頭前野の群内比較では, 40℃の温度刺激は安静時にくらべて温度刺激開始から120秒で脳血流変化量が増加し (P<0.05), 群間比較では, 開始から60秒と120秒で40℃の温度刺激は16℃の温度刺激にくらべて大きかった (P<0.05). 一方右前頭前野は変化を認めなかった. 主観的指標では, 40℃は「温かい」感覚刺激で「快感情」を伴い, 16℃は「冷たい」感覚刺激で「快ではない感情」を伴った. これらより足部への「温かい」感覚刺激による「快感情」は, 「冷たい」感覚刺激による「快ではない感情」より左前頭前野の脳血流量を増加させるが, 右前頭前野の脳血流量に変化を及ぼさないことが明らかとなった.
研究報告
  • 平原 優美, 河原 加代子, 早野 貴美子, 黒澤 泰子, 習田 明裕
    2018 年 17 巻 p. 71-79
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/20
    ジャーナル フリー
     本研究は, 在宅ケアで活用できる『温罨法を併用した手のマッサージ法』 (以下, 温罨法マッサージ法) の生理的・心理的効果の確認を目的とした. 対象は地域住民6名 (平均年齢50.2±3.3歳) とし, 事前研修を受けた看護師6名が温罨法マッサージ法を実施した. 測定方法は自律神経活動指標に加速度脈波測定器 (TAS9VIEW) を使用し心拍変動解析による高周波成分 (以下, HF) と, 低周波成分 (LF) とHFの比 (以下, LF/HF) を採用した. 主観的評価には日本語版POMS短縮版 (以下, POMS) を使用した. 結果, HFは温罨法マッサージ法開始直後から100%をこえ1分後138.4%に上昇しその後温罨法マッサージ法実施中, 実施後も上昇が継続した. LF/HFは直後から1分後約69.5%となり8分後まで低下が継続した. POMSでは前後に有意な差はみられず「緊張-不安」がやや減少し「活気」が上昇する傾向を確認するにとどまった. 温罨法マッサージ法は実施10分間程度で副交感神経の活動を上昇するケアであることが示唆された.
  • ―健康な成人男性における自己清拭動作と心負荷との関連性―
    佐久間 愛里, 髙橋 由紀, 大江 佳織, 北島 元治, 吉田 和美, 松田 たみ子
    2018 年 17 巻 p. 80-89
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/20
    ジャーナル フリー
     本研究は, 心疾患患者のセルフケアの拡大に向けてより安全な自己清拭動作の方法を開発するため, 心臓の負荷状態と自己清拭動作の継続時間との関係を明らかにすることを目的として行った. 実験は, 健康な成人男性10名を対象とし, 60度のベッド拳上座位で両上肢・胸腹部位の自己清拭動作を行い, 実施前・中・後を通して心拍数・血圧・分時酸素摂取量 (VO2) を測定し, 心筋酸素消費量 (DP) を算出した. 各部位を拭く回数は往復5回と往復10回とし, 50回/分の速さで実施した. その結果, 動作中に心拍数・DP・VO2は有意に増加を認め, VO2においては継続時間に伴い増加傾向を示し, 低強度の活動であっても継続時間に伴い心臓への負荷が大きくなることが明らかとなった. さらに, 動作中は呼吸循環動態や代謝が高まることから, 心疾患患者への安全な自己清拭の実施において, 心拍数を目安に心臓への負荷状態を考慮するとともにケアの継続時間を検討する必要性が示唆された.
短報
  • ―リラクセーション効果に与える影響―
    人見 太一, 谷地 ちぐさ, 山口 創
    2018 年 17 巻 p. 90-94
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/20
    ジャーナル フリー
     皮膚の問題を抱える高齢者への保湿剤塗布は, 非常に重要な看護業務の一つであると考えられる. 本研究では, 健康な成人16名を対象に, 下腿部へ保湿剤塗布を行い, 自律神経活動や主観的重心感覚について介入前後で比較した. その結果, 介入前後で副交感神経指標であるHFの増加, 心拍数の減少, そして左右の重心感覚の変化を認めた. これらの結果は, 患者への心肺系の休息活動や, 転倒予防へ向けた身体感覚を向上させる可能性を示唆した. また, 自由回答では上半身の変化を自覚した回答が得られた. 今後はさらに, 下腿部のみならず, 全身への効果を検討していく価値があると考えられた.
     これらの結果から, 下腿部への保湿剤の塗布は, 単なる保湿ケアのみならず, 副交感神経系, 主観的重心感覚の変化をもたらす可能性を示唆した.
原著
  • 佐藤 祐貴子, 原田 千鶴
    原稿種別: 原著
    2018 年 17 巻 p. 1-10
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/04/20
    ジャーナル フリー
     体位変換は, 褥瘡予防を目的とし, 2時間ごとに実施される. その間の背部挙上背臥位における同一体位持続の苦痛については明らかにされていない. そこで, 本研究では背部挙上背臥位の経時的な苦痛について明らかにすることを目的とした. 被験者は, 健康な成人男女32名とし, 0度コントロール群を含む背部挙上角度30度, 45度, 60度の4群に無作為に割り付け背臥位を持続し, 120分まで主観的側面をVisual Analog Scale (VAS) と身体症状の訴え, 客観的側面を身体位置の移動距離, LF/HF, 体圧, 筋活動について測定した. その結果, VAS, 身体位置の移動距離, LF/HF, 体圧, 筋活動は時間に有意に影響を受けていた. よって, 背部挙上背臥位における同一体位を2時間持続することにより, 時間とともに苦痛は増し, 姿勢は崩れ, 交感神経活動が亢進することで, 安楽とはいえない状態にあることが示唆された.
実践報告
  • 上野 洋子, 前田 ひとみ
    原稿種別: 実践報告
    2018 年 17 巻 p. 11-17
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/04/20
    ジャーナル フリー
     新生児集中治療室 (Neonatal Intensive Care Unit:NICU) の医療従事者は感染拡大を防ぐための知識と信念を有しているにもかかわらず, NICUの医療関連感染率は高い. そこで, 本研究はNICUの医療従事者の手袋使用の障害と, 感染防止のための手袋使用に関連する行動を明らかにすることを目的とした.
     NICUの看護師と医師を対象に, 手袋使用について, Discovery & Action Dialogues (DADs) を用いたグループインタビューを実施した. グループインタビューから, 手袋使用を障害するもの, 手袋使用の障害となっているものを取り除く人, 手袋使用時の行動を抽出し, カテゴリー化した.
     手袋使用に関連する行動は, 手指から肘までの手指消毒, 機器のボタン類への接触方法, 手袋と手指消毒薬へのアクセス方法, 手指衛生のための環境作りなどの8のカテゴリーに分類でき, 手指衛生や手袋使用の障害への対策が確認できた. しかし, その有効性については明らかになっていないものもあった. また, NICUにいる人々を巻き込んでサポートを得ていることも示された.
研究報告
  • 檜山 明子, 田中 広美, 樋之津 淳子
    原稿種別: 研究報告
    2018 年 17 巻 p. 18-25
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/04/20
    ジャーナル フリー
     本研究は全国の病院に勤務している看護師を対象とした質問紙調査によって, 注射準備時の針交換に用いる方法と関係する問題を明らかにし, より安全な注射技術構築に向けた示唆を得ることを目的とした. 分析対象は729名で, 注射準備時に針刺し経験のある者は48.1%であった. 注射準備時の針交換で最も多かった方法は, プロテクターを手に持って露出した針に被せる方法であり, 続いてプロテクターの内側を針ですくいリキャップする方法, 針廃棄ボックスを使用する方法, 指でつまんで針を外す方法であった. また注射準備時の針交換に用いる方法を問題だと回答した者は61.3%であった. このことから, 清潔で安全な方法で針交換できる技術の構築が必要であると示唆された.
短報
  • 新井 直子, 砂見 緩子, 高橋 幸子, 斉藤 倫代, 伊藤 文子, 加藤 志保子, 堀内 裕子, 寺山 範子, 後藤 一雄
    原稿種別: 短報
    2018 年 17 巻 p. 26-32
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/04/20
    ジャーナル フリー
     臨床現場では, 手洗い後に手を拭いたペーパータオルで洗面カウンター表面環境の水滴を拭き取る行為が日常的にみられる. 本研究では水滴拭き取り行為による手指の汚染の可能性を, ATP (Adenosine Tri Phosphate : アデノシン三リン酸) を用いて検証することを目的とした. 対象は看護学生および教職員13名とし, 無菌手袋を装着した状態で, 流水手洗い後にペーパータオルで洗面カウンター表面環境の水滴を拭き取る前後の手袋表面 (手掌・指先・指間) のATPを測定し, 拭き取り前後のATPの比較, 拭き取り後のATPと実験環境のATP, 使用したペーパータオルに関する関連を検討した. その結果, 手掌・指先・指間いずれも拭き取り後にATPが有意に増加し, 洗面カウンター表面環境の水滴を拭き取る行為は, 手指の汚染を引き起こす可能性を示唆した. 手袋表面と測定環境のATPおよびペーパータオル枚数に相関は認めなかった. 本結果は, 手洗い後の水滴拭き取り行為に注意喚起を促すものである.
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